(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落して径方向に飛散する場合、破断あるいは脱落した羽根車の全部または一部(以下、破断部材という。)が吐出口の近傍に衝突する可能性がある。破断部材が吐出口の流路幅よりも大きい場合、吐出口の近傍に破断部材が衝突すると吐出口の近傍がロータ軸の軸線方向に拡大するように変形する。破断部材の吐出口の近傍への衝突による衝撃が十分に吸収されない場合、吐出口の近傍あるいは他の部分にき裂が生じる。このき裂により、遠心圧縮機の外周の一部に隙間(口開き)が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落して羽根車の吐出口近傍に飛散する場合に、破断部材が外部に飛散する不具合を抑制することが可能な遠心圧縮機およびそれを備えた過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明の
参考例に係る遠心圧縮機は、ロータ軸に取り付けられるとともに取込口から流入する流体を圧縮して吐出口から吐出する羽根車と、前記ロータ軸の軸線方向における前記羽根車の背面側の外周縁部に配置され、前記羽根車の背面側のシール空間と前記吐出口との間の流体の流通を遮断する円環状のシール部と、前記ロータ軸を支持する軸受部材と、該軸受部材を前記ロータ軸回りに支持する支持部材とを備え、該支持部材の外周縁部と前記シール部の内周縁部とがそれぞれ前記シール空間に配置されており、前記支持部材の外周縁部と前記シール部の内周縁部とが前記軸線方向に直交する径方向に前記シール部の外径の15%以下の距離を隔てて配置される。
【0008】
本発明の
参考例に係る遠心圧縮機において、ロータ軸の回転に伴う遠心力によりロータ軸に取り付けられる羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落すると、ロータ軸の軸線方向に直交する径方向に破断部材が飛散する。この破断部材が羽根車の吐出口近傍に飛散する場合、吐出口の近傍がロータ軸の軸線回りに拡大するように変形する。
ロータ軸に沿った羽根車の背面側の外周縁部に円環状のシール部が配置されているため、破断部材によって吐出口近傍のシール部がロータ軸の軸線方向に変形する衝撃力を受ける。
【0009】
本発明の
参考例に係る遠心圧縮機においては、シール空間に配置される支持部材の外周縁部とシール部の内周縁部とが径方向に近接して配置される。そのため、破断部材が羽根車の背面側のシール空間のいずれの領域に飛散しても、破断部材は支持部材またはシール部の少なくともいずれか一方に衝突する。
そのため、羽根車の背面側に飛散する破断部材が支持部材またはシール部の少なくともいずれか一方に衝突する衝撃力の一部を吸収することができる。これにより、破断部材が飛散することによって遠心圧縮機の一部に隙間が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散する不具合を抑制することができる。
【0010】
本発明の
参考例に係る遠心圧縮機においては、前記シール部が圧延鋼材により形成されている構成であってもよい。
本構成によれば、シール部が圧延鋼材により形成されているため、破断部材が衝突することによってシール部が適宜に塑性変形し、衝突によるエネルギーを吸収することができる。
【0011】
本発明の
参考例に係る遠心圧縮機において、前記羽根車と前記シール部とは、互いに圧接性の高い材料により形成されていてもよい。
【0012】
上記の遠心圧縮機において、ロータ軸の回転に伴う遠心力によりロータ軸に取り付けられる羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落すると、ロータ軸の軸線方向に直交する径方向に破断部材が飛散する。この破断部材が羽根車の吐出口近傍に飛散する場合、吐出口の近傍がロータ軸の軸線回りに拡大するように変形する。
ロータ軸に沿った羽根車の背面側の外周縁部に円環状のシール部が配置されているため、破断部材によって吐出口近傍のシール部がロータ軸の軸線方向に変形する衝撃力を受ける。
【0013】
上記の遠心圧縮機においては、前記羽根車と前記シール部とが、互いに圧接性の高い材料により形成されている。そのため、破断部材がシール部に衝突する際に、ロータ軸回りに高速回転する破断部材とシール部とが、摩擦熱によってそれぞれ溶解して圧接する。この圧接により、破断部材の吐出口への衝突による衝撃力の一部を熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0014】
上記の遠心圧縮機においては、前記羽根車が、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されており、前記シール部が、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている構成であってもよい。
本構成によれば、アルミニウム同士またはアルミニウム合金同士の圧接、あるいはアルミニウムとアルミニウム合金との圧接により、破断部材の吐出口近傍への衝突による衝撃力の一部を熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0015】
上記の遠心圧縮機においては、前記シール部の前記羽根車の前記背面側に対向する面が、セラミック材料によりコーティングされている構成であってもよい。
本構成によれば、羽根車を形成するアルミニウムまたはアルミニウム合金とシール部にコーティングされるセラミック材料との圧接により、破断部材の吐出口近傍への衝突による衝撃力の一部を熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0016】
上記の遠心圧縮機においては、前記ロータ軸を支持する軸受部材と、該軸受部材を前記ロータ軸回りに支持する支持部材とを備え、該支持部材の外周縁部と前記シール部の内周縁部とがそれぞれ前記シール空間に配置されており、前記支持部材の外周縁部と前記シール部の内周縁部とが前記軸線方向に直交する径方向に近接して配置される構成としてもよい。
【0017】
本構成によれば、シール空間に配置される支持部材の外周縁部とシール部の内周縁部とが径方向に近接して配置される。そのため、破断部材が羽根車の背面側のシール空間のいずれの領域に飛散しても、破断部材は支持部材またはシール部の少なくともいずれか一方に衝突する。
そのため、羽根車の背面側に飛散する破断部材が支持部材またはシール部の少なくともいずれか一方に衝突する衝撃力の一部を吸収することができる。
【0020】
本発明の
一態様に係る遠心圧縮機においては、ロータ軸に取り付けられるとともに取込口から流入する流体を圧縮して吐出口から吐出する羽根車と、前記ロータ軸の軸線方向における前記羽根車の背面側の外周縁部に配置され、前記羽根車の背面側のシール空間と前記吐出口との間の流体の流通を遮断する円環状のシール部と、前記ロータ軸を支持する軸受部材と、該軸受部材を前記ロータ軸回りに支持する支持部材とを備え、該支持部材の外周縁部と前記シール部の内周縁部とがそれぞれ前記シール空間に配置されており、前記支持部材の外周縁部と前記シール部の内周縁部とが、前記軸線方向に近接するとともに該軸線方向に直交する径方向において重なり合うように配置される。
【0021】
本発明の
一態様に係る遠心圧縮機によれば、シール空間に配置される支持部材の外周縁部とシール部の内周縁部とが径方向において重なり合うように配置される。そのため、破断部材が羽根車の背面側のシール空間のいずれの領域に飛散しても、破断部材は支持部材またはシール部の少なくともいずれか一方に衝突する。また、羽根車側に配置される支持部材およびシール部のいずれか一方に破断部材が衝突すると、支持部材およびシール部のいずれか他方に衝突による衝撃力が伝達される。
そのため、羽根車の背面側に飛散する破断部材が羽根車側に配置される支持部材およびシール部のいずれか一方に衝突する衝撃力の一部を、支持部材とシール部の双方で吸収することができる。
【0022】
本発明の
一態様に係る遠心圧縮機においては、前記支持部材の外周縁部が、前記シール部の内周縁部よりも前記軸線方向の前記羽根車側に配置されていてもよい。
このようにすることで、破断部材が支持部材に衝突する場合に、破断部材が支持部材に衝突する衝撃力をシール部に伝達し、衝撃力の一部を支持部材とシール部の双方で吸収することができる。
【0023】
本発明の一態様に係る過給機は、上記のいずれかに記載の遠心圧縮機と、内燃機関から排出された排気ガスにより前記軸線回りに回転するとともに前記ロータ軸に連結されるタービンと、を備える。
本発明の一態様に係る過給機によれば、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落してロータ軸の軸線方向に直交する径方向に飛散する場合に、破断部材が外部に飛散する不具合を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落して羽根車の吐出口近傍に飛散する場合に、破断部材が外部に飛散する不具合を抑制することが可能な遠心圧縮機およびそれを備えた過給機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態の過給機について図面を参照して説明する。
本実施形態の過給機100は、船舶に用いられる舶用ディーゼル機関(内燃機関)に供給する空気(気体)を大気圧以上に高めて、舶用ディーゼル機関の燃焼効率を高める装置である。
本実施形態の過給機100は、
図1に示す遠心圧縮機1とタービン(図示略)とを備えている。遠心圧縮機1とタービンとは、それぞれロータ軸2に連結されている。
【0027】
遠心圧縮機1は、過給機100の外部から流入する空気を圧縮し、舶用ディーゼル機関を構成するシリンダライナ(図示略)の内部と連通する掃気トランク(図示略)に圧縮した空気(以下、圧縮空気(圧縮流体)という。)を供給する装置である。
遠心圧縮機1は、ロータ軸2と、羽根車3と、ケーシング4と、ラビリンスパッキン5(シール部)と、軸受台7と、主スラスト軸受8と、反スラスト軸受10、支持部材11とを備える。
【0028】
タービン(図示略)は、舶用ディーゼル機関から排出される排気ガスによりロータ軸2の軸線X回りに一定間隔で取り付けられる複数のタービン翼に軸線X回りの回転力を与える装置である。複数のタービン翼に与えられた回転力により、ロータ軸2が軸線X回りに回転する。
【0029】
ロータ軸2の軸線X回りに回転に伴ってロータ軸2に連結された羽根車3が回転し、取込口3aから流入する空気が圧縮され、圧縮空気が吐出口3bから吐出される。吐出口3bから吐出された圧縮空気はスクロール部(図示略)に流入し、舶用ディーゼル機関の掃気トランクに導かれる。
【0030】
次に、遠心圧縮機1が備える各構成について説明する。
図1に示すように、羽根車3は、軸線Xに沿って延びるロータ軸2に取り付けられており、ロータ軸2が軸線X回りに回転するのに伴って、軸線X回りに回転する。羽根車3は、軸線X回りに回転することにより、取込口3aから流入する空気を圧縮して吐出口3bから吐出する。羽根車3は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている。
【0031】
羽根車3は、ロータ軸2に取り付けられるハブ3cと、ハブ3cの外周面上に取り付けられるブレード3dとを備える。羽根車3には、ハブ3cの外周面とケーシング4の内周面により形成される空間が設けられており、この空間が複数枚のブレード3dにより複数の空間に仕切られている。そして、羽根車3は、軸線X方向に沿って取込口3aから流入する空気に径方向の遠心力を与えて軸線X方向に直交した方向(羽根車3の半径方向)に吐出させ、吐出口3bから吐出された圧縮空気をディフューザ12に流入させる。
【0032】
ケーシング4は、羽根車3をロータ軸2の軸線X回りに収容するとともにロータ軸2の軸線X方向に沿って取込口3aから流入する空気を吐出口3bへ吐出する部材である。ケーシング4は、羽根車3とともに、軸線Xに沿って取込口3aから流入する空気を、軸線Xに直交する径方向に案内して吐出口3bへ導く流路を形成する。
【0033】
ラビリンスパッキン5(シール部)は、羽根車3の背面側のシール空間6と、羽根車3の吐出口3bとの間の圧縮空気の流通を遮断する円環状の部材である。ラビリンスパッキン5は、ロータ軸2の軸線X方向における羽根車3の背面3e側の外周縁部に配置される。
【0034】
羽根車3の背面3eの外周縁部には、フィン3f(環状凸部)が形成されている。フィン3fは、それぞれ軸線X回りに延びる無端状の複数の凸部から形成されている。これら複数の凸部は、軸線Xを基準とする半径がそれぞれ異なっている。
【0035】
一方、ラビリンスパッキン5には、フィン3fと対向する位置に環状溝部5aが形成されている。環状溝部5aは、それぞれ軸線X回りに延びる無端状の複数の溝部から形成されている。これら複数の溝部は、軸線Xを基準とする半径がそれぞれ異なっている。また、複数の溝部の半径は、それぞれフィン3fを形成する複数の凸部の半径とそれぞれ一致している。
【0036】
フィン3fとラビリンスパッキン5が対向する位置において、フィン3fを形成する複数の凸部は、環状溝部5aを形成する複数の溝部に挿入された状態で配置される。複数の凸部と複数の溝部によってフィン3fとラビリンスパッキン5との間が微小間隔に維持される。これにより、シール空間6と吐出口3bとの間の圧縮空気の流通が遮断される。
【0037】
本実施形態のラビリンスパッキン5は、圧延により製造された金属部材である圧延鋼材により形成されている。この圧延鋼材として、鉄を主成分とし、炭素を微量(約0.2%)含有するFe−C系合金である。圧延鋼材として、例えば、SS400と呼ばれる一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101;ASTM A283)を用いるのが好ましい。
ラビリンスパッキン5は、板状の圧延鋼材を切削加工することにより形成される。
【0038】
ラビリンスパッキン5を形成する部材として、一般的には、鉄を主成分とし、炭素を2%以上含有するFe−C系合金である鋳鉄が用いられる。鋳鉄として、ねずみ鋳鉄や、ダクタイル鋳鉄(FCD:Ferrum Casting Ductile)が用いられる。鋳造による金属材は、鋳込み形成により複雑な形状を形成しやすいが、圧延鋼材等の他の金属材に比べて脆性破壊に至りやすい。
【0039】
本実施形態においては、ラビリンスパッキン5を形成する部材として、圧延により製造されたFe−C系合金である圧延鋼材を用いる。圧延鋼材は、圧延機を用いて塑性変形を加え生産した鋼材であり、一般的には鋳造による金属材よりも延性が大きいという特性がある。
【0040】
軸受台7は、ラビリンスパッキン5と、後述する主スラスト軸受8と、反スラスト軸受10と、支持部材11とをロータ軸2の軸線Xに収容する部材である。軸受台7には、さらに軸線X方向に貫通する流路7aが形成されている。
【0041】
流路7aは、フィン3fとラビリンスパッキン5との間の微小間隔を通過してシール空間6へ流入する若干量の圧縮空気をシール空間6の外部へ放出するための流路である。シール空間6の圧縮空気を外部に放出することにより、シール空間6内の圧力を低下させることができる。
これにより、圧縮空気がロータ軸2を羽根車3の取込口3a方向に押す推力を低下させている。
【0042】
主スラスト軸受8および反スラスト軸受10は、それぞれロータ軸2を軸線X方向に支持する軸受部材である。主スラスト軸受8と反スラスト軸受10とは、ロータ軸2と一体に形成されたスラストカラー9を軸線X方向に挟んだ状態で配置される。ロータ軸2には、タービン(図示略)によってスラストカラー9を羽根車3の取込口3a側に移動させる方向の推力が付与されている。
【0043】
主スラスト軸受8はスラストカラー9から付与される軸線X方向の推力を支持する。同様に、反スラスト軸受10は、スラストカラー9から付与される軸線X方向の推力を支持する。主スラスト軸受8がタービンによって付与される軸線X方向の推力を支持し、反スラスト軸受10がその反対方向の推力を支持する。
【0044】
主スラスト軸受8は支持部材11に取り付けられ、反スラスト軸受10は軸受台7に取り付けられる。
支持部材11は、主スラスト軸受8をロータ軸2回りに支持する部材である。支持部材11は、複数の締結ボルト(図示略)によって軸受台7に連結されている。
【0045】
図1に示すように、支持部材11の外周縁部11aとラビリンスパッキン5の内周縁部5bとは、それぞれシール空間6に配置されている。また、外周縁部11aと内周縁部5bとは、軸線X方向に直交する径方向に近接して配置されている。
外周縁部11aと内周縁部5bとの径方向の距離は、破断部材が、これらに接触せずに軸受台7に向けて通過しない程度の距離とするのが望ましい。
【0046】
例えば、外周縁部11aと内周縁部5bとの径方向の距離は、ラビリンスパッキン5の外径(軸線Xからラビリンスパッキン5の外周縁部までの径方向の距離)の15%以下の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、外周縁部11aと内周縁部5bとの径方向の距離は、ラビリンスパッキン5の外径の6%以上かつ10%以下の範囲である。このような範囲とすることにより、破断部材がラビリンスパッキン5と支持部材11のいずれにも接触せずに軸受台7に向けて通過することを抑制することができる。
【0047】
以上説明した本実施形態の過給機100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の過給機100が備える遠心圧縮機1において、ロータ軸2の回転に伴う遠心力によりロータ軸2に取り付けられる羽根車3の全部または一部が破断あるいは脱落すると、ロータ軸2の軸線X方向に直交する径方向に破断部材が飛散する。
【0048】
この破断部材が羽根車3の吐出口3b近傍に飛散する場合、吐出口3bの近傍がロータ軸2の軸線X回りに拡大するように変形する。
ロータ軸2に沿った羽根車3の背面3e側の外周縁部に円環状のラビリンスパッキン5が配置されているため、破断部材によって吐出口3b近傍のラビリンスパッキン5がロータ軸2の軸線X方向に変形する衝撃力を受ける。
【0049】
本実施形態の遠心圧縮機1においては、ラビリンスパッキン5が圧延鋼材により形成されているため、破断部材が衝突することによってラビリンスパッキン5が適宜に塑性変形し、衝突によるエネルギーを吸収する。これにより、破断部材が飛散することによって遠心圧縮機1の一部に隙間が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散する不具合を抑制することができる。
【0050】
本実施形態によれば、シール空間6に配置される支持部材11の外周縁部11aとラビリンスパッキン5の内周縁部5bとが径方向に近接して配置される。そのため、破断部材が羽根車3の背面3e側のシール空間6のいずれの領域に飛散しても、破断部材は支持部材11またはラビリンスパッキン5の少なくともいずれか一方に衝突する。
そのため、羽根車3の背面3e側に飛散する破断部材が支持部材11またはラビリンスパッキン5の少なくともいずれか一方に衝突する衝撃力の一部を吸収することができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態の変形例である。以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、説明を省略する。
第1実施形態は、支持部材11の外周縁部11aとラビリンスパッキン5の内周縁部5bとを、軸線X方向に直交する径方向に近接して配置するものであった。
それに対して
図2に示す本実施形態の遠心圧縮機1’は、支持部材11’の外周縁部11’aとラビリンスパッキン5’の内周縁部5’bとを径方向において重なり合うように配置するものである。
【0052】
図2に示すように、本実施形態の過給機100’の遠心圧縮機1’が備えるラビリンスパッキン5’は、フィン3fに対向する位置に形成された環状溝部5’aと、内周縁部5’bとを有する。
また、本実施形態の支持部材11’は、外周縁部11’aを有する。
【0053】
図2に示すように、本実施形態の支持部材11’の外周縁部11’aとラビリンスパッキン5’の内周縁部5’bとは径方向に重なり合うように配置されている。また、支持部材11’の外周縁部11’aが、ラビリンスパッキン5’の内周縁部5’bよりも軸線X方向の羽根車3側に配置されている。
【0054】
本実施形態によれば、シール空間6に配置される支持部材11’の外周縁部11’aとラビリンスパッキン5’の内周縁部5’bとが径方向において重なり合うように配置される。そのため、破断部材が羽根車3の背面3e側のシール空間6のいずれの領域に飛散しても、破断部材は支持部材11’またはラビリンスパッキン5’の少なくともいずれか一方に衝突する。
【0055】
また、羽根車3側に配置される支持部材11’に破断部材が衝突すると、ラビリンスパッキン5’に衝突による衝撃力が伝達される。そのため、羽根車3の背面3e側に飛散する破断部材が羽根車3側に配置される支持部材11’に衝突する衝撃力の一部を、支持部材11’とラビリンスパッキン5’の双方で吸収することができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、羽根車3側に支持部材11’の外周縁部11’aを配置し、軸受台7側にラビリンスパッキン5’の内周縁部5’bを配置することとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、羽根車3側にラビリンスパッキン5’の内周縁部5’bを配置し、軸受台7側に支持部材11’の外周縁部11’aを配置するようにしてもよい。
【0057】
他の態様の場合、羽根車3側に配置されるラビリンスパッキン5’に破断部材が衝突すると、支持部材11’に衝突による衝撃力が伝達される。そのため、羽根車3の背面3e側に飛散する破断部材が羽根車3側に配置されるラビリンスパッキン5’に衝突する衝撃力の一部を、支持部材11’とラビリンスパッキン5’の双方で吸収することができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は第1実施形態および第2実施形態の変形例である。以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態および第2実施形態と同様であるものとし、説明を省略する。
【0059】
第1実施形態および第2実施形態は、ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)を圧延鋼材により形成し、圧延鋼材が有する延性により破断部材の衝突による衝撃力を吸収するものであった。
それに対して本実施形態は、羽根車3とラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)とを、互いに圧接性の高い材料により形成するものである。
【0060】
遠心圧縮機1が備える羽根車3は、例えば、毎分1万回転以上という非常に高い回転数で回転する。そのため、羽根車3の一部が破断あるいは脱落して吐出口3b近傍に飛散する場合、破断部材が吐出口3b近傍のラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)に衝突しながら高速度で軸線X回りに回転する。この際、ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)と破断部材との間に大きな摩擦熱が生じる。
【0061】
ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)と破断部材(羽根車3の一部)とを摩擦圧接性の高い材料により構成すると、ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)と破断部材との間に大きな摩擦熱によってそれぞれが溶解して圧接する。この圧接により、破断部材の吐出口3bへの衝突による衝撃力の一部を熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0062】
そこで、本実施形態では、羽根車3とラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)とを互いに摩擦圧接性の高い材料により構成した。具体的には、羽根車3をアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成し、ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)をアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成する。
【0063】
本実施形態の遠心圧縮機1においては、羽根車3とラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)とが、互いに圧接性の高い材料により形成されている。そのため、破断部材がラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)に衝突する際に、ロータ軸2回りに高速回転する破断部材とラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)とが、摩擦熱によってそれぞれ溶解して圧接する。この圧接により、破断部材の吐出口3b近傍への衝突による衝撃力の一部を熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0064】
本実施形態の遠心圧縮機1においては、羽根車が、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されており、ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)が、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている。
本実施形態によれば、アルミニウム同士またはアルミニウム合金同士の圧接、あるいはアルミニウムとアルミニウム合金との圧接により、破断部材の吐出口3b近傍への衝突による衝撃力の一部を熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0065】
なお、本実施形態は、ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)を、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成するものであったが他の態様であってもよい。
例えば、ラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)をFe−C系合金である鋳鉄を用いて鋳造し、羽根車3の背面3eに対向する面をセラミック材料によりコーティングしてもよい。
【0066】
セラミック材料は、アルミニウムおよびアルミニウム合金に対する圧接性が高いことが知られている。そこで、破断部材が吐出口3bに衝突する際に破断部材が接触することとなるラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)の面を、セラミック材料でコーティングすることとした。
【0067】
本態様によれば、羽根車3を形成するアルミニウムまたはアルミニウム合金とラビリンスパッキン5(ラビリンスパッキン5’)にコーティングされるセラミック材料との圧接により、破断部材の吐出口3b近傍への衝突による衝撃力の一部を熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0068】
〔第4実施形態〕
次に本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は第1実施形態の変形例である。以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、説明を省略する。本実施形態の軸受台7は、流路7aが形成されていない点で第1実施形態の軸受台7と異なっている。
【0069】
第1実施形態は、ラビリンスパッキン5と支持部材11とをそれぞれ別々の部材として形成するものであった。
それに対して
図3に示す本実施形態の過給機100’’が備える遠心圧縮機1’’は、ラビリンスパッキン5’’と支持部材11’’とを一体に形成するものである。
【0070】
図3に示すように、本実施形態の過給機100’’が備える遠心圧縮機1’’は、ラビリンスパッキン5’’(シール部)と支持部材11’’とを備える。ラビリンスパッキン5’’と支持部材11’’とは、連結部13を介して一体に形成されている。ラビリンスパッキン5’’には、フィン3fと対向する位置に環状溝部5’’aが形成されている。
【0071】
本実施形態によれば、一体に形成される支持部材11’’とラビリンスパッキン5’’との連結部13がシール空間6内に配置される。そのため、破断部材が羽根車3の背面3e側のシール空間6のいずれの領域に飛散しても、破断部材は支持部材11’’とラビリンスパッキン5’’とを一体に連結する連結部13衝突する。
そのため、羽根車3の背面3e側に飛散する破断部材が支持部材11’’またはラビリンスパッキン5’’の少なくともいずれか一方に衝突する衝撃力の一部を吸収することができる。
【0072】
支持部材11’’とラビリンスパッキン5’’とは、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いて鋳造により形成される。支持部材11’’とラビリンスパッキン5’’とを、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いて形成することにより、これらの部材と破断部材(羽根車3)との圧接性を高めることができる。
【0073】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、遠心圧縮機1が備える羽根車3が連結されるロータ軸2は、舶用ディーゼル機関から排出される排気ガスにより回転するタービンによって軸線X回りに回転するものであったが、他の態様であってもよい。例えば、ロータ軸2は、ロータ軸2に連結されたモータ等の他の動力源によって回転するものであってもよい。