特許第6404093号(P6404093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6404093-防滑塗布材及び防滑施工方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404093
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】防滑塗布材及び防滑施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/24 20060101AFI20181001BHJP
   E04F 15/08 20060101ALI20181001BHJP
   E01C 15/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   E01C11/24
   E04F15/08 E
   E01C15/00
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-232105(P2014-232105)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-94773(P2016-94773A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】509242484
【氏名又は名称】株式会社名倉ルーフ
(73)【特許権者】
【識別番号】391007460
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(72)【発明者】
【氏名】名倉 孝次
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 賢一
(72)【発明者】
【氏名】水野 利幸
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−112434(JP,A)
【文献】 特開2000−104213(JP,A)
【文献】 特開2012−229600(JP,A)
【文献】 特開2004−269286(JP,A)
【文献】 特開2013−075441(JP,A)
【文献】 特開2014−066065(JP,A)
【文献】 特開2002−284553(JP,A)
【文献】 特開平11−181707(JP,A)
【文献】 特開2009−263997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00〜 17/00
E04F 15/00〜 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行面に塗布する該歩行面での滑りを防止するための防滑塗布材において、
粉砕した陶磁器屑若しくは粉砕した瓦又は火山灰で、粒径が2mm以下の再生粉と、
該再生粉を該歩行面に固着させるバインダとからなり、
該再生粉が、該再生粉と該バインダの合計重量に対して8%〜1%であることを特徴とする防滑塗布材。
【請求項2】
前記バインダが、シリコン樹脂溶剤からなることを特徴とする請求項1記載の防滑塗布材。
【請求項3】
所定量のつや消し剤を、混合したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の防滑塗布材。
【請求項4】
前記陶磁器屑が、廃陶磁器製便器、廃陶磁器製便器タンク、廃陶磁器製シンク又は廃陶磁器製タイルであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防滑塗布材。
【請求項5】
前記瓦が、廃瓦であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防滑塗布材。
【請求項6】
色彩の異なる前記再生粉を、混合したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の防滑塗布材。
【請求項7】
歩行面での滑りを防止するための防滑施工方法において、
粉砕した陶磁器屑若しくは粉砕した瓦又は火山灰で、粒径が2mm以下の再生粉と、該再生粉を該歩行面に固着させるバインダとを、該再生粉が、該再生粉と該バインダの合計重量に対して8%〜1%になるように混合し、該歩行面に塗布することを特徴とする防滑施工方法。
【請求項8】
前記バインダが、シリコン樹脂溶剤からなることを特徴とする請求項7記載の防滑施工方法。
【請求項9】
所定量のつや消し剤を混合して塗布することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の防滑施工方法。
【請求項10】
前記陶磁器屑が、廃陶磁器製便器、廃陶磁器製便器タンク、廃陶磁器製シンク又は廃陶磁器製タイルであることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の防滑施工方法。
【請求項11】
前記瓦が、廃瓦であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の防滑施工方法。
【請求項12】
色彩の異なる前記再生粉を、混合することを特徴とする請求項7〜請求項11のいずれかに記載の防滑施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道タイルや歩道レンガ等の歩行面での滑りを防止するための防滑塗布材及び防滑施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歩行面の滑りを防止する方法として、さまざまな方法が用いられている。この滑り止め部材とした、例えば、特許文献1に示すような滑り防止テープがある。この滑り防止テープは、滑りを防止したい面に貼付するもので、金属箔をベースとして、その金属箔ベースの上面に、透明な樹脂フィルムを設けるとともに、樹脂フィルムの裏面、すなわち、金属箔ベースに対向する面に、模様等からなる表示層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−329670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の滑り防止テープでは、剥がれやすく、部分的に貼付するので、歩行面の意匠性を損ねやすいという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる防滑塗布材及び防滑施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の防滑塗布材は、粉砕した陶磁器屑若しくは粉砕した瓦又は火山灰で、粒径が2mm以下の再生粉と、再生粉を歩行面に固着させるバインダとからなり、再生粉が、再生粉とバインダの合計重量に対して8%〜1%であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の防滑塗布材は、バインダが、シリコン樹脂溶剤からなることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の防滑塗布材は、所定量のつや消し剤を、混合したことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の防滑塗布材は、陶磁器屑が、廃陶磁器製便器、廃陶磁器製便器タンク、廃陶磁器製シンク又は廃陶磁器製タイルであることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の防滑塗布材は、瓦が、廃瓦であることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の防滑塗布材は、色彩の異なる再生粉を、混合したことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の防滑施工方法は、粉砕した陶磁器屑若しくは粉砕した瓦又は火山灰で、粒径が2mm以下の再生粉と、再生粉を歩行面に固着させるバインダとを、再生粉が、再生粉とバインダの合計重量に対して8%〜1%になるように混合し、歩行面に塗布することを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の防滑施工方法は、バインダが、シリコン樹脂溶剤からなることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の防滑施工方法は、所定量のつや消し剤を混合して塗布することを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の防滑施工方法は、陶磁器屑が、廃陶磁器製便器、廃陶磁器製便器タンク、廃陶磁器製シンク又は廃陶磁器製タイルであることを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の防滑施工方法は、瓦が、廃瓦であることを特徴とする。
【0017】
請求項12記載の防滑施工方法は、色彩の異なる再生粉を、混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の防滑塗布材及び防滑施工方法は、歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る防滑塗布材の製造方法及び施工方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明に係る防滑塗布材の製造方法及び施工方法を示す説明図である。
【0021】
本発明に係る防滑塗布材は、歩道タイルや歩道レンガ等の歩行面での滑りを防止するためのもので、材質的には、表面が滑りやすい磁器タイルや大理石等の方向面に塗布することが可能なものである。このように、塗布する歩行面は、屋外でも屋内でもよく、また、材質や形状により制限されるものではない。
【0022】
防滑塗布材は、粉砕した陶磁器屑若しくは粉砕した廃瓦又は火山灰を所定の粒径に分別した再生粉と、再生粉を塗布面に固着させるバインダとを混合したものである。
【0023】
陶磁器屑は、例えば、廃瓦や廃陶磁器製便器等の陶磁器の廃材で、練り土成形焼成品を含む。より具体的には、廃瓦では、いぶし瓦、陶器瓦等である。また、廃陶磁器製便器の他、廃陶磁器製便器タンク、廃陶磁器製シンク又は廃陶磁器製タイルであってもよく、陶磁器や練り土成形焼成品で、その製造途中で生じた廃棄物や、使用された後に廃棄されたものであってもよい。陶磁器屑を、粒径が2mm以下になるように粉砕したものが再生粉で、この粉砕物を再生粉として用いるようにする。
【0024】
また、火山灰は、粒径が2mm以下のものとそれ以外とに分別(ふるい分け)することにより、2mm以下のものを再生粉として用いるようにする。尚、火山灰の場合、単に分別(ふるい分け)をするだけでも、所定の粒径の再生粉を得ることはできるが、粒径の大きなもの(火山礫等)を粉砕して、所定の粒径の再生粉を得るようにしてもよい。
【0025】
バインダは、樹脂系のもので、特に、シリコン樹脂溶剤であることが好ましい。
【0026】
また、防滑塗布材の再生粉の割合は、再生粉とバインダの合計重量に対して8%〜1%である。特に、好ましい割合としては、再生粉とバインダの合計重量に対して5%程度である。
【0027】
次に、本発明の防滑塗布材の製造方法及び施工方法を、図1を用いて説明する。まず、バインダは、あらかじめ製造工場で調合・製造され、所望の防滑塗布材の量に見合った上述した重量に計量する(S110)。
【0028】
陶磁器屑や火山灰は、工場や作業現場や飛散現場から回収され、産業廃棄物処分工場において、まずは異物や汚れの除去として洗浄が行われる(S120)。次に、陶磁器屑を、粉砕する(S121)(火山灰については、必要に応じて粉砕する)。粉砕の目安は粒径が2mm以下で、実際の粉砕では、粒径が2mmのものもあれば、それ以下のパウダー状のものも含まれる。そして、粉砕された陶磁器屑や火山灰を、ふるいに掛けて粒径が大きいものを取り除く(S122)。粒径が2mmよりも大きな粒は、さらに粉砕し直すようにする。
【0029】
そして、再生粉とを、所望の防滑塗布材の量に見合った上述した重量にそれぞれ計量する(S123)。尚、洗浄(S120)は、必須ではない。また、再生粉に、不必要な水分が含まれる場合には、粉砕(S121)やふるい(S122)の前後の適当な段階で、乾燥の処理を施す必要がある場合もある。乾燥方法としては、天日干しや機械乾燥等で、特に乾燥方法により限定されるものではない。また、計量(S123)を行った場所と塗布面のある現場が離れているような場合には、計量後の再生粉を、それぞれ袋詰めするようにしてもよい。
【0030】
次に、再生粉とバインダとを、上述の割合で混合する(S111)。混合する場所は、土木現場や建築物の施工現場でも、それ以外の場所であってもよい。
【0031】
塗装面は、上述した歩行面である。そして、最初に、必要に応じて塗布面の洗浄を行い(S100)、次に下地処理としてシーラーを塗布する(S101)。尚、シーラーの塗布は、必須ではない。
【0032】
その上で、塗布面に防滑塗布材を塗布する(S102)。塗布方法は、刷毛塗りでも噴き付けでもよい。塗布する回数は、1回でもかまわないが、2回以上であってもよい。
【0033】
以上のような構成の本実施の形態における防滑塗布材によれば、粒径が2mm以下の再生粉が、再生粉とバインダの合計重量に対して8%〜1%であることで、塗布した歩行面が極端な凹凸面にならないものの、適度な凹凸を有し、滑りにくい歩行面を実現することができる。実際に、本願発明の防滑塗布材を塗布した塗布面の滑り係数(JIS A 1454のCSR測定による)は、試料(ゴムシートに本願の防滑塗布材を塗布)の状態が乾燥状態の場合でCSR平均値=0.93、湿潤状態の場合でCSR平均値=0.89、湿潤状態(水+ダスト)の場合でCSR平均値=0.51であり、防滑性に優れている。
【0034】
また、防滑塗布材は、既に施工された歩行面に対して塗布可能であり、また、2mm程の骨材が入っているにも関わらず、スプレーガンで噴き付けできるので、広範囲な塗布も可能である。
【0035】
更に、再生粉の粒径が小さく、且つ全重量に対する割合が少ないことから、元々の歩行面の意匠性を保ちやすく、塗布した後の歩道面の意匠性が損なわれにくい。
【0036】
さらに、バインダにシリコン樹脂溶剤を用いることで、耐候性が良く、また磁器タイル等との付着性が良く、さらに耐薬品性にも優れた歩行面を形成することができる。
【0037】
更に、防滑塗布材に所定量のつや消し剤を、混合することにより、塗布後の歩行面を光沢の少ない面として形成させることもでき、意匠性の選択が可能である。
【0038】
尚、再生粉の元となる陶磁器屑に、廃陶磁器製便器、廃陶磁器製便器タンク、廃陶磁器製シンク又は廃陶磁器製タイルを用い、また廃瓦を用いることで、それぞれの陶磁器屑の色を生かした防滑塗布材となり、意匠性に優れた塗布面に仕上げることも可能である。更に、色彩の異なる再生粉を混合することで、元々の歩行面の色に沿った配色等が可能で、様々な色彩の意匠面を形成させることが可能である。例えば、元の歩行面の表面が退色したりして意匠性が損なわれた状態で、本願の防滑塗布材を塗布することで、防滑性を付加したうえで、意匠性を蘇らせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明によれば、歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる防滑塗布材及び防滑施工方法を提供することができる。
図1