(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404096
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】ゲル組成物及び乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20181001BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20181001BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20181001BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20181001BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20181001BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20181001BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20181001BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20181001BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20181001BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20181001BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/92
A61K8/06
A61K8/02
A61Q19/00
A61Q1/14
A61K8/31
A61K8/19
A61K8/41
A61K8/44
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-234498(P2014-234498)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-98186(P2016-98186A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 久美子
(72)【発明者】
【氏名】坂 貞徳
(72)【発明者】
【氏名】中田 悟
【審査官】
向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−031415(JP,A)
【文献】
特開2007−254377(JP,A)
【文献】
特開2011−213652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00〜 8/99
A61Q 1/00〜90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
化学式1(Rは炭素数12〜22のアシル基を表す)で表される(A)アシル化ヒドロキシクエン酸、(B)中和剤、(C)多価アルコール
を混合し加熱溶解させた後、撹拌しながら(D)油性成分を徐々に(A)〜(C)混合物に添加することにより得られることを特徴とするゲル組成物
の製造方法。
【請求項2】
化学式1で表される(A)のRが、炭素数16のアシル基であることを特徴とする請求項1記載のゲル組成物の製造方法。
【請求項3】
(B)が、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、L−アルギニンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のゲル組成物の製造方法。
【請求項4】
(C)が、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトールから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のゲル組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法にて調製されたゲル組成物に、さらに実質的に界面活性剤を含まない水で希釈することによって得られる乳化組成物の製造方法。
【請求項6】
乳化組成物が、水中油型乳化物であることを特徴とする請求項5記載の乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシル化ヒドロキシクエン酸、中和剤、多価アルコール及び油性成分を含有することを特徴とするゲル組成物に関する。さらには該ゲル組成物を水で希釈することによって得られる、均一で微細な乳化粒子を有する乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの乳化組成物には、その性状、形態や使用感等の目的によって界面活性剤が使用されてきた。その中で乳化粒子の粒径を均一にする目的から、界面活性剤同士の組合せや界面活性剤と高級アルコール等の両親媒性物質との組合せによりHLBを調整したり、高級脂肪酸や高級アルキルスルホン酸のpHを調整する等して、種々の界面活性剤を含有し、乳液状もしくはクリーム状にする手法が広く用いられてきた。
【0003】
しかしながら、近年、安全性の面から界面活性剤の含有が好ましくない傾向にあり、界面活性剤を含有しないもしくは含有量を減らした乳化法が種々提案されている(特許文献1〜3)。これらの乳化法では水溶性高分子を利用することが多いが、水溶性高分子を用いた乳化法は、乳化力が比較的弱く、微細な粒径の乳化粒子を得にくいという問題があった。
【0004】
一方、ヒドロキシクエン酸はガルシニア・カンボジア(Garcinia cambogia)に含まれる脂肪合成抑制作用をもつ物質であり、ダイエット素材としての歴史は古く、今日、ガルシニア・カンボジアの果皮から抽出されたエキスが市販されている。しかしながら、ヒドロキシクエン酸は、容易に環化して不活性ラクトンを形成し不安定である。そこで安定性を高めるため、カルシウム塩やナトリウム塩として用いることが開示されている(特許文献4)。
【0005】
また、ヒドロキシクエン酸は、強い親水性のため細胞膜を透過しにくく、細胞内への蓄積量が限られ、十分な生理作用が得られない。そこでヒドロキシクエン酸の皮膚透過性を高めるため、ヒドロキシクエン酸の2位の水酸基をアシル基で修飾したアシル化ヒドロキシクエン酸、そのアルカリ金属塩及び/又はそのアルカリ土類金属塩等の誘導体として用いることが開示されている(特許文献5)。これらを含有した化粧料は、抗老化作用、抗肌荒れ作用、美白作用等を有することが報告されている(特許文献6〜8)。しかしながら、これらアシル化ヒドロキシクエン酸に関する先行文献において、アシル化ヒドロキシクエン酸を利用したゲル組成物に関する報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−217624号公報
【特許文献2】特開2004−83585号公報
【特許文献3】特開2007−238549号公報
【特許文献4】特公表2001−527022号
【特許文献5】特開2007−31415号公報
【特許文献6】特開2007−254387号公報
【特許文献7】特開2007−254388号公報
【特許文献8】特開2007−254389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有益な生理活性を有するヒドロキシクエン酸を利用して、実質的に界面活性剤を含まずとも、優れた乳化作用を有するゲル組成物を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するアシル化ヒドロキシクエン酸と中和剤と多価アルコール及び油性成分とを含有することで、優れた乳化作用を有する粘稠性のゲル組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0009】
【化1】
【0010】
本発明は、化学式1(Rは炭素数12〜22のアシル基を表す)で表されるアシル化ヒドロキシクエン酸、中和剤、多価アルコール及び油性成分とを含有することで、実質的に界面活性剤を含まずとも優れた乳化作用を有する粘稠性のゲル組成物を得ることができる。該ゲル組成物を水で希釈することにより、安全性が高くしかも微細で均一な乳化粒子を形成し、使用性かつ安定性に優れる乳化組成物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の化学式1で示されるアシル化ヒドロキシクエン酸は、Rが炭素数12〜22のアシル基を表す。具体例としては、ヒドロキシクエン酸−2−ラウレート、ヒドロキシクエン酸−2−ミリステート、ヒドロキシクエン酸−2−パルミテート、ヒドロキシクエン酸−2−ステアレート、ヒドロキシクエン酸−2−ベヘノエートなどが挙げられる。好ましくはRが炭素数16のアシル基であり、例えばヒドロキシクエン酸−2−パルミテート(HCAP、昭和電工株式会社)が挙げられる。
【0012】
アシル化ヒドロキシクエン酸の含有量は特に限定されないが、本発明のゲル組成物中1〜15重量%含有することが好ましく、2〜10重量%含有することがより好ましい。1重量%未満では十分な乳化作用を有するゲル組成物が得られない場合があり、15重量%を超えると使用性が悪くなる場合がある。
【0013】
本発明に用いられる中和剤は、通常の化粧品、医薬部外品に含有される中和剤であれば特に限定されない。好ましくは、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、L−アルギニン等が挙げられる。
【0014】
中和剤の含有量は特に限定されないが、アシル化ヒドロキシクエン酸1モルに対し、0.1モル以上が好ましく、1モル以上5モル以下がより好ましい。0.1モル未満だと十分な乳化作用を有するゲル組成物が得られない場合がある。
【0015】
本発明で用いられる多価アルコールは特に限定されないが、好ましくはグリセリン、ジグリセリン、ソルビトール等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
多価アルコールの含有量は特に限定されないが、本発明のゲル組成物中7〜50重量%が好ましく、15〜30重量%がより好ましい。この範囲で用いれば特に乳化作用の優れるゲル組成物が得られる。
【0017】
本発明で用いられる油性成分としては、脂肪酸(例えばオレイン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、コルンビン酸、エイコサ−(n−6,9,13)−トリエン酸、アラキドン酸、α−リノレン酸、チムノドン酸、ヘキサエン酸)、エステル油(例えばペンタエリスリトール−テトラ−2−エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、オクチルドデシルミリステート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、アジピン酸ジ(2−ヘプチルウンデシル)、乳酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソオクタン酸セチル、ビタミンAパルミテート)、ロウ(例えばミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ワセリン)、動物油及び植物油(例えばミンク油、オリーブ油、ヒマシ油、カカオ脂、パーム油、タラ肝油、牛脂、バター脂、月見草油、コメヌカ油、スクワラン、ゴマ油、サフラワー油、マカダミアナッツ油、ホホバ油、タートル油)、鉱物油(例えば炭化水素系オイル、流動パラフィン)、炭化水素(α−オレフィンオリゴマー、流動イソパラフィン)、シリコーンオイル(例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン)、高級アルコール(例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、コレステロール、フィトステロール)、トリグリセライド類(トリオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン)及びこれらの誘導体を例示することができる。
【0018】
本発明で用いられる油性成分の含有量は特に限定されないが、本発明のゲル組成物中40〜85重量%が好ましく、60〜80重量%がより好ましい。この範囲で用いれば特に乳化作用の優れるゲル組成物が得られる。
【0019】
本発明のゲル組成物には、該ゲル組成物の透明性及び硬さ等を調整する目的で水を含有することができる。水の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、本発明のゲル組成物中20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。20重量%を超えると十分な乳化作用を有するゲル組成物が得られない場合がある。
【0020】
本発明のゲル組成物は、乳化作用が高いという特徴を有している。したがって、本発明のゲル組成物を用いれば、他の一般的な界面活性剤を使用する必要なく乳化組成物を調製することが可能となる。従来は、乳化組成物を調製しようとすると、処方系との相性の良い界面活性剤を選択的に含有しなければならなかったが、本発明のゲル組成物を用いれば容易に乳化組成物を調製することが可能となる。以下、本発明のゲル組成物、乳化組成物の調製方法について詳細に説明する。
【0021】
アシル化ヒドロキシクエン酸と中和剤と多価アルコールを十分に馴染ませた後80℃〜90℃まで昇温し溶解させる。そこへ60℃〜80℃まで昇温させておいた油性成分を撹拌しながら徐々に添加することにより、本発明のゲル組成物が得られる。その後得られたゲル組成物を65℃〜85℃に調整し、一方で65℃〜85℃まで昇温させておいた水をゲル組成物に撹拌しながら添加して乳化する。乳化後撹拌しながら室温まで冷却すると均一で微細な粒径の乳化粒子を形成する乳化組成物が得られる。
【0022】
尚、水を含んだゲル組成物と乳化組成物の違いは、水の添加とともにゲル組成物から乳化組成物へ変化する際、明らかに粘性が下がること、白色化等、濁度が上がることによって識別できる。
【0023】
本発明のゲル組成物及び乳化組成物は、使用目的に応じて様々な成分をさらに含有することができる。例えば、UV吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、美白剤、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、ペプチド、生理活性植物抽出物、蛍光材料、顔料、色素、香料、スクラブ剤、バインダー、増量剤、増粘剤、糖類、栄養成分、キレート剤、殺菌剤、角質改善剤、角質溶解剤、抗生物質、皮膚透過促進剤、血行促進剤、消炎剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、鎮痛剤、皮膚軟化剤、皮膚緩和剤、創傷治療剤、新陳代謝促進剤等を本発明の効果を損なわない範囲にて含有することができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0025】
表1〜3に示す処方より実施例と比較例をそれぞれ調製し、ゲル形成試験及び乳化粒子評価を行った。以下表中の数値は重量%を示す。
【0026】
[実施例1〜16及び比較例1〜4の調製法]
a〜c部を混合後90℃に加温し、同じく70℃に加温したd部をa〜c部に撹拌しながら徐々に加えた。その後室温まで冷却して組成物を得た。
【0027】
[ゲル形成試験]
ゲルが形成するか肉眼で判定した。
[判定基準]
○:ゲルの形成が確認できた。
×:ゲルの形成が確認できなかった。
【0028】
[乳化粒子評価]
調製した組成物に、その10倍量の水を常温で撹拌しながら加えて乳化組成物を得た。乳化組成物調製直後の乳化粒子の状態を、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープ VHX−500を用い、倍率500倍にて観察し、以下の基準に従って乳化粒子を評価した。
[判定基準]
◎:乳化粒子は2μm以下で均一である。
○:乳化粒子は2μmを超えるものがありほぼ均一である。
×:乳化粒子が不均一である又は乳化していない。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
表1〜3に示すように本発明のアシル化ヒドロキシクエン酸と中和剤と多価アルコール及び油性成分とを含有した実施例1〜16は、良好なゲル組成物が得られた。特にアシル化ヒドロキシクエン酸を2〜10重量%、中和剤をアシル化ヒドロキシクエン酸1モルに対し1モル以上5モル以下、多価アルコールを15〜30重量%、油性成分を60〜80重量%含有したゲル組成物(実施例2、3、6、8、10、11、13、14、15、16)は乳化粒子の状態が格段に優れた評価結果であった。一方、アシル化ヒドロキシクエン酸を含有していないもの(比較例1)、中和剤を含有していないもの(比較例2)、多価アルコールを含有していないもの(比較例3)、油性成分を含有していないもの(比較例4)はゲルの形成が確認できず、乳化粒子も不均一又は乳化していなかった。
【0033】
表4に示す処方より実施例と比較例をそれぞれ調製し、乳化粒子及び使用性の評価を行った。以下表中の数値は重量%を示す。
【0034】
[実施例17〜21の乳化組成物調製法]
a〜c部を混合後90℃にて加温溶解し、同じく70℃に加温したd部をa〜c混合部に撹拌しながら徐々に加えてゲル組成物を調製した。その後ゲル組成物を75℃に調整し、75℃に加温したe部をゲル組成物に加え撹拌しながら室温まで冷却し乳化組成物を得た。
【0035】
[比較例5の乳化組成物調製法]
a〜c部を混合後90℃にて加温溶解し、75℃に加温したe部と混合する。その後75℃に加温したd部を加えホモミキサーで撹拌後、室温まで冷却し乳化組成物を得た。
【0036】
[比較例6及び7の乳化組成物調製法]
c+e部を混合後75℃に加温した後、同じく75℃に加温したd部を加えホモミキサーで撹拌後、室温まで冷却し乳化組成物を得た。
【0037】
[乳化粒子評価]
乳化組成物調製直後及び50℃にて2週間保存した後の状態をKEYENCE社製デジタルマイクロスコープ VHX−500を用い、倍率500倍にて観察し、以下の基準に従って乳化粒子を評価した。
[判定基準]
◎:乳化粒子は2μm以下で均一である。
○:乳化粒子は2μmを超えるものがありほぼ均一である。
△:分離は見られないが、乳化粒子が不均一である。
×:分離が見られる。
【0038】
[使用性評価]
女性専門パネル(20名)による官能評価を実施し、使用性について、下記の基準に従って評価した。
[判定基準]
◎:16名以上が、良好と判定した。
○:12〜15名が、良好と判定した。
△:8〜11名が、良好と判定した。
×:良好と判定した人が、7名以下。
【0039】
【表4】
表4に示すように本発明であるアシル化ヒドロキシクエン酸と中和剤と多価アルコール及び油性成分とを混合して得られるゲル組成物からなる乳化組成物(実施例17〜21)は、均一で微細な乳化粒子を有し、安定性かつ使用性も良好であり本願発明効果が得られた。一方、ゲル組成物を調製しない乳化組成物(比較例5)や、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用い高分子乳化法で調製した乳化組成物(比較例6)や、スクレロチウムガムを用い高分子乳化法で調製した乳化組成物(比較例7)では、良好な乳化粒子が得られなかった。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、アシル化ヒドロキシクエン酸と中和剤と多価アルコール及び油性成分とを混合して得られるゲル組成物を利用することで、実質的に界面活性剤を含まなくとも均一で微細な乳化粒子を有し、使用性や安定性に優れた乳化組成物を提供することが可能となる。
【0041】
以下に本発明を、詳細に説明するため実施例を挙げて説明する。
【0042】
実施例22 乳液
a ヒドロキシクエン酸−2−パルミテート*1 1.0重量%
b トリエタノールアミン 1.2
c グリセリン 3.0
d 流動パラフィン 7.0
ビーズワックス 0.2
ミリスチン酸オクチルドデシル 2.0
ステアリルアルコール 0.5
香料 適量
e ジプロピレングリコール 5.0
ベントナイト 0.5
キサンタンガム 0.3
キレート剤 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0043】
a〜c部を混合後90℃にて加温溶解し、同じく70℃に加温したd部をa〜c混合部に撹拌しながら徐々に加えてゲル組成物を調製した。その後ゲル組成物を75℃に調整し、75℃に加温したe部をゲル組成物に加え撹拌しながら室温まで冷却し乳液を得た。得られた乳液は2μm以下の良好な乳化粒子であり、使用性や安定性も良好であった。
【0044】
実施例23 クレンジングクリーム
a ヒドロキシクエン酸−2−パルミテート *1 3.0重量%
b 2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール 2.5
c グリセリン 10.0
ソルビトール70%水溶液 *2 5.0
d 流動パラフィン 30.0
ビーズワックス 0.5
イソノナン酸イソノニル 5.0
ベヘニルアルコール 0.5
香料 適量
e 1,3−ブチレングリコール 3.0
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.8
水酸化カリウム 0.3
キレート剤 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0045】
a〜c部を混合後90℃に加温溶解し、同じく70℃に加温したd部をa〜c混合部に撹拌しながら徐々に加えてゲル組成物を調製した。その後ゲル組成物を75℃に調整し、75℃に加温したe部をゲル組成物に加え撹拌しながら室温まで冷却しクレンジングクリームを得た。得られたクレンジングクリームは2μm以下の良好な乳化粒子であり、使用性や安定性も良好であった。
【0046】
*1:HCAP(昭和電工株式会社製)
*2:ソルビット D−70(三菱商事フードテック株式会社製)
*3:PEMULEN TR−1(Noveon社製)
*4:AMIGEL(Alban Muller International社製)
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、実質的に界面活性剤を含まずとも優れた乳化作用を有するゲル組成物を提供できる。また、該ゲル組成物を用いることで安全性が高くしかも均一で微細な乳化粒子を有する乳化組成物を容易に提供できる。