(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の電池電圧計測回路によれば、メインキャパシタをフライングキャパシタとして用いることで二次電池の電圧が正確に測定されるようになる。
通常、フライングキャパシタは、電圧の計測対象となる二次電池や計測回路との接続がスイッチのオン/オフの切り替えにより行われる。このとき、フライングキャパシタは、その両端子と二次電池や計測回路との電路が機械式接点のスイッチにより開閉されるならば、スイッチが開いているときに電流が流れることはないため充電が行われることもない。よって、フライングキャパシタが不要に充電されるようなおそれもなく、このフライングキャパシタを用いた電圧計測を直ちに開始することができる。
【0006】
ところが近年、こうした電池電圧計測回路においては、回路の小型化や高速化などを理由として半導体スイッチが使用されるようになってきている。半導体スイッチは、小型かつ高速であり、実用上は電路を開いた状態にすることができるものの、機械式接点を開放するものではないため、わずかとはいえリーク電流の発生が避けられない。そして、リーク電流などのわずかな電流の流れであれ、こうした電流によってフライングキャパシタが不要に充電されることがあると、正確な電圧を計測できなかったり、計測前に上述のフライングキャパシタを放電しなければならないなどの手間が必要になったりする。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、フライングキャパシタへの電路が半導体スイッチによって開閉される場合であれ、フライングキャパシタを用いての電圧計測をより正確かつ迅速に行うことのできる電池電圧計測回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する電池電圧計測回路は、複数の二次電池の各端子にそれぞれ入力側半導体スイッチを介して並列接続されるメインキャパシタと、前記メインキャパシタの各端子に出力側半導体スイッチを介してそれぞれの反転入力端子が接続される第1及び第2の差動増幅回路と、前記第1の差動増幅回路の出力端子と前記第2の差動増幅回路の出力端子との端子間電圧に基づいて前記二次電池の電圧を演算する演算部とを備え、前記第1及び第2の差動増幅回路はそれぞれ出力端子と反転入力端子とがサブキャパシタを介して接続されてかつ、各非反転入力端子が基準電位に接続されており、前記二次電池は一方の極が外部回路を介して基準電位に接続されていることを要旨とする。
【0009】
半導体スイッチは、オフされることで実用上は回路を遮断することができるものの、リーク電流などのわずかな電流の流れまでを防ぐことはできない。そのためキャパシタへの電路が半導体スイッチにより遮断されたとしても、わずかな電流であれ時間の経過とともにキャパシタを不要に充電してしまい、このキャパシタを用いての電圧計測を直ちに行うことができないなどの不都合がある。この点、上述のような構成によれば、メインキャパシタの両端子はいずれも、出力側半導体スイッチ及び差動増幅回路を介して基準電位に接続される、または、入力側半導体スイッチ及び外部回路を介して基準電位に接続される。これにより、入力側半導体スイッチや出力側半導体スイッチを介してリーク電流などが生じたとしても、電路のループが、基準電位、外部回路、入力側半導体スイッチ、出力側半導体スイッチ、差動増幅回路、及び基準電位として形成される。つまり、この電路のループ中にメインキャパシタが含まれない構成とすることができるようになる。これにより、半導体スイッチがオフのとき、わずかな電流が流れ、かつ、時間が経過したとしても、この電流によってメインキャパシタが充電される等の不都合は解消されるようになる。よって、電圧計測の間隔が長くなり、半導体スイッチのオフ時間が長くなったとしても、メインキャパシタが不要に充電されることはなく、メインキャパシタを用いての電圧計測をより正確かつ迅速に再開することができるようになる。
【0010】
好ましい構成として、前記外部回路は、前記二次電池の負極と基準電位との間に接続された漏電検出回路である。
このような構成によれば、二次電池からの漏電が検出できるようになる。
【0011】
好ましい構成として、前記メインキャパシタは、直列接続された複数のキャパシタより構成される。
このような構成によれば、キャパシタの耐電圧を低下させることができる。
【0012】
好ましい構成として、前記サブキャパシタには、抵抗と半導体スイッチとからなる直列回路が並列接続されている。
このような構成によれば、第1及び第2の差動増幅回路について積分回路を選択的に動作させることができるようになる。
【0013】
好ましい構成として、上記電池電圧計測回路において、前記第1の差動増幅回路の出力端子及び前記第2の差動増幅回路の出力端子と前記演算部との間には第3の差動増幅回路がさらに設けられており、前記第1の差動増幅回路の出力端子と前記第2の差動増幅回路の出力端子とが前記第3の差動増幅回路の反転入力端子及び非反転入力端子にそれぞれ接続され、前記演算部には前記第3の差動増幅回路の出力端子が接続されている。
【0014】
このような構成によれば、第1及び第2の差動増幅回路の出力端子の差分が第3の差動増幅回路によって得られるため演算部において差分の算出処理が不要になり演算処理を軽減させることができる。また、第1及び第2の差動増幅回路の出力にコモンモードノイズが混入されていたとしても、第3の差動増幅回路で両信号の差分を演算することでコモンモードノイズは除去されるようになる。
【発明の効果】
【0015】
この電池電圧計測回路によれば、フライングキャパシタへの電路が半導体スイッチによって開閉される場合であれ、フライングキャパシタを用いての電圧計測をより正確かつ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
図1を参照して、電池電圧計測回路を具体化した第1の実施形態について説明する。この電池電圧計測回路は、フライングキャパシタ式電圧検出回路を備え、複数の二次電池の電池電圧を計測する。二次電池は、1つの単電池、又は、直列接続された複数の単電池が直列接続される電池モジュールB1〜B14により構成されるニッケル水素二次電池である。複数の電池モジュールB1〜B14が直列接続されて組電池が構成され、この組電池は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載される。
【0018】
図1に示すように、組電池は、その負極が電池モジュールB1の負極端子となり、その正極が電池モジュールB14の正極端子となるように、複数の電池モジュールB1〜B14を直列接続させて構成されている。各電池モジュールB1〜B14は、その両極がそれぞれ入力側半導体スイッチSW1〜SW15を介して電圧検出回路に接続されている。すなわち、電池モジュールB1の負極端子には抵抗R1及び入力側半導体スイッチSW1が直列接続され、電池モジュールB1の正極端子及び電池モジュールB2の負極端子には抵抗R2及び入力側半導体スイッチSW2が直列接続される。また、電池モジュールB2の正極端子及び電池モジュールB3の負極端子には抵抗R3及び入力側半導体スイッチSW3が直列接続される。さらに、以下同様に、電池モジュールBn(但し、nは3〜12の整数)の正極端子及び電池モジュールBm(但し、mはn+1)の負極端子には抵抗Rm及び入力側半導体スイッチSWmが直列接続される。そして、電池モジュールB13の正極端子及び電池モジュールB14の負極端子には抵抗R14及び入力側半導体スイッチSW14が直列接続され、電池モジュールB14の正極端子には抵抗R15及び入力側半導体スイッチSW15が直列接続される。
【0019】
各抵抗R1〜R15は、通電電流を制限する電流制限抵抗として機能する。
入力側半導体スイッチSW1〜SW15のうち、入力側半導体スイッチSW2,SW4,SW6,SW8,SW10,SW12,SW14はメインキャパシタとしてのフライングキャパシタC1の一方の端子T1に接続される。また、入力側半導体スイッチSW1,SW3,SW5,SW7,SW9,SW11,SW13,SW15はフライングキャパシタC1の他方の端子T2に接続される。
【0020】
フライングキャパシタC1は、計測対象とする電池モジュールB1〜B14の電圧を保持するためのキャパシタであって、公知のキャパシタ(コンデンサ)が用いられる。なお、計測に必要とされる耐電圧及び静電容量を有している。
【0021】
フライングキャパシタC1の一方の端子T1は、出力側半導体スイッチSW20と抵抗R20とを介して第1の差動増幅回路20の反転入力端子に接続される。フライングキャパシタC1の他方の端子T2は、出力側半導体スイッチSW30と抵抗R30とを介して第2の差動増幅回路30の反転入力端子に接続される。
【0022】
第1及び第2の差動増幅回路20,30は、いわゆるオペアンプであって、作動増幅回路や積分回路を構成可能な公知の演算増幅器である。
第1の差動増幅回路20の非反転入力端子及び第2の差動増幅回路30の非反転入力端子(+)はそれぞれ基準電位Vccに接続される。さらに、第1の差動増幅回路20の反転入力端子(−)と出力端子との間にはサブキャパシタC20が接続されて積分回路を構成し、差動増幅回路30の反転入力端子と出力端子との間にはサブキャパシタC30が接続されて積分回路を構成する。サブキャパシタC20には、抵抗R21とスイッチSW21とからなる直列回路が並列接続され、サブキャパシタC30には、抵抗R31とスイッチSW31とからなる直列回路が並列接続されている。よって、スイッチSW21,SW31のオフによりそれぞれの積分回路が動作され、逆に、スイッチSW21,SW31のオンによりそれぞれの積分回路が非動作とされるように、スイッチSW21,SW31のオン/オフの切り替えにより積分回路が選択的に動作可能に構成される。なお、2つの抵抗R20,R30を同じ抵抗値、2つのサブキャパシタC20,C30を同じ静電容量、2つの抵抗R21,R31を同じ抵抗値とすることで、第1及び第2の差動増幅回路20,30を同様の特性とすることができるため好ましい。また、必要に応じて、それぞれ異なる抵抗値や、異なる静電容量とすることもできる。
【0023】
第1及び第2の差動増幅回路20,30の出力はそれぞれ、A/D(アナログデジタルコンバータ)を含む演算部10に接続される。なお、演算部10は、ECU(電子制御ユニット)などであって、公知の演算処理機能を備え、予め設定されるプログラムに従って演算処理を行う。
【0024】
ここで、各入力側半導体スイッチSW1〜SW15及び各出力側半導体スイッチSW20,SW30は、アナログスイッチやマルチプレクサ、ソリッドステートリレーなどの半導体スイッチで構成される。こうした半導体スイッチは、実用上は電路のオン/オフを切り替えることができるが、電路をオフしたとき、電路を完全に絶縁するのではなく、高抵抗で遮断する、逆に言えば、電路は高抵抗で接続された状態となっている。このため、半導体スイッチは、オフされていてもリーク電流などのわずかな電流を電路に流すことが避けられず、キャパシタを有する回路に用いられていた場合、オフのときに流れるわずかな電流が、時間の経過によってキャパシタを不要に充電させるおそれがある。よって、このように、キャパシタが不要に充電される回路構成である場合、正確な電圧を計測できなかったり、電圧を計測する前にキャパシタを放電しなければならないなどの手間が必要になる。そこで、本実施形態では、長期間の経過によってもキャパシタが不要に充電されるおそれを低減させるように回路を構成している。
【0025】
次に、このような電池電圧計測回路の動作について説明する。
このような構成において、電池モジュールB1〜B14の電圧が順次検出される。すなわち、まず、電池モジュールB1の電圧を検出する際、電池モジュールB1の負極及び正極に接続される2つの入力側半導体スイッチSW1,SW2をオンし、その他の入力側半導体スイッチSW3〜SW15をオフする。これにより、電池モジュールB1の電圧によりフライングキャパシタC1が充電され、電池モジュールB1の電圧がホールドされる。そして、フライングキャパシタC1を充電した後、2つの入力側半導体スイッチSW1,SW2をオフしてから、2つの出力側半導体スイッチSW20,SW30をオンにすることでフライングキャパシタC1と各差動増幅回路20,30が接続される。これにより、各差動増幅回路20,30と高圧の組電池とが電気的に遮断された状態で電池モジュールB1の電圧が検出される。つまり、第1の差動増幅回路20は、その反転入力端子にフライングキャパシタC1の一方の端子T1の電圧が印加され、その非反転入力端子に基準電位Vccが印加されることで、基準電位VccとフライングキャパシタC1の一方の端子T1の電圧との間の電圧差が一方の端子T1の電圧として検出される。第2の差動増幅回路30は、その反転入力端子にフライングキャパシタC1の他方の端子T2の電圧が印加され、その非反転入力端子に基準電位Vccが印加されることで、基準電位VccとフライングキャパシタC1の他方の端子T2の電圧との間の電圧差が他方の端子T2の電圧として検出される。
【0026】
そして、第1の差動増幅回路20が検出した一方の端子T1の電圧と、第2の差動増幅回路30が検出した他方の端子T2の電圧とが演算部(ECU)10に入力される。第1の差動増幅回路20の出力した一方の端子T1の電圧と第2の差動増幅回路30の出力した他方の端子T2の電圧とは、いずれも基準電位Vccに対する相対的な値であることから、これらの差分を算出することで、基準電位Vccの大きさが打ち消されて、フライングキャパシタC1の両端子T1,T2の間の電圧が正確に得られるようになる。以上のようにして、フライングキャパシタC1の電圧、すなわち電池モジュールB1の電圧を算出可能な信号が演算部10に入力されるようになる。演算部10は、2つの入力信号の差分から電圧を演算することができるためその処理を迅速かつ容易に行うことができる。
【0027】
他の電池モジュールB2〜B14のそれぞれについても、その負極端子及び正極端子に接続された各入力側半導体スイッチをオンしてフライングキャパシタC1を充電してから、各入力側半導体スイッチをオフすることでフライングキャパシタC1に電圧をホールドすることができる。その後、充電したフライングキャパシタC1の電圧を上述のように検出することができる。
【0028】
なお、入力側半導体スイッチSW1〜SW15や出力側半導体スイッチSW20,SW30のそれぞれのオン/オフの切り替えや、演算部10での電圧の算出などのタイミングは、図示しないECUなどの公知の制御装置によって指示される。
【0029】
ところで、上述したフライングキャパシタ式電圧検出回路とは別に、組電池には、組電池からの電気の漏電を検出する漏電検出回路12が接続されている。漏電検出回路12は、組電池の負極となる電池モジュールB1の負極端子と基準電位Vccとに接続される。漏電検出回路12は、周波数信号を送信する送信器(図示略)と周波数信号を受信する受信器(図示略)とを備える。漏電がない場合には、受信器で一定強度の周波数信号を受信するが、何らかの漏電が生じているとその受信強度が変化し、この強度変化を検出することで漏電の有無を検出する。なお、漏電検出回路としては、周波数信号を送信するもののほか、電位差から漏電の検出をするものなど公知の回路を用いてもよい。
【0030】
また、漏電検出回路12は、組電池と基準電位Vccとを監視して漏電を検出する構成であることから、組電池と基準電位Vccとの間を、高抵抗であれ電気的に接続させることとなる。よって、漏電検出回路12が組電池と基準電位Vccとの間にわずかな電流であれ、電流を流す経路を形成することが避けられないものとなっている。
【0031】
ところで従来、フライングキャパシタを直列接続した2つのキャパシタとして備えるとともに、それらキャパシタの接続点を半導体スイッチを介して基準電位Vccに接続させる構成とした回路がある。そして、この回路では、一方のキャパシタの両端子間の電圧差を第1の差動増幅回路20で検出し、他方のキャパシタの両端子間の電圧差を第2の差動増幅回路30で検出するようにしている。こうした回路では、2つのキャパシタは、半導体スイッチがオフされていれば、接続点に対応する各端子がそれぞれ基準電位から切り離される。ところが、上述したように半導体スイッチはオフの状態であってもわずかに電流を流すため、キャパシタはその接続点に対応する側の端子が半導体スイッチを介しつつも、基準電位Vccに接続されるかたちとなる。そのため、キャパシタの組電池に接続されている側の端子の電位と基準電位Vccとの間の電位差に対応してわずかな電流が流れ、時間の経過とともに各キャパシタが充電されることとなる。特に、組電池と基準電位Vccとの間に漏電検出回路12などの外部回路が設けられると、キャパシタを途中に含むかたちで電路のループが形成されることとなり、半導体スイッチがオフであってもキャパシタが充電される蓋然性が一層高まることとなっていた。そして、キャパシタが充電されてしまうと、このキャパシタを用いて電圧計測を行う際、正確な電圧を計測できなかったり、まず放電させなければならなくなるため電圧計測を直ちに再開できなかったりする。
【0032】
本実施形態では、フライングキャパシタC1の両端子は、出力側半導体スイッチSW20,SW30の接続される方向にはそれぞれ、出力側半導体スイッチSW20,SW30、抵抗R20,R30及び差動増幅回路20,30を介して基準電位Vccに接続される。また、フライングキャパシタC1の両端子は、入力側半導体スイッチSW1〜SW15の接続される方向にはそれぞれ、入力側半導体スイッチSW1及び漏電検出回路12、又は、各入力側半導体スイッチSW2〜SW15、各電池モジュールB1〜B14及び漏電検出回路12を介して基準電位Vccに接続される。よって、わずかな電流の流れる電路のループが、基準電位Vcc、漏電検出回路12、各電池モジュールB1〜B14又はこれを介さず、各入力側半導体スイッチSW1〜SW15、各出力側半導体スイッチSW20,SW30、各差動増幅回路20,30、そして、基準電位Vccとして構成される。つまり、このような電路のループは、その途中にフライングキャパシタC1を含まれない構成とすることができる。これにより、半導体スイッチがオフのとき、時間が経過しても、わずかに流れる電流によってフライングキャパシタC1が充電されることが防止又は抑制される。よって、電池電圧の計測間隔が長時間になるなどして半導体スイッチがオフされている時間が長くなったとしても、フライングキャパシタC1が不要に充電されるおそれがなく、電圧計測を迅速に再開することができるようになる。また、フライングキャパシタC1の各端子T1,T2は、それら端子T1,T2から基準電位Vccまでがいずれも同様の回路構成になるため、フライングキャパシタC1の両端子T1,T2間に電位差が生じて充電されるおそれも小さい。さらに、フライングキャパシタC1の各端子T1,T2は、基準電位Vccまでの間に半導体スイッチ以外にも抵抗R1〜R15,R20,R30や、差動増幅回路20,30又は漏電検出回路12が配置される。このため、フライングキャパシタC1は、その一方の端子が半導体スイッチのみを介して基準電位Vccに接続されている場合に比較して、その端子T1,T2が組電池との間で大きな電位差となるおそれが小さくなり、これによっても、わずかな電流により充電されるおそれが低減されるようになる。
【0033】
ところで、各入力側半導体スイッチSW1〜SW15を介して、フライングキャパシタC1の一方の端子T1には電池モジュールB1の負極の電位から電池モジュールB14の正極の電位までが接続され、フライングキャパシタC1の他方の端子T2には電池モジュールB1の正極の電位から電池モジュールB14の負極の電位までが接続されている。これにより、入力側半導体スイッチSW1〜SW15がオフのとき、わずかな電流が流れたとしてもフライングキャパシタC1の両端子T1,T2の電位は略等しくなるようになっている。よって、各電池モジュールB1〜B14が同様の電圧を出力するものであれば、入力側半導体スイッチSW1〜SW15がオフのとき、二次電池がフライングキャパシタC1を充電するおそれも抑制されるようになっている。
【0034】
そして、本実施形態の演算部10で正確に検出された電圧に基づいてSOCが精度よく算出されることで、この組電池の充放電を制御する電池制御装置などが組電池の充放電をより好適に行うことができるようになる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の電池電圧計測回路によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)半導体スイッチは、オフされることで実用上は回路を遮断することができるものの、リーク電流などのわずかな電流の流れまでを防ぐことはできない。そのためキャパシタへの電路が半導体スイッチにより遮断されたとしても、わずかな電流であれ時間の経過とともにキャパシタを不要に充電してしまい、このキャパシタを用いての電圧計測を直ちに行うことができないなどの不都合がある。この点、本実施形態によれば、フライングキャパシタC1の両端子T1,T2はいずれも、出力側半導体スイッチSW20,SW30及び差動増幅回路20,30を介して基準電位Vccに接続される、または、入力側半導体スイッチSW1〜SW15及び漏電検出回路12を介して基準電位Vccに接続される。これにより、入力側半導体スイッチSW1〜SW15や出力側半導体スイッチSW20,SW30を介してリーク電流などが生じたとしても、電路のループが、基準電位Vcc、漏電検出回路12、入力側半導体スイッチSW1〜SW15、出力側半導体スイッチSW20,SW30、差動増幅回路20,30、及び基準電位Vccとして形成される。つまり、この電路のループ中にフライングキャパシタC1が含まれない構成とすることができるようになる。これにより、半導体スイッチがオフのとき、わずかな電流が流れ、かつ、時間が経過したとしても、この電流によってフライングキャパシタC1が充電される等の不都合は解消されるようになる。よって、電圧計測の間隔が長くなり、半導体スイッチのオフ時間が長くなったとしても、フライングキャパシタC1が不要に充電されることはなく、フライングキャパシタC1を用いての電圧計測をより正確かつ迅速に再開することができるようになる。
【0036】
(2)組電池(電池モジュールB1)の負極と基準電位Vccとの間に漏電検出回路が接続されることで組電池(電池モジュールB1)からの漏電が検出できるようになる。
(3)各サブキャパシタC20,C30にはそれぞれ、抵抗R20,R30と出力側半導体スイッチSW20,SW30とからなる直列回路が並列接続されることで、第1及び第2の差動増幅回路20,30について積分回路を選択的に動作させることができるようになる。
【0037】
(4)ニッケル水素二次電池の電圧が高い精度で計測されるため、SOCの算出精度も高くなり、二次電池の充放電がより好適に調整されるようになる。
(第2の実施形態)
図2に従って、電池電圧計測回路を具体化した第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1及び第2の差動増幅回路20,30の各出力が第3の差動増幅回路に入力される点が第1の実施形態の構成と相違するものの、それ以外の点については同様である。そこで、以下では、第1の実施形態と相違する構成について詳細に説明することとし、同様の構成については同じ符号を付し詳細な説明を割愛する。
【0038】
図2に示すように、第1及び第2の差動増幅回路20,30と演算部10との間には、第3の差動増幅回路40が設けられている。第3の差動増幅回路40は、その反転入力端子に抵抗R40を介して第1の差動増幅回路20の出力端子が接続されている。また、第3の差動増幅回路40は、その非反転入力端子に抵抗R42を介して第2の差動増幅回路30の出力端子が接続されているとともに、抵抗R41を介して基準電位Vccに接続されている。第3の差動増幅回路40は、その出力端子と反転入力端子との間に抵抗R43が設けられており、これによって入力電圧の電位差を増幅する差動増幅回路を構成している。
【0039】
ここで、第3の差動増幅回路40の作用について説明する。
例えば、計測する電圧にコモンモードノイズが存在する場合、第1及び第2の差動増幅回路20,30の出力にはいずれもコモンモードノイズが混入することとなるが、第3の差動増幅回路40で両信号の差分を演算することでコモンモードノイズが除去される。そして、第3の差動増幅回路40は、その演算結果を演算部10に出力する。また、演算部10は、フライングキャパシタC1の両端子T1,T2の間の電圧が入力されるため、両端子T1,T2の電圧を示す信号がそれぞれ入力されて差分を演算する処理を行う場合に比較して処理が一層簡略化される。よって、演算部10は、演算処理を行うためのプログラムが簡略化されるとともに、処理がより迅速化されるようになる。
【0040】
以上の構成によっても、フライングキャパシタC1の電圧、すなわち各電池モジュールB1〜B14の電圧がそれぞれ正確に検出されるようになる。
以上説明したように、本実施形態に係る電池電圧計測回路は、上記第1の実施形態にて記載した(1)〜(4)の効果に加えて、以下に記す効果を有する。
【0041】
(5)第1及び第2の差動増幅回路20,30の出力端子の差分が第3の差動増幅回路40によって得られるため演算部10において差分の算出処理が不要になり演算処理を軽減させることができる。また、第1及び第2の差動増幅回路20,30の出力にコモンモードノイズが混入されていたとしても、第3の差動増幅回路40で両信号の差分を演算することでコモンモードノイズは除去されるようになる。
【0042】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
・上記各実施形態では、外部回路が漏電検出回路である場合について例示した。しかしこれに限らず、外部回路は、組電池と基準電位との間に介在するものであれば、その他の検出回路や、制御回路、通信回路などであってもよい。
【0043】
・上記各実施形態では、電池モジュールB1〜B14が直列接続されている場合について例示したが、これに限らず、並列接続されている電池モジュールの電圧をまとめて、又は個別に計測するようにしてもよい。
【0044】
・上記各実施形態では、電池モジュールB1〜B14のそれぞれについて電圧を計測する場合について例示したが、これに限らず、直列接続されている複数の電池モジュールの電圧を計測するようにしてもよい。これにより、計測に要する時間を短くすることができる。また、異常箇所を絞り込めれば、絞り込まれた範囲にある複数の電池モジュールについて個別に電圧計測することもできる。
【0045】
・上記各実施形態では、電池モジュールB1〜B14の数が14個である場合について例示した。しかしこれに限らず、電池モジュールは、14個よりも少なくてもよいし、14個よりも多くてもよい。
【0046】
・上記各実施形態では、第1及び第2の差動増幅回路を選択的に積分回路とすることができる場合について例示した。しかしこれに限らず、第1及び第2の差動増幅回路を常に積分回路とするようにしてもよい。
【0047】
・上記各実施形態では、フライングキャパシタが1つである場合について例示した。しかしこれに限らず、フライングキャパシタは、直列接続される複数のキャパシタから構成されていてもよい。複数のキャパシタを用いることでキャパシタの耐電圧を低く抑えることも可能になる。
【0048】
また、例えば、直列接続される2つのキャパシタの接続点を基準電位に接続する回路を備える従来の電池電圧計測回路において、接続点から基準電位への電路を機械的に遮断することで本実施形態の構成を適用することも容易である。
【0049】
・上記各実施形態では、電池モジュールB1〜B14は、ニッケル水素二次電池である場合について例示した。しかしこれに限らず、電池は、リチウムイオン二次電池やニッケルカドミウム二次電池などのアルカリ二次電池やその他の二次電池であってもよい。
【0050】
・上記各実施形態では、二次電池が電池モジュールB1〜B14である場合について例示した。しかしこれに限らず、二次電池は、単電池や、電池ブロックや、組電池などであってもよい。
【0051】
・上記各実施形態では、二次電池が搭載される車両が電気自動車やハイブリッド自動車などである場合について例示した。しかしこれに限らず、車両は、バッテリーを搭載するガソリン自動車やディーゼル自動車などであってもよい。また、二次電池は、電源として必要とされるのであれば、自動車以外の移動体や、固定設置される電源として用いられてもよいし、モータ以外の電源として用いられてもよい。例えば、自動車以外の電源としては、鉄道、船舶、航空機やロボットなどの移動体や、情報処理装置などの電気製品の電源などが挙げられる。