【実施例】
【0069】
実施例1. EGFR T790M変異検出のためのSelectorアッセイの設計
Selectorアッセイの1つの様式は、非対称PCR(10〜20倍過剰のリバースプライマーを用いる)、およびフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)による逆鎖のエンドポイント融解曲線解析検出を用いる。FRET対は、それぞれ6-FAMおよびLC Red 640またはAlexa Fluor 546フルオロフォアに連結されたセレクターおよびレポーターオリゴヌクレオチドである。ここで用いられるセレクターオリゴヌクレオチドは、15-mer(そのTmを上昇させるために2'-フルオロヌクレオシド置換を有する)である。セレクターは野生型配列と相補的であり、野生型増幅のブロッカーとして働く。加えて、フォワードプライマーとセレクターの間には6ヌクレオチドの重複が存在する。セレクター濃度は、フォワードプライマーが野生型鋳型に結合するのを打ち負かすために、典型的には4倍高いレベルで用いられた。野生型特異的ヌクレオチドが中央に位置し、かつその親和性が増加しているため、セレクターは変異体と野生型鋳型との間の有意なTmの違いを示す。セレクターAの場合には、この違いは約13℃である(
図2もまた参照されたい)。レポーターは、セレクターが解離し始める温度で標的に結合しているように、セレクターよりも約10℃高いTmを有するように設計された。融解温度のこの違いのために、融解曲線解析によって変異体と野生型鋳型を区別することが可能になる。
【0070】
実施例2. Kapa HiFi反応条件下でセレクターおよびレポーターオリゴヌクレオチドプローブを用いる野生型および変異体合成標的の検出
0.4μMの合成の変異体または野生型標的のいずれかと共に、1×HiFi緩衝液、0.4μMセレクターA(6-FAM標識)、0.4μMレポーターA(LC Red 640標識)を含む10μl反応容積を混合した。混合物を95℃まで5分間加熱し、その後98℃で30秒および57℃で30秒の2サイクルを行った。次に解離曲線解析を行った(95℃で1分、45℃で30秒、次に1%勾配で95℃にする)。カスタム設定LC Red 640チャネルにおいて、LC Red 640 FRETシグナルを検出した。
【0071】
実施例3. AmpliTaq(登録商標) DNAポリメラーゼ、Stoffel断片(Life Technologies)によるPCRを用いたSelectorアッセイ
1×Stoffel緩衝液(10 mM KCl、10 mM Tris-HCl、pH 8.3)、4 mM MgCl
2、0.3 mM Cleanamp dNTP(TriLink Biotechnologies)、0.1μMフォワードプライマー、1μMリバースプライマー、0.4μMセレクターA(6-FAM標識)、0.4μMレポーターB(Alexa Fluor 546標識)、2 U Stoffel断片、および表示量のゲノムDNAを含む10μl反応容積中で反応を行った。PCR反応液を384-ウェルプレート上に負荷した。ABI 7900HT機器において、以下のサイクル条件:94℃で3分、94℃で30秒および60℃で30秒の55サイクルでPCRサイクルを行い、その後解離曲線解析を行った(94℃で1分、45℃で30秒、次に1%勾配で94℃にする)。TAMRAチャネルにおいて、Alexa Fluor 546 FRETシグナルを検出した。PCR反応はABI 7900HT機器で実行した。実行終了時の解離曲線解析から、変異体産物と野生型産物との間に約7℃の違いがあることが示される。
【0072】
実施例4. 高忠実度Kapa HS DNAポリメラーゼを用いた、複雑なバックグラウンドにおける変異体T790M検出のSelectorアッセイ
1×HiFi緩衝液(2mM MgCl
2および他の成分を含む)、0.3 mM dNTP、0.1μMフォワードプライマー、2μMリバースプライマー、0.4μMセレクターA(6-FAM標識)、0.4μMレポーターA(LC Red 640標識)、0.4 U KAPA HiFiホットスタートDNAポリメラーゼ(Kapa Biosystems)、および表示量のゲノムDNAを含む10μl反応容積中で、KAPA HiFiホットスタートDNAポリメラーゼによるPCRを行った。PCR反応液を384-ウェルプレート上に負荷した。ABI 7900HT機器において、以下のサイクル条件:95℃で5分、98℃で30秒および57℃で30秒の55サイクルでPCRサイクルを行い、その後解離曲線解析を行った(95℃で1分、45℃で30秒、次に1%勾配で95℃にする)。カスタム設定LC Red 640チャネルにおいて、LC Red 640 FRETシグナルを検出した。6.6 ngの野生型DNAのバックグラウンドにおいて、14 pgおよび28 pgの変異体DNAが検出された。より多量の変異体DNA(28 pg)は、10件の反応のうち9件で変異体ピークを示す結果を示し、1件の反応は野生型の融解温度においてより低いピークを示した。6.6 ngの野生型を伴う14 pgの変異体に関しては、10件の反応のうちの6件が変異体ピークを示し、残りの反応は、野生型により近い融解温度を有するより低いピークを示した。
【0073】
実施例5. T790M変異に関するSelector Plusアッセイ
このアッセイ法は(Selectorアッセイの場合と同様に)野生型増幅のブロッカーを用いるが、Selector Plusアッセイでは、ブロッカーは3'末端においてLC Red 640またはAlexa Fluor 546フルオロフォアのいずれかを含む(これはやはり融解曲線解析のためのFRET対として機能する、以下を参照されたい)。加えて、レポーターは、アニーリング/伸長段階中に蓄積するPCR産物のリアルタイム検出を可能にする二重標識プローブである。レポーターは、5'末端においてまたは5'末端の近くで6-FAM標識により標識され、3'末端においてDabcylクエンチャーにより標識される。レポーターの設計は、アニーリング/伸長条件(56〜60℃)下で、標的の非存在においてレポーターのステム構造がループを生じ、これが6-FAMをDabcylクエンチャーにごく接近させて、非常に低いバックグラウンドをもたらすというものである。単位複製配列の存在下では、レポーターはステムループ構造を開いて結合する。増加する6-FAM蛍光の量は、存在する単位複製配列の量と相関する。リアルタイム検出を用いて、大過剰の野生型分子を含む試料中のT790M変異体分子の存在を同定する。これは、Cq値を、公知の量のT790M変異体および野生型のCq値と相関させることによって行う。リアルタイムCq値がミスマッチの存在を示す場合、それらをミスマッチの存在について検証する。これは、イミノビオチンを用いて2本の鎖のうちの一方を選択的に捕捉し、融解曲線解析および配列決定を実施することによって行う(
図8を参照されたい)。
【0074】
イミノビオチンは、アビジンに対してpH依存的結合定数を有する。イミノビオチンは、pH 10では結合しており、pH 4ではアビジン樹脂から溶出され得る。
【0075】
磁性アビジンビーズ(Spherotech, Inc.)を用いて、イミノビオチン含有鎖を捕捉する。熱、低塩、および変性剤の組み合わせによって、非イミノビオチン化鎖をイミノビオチン化鎖から分離する。単離されたイミノビオチン化鎖を、pH 4において磁性アビジンビーズから溶出する。次に、単離されたイミノビオチン化鎖、セレクターおよびレポーター(FRET対として働く)を混合し、(実施例4に記載される通りに)解離曲線を実行することにより、融解曲線解析を行う。検出は、LC Red 640チャネルまたはAlexa Fluor 546チャネルにおいて行う。配列決定反応は、製造業者の説明書に従って、BigDye(登録商標)ターミネーターv 1.1サイクル配列決定キットと共にイミノビオチン化鎖および/または非イミノビオチン化鎖を用いることによって行う。配列決定反応物を、解析のためにABI3730 DNA分析装置に供試する。
【0076】
(表1)Selectorアッセイに用いられるオリゴヌクレオチド
[
*はホスホロチオエート結合を示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す]
【0077】
(表2)Selector Plusアッセイのためのオリゴヌクレオチド
[
*はホスホロチオエート結合を示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す]
【0078】
実施例6. Selectorアッセイを用いた、複雑な野生型ゲノムバックグラウンドにおける稀な変異体の検出
漸増量のH1975ゲノムDNA(それぞれ7、70、700、および7000コピーのT790Mに相当する0.05 ng、0.5 ng、5 ng、または50 ng)を、50 ng ABR16965ゲノムDNA(約14000コピーの野生型対照)の存在下または非存在下でSelectorアッセイにおいて使用した(すべての反応がセレクターを伴う)。
図9を参照されたい。増幅データをプロットし、グラフに示した(左パネル)。50 pg H1975と50 ng ABR16965の混合物のSelectorアッセイ反応物の融解曲線解析および配列決定データを示す(変異体コピーと野生型コピーの1:2000混合物)。T790M変異に特異的なヌクレオチド(A)を配列ピークの上に矢印で示し、セレクターの結合する領域を四角で示す。
【0079】
結果:
漸増量のH1975ゲノムDNA(7コピーから約7000コピーまで)を、セレクターおよび約14000コピーのABR16965ゲノムDNA(野生型対照)の存在下で、Selectorアッセイにおいて使用した。増幅データグラフから見られ得るように、野生型対照DNAの存在は、T790M変異体の増幅に最小限に影響を及ぼす(H1975のグラフをH1975+ABR16965のグラフと比較)。試験した濃度にわたってSelector(商標)アッセイが直線回帰を示すことが明白であり、試験した範囲にわたってこのアッセイ法が定量的であることが示される。また、変異体の融解曲線ピークを示す融解曲線解析、および配列決定の結果から、50 pg H1975(7コピーのT790M)を50 ngのABR16965(14000コピーのEGFR)と混合した場合に、T790M変異が検出され得ることが示される。T790M変異体はまた、野生型DNAと混合した場合に、より多量のH1975を用いても検出され得る(データは表示せず)。したがって、ここでのデータから、変異体DNAを1:2000もの比率で野生型DNAと混合した場合に、Selector(商標)アッセイがこれを検出できたことが示される。
【0080】
方法:
Selectorアッセイ反応は、以下の成分:0.2μMフォワードプライマー(
;
*はホスホロチオエートを示す)、2μMリバースプライマー(
;
*はホスホロチオエートを示す)、0.3μMセレクター6(
;
*はホスホロチオエートを示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す)、0.6μMレポーター4(
;
*はホスホロチオエートを示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す)、3 mM MgCl
2、0.4 mM dNTP、0.4 U Kapa HiFiホットスタートDNAポリメラーゼ(Kapa Biosystems、Cat. No. KK2101)、1×HiFi緩衝液、0.2μl ROX参照色素(LifeTechnologies、Cat. No.12223-012)を含む10μl容積中で行った。PCR反応液を384-ウェルプレート上に負荷し、ABI 7900HT機器において以下のサイクル条件:95℃で5分、次の98℃で20秒、61℃で30秒、52℃で1分、69℃で15秒の55サイクルでPCRサイクルを行い、その後解離曲線解析を行った(95℃で1分、40℃で30秒、次に1%勾配で95℃にする)。52℃のサイクル段階中に6-FAMおよびLCRed640蛍光をモニターすることによって、増幅産物の検出を行った。融解曲線解析については、40℃から95℃への移行中に、LCRed640シグナルをモニターした。
【0081】
サンガー配列決定については、PCR産物をQIAquick PCR精製キット(Qiagen)で精製し、配列決定プライマーT790M seq6
と共に、製造業者の説明書に従ってBigDye(登録商標)ターミネーターv1.1サイクル配列決定キット(LifeTechnologies、Cat. No. 4337449)を用いて、配列決定反応を行った。Centri-Sep(商標)カラム(LifeTechnologies、Cat. No. 401762)を用いて配列決定反応物を精製し、3730 DNA分析装置で解析した。
【0082】
実施例7. Selectorアッセイを用いた野生型増幅の阻害の実証
肺癌血液試料のWGA材料由来の野生型鋳型を用いて、Selectorアッセイを行った。
図10を参照されたい。セレクターの存在下または非存在下における野生型鋳型の増幅を示す。セレクターの存在下または非存在下においてH1975ゲノムDNA標準物質(0.05 ng、0.5 ng、5 ng、および50 ng)を用いてSelectorアッセイを行うことによって得られた検量線中に、検出されたコピーをプロットする(セレクターを含む反応における検量線のみを示す)。
【0083】
結果:
T790Mについて陰性であることが判明した肺癌血液試料由来のWGA材料を用いて、野生型鋳型を作製した。これを行うために、WGA材料を15サイクルかけて前もって増幅して、T790M変異領域を含む228 bp PCR断片を作製し、これを次にSelectorアッセイにおいてネステッドPCRに用いた。
図10中の増幅曲線から見られ得るように、Selectorアッセイ反応にセレクターを添加すると、野生型鋳型の増幅は阻止され、55サイクルまで検出不可能である。野生型コピーの数は、H1975ゲノム標準物質と同じプレート上で実行した検量線により決定し、約10800と算出された。
【0084】
方法:
本実験で用いられるWGA材料は、
図13および14について記載されるようにCEE(商標)マイクロチャネルを用いて調製された肺癌血液試料に由来する。セレクターおよびレポーターを用いず、サイクルを15サイクル行い、かつ融解曲線解析を省略したことを除いて、
図1について記載されるようなSelectorアッセイ反応条件下で、フォワードプライマーFP19(
;
*はホスホロチオエートを示す)およびリバースプライマーRP14(
;
*はホスホロチオエートを示す)を用いて、WGA材料を前もって増幅した。得られた材料を10 mM Tris-HCl、pH 8.0、0.1 mM EDTAで50倍希釈し、
図9について記載されるように、セレクターの存在下または非存在下でSelectorアッセイ反応において使用した。
【0085】
実施例8. 肺癌患者の血漿から単離された核酸を用いたSelectorアッセイ
肺癌患者血漿試料から調製された核酸を、T790M Selectorアッセイにおいて使用した。Selectorアッセイ反応を、セレクターの存在下または非存在下で行った。後者の条件は、野生型配列の増幅を可能にし、反応条件および血漿調製物中の核酸の存在の対照として役立つ。変異体および野生型の融解曲線ピークの位置を表示して、SelectorアッセイPCR産物の融解曲線解析を示す。−セレクターPCR反応物の融解曲線解析については、増幅後にセレクターおよびレポーターを添加した。Selectorアッセイ反応産物を配列決定して、変異体T790M配列(CAT)または野生型配列(CGT)の存在を確認した。配列の下に四角で示したセレクターは、セレクター結合の位置を示す。
【0086】
結果:
セレクターの非存在下および存在下でSelectorアッセイを用いて、肺癌患者の血漿から核酸を調製した。セレクターの存在下におけるリアルタイムPCRの結果は、検出される変異体増幅を示す(6-FAMおよびLCRed640チャネルにおける+セレクター反応を参照されたい)。増幅産物の融解曲線解析によって、変異体配列の増幅がさらに確認された。+セレクター反応物の融解曲線ピークは、−セレクター反応物において観察される野生型融解曲線ピークよりも約13℃低いTmを示した。変異の存在を確認するために、+セレクターのPCR産物を配列決定し、T790Mに特有の変異が同定された。−セレクターPCR産物の配列決定は、野生型配列の同定をもたらす。検量線に基づき(
図11B)、血漿3 ml中に見出されるT790Mコピーの数は577であり、見出されるEGFRコピーの数は46348であった。
【0087】
方法:
肺癌患者(18299)由来の血液(約8 ml)をCEE-Sure(商標)チューブ(Biocept, Inc.;抗凝集試薬を含む)中に採取し、血液採取の48時間以内に、血漿部分由来の核酸を調製した。これを行うために、全血を3000×g、RTで5分間遠心し、得られた血漿画分を16000×g、4℃で10分間再度遠心した。約3 mlの血漿上清を、以下の修正を加えて、製造業者の説明書に従ってQIAamp循環核酸キット(Qiagen、Cat. No. 55114)を用いる核酸の調製に使用した:プロテイナーゼK消化を60℃で60分間行い、キャリアーRNAの添加を省略し、提供される溶出緩衝液を20μl用いて溶出を行った。
【0088】
血漿由来の核酸調製物(全量約17μl)のうちの1μlを、以前に記載されたように10μlのT790M SelectorアッセイPCR反応において直接使用した。
【0089】
セレクターの非存在下で実行したSelectorアッセイ反応からのPCR産物の融解曲線プロファイルを決定するには(上記の−セレクターを参照されたい)、増幅後にセレクターおよびレポーターを添加し、以前に記載されたのと同じ条件下で解離曲線解析を実行した。
【0090】
図11Aに示される血漿核酸反応の増幅データを、検量線グラフ上にプロットした。検量線は、セレクターの存在下または非存在下で、漸増量のH1975ゲノムDNAを用いてSelector(商標)アッセイを行うことによって得られた。反応は、血漿核酸と同じプレート上で実行した。
【0091】
実施例9. 肺癌患者の血漿に由来するmRNAのSelectorアッセイ
肺癌患者(18280)の核酸試料から調製されたcDNAを、以前に記載されたように(実施例8を参照されたい)、セレクターの存在下または非存在下で実行するSelectorアッセイにおいて使用した。cDNAを用いる反応を2つ組で実行した。反応の一方は、セレクターの存在下での増幅を示した。50 pg H1975(セレクターの存在下における約7コピーのT790M)の増幅を、同じグラフ上に示す。増幅産物の融解曲線プロファイルは変異体に対応し、配列決定により、増幅されたPCR産物中にT790M変異が存在することが確認された。
【0092】
方法:
臨床肺癌試料のDNAse I処理した核酸から、Superscript III第1鎖合成系(LifeTechnologies Cat. No. 18080-051)を用いてcDNAを調製した。キットによって提供されるオリゴ(dT)を使用し、製造業者の説明書に従って合成を行った。
【0093】
結果:
本発明者らは、肺癌血漿試料由来のcDNA調製物中にT790M変異体の存在を検出した。血漿3 ml中に、T790Mの約8つのRNAコピーが検出された。
【0094】
実施例10. Biocept CEE(商標)マイクロチャネルから回収した細胞のSelectorアッセイ
全血中のH1975を用いた添加および回収実験の増幅データを示す。
図13Aを参照されたい。漸増量のH1975ゲノムDNA対照を用いる反応から得られた検量線グラフ中に、データをプロットした(上パネル)。セレクターの存在下での反応は、添加したH1975細胞(漸増数の添加A、添加B、および添加C)の定量を可能にするのに対して、セレクターの非存在下での反応は、マイクロチャネル溶出液中に見出されるバックグラウンド細胞(WBC)の定量を可能にする。
【0095】
図13Aからの増幅産物を、融解曲線解析によって解析した。
図13Bを参照されたい。−セレクターPCR反応物の融解曲線解析については、増幅後にセレクターおよびレポーターを添加した。変異体および野生型の融解曲線ピークの位置を表示する。試料をサンガー配列決定反応において用いて、変異体または野生型配列の存在を確認した。セレクター結合の位置を配列の下に示す。
【0096】
方法:
漸増数のH1975細胞を、CEE-Sure(商標)チューブ中の全血に添加した。バフィーコートを調製し、EpCAMを含む癌細胞の表面上のマーカーを特異的に認識するビオチン化抗体のカクテルと共にインキュベートした。次にバフィーコートを、ストレプトアビジンコーティングしたマイクロチャネル(CEE(商標)マイクロチャネル、Biocept, Inc.)に通した。サイトケラチン染色により、捕捉されたH1975細胞を可視化し、数え上げ、その後チャネルから溶出した。プロテアーゼによる消化および酵素の不活化の後、1μlを(実施例9に記載される通りに)Selectorアッセイにおいて使用した。
【0097】
結果:
添加したH1975細胞を、BioceptのCEE(商標)マイクロチャネルを用いて全血から回収した。添加A、添加B、および添加Cは、(溶出前後のマイクロチャネルのCK+染色により判断して)それぞれ0個、3個、および16個細胞/μlマイクロチャネル溶出液を含んでいた。溶出およびプロテアーゼ消化後、ゲノムDNA材料を、セレクターの存在下または非存在下でSelectorアッセイにおいて使用した。検量線に基づき、添加A、添加B、および添加C中で検出されたH1975細胞の数は、それぞれ0個、3個、および36個/μlマイクロチャネル溶出液であった。したがって、Selector(商標)アッセイの結果は、マイクロチャネルの結果と厳密に一致する。
【0098】
実施例11. Biocept CEE(商標)マイクロチャネルから回収し、WGAを用いて増幅した細胞のSelectorアッセイ
実施例9において解析したのと同じ添加および回収反応物を全ゲノム増幅し、セレクターの存在下でSelectorアッセイ反応において使用した。それぞれ0個、3個、および16個細胞/マイクロチャネル溶出液を含んだ添加A、添加B、および添加CからのWGA反応物の増幅データおよび融解曲線解析を
図14Aに示す。セレクター反応は2つ組で実行し、両方の反応の結果を示す。
【0099】
増幅を示した、WGA材料を用いて行ったSelectorアッセイ反応物(添加Bおよび添加C)を配列決定して、変異の存在を検証した。T790M特異的変異(CAT)の位置を示す。
図14Bを参照されたい。セレクター結合の領域を、配列の下に四角で表示する。
【0100】
結果:
上記の添加および回収実験からのゲノムDNA材料を全ゲノム増幅(WGA)し、T790M変異の存在についてSelectorアッセイにおいて試験した。WGA反応に、それぞれH1975細胞6個またはH1975細胞32個を含む添加Bおよび添加C試料を鋳型として用いた場合に、増幅が検出された(方法を参照されたい)。予測通り、添加A(H1975細胞0個)試料は増幅を示さなかった。融解曲線解析および配列決定の結果から、添加Bおよび添加C試料において、WGA材料中にT790M変異が存在することが確認された。したがって、Selectorアッセイは、マイクロチャネル溶出細胞由来のWGA材料とも首尾よく用いられ、6個ほどの細胞同等物がWGA増幅され、Selectorアッセイを用いて検出された。
【0101】
方法:
製造業者の説明書に従ってRepli-gミニキット(Qiagen)を用いて、チャネルから溶出されたH1975材料の全ゲノム増幅を行った。マイクロチャネルから溶出されたH1975材料のうちの2μlを、WGA反応に用いた(添加A:0個細胞/μl、添加B:3個細胞/μl、添加C:16個細胞/μl)。増幅されたDNAを10 mM Tris-HCl pH 8.0、0.1 mM EDTAで40 ng/μlに希釈してから、Selectorアッセイに添加した。Selector(商標)アッセイは、1 mM EGTAを反応に添加したことを除いて、実施例9について記載された通りに行った。
【0102】
実施例12. 重複するフォワードプライマーを用いたSelectorアッセイ
セレクターの存在下または非存在下で野生型鋳型を使用して、セレクターと重複するフォワードプライマーを用いたSelectorアッセイを行った。
図15Aを参照されたい。セレクターおよび野生型鋳型の存在下における50 pg H1975の増幅もまた試験した。Selectorアッセイ反応のリアルタイムPCRおよび融解曲線解析を示す。−セレクターPCR反応物の融解曲線解析については、増幅後にセレクターおよびレポーターを添加した。
【0103】
結果:
Selectorアッセイにおいて、セレクターと重複するフォワードプライマーを用いた。異なる量の野生型鋳型を試験して、セレクターによって増幅が効率的に阻止されるが、同じ反応液中に存在する50 pg H1975変異体ゲノムDNAの効率的な増幅をなお可能にする野生型鋳型の量を決定した。用いた条件下において、約800コピーの野生型鋳型(セレクターの非存在下で実行した検量線に基づく算出;データは表示せず)が、増幅について阻止されるが、同じ混合物中に存在する約7つの変異体コピー(50 pg H1975)の増幅を可能にすると判断された(
図15Aを参照されたい)。セレクターの非存在下における野生型鋳型(
図15B、パネルAを参照されたい)、およびセレクターの存在下における野生型鋳型と50 pg H1975変異体の混合物(
図15B、パネルBを参照されたい)のSelector(商標)アッセイ反応物を配列決定して、増幅された鋳型の同一性を確認した。
【0104】
方法:
Selectorアッセイ反応および配列決定は、フォワードプライマーFP14ovl(
;
*はホスホロチオエートを示す)をSelectorアッセイに用いたことを除いて、まさに実施例9について記載された通りに行った。野生型鋳型は実施例10に記載されるように作製し、10 mM Tris-HCl pH 8.0、0.1 mM EDTA中の1000倍希釈物のSelectorアッセイデータを示す。
【0105】
実施例13. 増幅中に配列エラーを導入し、性能を低下させる忠実度の低い酵素
本実施例では、以前の実施例において用いられた高忠実度/修復酵素Kapa HiFiホットスタートDNAポリメラーゼの代わりに、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼを使用した。酵素の変更以外は、変性を95℃までわずかに下げ、かつ増幅緩衝液中で3 mM Mg
++を用いることを除いて、反応条件は実施例6における条件と同等であった。いずれの変更も、AmpliTaq酵素の要件に合わせるためになされた。
図16中、矢印は、AmpliTaq Goldの低忠実度と関連して配列中に導入されたG>Aエラーを示す。T790M変異においてAに変化するGヌクレオチド(WTとして表示)もまた示してある。セレクター結合の領域を、配列の下に四角で表示する。Kapa HiFi酵素を用いてこれと同じアッセイが行われる場合には、有意な増幅は起こらず、任意の有意な取り込みエラーが導入されるという証拠もない(実施例7を参照されたい)。
【0106】
本実施例は、鍵となる2つの要因を説明する。第一に、Selectorアッセイは、3'エキソヌクレアーゼ修復活性を有する、Kapa HiFi酵素のような高忠実度酵素を用いて行った場合に、より優れた性能をもたらした。Selectorアッセイは稀な事象を検出する目的で使用されるため、酵素によって導入されるいかなるエラーもアッセイの性能を損ない得る。したがって、高忠実度酵素を、ヌクレアーゼから保護されたプライマー、ブロッカー、およびプローブと組み合わせて使用することができる。第二に、本実施例において、セレクターの使用、および変異の増幅を可能にしながら、野生型シグナルを抑制するその能力は、任意のポリメラーゼ駆動性増幅反応の高感度モデルを提供する。したがって、本実施例は、ヌクレアーゼ耐性プライマーと高忠実度酵素の組み合わせ、または3'エキソヌクレアーゼ修復活性を有する酵素の組み合わせが、任意のポリメラーゼ依存的増幅反応の性能を高め、その反応の配列忠実度をより高い程度に維持するという直接的証拠を提供する。これらの方法は、エマルジョンPCRおよび固相PCRを含む任意のPCR反応、ならびに次世代配列決定およびプラットフォームへの適用において使用することができる。
【0107】
Selectorアッセイは、野生型配列のフォワードプライマーによる増幅を高度に抑制する。同時に、リバースプライマーは線形増幅をなお駆動する。組み合わされたこの非常に低レベルの増幅期中に、セレクターのフットプリント内で取り込みエラーが起こった場合、セレクターによる阻止は減少し、指数関数的増殖が起こる。これに加えて、AmpliTaq Goldを用いた場合、1つまたは複数の誤取り込みエラーが日常的に観察される。したがって、本発明の方法と共に高忠実度ポリメラーゼを使用することで、このようなエラーを減少させるかまたは防ぐことができる。
【0108】
結果:
AmpliTaq Gold(登録商標) DNAポリメラーゼおよび約680コピーの野生型鋳型(実施例7に記載される通りに調製)を用いて、セレクターの存在下でSelectorアッセイを行った。同量の野生型鋳型を、セレクターの存在下で、Kapa HiFiホットスタートDNAポリメラーゼと共にSelectorアッセイにおいて用いた場合には、いかなる検出可能な増幅産物も生じなかった(55サイクルの増幅後)。しかしながら、セレクターの存在下で、同様のサイクル条件下で(および5 mM、7 mM、または10 mM MgCl
2と共に)、AmpliTaq DNAポリメラーゼを用いると、いずれの場合にも増幅産物が認められ、融解曲線ピークは変異体産物の存在を示した(
図16以外のデータは表示せず)。個々のウェルからの変異体産物の配列決定により、セレクター結合の領域中に異なる変異が存在することが明らかになる(
図16)。ここで示される例はG>A変異である。頻繁に観察される別の変異は、T790MヌクレオチドG>A変化である。このことから、セレクターの存在が、酵素によって導入された変異の選択的増幅を引き起こし得ることが示される。この場合もやはり、本発明の方法と共に高忠実度ポリメラーゼを使用することで、このようなエラーを減少させるかまたは防ぐことができる。
【0109】
方法:
AmpliTaq Gold(登録商標) DNAポリメラーゼを用いるSelectorアッセイ反応は、以下の成分:0.2μMフォワードプライマー(実施例6に記載されるものと同じ)、2μMリバースプライマー(実施例1に記載されるものと同じ)、0.3μMセレクター6(実施例6に記載されるものと同じ)、0.6μMレポーター4(実施例6に記載されるものと同じ)、5 mM MgCl
2、0.2 mM dNTP、3 U AmpliTaq Gold(登録商標)(LifeTechnologies、Cat. No. 4311814)、1×PCR gold緩衝液(15 mM Tris-HCl pH 8.0、50 mM KCl)、0.2μl ROX参照色素(LifeTechnologies、Cat. No.12223-012)を含む10μl容積中で行った。PCR反応液を384-ウェルプレート上に負荷し、ABI 7900HT機器において以下のサイクル条件:95℃で5分、次の95℃で20秒、61℃で30秒、52℃で1分、69℃で15秒の55サイクルでPCRサイクルを行い、その後解離曲線解析を行った(95℃で1分、40℃で30秒、次に1%勾配で95℃にする)。52℃のサイクル段階中に6-FAMおよびLC-Red 640蛍光をモニターすることによって、増幅産物の検出を行った。融解曲線解析については、40℃から95℃への移行中に、LC-Red 640シグナルをモニターした。サンガー配列決定は、まさに実施例6に記載される通りに行った。
【0110】
実施例14. 単純なFRETレポーター系を用いるSelectorアッセイ
Selectorアッセイ増幅および融解曲線解析を行い、FAM標識ブロッカー(ブロッカー8)およびLC-Red 640標識アンカー(アンカー5)の存在下で行った反応について示す。示されるこの実験では、実施例6に記載されるリバースプライマーと組み合わせて、ブロッカーと重複するフォワードプライマーを使用した(詳細については方法を参照されたい)。50 pg H1975ゲノムDNA(約7コピーのT790M変異体を含む)または約1100コピーの野生型EGFR DNA鋳型(実施例7に記載される通りに調製)のいずれかを用いて、Selectorアッセイを行った。増幅産物を、リアルタイムPCRグラフ中に矢印で示す。(NTC:鋳型なし対照)。
【0111】
結果:
FAM標識ブロッカー(ブロッカー8)、LC-Red 640標識アンカー(アンカー5)、ブロッカーと重複するフォワードプライマー、および以前の実施例で用いられたリバースプライマーを用いて、Selectorアッセイを行った。50 pg H1975ゲノムDNAにおける変異体増幅は検出されたが(約7コピーのT790M変異体)、約1100コピーの野生型EGFR DNA鋳型は効率的に阻止され、いかなる増幅も示さなかった。7コピーのH1975をおよそ1100コピーの野生型EGFRと混合したところ、やはり変異体増幅が示された。
【0112】
方法:
Selectorアッセイ反応は、以下の成分:0.5μMフォワードプライマー(
;
*はホスホロチオエートを示す;ブロッカーと重複)、2μMリバースプライマー(
;
*はホスホロチオエートを示す)、0.4μMブロッカー8(
;
*はホスホロチオエートを示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す)、0.4μMアンカー5(
;
*はホスホロチオエートを示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す
:C3は3炭素スペーサーである)、3 mM MgCl2、0.4 mM dNTP、0.4 U Kapa HiFiホットスタートDNAポリメラーゼ(Kapa Biosystems、Cat. No. KK2101)、1×HiFi緩衝液、0.2μl ROX参照色素(LifeTechnologies、Cat. No.12223-012)を含む10μl容積中で行った。PCR反応液を384-ウェルプレート上に負荷し、ABI 7900HT機器において以下のサイクル条件:95℃で5分、次の98℃で20秒、61℃で30秒、52℃で1分、69℃で15秒の55サイクルでPCRサイクルを行い、その後解離曲線解析を行った(95℃で1分、40℃で30秒、次に1%勾配で95℃にする)。52℃のサイクル段階中にLC-Red 640蛍光をモニターすることによって、増幅産物の検出を行った。融解曲線解析については、40℃から95℃への移行中に、LC-Red 640シグナルをモニターした。
【0113】
実施例15. Selectorアッセイを用いたKRAS G12C変異の検出
野生型ゲノムDNA(対照血液17004;約1400コピーのKRAS)を含む混合物中でH2122ゲノムDNA(G12C変異についてホモ接合性)を用いる増幅、融解曲線解析、および配列決定結果を、KRASセレクターの存在下または非存在下で行った。増幅産物を、リアルタイムPCRグラフ中に矢印で示す(
図18を参照されたい)。KRAS G12C変異に特異的なヌクレオチドを、配列決定結果中に矢印で示す(野生型:C、G12C:A)。セレクター結合の領域を、配列の下に四角で表示する。
【0114】
結果:
セレクターの存在下で、50 pg H2122ゲノムDNA(G12C変異についてホモ接合性;約14コピー)と50 ng野生型ゲノムDNA(対照血液17004;約1400コピーのKRAS)の混合物を用いて、KRAS G12C変異に関するSelectorアッセイ反応を行った。本発明者らは変異体増幅を検出することができ、増幅産物の融解曲線解析から、変異体に特有のピークが示された(Tm約52℃)。このことは配列決定によって確認され、配列決定は、G12C変異に特異的なC>Aヌクレオチド変化を示した(
図18、上パネル)。対照的に、セレクターの非存在下における同量の野生型ゲノムDNAは、変異体と比較した場合に64℃へと約12℃移行する融解曲線ピークを示した。配列決定により、増幅産物中にKRAS野生型に特異的なCヌクレオチドの存在が確認された(
図18、下パネル)。
【0115】
方法:
Selectorアッセイ反応は、以下の成分:0.3μMフォワードプライマー(
;
*はホスホロチオエートを示す)、2μMリバースプライマー(
;
*はホスホロチオエートを示す)、0.3μMセレクター1(
;
*はホスホロチオエートを示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す)、0.5μMレポーター2(
;
*はホスホロチオエートを示す;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す)、3 mM MgCl
2、0.4 mM dNTP、0.4 U Kapa HiFiホットスタートDNAポリメラーゼ(Kapa Biosystems、Cat. No. KK2101)、1×HiFi緩衝液、0.2μl ROX参照色素(LifeTechnologies、Cat. No.12223-012)を含む10μl容積中で行った。PCR反応液を384-ウェルプレート上に負荷し、ABI 7900HT機器において以下のサイクル条件:95℃で5分、次の98℃で20秒、61℃で30秒、52℃で1分、69℃で15秒の55サイクルでPCRサイクルを行い、その後解離曲線解析を行った(95℃で1分、40℃で30秒、次に1%勾配で95℃にする)。52℃のサイクル段階中に6-FAMおよびLC-Red 640蛍光をモニターすることによって、増幅産物の検出を行った。融解曲線解析については、40℃から95℃への移行中に、LC-Red 640シグナルをモニターした。サンガー配列決定については、PCR産物をQIAquick PCR精製キット(Qiagen)で精製し、配列決定プライマー
と共に、製造業者の説明書に従ってBigDye(登録商標)ターミネーターv1.1サイクル配列決定キット(LifeTechnologies、Cat. No. 4337449)を用いて、配列決定反応を行った。Centri-Sep(商標)カラム(LifeTechnologies、Cat. No. 401762)を用いて配列決定反応物を精製し、3730 DNA分析装置で解析した。
【0116】
細胞株由来のゲノムDNA(H1975、H2122)は、製造業者によって提供される培養細胞に関するプロトコールに従って、QIAmp DNA血液ミニキット(Qiagen Cat. No. 51104)を用いて調製した。対照血液試料由来のゲノムDNA(ABR16965、17004)は、PAXgene血液DNAキット(PreAnalytix Cat. No. 761133)および血液を用いて調製し、血液はPAXgene血液DNAチューブ(PreAnalytix Cat. No. 761125)中に回収した。
【0117】
実施例16. Deep Vent (exo-) DNAポリメラーゼを用いるPCRにおけるプライマースイッチオリゴヌクレオチド構築物の使用による点変異の識別
結果:
単一の点変異だけ異なる鋳型配列間のPCR識別に及ぼすプライマー-スイッチオリゴヌクレオチド構築物の効果を評価した。T790M変異の検出用のプライマー-スイッチ構築物を試験した。これは、合成の野生型および変異体標的配列を用いて行った。プライマー-スイッチ構成(
図19を参照されたい)をこれらの研究に使用し、挿入SYTO(登録商標) 9色素を使用するリアルタイムPCR解析を用いて、個々の一致標的およびミスマッチ標的と共に試験した(方法の項を参照されたい)。結果から、変異体T790M対立遺伝子の、野生型と比較して約4ΔCqの優先的増幅が示され、各リアルタイムCqはそれぞれ23および27であった。
【0118】
方法:
これらの研究のために、2種類の一本鎖鋳型配列を調製した。「野生型」と命名された第1配列
、および「T790M」と命名された第2配列
を調製した。各PCR混合物は、フォワードプライマーとしてのスイッチ-ブロッカープライマー(
;小文字は2'-フルオロリボヌクレオシドを示す;C3は3炭素スペーサーである;S18はスペーサー18(ヘキサエチレングリコール)を示す、および(5')は
の逆合成を示す)、ならびに非修飾リバースプライマー
を使用した。各プライマーは、0.2 mM dNTP、1×Thermopol緩衝液(New England Biolabs;20 mM Tris-HCl、10 mM (NH
4)
2SO
4、10 mM KCl、2 mM MgSO
4、0.1% Triton X-100、25℃でpH 8.8)、1単位のDeep Vent (exo+)またはDeep Vent (exo-) DNAポリメラーゼ(いずれもNew England Biolabsによる);2μM SYTO(登録商標) 9(挿入色素;Life Technologies);1.5μM ROX(参照色素;Agilent)、および10
5コピーの野生型またはT790M鋳型を含む25μL PCR設定において0.2μM濃度で使用した。反応液を200μL光学チューブ中で3つ組で調製し、反応はAgilent MX3005Pリアルタイムサーマルサイクラーで実行した。反応液を以下のサーマルサイクルプロトコール:95℃で10分;[95℃で40秒、58℃で30秒、72℃で1分]の40サイクル;および72℃で7分に供した。
【0119】
実施例17. PCRにおけるプライマー-スイッチオリゴヌクレオチド構築物の使用による点変異の識別‐Phusion(登録商標)ホットスタートII高忠実度DNAポリメラーゼとDeep Vent (exo-) DNAポリメラーゼの比較
結果:
本研究は、実施例16において使用したものと同じプライマー-スイッチ構成および標的を使用した場合の、Phusion(登録商標)ホットスタートII高忠実度DNAポリメラーゼとDeep Vent (exo-) DNAポリメラーゼを比較した。PCRサイクル条件は、実施例16において用いた条件とわずかに異なったが(方法を参照されたい)、反応条件以外は同等であった。結果から、Deep Vent (exo-) DNAポリメラーゼを用いた場合、野生型よりも変異体の増幅を支持するΔCq=約3が得られ(24.5対27.5)、その一方で、PhusionホットスタートIIポリメラーゼは、野生型よりも変異体の増幅をΔCq=約6だけ支持した(22対28)。この結果から、プライマー-スイッチ構築物が、3'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼおよび3'エキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼと共に効率的に働くことが示される。この結果から、3'エキソヌクレアーゼ修復活性を有する酵素が好ましいこともまた示される。
【0120】
方法:
方法およびプライマー-スイッチ構成は、以下の点を除いて実施例16と同様であった。Phusion(登録商標)ホットスタートII高忠実度DNAポリメラーゼ反応は1×Phusion(登録商標) HF緩衝液(New England Biolabs)中で行い、1単位のPhusion(登録商標)ホットスタートII高忠実度DNAを用いた(New England Biolabs)。加えて、サイクル条件は: 95℃で3分;[95℃で40秒、58℃で30秒、72℃で1分]の40サイクル;および72℃で7分であった。
【0121】
実施例18. T790M選択的増幅のためのスイッチ-ブロッカーの設計
設計:
オリゴヌクレオチドを設計および合成して、スイッチ-ブロッカーアプローチのうちの1つを用いて、野生型と比較したT790M対立遺伝子の選択的増幅を研究した(
図20を参照されたい)。一連のアニーリング温度および伸長温度にわたるこの系の試験を可能にするために、複数のフォワードプライマーを調製した。加えて、5'末端BHQ1(Black Holeクエンチャー1)クエンチャーから17ヌクレオチド離れてFAM蛍光標識を配置することにより、「自己報告性」となるようにスイッチ-ブロッカーを合成した。この配置は、ハイブリダイゼーション時にFAMフルオロフォアとBHQ1クエンチャーとの間に最適な差次的分離を生じるように選択された。ハイブリダイズした場合、17ヌクレオチドの分離はおよそ1.5回の塩基回転に等しく、これは2つの標識を二重鎖の反対側に配置し、2つの標識の互いからの有意な距離を達成するのに役立つ。ハイブリダイズすると、FAM標識と関連した蛍光の顕著な増加が起こる。フォワードプライマー1:
。フォワードプライマー2:
。フォワードプライマー3:
。スイッチブロッカー:
。リバースプライマー:
[
*はホスホロチオエートを示す、B:5-ニトロインドール、C3:3炭素スペーサー]
【0122】
実施例6および7などの先の実施例において記載された条件を用いるこれらの構築物の評価、ならびに一連のアニーリング温度および伸長温度にわたる試験により、このスイッチ-ブロッカーT790M構築物の最適なアッセイ条件の確立が可能になるはずである。
【0123】
本明細書に記載される実施例および態様が例示目的のためのみであること、ならびにそれらの観点からの様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用される出版物、特許、および特許出願はすべて、すべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる。