特許第6404123号(P6404123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404123
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】イオン性シリコーンヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/08 20060101AFI20181001BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20181001BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   C08F230/08
   C08K5/3475
   C08L101/14
【請求項の数】74
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2014-548885(P2014-548885)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公表番号】特表2015-503633(P2015-503633A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】US2012070906
(87)【国際公開番号】WO2013096604
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】61/579,683
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/579,693
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/720,286
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アリ・アザーム
(72)【発明者】
【氏名】フォード・ジェームズ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】バンダーラーン・ダグラス・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ジョスリン・スコット・エル
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−510550(JP,A)
【文献】 特開2011−070207(JP,A)
【文献】 特開平07−056126(JP,A)
【文献】 特表2008−525617(JP,A)
【文献】 特表2005−518826(JP,A)
【文献】 特表2003−500686(JP,A)
【文献】 特開昭54−043284(JP,A)
【文献】 特表2012−504182(JP,A)
【文献】 特表2010−508389(JP,A)
【文献】 特開2011−197196(JP,A)
【文献】 特表2008−511870(JP,A)
【文献】 特開2006−126797(JP,A)
【文献】 特表2009−542850(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108520(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00、301/00
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物から形成されるシリコーンヒドロゲルであって、前記反応混合物が、
30〜75重量%の遅反応性親水性モノマーの混合物であって、それぞれが遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有し、前記遅反応性親水性モノマーの混合物が、少なくとも1つの遅反応性イオン性成分を含み、
前記遅反応性親水性モノマーが、式IのN−ビニルアミドモノマー、式II〜IVのビニルピロリドン、式Vのn−ビニルピペリドンから選択され、
【化1】
式中、Rは、H又はメチルであり、
、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立して、H、CH、CHCH、CHCHCH、C(CHから選択され、
及びRは、独立して、CH、CHCH及びC(CHから選択され、
は、H、メチル、エチルから選択され、
は、CH=CH、CCH=CH、及びCH=CHCHから選択される、混合物と、
シリコーン含有成分の速度論的半減期を有する少なくとも1つのシリコーン含有成分であって、
前記シリコーン含有成分が、式IXのモノ(メタ)アクリルオキシアルキルポリジアルキルシロキサンモノマー、又は式Xのスチリルポリジアルキルシロキサンモノマーから選択され、
【化2】
式中、R12は、H又はメチルであり、
Xは、O又はNR16であり、
各R14は、独立して、フッ素置換されていてもよいC〜Cアルキル、又はフェニルであり、
15は、C〜Cアルキルであり、
13は、二価アルキル基であり、これは、更にエーテル基、ヒドロキシル基、カルバメート基、及びこれらの組合せからなる群より選択される基で官能化されてもよく、
aは、3〜50であり、
16は、H、1又は2以上のヒドロキシル基で更に置換されてもよいC1〜4から選択される、成分と、
少なくとも1つのヒドロキシル含有成分であって、少なくとも1つのヒドロキシル含有基で置換されている前記シリコーン含有成分、少なくとも1つのヒドロキシアルキルモノマー、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つのヒドロキシル含有成分とを含み、
前記ヒドロキシアルキルモノマーが、式VIIのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリルアミドモノマー又は式VIIIのスチリル化合物から選択され、
【化3】
式中、Rは、H又はメチルであり、
Xは、O又はNR16であり、R16は、H、少なくとも1つのOHで更に置換されてもよいC〜Cアルキルであり、
17は、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び1〜10個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択され、
前記遅反応性親水性モノマーの半減期のそれぞれの、前記シリコーン含有成分の半減期に対する比が、少なくとも2であり、
前記シリコーン含有成分が、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、シリコーンヒドロゲル。
【請求項2】
遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有する前記少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーを37〜75重量%含む反応混合物から形成される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項3】
遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有する前記少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーを37〜70重量%含む反応混合物から形成される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項4】
遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有する前記少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーを39〜60重量%含む反応混合物から形成される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項5】
前記遅反応性イオン性成分が、アニオン性成分、カチオン性成分、双極性イオン性成分、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項6】
前記遅反応性イオン性成分が、カルボン酸、スルホン酸、ボロン酸、ホスホン酸、及びこれらの塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのアニオン性成分を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項7】
前記遅反応性イオン性成分が、メタクリルアミド反応性基、N−ビニルアミド、O−ビニルカルバメート、O−ビニルカーボネート、N−ビニルカルバメート、O−ビニルエーテル、O−2−プロペニルからなる群より選択される反応性官能基を含みビニル又はアリル基が、メチル基で更に置換されてもよい、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項8】
前記遅反応性イオン性成分が、4−アクリルアミドブタン酸(ACAII)、(3−アクリルアミドフェニル)ボロン酸(APBA)、3−アクリルアミドプロピオン酸、5−アクリルアミドペンタン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、ビニルスルホン酸塩、3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS)、以下の式
【化4】
(式中、Rは、H又はメチルであり、Xは、O又はNR16であり、R16は、H又はC1〜3アルキルであり、Lは、二価C1〜4アルキル基である)の酢酸,2−カルボキシメトキシ)−,1−エテニルエステル、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項9】
前記遅反応性イオン性成分が、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン;N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL);2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO);ビニルスルホン酸ナトリウム塩;式Qの酢酸,2−カルボキシメトキシ)−,1−エテニルエステル、これらの混合物等からなる群より選択される、請求項8に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項10】
前記遅反応性イオン性成分が、20モル%未満の量で前記反応性混合物中に存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項11】
前記遅反応性イオン性成分が、前記反応混合物の全成分に基づいて、0.5〜15モル%の量で前記反応性混合物中に存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項12】
前記遅反応性イオン性成分が、前記反応混合物の全成分に基づいて、0.5〜5モル%の量で前記反応性混合物中に存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項13】
前記遅反応性イオン性成分が、前記反応混合物の全成分に基づいて、0.5〜10モル%の量で前記反応性混合物中に存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項14】
前記遅反応性イオン性成分が全て、同じ反応性官能基を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項15】
前記遅反応性イオン性成分が全て、ビニル官能基を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項16】
前記反応混合物が、更に、少なくとも1つの遅反応性架橋剤と少なくとも1つの速反応性架橋剤とを含み、
前記遅反応性架橋剤が、ビニル反応性官能基のみを有し、前記速反応性架橋剤が、(メタ)アクリレート反応性官能基のみを有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項17】
前記遅反応性架橋剤が、TACを含み、前記速反応性架橋剤が、EDGMA、TEGDMA、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項16に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項18】
前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、反応性成分100g当たり0.4〜2.0ミリモルの量で前記反応混合物中に存在する、請求項14〜16のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項19】
前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、重合性成分100g当たり0.3〜2.0ミリモルの量で前記反応混合物中に存在する、請求項14〜16のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項20】
前記反応性混合物が、更に、少なくとも1つの反応性カチオン性成分を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項21】
前記少なくとも1つの反応性カチオン性成分が、前記シリコーン含有成分のうちの少なくとも1つと同じ反応性官能基を有する、請求項18又は19に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項22】
前記速度論的半減期の比が、少なくとも3である、請求項1〜21のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項23】
70%未満の曇り度(%)を更に含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項24】
50%未満の曇り度(%)を更に含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項25】
少なくとも55%の含水量を更に含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項26】
少なくとも60%の含水量を更に含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項27】
1034kPa(150psi)未満の弾性率を更に含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項28】
689kPa(100psi)以下の弾性率を更に含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項29】
前記反応混合物が、少なくとも1つのUV吸収化合物を更に含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項30】
前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、前記反応混合物中の反応性成分の反応速度に影響する反応性を有する、請求項29に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項31】
前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、ベンゾトリアゾール類から選択される、請求項3に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項32】
前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、反応性の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2ーヒドロキシベンゾフェノン、2ーヒドロキシフェニルトリアジン、オキサニリド、シアノアクリレート、サリチレート、及び4ーヒドロキシベンゾエートからなる群より選択される、請求項3に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項33】
前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの5−ビニル及び5−イソプロペニル誘導体、並びに2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール又は2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3−2H−ジベンゾトリアゾールの4−アクリレート又は4ーメタクリレート、並びにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項3に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項34】
0.5〜4重量%の少なくとも1つのUV吸収剤を含む、請求項3に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項35】
1重量%〜2重量%のUV吸収剤を含む、請求項3に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項36】
前記反応混合物が、実質的に希釈剤を含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項37】
前記反応混合物が、実質的にTRISを含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項38】
前記遅反応性親水性モノマーが、(メタ)アクリルアミド、ビニル、アリル、及びこれらの組合せからなる群より選択される反応性基を含み、前記シリコーン含有成分が、(メタ)アクリレート、スチリル、アミド、及びこれらの混合物からなる群より選択される反応性基を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項39】
前記遅反応性親水性モノマーが、ビニル、アリル、及びこれらの組合せからなる群より選択される反応性基を含み、前記シリコーン含有成分が、(メタ)アクリレート、スチリル、アミド、及びこれらの混合物からなる群より選択される反応性基を含む、請求項1〜38のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項40】
前記遅反応性親水性モノマーが、39〜70重量%の量で存在する、請求項1〜39のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項41】
前記遅反応性親水性モノマーが、39〜60重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項42】
前記遅反応性親水性モノマーが、N−ビニルアミド、O−ビニルカルバメート、O−ビニルカーボネート、N−ビニルカルバメート、O−ビニルエーテル、O−2−プロペニルからなる群より選択される反応性基を含みビニル又はアリル基が、メチル基で更に置換されてもよい、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項43】
前記遅反応性親水性モノマーが、ヒドロキシル、アミン、エーテル、アミド、アンモニウム基、カルボン酸、カルバメート、及びこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの親水性基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項44】
前記遅反応性親水性モノマーが、ヒドロキシル、エーテル、アミド、カルボン酸、これらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの親水性基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項45】
前記遅反応性親水性モノマーが、式II若しくはIVのビニルピロリドン、又は式IのN−ビニルアミドモノマーから選択され、R及びRにおける炭素原子の総数が、4以下である、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項46】
前記遅反応性親水性モノマーが、式III又はIVのビニルピロリドンから選択され、Rがメチルであり、Rが水素であり、RがCH=CHであり、R10及びR11がHである、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項47】
前記遅反応性親水性モノマーが、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、N−ビニルピロリドン(NVP)、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン;1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム、N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N−カルボキシ−β−アラニンN−ビニルエステル;N−カルボキシビニル−β−アラニン(VINAL)、N−カルボキシビニル−α−アラニン及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項48】
前記遅反応性親水性モノマーが、NVP、VMA、及び1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドンから選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項49】
前記遅反応性親水性モノマーが、NVPを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項50】
少なくとも1つのヒドロキシアルキルモノマーを更に含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項51】
式VIIまたは式VIIIのRがH又はメチルであり、式VIIのXが酸素であり、式VIIまたは式VIIIのR17が、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び1〜10個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項52】
式VIIまたは式VIIIのRがメチルであり、式VIIのXが酸素であり、式VIIまたは式VIIIのR17がC〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び2〜20個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項53】
前記ヒドロキシアルキルモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル−2−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ビス−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物から選択される、請求項5に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項54】
前記ヒドロキシアルキルモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピルメタクリレート、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項55】
前記ヒドロキシアルキルモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、及びこれらを含む混合物からなる群から選択される、請求項5に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項56】
前記少なくとも1つのシリコーン含有モノマーが、単官能性であり、(a)(メタ)アクリレート、スチリル、アミド、及びこれらの混合物から選択される反応性基、及び(b)ポリジアルキルシロキサン鎖を含み、任意でフッ素を含んでもよい、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項57】
式IXまたは式Xの各R14が、独立して、エチル及びメチル基から選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項58】
式IXまたは式Xの全てのR14が、メチルである、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項59】
式IXまたは式XのR12及び各R14が、メチルである、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項60】
式IXまたは式Xの少なくとも1つのR14が、3,3,3−トリフルオロプロピルである、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項61】
式IXまたは式XのR13が、エーテル、ヒドロキシル、及びこれらの組合せで置換されていてもよいC1〜C6アルキレン基から選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項62】
式IXまたは式Xにおいて、R13が、エーテル、ヒドロキシル、及びこれらの組合せで置換されていてもよいC1又はC3〜C6アルキレン基から選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項63】
式IXまたは式Xにおいて、aが、5〜15である、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項64】
式IXにおいて、R16が、H又はメチルである、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項65】
前記モノ(メタ)アクリルオキシアルキルポリジアルキルシロキサンモノマーが、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジエチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジエチルシロキサン、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、α−(2−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル)−ω−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項66】
前記モノ(メタ)アクリルオキシアルキルポリジアルキルシロキサンモノマーが、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項67】
少なくとも1つの架橋モノマーを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項68】
少なくとも1つの光開始剤を更に含む、請求項1〜67のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項69】
80°未満の前進接触角を更に含む、請求項1〜68のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項70】
70°未満の前進接触角を更に含む、請求項1〜69のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項71】
前記反応混合物中の全成分に基づいて、5〜20重量%の少なくとも1つの極性希釈剤を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項72】
前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、0.05〜0.3重量%の量で前記反応混合物中に存在する、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項73】
前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、0.1〜0.2重量%の量で前記反応混合物中に存在する、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項74】
全ての架橋剤が、0.5重量%〜2重量%の量で存在する、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2012年12月19日出願のIONIC SILICONE HYDROGELSという名称の米国特許出願第13/720,286号、及び2011年12月23日出願のSILICONE HYDROGELS COMPRISING N−VINYL AMIDES AND HYDROXYALKYL(METH)ACRYLATES OR(METH)ACRYLAMIDESという名称の米国仮出願第61/579693号、及び2011年12月23日出願のSILICONE HYDROGELS HAVING A STRUCTURE FORMED VIA CONTROLLED REACTION KINETICSという名称の米国仮出願第61/579683号に対する優先権を主張し、これらの内容を参照することによって援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、反応混合物の成分の反応速度を制御することによって得られる、優れた特性のバランスを有するイオン性シリコーンヒドロゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
シリコーンヒドロゲルから製造されるソフトコンタクトレンズは、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(HEMA)等の非シリコーン材料から製造されたソフトレンズと比べて酸素透過性が改善されている。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造しようとする初期の試みは、低い湿潤性、高い弾性率、低い透明度、加水分解不安定性、又はこれらシリコーンヒドロゲルの多くを製造するために用いられる原材料の高いコストによって阻まれた。これら各問題点について様々な溶液が多少の成功を収めたが、安価な市販モノマーから製造することができ、且つ優れた湿潤性(表面改質の必要がない)、低い弾性率、良好な透明度、及び望ましい酸素透過性を有するシリコーンヒドロゲルが依然として必要とされている。
【0004】
ポリ(N−ビニルピロリドン(PVP)及びアクリルポリアミド等の高分子湿潤剤を含有するシリコーンヒドロゲル製剤が開示されている。しかし、これらポリマーは、かなり大きく、特殊な相溶化成分を使用する必要があるので、特別注文する必要がある。相溶化成分の例としては、2−プロペン酸,2−メチル−,2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシルオキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(SiGMA)が挙げられる。
【0005】
湿潤性シリコーンヒドロゲルレンズを形成する別の手段は、シリコーンヒドロゲルポリマーを製造するために用いられるモノマーミックスに単量体N−ビニルピロリドン(NVP)を、典型的には前記モノマーミックスの約25〜55(重量)%の量で配合することである。このような材料は、米国特許第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,260,725号、及び同第6,867,245号に記載されている。これら参照文献に記載されている材料は、一般的に、架橋剤として作用する多官能性シリコーンモノマー又はマクロマーを配合して、最終ポリマーの弾性率を上昇させる。米国特許第4,139,513号には、2−プロペン酸、2−メチル−,2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシルオキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(SiGMA)を用いてNVP及びHEMAを含む製剤からレンズを形成できることが開示されている。SiGMAは、開示されているシリコーンの唯一の原料である。しかし、これらモノマー中のシリコーン含量が比較的低いので、最終ポリマーにおいて望ましいレベルの酸素透過性を得ることは困難である。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0048847号には、約52%のNVPを含むモノメタクリルオキシアルキルポリジメチルシロキサンメタクリレートと、HEMAと、TRISとのブレンドから、及び希釈剤としてエタノールと酢酸エチルとのブレンドを用いて製造されるシリコーンヒドロゲルが開示されている。開示されているポリマーは、(様々な程度)曇っているが、この出願では、少なくとも約1.5%のメタクリル酸(MAA)を添加することによって曇りを低減できることが開示された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、MAA等のアニオン性モノマーの添加は、「The role of ionic hydrophilic monomers in silicone hydrogels for contact lens application」,Lai,Y.,Valint,P.,and Friends,G.;213th ACS National Meeting,San Francisco,April 13〜17,1997に開示されている通り、シリコーンヒドロゲルにおいて加水分解不安定性を引き起こす場合がある。この理由のため、mPDMS等のモノメタクリルオキシアルキルポリジメチルシロキサンメタクリレートとNVPとの組合せから、低弾性率の、透明で加水分解安定性であり、(表面処理なしで)湿潤性である、シリコーンヒドロゲルを形成することが依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
約37〜約75重量%の遅反応性親水性モノマーの混合物であって、それぞれが遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有し、前記遅反応性親水性モノマーの混合物が、少なくとも1つの遅反応性イオン性モノマーを含む、混合物と、
シリコーン含有成分の速度論的半減期を有する少なくとも1つのシリコーン含有成分であって、任意で少なくとも1つのヒドロキシル含有基で置換されていてもよい、成分と、
少なくとも1つのヒドロキシル置換シリコーン含有成分、少なくとも1つのヒドロキシアルキルモノマー、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つのヒドロキシル含有成分とを含むか、からなるか、又はから本質的になる反応混合物から形成されるシリコーンヒドロゲルであって、
前記遅反応性親水性モノマーのそれぞれの半減期の、前記シリコーン含有成分の半減期に対する比が、少なくとも2である、シリコーンヒドロゲルに関する。
【0009】
本発明のシリコーンヒドロゲルは、生物医学装置、眼科用装置、及び特にコンタクトレンズの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】レンズアセンブリの概略図である。
図2】速度論的評価のために用いられる二区画硬化ボックスの概略図である。
図3図2に示す硬化ボックスの区画2の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、最遅シリコーン含有組成物の速度論的半減期の少なくとも2倍の長さの速度論的半減期を有する、少なくとも1つの親水性成分とイオン性成分とを含む反応混合物から形成されるイオン性シリコーンヒドロゲルに関する。反応混合物の少なくとも1つの成分は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む。得られたシリコーンヒドロゲルは、驚くべきことに、加工が容易であり、安定性、曇り度、含水量、及び酸素透過性を含む優れた特性のバランスを示す。イオン性成分、特にアニオン性成分を遅反応性成分として反応性混合物に導入することによって、良好な安定性及び望ましい取り込みプロファイルを有するイオン性シリコーンヒドロゲルを製造することができる。
【0012】
本発明のシリコーンヒドロゲルポリマーは安定した弾性率を示す。本明細書で使用するとき、安定な弾性率は、1、3、6、又は9滅菌サイクル(121℃及び30分間)の間に約30%未満、いくつかの実施形態では、約20%未満しか増加しないものである。
【0013】
本明細書で使用するとき、「希釈剤」は、反応性成分用の非反応性溶媒を指す。生物医学装置の部品を形成するのに、希釈剤は反応しない。
【0014】
本明細書で使用するとき、「生物医学装置」は、哺乳類の組織又は体液、及びヒトの組織又は体液において用いられるように設計されている任意の物品である。これら装置の例としては、カテーテル、インプラント、ステント、並びに眼内レンズ、涙点プラグ及びコンタクトレンズ等の眼科用装置が挙げられるが、これらに限定されない。生物医学装置は、眼科用装置、具体的にはコンタクトレンズ、最も具体的にはシリコーンヒドロゲルから製造されるコンタクトレンズであってよい。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「眼科用装置」は眼の中又は眼の上に存在する製品を指す。本明細書で使用するとき、用語「レンズ」及び「眼科用装置」は、眼の中又は眼の上に存在する装置を指す。これら装置は、視覚的な補正、創傷治癒、薬物送達、診断機能、美容補強若しくは美容効果、グレア低減、紫外線ブロック、又はこれら特性の組合せを提供することができる。眼科用機器の非限定例としては、レンズ、涙点プラグ等が挙げられる。レンズ(コンタクトレンズ)という用語は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼内挿入物、及び視覚的な挿入物を含むが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書で使用するとき、「反応混合物」は、一緒に混合され、反応して、本発明のシリコーンヒドロゲルを形成する反応性成分及び非反応性成分(希釈剤を含む)を指す。反応性成分は、ポリマーの構造の一部にはならない希釈剤及び任意の更なる加工助剤を除いて反応混合物中の全てである。
【0017】
本明細書で使用するとき、「(メタ)」は、任意のメチル置換を指す。したがって、「(メタ)アクリレート」等の用語は、メタクリル及びアクリルラジカルの両方を示す。
【0018】
本明細書における百分率は全て、特に指定しない限り重量パーセントである。
【0019】
本明細書で使用するとき、語句「表面処理なしの」又は「表面処理されていない」は、本発明の装置の外面が装置の湿潤性を改善するために別に処理されるのではないことを意味する。本発明により先行することのできる処理は、プラズマ処理、グラフティング、コーティング等を含む。これらに限定されないが、抗菌コーティング及び色又は他の美容補強の用途等の、改善された湿潤性以外の特性を提供するコーティングは、表面処理とはみなされない。
【0020】
本明細書で使用するとき、「シリコーンマクロマー」及びシリコーン「プレポリマー」は、約2000を超える分子量を有する単官能性及び多官能性シリコーン含有化合物を意味する。
【0021】
本明細書で使用するとき、「ヒドロキシル含有成分」は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する任意の成分である。
【0022】
本明細書で使用するとき、「速度論的半減期」は、消費される反応性成分の50%について、所与の反応条件で経過する時間を意味する。所与の成分についての速度論的半減期は、本明細書に詳細に記載する通り、他の反応混合物の成分及び選択される硬化条件によって影響を受けることを理解すべきである。速度論的半減期は、実施例に記載の通り計算される。
【0023】
本明細書で計算される速度論的半減期の比は、特定の反応混合物及び硬化条件から測定される速度論的半減期を用いて計算しなければならない。
【0024】
本明細書に使用されるとき、「一価反応性基」は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、C1〜6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C1〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、C2〜12アルケニル、C2〜12アルケニルフェニル、C2〜12アルケニルナフチル、C2〜6アルケニルフェニルC1〜6アルキル、O−ビニルカルバメート及びO−ビニルカーボネートが挙げられる。カチオン反応性基の非限定的な例としては、ビニルエーテル又はエポキシド基及びこれらの混合物が挙げられる。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、アクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用するとき、「イオン性」成分としては、アニオン性成分、カチオン性成分、双極性イオン性成分、及びこれらの混合物が挙げられる。イオン性成分としては、プロトン化、脱プロトン化、又は穏やかな加水分解を介してイオン性形態に変換され得るイオン性化合物及び前駆体の塩が挙げられ、例えば、加水分解を介してアミノ酸に変換される米国特許第4810764号及び同第6902812号に開示されているアザラクトン類である。
【0026】
本発明では、成分は、反応における特定のポイントで反応するように選択される。例えば、「速反応性」成分は、主に共重合反応全体の開始時に重合するように選択され、一方、遅反応性親水性モノマーは、主に共重合反応全体の終わりに重合するように選択される。速反応性成分としては、シリコーン含有成分、ヒドロキシアルキルモノマー、及びいくつかの架橋剤が挙げられる。1つの実施形態では、遅反応性成分は、最速シリコーン含有モノマーよりも少なくとも約2倍長い速度論的半減期を有する。速度論的半減期は、本明細書に記載の通り測定してよい。速度論的半減期は、特定の製剤に対するものであることを理解すべきである。
【0027】
遅反応性基の例としては、(メタ)アクリルアミド、ビニル、アリル、及びこれらの組合せ、並びに少なくとも1つの親水性基が挙げられる。遅反応性基の非限定的な例としては、N−ビニルアミド、O−ビニルカルバメート、O−ビニルカーボネート、N−ビニルカルバメート、O−ビニルエーテル、O−2−プロペニルに由来するものが挙げられ、前記ビニル又はアリル基は、メチル基で更に置換されてもよい。遅反応性基は、N−ビニルアミド、O−ビニルカーボネート、及びO−ビニルカルバメートから選択してよい。
【0028】
速反応性基の例としては、(メタ)アクリレート、スチリル、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物が挙げられる。一般的に、(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリルアミドよりも速く、アクリルアミドは、(メタ)アクリルアミドよりも速い。
【0029】
明細書全体を通して、どこに化学構造が記載されていようと、構造における置換基について開示された選択肢を任意の組合せで組み合わせてよいことを理解すべきである。したがって、構造が置換基R及びRを含有しており、これらがそれぞれ3つの可能性のある基のリストを含んでいる場合、9通りの組合せが開示される。特性の組合せについても同じことが当てはまる。
【0030】
驚くべきことに、反応混合物の成分を選択することによって、所望の特性のバランスを有するシリコーンヒドロゲルを形成できることが見出された。本発明の反応混合物は、約37〜約75重量%の、いくつかの実施形態では約39〜約70重量%の、他の実施形態では約39〜約60重量%の、少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーと、
少なくとも1つの反応性シリコーン含有成分と、
少なくとも2つの速反応性基を有する少なくとも1つの速反応性架橋剤とを含む。最遅反応性シリコーン含有成分は、遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期の少なくとも半分である速度論的半減期を有する。少なくとも1つの前記成分は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む。
【0031】
反応性混合物の第1の成分は、少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーである。遅反応性親水性モノマーは、遅反応性基及び少なくとも1つの親水性基を含む。反応性基は、N−ビニルアミド、O−ビニルカルバメート、O−ビニルカーボネート、N−ビニルカルバメート、O−ビニルエーテル、O−2−プロペニルから選択してよく、前記ビニル又はアリル基は、メチル基で更に置換されてもよい。更に別の実施形態では、反応性基は、N−ビニルアミド、O−ビニルカーボネート、及びO−ビニルカルバメートから選択される親水性基としては、ヒドロキシル、アミン、エーテル、アミド、アンモニウム基、カルボン酸、カルバメート、これらの組合せ等が挙げられる。好適な親水性基としては、ヒドロキシル、エーテル、アミド、カルボン酸、これらの組合せ等が挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリルアミドを遅反応性親水性モノマーとして選択する場合、アクリレート等の非常に短い速度論的半減期を有するシリコーン含有モノマーを用いなければならない。メタクリルアミドは、一般的に、アクリルアミドよりも反応が遅く、嵩高い(メタ)アクリルアミドは、より小さな(メタ)アクリルアミドよりも遅い。好適な(メタ)アクリルアミドの例としては、ビス−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、及び2〜10個、2〜5個の繰り返し単位を有する1又は2本のポリエチレングリコール鎖で置換されているメタクリルアミド等が挙げられる。メタクリルアミドを遅反応性親水性モノマーとして用いる場合、速度論的半減期の所望の差を提供するために、シリコーンアクリレート等の非常に速いシリコーン含有モノマーを用いるべきである。例えば、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドをシリコーンアクリレートと共に遅反応性親水性モノマーとして用いてよい。
【0033】
遅反応性親水性モノマーは、式IのN−ビニルアミドモノマー、式II−IVのビニルピロリドン、式Vのn−ビニルピペリドンから選択してよく、
【化1】
式中、Rは、H又はメチルであるか、あるいはRはHであり、
、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立して、H、CH、CHCH、CHCHCH、C(CHから選択され、
及びRは、独立して、CH、CHCH及び−C(CH)から選択され、
は、H、メチル、エチルから選択され、
は、CH=CH、CCH=CH、及びCH=CHCHから選択される。
【0034】
1つの実施形態では、R及びR中の炭素原子の総数は、4以下であり、R及びRは、メチルであってよい。
【0035】
遅反応性親水性モノマーは、式IのN−ビニルアミドモノマー又は式II若しくはIVのビニルピロリドンから選択してよい。好適には、Rはメチルであり、Rは水素であり、RはCH=CHであり、R10及びR11は、Hである。
【0036】
遅反応性親水性モノマーは、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、N−ビニルピロリドン(NVP)を含むN−ビニルラクタム類、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン;1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム、N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N−カルボキシビニル−β−アラニン(VINAL)、N−カルボキシビニル−α−アラニン、及びこれらの混合物から選択してよい。
【0037】
したがって、遅反応性親水性モノマーは、NVP、VMA、及び1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドンから選択してよい。遅反応性親水性モノマーは、NVPを含んでよい。
【0038】
反応性混合物は、更に、少なくとも1つの遅反応性イオン性成分を含む。イオン性成分は、カチオン性、アニオン性、又は双極性イオン性であってよい。
【0039】
イオン性成分の好適な反応性基としては、N−ビニルアミド、O−ビニルカルバメート、O−ビニルカーボネート、N−ビニルカルバメート、O−ビニルエーテル、O−2−プロペニルが挙げられ、前記ビニル又はアリル基は、メチル基、いくつかの実施形態では、メタクリルアミド反応性基で更に置換してもよい。好ましい反応性基としては、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、ビニルカーボネート、及びビニルアミドが挙げられる。また、アニオン性成分は、カルボン酸、スルホン酸、ボロン酸、ホスホン酸、及びこれらの塩類、オキサゾロン類、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1つのアニオン性基を含む。
【0040】
アニオン性成分の例としては、4−アクリルアミドブタン酸(ACAII)、(3−アクリルアミドフェニル)ボロン酸(APBA)、3−アクリルアミドプロピオン酸、5−アクリルアミドペンタン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル2−カルボα−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、ビニルスルホン酸塩を含む反応性スルホン酸塩、以下の式の酢酸,2−カルボキシメトキシ)−,1−エテニルエステル、
【化2】
式中、Rは、H又はメチルであり、Xは、O又はNR16であり、R16は、H又はC1〜3アルキル)であり、Lは、二価C1〜4アルキル基である、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
遅反応性アニオン性成分は、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン;N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL);2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO);ビニルスルホン酸ナトリウム塩;上記式の酢酸,2ー(カルボキシメトキシ)−,1−エテニルエステル、これらの混合物等からなる群より選択してよい。
【0042】
好適なカチオン性成分としては、正電荷を有する遅反応性成分が挙げられる。カチオン性基としては、アミノ及びアンモニウム基が挙げられる。遅反応性アニオン性成分の例としては、アリルアミンが挙げられる。
【0043】
双極性成分は、同じ分子中にカチオン性電荷とアニオン性電荷の両方を含有する。好適な双極性イオン性基としては、アミノ酸、アンモニウムカルボキシレート、アンモニウムスルホネート、及びリン脂質が挙げられる。例としては、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS);3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、アミノ、アンモニウム、アンモニウムスルホネート、アンモニウムカルボキシレート、及びホスファヂチルスルホネートから選択される少なくとも1つの基で置換されているビニルカーボネート又はビニルカルバメート、これらの組合せ等が挙げられる。
【0044】
イオン性成分は、反応混合物中の全成分に基づいて、約20モル%未満、15モル%、約0.5〜約10モル%、約0.5〜約5モル%の量で反応性混合物中に存在する。
【0045】
遅反応性成分は全て、同じ反応性官能基、例えば、ビニル官能基を有してよい。
【0046】
遅反応性親水性モノマーは、得られるポリマーに湿潤性を提供する量で存在する。湿潤性は、接触角を介して測定してよく、望ましい接触角は、約80°未満、約70°未満、いくつかの実施形態では、約60°未満である。
【0047】
少なくとも1つのシリコーン含有モノマーは、単官能性であり、(a)速反応性基及び(b)ポリジアルキルシロキサン鎖を含む。シリコーン含有モノマーは、(メタ)アクリレート、スチリル、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物から選択される速反応性基を含んでよい。少なくとも1つのシリコーン含有モノマーは、少なくとも1つのフッ素も含有してよい。シリコーン含有成分は、式VIIのモノ(メタ)アクリルオキシアルキルポリジアルキルシロキサンモノマー又は式VIIIのスチリルポリジアルキルシロキサンモノマーから選択してよく、
【化3】
式中、R12は、H又はメチルであり、
Xは、O又はNR16であり、
各R14は、独立して、フェニル、又はフッ素、ヒドロキシル、若しくはエーテルで置換されていてもよいC〜Cアルキルであるか、あるいは各R14は、独立して、エチル及びメチル基から選択される。全てのR14は、メチルであってよく、
15は、非置換のC〜Cアルキルであり、
13は、エーテル基、ヒドロキシル基、カルバメート基、及びこれらの組合せからなる群より選択される基で更に官能化されてもよい二価アルキル基、並びにエーテル、ヒドロキシル、及びこれらの組合せで置換されていてもよいC〜Cアルキレン基、又はエーテル、ヒドロキシル、及びこれらの組合せで置換されていてもよいC若しくはC〜Cアルキレン基であり、
aは、2〜50であり、いくつかの実施形態では、5〜15である。
【0048】
16は、H、1又は2以上のヒドロキシル基で更に置換されてもよいC1〜4アルキルから選択されるか、又はH若しくはメチルであってよい。
【0049】
12及び各R14は、メチルであってよい。
【0050】
少なくとも1つのR14は、3,3,3−トリフルオロプロピルであってよい。
【0051】
好適なシリコーン含有モノマーの例としては、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジエチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジエチルシロキサン、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、α−(2−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル)−ω−ブチル−デカメチルペンタシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるモノメタクリルオキシアルキルポリジメチルシロキサンメタクリレートが挙げられる。
【0052】
シリコーン含有成分は、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、α−(2−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル)−ω−ブチル−デカメチルペンタシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択してよい。
【0053】
シリコーン含有成分は、米国特許出願公開第20110237766号のアクリルアミドシリコーン、特に、以下の一般式(s1)〜(s6)で表されるシリコーンモノマーから選択してよい。
【化4】
式中、mは、4〜12又は4〜10である。
【0054】
1又は2以上の重合性基を有する更なるシリコーン含有成分を含んでもよい。本明細書に開示される反応性基を有する任意の更に開示されるシリコーン成分を含んでよい。例としては、SiMAA及びTRIS等の分岐シロキサン鎖を表すシリコーン含有モノマーが挙げられる。アニオン性成分は遅反応性であるので、本発明のシリコーンヒドロゲルは、約20重量%以下の比較的多量でさえも、SiMAA及びTRIS等のトリメチルシロキシシロキサン(TMS)基を含む速反応性シリコーンを含んでよい。しかし、SiMAAもTRISも、約70又は80Dkを超える酸素透過性が望ましい主なシリコーン含有成分ほど有効ではない。したがって、1つの実施形態では、配合中のTRISの量は、約15%、10%及び5%未満であるか、又はTRISを含有しなくてもよい。
【0055】
少なくとも1つのシリコーン含有成分は、所望の酸素透過性を提供するのに十分な量で反応性混合物中に存在する。本発明の利点は、約70バレル(barrer)超、約80バレル超、約90バレル超、又は約100バレル超の酸素透過性を得ることができる点である。好適な量は、シリコーン含有モノマー中に含まれるシロキサン鎖の長さに依存し、長い鎖を有するシリコーン含有モノマーは、必要とするモノマーが少ない。量としては、約20〜約60重量%、又は約30〜約55重量%が挙げられる。
【0056】
1つの実施形態では、反応性混合物(希釈剤を除く)中のシリコーンの総量は、約9〜14重量%、及び約9〜13%である。遅反応性親水性モノマー及び他の反応性成分の量のバランスをとることに加えて、シリコーンの量を制限することにより、本発明によって達成される所望の特性の組合せが提供される。本願の利点は、わずかな量の(14重量%未満)シリコーンを用いて酸素透過性と含水量との組合せを有するシリコーンヒドロゲルを形成できる点である。
【0057】
遅反応性親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有モノマーは、遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期の、最遅シリコーン含有成分の速度論的半減期に対する比が、少なくとも約2、少なくとも約3、又は少なくとも約5になるように選択される。
【0058】
本発明の一部として、遅反応性親水性モノマーの長鎖を重合させることが望ましい。所望の特性のバランスを得るためには、かなりの量の遅反応性親水性モノマーをプロセスの後半に重合させなければならない。1つの実施形態では、これは、最遅反応性シリコーン含有モノマーの90%の変換率における、遅反応性親水性モノマーの最遅反応性シリコーン含有モノマーに対する濃度(μmol/gで表される)の比(単位無し)(「変換比」)によって特徴付けられる。変換比は、約10超、少なくとも約20又は少なくとも約30であってよい。
【0059】
反応混合物は、TRISを実質的に含まなくてよい、及び/又はシリコーン含有マクロマー若しくはプレポリマーを実質的に含まなくてよい。
【0060】
反応混合物の成分のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有していなければならない。ヒドロキシルは、シリコーン含有モノマー、更なるモノマー、又はこれらの組合せに含有され得る。ヒドロキシル含有成分の速度論的半減期は、シリコーン含有モノマーの速度論的半減期に近いことが好ましい。ヒドロキシル含有成分のシリコーン含有モノマーに対する好ましい速度論的半減期の比としては、約0.75〜約1.5及び約0.8〜1.2が挙げられる。ヒドロキシル含有成分は、シリコーン含有モノマーと同じ反応性官能基を有してよい。
【0061】
また、SiMAA及びHEMA等であるが、これらに限定されないヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーよりも、NVP、VMA、及び他のアミド含有モノマーの相溶化において優れていることが見出された。したがって、動的前進接触角が約80°未満である透明なレンズが望ましい1つの実施形態では、ヒドロキシル含有モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0062】
ヒドロキシル含有成分は、ヒドロキシル基の遅反応性親水性モノマーに対するモル比が少なくとも約0.15、又は約0.15〜約0.4であるモルパーセントで存在してよい。これは、ヒドロキシル基含有モノマー中のヒドロキシル基のモル数(遅反応性親水性モノマー及びシリコーン含有モノマーにおける任意のヒドロキシル基を含む)をモノマーミックスの所与の質量当たりの遅反応性親水性モノマーのモル数で除することによって計算される。この実施形態では、HO−mPDMS、HEMA、EGVE、及びNVPを含む反応混合物については、HO−mPDMS、HEMA、及びEGVEのそれぞれにおけるヒドロキシル基を数える。希釈剤(用いられる場合)に存在する任意のヒドロキシル基は、計算には含めない。少なくとも1つのシリコーン含有モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含んでよい。
【0063】
あるいは、反応混合物中の反応成分における全ヒドロキシル基のシリコーンに対するモル比(HO:Si)は、約0.16〜約0.4である。モル比は、(遅反応性親水性モノマー又は希釈剤の一部である任意のヒドロキシル以外の)反応性混合物の成分におけるヒドロキシル基のモル濃度をシリコーンのモル濃度で除することによって計算される。この実施形態では、ヒドロキシアルキルモノマーと任意のヒドロキシル含有シリコーン成分の両方が計算に含まれる。したがって、HO−mPDMS、HEMA、NVP、及びEGVEを含む反応混合物のHO:Si比の計算においては、HO−mPDMS、HEMAのそれぞれにおけるヒドロキシル基のみがHO:Siの計算において数えられる。
【0064】
別の実施形態では、(遅反応性親水性モノマー又は希釈剤の一部である任意のヒドロキシル以外の)非シリコーン含有成分中のヒドロキシル基のシリコーンに対するモル比は、約0.13〜約0.35である。したがって、HO−mPDMS、HEMA、EGVE、及びNVPを含む反応混合物のHO非Si:Si比の計算においては、HEMAにおけるヒドロキシル基のみが、HO非Si:Si比の計算において数えられる。
【0065】
ヒドロキシル成分の最低量は、ヒドロキシアルキルモノマーにおけるヒドロキシル基の数、シリコーン含有成分における親水性官能基の量、分子量、及び有無を含む多数の要因に依存して変動することが理解される。例えば、HEMAがヒドロキシアルキルモノマーとして用いられ、mPDMSが唯一のシリコーン含有モノマーとして約38重量%の量で用いられる場合、所望の曇り度値を得るために少なくとも約8重量%のHEMA(0.16 HO:Si)が含まれる。しかし、より少ない量のmPDMS(約20%)を用いる場合、わずか約2又は3%のHEMAによって、約50%未満の曇り度値を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが提供される。同様に、配合がかなりの量のヒドロキシル含有シリコーン成分(例えば、約20重量%超のHO−mPDMS)を含む場合、わずか約7重量%の量のHEMA(0.13 HO:Si又は0.24 HO合計:Si)によって所望のレベルの曇り度を提供することができる。
【0066】
好適なヒドロキシル含有モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又は式IXの(メタ)アクリルアミドモノマー又は式Xのスチリル化合物が挙げられ、
【化5】
式中、Rは、H又はメチルであり、
Xは、O又はNR16であり、R16は、H、少なくとも1つのOH、メチル、又は2ーヒドロキシエチルで更に置換されてもよいC〜Cアルキルであり、
17は、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び1〜10個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)、又は2ーヒドロキシエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2ーヒドロキシプロピルから選択される。
【0067】
は、H又はメチルであってよく、Xは、酸素であってよく、Rは、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル及び1〜10個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択される。Rは、メチルであってよく、Xは、酸素であり、Rは、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び2〜20個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択され、あるいは、Rは、メチルであり、Xは、酸素であり、Rは、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキルから選択される。好適には、少なくとも1つのヒドロキシル基は、Rアルキル基の末端部に存在してよい。
【0068】
好適なヒドロキシアルキル含有モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル−2−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ビス−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
ヒドロキシル含有モノマーは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピルメタクリレート、及びこれらの混合物からなる群より選択してよい。
【0070】
ヒドロキシル含有モノマーは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを含んでよく、別の実施形態では、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピルメタクリレートを含む。ヒドロキシル含有モノマーは、グリセロールメタクリレートを含んでよい。
【0071】
反応性混合物は、更なる親水性モノマーを更に含んでよい。ヒドロゲルを調製するために用いられる任意の親水性モノマーを用いてよい。例えば、アクリル基(CH=CROX、式中、Rは、水素又はC1〜6アルキルであり、Xは、O又はNである)又はビニル基(−C=CH)を含有するモノマーを用いてよい。更なる親水性モノマーの例は、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、これらの組合せ等である。
【0072】
更なる親水性モノマーが、本明細書で定義する遅反応性親水性モノマー及びシリコーン含有成分の中間の速度論的半減期を有する場合、本発明の配合中のこれらの濃度は、約80°超の前進接触角を有するレンズを提供しない濃度に限定してよい。本明細書で使用するとき、「中間の」半減期は、最遅反応性シリコーン成分よりも20%〜70%速いものである。例えば、更なる親水性モノマーがN,N−ジメチルアクリルアミドである場合、更なる親水性モノマーの量は、コーティングされていないレンズが望ましい場合、約3重量%未満に限定される。レンズが表面改質される場合、より多量の更なるモノマーを含んでよい。
【0073】
本発明の反応性混合物は、反応混合物中に含まれるシリコーン含有モノマーのうちの少なくとも1つの速度論的半減期以下の速度論的半減期を有する少なくとも1つの架橋剤を更に含む。架橋剤は、2以上の重合性二重結合を有するモノマーである。架橋剤の速度論的半減期がシリコーン含有モノマーのうちの少なくとも1つよりも長い場合、得られるヒドロゲルは、低い弾性率及び高い含水量を示すことが見出された。驚くべきことに、架橋剤の反応速度は、UV吸収化合物を含むことによって実質的に低下させることができる。これは、速度論的半減期を延長し、いくつかの系では、架橋剤がシリコーン含有モノマーよりも遅く反応するように反応順序を変化させる。この状況では、選択されたUV吸収剤の存在下で反応速度のより速い架橋剤を使用することが望ましい場合がある。
【0074】
好適な架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(「EGDMA」)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」)、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ポリエチレングリコールは、好ましくは、例えば約5000以下の分子量を有する)、並びに他のポリアクリレート及びポリメタクリレートエステル、例えば、2以上の末端メタクリレート部分を含有する上記末端保護ポリオキシエチレンポリオールが挙げられる。架橋剤は、反応混合物中の反応性成分100グラム当たり、通常の量、例えば、約0.000415〜約0.0156モルで用いてよい。あるいは、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有モノマーが架橋剤として作用する場合、更なる架橋剤の反応混合物への添加は任意である。架橋剤として作用でき、存在する場合に反応性混合物への更なる架橋剤の添加を必要としない親水モノマーの例は、2個以上の末端メタクリレート部分を含有する上記ポリオキシエチレンポリオールを含む。
【0075】
架橋剤として作用でき、存在する場合に反応性混合物への架橋モノマーの追加を必要としないシリコーン含有モノマーの例として、α,ω−ビスメタクリルオキシプロピル(bismethacryloypropyl)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0076】
また、反応混合物は、親水性成分の反応速度に依存して複数の架橋剤を含有してよい。遅反応性官能基(例えば、ジビニル、トリビニル、ジアリル、トリアリル)を有する超遅反応性親水性モノマー(例えば、VMA、EGVE、DEGVE)架橋剤又は遅反応性官能基と速反応性官能基(例えば、HEMAVc、アリルメタクリレート)との組合せは、最終ヒドロゲル中の遅反応性モノマーのポリマー保持を改善するために、速反応性官能基を有する架橋剤と組み合わせてよい。
【0077】
反応混合物は、少なくとも2つの架橋剤、シリコーン成分及びヒドロキシル含有成分と反応する少なくとも2つの速反応性基を有する少なくとも1つの速反応性架橋剤、並びに遅反応性親水性モノマーと反応する少なくとも2つの遅反応性基を有する少なくとも1つの遅反応性架橋剤を含んでよい。この速反応性架橋剤と遅反応性架橋剤との混合物は、特にレンズの表面における弾力及び復元力が改善された最終ポリマーを提供する。好適な第1の架橋剤の例としては、EGDMA、TEGDMA、及びこれらの組合せ等の(メタ)アクリレート官能基のみを有するものが挙げられる。好適な第2の架橋剤の例としては、トリアリルシアヌレート(TAC)等のビニル官能基のみを有するものが挙げられる。混合物を用いる場合、反応性混合物中の全架橋剤の好適な量としては、それぞれ希釈剤を除いて約0.10%〜約2%又は約0.10%〜約1%が挙げられる。別の実施形態では、反応性混合物中の全架橋剤の総量は、重合性成分100g当たり0.7〜約6.0mmol、反応性成分100g当たり約0.7〜約4.0mmolである。速反応性架橋剤及び遅反応性架橋剤は、それぞれ、重合性成分100g当たり約0.3〜約2.0mmol、又は反応性成分100g当たり約0.4〜約2.0mmolの量で存在する。
【0078】
また、反応混合物は、少なくとも1つのUV吸収化合物を含んでよい。驚くべきことに、UV吸収化合物は、本発明の反応混合物中の反応性成分の反応速度に実質的に異なる影響を有し得る。例えば、ベンゾトリアゾールは、シリコーン含有成分の反応速度を遥かに上回るいくつかの系で、NVP及びTEGDMAの反応速度を実質的に遅くすることが見出された。NVPの場合、約60%を超える含水量、約50%未満の曇り度値、約10%未満、約60°未満の前進接触角、及び約80を超えるDkを含む更なる加工柔軟性及び優れた特性のバランスを提供するので、有益である。シリコーンヒドロゲルを眼科用装置として用いる場合、得られるシリコーンヒドロゲルがUVを吸収するように反応混合物中に反応性UV吸収化合物を配合することが望ましい場合がある。しかし、所望の反応速度を得るために非反応性UV吸収化合物を単独で用いてよい。あるいは、溶液フィルターを用いてよい。反応性混合物中のUV吸収剤は、可視光開始剤に与えられる光のスペクトルを変化させる約370nm未満の入射光をブロックすると考えられる。これは、開始速度を低下させることに加えて、存在する開始剤ラジカルの濃度を低下させる傾向があり、次に、モノマーの重合速度に著しい影響を有すると考えられる。典型的に、最も著しい影響を受ける可能性のあるモノマーが、最遅及び最速である。本明細書に含まれる実施例の幾つかでは、NVP(最遅)及びTEGDMA(最速)が、UV吸収剤の存在に対する感受性が最も高い。
【0079】
好適なUV吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2ーヒドロキシベンゾフェノン、2ーヒドロキシフェニルトリアジン、オキサニリド、シアノアクリレート、サリチレート、及び4ーヒドロキシベンゾエートに由来してよく、これらは、(メタ)アクリレート等の反応性重合性基を組み込むために更に反応してよい。重合性基を含むUV吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(Norbloc)、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの5−ビニル及び5−イソプロペニル誘導体、並びに2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール又は2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3−2H−ジベンゾトリアゾールの4−アクリレート又は4ーメタクリレート、これらの混合物等が挙げられる。UV吸収剤が含まれる場合、約0.5〜約4重量%、好適には約1重量%〜約2重量%の量で含まれてよい。
【0080】
重合開始剤は、反応混合物中に含まれるのが好ましい。熱開始、光開始、又はこれらの組合せを用いてよい。1つの実施形態では、本発明の反応混合物は、少なくとも1つの光開始剤を含む。光開始の使用により、約30分未満、約20分未満、又は約15分未満の望ましい硬化時間(本質的に完全硬化に達するまでの時間)が得られる。また、光重合系は、反応混合物中のUV吸収剤の使用を通して、得られるシリコーンヒドロゲルの特性の調整におけるより高い柔軟性を提供する。好適な光開始剤系としては、芳香族アルファーヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び三級アミン+ジケトン、これらの混合物等が挙げられる。光開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、及びカンファーキノンとエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組合せがある。市販の可視光開始剤系としては、Irgacure 819、Irgacure 1700、Irgacure 1800、Irgacure 819、Irgacure 1850(いずれもCiba Specialty Chemicals製)及びLucirin TPO開始剤(BASF社より入手可能)が挙げられる。市販の紫外光開始剤としては、Darocur 1173及びDarocur 2959(Ciba Specialty Chemicals)が挙げられる。用いることができるこれら及び他の光開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello & K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998において開示されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。好適な熱開始剤としては、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。開始剤は、反応混合物の重合を開始させるのに有効な量、例えば、反応性モノマー100部当たり約0.1〜約2重量部で、反応混合物中で用いられる。
【0081】
開始剤は、反応混合物の重合を開始させるのに有効な量、例えば、反応性モノマー100部当たり約0.1〜約2重量部で、反応混合物中で用いられる。実施例に示す通り、用いられる光開始剤の濃度は、反応性成分の反応速度に影響を与えることができる。開始剤の量を増加させると、一般的に、全成分の速度論的半減期が短縮されるが、半減期は、等しく影響を受ける訳ではない。したがって、遅反応性親水性モノマー及びシリコーン含有モノマーの比は、開始剤濃度を変動させることによって調整することができる。反応性混合物中に含まれる阻害剤の濃度を上昇又は増加させることによって効果を高めることができる。いくつかの阻害剤は、選択されるモノマーと共に含まれてよい。また、阻害剤は、本願の反応混合物に意図的に添加してもよい。含まれ得る阻害剤の量は、反応混合物の約100〜約2,500μgm/gmである。
【0082】
阻害剤は、任意で含まれてよい。驚くべきことに、かなりの量のBHTを含んでいても、フリーラジカル阻害剤は、測定される半減期の比を実質的に変化させない。しかし、より多くの量の阻害剤を含むと、得られるレンズの特性を変化させ、弾性率を低下させる。したがって、反応性混合物中に少なくとも1つの阻害剤を含むことが望ましい場合がある。フリーラジカル反応阻害剤は、成長ラジカルと速やかに反応して、鎖を終結させる安定なラジカル種を生成する化合物である。阻害剤の分類としては、キノン、置換フェノール、二級芳香族アミン、ラクトン、及びニトロ化合物が挙げられる。阻害剤の具体例としては、BHT、MEHQ、ヒドロキシアミン、ベンゾフラノン誘導体、分子酸素、ビタミンE、一酸化窒素/二酸化窒素混合物(その場でニトロキシドを形成する)、並びにこれらの混合物及び組合せ等が挙げられる。
【0083】
連鎖移動剤の分類の例としては、アルキルチオール、ジチオカルボン酸エステル、これらの組合せ等が挙げられる。制御されたフリーラジカル阻害剤の例としては、ニトロキシド媒介重合(NMP)(The Chemistry of Radical Polymerization,2nd ed.Moad and Solomon,pgs 472〜479に開示されているものを含む)、低分子量活性化有機ハロゲン化物を含む原子移動ラジカル重合(ATRP)(The Chemistry of Radical Polymerization,2nd ed.Moad and Solomon,pgs 488〜89 and 492〜497に開示されているものを含む)、及びチオカルボニルチオ剤を含む可逆性付加断片化(鎖)移動(RAFT)重合(The Chemistry of Radical Polymerization,2nd ed.Moad and Solomon,pgs 508〜514に開示されているものを含む)が挙げられる。制御されたフリーラジカル開始剤を用いる場合、開始剤系の一部又は全てとして用いられる。
【0084】
反応混合物の重合は、適切に選択された可視光又は紫外線を用いて開始させることができる。また、例えば電子線を使用することにより光開始剤を使用することなく反応を実施することもできる。開始剤は、ビスアシルホスフィンオキシド、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))又は1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組合せ等から選択することができる。重合開始の好ましい方法は、可視光である。ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))が、好適な光開始剤である。
【0085】
また、反応混合物は、少なくとも1つの希釈剤を含んでよく、又は「未希釈」であってもよい。希釈剤を用いる場合、選択された希釈剤は、反応性混合物中の成分を可溶化するはずである。選択された親水性及び疎水性成分の特性は、所望の相溶化を提供する希釈剤の特性に影響を与え得ることが理解される。例えば、反応性混合物が中程度の極性成分のみを含有する場合、中程度のδpを有する希釈剤が使用され得る。しかし、反応性混合物が高い極性成分を含有する場合、希釈剤は高いδpを有する必要がある場合がある。しかし、希釈剤がより疎水性になるので、希釈剤を水で置換する上で必要な処理工程では、水以外の溶媒の使用が必要となる。これは、望ましくないことであるが、製造工程の複雑性及びコストを高めてしまうことがある。したがって、加工の利便性に必要なレベルを有する成分への所望の適合性を与える希釈剤を選択することは重要である。
【0086】
使用される希釈剤のタイプ及び量はまた、得られたポリマー及び物品の特性に影響を与える。最終物品の曇り度、湿潤性、及び湿潤性は、比較的疎水性の希釈剤の選択及び/又は用いられる希釈剤の濃度低下によって改善することができる。
【0087】
本発明の装置の調製に有用な希釈剤としては、エーテル、エステル、アミド、アルコール、カルボン酸、及びこれらの組合せが挙げられる。アミド、カルボン酸、及びアルコールが、好ましい希釈剤であり、カルボン酸、二級及び三級アルコールが、より好ましい希釈剤である。
【0088】
本発明の希釈剤として有用なアルコールの例としては、以下の式を有するものが挙げられ、
【化6】
式中、R、R’、及びR”は、独立して、H、任意でハロゲン、エーテル、エステル、アリール、アミン、アミド、アルケン、アルキン、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、ケトン等を含む1又は2以上の基で置換されてもよい1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状の一価アルキルから選択されるか、又はR、R’、及びR”のうちの任意の2つ若しくは3つ全てが一緒に結合して、上記の通り置換されてもよい1〜10個の炭素を有するアルキル等の1又は2以上の環状構造を形成してもよいが、但し、R、R’、又はR”のうちの1以下がHである。
【0089】
R、R’、及びR”は、独立して、H又は1〜7個の炭素を有する非置換の直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基から選択されることが好ましい。R、R’、及びR”は、独立して、1〜7個の炭素を有する非置換の直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基から選択されることがより好ましい。好ましい希釈剤は、4以上、より好ましくは5以上の合計炭素を有してよいが、その理由は、より高分子量の希釈剤は、より低い揮発性及びより低い引火性を有するためである。R、R’、及びR”のうちの1つがHであるとき、構造は、二級アルコールを形成する。R、R’、及びR”がいずれもHではないとき、構造は、三級アルコールを形成する。三級アルコールは、二級アルコールよりも好ましい。希釈剤は、その炭素原子の総数が5個以下である場合に、不活性であり、かつ、水によって容易に置換可能であることが好ましい。
【0090】
有用な二級アルコールの例には、2−ブタノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びエクソノルボルネオール(exonorborneol)、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール(norborneol)等が含まれる。
【0091】
有用な三級アルコールの例としては、tert−ブタノール、tert−アミル、アルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、及び3−エチル−3−ペンタノール等が挙げられる。
【0092】
有用なカルボン酸の例としては、1又は2つのカルボン酸基及び任意でフェニル基を有するC〜C16、カルボン酸が挙げられる。具体例としては、酢酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタン酸、ベンジル酸、これらの組合せ等が挙げられる。
【0093】
単独のアルコール、又は上述のアルコールのうちの2つ以上の混合物、若しくは上述の構造に係る2つ以上のアルコールの混合物は、本発明のポリマーを作製するために、希釈剤として使用することができる。
【0094】
希釈剤は、少なくとも4個の炭素を有する二級及び三級アルコールから選択してよい。好適な例としては、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノールが挙げられる。
【0095】
希釈剤は、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、tert−ブチルアルコール、3−メチル−3−ペンタノール、イソプロパノール、tアミルアルコール、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸i−プロピル、3,7−ジメチル−3−オクタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、Nメチルピロリジノン及びこれらの混合物から選択してよい。本発明に有用な更なる希釈剤は、米国特許第6,020,445号及び米国特許出願公開第2010−0280146 A1号に開示されており、これらは、参照することによって本明細書に援用される。
【0096】
希釈剤は、加工条件において水溶性であり、短時間でレンズを水で容易に洗い流すことができる。好適な水溶性希釈剤には、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、三級アミルアルコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、乳酸エチル、ジプロピルグリコールメチルエーテル、これらの混合物等が含まれる。水溶性の希釈剤の使用により、成型後のプロセスを、水のみを用いて又は実質的な成分としての水を含む水溶液を用いて行うことが可能になる。
【0097】
希釈剤は、反応性混合物中の全成分の合計の約40重量%以下の量で用いてよい。希釈剤は、反応性混合物中の全成分の合計の約30%未満の量、例えば、約2〜約20重量%の量で用いてよい。
【0098】
わずか2〜20重量%の量の希釈剤でさえも、得られるポリマーの弾性率を約20%低下させ、得られるポリマー及びレンズの湿潤性を改善できることが見出された。
【0099】
また、希釈剤は、得られるポリマーの弾性率を低下させ、レンズ硬化効率を改善し、残渣を低減するために更なる成分を含んでよい。反応性混合物の粘度を上昇させ及び/又は遅反応性親水性モノマーとの水素結合の程度を上昇させることができる成分が望ましい。好適な成分としては、ポリアミド、ポリラクタム、例えば、PVP及びそのコポリマー、ポリオール及びポリオール含有成分、例えば、グリセリン、ホウ酸、ホウ酸グリセロールエステル、ポリアルキレングリコール、これらの組合せ等が挙げられる。
【0100】
好適なポリラクタムとしては、PVP、並びにNVP及び親水性モノマー由来の繰り返し単位を含むコポリマーが挙げられる。ポリラクタムは、PVPから選択され、ポリアミドは、DMAを含む。
【0101】
ポリアミド又はポリラクタムを用いる場合、これらは、約K12〜K120(約3900〜約3,000,000ダルトンM)又はK30〜K90(約42,000〜約1,300,000ダルトンM)の分子量を有する。
【0102】
好適なポリアルキレングリコールとしては、約350以下、好適には約200gm/mol未満の分子量を有するポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0103】
用いる場合、ポリオール、ポリオール含有成分、ポリアミド、及びポリラクタムは、約5重量%未満又は約0.2〜約5重量%の量で用いられる。また、本発明の希釈剤及び補助希釈剤は、光硬化の終わりにポリマー中に残る残渣を低減する。これは、直径を含むより一貫した特性を有するレンズを提供する。硬化の終わりに存在する残存遅反応性親水性成分は、硬化ポリマーの約2重量%未満((残存成分の重量/硬化ポリマーの重量)×100%)又は約1重量%未満、いくつかの場合には約0.8重量%未満であってよい。また、残渣の低減により、約0.05mm未満変動し得るレンズ直径を含むより一貫したレンズ特性が得られる。
【0104】
反応性混合物には、これらに限定されるものではないが、薬剤、抗微生物化合物、反応性発色剤、顔料、共重合性及び非重合性色素、離型剤及びこれらの組み合わせ等の更なる成分を含有してもよい。
【0105】
反応性成分と希釈剤との組合せとしては、約20〜約65重量%のシリコーン含有モノマー、約37〜約70重量%の遅反応性親水性モノマー、約2〜約40重量%のヒドロキシル含有成分、約0.2〜約3重量%の少なくとも1つの架橋モノマー、約0〜約3重量%のUV吸収モノマー(全て、全反応性成分の重量%に基づく)を有するものが挙げられる。混合物は、約20〜約60重量%(反応性及び非反応性の全成分の重量%)の1又は2以上の希釈剤を更に含んでよい。
【0106】
本発明の反応性混合物は、振盪又は攪拌等の当業者に周知のいずれかの方法で形成でき、周知法によるポリマー用品又は用具の形成に使用できる。
【0107】
例えば、本発明の生物医学装置は、反応性成分及び希釈剤を重合開始剤と混合し、適切な条件下で硬化させて、その後、木摺打ち、切断等によって適切な形状に形成することができる生成物を形成することによって調製することができる。別法として、反応性混合物は、型に入れた後に硬化させ、適当な物品とすることができる。
【0108】
コンタクトレンズの生産における反応性混合物の加工には、スピンキャスティング及び静鋳造法(static casting)を含めた様々なプロセスが既知である。スピンキャスト法については米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示されており、静止キャスト法については米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。本発明のポリマーを含むコンタクトレンズを製造する方法は、シリコーンヒドロゲルの直接成形によってよく、これは、経済的で、含水レンズの最終形状を正確に制御することができる方法である。この方法の場合、最終の所望のシリコーンヒドロゲル、すなわち、水膨潤ポリマーの形状を有する型に反応性混合物を入れ、モノマーが重合する条件に当該反応性混合物を供し、それによって、ポリマー/希釈剤混合物を所望の最終製品の形状にする。
【0109】
図1を参照すると、コンタクトレンズ等の眼科用レンズ100、及び眼科用レンズ100の形成に用いられる成形型部品101、102の図が示される。成形型部品は、背面成形型部品101及び前面成形型部品102を備えてよい。本明細書で使用するとき、用語「前面成形型部品」は、その凹面104が、眼科用レンズの前面を形成するのに用いられるレンズ形成面である成形型部品を指す。同様に、用語「背面成形型部品」は、その凸面105が、眼科用レンズ100の背面を形成するレンズ形成面を形成する成形型部品101を指す。成形型部品101及び102は凹凸状であってよく、好ましくは、成形型部品101、102の凹凸部の最上端縁部周囲を囲む平面環状フランジを含む。
【0110】
典型的には、成形型部品101、102は「サンドイッチ」状に配置される。前面成形型部品102は、成形型部品の凹面104が上向きの状態で底部にある。背面成形型部品101は、背面成形型部品101の凸面105が前面成形型部品102の凹部に一部突出している状態で、前面成形型部品102の上部に対称的に配置され得る。背面成形型部品101は、その凸面105が、周囲全体にわたって前面成形型部品102の凹面104の外側縁部に嵌合し、それによって協働して眼科用レンズ100が形成される封止された型穴を形成するような寸法であってよい。
【0111】
成形型部品101、102は、熱可塑性樹脂で作製されてよく、重合開始用の化学線に対して透過性であり、すなわち、型穴中で反応性混合物の重合を開始する上で有効な強度及び波長の化学線の少なくとも一部、時には全部が、成形型部品101、102を貫通できる。
【0112】
例えば、成形型部品の製造に好適な熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)、スチレンとアクリロニトリル又はブタジエンとのコポリマー又は混合物、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー(Ticonaから入手可能なTopas、又はZeonから入手可能なZeonor等)、上記の任意のもののコポリマー及びブレンド、又はその他既存の材料を含めることができる。
【0113】
レンズ100を形成するための反応混合物の重合の後、レンズ表面103は、典型的には成形型部品表面104に付着するはずである。本発明の工程は、表面103の成形型部品表面からの取り外しを容易にする。
【0114】
第1の成形型部品101は、離型プロセスにおいて第2の成形型部品102から分離され得る。レンズ100は、硬化プロセス中に第2の成形型部品102(すなわち、前側曲線成形型部品)に付着し得、分離後、レンズ100が前側曲線成形型部品102から取り外されるまで、第2の成形型部品102に付着したままである。あるいは、レンズ100は第1の成形型部品101に付着し得る。
【0115】
レンズ100は、溶媒と接触させる又は乾燥離型を含む任意のプロセスによって型から取り外してよい。例えば、レンズ100及び離型後に付着する成形型部品を水溶液と接触させてよい。水溶液は、水溶液の沸点未満の任意の温度に加熱してよい。加熱は、爆発の可能性を最小化するために熱交換ユニットで行うか、又は液体を加熱するための任意の他の利用可能な手段若しくは装置で行うことができる。
【0116】
本明細書で使用するとき、加工には、成形型からレンズを取り外す工程と、希釈剤を水溶液で除去又は交換する工程とが含まれる。これらの工程は、別々に、又は単一の工程若しくは段階で行われてもよい。加工温度は、約30℃〜水溶液の沸点、例えば、約30℃〜約95℃、又は約50℃〜約95℃の任意の温度であってよい。
【0117】
水溶液は、主に水である。水溶液は、少なくとも約70重量%が水、少なくとも約90重量%が水、又は少なくとも約95重量%が水であってよい。この水溶液は、ホウ酸緩衝生理食塩水、ホウ酸ナトリウム溶液、重炭酸ナトリウム溶液等のコンタクトレンズ包装用溶液であってもよい。水溶液はまた、添加剤、例えば、界面活性剤、防腐剤、離型助剤、抗菌剤、薬学的及び栄養学的成分、潤滑剤、湿潤剤、塩類、緩衝剤、これらの混合物等も含んでよい。水溶液中に含めてよい添加剤の具体例として、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Tyloxapol、オクチルフェノキシ(オキシエチレン)エタノール、アンホテリック(amphoteric)10、EDTA、ソルビン酸、DYMED、グルコン酸クロルヘキシジン(chlorhexadine gluconate)、過酸化水素、チメロサール、polyquad、ポリヘキサメチレンビグアニド、これらの混合物等が挙げられる。様々な領域が用いられる場合、異なる添加剤を異なる領域に含めてよい。0.01重量%〜10重量%の様々な量で、ただし累積約10重量%未満の量で、添加剤を水和溶液に添加することができる。
【0118】
眼科用レンズ100の水溶液への曝露は、洗浄、噴霧、浸漬、水浸、又はこれらの任意の組み合わせといった任意の方法で達成することができる。例えば、レンズ100は水和塔内で脱イオン水を含む水溶液で洗浄され得る。
【0119】
水和塔を用いると、レンズ100を含む前側曲線成形型部品102を、パレット又はトレイ内に配置し、垂直方向に積み重ねることができる。水溶液がレンズ100全体に流下するように、この溶液を積み重ねたレンズ100の上部に導入してよい。また、塔に沿った様々な位置にこの溶液を導入することもできる。レンズ100を徐々により新しい溶液に曝露するように、トレイを上方に移動させてよい。
【0120】
あるいは、眼科用レンズ100は、水溶液に浸漬又は水漬してもよい。
【0121】
接触工程は、最大約12時間、最大約2時間、又は約2分間〜約2時間継続してよいが、接触工程の長さは、任意の添加剤を含むレンズ材料、溶液又は溶媒に用いられる物質、及び溶液温度に依存する。十分な処理時間により、典型的にはコンタクトレンズが収縮し、成形型部品からレンズが取り出される。接触時間を長くすると、浸出がより大きくなる。
【0122】
使用される水溶液の体積は、レンズ1枚あたり約1mL超、いくつかの実施形態ではレンズ1枚あたり約5mL超の任意の量であってよい。
【0123】
分離又は離型後、フレームの一部となり得る前面曲線上のレンズは、これらが前面曲線から取り出されると、コンタクトレンズを受け入れるための個々の凹状の溝が付けられたカップに結合する。このカップはトレイの一部であってよい。例として、それぞれ32枚のレンズを搭載するトレイを挙げることができ、このトレイ20枚はマガジン内に積み重ねることができる。
【0124】
あるいは、レンズを水溶液に漬けてもよい。マガジンは蓄積することができ、次いで、水溶液を収容しているタンクに沈めてよい。この水溶液もまた、上述のその他添加剤を含んでよい。
【0125】
本発明の眼科用器具、特に眼科用レンズは、これらを特に有用にする特性のバランスを有する。このような性質として、透明度、光学性、含水量、酸素透過性及び前進接触角が挙げられる。したがって、生物医学装置は、約55%超、約60%超の含水量を有するコンタクトレンズであってよい。
【0126】
本明細書で使用するところの透明度とは、視認できる曇りが実質的にないことを意味する。透明なレンズは、約70%未満、より好ましくは約50%未満、又は約10%未満の曇り度値を有する。
【0127】
好適な酸素透過性として、約80バレル超、約85バレル超、又は少なくとも約100バレルであるものが挙げられる。
【0128】
また、生物医学装置、特に、眼科用装置及びコンタクトレンズは、約1034kPa(150psi)未満又は約689kPa(100psi)未満の弾性率を有する。
【0129】
生物医学装置、特に眼科用機器及びコンタクトレンズは、約80°未満、約75°未満、又は約70°未満の平均接触角(前進)を有する。本発明の物品は上述した酸素透過率、含水率、及び接触角の組み合わせを有し得る。上記の範囲のすべての組み合わせは、本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
【0130】
ヒトの涙は複雑で、眼の潤滑性を保つ手助けとなるタンパク質、脂質及び他の成分を含んでいる。脂質の種類の例として、ワックスエステル、コレステロールエステル及びコレステロールが含まれる。ヒトの涙に見いだされるタンパク質の例は、ラクトフェリン、リゾチーム、リポカリン、血清アルブミン、分泌型免疫グロブリンAを含む。
【0131】
リゾチームは通常ヒトの涙に相当な濃度で存在する。リゾチームは溶菌性で眼を細菌の感染から守ると考えられる。市販のコンタクトレンズに相溶するリゾチームの量は、たったの数マイクログラムからEtafilcon Aコンタクトレンズ(Johnson & Johnson Vision Care,Inc.からACUVUE及びACUVUE2の商品名で市販されている)の800マイクログラムまで大きく変化している。Etafilcon Aコンタクトレンズは長年市販されており、どのソフトコンタクトレンズと比べても最低に近い副作用発生率を示す。このように、相当なレベルのリゾチームを取り込むコンタクトレンズが好ましい。本発明のレンズは少なくとも約30μg、50μg、100μgのリゾチームを取り込むが、これら全ては72時間、35℃のインキュベーションにおける2mg/mL溶液からの取り込みである。
【0132】
レンズの中の、上の、及びレンズと結びついたタンパク質の形態も重要である。変性したタンパク質は角膜の炎症と着用者の不快感に寄与すると考えられる。pH、角膜表面温度、着用時間及び閉眼着用等の環境因子がタンパク質の変性に寄与すると信じられている。しかし、組成の異なるレンズは著しく異なるタンパク質の取り込み及び変性プロファイルを示すことがある。本発明の1つの実施形態においては、発明のレンズにより取り込まれたタンパク質の大部分は、着用中生来の形態であり続ける。他の実施形態においては、取り込まれたタンパク質の少なくとも約50%、少なくとも約70%及び少なくとも約80%は、24時間後、3日後、及び意図した着用期間中生来のまままであり続ける。
【0133】
また本発明の眼科用装置は、1つの実施形態においては約20%未満の、いくつかの実施形態においては約10%未満の、及び他の実施形態においては約5%未満のPolyquaternium−1(ジメチル−ビス[(E)−4−[トリス(2−ヒドロキシエチル)アザニウミル]ブタ−2−エニル]アザニウム三塩化物)(「PQ1」)を、0.001重量%のPQ1を含む眼科用液剤から取り込む。
【0134】
Hansen溶解度パラメーター
Hansen溶解度パラメーターδpは、Barton,CRC Handbook of Solubility Par.,1st.Ed.1983,page 85〜87に記載される原子団寄与法、及び表13、14を使用して算出できる。
【0135】
曇り度値の測定
水和した試験レンズを、周囲温度で透明な20×40×10mmガラスセル中のホウ酸緩衝生理食塩水に入れて平坦な黒い背景の上に置き、光ファイバーランプ(Dolan−Jenner PL−900光ファイバーライト又はTitna Tool Supply Co.製、直径0.5”光ガイドセットを有する電力設定4〜5.4の光ファイバーライト)を用いて、レンズセルに垂直に66°の角度で下から照明し、レンズプラットフォームから14mm上に配置されたビデオカメラ(Navitar TV Zoom 7000ズームレンズを備えるDVC 1300C:19130RGBカメラ)を用いて、レンズセルに垂直にレンズの画像を上から撮影することによって、曇り度を測定した。バックグラウンド散乱は、EPIX XCAP V 2.2ソフトウェアを使用して、ブランクセルの画像を減じることによって、レンズの散乱から減じる。減じられた散乱光画像を、中央10mmのレンズ上で統合した後、曇り度値100で適宜設定される(曇り度値0として設定されるレンズはない)、−1.00ジオプターCSI Thin Lens(登録商標)と比較することによって定量的に分析する。5個のレンズを分析し、結果を平均して、曇り度値を標準CSIレンズのパーセンテージとして得る。
【0136】
あるいは、−1.00ジオプターのCSI Thin Lenses(登録商標)の代わりに、ストックラテックス球の水性分散液のシリーズ(Ted Pella,Inc.から0.49μmポリスチレンラテックス球−認定されたナノ球体サイズ標準として市販、製品番号610−30)を標準として用いてよい。一連の較正サンプルを脱イオン水中で調製した。様々な濃度の各溶液をキュベット(路長2mm)に入れ、上記方法を用いて溶液の曇り度を測定した。
【0137】
【表1】
【0138】
平均GS=平均グレイスケール
濃度に対する平均GSのプロットの勾配(47.1)を実験的に得られた標準曲線の勾配で除し、この比にGS値を得るためにレンズについて測定された散乱値を乗じることによって補正係数を得た。
【0139】
「CSI曇り度値」は、以下の通り計算することができ、
CSI曇り度値=100×(GS−BS)/(217−BS)
式中、GSは、グレイスケールであり、BSは、バックグラウンド散乱である。
【0140】
含水率
コンタクトレンズの含水率を以下のように測定した。1組3枚のレンズ3組を包装用溶液中で24時間静置する。各レンズを吸湿拭き取りシートで拭き取り、秤量する。レンズを1.4kPa(0.4インチHg)以下の圧力下、60℃で4時間乾燥する。乾燥したレンズを秤量する。含水率は次のように計算する。
【数1】
【0141】
各試料について含水率の平均及び標準偏差を計算して報告する。
【0142】
弾性率
弾性率は、初期ゲージ高さにまで下げられたロードセルを備えた一定速度移動タイプの引張試験機のクロスヘッドを使用して測定した。好適な試験機には、Instronモデル1122が含まれる。長さ1.33cm(0.522インチ)、「耳」幅0.701cm(0.276インチ)、及び「首」幅0.541cm(0.213インチ)の犬用の骨形状の試料をグリップに載置し、破断するまで5.1cm/分(2インチ/分)のひずみ定速で引張した。試料の初期標点距離(Lo)及び破断時の試料長(Lf)を測定する。各組成物の12個の標本を測定し、平均を報告する。伸び率は、[(Lf−Lo)/Lo]×100である。応力/ひずみ曲線の初期線状部分で引っ張り係数を測定する。
【0143】
前進接触角
本明細書に報告する全ての接触角は、前進接触角である。前進接触角を以下のように測定した。幅約5mmの中央ストリップをレンズから裁断することによって、各セットから4個の試料を準備し、包装用溶液中で平衡させた。試料を生理食塩水中に浸漬したり、引き出したりしながら、レンズ表面とホウ酸緩衝生理食塩水との間の濡れ抵抗力を、Wihelmy微量天秤を使用して23℃で測定した。以下の等式
F=2γpcosθ 又は θ=cos−1(F/2γp)
(式中、Fは濡れ抵抗力であり、γはプローブ液体の表面張力であり、pはメニスカスにおける試料の周囲であり、θは接触角である)を使用した。前進接触角は、試料を包装用溶液中に浸漬させる濡れ実験の一部から得られる。各試料を4回循環させ、結果を平均してレンズの前進接触角を得た。
【0144】
酸素透過係数(Dk)
Dkは以下のようにして測定される。直径4mmの金陰極及び銀リング陽極からなるポーラログラフィー酸素センサ上にレンズを配置し、メッシュ支持体で上面を覆う。レンズを加湿した2.1% Oの雰囲気に曝す。レンズを通って拡散する酸素をセンサによって測定する。複数のレンズを互いに重ねて厚さを増加させるか、さらに厚いレンズを使用する。厚さの値が大きく異なる4個の試料のL/Dkを測定し、厚さに対してプロットする。回帰直線勾配(regressed slope)の逆数が試料のDkである。参照値は、この方法を使用して市販のコンタクトレンズについて測定した値である。Bausch & Lombより入手可能なBalafilcon Aレンズは約79バーラーの測定値を示す。Etafilconレンズからは、20〜25バレルの測定値が得られる。(1バレル=10−10(ガスのcm×cm)/(ポリマーのcm×秒×cm Hg))。
【0145】
リゾチーム、リポカリン、&ムチンの取り込み
リゾチームの取り込みは、以下のように測定した。リゾチームの取り込み試験に使用されたリゾチーム溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート生理食塩水緩衝液に、2mg/mLの濃度で溶解させたニワトリの卵白(Sigma,L7651)からのリゾチームを含んでいた。
【0146】
各実施例について、3枚のレンズがそれぞれのタンパク質溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼの上で包装用溶液を除去するために拭い、減菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのリゾチーム溶液を含む、減菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動した。各レンズを溶液中に完全に浸した。対照として、コンタクトレンズを含まない1つのウェルに2mLのリゾチーム溶液を入れた。
【0147】
レンズを含むプレート及びタンパク質溶液のみを含む対照用プレート及びPBS中のレンズは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムで覆い、軌道振とう器に乗せ、35℃で、100rpmで攪拌し、72時間処理した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLのPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸し3〜5回洗浄した。レンズを紙タオルの上で拭い過剰のPBS溶液を除去し、減菌した円錐形のチューブに移した(チューブ当たり1枚のレンズ)。各チューブは、各レンズの組成から予想されるリゾチーム取り込み量の推定を基に決められる量のPBSを含んでいた。検査される各チューブのリゾチーム濃度は、製造業者が述べている(0.05マイクログラム〜30マイクログラム)アルブミン標準レンジ内であることが必要である。レンズ当たり100μg未満のリゾチームレベルを取り込むことが分かっている試料は、5倍に希釈した。レンズ(Etafilcon Aレンズ等)当たり500μgを超えるリゾチームレベルを取り込むことが分かっている試料は、20倍に希釈した。
【0148】
Etafilcon以外の全ての試料に対して、1mLのアリコートのPBSを使用した。EtafilconAレンズに対しては、20mLを使用した。各対照レンズについては、ウェルプレートがリゾチーム溶液の代わりにPBSを含むこと以外は、同じように処理した。
【0149】
リゾチームの取り込みは、オンレンズ・ビシンコニン酸法により、QP−BCAキット(Sigma、QP−BCA)を使用し、製造業者の説明する手順により測定し(標準前処理はキットに記載されている)、リゾチーム溶液に浸したレンズについて測定した光学密度から、PBSに浸したレンズについて測定した光学密度(バックグラウンド)を減じて計算した。
【0150】
光学密度は、562nmの光学密度が読み取れる、SynergyII Microのプレートリーダにより測定した。
【0151】
リポカリンの取り込みは、次の溶液及び方法を使用して測定した。リポカリン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート生理食塩水緩衝液(Sigma,D8662)に、2mg/mLの濃度で溶解させたウシのミルク(Sigma,L3908)からのBラクトグロブリン(リポカリン)を含んでいた。
【0152】
各実施例について、3枚のレンズがリポカリン溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてのPBSを使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼの上で包装用溶液を除去するために拭い、減菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのリポカリン溶液を含む、減菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動した。各レンズを溶液中に完全に浸した。対照レンズは、リポカリンの代わりに、浸漬液としてPBSを使用して準備した。リポカリン溶液中に浸したレンズを含むプレート及びPBS中に浸した対照レンズを含むプレートは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムで覆い、軌道振とう器に乗せ、35℃で、100rpmで攪拌し、72時間処理した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLのPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸し3〜5回洗浄した。レンズを紙タオルの上で拭い、過剰のPBS溶液を除去し、各ウェルが1mLのPBS溶液を含む、減菌した24個のウェルプレートに移動した。
【0153】
リポカリンの取り込みは、オンレンズ・ビシンコニン酸法により、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用し、製造業者の説明する手順により測定し(標準前処理はキットに記載されている)、リポカリン溶液に浸したレンズについて測定した光学密度から、PBSに浸したレンズについて測定した光学密度(バックグラウンド)を減じて計算した。光学密度は、562nmの光学密度が読み取れる、SynergyII Microのプレートリーダにより測定した。
【0154】
ムチンの取り込みは、次の溶液及び方法を使用して測定した。ムチン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート生理食塩水緩衝液(Sigma,D8662)に、2mg/mLの濃度で溶解させたウシの顎下腺(Sigma,M3895−type 1−S)からのムチンを含んでいた。
【0155】
各実施例について、3枚のレンズがムチン溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてPBSを使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼの上で包装用溶液を除去するために拭い、減菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのムチン溶液を含む、減菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動した。各レンズを溶液中に完全に浸した。対照レンズは、リポカリンの代わりに、浸漬液としてPBSを使用して準備した。
【0156】
ムチン溶液中に浸したレンズを含むプレート及びPBS中に浸した対照レンズを含むプレートは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムで覆い、軌道振とう器に乗せ、35℃で、100rpmで攪拌し、72時間処理した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLのPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸し3〜5回洗浄した。レンズを紙タオルの上で拭い、過剰のPBS溶液を除去し、各ウェルが1mLのPBS溶液を含む、減菌した24個のウェルプレートに移動した。
【0157】
ムチンの取り込みは、オンレンズ・ビシンコニン酸法により、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用し、製造業者の説明する手順により測定し(標準前処理はキットに記載されている)、ムチン溶液に浸したレンズについて測定した光学密度から、PBSに浸したレンズについて測定した光学密度(バックグラウンド)を減じて計算される。光学密度は、562nmの光学密度が読み取れる、SynergyII Microのプレートリーダにより測定した。
【0158】
速度
反応性モノマーミックスの調製:15〜20gのバッチ
速度試験のための反応性モノマーの調製物を、以下の通り黄色光下で調製した。各速度例用の成分を20mLの琥珀色のホウケイ酸ガラスシンチレーションバイアル(Wheaton 320ブランド、カタログ番号80076−576、又は等価物)に量り入れた。バイアルに蓋をし(PTFEで裏張りされた緑色の蓋、Qorpak、供給元番号5205/100、カタログ番号16161−213)、全ての固体が溶解し、均質な混合物が得られるまでジャーローラー上を転がした。
【0159】
脱気
反応性モノマーミックスを、7〜10分間黄色光下で、真空下にて脱気し、真空を破壊した後窒素でバックフィリングした。バイアルに速やかに蓋をし、図2に示す通り、ゲート付開口部7を介して二区画窒素硬化ボックスの区画1に入れた。区画1の条件は、室温及び<0.5%酸素(連続窒素パージを用いて)であった。
【0160】
窒素硬化ボックス−区画2
両区画内の酸素レベルは、連続/一定窒素パージによって維持した。区画2内の温度は、ヒーター(COY,Laboratory Products Inc.)によって維持した。各速度試験を実施する前に最低4時間、窒素硬化ボックスを平衡化させた。脱気された反応性混合物(きつく蓋をした琥珀色のバイアル内)を、平衡期間中に区画1に入れた。
【0161】
光源及び強度設定
図3に示す通り、それぞれ2つの蛍光ランプ(Philips TLK 40W/03,58cm)を備える2つの蛍光灯照明器具(Lithonia Lighting Fluorescent Luminaire(Gas Tube Luminaire)、60cm×10.5cm)を平行に配置した。硬化強度は、光源に対して棚(図2及び3に示す)の高さを調整することによって弱めた。所与の棚の高さにおける強度は、図3に示す通り、サンプルの位置と一致する鏡面上に較正された線量計/光度計のセンサを配置することによって測定した。4つのランプの配置における2つ目のランプと3つ目のランプとの間の空間の直下にセンサを置いた。
【0162】
較正された化学天秤(4小数位)を用いて、蓋(ポリエチレンが挿入された白色の蓋)付の透明なホウケイ酸ガラスシンチレーションバイアル(Wheaton 986541)の重量を測定した。蓋付バイアルを窒素硬化ボックスの区画1に移した。蓋を外し、較正された10〜100μLのエッペンドルフピペットを用いて、100μLの反応性モノマーミックスをバイアルに移した。バイアルにきつく蓋をし、速やかにドア6を介して区画2に移し、図2に示す通り、鏡面4上に置いた。4つのランプの配置における2つ目のランプと3つ目のランプとの間の空間の直下にサンプルを置いた。光源3のスイッチを入れ、サンプルを特定の期間曝露した。光源は4〜5mW/cmに設定したが、サンプルに達する実際の強度は、サンプルガラスバイアルの蓋があるため0.7〜1.3mW/cmである。曝露後、光源3のスイッチを切り、バイアル(蓋付)を再度計量して、サンプル重量の差を決定した。較正された500〜5000μLのエッペンドルフピペットを用いて、10mLのHPLCグレードのメタノールをバイアルに添加した。
【0163】
反応性モノマーミックスのアリコート(100μL)を別々のホウケイ酸ガラスシンチレーションバイアルにピペットで入れ、上記手順を実施して、以下の最低時点(分)でサンプルを作製した:0、0.25、0.50、0.75、1、2、4、6、8、10。
【0164】
硬化ポリマーを、室温で穏やかに振盪することによって一晩メタノールで抽出した。
【0165】
抽出物を、以下の手順を用いてUV検出器(HPLC/UV)を備える高速液体クロマトグラフィーによって残存成分について分析した。
【0166】
抽出物中のmPDMSの定量を、典型的に1μg/mL〜800μg/mLをカバーする外部較正標準(約6〜11、n=6オリゴマーの応答を用いて)に対して実施した。抽出物中のmPDMSの濃度が較正範囲外であった場合、より正確に定量するために、抽出物をメタノールで希釈して、濃度を較正範囲内にした。
【0167】
クロマトグラフィー条件
カラム:Agilent Zorbax Eclipse XDB18,4.6×50mm×1.8μm
カラム温度:30℃
UV検出器:217nm
注入量:20μL
移動相
溶離剤A:脱イオン
溶離剤B:アセトニトリル
溶離剤C:イソプロパノール
流量:1mL/分
【0168】
【表2】
【0169】
抽出物中のmPDMS以外の成分の定量を、各成分について、典型的に1μg/mL〜800μg/mLをカバーする外部較正標準(約6〜11)に対して実施した。抽出物中の成分の濃度が較正範囲外であった場合、より正確に定量するために、抽出物をメタノールで適宜希釈して、濃度を較正範囲内にした。
【0170】
クロマトグラフィー条件
カラム:Agilent Zorbax Eclipse Plus 18,4.6×75mm×1.8μm
カラム温度:30℃
UV検出器:217nm
注入量:5μL
移動相
溶離剤A:0.05% HPOを含む脱イオン水
溶離剤B:0.05% HPOを含むアセトニトリル
溶離剤C:メタノール
流量:1mL/分
【0171】
【表3】
【0172】
計算
1.各時点で、以下の値を決定する。
サンプル抽出物中の各成分の濃度(μg/mL)。
サンプル重量のパーセントとして表される、サンプル抽出物中の各成分の濃度は、以下の通りである。
成分%=[(μg/mL×抽出物の体積×希釈係数×10−6g/μg)/(サンプル重量g)]×100
(Tは、100%未反応成分を表す)に対するパーセントとして表される、存在する未反応成分のパーセント、
における%=(Tで測定された%/Tで測定された%)×100
2.上記で計算した成分%を用いて、各成分の濃度(μmol/g)を以下の通り計算する。
μmol/g=(成分%×10)/(成分の分子量)
3.工程2で決定した各成分の濃度(μmol/g)を用いて、Timeにおける濃度を以下の通り表した。
Log[A]/[A]、
式中、[A]は、x分における成分Aの濃度であり、
[A]は、0分(T)における成分Aの濃度である。
式Log[A]/[A]は、各時点について決定した。
【0173】
各成分について重合速度及び半減期を求めるために一次速度式を仮定した。以下の等式を、重合速度
Log[A]/[A]=−kt/2.303
及び半減期を計算するために用いた。
[A]/[0.5A]=kt1/2又はt1/2=0.693/k
各成分について、Log[A]/[A]対時間(分)のプロットを作成した。典型的に、線形成長(より短い硬化時間)に最もよく対応するデータ点(x,y)をプロットし、データを一次方程式にフィッティングした。
【0174】
勾配を用いて、各成分の運動速度定数(k)を以下の等式から評価した。
k(分−1)=勾配×−2.303
各成分の半減期(分)を以下の等式から評価した。
1/2=0.693/k
【0175】
各成分について評価した半減期を、各時点においてTに対する各成分のパーセントについて作成したデータと比較した。典型的に、各成分について、50%を消費するのにかかる時間は、一次速度式に基づく半減期に近かった。2つが著しく異なっていた場合(典型的に、約1分間未満の半減期が約30%、約1分間超約2.5分間未満の半減期が25%、2.5分間超の半減期が20%)、データ点(x,y)を再評価して、測定値とより一致している(20%未満)半減期(一次速度式に基づく)を提供する運動速度定数(k)を作成した。
【0176】
以下の実施例は本発明を更に説明するものであるが発明を限定するものではない。これらの例は、本発明を実施する方法を示唆するものにすぎない。ソフトコンタクトレンズ、並びに他の専門分野に精通した当業者は、本発明を実行する他の方法を見出すことができる。しかしながら、これらの方法は本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
【0177】
実施例で用いられる他の材料の一部を以下に特定する。
【実施例】
【0178】
以下の実施例では以下の略記を使用する。
【0179】
【表4-1】
【0180】
【表4-2】
【0181】
BAE(ホウ酸エステル)を以下の通り形成した。
エチレンジアミン四酢酸の5%(重量)溶液1.24部、グリセロール299部(重量)、及びホウ酸100部(重量)を反応フラスコに添加した。混合物を、撹拌しながら90℃に加熱した。混合物を155分間撹拌したとき、水蒸気を除去しながら、真空を適用して圧力を800Pa(6トール)未満に低下させた。圧力を267Pa(2トール)未満に低下させ、カールフィッシャー試験を用いて混合物の水%が0.2%未満に低下するまで、反応を2時間、又は必要に応じてそれ以上続けた。
【0182】
BAGE(ホウ酸グリセロールエステル)を以下の通り形成した。
上記の通り調製したBAEに、35〜40℃で60分間撹拌しながら624部(重量)のグリセロールを添加した。
【0183】
実施例1及び比較例1
表1に列挙する成分を混合することによって反応混合物を形成し、約17(±3)分間周囲温度で真空を適用することによって脱気した。次いで、反応混合物(75μL)を、室温及び<0.5% Oで、添加前に最低12時間RTのNボックス(区画1、図1)内にて脱気されている熱可塑性コンタクトレンズ成形型(FC−Zeonor、BCポリプロピレン)に添加した。BCをFC成形型上に置いて、パレットにおいて8個のBC/FCアセンブリを作製した。8つのパレットを組立て、硬化区画(区画2、図1)に移動させた。パレットを鏡面上に置き、水晶板(厚さ0.50mm)を各パレット上に置いた。4〜5mW/cmの強度、<0.5% O、及び50〜55℃で18分間レンズを硬化させた。
【0184】
成形型を手で取り外し(レンズはFCに残る)、レンズを50/50 IPA/HO(8パレット、1パレット当たり8個のレンズ)、1L溶液に1時間かけて離型させた。
【0185】
レンズを以下の順序でPSに「ステップダウン」した。
25/75IPA/HO(10分)、HO(30分)、HO(10分)、HO(10分)、及びレンズバイアル中のホウ酸塩緩衝包装用溶液中に保存し、30分間122℃で滅菌した。
【0186】
【表5】
【0187】
【表6】
【0188】
実施例1のレンズは、優れた曇り度(4%)、湿潤性(DCA 44°)、弾性率、伸び、及びDkを示した。比較例1のレンズは、大きく増加した接触角(127°)を示し、これは、湿潤性の顕著な低下を示す。また、比較例1は、実施例1(それぞれ102.9及び74.7)に比べて実質的に低下した弾性率(373kPa(54.1psi))及び酸素透過性(48.5)を示した。
【0189】
実施例2及び比較例2
実施例1及び比較例1の配合中の各成分の重合速度及び半減期を、上記反応速度の章に記載した手順を用いて求めた。各実施例では、サンプル抽出物中の各成分及び各時点について、以下の情報を報告する。測定した各残存成分の重量%(表3)、Tで測定した残渣%に対する各時点における各残存成分の組み込み%(表4)、各時点における各残存成分のμmol/g(表5)、及びlog[A]/[A](表6)、並びに重合反応定数及び半減期(表7及び8)。
【0190】
【表7】
【0191】
【表8】
【0192】
【表9】
【0193】
【表10】
【0194】
【表11】
【0195】
【表12】
【0196】
【表13】
【0197】
実施例2では、NVPの半減期は、他の成分HEMA(1.07)及びOH−mPDMS(1.17)の半減期のほぼ10倍遅い(11.36分)。比較例1では、DMAの半減期(2.01)は、シリコーン含有成分OH−mPDMS(1.66)の半減期とほぼ同じである。実施例1と比較例1との配合間の湿潤性の差は、比較例1における親水性モノマー(DMA)と比べて実施例1の遅反応性親水性モノマー(NVP)の重合が実質的に遅いことに起因すると考えられる。また、表9は、シリコーンモノマーの90%変換において、未反応シリコーン(mPDMS)と比べた未反応遅反応性親水性モノマーNVPのモル比が、NVPでは55.25、DMA系ではわずか9.27であることを示す。NVP含有系は、接触角によって測定したとき、改善された湿潤性を示し、また、高い酸素透過性を示す。DMA含有製剤の弾性率は、実質的に低かったが、これは、DMA及びシリコーンモノマーがよりランダムにネットワークに組み込まれることを指すと考えられる。NVP系は、シリコーン及びNVPのより大きなブロックを有すると考えられる。更に、親水性物質としてDMAを含有する比較例2系の速度論的半減期の比(1.21)は、湿潤性レンズを提供するには不十分である。比較例1のDMA及びHO−PDMSのモル濃度の比は、10未満(9.74)であった。
【0198】
実施例3〜5及び比較例3
実施例1に記載の調製物及び実施例2に記載の速度評価を、以下の表10に列挙する製剤について繰り返した。実施例及び比較例3の製剤を、便宜上表10に列挙する。表11〜14は、実施例3〜5及び比較例3の計算速度データの要約を示し、表15は、遅親水性成分のシリコーン成分に対する比を示す。実施例2及び比較例2の速度データは、上記表5及び6に示す。
【0199】
【表14】
【0200】
【表15】
【0201】
【表16】
【0202】
【表17】
【0203】
【表18】
【0204】
【表19】
【0205】
表15のデータを考慮すると、光開始反応性モノマーミックス中にUV吸収化合物を含むと、遅反応性親水性モノマーNVPの半減期が60〜400%増加するが、DMAの半減期は、1.73から2.01へとわずかに(16%)増加する。HO−mPDMSの半減期も増加した。SA2シリコーンの半減期は、UV吸収剤Norblocを添加すると減少したが、前記減少は、NVPの半減期の実質的増加を相殺するのに十分ではなかった。比較例2(DMA及びNorblocを含有する製剤)を比較例3(Norblocを含まずDMAを含有する製剤)と比較すると、DMA含有製剤中にNorblocを含むと、架橋剤TEGDMAの反応速度が低下し、その半減期は2倍以上になることが分かる。DMA/Norbloc含有製剤では、これは、架橋剤が、親水性モノマー及びシリコーン含有成分にはるかに類似する反応速度を有していたことを意味する。Norbloc等のUV吸収剤を含むことによりTEGDMAの反応速度が低下するにもかかわらず、親水性モノマー(0.145)及びシリコーン含有成分(1.05)よりも速かった(4.92)。
【0206】
実施例2に記載の方法を用いて実施例3〜5及び比較例3の製剤からコンタクトレンズを作製した。レンズの特性を測定し、以下の表16に示す。
【0207】
【表20】
【0208】
実施例2〜5のレンズは、所望の曇り度及び湿潤性に加えて、他の望ましい特性のバランスを示す。これら実施例は、それぞれ、遅反応性親水性モノマーの半減期:シリコーン含有成分の半減期の比が約2超であった。比較例2及び3は、2未満の半減期の比を有していた(それぞれ、1.2及び1.8)。したがって、所望の湿潤性を得るためには、約2超、いくつかの実施形態では約3超の半減期の比が望ましい。
【0209】
比較例2の弾性率(372kPa(54psi)、Norblocを含む)を比較例3(538kPa(78psi)Norblocを含まない)と比較すると、Norblocを含むことによって引き起こされるTEGDMAの反応速度変化は、得られるポリマーのネットワークにおける架橋を低減するのに十分であったことが分かる。したがって、架橋剤の量を変化させることに加えて、所望のポリマー構造及び弾性率を得るために異なる反応性比を有する架橋剤を選択してもよい。また、実施例4及び5のSA2/NVP含有製剤を比較しても、同じ挙動が観察される。
【0210】
実施例6〜10
BHT及び開始剤のレベルは、表17に示す通り変動させた。実施例10では、2重量%のVINALを実施例6の製剤に添加した。
【0211】
【表21】
【0212】
2つの製剤の速度を測定し、実施例1に記載の通り計算した。実施例2に記載の通りコンタクトレンズを作製した。製剤の速度を表18〜24に示す。レンズの特性を表25に示す。
【0213】
【表22】
【0214】
【表23】
【0215】
【表24】
【0216】
【表25】
【0217】
【表26】
【0218】
【表27】
** 該当無し
XX は測定不可
【0219】
【表28】
【0220】
実施例6〜10のレンズは全て、約5超の半減期の比を有し、全てが、望ましい低接触角(60°未満)、超低曇り度(10未満)、及び望ましい酸素透過性(80超)を示す。また、実施例6〜10のレンズは、90%変換における遅反応性親水性モノマーのシリコーン含有成分に対する濃度比が約83超である。実施例6及び7を比較すると、阻害剤濃度が1429μg/gから166μg/gへ低下すると、弾性率がわずかに低下するが、他の測定されたレンズ特性にはごくわずかな影響しか与えないことが示される。実施例7〜9を比較すると、特に実施例7及び9を比較したとき、弾性率及びDkの両方が低下し、得られるレンズの含水量が増加する。これは、HO−PDMSの配合が、mPDMSの配合よりもDkに対して大きな影響を及ぼすことを示唆し、その理由は、NVPのHO−PDMSに対する速度比が実施例7〜9についてDkと同じ方向に傾いているためである。
【0221】
実施例10は、2重量%のVINAL、イオン性アミド含有ビニルエーテルを含有していた。表23の速度データにより、VINALが遅反応性モノマーであることが確認される。実施例10のレンズは、VINALを含まない実施例6(5.6μg/レンズ)と比べて大きく改善されたリゾチーム取り込み(39μg/レンズ)を示した。また、実施例10のレンズは、実施例6と同様のPQ−1取り込みを示した。PQ−1は、多数の洗浄及びケア溶液中に存在するカチオン性防腐剤である。アニオン性繰り返し単位のブロックを有するコンタクトレンズ、又はアニオン性ポリマーのコーティングを有するコンタクトレンズは、顕著に高いPQ−1取り込み値を示すことができる。実施例10の低い値は、VINALが、一般的に、NVPとランダムに重合したことを示す。
【0222】
実施例11〜17
一連のレンズ製剤を以下の反応性成分から形成した。
38.5重量%のmPDMS
NVP
ヒドロキシアルキルメタクリレート、表25に示す
1重量%のTEGDMA
0.25 CGI 819
【0223】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びNVPの量を変動させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート:NVPのモル比を約0.2にした。GMMAは、2つのヒドロキシル基を有する。したがって、2つの異なる濃度のGMMAを有する製剤、実施例16(13.23重量%のGMMA、比0.408、両ヒドロキシルを計数)及び実施例17(6.62重量%のGMMA、0.204、2つのヒドロキシルを計数)を調製した。
【0224】
反応性成分を、80重量%の反応性成分:20重量%の希釈剤の比で希釈剤(50% TAA/50% DA)と混合した。実施例15及び16からは、レンズに硬化しない曇った反応混合物が生じる。実施例11〜14及び17からは、以下の手順を用いてレンズに注型成形される透明な反応混合物が生じた。約17(±3)分間周囲温度で真空を適用することによって反応混合物を脱気した。次いで、反応混合物を熱可塑性レンズ成形型(前側曲線は、Zeonorで作製し、後側曲線は、ポリプロピレンで作製)に添加した。BCをFC型上に置き、パレットに8個のBC/FCアセンブリを作製した。パレットを鏡面上に置き、水晶板(12.50mm×6.25mm×0.50mm)を各パレット上に置いた。Philips TL 20W/03T蛍光灯及び4〜5mW/cmを用いて、窒素雰囲気下で45℃にて約15分間レンズを硬化させた。
【0225】
レンズを50/50 IPA/水に取り出し、70/30 IPA/水に抽出し、次いで、脱イオン水中で平衡化した。少なくとも24時間、ホウ酸緩衝生理食塩水を収容しているバイアルにレンズを移し、次いで、122℃で30分間オートクレーブした。レンズ特性を測定し、以下の表63に報告する。
【0226】
【表29】
NT=未試験
【0227】
実施例16及び17を比較すると、GMMAのモル量を両ヒドロキシルが占めるように調整したとき、透明なレンズが形成されたことが分かる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしてHEAAを含む実施例15からは、湿潤性レンズが得られなかったが、その理由は、HEAAが2つの極性基、アミド及びヒドロキシル基を含有するので、実施例11〜14及び16〜17で用いられる他のヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートよりもHEAAの極性が高くなるためであると考えられる。HEAAの極性上昇により、mPDMSで相溶化の問題が引き起こされると考えられた。しかし、HEAAは、SiMAA、OH−mPDMS、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド等のより極性の高いシリコーンと共に機能する能力を有する。したがって、様々なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物を用いて、本発明のヒドロゲルを形成することができる。
【0228】
実施例18〜21
以下の表64及び65に示す通り、用いられる希釈剤系及びシロキサン成分を変動させ、更なる反応混合物を作製した。80重量%の反応性成分と20重量%の希釈剤とを用いて全ての混合物を形成した。上記実施例27に記載の手順に従って、レンズを成形し、硬化させ、加工し、滅菌した。レンズ特性を測定し、表26及び27に示す。
【0229】
【表30】
NT=未試験
【0230】
【表31】
**ブレンドは、不混和性であった。
【0231】
実施例22及び24のブレンドは、不混和性であり、レンズに注型成形されなかった。これら実施例は、広範な希釈剤を用いて本発明のレンズを形成できることを示す。また、これら実施例は、二級アルコールにより、光硬化したときに透明度及び弾性率を含む所望の特性のバランスを有する製剤を得られることを示す。
【0232】
実施例26〜31
合計100重量%になる反応性成分の濃度を有する表28の製剤からレンズを作製した。希釈剤は、用いなかった。
【0233】
約17(±3)分間周囲温度で真空を適用することによって反応混合物を脱気した。次いで、反応混合物(75μL)を室温及び<0.1% Oで、添加前に最低12時間RTのNボックス(区画1、図1)内にて脱気されている熱可塑性コンタクトレンズ成形型(FC−Zeonor、BCポリプロピレン)に添加した。BCをFC成形型上に置き、レンズを区画2に移動させ、4〜5mW/cmの強度、<0.1% O、及び62〜65℃で20分間硬化させた。
【0234】
全てのレンズの成形型を機械的に分離したところ、レンズはFCに残った。前側曲線の後側に押しつけることによってレンズを乾燥離型させた。レンズをDI水に抽出した。
【0235】
全てのレンズを、レンズバイアル中のホウ酸緩衝包装用溶液中に保存し、122℃で30分間滅菌した。
【0236】
折り畳み等の機械的ストレスからレンズが復元する能力を評価した。5分間2枚の矩形ガラス板(12.5cm×6.3cm×0.5cm(〜113g))の間に折り畳んだ滅菌されていないレンズを置くことによって各レンズにしわをつくった。次いで、レンズを滅菌し、DL2(17.5X)及びOptimecを用いて目視検査して、復元レベルを識別した。
【0237】
・2、3、4、又は5枚のトッププレートを用いることによって、滅菌されていないレンズにおけるしわ/ストレスの程度が増加した。ストレス試験の結果を表30に示す。
【0238】
3つの市販レンズ、ACUVUE OASYS with HYDRACLEAR Plus、Biofinity及びClaritiレンズのストレス試験の値を対照として示す。
【0239】
レンズの特性を測定し、表29に示す。
【0240】
【表32】
【0241】
【表33】
【0242】
【表34】
【0243】
実施例32〜34
表31に列挙する成分から反応性混合物を形成し、約17(3±)分間周囲温度で真空を適用することによって脱気した。次いで、反応混合物(75μL)を、室温及び<0.1% Oで、添加前に最低12時間RTのNボックス(区画1、図1)内にて脱気されている熱可塑性コンタクトレンズ成形型(FC−Zeonor、BCポリプロピレン)に添加した。BCをFC成形型上に置いて、パレットにおいて8個のBC/FCアセンブリを作製した。8個のパレットを調製し、硬化区画(区画2)に移動させ、鏡面上に置いた。水晶板(12.50mm×6.25mm×0.50mm)を各パレット上に置き、4〜5mW/cmの強度、<0.1% O、及び62〜65℃で20分間レンズを硬化させた。
【0244】
全てのレンズの成形型を手で外した(レンズはFCに残った)。レンズを50/50 IPA/水に取り出し、50/50 IPA/水に抽出し、次いで、脱イオン水中で平衡化した。少なくとも24時間、ホウ酸緩衝生理食塩水を収容しているバイアルにレンズを移し、122℃で30分間1、3、6、及び9サイクルオートクレーブした。各滅菌サイクル後、含水量及び弾性率を測定した。
【0245】
得られたレンズは、非常に透明であり、親指と人指し指との間でこすったとき滑らかに感じられた。
【0246】
【表35】
【0247】
合成調製物1:2−ヒドロキシブチルメタクリレート(HBMA)
72グラムの1,2−エポキシブタン(Aldrich)、0.85gの4−メトキシフェノール(Aldrich)、及び6.5gの水酸化カリウムのブレンドを、添加漏斗及び熱電対温度計を備える500mLの丸底フラスコ中で撹拌した。172gのメタクリル酸を添加漏斗を介して添加し、ブランドをゆっくり75℃にし、空気下で一晩撹拌し、次いで、4時間かけて88℃に加熱した。混合物を冷却し、700mLの2.0N NaOHを分液漏斗内の混合物に添加した。上層をホウ酸緩衝生理食塩水で3回洗浄した。エチルエーテル(200mL)を合わせた生理食塩水洗浄物に添加して、任意の精製物を抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させた。NaSOを濾過して取り除き、生成物を蒸留した(90〜98℃/〜533Pa(〜4mm Hg))。17.5gの生成物を回収し、それに、4mgの4ーメトキシフェノールを添加した。H NMR:6.1ppm(1H,m)、5.5(1H,m)、4.8(0.25H m)、4.2(0.64H,dd,8.1及び11.7Hz)、4.0(0.64Hz,dd,6.9及び11.4Hz)、3.6〜3.8 1.26H,m)、2.3(OH,br s)、1.9(3H,m)、1.4−1.7(2H,m)、0.9(3H,m);2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート及び1−ヒドロキシ−2−プロピルメタクリレートのブレンドと一致。
【0248】
合成調製物2:ジメチルヒドロキシエチルメタクリレート
1,2−エポキシ−2−メチルプロパンを1,2−エポキシプロパンの代わりに用いたことを除いて、HBMAと同じ手順を用いた。生成物を47〜48°/53〜80Pa(0.4〜0.6mm Hg)で蒸留することによって単離した。H NMR:6.1ppm(1H,s)、5.5(1H,m)、4.0(2H,s)、2.1(OH,br s)、1.9(3H,s)、1.2(6H,m);2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルメタクリレート(ジメチルヒドロキシエチルメタクリレート)と一致。
【0249】
合成調製物3:VINAL
4.82gのビニルクロロホルメートを、74mLのアセトニトリル中8.19gのβ−アラニン(Aldrich)の混合物に添加した。得られた混合物を2時間還流させ、次いで、室温まで冷却し、2時間静置させた。それを濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を30mLの蒸留水に溶解させ、酢酸エチルで3回洗浄した。合わせた酢酸エチル洗浄物を50mLの脱イオン水で洗浄した。合わせた酢酸エチル洗浄物から溶媒を蒸発させて、ふわふわした黄色がかった固体として生成物4.5gを得た。H NMR:7.1ppm(dd,1H)、5.4ppm(br s,OH)、4.7ppm(dd,1H)、4.4ppm(dd,1H)、3.5ppm(q,2H)、2.6ppm(t,2H)。
【0250】
〔実施の態様〕
(1) 反応混合物から形成されるシリコーンヒドロゲルであって、前記反応混合物が、
約30〜約75重量%の遅反応性親水性モノマーの混合物であって、それぞれが遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有し、前記遅反応性親水性モノマーの混合物が、少なくとも1つの遅反応性イオン性モノマーを含む、混合物と、
シリコーン含有成分の速度論的半減期を有する少なくとも1つのシリコーン含有成分であって、任意で少なくとも1つのヒドロキシル含有基で置換されていてもよい、成分と、
少なくとも1つのヒドロキシル含有基で置換されている前記シリコーン含有成分、少なくとも1つのヒドロキシアルキルモノマー、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つのヒドロキシル含有成分とを含み、
前記遅反応性親水性成分の半減期のそれぞれの、前記シリコーン含有成分の半減期に対する比が、少なくとも2である、シリコーンヒドロゲル。
(2) 遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有する前記少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーを約37〜約75重量%含む反応混合物から形成される、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(3) 遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有する前記少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーを約37〜約70重量%含む反応混合物から形成される、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(4) 遅反応性親水性モノマーの速度論的半減期を有する前記少なくとも1つの遅反応性親水性モノマーを約39〜約60重量%含む反応混合物から形成される、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(5) 前記遅反応性イオン性成分が、アニオン性成分、カチオン性成分、双極性イオン性成分、及びこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様1〜4のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0251】
(6) 前記遅反応性イオン性成分が、カルボン酸、スルホン酸、ボロン酸、ホスホン酸、及びこれらの塩、並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのアニオン性成分を含む、実施態様1〜5のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(7) 前記遅反応性イオン性成分が、メタクリルアミド反応性基、N−ビニルアミド、O−ビニルカルバメート、O−ビニルカーボネート、N−ビニルカルバメート、O−ビニルエーテル、O−2−プロペニルからなる群より選択される反応性官能基を含み、前記ビニル又はアリル基が、メチル基で更に置換されてもよい、実施態様1〜6のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(8) 前記遅反応性イオン性成分が、4−アクリルアミドブタン酸(ACAII)、(3−アクリルアミドフェニル)ボロン酸(APBA)、3−アクリルアミドプロピオン酸、5−アクリルアミドペンタン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、ビニルスルホン酸塩、3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS)、以下の式
【化7】
(式中、Rは、H又はメチルであり、Xは、O又はNR16であり、R16は、H又はC1〜3アルキルであり、Lは、二価C1〜4アルキル基である)の酢酸,2−カルボキシメトキシ)−,1−エテニルエステル(acetic acid, 2-carboxymethoxy)-,1-ethenylester)、及びこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様1〜7のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(9) 前記遅反応性イオン性成分が、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン;N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL);2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO);ビニルスルホン酸ナトリウム塩;式Qの酢酸,2−カルボキシメトキシ)−,1−エテニルエステル、これらの混合物等からなる群より選択される、実施態様8に記載のシリコーンヒドロゲル。
(10) 前記遅反応性イオン性成分が、約20モル%未満の量で前記反応性混合物中に存在する、実施態様1〜7のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0252】
(11) 前記遅反応性イオン性成分が、前記反応混合物の全成分に基づいて、約0.5〜約15モル%の量で前記反応性混合物中に存在する、実施態様1〜7のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(12) 前記遅反応性イオン性成分が、前記反応混合物の全成分に基づいて、約0.5〜約5モル%の量で前記反応性混合物中に存在する、実施態様1〜7のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(13) 前記遅反応性イオン性成分が、前記反応混合物の全成分に基づいて、約0.5〜約10モル%の量で前記反応性混合物中に存在する、実施態様1〜7のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(14) 前記遅反応性成分が全て、同じ反応性官能基を有する、実施態様1〜13のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(15) 前記遅反応性成分が全て、ビニル官能基を有する、実施態様1〜14のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0253】
(16) 前記反応混合物が、更に、少なくとも1つの遅反応性架橋剤と少なくとも1つの速反応性架橋剤とを含む、実施態様1〜15のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(17) 前記遅反応性架橋剤が、ビニル反応性官能基のみを有し、前記速反応性架橋剤が、(メタ)アクリレート反応性官能基のみを有する、実施態様14に記載のシリコーンヒドロゲル。
(18) 前記遅反応性架橋剤が、TACを含み、前記速反応性架橋剤が、EDGMA、TEGDMA、及びこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様17に記載のシリコーンヒドロゲル。
(19) 前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、反応性成分100g当たり約0.4〜約2.0ミリモルの量で前記反応混合物中に存在する、実施態様14〜16のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(20) 前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、重合性成分100g当たり約0.3〜約2.0ミリモルの量で前記反応混合物中に存在する、実施態様14〜16のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0254】
(21) 前記反応性混合物が、更に、少なくとも1つの反応性カチオン性成分を含む、実施態様1〜20のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(22) 前記カチオン性成分又は水素結合成分が、前記ヒドロゲルの表面弾力を向上させるのに十分な量で存在する、実施態様21に記載のシリコーンヒドロゲル。
(23) 前記少なくとも1つの反応性カチオン性成分が、前記シリコーン含有成分のうちの少なくとも1つと同じ反応性官能基を有する、実施態様19又は20に記載のシリコーンヒドロゲル。
(24) 前記速度論的半減期の比が、少なくとも約3である、実施態様1〜23のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(25) 少なくとも約80のDkを更に含む、実施態様1〜24のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0255】
(26) 少なくとも約85のDkを更に含む、実施態様1〜25のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(27) 約70%未満の曇り度(%)(%haze)を更に含む、実施態様1〜26のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(28) 約50%未満の曇り度(%)を更に含む、実施態様1〜27のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(29) 少なくとも約55%の含水量を更に含む、実施態様1〜28のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(30) 少なくとも約60%の含水量を更に含む、実施態様1〜29のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0256】
(31) 約1034kPa(150psi)未満の弾性率(modulus)を更に含む、実施態様1〜30のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(32) 約689kPa(100psi)以下の弾性率を更に含む、実施態様1〜31のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(33) 前記反応混合物が、少なくとも1つのUV吸収化合物を更に含む、実施態様1〜32のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(34) 前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、反応性である、実施態様33に記載のシリコーンヒドロゲル。
(35) 前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、ベンゾトリアゾール類から選択される、実施態様34に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0257】
(36) 前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、反応性の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2ーヒドロキシベンゾフェノン、2ーヒドロキシフェニルトリアジン、オキサニリド、シアノアクリレート、サリチレート、及び4ーヒドロキシベンゾエートからなる群より選択される、実施態様34に記載のシリコーンヒドロゲル。
(37) 前記少なくとも1つのUV吸収化合物が、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの5−ビニル及び5−イソプロペニル誘導体、並びに2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール又は2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3−2H−ジベンゾトリアゾールの4−アクリレート又は4ーメタクリレート、並びにこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様34に記載のシリコーンヒドロゲル。
(38) 約0.5〜約4重量%の少なくとも1つのUV吸収剤を含む、実施態様34に記載のシリコーンヒドロゲル。
(39) 約1重量%〜約2重量%のUV吸収剤を含む、実施態様34に記載のシリコーンヒドロゲル。
(40) 前記反応混合物が、実質的に希釈剤を含まない、実施態様1〜39のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0258】
(41) 前記反応混合物が、実質的にTRISを含まない、実施態様1〜40のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(42) 前記遅反応性親水性モノマーが、(メタ)アクリルアミド、ビニル、アリル、及びこれらの組合せからなる群より選択される反応性基を含み、前記シリコーン含有成分が、(メタ)アクリレート、スチリル、アミド、及びこれらの混合物からなる群より選択される反応性基を含む、実施態様1〜41のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(43) 前記遅反応性親水性モノマーが、ビニル、アリル、及びこれらの組合せからなる群より選択される反応性基を含み、前記シリコーン含有成分が、(メタ)アクリレート、スチリル、アミド、及びこれらの混合物からなる群より選択される反応性基を含む、実施態様1〜42のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(44) 前記遅反応性親水性モノマーが、約39〜約70重量%の量で存在する、実施態様1〜43のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(45) 前記遅反応性親水性モノマーが、約39〜約60重量%の量で存在する、実施態様1〜44のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0259】
(46) 前記遅反応性親水性モノマーが、N−ビニルアミド、O−ビニルカルバメート、O−ビニルカーボネート、N−ビニルカルバメート、O−ビニルエーテル、O−2−プロペニルからなる群より選択される反応性基を含み、前記ビニル又はアリル基が、メチル基で更に置換されてもよい、実施態様1〜45のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(47) 前記遅反応性親水性モノマーが、ヒドロキシル、アミン、エーテル、アミド、アンモニウム基、カルボン酸、カルバメート、及びこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの親水性基を含む、実施態様1〜46のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(48) 前記遅反応性親水性モノマーが、ヒドロキシル、エーテル、アミド、カルボン酸、これらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの親水性基を含む、実施態様1〜47のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(49) 前記遅反応性親水性モノマーが、式IのN−ビニルアミドモノマー、式II〜IVのビニルピロリドン、式Vのn−ビニルピペリドンから選択され、
【化8】
式中、Rは、H又はメチルであり、
、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立して、H、CH、CHCH、CHCHCH、C(CHから選択され、
及びRは、独立して、CH、CHCH及びC(CH)から選択され、
は、H、メチル、エチルから選択され、
は、CH=CH、CCH=CH、及びCH=CHCHから選択される、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(50) 前記遅反応性親水性モノマーが、式II若しくはIVのビニルピロリドン、又は式IのN−ビニルアミドモノマーから選択され、R及びRにおける炭素原子の総数が、4以下である、実施態様49に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0260】
(51) 前記遅反応性親水性モノマーが、式III又はIVのビニルピロリドンから選択され、Rがメチルであり、Rが水素であり、RがCH=CHであり、R10及びR11がHである、実施態様49に記載のシリコーンヒドロゲル。
(52) 前記遅反応性親水性モノマーが、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、N−ビニルピロリドン(NVP)、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン;1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム、N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N−カルボキシ−β−アラニンN−ビニルエステル;N−カルボキシビニル−β−アラニン(VINAL)、N−カルボキシビニル−α−アラニン及びこれらの混合物から選択される、実施態様49に記載のシリコーンヒドロゲル。
(53) 前記遅反応性親水性モノマーが、NVP、VMA、及び1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドンから選択される、実施態様49に記載のシリコーンヒドロゲル。
(54) 前記遅反応性親水性モノマーが、NVPを含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(55) 前記シリコーン含有成分が、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、実施態様49に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0261】
(56) 少なくとも1つのヒドロキシアルキルモノマーを更に含む、実施態様49に記載のシリコーンヒドロゲル。
(57) 前記ヒドロキシアルキルモノマーが、式VIIのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリルアミドモノマー又は式VIIIのスチリル化合物から選択され、
【化9】
式中、Rは、H又はメチルであり、
Xは、O又はNR16であり、R16は、H、少なくとも1つのOHで更に置換されてもよいC〜Cアルキルであり、
17は、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び1〜10個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択される、実施態様56に記載のシリコーンヒドロゲル。
(58) RがH又はメチルであり、Xが酸素であり、Rが、C〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び1〜10個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択される、実施態様57に記載のシリコーンヒドロゲル。
(59) Rがメチルであり、Xが酸素であり、R17がC〜Cモノ又はジヒドロキシ置換アルキル、及び2〜20個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)から選択される、実施態様57に記載のシリコーンヒドロゲル。
(60) 前記ヒドロキシアルキルモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル−2−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ビス−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物から選択される、実施態様56に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0262】
(61) 前記ヒドロキシアルキルモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピルメタクリレート、及びこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様56に記載のシリコーンヒドロゲル。
(62) 前記ヒドロキシアルキルモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、及びこれらを含む混合物を含む、実施態様56に記載のシリコーンヒドロゲル。
(63) 前記少なくとも1つのシリコーン含有モノマーが、単官能性であり、(a)(メタ)アクリレート、スチリル、アミド、及びこれらの混合物から選択される反応性基、及び(b)ポリジアルキルシロキサン鎖を含み、任意でフッ素を含んでもよい、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(64) 前記シリコーン含有成分が、式IXのモノ(メタ)アクリルオキシアルキルポリジアルキルシロキサンモノマー、又は式Xのスチリルポリジアルキルシロキサンモノマーから選択され、
【化10】
式中、R12は、H又はメチルであり、
Xは、O又はNR16であり、
各R14は、独立して、フッ素置換されていてもよいC〜Cアルキル、又はフェニルであり、
15は、C〜Cアルキルであり、
13は、二価アルキル基であり、これは、更にエーテル基、ヒドロキシル基、カルバメート基、及びこれらの組合せからなる群より選択される基で官能化されてもよく、
aは、3〜50であり、
16は、H、1又は2以上のヒドロキシル基で更に置換されてもよいC1〜4から選択される、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(65) 各R14が、独立して、エチル及びメチル基から選択される、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0263】
(66) 全てのR14が、メチルである、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(67) R12及び各R14が、メチルである、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(68) 少なくとも1つのR14が、3,3,3−トリフルオロプロピルである、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(69) R13が、エーテル、ヒドロキシル、及びこれらの組合せで置換されていてもよいC1〜C6アルキレン基から選択される、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(70) R13が、エーテル、ヒドロキシル、及びこれらの組合せで置換されていてもよいC1又はC3〜C6アルキレン基から選択される、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0264】
(71) aが、5〜15である、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(72) R16が、H又はメチルである、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(73) 前記モノメタクリルオキシアルキルポリジメチルシロキサンメタクリレートが、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジエチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジエチルシロキサン、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、α−(2−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル)−ω−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(74) 前記モノメタクリルオキシアルキルポリジメチルシロキサンメタクリレートが、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様64に記載のシリコーンヒドロゲル。
(75) 少なくとも1つの架橋モノマーを更に含む、実施態様1〜74のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0265】
(76) 少なくとも1つの光開始剤を更に含む、実施態様1〜75のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(77) 約80°未満の前進接触角(advancing contact angle)を更に含む、実施態様1〜76のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(78) 約70°未満の前進接触角を更に含む、実施態様1〜77のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(79) 前記反応混合物中の全成分に基づいて、約5〜約20重量%の少なくとも1つの極性希釈剤を更に含む、実施態様1〜78のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(80) 前記反応混合物が、少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤を更に含む、実施態様1〜79のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
【0266】
(81) 前記遅反応性架橋剤が、ビニル反応性官能基のみを有し、前記速反応性架橋剤が、(メタ)アクリレート反応性官能基のみを有する、実施態様80に記載のシリコーンヒドロゲル。
(82) 前記遅反応性架橋剤が、TACを含み、前記速反応性架橋剤が、EDGMA、TEGDMA及びこれらの混合物からなる群より選択される、実施態様80に記載のシリコーンヒドロゲル。
(83) 前記反応混合物が、約5%未満の中間反応親水性成分を含む、実施態様1〜82のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲル。
(84) 前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、約0.05〜約0.3重量%の量で前記反応混合物中に存在する、実施態様80に記載のシリコーンヒドロゲル。
(85) 前記少なくとも1つの遅反応性架橋剤及び少なくとも1つの速反応性架橋剤が、それぞれ、約0.1〜約0.2重量%の量で前記反応混合物中に存在する、実施態様80に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0267】
(86) 全ての架橋剤が、約0.5重量%〜約2重量%の量で存在する、実施態様80に記載のシリコーンヒドロゲル。
図1
図2
図3