(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の酸素濃度測定装置では、特許文献2の酸素濃度測定装置のように、吸引ポンプが酸素濃度測定装置の筐体に直接固定されており、吸引ポンプの駆動に伴って振動が発生すると、筐体自体が振動することがある。筐体が振動すると、酸素濃度測定装置に付着した粉塵や筐体が設置された周囲の粉塵が舞い上がり、半導体製造装置や半田付け装置等の内部に入るおそれがある。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸引ポンプの駆動による筐体の振動を抑制することができる酸素濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決する酸素濃度測定装置は、測定ガスに含まれる酸素の濃度に応じた検知結果を出力する酸素センサと、測定ガスを吸引して、前記酸素センサに送出する吸引ポンプと、前記吸引ポンプを保持するポンプ保持板と、測定ガスを通過させ、導入口と前記吸引ポンプとを連通する吸引管と、測定ガスを通過させ、前記吸引ポンプと前記酸素センサとを連通する送出管と、測定されたガスを通過させ、前記酸素センサと排出口とを連通する排出管と、筐体と、前記ポンプ保持板が前記筐体に固定され、前記筐体と前記ポンプ保持板との間に設置される防振部材と、を備え、前記筐体は、前記酸素センサと、前記吸引ポンプと、前記ポンプ保持板と、前記吸引管と、前記送出管と、前記排出管とを収容し、前記防振部材は、前記吸引ポンプに設けられるモータの回転軸の延出方向に対し、線対称に配置されていることをその要旨としている。
【0009】
上記構成によれば、吸引ポンプによって筐体外部から吸引された測定ガスが酸素センサに送り込まれて、測定ガスの酸素濃度に応じた検知結果を出力することができる。この酸素濃度測定装置は、吸引ポンプの駆動によって振動が発生するが、吸引ポンプを保持するポンプ保持板が振動しても防振部材が振動を吸収して、ポンプ保持板から筐体へ振動が伝わることを抑制することができる。また、吸引ポンプに設けられるモータの回転軸の延出方向において線対称なので、回転軸の両側において振動を均等に抑えることができる。よって、吸引ポンプの駆動による筐体の振動を抑制することができる。
【0010】
上記酸素濃度測定装置について、前記ポンプ保持板は、凹部が設けられた板であって、前記吸引ポンプは、前記ポンプ保持板の凹部に保持されることが好ましい。
上記構成によれば、ポンプ保持板に設けられた凹部に吸引ポンプが保持されるので、吸引ポンプの位置がポンプ保持板の最上部の位置よりも低くなり、低重心とすることができ、吸引ポンプの振動の抑制効果を高めることができる。
【0011】
上記酸素濃度測定装置について、前記吸引管及び前記送出管の一部は、弾性変形可能な可撓管とするとともに、前記吸引管及び前記送出管の一部を巻回した状態で設置することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、吸引管及び送出管が可撓管であるので、吸引ポンプの振動が吸引管、送出管に伝わったとしても、弾性変形によって吸収することができる。また、少なくとも送出管を巻回した状態で設置するので、直線状よりも振動を分散することができ、吸引ポンプから酸素センサへ振動が伝わることを抑制することができる。
【0013】
上記酸素濃度測定装置について、前記吸引ポンプは、前記モータの回転運動を往復運動に変換する変換部を備え、前記酸素センサと前記変換部とは、前記モータの回転軸の延出方向に対して垂直方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、吸引ポンプの変換部と酸素センサとが並んで配置されているので、変換部において発生した気流によって酸素センサを冷却することができる。
上記酸素濃度測定装置について、前記筐体の少なくとも一側面に複数のスリットが設けられ、前記吸引ポンプは、前記スリットが設けられた側面の傍に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、吸引ポンプが筐体においてスリットの設けられた側面の傍に配置されているので、スリットから流入した空気によって吸引ポンプや酸素センサを冷却することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸引ポンプの駆動による筐体の振動を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜
図4を参照して、酸素濃度測定装置の一実施形態について説明する。本実施形態の酸素濃度測定装置は、測定ガスを外部から吸引して、測定ガスの酸素濃度を測定し、測定結果を表示する装置である。
【0019】
図1に示されるように、酸素濃度測定装置は、直方体状の筐体10を備えている。筐体10の正面板11には、測定結果を表示する表示部16、装置の電源をオンオフする電源スイッチ17、吸引ポンプの電源をオンオフするポンプスイッチ18、表示を変更したり、測定を指示したりする操作スイッチ19等が設けられている。
【0020】
図2に示されるように、筐体10の背面板12には、測定ガスが装置に導入される導入口21と、測定されたガスが装置の外に排出される排出口22と、流量を調節したことで余ったガスを送出する調整口23とが備えられている。また、背面板12には、電源が接続される接続端子や測定結果を出力する接続端子が設けられている。
【0021】
図3に示されるように、筐体10内部には、測定ガスを吸引する吸引ポンプ30と、測定ガスの酸素濃度を測定する酸素センサ40とが備えられている。吸引ポンプ30は、ダイヤフラムポンプである。吸引ポンプ30は、筐体10の左側面板14の傍に配置されている。左側面板14には、複数のスリットが設けられている。左側面板14の複数のスリットから通過した空気によって吸引ポンプ30や酸素センサ40を冷却することができる。
【0022】
酸素センサ40は、ジルコニア式の酸素センサである。筐体10内部には、測定ガスを一時的に溜める円筒状のガス収容部42が備えられている。酸素センサ40は、ガス収容部42に装着されている。
【0023】
酸素センサ40の基端には、測定結果を出力する接続端子41が設けられている。筐体10の右側面板15寄りには、測定を制御する制御回路等が搭載された基板25が設置されている。酸素センサ40の接続端子41は、この基板25に接続されている。また、基板25には、表示部16、電源スイッチ17、操作スイッチ19等が接続線を介して接続されている。右側面板15には、複数の換気用のスリットが設けられている。右側面板15の複数のスリットから通過した空気によって基板25の熱を奪うことができる。
【0024】
導入口21と吸引ポンプ30とは、吸引管50によって連通されている。吸引管50は、弾性変形可能な可撓管であって、例えば樹脂製の管である。導入口21は、筐体10の背面板12を貫通して設けられている。吸引管50の一端は、導入口21の筐体10内側に接続されている。吸引管50の他端は、吸引ポンプ30の吸引側に接続されている。
【0025】
酸素センサ40が取り付けられたガス収容部42と吸引ポンプ30とは、送出管51によって連通されている。送出管51には、ガス収容部42に流入する測定ガスの流量を調整する流量調整部43が設けられている。吸引ポンプ30から送り出された測定ガスは、流量調整部43で流量が調整されつつ、送出管51を介してガス収容部42に流入する。
【0026】
送出管51は、吸引ポンプ30と流量調整部43とを連通する第1送出管51aと、流量調整部43とガス収容部42とを連通する第2送出管51bとを有している。第1送出管51aの一端は、吸引ポンプ30の排出側に接続されている。第1送出管51aの他端は、流量調整部43の流入側に接続されている。第1送出管51aは、弾性変形可能な可撓管であって、例えば樹脂製の管である。第1送出管51aは、巻回された状態で設置されている。第2送出管51bの一端は、流量調整部43の排出側に接続されている。第2送出管51bの他端は、ガス収容部42の流入側に接続されている。第2送出管51bは、金属管である。なお、第1送出管51aが送出管の一部に相当する。
【0027】
流量調整部43には、流量を調節したことで余ったガスを送出する送出口44が設けられている。流量調整部43の送出口44と背面板12に設けられた調整口23とは、接続管52によって連通されている。接続管52は、弾性変形可能な可撓管であって、例えば樹脂製の管である。
【0028】
酸素センサ40が取り付けられたガス収容部42と排出口22とは、排出管53によって連通されている。排出管53には、測定ガスの流量を表示する流量計45が設けられている。ガス収容部42から送り出された測定ガスは、流量計45を通過して、排出口22から排出される。
【0029】
排出管53は、ガス収容部42と流量計45とを連通する第1排出管53aと、流量計45と排出口22とを連通する第2排出管53bとを有している。第1排出管53aの一端は、ガス収容部42の排出側に接続されている。第1排出管53aの他端は、流量計45の流入側に接続されている。第1排出管53aは、金属管である。第2排出管53bの一端は、流量計45の排出側に接続されている。第2排出管53bの他端は、排出口22の筐体10内側に接続されている。第2排出管53bは、弾性変形可能な可撓管であって、例えば樹脂製の管である。
【0030】
図4に示されるように、吸引ポンプ30は、ポンプを駆動するモータ31と、モータ31の回転運動を往復運動に変換する変換部32と、ガスの吸引と押出とが行われるダイヤフラム部33とを備えている。モータ31の回転運動は、背面板12側から見て反時計回りに回転している。吸引ポンプ30の変換部32には、筐体10内において変換部32が露出している。変換部32と酸素センサ40とは、並んで配置されている。
【0031】
筐体10には、吸引ポンプ30を保持するポンプ保持板60が備えられている。ポンプ保持板60は、側面視で上向きコ字状の凹部61と、凹部61の両側に連続する保持部62,63とが設けられた板である。吸引ポンプ30は、このポンプ保持板60の凹部61にボルト64とナット65にて固定されている。このため、ポンプ保持板60における吸引ポンプ30の位置が低くなり、低重心とすることができる。
【0032】
ポンプ保持板60は、筐体10の底面板13に防振部材としての防振ゴム66を介して固定されている。防振ゴム66は、円柱状であって、中央部が括れた形状である。防振ゴム66の上下端部には、ボルト67がそれぞれ固定されている。防振ゴム66は、中央部を中心に上下部分が左右に変位することで振動を吸収する。防振ゴム66の上端側のボルト67がポンプ保持板60の保持部62,63に挿通されて、ボルト67にナット68が螺着されることで、防振ゴム66がポンプ保持板60の保持部62,63に固定されている。防振ゴム66の下端側のボルト67が底面板13に挿通されて、ボルト67にナット68が螺着されることで、底面板13が防振ゴム66に固定されている。
【0033】
図3に示されるように、酸素センサ40は、モータ31の回転軸31aの延出方向Xに対して垂直方向Yにおいて変換部32と並んで配置されている。このため、変換部32の回転運動によって発生した気流によって酸素センサ40を冷却することができる。そして、上記気流によって筐体10内部を換気することができる。
【0034】
また、ポンプ保持板60を筐体10の底面板13に固定するボルト67とナット68と、及び防振ゴム66は、モータ31の回転軸31aの延出方向Xに対し、線対称に配置されている。ポンプ保持板60の背面板12側の保持部62,63には、回転軸31aの延出方向X上に1組のボルト67とナット68と防振ゴム66とが配置されている。ポンプ保持板60の正面板11側の保持部62,63には、回転軸31aの延出方向Xを挟んで、回転軸31aの延出方向Xが中央になるように、2組のボルト67とナット68と防振ゴム66とが配置されている。3個の防振ゴム66は、二点鎖線で示した三角形状にポンプ保持板60に配置されている。
【0035】
次に、上記のように構成された酸素濃度測定装置の動作について説明する。
酸素濃度測定装置は、電源スイッチ17が電源オン側に操作されると起動される。装置が起動されると、操作スイッチ19が操作されることで、検知範囲等が設定される。
【0036】
そして、ポンプスイッチ18がオン側に通常固定されているので、吸引ポンプ30のモータ31が駆動される。モータ31が駆動すると、モータ31の回転軸31aの回転運動が変換部32によって往復運動に変換され、ダイヤフラム部33において吸引と送出とが繰り返される。
【0037】
ここで、吸引ポンプ30は、上記の変換部32の運動によって振動が発生する。吸引ポンプ30に接続される吸引管50と第1送出管51aとは、可撓管であって巻回された状態で設置されているので、振動を吸収することができる。また、ポンプ保持板60は、吸引ポンプ30が固定されているので、吸引ポンプ30と一体となって振動する。ポンプ保持板60は筐体10の底面板13に固定されているが、防振ゴム66によってポンプ保持板60の振動が吸収されて、筐体10への振動の伝達が抑制される。防振ゴム66は振動が発生するモータ31の回転軸31aの延出方向Xにおいて線対称に配置されているので、防振ゴム66によって振動が均等に吸収されて、振動の抑制効果が高められている。
【0038】
続いて、測定ガスの流れを説明する。測定ガスは、吸引ポンプ30の起動によって導入口21から導入されて、吸引管50を通過して吸引ポンプ30のダイヤフラム部33に引き込まれる。ダイヤフラム部33から送り出された測定ガスは、第1送出管51aを通過して流量調整部43に流入し、流量調整部43にて流量が調整される。流量調整部43には、使用者が流量の変更操作を行う操作部46が設けられている。操作部46は、正面板11から突出しており、回動操作される。流量調整部43は、操作部46が操作されると、流量が変更される。流量調整部43において余った測定ガスは、接続管52を通過して調整口23から排出される。
【0039】
流量調整部43にて流量が調整された測定ガスは、第2送出管51bを通過してガス収容部42に流入してガス収容部42から送出される。ガス収容部42に装着されている酸素センサ40は、吸引された測定ガスの酸素濃度を測定し、その測定値を制御回路に出力する。測定された酸素濃度は、制御回路によって表示部16に表示される。ガス収容部42から送出された測定ガスは、第1排出管53a、流量計45、第2排出管53bを通過して排出口22から排出される。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)吸引ポンプ30によって筐体10外部から吸引された測定ガスが酸素センサ40に送り込まれて、測定ガスの酸素濃度に応じた検知結果を出力することができる。この酸素濃度測定装置は、吸引ポンプ30の駆動によって振動が発生するが、吸引ポンプ30を保持するポンプ保持板60が振動しても防振ゴム66が振動を吸収して、ポンプ保持板60から筐体10へ振動が伝わることを抑制することができる。また、吸引ポンプ30に設けられるモータ31の回転軸31aの延出方向Xにおいて線対称なので、回転軸31aの両側において振動を均等に抑えることができる。よって、吸引ポンプ30の駆動による筐体10の振動を抑制することができる。
【0041】
(2)ポンプ保持板60に設けられた凹部61に吸引ポンプ30が保持されるので、吸引ポンプ30の位置がポンプ保持板60の最上部の位置よりも低くなり、低重心とすることができ、吸引ポンプ30の振動の抑制効果を高めることができる。
【0042】
(3)吸引管50及び第1送出管51aが可撓管であるので、吸引ポンプ30の振動が吸引管50及び送出管51に伝わったとしても、弾性変形によって吸収することができる。また、送出管51を巻回した状態で設置するので、直線状よりも振動を分散することができ、吸引ポンプ30から酸素センサ40へ振動が伝わることを抑制することができる。
【0043】
(4)吸引ポンプ30の変換部32と酸素センサ40とが並んで配置されているので、変換部32において発生した気流によって酸素センサ40を冷却することができる。また、筐体10内部を換気することができる。
【0044】
(5)吸引ポンプ30が筐体10においてスリットの設けられた左側面板14の傍に配置されているので、スリットから流入した空気によって吸引ポンプ30や酸素センサ40を冷却することができる。
【0045】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもができる。
・上記実施形態では、吸引ポンプ30を左側面板14の傍に設置したが、吸引ポンプ30において発生する熱が問題なければ、左側面板14の傍に限定しない。また、左側面板14及び右側面板15の少なくとも一方にスリットが不要であれば、スリットを省略してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、吸引ポンプ30の変換部32と酸素センサ40とを並べて配置したが、変換部32による酸素センサ40の冷却効果が不要であれば、吸引ポンプ30の変換部32と酸素センサ40とを並べて配置しなくてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、第1送出管51aを巻回した状態で設置したが、吸引ポンプ30の振動が小さければ、第1送出管51aを巻回した状態で設置しなくてもよい。
・上記実施形態では、吸引管50と第1送出管51aとを可撓管としたが、吸引ポンプ30の振動が小さければ、吸引管50と第1送出管51aとを可撓管にしなくてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、ポンプ保持板60に側面視で上向きコ字状の凹部61を設けたが、吸引ポンプ30の重心を低くすることができれば、凹部の形状はこれに限らない。また、ポンプ保持板60において吸引ポンプ30の重心が低くなくてもよければ、ポンプ保持板60を凹部のない板としてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、モータ31の回転軸31aの延出方向Xに対して線対称となるように、背面板12側の保持部62,63の延出方向X上に1組のボルト67とナット68と防振ゴム66とを配置した。しかしながら、ポンプ保持板60の背面板12側の保持部62,63に、回転軸31aの延出方向Xを挟んで、回転軸31aの延出方向Xが中央になるように、2組のボルト67とナット68と防振ゴム66とが配置してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、中央が括れた形状の防振ゴム66を採用したが、中央が括れた形状に限らず、防振することができるならば、円柱状の防振ゴム等の他の形状でもよい。
・上記実施形態では、防振部材として防振ゴムを採用したが、防振することができれば、ゴム以外の材質のものを採用してもよい。