特許第6404135号(P6404135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404135
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】押釦スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/14 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   H01H13/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-16852(P2015-16852)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-143496(P2016-143496A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】弓中 武彦
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−002038(JP,U)
【文献】 実開昭61−001235(JP,U)
【文献】 特開2007−188761(JP,A)
【文献】 実開昭50−063559(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00−13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに収容され、前記ケースに形成された開口にキートップが位置される押釦スイッチであって、
前記キートップと、前記キートップの裏面中央に突出形成された軸部とを有する押釦と、
前記軸部を収容案内する貫通穴が形成された案内部と、前記案内部を支持する支持板部とを有するガイドと、
前記軸部の先端によって押されて操作されるスイッチ接点とを備え、
前記軸部の外周面には前記軸部の軸方向に延伸するリブが少なくとも軸周りの相互に異なる一直線上にない方位に2つ突出形成され、
前記リブをそれぞれ摺動案内する複数の溝が前記貫通穴の内周面に形成されており、
前記軸部が前記貫通穴に案内される時に摺動する部分は、前記リブの幅方向の側面と前記溝の幅方向の内壁のみに限定され、
前記軸部の外周面の前記リブを設けていない部分と前記リブの突出方向の先端面とは、摺動作用に関与しない部位とされて、前記貫通穴に対するクリアランス空間を形成しており、
前記支持板部上に前記案内部を囲んで突出形成されるガイド側侵入防止壁、及び前記キートップの裏面に前記軸部を囲んで突出形成される押釦側侵入防止壁の、方が設けられており、
前記キートップは、外面が操作面とされる閉塞された一端と側周壁とを有する、前記一端が閉塞された筒状をなし、
前記ガイド側侵入防止壁及び前記押釦側侵入防止壁は、前記側周壁よりも前記軸部に近い内側に設けられていることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項2】
請求項記載の押釦スイッチにおいて、
前記ガイド側侵入防止壁と前記押釦側侵入防止壁とが互い違いとなるように形成されていることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項3】
請求項記載の押釦スイッチにおいて、
前記ガイド側侵入防止壁と前記押釦側侵入防止壁とが互いに対向する位置に形成されていることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項4】
ケースに収容され、前記ケースに形成された開口にキートップが位置される押釦スイッチであって、
前記キートップと、前記キートップの裏面中央に突出形成された軸部とを有する押釦と、
前記軸部を収容案内する貫通穴が形成された案内部と、前記案内部を支持する支持板部とを有するガイドと、
前記軸部の先端によって押されて操作されるスイッチ接点とを備え、
前記軸部の外周面には前記軸部の軸方向に延伸するリブが少なくとも軸周りの相互に異なる一直線上にない方位に2つ突出形成され、
前記リブをそれぞれ摺動案内する複数の溝が前記貫通穴の内周面に形成されており、
前記軸部が前記貫通穴に案内される時に摺動する部分は、前記リブの幅方向の側面と前記溝の幅方向の内壁のみに限定され、
前記軸部の外周面の前記リブを設けていない部分と前記リブの突出方向の先端面とは、摺動作用に関与しない部位とされて、前記貫通穴に対するクリアランス空間を形成しており、
前記支持板部上に前記案内部を囲んで突出形成されるガイド側侵入防止壁、及び前記キートップの裏面に前記軸部を囲んで突出形成される押釦側侵入防止壁の、両方が設けられており、
前記ガイド側侵入防止壁と前記押釦側侵入防止壁とが互いに対向する位置に形成されていることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項5】
請求項1からまでに記載のいずれかの押釦スイッチにおいて、
前記リブは2つとされて互いに90°をなす位置に形成されていることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項6】
請求項1からまでに記載のいずれかの押釦スイッチにおいて、
前記リブは3つとされて90°間隔で形成されていることを特徴とする押釦スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は例えばFA(Factory Automation)機器等、各種機器の操作パネルなどに配列されて使用される押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
図8及び9は特許文献1に記載されているスイッチ操作パネルの概要を示したものであり、各スイッチのキートップ11はそれぞれキートップガイド12内に挿入され、キートップ操作方向においてキートップ11はキートップガイド12により案内されるものとなっている。キートップ11はほぼ方形筒状の周壁の上端が閉塞されてその外面はキートップ頂面11aとされており、キートップガイド12もキートップ11の筒とほぼ同軸心の角筒状とされている。
【0003】
キートップガイド12の内面にはキートップ操作方向と平行した案内溝13が周壁の3つの平面のそれぞれに各1本形成されており、案内溝13に相当する分、外周面が突出して突条14が構成されている。キートップ11の外周面には案内溝13に挿入されるリブ15がキートップ操作方向と平行に形成されている。これら案内溝13とリブ15により、キートップ11はキートップガイド12によって操作方向が正しく保持される。
【0004】
キートップガイド12は操作パネルを構成するケース(図示せず)とは別体に構成されている。各キートップガイド12はガイド保持板16に挿通され、ガイド保持板16とケースによりキートップガイド12の一部が挟み保持されるものとなっている。ケースには各キートップ11が外部に臨む穴が設けられている。
【0005】
案内溝13はキートップ頂面11aと反対側の端面から途中まで形成されており、リブ15のキートップ頂面11a側は除去されている。キートップ11をその操作方向と反対方向に引くと、リブ15の上端が案内溝13の上側の端と係合し、これによりキートップ11は抜け出ることはない。
【0006】
一方、キートップガイド12の一側板にはキートップ操作方向に延長した脱落防止片17が構成されており、脱落防止片17の上端の内面には突部が形成されている。キートップ11はその頂部が脱落防止片17の上端と係合して下側から脱落するのが防止されている。なお、図8中、18は基板(図示せず)に設けられ、キートップ11により操作されるスイッチ素子を示し、19は基板に取り付けられている照光用の発光素子を示す。スイッチ素子18の操作用ピンはキートップ頂面11aの内面と接触されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−102622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1に記載されているスイッチ操作パネルにおいては、キートップ11の外周面に形成された3つのリブ15がキートップガイド12に形成された案内溝13に挿入されて案内されるものとなっており、これによりキートップ11を操作した場合、ガタツキがほとんどなく、キートップ11の角を押しても安定したスイッチ操作が可能となっている。
【0009】
しかるに、リブ15と案内溝13とよりなる案内構造はキートップ11の周縁に位置しているため、キートップ11が外部に臨むケースの穴におけるキートップとケースの隙間から粉塵を含んだ液体や埃、粉塵等が侵入すると、それら異物がリブ15と案内溝13との摺動部分に入り込み易く、これにより摺動不良が発生し、スイッチ操作の安定性が損なわれるといった状況が生じる。
【0010】
この発明の目的はこの問題に鑑み、摺動不良が生じにくいようにし、これによりスイッチ操作の安定性に優れ、かつ良好な操作感触が得られるようにした押釦スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明によれば、ケースに収容され、ケースに形成された開口にキートップが
位置される押釦スイッチは、キートップと、キートップの裏面中央に突出形成された軸部
とを有する押釦と、前記軸部を収容案内する貫通穴が形成された案内部と、案内部を支持
する支持板部とを有するガイドと、前記軸部の先端によって押されて操作されるスイッチ
接点とを備え、前記軸部の外周面には前記軸部の軸方向に延伸するリブが少なくとも軸周
りの相互に異なる一直線上にない方位に2つ突出形成され、リブをそれぞれ摺動案内する
複数の溝が前記貫通穴の内周面に形成され、前記軸部が前記貫通穴に案内される時に摺動
する部分はリブの幅方向の側面と前記溝の幅方向の内壁のみに限定され、前記軸部の外周
面のリブを設けていない部分とリブの突出方向の先端面とは摺動作用に関与しない部位と
されて前記貫通穴に対するクリアランス空間を形成し、支持板部上に案内部を囲んで突出
形成されるガイド側侵入防止壁及びキートップの裏面に前記軸部を囲んで突出形成される押釦側侵入防止壁の方が設けられ、キートップは外面が操作面とされる閉塞された一端と側周壁とを有する、前記一端が閉塞された筒状をなし、ガイド側侵入防止壁及び押釦側侵入防止壁は前記側周壁よりも前記軸部に近い内側に設けられているものとされる。
【0013】
求項の発明では請求項の発明において、ガイド側侵入防止壁と押釦側侵入防止壁とが互い違いとなるように形成されているものとされる。
【0014】
請求項の発明では請求項の発明において、ガイド側侵入防止壁と押釦側侵入防止壁とが互いに対向する位置に形成されているものとされる。
【0015】
請求項4の発明によれば、ケースに収容され、ケースに形成された開口にキートップが位置される押釦スイッチは、キートップと、キートップの裏面中央に突出形成された軸部とを有する押釦と、前記軸部を収容案内する貫通穴が形成された案内部と、案内部を支持する支持板部とを有するガイドと、前記軸部の先端によって押されて操作されるスイッチ接点とを備え、前記軸部の外周面には前記軸部の軸方向に延伸するリブが少なくとも軸周りの相互に異なる一直線上にない方位に2つ突出形成され、リブをそれぞれ摺動案内する複数の溝が前記貫通穴の内周面に形成され、前記軸部が前記貫通穴に案内される時に摺動する部分はリブの幅方向の側面と前記溝の幅方向の内壁のみに限定され、前記軸部の外周面のリブを設けていない部分とリブの突出方向の先端面とは摺動作用に関与しない部位とされて前記貫通穴に対するクリアランス空間を形成し、支持板部上に案内部を囲んで突出形成されるガイド側侵入防止壁及びキートップの裏面に前記軸部を囲んで突出形成される押釦側侵入防止壁の両方が設けられ、ガイド側侵入防止壁と押釦側侵入防止壁とが互いに対向する位置に形成されているものとされる。
請求項の発明では請求項1からまでのいずれかの発明において、リブは2つとされ
て互いに90°をなす位置に形成されているものとされる。
【0016】
請求項の発明では請求項1からまでのいずれかの発明において、リブは3つとされ
て90°間隔で形成されているものとされる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、リブと溝とよりなる摺動案内部分に異物が入り込む可能性は低く、よって摺動不良が発生するといった状況は生じにくいものとなっており、スイッチ操作の安定性、信頼性に優れ、かつ良好な操作感触が得られる押釦スイッチを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明における押釦スイッチの一実施例がケースに配列されて収容された状態を示す断面図。
図2】Aは図1の部分拡大図、BはAに示した押釦スイッチが操作された状態を示す断面図。
図3】Aは図1における押釦の平面図、Bはその正面図、Cはその底面図、Dはその斜視図。
図4】Aは図1におけるガイドの要部を示す平面図、Bはその斜視図。
図5】ケースに多数の押釦スイッチが収容されてなる操作パネルの一例を示す平面図。
図6】Aはこの発明による押釦スイッチの他の実施例を示す断面図、BはAに示した押釦スイッチが操作された状態を示す断面図。
図7】Aはリブを4つとした押釦の斜視図、Bはリブを2つとした押釦の斜視図。
図8】従来のスイッチ操作パネルのケースを外した状態の一部を示す平面図。
図9】Aは図8におけるキートップがキートップガイドに挿入された状態の底面図、Bはその一部断面とした正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0020】
図1はケースに配列されて収容されたこの発明による押釦スイッチの一実施例の構成を示したものであり、図2Aは1つの押釦スイッチ部分を拡大して示したものである。
【0021】
図1中、21はフロントケースを示し、22はリアケースを示す。押釦スイッチはこれらフロントケース21とリアケース22とよりなるケース20に収容されている。押釦スイッチは押釦30とガイド40とラバーシート50と基板60とによって構成されており、ガイド40、ラバーシート50及び基板60は複数の押釦スイッチで共有化されている。
【0022】
図3は押釦30の詳細を示したものであり、押釦30はキートップ31と軸部32とを備えている。キートップ31は一端が閉塞された方形筒状をなし、閉塞された一端の外面が操作面31aとされる。キートップ31の他端側の外周にはフランジ31bが方形状をなして突出形成されている。
【0023】
軸部32は円柱状をなし、キートップ31の裏面31c(操作面31aと反対面)の中央に突出形成されている。軸部32はキートップ31の他端から突出する長さとされており、軸部32の中心には穴32aが設けられている。軸部32の外周面には軸部32の径方向に突出し、軸部32の軸方向に延伸するリブ33が軸部32の全長に渡って形成されている。リブ33はこの例では軸部32の軸周りに90°間隔で3つ形成されている。
【0024】
さらに、この例では円筒形状をなす押釦側侵入防止壁34が軸部32を囲んでキートップ31の裏面31cに突出形成されている。押釦側侵入防止壁34の高さ(突出高さ)はキートップ31の他端から突出しない高さとされている。
【0025】
図4はガイド40の要部構成を示したものであり、ガイド40は押釦30を案内する案内部41を備え、案内部41は支持板部42によって支持された構造となっている。案内部41は円柱状とされてその中心には貫通穴43が形成されており、貫通穴43の内周面には貫通穴43の貫通方向に延びる溝44が形成されている。溝44は押釦30の3つのリブ33と対応して貫通穴43の周方向に90°間隔で3つ形成されており、貫通穴43の全長に渡って形成されている。
【0026】
ガイド40にはガイド側侵入防止壁45が形成されている。ガイド側侵入防止壁45は円筒形状をなし、案内部41をそれぞれ囲むように支持板部42上に突出形成されている。
【0027】
基板60には図1及び2では詳細図示を省略しているが、押釦スイッチの構成要素をなす一対の固定接点が各押釦スイッチを構成する位置に形成されている。一対の固定接点は例えば互いに噛み合うように配置されて形成された一対の櫛状接点とされる。
【0028】
基板60はリアケース22の内面上に配置されて固定されており、この基板60上にラバーシート50が搭載されている。ラバーシート50には基板60の各固定接点と対向して柱状部51が形成されており、柱状部51は弾性変形可能なスカート部52によって包囲されて支持され、上下動可能とされている。柱状部51の下端面には可動接点53が設けられている。可動接点53は例えば導電材が印刷されて形成されており、この可動接点53と基板60に形成されている一対の固定接点とによってスイッチ接点が構成されている。
【0029】
ガイド40はラバーシート50のシート部54と所定の距離、離間してラバーシート50上に位置されている。ガイド40の各案内部41の貫通穴43はラバーシート50の各柱状部51上に位置されている。
【0030】
押釦30は軸部32がガイド40の貫通穴43に挿入されてガイド40に取り付けられている。軸部32に形成されている3つのリブ33はそれぞれ貫通穴43の内周面に形成されている溝44に収容され、軸部32の先端(下端)はラバーシート50の柱状部51の上端面上に位置されている。
【0031】
フロントケース21には各押釦スイッチと対応して開口23が形成されており、各押釦スイッチのキートップ31は開口23に位置してその一部がフロントケース21から突出されている。キートップ31はフランジ31bがフロントケース21の内面と突き当たることによってケース20から抜け止めされている。なお、図1では詳細図示を省略しているが、ラバーシート50及びガイド40はそれぞれ周縁部分が所定の位置決め構造によってケース20内に位置決めされるものとなっている。
【0032】
上記のような構成において、押釦30の軸部32はガイド40の貫通穴43に収容されて案内されるものとなっており、キートップ31の操作面31aを押し込み操作すると、軸部32の先端によってラバーシート50の柱状部51が押され、スカート部52が変形して柱状部51が下方へ変位する。これにより柱状部51に形成されている可動接点53が基板60に形成されている一対の固定接点と接触し、一対の固定接点が導通されてスイッチ接点がONとなる。図2Bはこのようにしてスイッチ接点が操作され、ONとなった状態を示している。
【0033】
一方、キートップ31への押圧力を解除すると、スカート部52は元の状態に弾性復帰し、可動接点53が一対の固定接点から離れることでスイッチ接点はOFFとなり、押釦30は元の位置に復帰する。
【0034】
押釦30の軸部32には上述したようにリブ33が3つ形成され、これらリブ33を摺動案内する溝44がガイド40の貫通穴43の内周面に3つ形成されており、この例ではリブ33と溝44とよりなる案内構造によって押釦30操作時にガタツキや傾きが発生せず、良好な操作感触が得られるものとなっている。
【0035】
このようなリブ33と溝44とよりなる案内構造は、この例では従来のようにキートップの周縁位置ではなく、キートップ31の裏側中央に位置しており、つまりキートップ31が外部に臨むフロントケース21の開口23におけるキートップ31とフロントケース21の隙間から遠ざかった位置に位置している。よって、キートップ31とフロントケース21の隙間から粉塵を含んだ液体や埃、粉塵等の異物が侵入したとしても、異物がリブ33と溝44との摺動部分に入り込む可能性は低く、摺動不良が発生するといった状況は生じにくいものとなる。
【0036】
加えて、この例ではガイド40及び押釦30にそれぞれガイド側侵入防止壁45及び押釦側侵入防止壁34が設けられており、これらガイド側侵入防止壁45と押釦側侵入防止壁34は図1及び2に示したように互い違いとなるように形成されて異物の侵入経路に位置しているため、異物がリブ33と溝44との摺動部分に入り込む可能性はさらに低くなっている。
【0037】
図5はケース20に押釦スイッチが収容、配列されてなる操作パネルの一例としてFA機器の操作パネルを示したものであり、多数の押釦スイッチ(図5では押釦スイッチの押釦30を示している)が高密度に配列されている。このような操作パネルにおいて例えば操作パネルの小型化や押釦スイッチの数量増が要求される場合、押釦スイッチの配列の狭ピッチ化は免れえない。この点、図8及び9に示したような従来構成例ではリブ15と案内溝13とよりなる案内構造がキートップ11の周縁に、つまりキートップ11の操作面(キートップ頂面11a)より外側に位置しているため、その分狭ピッチ化に不利となっている。これに対し、上述したこの発明の実施例ではリブ33と溝44とよりなる案内構造はキートップ31の裏側中央に位置しているため、狭ピッチ化に有利な構造となっている。
【0038】
図6Aはこの発明による押釦スイッチの他の実施例を示したものであり、図6Bはその操作状態を示したものである。この例ではガイド側侵入防止壁45と押釦側侵入防止壁34が互い違いではなく、互いに対向するように形成されている。ガイド側侵入防止壁45及び押釦側侵入防止壁34はこのような位置関係に形成してもよい。なお、ガイド側侵入防止壁45と押釦側侵入防止壁34は必ずしも双方を設けなくてもよく、例えばガイド側侵入防止壁45のみとして、その突出高さを高くするような構成としてもよい。
【0039】
一方、例えば粉塵や切粉等を含んだ油(汚れた油)の侵入が懸念される場合には、油は面を伝わって侵入するため、ガイド側侵入防止壁45と押釦側侵入防止壁34の双方を設け、かつ沿面距離を増大させるべく、図1及び2に示したように互い違いとなるよう配置するのが好ましい。
【0040】
リブ33は上述した実施例では押釦30の軸部32の軸回りに90°間隔で3つ設けているが、3つに限定されるものではなく、例えば図7Aに示した押釦30’のように90°間隔で4つ設けてもよい。また、図7Bに示した押釦30’’のようにリブ33を2つとしてもよい。図7Bでは2つのリブ33は軸回りに互いに90°をなす位置に形成されている。
【0041】
リブ33は少なくとも軸回りの相互に異なる一直線上にない方位に2つ形成すればよく、これによりガタツキや傾きを抑え、良好なスイッチ操作が可能となる。なお、図3に示した押釦30や図7Bに示した押釦30’’のような360°未満の回転角度による回転対称性のないリブ33の配置とすれば、ガイド40の貫通穴43に軸部32を挿入する際、回転方向の位置決めがなされ、押釦30,30’’の向きが一義的に決定されるものとなる。ガイド40の貫通穴43の内周面の溝44はリブ33の位置、数と対応するように設けられる。
【0042】
ここで、このように押釦30の軸部32にリブ33を設け、リブ33を摺動案内する溝44を、軸部32を収容する貫通穴43に設けることにより、スイッチの良好な操作性を実現できることについて説明する。
【0043】
例えば、単なる円柱状の軸部が円形の貫通穴に案内される場合、軸部が傾く(倒れる)と上下2点が貫通穴の内周面と当たり、摺動することになる。この場合、軸部の外周面や貫通穴の内周面のような円筒面は一般に摩擦係数の小さい良好な面(鏡面)に仕上げるのが難しいため、摺動摩擦力が大きくなり、良好なスイッチ操作性は得られない。
【0044】
これに対し、軸部が貫通穴に案内される場合に摺動する部分をリブと溝の内壁に限定すれば、リブや溝は平面によって形状が構成されるため、鏡面仕上げがしやすく、よって軸部が傾いてリブと溝の内壁が摺動しても摺動摩擦力は小さく、これにより良好なスイッチ操作性が得られることになる。
【0045】
上述した実施例において、軸部32が傾いた場合、リブ33は突出方向の先端面ではなく、側面(幅方向の側面)が溝44の内壁と摺動するようにする。このため、リブ33と溝44の幅方向のクリアランスを小さくし、リブ33の突出方向のクリアランスは大きくする。即ち、実施例に示したように90°間隔でリブ33が形成されている場合、軸部32が傾き、あるリブ33の側面が溝44の内壁と当たったとしても、倒れ方向にあるリブ33(溝44の内壁と側面が当たったリブ33と90°ずれた方向にあるリブ33)の突出方向の先端面は溝44の内壁と当たらないようにする。このようにして、摺動案内される部分をリブ33の側面のみに限定すると共に、リブ33と溝44の幅方向のクリアランスを小さくすれば、スイッチ操作時のガタツキや傾きを抑え、良好なスイッチ操作性を実現できる。なお、少なくとも2つのリブ33を軸部32の軸回りの相互に異なる一直線上にない方位に設けることにより、このような良好なスイッチ操作性を実現できる。
【0046】
本発明におけるリブと溝の幅方向のクリアランスと、上記したような円柱状の軸部と円形の貫通穴とでなる従来例のクリアランスとが等しい大きさを有する場合、換言すれば両者の実効的クリアランスが等しく、量的に同等のガタツキ抑圧効果を有すると言える場合について本発明と上記従来例とを比較すると、本発明においては上記従来例と異なり、ガタツキを抑圧する摺動作用に関与しない部位でのクリアランス、より詳しくはリブを設けていない軸部外周やリブの突出方向でのクリアランスを、無用なクリアランス空間として大きく形成することができる。その結果、本発明が軸部と貫通穴との間に有する隙間の全容積は、上記従来例が軸部と貫通穴との間に有する隙間の容積よりもはるかに大きいものとなっている。そして、粉塵や切粉等の異物が侵入した場合、本発明においては異物がその無用なクリアランス空間に退避して、摺動作用を妨げない状態に至ることが高い確率で起こるのである。
【0047】
つまり、上記従来例においてはわずかな異物の侵入によって直ちに摺動が阻害されるために実施できなかったような厳しいクリアランス、即ちガタツキ抑圧の要求仕様を、摺動の阻害を十分に回避しながら達成することが、本発明においては可能となる。
【符号の説明】
【0048】
11 キートップ 11a キートップ頂面
12 キートップガイド 13 案内溝
14 突条 15 リブ
16 ガイド保持板 17 脱落防止片
18 スイッチ素子 19 発光素子
20 ケース 21 フロントケース
22 リアケース 23 開口
30,30’,30’’ 押釦 31 キートップ
31a 操作面 31b フランジ
31c 裏面 32 軸部
32a 穴 33 リブ
34 押釦側侵入防止壁 40 ガイド
41 案内部 42 支持板部
43 貫通穴 44 溝
45 ガイド側侵入防止壁 50 ラバーシート
51 柱状部 52 スカート部
53 可動接点 54 シート部
60 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9