特許第6404136号(P6404136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404136
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】注出キャップ及びそれを備える容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 49/00 20060101AFI20181001BHJP
   B65D 47/24 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B65D49/00
   B65D47/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-17378(P2015-17378)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-141416(P2016-141416A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−009859(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02128596(GB,A)
【文献】 特開2007−126192(JP,A)
【文献】 米国特許第04449637(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部を取り囲む装着筒を有し、該装着筒に連結する頂壁に、該容器本体に収容される内容物の取出口が形成されたベースと、該口部の上部に固定されるとともに貫通孔を備える天壁を有し、該ベースの内側に配置される中栓と、該頂壁と該天壁との間に配置されて該貫通孔を開閉する逆止弁とを備え、
前記中栓は、前記ベースに抜け出し不能に保持される環状壁と、該環状壁と前記天壁とを破断可能に連結する弱化部とを有し、
前記天壁は、前記口部に固定された際に該口部の上端よりも下方に位置する注出キャップ。
【請求項2】
前記天壁は、前記口部の内周面に沿って延在するとともに該口部に嵌合保持される周壁を有する請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の注出キャップを前記容器本体に装着した容器であって、該容器本体は、外気導入孔を有する外層体と、該外層体の内側に設けられ収容した内容物の注出に伴って該外気導入孔から外層体との間に空気を取り込んで減容変形する内層体とからなる容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に収容された内容物を注出する注出キャップ、及びこの注出キャップを容器本体に装着した容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器本体に装着して内容物を注出する注出キャップにおいては、内部に逆止弁を組み込んだものが知られている(例えば特許文献1参照)。このような注出キャップによれば、容器本体内への外気導入を阻止できることから、内容物と空気との接触を抑制して内容物の鮮度を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−31921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのような注出キャップを容器本体から取り外すと、内容物を容器本体内に入れることができるため、内容物の再充填が行われるおそれがある。この場合、予定されていない内容物が充填されたり、繰り返し使用されてしまうと、注出する際に内容物が飛び散ること、保存性能が低下すること等の不具合が生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、容器本体から取り外しても内容物の再充填ができないようにした注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器本体の口部を取り囲む装着筒を有し、該装着筒に連結する頂壁に、該容器本体に収容される内容物の取出口が形成されたベースと、該口部の上部に固定されるとともに貫通孔を備える天壁を有し、該ベースの内側に配置される中栓と、該頂壁と該天壁との間に配置されて該貫通孔を開閉する逆止弁とを備え、
前記中栓は、前記ベースに抜け出し不能に保持される環状壁と、該環状壁と前記天壁とを破断可能に連結する弱化部とを有し、
前記天壁は、前記口部に固定された際に該口部の上端よりも下方に位置する注出キャップである。
【0008】
前記天壁は、前記口部の内周面に沿って延在するとともに該口部に嵌合保持される周壁を有することが好ましい。
【0009】
このような注出キャップを容器本体に装着した容器にあっては、容器本体は、外気導入孔を有する外層体と、該外層体の内側に設けられ収容した内容物の注出に伴って該外気導入孔から外層体との間に空気を取り込んで減容変形する内層体とからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の注出キャップは、容器本体の口部を取り囲む装着筒を有するベースと、口部の上部に固定される天壁に貫通孔を有する中栓と、貫通孔を開閉する逆止弁とを備えるものであり、中栓に、ベースに抜け出し不能に保持される環状壁と、環状壁と天壁とを破断可能に連結する弱化部とを設けている。すなわち、注出キャップを容器本体から取り外した際には、弱化部の破断によって環状壁から分離した天壁が口部に残ることになるため、容器本体に内容物を入れることが困難になる。このため、内容物の再充填を有効に防止することができる。
【0011】
天壁が口部から突出していれば、この突出した部分を掴んで容器本体から取り外されてしまうおそれがあるものの、天壁を、口部に固定させた際に口部の上端よりも下方に位置させれば、容器本体からの取り外しが困難になるため、内容物の再充填をより確実に防止することができる。
【0012】
天壁に、口部の内周面に沿って延在するとともに口部に嵌合保持される周壁を設ける場合は、口部においてより強固に固定されて容器本体からの取り外しが一層困難になるため、内容物の再充填が更に確実に防止できる。
【0013】
このような注出キャップを装着する容器本体として、外気導入孔を有する外層体と、外層体の内側に設けられ収容した内容物の注出に伴って外気導入孔から外層体との間に空気を取り込んで減容変形する内層体とからなるものを採用することで、内容物と外気との接触がより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従う注出キャップの一実施形態を示す側面視の断面図である。
図2図1に示す中栓の底面図である。
図3図1に示す注出キャップを容器本体に装着した状態を示す側面視での断面図である。
図4図3の状態から注出キャップを取り外した状態を示す側面視での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。図1において、符号1は、本発明に従う注出キャップの一実施形態を示す。本実施形態の注出キャップ1は、ベース2と、中栓3と、移動弁体4と、逆止弁5と、蓋体6とを備えている。
【0016】
ベース2は、円筒状をなし、後述する容器本体の口部を取り囲む装着筒2aを備えている。装着筒2aの内面には、雌ねじ部2bと、雌ねじ部2bの上方において径方向内側に突出する突起2cが設けられている。突起2cは、装着筒2aの中心軸線周りに環状に設けても、また間欠状に設けてもよい。
【0017】
装着筒2aの上部には、頂壁2dを一体に連結している。頂壁2dの中央部には、上下方向に貫通する孔(内容物の取出口)2eが設けられ、この取出口2eを取り囲んで注出筒2fが設けられている。注出筒2fの頂部は径方向外側に拡径していてリップを形成している。また頂壁2dの外周部には、孔(通気口)2gが設けられている。また頂壁2dの下面には、下方に向かって延在する抜け止め壁2hを設けている。また、抜け止め壁2hの外周面には、複数の縦リブが周方向に間隔をあけて設けられている。
【0018】
ベース2の内側には中栓3が取付けられる。中栓3は、装着筒2aの内面に沿って延在する環状壁3aを備えている。環状壁3aの上部には、部分的に環状壁3aを切り欠く溝部3bを設けている。また環状壁3aの外周面と装着筒2aとの間には、部分的に微小な隙間tが形成されている。本実施形態の環状壁3aは、装着筒2aに対して回転不能に保持されていて、また突起2cによって抜け止め保持されている。
【0019】
環状壁3aの径方向内側には、天壁3cを設けている。天壁3cの中央部には、貫通孔3dを設けている。また貫通孔3dの径方向外側には、上下を貫通させた筒状壁3eを設けていて、筒状壁3eの下部には、下方に向かって縮径する傾斜部3fを設けている。更に、天壁3cは、その外縁部に上方に向けて延在する円筒状の周壁3gを備えている。周壁3gの上端は、中栓3をベース2に取付けた際に抜け止め壁2hに外嵌し、周壁3gの上端面が抜け止め壁2hの外面に設けられた縦リブの下端面に当接するようにしている。また、筒状壁3eと周壁3gの間を含む天壁3cの外縁部には、上方に向けて開放させた円環状になる凹部3hを設けている。
【0020】
環状壁3aと天壁3cは、これらの間を破断可能に連結する弱化部3iによって連結している。本実施形態では図1図2に示すように、環状壁3aに、その内周面から径方向内側に向かって高さ及び幅を狭めつつ延在する連結部3jを周方向に間隔をあけて複数設け(図示の例では合計8つ)、連結部3jの内周端と天壁3cの上端との間をつなぐ薄肉部によって弱化部3iを形成している。
【0021】
筒状壁3eの内側には、筒状壁3eの軸線方向に移動可能な移動弁体4を配置している。本実施形態の移動弁体4は球状体であるが、周壁3gの内周面形状に適合するものであれば種々の形状のものが適用可能である。本実施形態では球状体の他、円柱体や楕円体であってもよい。
【0022】
頂壁2dと天壁3cとの間には、逆止弁5を設けている。逆止弁5は、円環状になる基部5aを有し、基部5aの内側に設けた単数或いは複数の弾性片5bを介して円板状の弁体5cを一体に設けている。本実施形態の逆止弁5は、3つの弾性片5bによって弁体5cを保持する、所謂3点弁の形態をなすものである。なお3点弁の他、1点弁、2点弁等の形態も取り得る。
【0023】
ベース2に対して中栓3、移動弁体4、逆止弁5を組み込んだ際、逆止弁5は、基部5aを凹部3hに嵌め込むことで位置決めされ、また基部5aの上端が抜け止め壁2hに当接して抜け止めされる。またこの状態において、取出口2eと通気口2gとは、抜け止め壁2hによって遮断されている。そして貫通孔3dは、これを覆う弁体5cが天壁3cに着座することで閉鎖される一方、筒状壁3eは、弾性片5bと弁体5cとの間に形成される隙間によって、その一部が開放した状態になっている。
【0024】
ベース2の上方には、蓋体6を設けている。蓋体6は、板状の上壁6aと、上壁6aに一体に連結するとともに装着筒2aに連なる外周壁6bとを備えている。また外周壁6bには、装着筒2aに一体に連結するヒンジ6cを設けている。ヒンジ6cに対向する位置には、径方向外側に突出する指掛け部6dを設けている。また上壁6aの下面には、注出筒2fに入り込む円筒状(円柱状でもよい)のシール部6eを設けている。またシール部6eの径方向外側には、頂壁2dに向けて延在するストッパー6fを設けている。ストッパー6fは、上壁6aの上面に過剰な押圧力が付与された場合に頂壁2dに当接することによって上壁6aの変形を防止する機能を有する。
【0025】
このような構成になる注出キャップ1は、例えば図3に示す容器本体7に装着することができる。本実施形態の容器本体7は、外層体8と内層体9によって構成された二重容器である。
【0026】
外層体8は、円筒状の口部8aに、図示を省略する胴部及び底部を順に連結したものであり、復元自在な可撓性を有している。口部8aの外周面には、ベース2の雌ねじ部2bに適合する雄ねじ部8bを設けている。また、口部8aには、孔(外気導入孔)8cを設けていて、更に、外気導入孔8cを設けた外周面には、上下方向に雄ねじ部8bを切り欠く縦溝8dを設けている。
【0027】
内層体9は、薄肉の袋状に形成されていて、その内側に内容物を充填可能とする充填空間Sを備えている。
【0028】
注出キャップ1を容器本体7に装着するには、注出キャップ1を口部8aに対して回転させる。これにより、雌ねじ部2bと雄ねじ部8bが螺合して、天壁3cは、口部8aに対して回転しつつ、抜け止め壁2hが周壁3gを押し込むことによって口部8aに入り込んで行く。そして周壁3gと口部8aとの嵌合が強まってくると、周壁3gは口部8aに対して回りにくくなる。一方、装着筒2aに対して回転不能に保持された環状壁3aは、ベース2とともに回転するため、天壁3cに対して環状壁3aが相対的に回転することになり、これらをつなぐ弱化部3iが破断する。なお、弱化部3iが破断した後も抜け止め壁2hが周壁3gを押し込むため、図3に示すように、天壁3cのうち最も上方に位置する周壁3gの上端を、口部8aの上端よりも下方に位置させることができる。
【0029】
充填空間Sの内容物を注出するにあたっては、蓋体6を開き、正立姿勢の容器本体7を傾倒姿勢に変位させて外層体8の胴部を押圧する。これによって充填空間Sが加圧され、天壁3cに着座していた弁体5cが天壁3cから離反し、充填空間S内の内容物は、貫通孔3d、弁体5cと天壁3cとの隙間、弾性片5bと弁体5cとの隙間を通り、取出口2eを経て注出筒2fから注出される。このとき、移動弁体4は注出筒2f側に移動する。
【0030】
所定量の内容物を注出した後は、外層体8への押圧を解除して容器本体7を元の正立姿勢に戻す。これによって充填空間S内の圧力が下がり、弁体5cが貫通孔3dを閉鎖するので、充填空間S内への外気導入が有効に防止できる。また、外層体8は、それ自身の復元力により元の形状に戻ろうとするため、外層体8と内層体9との相互間は負圧状態となり、これによって、通気口2gから溝部3b、隙間t、縦溝8dを経て、外気導入孔8cより外層体と内層体の間に空気が導入され、内層体9を減容させたまま外層体8が復元する。このとき、移動弁体4は傾斜部3f側に移動し、これに伴って注出筒2f内の内容物を、弾性片5bと弁体5cとの隙間を通して筒状壁3e側に引き込むことができる(サックバック)。これにより、注出筒2fからの液だれを防止することができる。
【0031】
なお、雌ねじ部2bと雄ねじ部8bの螺合が緩む向きに注出キャップ1を回転させると、図4に示すように注出キャップ1は容器本体7から取り外されるものの、口部8aには天壁3c及び逆止弁5が残ったままになっている。すなわち、口部8aにおいて開口する部分は、筒状壁3eの上方に位置する弾性片5bと弁体5cとの間に形成される隙間しかなく、またこの隙間の下方では、移動弁体4が傾斜部3fに着座して充填空間Sを塞いでいるため、内容物の再充填を防止することができる。そして、天壁3cのうち最も上方に位置する周壁3gの上端は、口部8aの上端よりも下方に位置しており、天壁3cの一部を掴んで口部8aから取り外すことはできないため、内容物の再充填をより確実に防止できる。特に、天壁3cに周壁3gを設けたことで、口部8aとの接触面積が広がって口部8aに対してより強固に固定されているため、内容物の再充填が更に確実に防止できる。なお、仮に天壁3cに着座している弁体5cを持ち上げて内容物の充填を試みても、貫通孔3dを通じての再充填は難しく、さらには、弾性片5bが変形、或いは破断して機能を果たさなくなるおそれがあるため、再充填を行うことはできない。
【0032】
本発明に従う注出キャップ及び容器は、本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では容器本体7に対して注出キャップ1をねじ付けるように構成したが、打栓によって装着するようにしてもよい。この場合、天壁3cと環状壁3aとは相対的に回転しないため、上述した実施形態のように装着の途中で弱化部3iの破断が生じない可能性があるが、環状壁3aは突起2cによって抜け止め保持されているため、注出キャップ1を容器本体7から取り外せば、弱化部3iが破断して口部8aに天壁3cを残したままにすることができる。また、外層体8に設けた外気導入孔8cは、口部8aに設ける場合に限られず、胴部や底部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:注出キャップ
2:ベース
2a:装着筒
2b:雌ねじ部
2c:突起
2d:頂壁
2e:取出口
2f:注出筒
2g:通気口
2h:抜け止め壁
3:中栓
3a:環状壁
3b:溝部
3c:天壁
3d:貫通孔
3e:筒状壁
3f:傾斜部
3g:周壁
3h:凹部
3i:弱化部
3j:連結部
4:移動弁体
5:逆止弁
5a:基部
5b:弾性片
5c:弁体
6:蓋体
6a:上壁
6b:外周壁
6c:ヒンジ
6d:指掛け部
6e:シール部
6f:ストッパー
7:容器本体
8:外層体
8a:口部
8b:雄ねじ部
8c:外気導入孔
8d:縦溝
9:内層体
S:充填空間
t:隙間
図1
図2
図3
図4