(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、複数の電池セルの配置には、上記した横置きから筐体ケースに対して90度の角度で回転させた縦置きに並列されるものが提案されている。このような縦置きでは、電池セルの長手方向が電池パックを装着する方向と一致しており、送風機構により送られる冷却風は、縦置きに並列される複数の電池セルそれぞれにガイドされてしまう。つまり、冷却風の流れをガイドする電池セルのみが冷却され易く、冷却風の流れをガイドしない電池セルは冷却され難くなってしまう。そうすると、複数の電池セルそれぞれの冷却に偏り生じてしまう。このような冷却の偏りは、電池セルすべてを満充電とするに際し、充電効率性に欠ける要因となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、電動工具の工具本体に装着可能にされる電池パックにおいて、複数の電池セルが筐体ケース内部で縦置きに並列される場合でも、複数の電池セルそれぞれに冷却風が当てられ易いようにして複数の電池セルそれぞれの冷却の偏りを減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するにあたって、本発明に係る電池パックは次の手段を採用する。すなわち、本発明の第1の発明に係る電池パックは、電動工具と充電器に装着可能な電池パックであって、外装をなす筐体ケースと、該筐体ケース内部に長手方向が揃えられて並列して配置される複数の円柱状の電池セルと、前記筐体ケースの内部と外部とを連通して形成される第一通風孔および第二通風孔と、を有し、前記筐体ケース内部には、前記第一通風孔を入口とし前記第二通風孔を出口とするように通風可能な通風路部が設けられており、前記通風路部には、前記電池セルの長手方向に沿って風が流れる長手方向通路部が、前記電池セルの並列方向に複数設けられている、という構成である。
【0008】
この第1の発明に係る電池パックによれば、通風路部には電池セルの長手方向に沿って風が流れる長手方向通路部が設けられている。ここで、この長手方向通路部は電池セルの並列方向に複数設けられているので、風は筐体ケース内部で縦置きに並列される複数の電池セルそれぞれに対して当てられ易くなる。これによって、複数の電池セルそれぞれの間に生ずる冷却の偏りを減らすことができる。つまり、これら複数の電池セル同士の間で均一な冷却とすることができて、例えば電池セルすべてを満充電とするに際しての充電効率性を向上させる。
【0009】
第2の発明に係る電池パックは、前記第1の発明に係る電池パックにおいて、前記長手方向通路部は、前記電池セルと該電池セルと対面する前記筐体ケースとの形状に基づいて、該電池セルと該電池セルと対面する該筐体ケースとの間で設定されている、という構成である。この第2の発明に係る電池パックによれば、長手方向通路部は電池セルと電池セルと対面する筐体ケースとの形状に基づいて設定されている。これによって、長手方向通路部を電池セルの外周面に接触して設定することができ、電池セルの冷却効率化を図ることができる。
【0010】
第3の発明に係る電池パックは、前記第1または前記第2の発明に係る電池パックにおいて、前記筐体ケース内部には、前記第一通風孔からの風を分岐して複数の前記長手方向通路部のそれぞれに流す分岐部が設けられている、という構成である。この第3の発明に係る電池パックによれば、筐体ケース内部には分岐部が設けられているので、第一通風孔からの風を分岐して複数の長手方向通路部のそれぞれに流すことができる。これによって、冷却の偏りを減らすことができる。
【0011】
第4の発明に係る電池パックは、前記第3の発明に係る電池パックにおいて、前記分岐部の少なくとも一部は、前記電池セルの保持を兼ねている、という構成である。この第4の発明に係る電池パックによれば、分岐部の少なくとも一部は電池セルの保持を兼ねているので、縦置きに並列される複数の電池セルそれぞれの冷却効率を高めながら、さらに電池セルのがたつきを無くすことができる。これによって、製品としての品質を高めながら、コンパクトさを維持することができる。
【0012】
第5の発明に係る電池パックは、前記第3または前記第4の発明に係る電池パックにおいて、前記分岐部は、前記電池セルの長手方向の中心より流される風の上流側に設定されている、という構成である。風は上流側から下流側に流れるにしたがって、電池セル自体の温度によって次第に温まる傾向にある。この第5の発明に係る電池パックによれば、分岐部は電池セルの長手方向の中心より流される風の上流側に設定されているので、上流側で冷却される電池セルよりも下流側で冷却される電池セルの方に、多くの風を当てることができる。これによって、複数の電池セルそれぞれの冷却の偏りを減らして、互いの電池セル同士の冷却差を均すことができる。
【0013】
第6の発明に係る電池パックは、前記第3から前記第5のいずれかの発明に係る電池パックにおいて、前記分岐部は、前記筐体ケースの内部底面に設定されている、という構成である。この第6の発明に係る電池パックによれば、分岐部は筐体ケースの内部底面に設定されているので、部材点数を増やすことなく分岐部を設けることができて、電池パックのコンパクト化を効率良く図ることができる。
【0014】
第7の発明に係る電池パックは、前記第1から前記第6のいずれかの発明に係る電池パックにおいて、前記筐体ケース内部には、前記電池セルを保持するセルホルダが配置されており、前記長手方向通路部は、前記電池セルと該電池セルと対面する前記セルホルダとの形状に基づいて、該電池セルと該電池セルと対面する該セルホルダとの間で設定されており、前記セルホルダには、前記第一通風孔からの風を分岐して複数の前記長手方向通路部のそれぞれに流すホルダ分岐部が設けられている、という構成である。
【0015】
この第7の発明に係る電池パックによれば、筐体ケース内部に電池セルを保持するセルホルダが配置されているので、筐体ケース内部の電池セルのがたつきをより無くすことができる。また、セルホルダにはホルダ分岐部が設けられているので、複数の電池セルそれぞれの冷却効率も高めることができる。これによって、製品としての品質を高めながら冷却効率も高められることとなる。
【0016】
第8の発明に係る電池パックは、前記第1から前記第7のいずれかの発明に係る電池パックにおいて、並列して配置される複数の前記電池セルは、並列方向と直交する方向で複数段に段積みされており、前記段積み方向の前記電池セル同士の間には、該電池セル同士の間を区画するセパレータが介装されており、前記セパレータには、段積み方向で連通する連通孔が設けられている、という構成である。この第8の発明に係る電池パックによれば、並列して配置される複数の電池セルを複数段に段積みすることができる。ここで、段積み方向の電池セル同士の間には電池セル同士の間を区画するセパレータが介装されているので、電池セルのがたつきを無くすことができる。ここで、セパレータには段積み方向で連通する連通孔が設けられているので、段積み方向の電池セルにおいての冷却の偏りを減らすことができて、電池セルの冷却効率化を図ることができる。
【0017】
第9の発明に係る電池パックは、前記第1から前記第8のいずれかの発明に係る電池パックにおいて、前記筐体ケースの前記内部底面には、前記電池セルの外周面に当接する固定壁が設けられており、前記固定壁は、前記通風路部の通風範囲と前記電池セルの電極端面とを隔離する、という構成である。この第9の発明に係る電池パックによれば、固定壁は通風路部の通風範囲と電池セルの電極端面とを隔離することができるので、たとえ通風範囲に水分や異物が浸入することがあっても、電池セルの電極端面をこの浸入した水分や異物から隔離させたものとすることができる。これによって、電池セルの電極端面は、水分や異物から保護されるので、電池セル同士の短絡を抑制することができる。
【0018】
第10の発明に係る電池パックは、前記第1から前記第9のいずれかの発明に係る電池パックにおいて、前記第一通風孔は、前記筐体ケースのうち前記長手方向通路部に流される風の上流側に設定されており、前記第二通風孔は、前記筐体ケースのうち前記長手方向通路部に流される風の下流側に設定されている、という構成である。この第10の発明に係る電池パックによれば、第一通風孔は筐体ケースのうち長手方向通路部に流される風の上流側に設定されており、第二通風孔は筐体ケースのうち長手方向通路部に流される風の下流側に設定されているので、風の流れに逆らうことなく長手方向通路部を設定することができる。これによって、電池セルの冷却効率化をより図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施の形態]
以下に、本発明に係る電池パックを実施するための第1の実施の形態について、
図1〜
図19を参照しながら説明する。
図1では、本発明に係る電池パックを実施するための第1の実施の形態の電池パック30を斜視にて示している。
図2および
図3は、電池パック30を工具本体10に装着する際の斜視図である。具体的には、
図2は
図1の電池パック30を工具本体10に装着する際の上側斜視図であり、
図3は
図1の電池パック30を工具本体10に装着する際の下側斜視図である。電池パック30は、電動工具の電源として工具本体10に装着可能にされる。工具本体10は、電池パック30が装着されることによりインパクトドライバとして使用される。電池パック30は、工具本体10のバッテリ装着部13に対して相対的にスライドさせることにより着脱される。
【0021】
ちなみに、工具本体10は、上から順に、駆動部11とグリップ部12とバッテリ装着部13とを有する。バッテリ装着部13は、電池パック30をスライドさせるための雌レール14が設けられている。雌レール14の間には、プラス端子15とマイナス端子16と通信端子17とが設けられている。これらプラス端子15とマイナス端子16と通信端子17とは、バッテリ装着部13に対して後側から前側に相対的に電池パック30をスライドさせることにより、後に説明する電池パック30の端子と電気的に接続される。これらプラス端子15とマイナス端子16と通信端子17とは、雄形端子にて設定されており、後に説明する電池パック30の雌形端子をなす雌端子84に電気的に接続される。
【0022】
図4および
図5に示す符号20は、
図1の電池パック30を充電するための専用充電器を示している。具体的には、
図4は
図1の電池パック30を専用充電器20に装着した際の側面図であり、
図5は
図4における(V)-(V)断面矢視を示す断面図である。電池パック30は、充電残量が少なくなると工具本体10から取り外されて専用充電器20に装着されて充電される。また、専用充電器20で満充電にされた電池パック30は、専用充電器20から取り外されて再び工具本体10のバッテリ装着部13に電源として装着される。専用充電器20の上面には、電池パック30が着脱されるバッテリ装着部21が設けられている。このバッテリ装着部21は、上記した工具本体10のバッテリ装着部13と略同様の構成を有して設定される。
【0023】
具体的には、専用充電器20のバッテリ装着部21には、雌レール22と、雌フック23と、図示省略の充電用プラス端子および充電用マイナス端子と、通信端子24とが設けられている。電池パック30がスライドさせることによりバッテリ装着部21に装着されると、電池パック30の雄フック631はバッテリ装着部21の雌フック23に嵌合された状態となって固定される。バッテリ装着部21に装着された電池パック30は、通信端子24から制御信号を受けつつ、充電用プラス端子および充電用マイナス端子を通じて充電されることとなる。この際、電池パック30の電池セル72は充電電流により発熱するため、専用充電器20には、充電中の電池セル72を冷却するための送風機構27が内蔵されている。
【0024】
図示省略の送風機構は、適宜の送風ファンを有して構成される。この送風機構は、バッテリ装着部21に装着され充電される電池パック30に対し、電池パック30の筐体ケース31内部に冷却風を送る。このため、このバッテリ装着部21には送風口25が設けられている。送風口25は、バッテリ装着部21に装着して充電される電池パック30の筐体ケース31内部に冷却風を送るため通風口である。すなわち、専用充電器20の送風口25は、バッテリ装着部21に装着された電池パック30の吸気口55と対面配置されるように設定される。送風口25からは送風機構により発生させた冷却風が噴き出され、噴き出された冷却風は対面配置された電池パック30の吸気口55から電池パック30の筐体ケース31内部に入るものとなっている。
【0025】
次に、
図6〜
図19を参照しながら電池パック30について説明する。なお、以下の説明では、電池パック30は、図面に記載の方向に基づいて説明する。なお、図面に規定される電池パック30の前側は、電池パック30のスライド装着方向に一致している。また、図面にて規定される電池パック30の上側は、電池パック30のバッテリ装着部13,21の対面方向に一致している。なお、
図6は電池パック30の上面図であり、
図7は電池パック30の前面図である。
図8は
図6における(VIII)-(VIII)断面矢視を示しており、
図9は
図6における(IX)-(IX)断面矢視を示している。また、
図10は電池パック30の分解斜視図である。なお、図示されるように、電池セル72の並び方向が図示の左右方向となっており、電池セル72の長さ方向が図示の前後方向となっている。つまり、第1の実施の形態の電池セル72は、筐体ケース31内部で縦置きに3本の電池セル72が左右方向に並列されていることとなっている。この電池セル72は、外形が円柱状であり、筐体ケース31内部に長手方向が揃えられて並列して配置される。
【0026】
図6〜
図10に示すように、電池パック30は、概略、筐体ケース31と、筐体ケース31の内部に装置される電池本体70(
図10等参照)とを有する。筐体ケース31は、電池パック30の外装をなしつつ電池本体70を内装する筐体として機能する。筐体ケース31は、上下の2つ割り構造を有して構成される。筐体ケース31は、下ケース32と上ケース51とを上下方向に合体して構成される。合体された下ケース32と上ケース51とは、
図9に示す螺子部材61を介して合体状態が保持される。このように合体されてなる筐体ケース31は、内部に電池本体70を装置可能な箱形空間を形成する。つまり、筐体ケース31内部には、複数となる3本の電池セル72が並列して配置される。なお、
図10に示す符号62は、螺子部材61を螺子回しできなくするための螺子キャップである。
【0027】
下ケース32は、
図10に示すように上側が開口された略箱形に形成される。下ケース32は、電池本体70の下側範囲に属する電池部71を主として収容する。下ケース32は、左右方向で並列される3本の電池セル72を収容可能な前後左右上下方向の寸法を有して形成される。下ケース32の前面側には、螺子部材61が差し込まれる前側螺子孔33が2つ設けられている。また、下ケース32の後面側には、螺子部材61が差し込まれる後側螺子孔34が2つ設けられている。これらの螺子孔33,34には螺子部材61が差し込まれ、下ケース32と上ケース51とを一体に螺合可能とする。なお、下ケース32の内部底面321には、後に詳述するが、左右区画リブ40および前後区画リブ45が設けられている。
【0028】
図示符号35は、3本の電池セル72を弾性支持する緩衝マットである。緩衝マット35は、適宜に弾性を有する発泡樹脂を成形することにより形成される。緩衝マット35は、電池セル72の外周面を前後の2箇所に設けられている。この緩衝マット35は、後に説明する左右区画リブ40および前後区画リブ45によって設定されるマット支持範囲P1,P2にて保持される。緩衝マット35は、当接周面部351とリブ介装部352とを有する。当接周面部351は、電池セル72の外周面75に対して周方向に沿って当たる。マット支持範囲P1,P2にて支持された緩衝マット35は、当接周面部351を電池セル72の外周面75に当てて下側から支持されることにより、電池セル72の下ケース32の内部底面321への当たりを抑えることができる。
【0029】
上ケース51は、下ケース32の上側にて螺子部材61により下ケース32と一体に螺子止めされる。このため、上ケース51には、下ケース32の螺子孔33,34に差し込まれた螺子部材61を螺合する雌螺子部52が設けられている。上ケース51は、後に説明する電池本体70の回路部81を収容可能に下側が開口された略箱形に形成される。上ケース51は、工具本体10や専用充電器20に電池パック30をスライド装着させる際の装着側の外装をなす。上ケース51には、左右で対をなす雄レール53が設けられている。雄レール53は、上記した工具本体10や専用充電器20の雌レール14,22にスライド嵌合可能に設定される。このスライド嵌合により、電池パック30は、上記した工具本体10や専用充電器20のバッテリ装着部13,21に対して、相対的にスライドさせることにより装着されることが可能となっている。雄レール53は、左右両側に向けて張り出されながら前後に延びる形状を有する。
【0030】
上ケース51には、2つの充放電用スリット571と、3つの通信用スリット572とが設けられている。これらの充放電用スリット571および通信用スリット572は、板形をなす雄形端子(プラス端子15、マイナス端子16、通信端子17)を差し込むことが可能なスリット形状を有して上ケース51に設けられている。このため、充放電用スリット571および通信用スリット572は、上ケース51において差込方向となる前後方向に延びるように設定されている。また、上ケース51には、雄フック631を外部に突出させるためのフック用開口部581と、操作部632を外部に露出させるための操作用開口部582が設けられている。また、上ケース51の前面には、LEDラベル66を配置するための表示用開口部59が設けられている。
【0031】
また、筐体ケース31をなす上ケース51には、筐体ケース31の外部から内部に冷却風が送られるための吸気口55が設けられている。この吸気口55は、上記した送風口25から噴き出された冷却風を筐体ケース31内部に浸入させるための開口部である。また、この上ケース51には、筐体ケース31の内部から外部に冷却風を排出する排気口56が設けられている。この排気口56は、吸気口55より筐体ケース31内部に浸入された冷却風を、筐体ケース31外部に排出させるための開口部である。つまり、これらの吸気口55および排気口56は、筐体ケース31の内部と外部とを連通して形成される。ここで後述するように、筐体ケース31内部には、吸気口55を入口とし排気口56第二通風孔を出口とするように通風可能な通風路部が設けられる。この通風可能な通風路部としては、
図5にて図示される冷却風F1,F2のように筐体ケース31内部を流される通り道として設定されるものである。なお、吸気口55が本発明に係る第一通風孔に相当し、排気口56が本発明に係る第二通風孔に相当するものとなっている。この吸気口55から入って排気口56に出される冷却風は、この筐体ケース31内部に入っている間、主として電池セル72を冷却する。なお、この吸気口55は、筐体ケース31のうち冷却風が流される方向の上流側となる後側に近づけて設定されており、排気口56は、筐体ケース31のうち冷却風が流される方向の下流側となる前側に近づけて設定されている。
【0032】
次に、筐体ケース31の内部に装置される電池本体70について説明する。電池本体70は、充電式電池として機能するための各種の機能を有する。
図10に示すように、電池本体70は電池部71と回路部81とを有する。電池部71は、概略、セルホルダ90と、3本の電池セル72(721,722,723)と、リード板73(731,732,733,734)とを有する。セルホルダ90は、3本の電池セル72を纏めて支持するホルダとしての機能と、端子85,86,87を支持する端子基板82を固定支持する台座としての機能とを有する。つまり、セルホルダ90は、下側に3本の電池セル72を纏めて支持すると共に上面にて端子基板82を固定支持する。これらの電池セル72のそれぞれは、広く利用される同一の充放電可能な電池セルであり、外形が円柱形状にて形成される。
【0033】
これらの電池セル72は、右から左へ順に、第1電池セル721,第2電池セル722,第3電池セル723となっている。これらの電池セル72は、セルホルダ90に纏められて下ケース32内部に収容支持される。これらの電池セル72は、円柱形状が前後方向に延びる縦置きで左右方向に3本並列されている。ここで、これら3本の電池セル72は、隣の電池セル72と直列接続ができるように、互いの電極が互い違いになるように並べられている。具体的には、第1電池セル721は、前側をマイナス電極で後側をプラス電極とされている。第2電池セル722は、前側をプラス電極で後側をマイナス電極とされている。第3電池セル723は、前側をマイナス電極で後側をプラス電極とされている。ちなみに、電池セル72のプラス電極のそれぞれには、絶縁シート78が取り付けられている。
【0034】
電池部71には、3本の電池セル72を直列接続して端子基板82に接続する4つのリード板73が設けられている。第1リード板731は、第1電池セル721の後端のプラス電極のみと連接されて端子基板82に接続される。第2リード板732は、第1電池セル721の前端のマイナス電極と第2電池セル722の前端のプラス電極とを連接する。第3リード板733は、第2電池セル722の後端のマイナス電極と第3電池セル723の後端のプラス電極とを連接する。第4リード板734は、第3電池セル723の前端のマイナス電極のみと連接されて端子基板82の接続孔832に接続される。なお、これらの4つのリード板73には、外側に絶縁シート79が取り付けられている。このように縦置きで左右方向に3本並列される3本の電池セル72は、セルホルダ90に纏められて支持されながら筐体ケース31に収容される。
【0035】
図11は上ケース51のみが取り外された電池パック30の内部斜視図である。
図12は、
図11の電池パック30の上面図である。
図13は、第1充放電端子85の後側端子852をなす雌端子84についての拡大斜視図である。
図14は、端子基板82の裏面図である。回路部81は、概略、端子基板82と、雌端子84とを有する。この端子基板82は、螺子部材89によりセルホルダ90の上面に固定される。また、この端子基板82には、上記した4つのリード板73が接続されている。これら4つのリード板73は、端子基板82の前側端縁と後側端縁の近くに接続されている。端子基板82の上面には、複数となる7つの雌端子84が左右前後に並べられて取り付けられている。これら7つ雌端子84のそれぞれは、互いに同一の端子部品として構成される。これら7つ雌端子84は、端子基板82に取り付けられる箇所に応じて端子としての機能が相違する。
【0036】
図13に示すように、雌端子84の構成として、下から順に、座部841と、架部842と、接点部843とを有する。座部841と接点部843と架部842とは、一体に連接されて成形されている。座部841は端子基板82に結合され、接点部843へと連なる架部842を支持する。座部841は、端子基板82と対面した平板にて形成され、下面側が端子基板82に突き刺されて結合されている。座部841は、端子基板82と電気的に接合されると共に、端子基板82に結合支持されている。架部842は、座部841と接点部843とを連接する。架部842は、端子基板82に支持される座部841からの支持を受けつつ接点部843を支持する。架部842は、左右で対をなす接点部843と同様に左右で対をなしている。架部842は、電池パック30の前後のスライド方向と直交する上下方向に延ばされている。架部842は、剛性は高めるために左右方向で適宜に凹凸をなす形状が設けられている。
【0037】
架部842に支持される接点部843は、左右で板形をなす雄形端子(プラス端子15、マイナス端子16、通信端子17)を挟み込むことができる雌形端子をなしている。接点部843は、片持ちとなる一側支持により他側が柔軟なばね力を有して形成される。つまり、接点部843の一側が架部842に連接支持されており、接点部843の他側が雄形端子を挟み込む電気的接点として設定される。なお、この接点部843の他側は、電池パック30の着脱スライド方向に延びる方向に設定されると共に、雄形端子を挟み込むように互いに向き合う方向に傾斜して形成されている。このように成形される雌端子84は、端子基板82に取り付けられる箇所に応じて、端子としての機能が相違するようになっている。
【0038】
端子基板82には、図示するように雌端子84が複数となる7つ並べられて取り付けられている。すなわち、雌端子84は、端子基板82に取り付けられることにより、2つの充放電端子85,86および3つの通信端子87(871,872,873)をなしている。これら、2つの充放電端子85,86と3つの通信端子87とは、上記した上ケース51の5つのスリット571,572と同様、端子基板82に対して左右方向で5つ並べられて設定されている。このように5つ並べられる雌端子84のうち、右左両側の2つと真ん中の1つの合計3つが通信端子87として設定されている。
【0039】
具体的には、右側に配置される第1通信端子871は、充電時に検出された電池セル72の電圧を通信する充電用セルモニター端子として機能する雌端子84となっている。また、左側に配置される第2通信端子872も、充電時に検出された電池セル72の電圧を通信する充電用セルモニター端子として機能する雌端子84となっている。また、真ん中に配置される第3通信端子873は、充放電時に検出された電池セル72の温度を通信する充放電用サーミスタ端子として機能する雌端子84となっている。これら第1通信端子871,第2通信端子872,第3通信端子873は、すべて接点部843を前側に向かせて配置されている。
【0040】
これに対し、2つの充放電端子85,86は、上記した3つの通信端子87の間ごとに配置されている。すなわち、第1充放電端子85は、右側の第1通信端子871と真ん中の第3通信端子873との間に配置される。この第1充放電端子85は、充放電時のプラス端子として機能する雌端子84となっている。また、第2充放電端子86は、左側の第2通信端子872と真ん中の第3通信端子873との間に配置される。この第2充放電端子86は、充放電時のマイナス端子として機能する雌端子84となっている。つまり、端子基板82に左右方向で5つ並べられる雌端子84のうち、第1通信端子871と第2通信端子872とが右左両側の外側に配置設定されているのに対し、第1充放電端子85と第2充放電端子86とがその内側に配置設定されている。
【0041】
さらに、第1通信端子871,第2通信端子872,第3通信端子873は、1つの雌端子84を配置して構成されている。これに対し、第1充放電端子85,第2充放電端子86については、2つの雌端子84が並べられて構成されている。これら第1充放電端子85,第2充放電端子86は、板形の雄形端子の差込方向に2つの雌端子84が並べられている。ここで、充放電端子85,86をなす2つの雌端子84は、互いの接点部843が向き合わせられるように配置されている。具体的には、充放電端子85,86は、前側端子851,861と後側端子852,862とを有して設定される。ここで、前側端子851,861は接点部843を後側に向かせて配置されており、後側端子852,862は接点部843を前側に向かせて配置されている。言い換えれば、前側端子851,861と後側端子852,862とは、互いが反対を向くように配置されている。
【0042】
これら充放電端子85,86は、充放電時のプラス端子およびマイナス端子となっているため、強電端子を構成するものとなっている。これに対し、通信端子87は、電池セル72に関する情報を送信する端子となっているため、弱電端子を構成するものとなっている。ここで、第1通信端子871,第2通信端子872,第3通信端子873は、充放電端子85,86の前側端子851,861と左右方向で隣り合うように配置されている。つまり、端子基板82には、右から順に、第1通信端子871、第1充放電端子85、第3通信端子873、第2充放電端子86、第2通信端子872が配置されている。これら第1通信端子871、第1充放電端子85、第3通信端子873、第2充放電端子86、第2通信端子872は、雌端子84の接点部843の向く方向が前後方向で互い違いとなるように並べられている。
【0043】
第1通信端子871、第1充放電端子85、第3通信端子873、第2充放電端子86、第2通信端子872は、並び方向となる左右方向で弱電端子と強電端子とが互い違いとなるように並べられて配置されている。ここで、端子基板82には、並べられる第1通信端子871、第1充放電端子85、第3通信端子873、第2充放電端子86、第2通信端子872のそれぞれの間に、水抜きスリット881が設けられている。この水抜きスリット881は、左右方向で5つ並べられる雌端子84のそれぞれの間に設けられている。このため、水抜きスリット881は、左右方向で合計4つ並べられている。
【0044】
図14に示すように、水抜きスリット881にはスリット幅を一部拡大する円形孔部882が設けられている。円形孔部882は、水抜きスリット881のスリット幅を僅かながら拡大させてある。この円形孔部882は、水抜きスリット881内部に入った水の表面張力の発生を抑えるものである。これによって、水抜きスリット881内部に入った水は、円形孔部882によって水抜きスリット881内部に留ませることなく水抜きされる。この水抜きスリット881によって、隣り合う雌端子84同士が電気的に接続してしまうことを防止することができる。なお、図示符号831は螺子部材89を差し込むための差込孔であり、図示符号832はリード板73が接続されるための接続孔である。
【0045】
また、下ケース32の前面には、LED表示装置64が設けられている。このLED表示装置64は、
図10〜
図12に示すようにLED基板65とLEDラベル66とを有する。LED基板65は、3本の電池セル72の充電残容量を点灯表示可能に構成される。
この点灯表示は、端子基板82から送られる3本の電池セル72の充電残容量に応じて、4段階の点灯表示が可能となっている。LEDラベル66は、
図7に示すように押しボタン部661とLED透過部662とを有し、押しボタン部661の押し操作により、LED基板65の点灯表示がLED透過部662を通じて視認することができる。なお、このLED基板65およびLEDラベル66は、下ケース32と上ケース51とにより挟持されている。
【0046】
また、上記した筐体ケース31には雄フック機構63が内蔵されている。この雄フック機構63は、電池パック30をバッテリ装着部21にスライドさせて装着した場合に、バッテリ装着部21の雌フック23に係止される構造となっている。雄フック機構63は、
図10に示すように、互いに一体にされる雄フック631と操作部632とを有して構成される。これら雄フック631と操作部632とは、雌フック23に係止するように付勢ばね635により突出付勢されている。なお、付勢ばね635の付勢力に抗して操作部632を引き下げると、雌フック23に対する雄フック631の係止を解除することができ、電池パック30をバッテリ装着部21から取り外すことができる。
【0047】
ところで、3本の電池セル72は、セルホルダ90と共に下ケース32の内部で収容支持される。すなわち、3本の電池セル72は、下ケース32に収容支持され、上側にセルホルダ90が配置される。セルホルダ90には、3本の電池セル72を並列して収容するためのセル収容凹部91が設けられている。このセル収容凹部91は、電池セル72の外周面75に近接して電池セル72の外周面75の周方向に沿って延びる形状を有する。このため、セル収容凹部91は、隣り合う電池セル72同士の間に入り込んで介在するような電池セル72同士の間に配置されている。また、セルホルダ90の上面には、端子基板82を固定するための螺子部材89が螺合される雌螺子92が設けられている。セルホルダ90には、上記した4つのリード板73を端子基板82に接続可能に支持する形状が設けられている。なお、セルホルダ90は、本発明に係る介装部材に相当する。
【0048】
セルホルダ90には、吸気口55から筐体ケース31内部に入る冷却風が電池セル72に当てられるようにする第1送風開口部93が設けられている。この第1送風開口部93は、上ケース51の吸気口55と対面する位置に設定されており、セルホルダ90の上側から下側に冷却風を送るための開口形状を有する。これら吸気口55と第1送風開口部93とは、雄フック機構63の前側に配置されている。また、セルホルダ90には、電池セル72に当てられた風を排出するための第2送風開口部94が設けられている。この第2送風開口部94は、上ケース51の排気口56とほぼ対面する位置に設定されており、セルホルダ90の下側から上側に冷却風を送れるようにする開口形状を有する。
【0049】
ここで、第1送風開口部93と第2送風開口部94とは、吸気口55から入って排気口56に出される間の冷却風を筐体ケース31内部でガイドするように作用する。このため、これら第1送風開口部93と第2送風開口部94とは、本発明に係る通風路部に相当すると共に、セルホルダ90にて上下方向に貫通される本発明に導風部に相当する。なお、第1送風開口部93を通過した冷却風は、第1電池セル721と第2電池セル722との間を上から下へ通過すると共に、第2電池セル722と第3電池セル723との間を上から下へ通過して、下ケース32の内部底面321の第2通風路範囲Q2(
図16等参照)に送られる。ここで冷却風は、電池セル72同士の間を上から下へ通過する間に、これらの電池セル72同士を冷却する。なお、この冷却を第1冷却という。
【0050】
図15は、下ケース32およびセルホルダ90のみを示す斜視図である。
図16は、下ケース32の上面図である。
図17は、下ケース32の下面図である。
図18は、セルホルダ90の下面斜視図である。
図19は、セルホルダ90の下面平面図である。
図15および
図16に示すように、下ケース32の内部底面321には、左右区画リブ40および前後区画リブ45が設けられている。左右区画リブ40は、左右方向に並列される3本の電池セル721,722,723の収容範囲L1,L2,L3を左右で区画するよう設けられる。具体的には、第1左右区画リブ401は、第1電池セル721の第1収容範囲L1と第2電池セル722の第2収容範囲L2とを区画する。また、第2左右区画リブ402は、第2電池セル722の第2収容範囲L2と第3電池セル723の第3収容範囲L3とを区画する。
【0051】
左右区画リブ40(第1左右区画リブ401、第2左右区画リブ402)のリブ形状は、互いに下ケース32の内部底面321にて上側に突出して前後方向に延びるものとなっている。第1左右区画リブ401と第2左右区画リブ402とは、左右中心線Sを境界に左右対称の形状を有して形成されている。第1左右区画リブ401と第2左右区画リブ402とは、前側から順に、前マット支持部41と、区画単部42と、後マット支持部43とに機能区分けすることができる。ここで、前マット支持部41と区画単部42とは前後で連接して形成されているのに対し、区画単部42と後マット支持部43とは前後で間隔を有するように分断して形成されている。なお、区画単部42と後マット支持部43との間のリブ形状を分断するように設定される空間M1,M2は、第2収容範囲L2から第1収容範囲L1および第3収容範囲L3に分流させる分流路として設定される。
【0052】
第1左右区画リブ401の区画単部42は、第1収容範囲L1と第2収容範囲L2との間を隔てるように形成される。第2左右区画リブ402の区画単部42は、第2収容範囲L2と第3収容範囲L3との間を隔てるように形成される。この区画単部42は、収容された電池セル72の外周面に近接するまで、下ケース32の内部底面321から上側に突出して形成されている。前マット支持部41および後マット支持部43は、緩衝マット35のリブ介装部352に対して下側から介装するようにして、緩衝マット35に押し当たっている。なお、前マット支持部41と、区画単部42と、後マット支持部43とは、左右方向の幅長および上下方向の突出長は、同一の長さで設定されている。
【0053】
これに対し、前後区画リブ45は、左右方向に並列される3本の電池セル721,722,723の収容範囲L1,L2,L3を前後で区画するよう設けられる。この前後区画リブ45のリブ形状は、すべて同じように設定されている。すなわち、前後区画リブ45は、上記したセルホルダ90のセル収容凹部91と同様、電池セル72の外周面75に近接して電池セル72の外周面75の周方向に沿って延びる形状を有する。このため、前後区画リブ45も、前マット支持部41および後マット支持部43と同様、隣り合う電池セル72同士の間に入り込んで介在するような電池セル72同士の間に配置されている。この前後区画リブ45のそれぞれは、本発明に係る固定壁に相当する。つまり、前後区画リブ45のそれぞれは、筐体ケース31の内部底面321に設けられ、電池セル72の外周面75に当接するものとなっている。
【0054】
具体的には、前後区画リブ45は、支持するマット支持範囲P1,P2と通風路範囲Q1,Q2,Q3とを区画する。この通風路範囲Q1,Q2,Q3は、本発明に係る通風路部の一部を構成する。第1収容範囲L1および第3収容範囲L3における前後区画リブ45による前後の区画のされ方は、互いに同一の区画のされた方となっている。この前後区画リブ45のそれぞれは、通風路部としての通風路範囲Q1,Q2,Q3の通風範囲と電池セル72の電極端面をなすリード板73(731,732,733,734)とを隔離する。すなわち、第1収容範囲L1および第3収容範囲L3には、前から順に、第1区画リブ461、第2区画リブ462、第3区画リブ463、第4区画リブ464が設けられている。
【0055】
ここで、第1区画リブ461と第2区画リブ462とは前マット支持範囲P1を設定するように収容範囲L1,L3を区画し、第2区画リブ462と第3区画リブ463とは通風路範囲Q1,Q3を設定するように収容範囲L1,L3を区画し、第3区画リブ463と第4区画リブ464とは後マット支持範囲P2を設定するように収容範囲L1,L3を区画している。つまり、第2区画リブ462および第3区画リブ463は、冷却風の流れを遮る隔壁のように作用する。このため、前マット支持範囲P1より前側への冷却風の浸入は規制されると共に、後マット支持範囲P2より後側への冷却風の浸入も規制される。なお、第1送風開口部93を通過して内部底面321まで送られる冷却風は、第2収容範囲L2を区画して設定する第2通風路範囲Q2に送られる。この第2通風路範囲Q2は、次に説明する第6区画リブ476と第7区画リブ477とにより第2収容範囲L2を区画して設定する通風路範囲である。
【0056】
第2収容範囲L2における前後区画リブ45による前後の区画のされ方は、第1収容範囲L1および第3収容範囲L3と僅かに相違する区画のされ方となっている。すなわち、第2収容範囲L2には、収容範囲L1,L3に設けられる第1区画リブ461に相当するリブを無くし、その代わりに収容範囲L1,L3では設けられていない第6区画リブ476を設けるものとした。具体的には、前から順に、第5区画リブ475、第6区画リブ476、第7区画リブ477、第8区画リブ478が設けられている。なお、第5区画リブ475は上記した第2区画リブ462と左右方向で連接されており、第7区画リブ477は上記した第3区画リブ463と左右方向で連接されており、第8区画リブ478は上記した第4区画リブ464と左右方向で連接されている。
【0057】
第6区画リブ476は、左右両側の区画単部42の後端421と直角形状を有して連接されている。このため、第6区画リブ476は、第2収容範囲L2だけを中間範囲で前後に浸入規制範囲P3と第2通風路範囲Q2とに区分けしている。具体的には、第2通風路範囲Q2は、第2収容範囲L2のうち第6区画リブ476の後側となる範囲で設定される。この第2通風路範囲Q2は、第1送風開口部93を通過し電池セル72の間を通過した冷却風が送られる範囲となっている。浸入規制範囲P3は、第2収容範囲L2のうち第6区画リブ476の前側となる範囲で設定される。この浸入規制範囲P3は、第2通風路範囲Q2に送られた冷却風の前側への浸入が、第6区画リブ476により規制される範囲となっている。このように第6区画リブ476により浸入が規制された冷却風は、上記した空間M1,M2を通じて第2通風路範囲Q2(第2収容範囲L2)から、第1通風路範囲Q1(第1収容範囲L1)および第3通風路範囲Q3(第3収容範囲L3)に流されることとなる。つまり、冷却風は、電池セル72の長さ方向基端側となる後側から、長さ方向先端側となる前側に流されることとなる。
【0058】
つまり、空間M1,M2と第6区画リブ476とは、本発明に係る分割風路部に相当する。すなわち、空間M1,M2と第6区画リブ476とは、後側から前側に流される冷却風を、電池セル72の並び方向となる左右方向の2つに分割するように作用する。つまり、
図15および
図16にて図示される冷却風F1のように空間M1,M2で分岐して流される。このように第2通風路範囲Q2(第2収容範囲L2)から、第1通風路範囲Q1(第1収容範囲L1)および第3通風路範囲Q3(第3収容範囲L3)に流される冷却風は、このそれぞれの範囲に存する電池セル72を冷却する。つまり、冷却風は、第2通風路範囲Q2(第2収容範囲L2)に面する第2電池セル722を冷却した後、第1通風路範囲Q1(第1収容範囲L1)に面する第2電池セル721と、第3通風路範囲Q3(第3収容範囲L3)に面する第3電池セル723とを冷却する。なお、この冷却を第2冷却という。
【0059】
ここで、第2通風路範囲Q2(第2収容範囲L2)、第1通風路範囲Q1(第1収容範囲L1)、第3通風路範囲Q3(第3収容範囲L3)は、本発明に係る長手方向通路に相当する。つまり、これらの第2通風路範囲Q2(第2収容範囲L2)、第1通風路範囲Q1(第1収容範囲L1)、第3通風路範囲Q3(第3収容範囲L3)は、電池セル72の長手方向に沿って風が流れる範囲であり、電池セル72の並列方向に3つ設けられていることとなる。また、第6区画リブ476は、本発明に係る分岐部に相当する。この第6区画リブ476は、吸気口55からの冷却風を分岐して、2つの第1通風路範囲Q1(第1収容範囲L1)と第3通風路範囲Q3(第3収容範囲L3)とのそれぞれに流すことができる。なお、この第6区画リブ476は、第2電池セル722の保持する機能も兼ねて有している。
【0060】
図15および
図16に示すように、第2収容範囲L2において第2通風路範囲Q2を設定する第6区画リブ476の前後方向の相対位置(図示符号T)は、真ん中よりも後側に近づけてある。つまり、分割風路部の一部を構成する第6区画リブ476は、電池セル72の前端より後端の位置に相対的に近づけられている。言い換えれば、第6区画リブ476は、電池セル72の長手方向の中心より流される風の上流側に設定されている。また、第6区画リブ476より前側の浸入規制範囲P3は、左右両側の区画単部42により左右方向が区画されている。このため、浸入規制範囲P3に面する第2電池セル722は、冷却風により冷却されることがない。つまり、この第2冷却では、第1通風路範囲Q1および第3通風路範囲Q3に流される冷却風の方が、第2通風路範囲Q2に流される冷却風よりも長い距離または時間で冷却するように設定されている。なお、これらの第1通風路範囲Q1,第2通風路範囲Q2,第3通風路範囲Q3は、本発明に係るセル保持部に相当し、下ケース32内部で電池セル72を保持している。
【0061】
第1通風路範囲Q1および第3通風路範囲Q3において後側から前側に流された冷却風は、第2区画リブ462に当たることとなる。この際、第2区画リブ462は、冷却風の後側から前側への流れを電池セル72の外周面75に向けて指向させる。具体的には、第2区画リブ462は、電池セル72が存する上側に向けて冷却風を流すようにガイドする。つまり、第2区画リブ462は、本発明に係る周面指向部に相当する。第2区画リブ462によってガイドされる冷却風は、第1電池セル721と第2電池セル722との間を下から上へ通過すると共に、第2電池セル722と第3電池セル723との間を下から上へ通過して、セルホルダ90の第2送風開口部94から上側に排出される。ここで冷却風は、電池セル72同士の間を下から上へ通過する間に、これらの電池セル72同士を冷却する。なお、この冷却を第3冷却という。
【0062】
図3および
図17に示すように、下ケース32の内部底面321には、前側水抜き孔36と後側水抜き孔37が設けられている。前側水抜き孔36は、下ケース32の内部底面321のうち、第2リード板732と第4リード板734との間に存するように設けられている。つまり、前側水抜き孔36は第2リード板732と第4リード板734との間に溜まる水を下側へ抜くように設けられている。また、後側水抜き孔37は、下ケース32の内部底面321のうち、第1リード板731と第3リード板733との間に存するように設けられている。つまり、後側水抜き孔37は第1リード板731と第3リード板733との間に溜まる水を下側へ抜くように設定されている。
【0063】
なお、
図15および
図17に示すように、これらの前側水抜き孔36と後側水抜き孔37の内部側には、異物浸入規制リブ38が設けられている。この異物浸入規制リブ38は、水抜き孔36,37を通じて筐体ケース31内部の水を抜くことができながら、これらの水抜き孔36,37を通じて筐体ケース31外部か内部に異物が浸入しないように規制するように作用している。なお、
図3および
図17に示す符号39は、上ケース51に設けられたフック用開口部581や操作用開口部582から浸入した水を、下側へ抜くための水抜き孔である。
【0064】
図18および
図19に示すように、セルホルダ90の下面901にも冷却風をガイドする導風溝95,96が設けられている。そもそも、このセルホルダ90は、筐体ケース31内部に配置されて電池セル72を保持する。なお、図示符号F2は、流れる冷却風を示している。ここで、セルホルダ90の下面901のうち、第1送風開口部93の左右両側には、第1導風溝95が設けられている。この第1導風溝95は、第1送風開口部93の左右両側のセル収容凹部91を溝形に切り欠いて設けられている。言い換えれば、第1導風溝95は、第1送風開口部93の左右両端のそれぞれから更に左右方向に延ばすように、下面901を上側に凹ませた溝形に切り欠かれて形成される。また、この第1導風溝95の端部には、前側に向けて第2導風溝96が延ばされるようにして形成されている。第2導風溝96も、下面901を上側に凹ませた溝形に切り欠かれて形成される。
【0065】
この第1導風溝95と第2導風溝96とは連なっている。これらの導風溝95,96は、第1送風開口部93から送られる冷却風を左右2つに分割して前側に向けて流すように冷却風をガイドする。これらの導風溝95,96は、本発明に係る通風路部に相当すると共に、本発明に係るホルダ分岐部に相当する。ここで、第1導風溝95に冷却風が流れると、第2電池セル722の外周面75に当たることとなって、この第2電池セル722を冷却することができる。また、第2導風溝96に冷却風が流れると、第1電池セル721および第3電池セル723の外周面75に当たることとなって、これらの第1電池セル721および第3電池セル723を冷却することができる。つまり、第2導風溝96と電池セル72の外周面75との間で設定される冷却風の通り道が、本発明に係る長手方向通路部に相当することとなる。
【0066】
上記したように構成される電池パック30によれば、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、上記した電池パック30によれば、冷却風が流れる流路を設定する下ケース32には、空間M1,M2を設定すると共に第6区画リブ476が設けられている。これによって、冷却風を電池セル72の後側から前側に流すにあたって、冷却風は電池セル72の並び方向となる左右方向の2つに分割されて流されることとなる。この際、電池セル72は、上記した第1冷却、第2冷却、第3冷却の順に冷却される。これによって、3本の電池セル72が筐体ケース31内部で縦置きに並列される場合でも、3本の電池セル72それぞれに冷却風が当てられ易いようにすることができる。したがって、3本の電池セル72それぞれの冷却の偏りを減らすことができる。つまり、これら3本の電池セル72を互いの間で均一な冷却とすることができて、上記した専用充電器20で電池セル72すべてを満充電とするに際しての充電効率性を向上させる。
【0067】
また、上記した電池パック30によれば、第1通風路範囲Q1と第3通風路範囲Q3とにより第1電池セル721と第3電池セル723とを冷却する前に、第2通風路範囲Q2により第2電池セル722を冷却する。ここで、第6区画リブ476の前後方向の相対位置(図示符号T)は、真ん中よりも後側に近づけてある。これによって、第1通風路範囲Q1と第3通風路範囲Q3とによって冷却される区間は、第2通風路範囲Q2によって冷却される区間よりも長くなっている。したがって、区間を分けて3本の電池セル72を冷却するにあたって、温まった後の冷却風を相対的に長く当てることができて、冷却効率を上げることができる。
【0068】
また、上記した電池パック30によれば、第2冷却として作用する第6区画リブ476は、電池セル72の後側から前側までの間の途中に設定されている。これによって、第6区画リブ476にしたがって空間M1,M2に分割されるまでの区間と、第6区画リブ476にしたがって空間M1,M2に分割された後の区間とで、区間を分けて電池セル72を冷却することができる。したがって、冷却風の温まり方を検討しながら電池セル72を冷却する区間を設定することができて、3本の電池セル72それぞれの冷却の偏りをより減らすことができる。また、上記した電池パック30によれば、通風路範囲Q1,Q2,Q3は下ケース32の内部底面321に形成されているので、部材点数を増やすことなく冷却風が流れる流路を設定することができる。これによって、電池パック30のコンパクト化を図ることができる。
【0069】
また、上記した電池パック30によれば、通風路範囲Q1,Q3は第2区画リブ462を有して設定されるので、筐体ケース31内部で送られる冷却風の流れを電池セル72の外周面75に向けて指向させることができる。これによって、3本の電池セル72それぞれの冷却効果をより高めることができる。また、上記した電池パック30によれば、セルホルダ90の下面901に冷却風をガイドする導風溝95,96が設けられているので、電池セル72はセルホルダ90の下面901に設けられる導風溝95,96にてガイドされる冷却風によっても冷却される。これによって、部材点数を増やすことなく電池セル72を効率良く冷却することができる。つまり、効率良い電池セル72の冷却と電池パック30のコンパクト化の両立を図ることができる。
【0070】
また、上記した電池パック30によれば、セルホルダ90には上下方向に貫通される第1送風開口部93と第2送風開口部94が設けられているので、筐体ケース31内部に流される冷却風の通風抵抗を低くすることができる。これによって、筐体ケース31内部に電池セル72を保持するセルホルダ90を設けながらも、電池セル72を冷却する性能を落としてしまうことが抑えることができる。また、上記した電池パック30によれば、通風路範囲Q1,Q2,Q3は、下ケース32の内部底面321の左右区画リブ40および前後区画リブ45により設定されて電池セル72を保持する。これによって、この電池パック30によれば、上記した冷却の偏りを減らしながら、さらに電池セル72のがたつきを無くすことができる。これによって、電池パック30としての品質を高めながら、電池パック30のコンパクトさを維持することができる。
【0071】
また、上記した電池パック30によれば、前後区画リブ45のそれぞれは、通風路部としての通風路範囲Q1,Q2,Q3の通風範囲と電池セル72の電極端面をなすリード板73(731,732,733,734)とを隔離するので、たとえ通風範囲に水分や異物が浸入することがあっても、電池セル72の電極端面をなすリード板73をこの浸入した水分や異物から隔離させたものとすることができる。これによって、電池セル72の電極端面をなすリード板73は、水分や異物から保護されるので、電池セル72同士の短絡を抑制することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係る電池パックを実施するための第2の実施の形態について、
図20〜
図24を参照しながら説明する。
図20は、第2の実施の形態の電池パック30Aを斜視にて示す斜視図である。
図21は、
図20の電池パック30Aの上面図である。
図22は、
図21における(XXII)-(XXII)断面矢視を示す断面図である。
図23は、
図20の電池パック30Aの分解斜視図である。
図24は、セパレートホルダ90Aについての拡大斜視図である。なお、第2の実施の形態の電池パック30Aは、上記した第1の実施の形態の電池パック30と比較して、内蔵される電池セル72の本数が相違する。
【0073】
具体的には、第1の実施の形態の電池パック30では3本縦置きとされる電池セル72の並列構成となっていた。これに対し、第2の実施の形態の電池パック30Aでは上下2段の3本縦置きで並列される電池セル72a,72bの並列構成となっている。つまり、第2の実施の形態の電池パック30Aでは、合計6本の電池セル72a,72bが内蔵されている。言い換えれば、並列して配置される3本の電池セル72は、並列方向と直交する方向(上下方向)で2段に段積みされている。なお、以下の電池パック30Aの説明では、上記の電池パック30と比較して、この電池セル72a,72bの本数に対応して変更される箇所のみを説明し、上記の電池パック30と同一に構成される箇所については上記の説明にて付した符号を図面に付してその説明を省略するものとする。
【0074】
電池パック30Aの下ケース32Aは、上下2段の3本縦置きで並列される6本の電池セル72a,72bを収容可能な深さに設定される箱形に形成されている。下ケース32Aの内部底面321は、第1の実施の形態の下ケース32の内部底面321と同様に構成される。この下ケース32Aは、上ケース51とを合体して筐体ケース31Aを構成する。この筐体ケース31Aには、上下2段の3本縦置きで並列される電池セル72a,72bが収容可能となっている。この上下2段の3本縦置きで並列される電池セル72a,72bの上下2段の間には、セパレートホルダ90Aが介装されている。セパレートホルダ90Aは、本発明に係るセパレータに相当し、この段積み方向の電池セル72同士の間を区画する。
【0075】
図24に示すように、セパレートホルダ90Aの下面90b側には、3本縦置きの電池セル72bを収容保持するセル収容凹部91Aが設けられている。また、セパレートホルダ90Aの上面90a側にも、3本縦置きの電池セル72aを収容保持するセル収容凹部91Aが設けられている。これらのセル収容凹部91Aは、電池セル72a,72bの外周面75に近接して電池セル72a,72bの外周面75の周方向に沿って延びる形状を有する。なお、このセル収容凹部91Aは、上下に隣り合う電池セル72a,72b同士の間を隔てる隔壁部92Aが設けられている。この隔壁部92Aは、3本縦置きで並列される電池セル72aが並列される範囲に亘って形成されている。つまり、セル収容凹部91Aは、左右上下に隣り合う電池セル72a,72b同士の間に入り込んで介在するような電池セル72a,72b同士の間に配置されている。
【0076】
セパレートホルダ90Aの上面90aおよび下面90bには、上記した左右区画リブ40と略同様に形成される第1区画リブ40Aと、上記した前後区画リブ45と略同様に形成される第2区画リブ45Aとが設けられている。これらの第1区画リブ40Aと第2区画リブ45Aとは、本発明に係るセル保持部に相当する。ここでセパレートホルダ90Aにも、吸気口55から筐体ケース31A内部に入る冷却風が電池セル72a,72bに当てられるようにする上下連通部93Aおよび切欠き部94Aが設けられている。
図22に示すように、上下連通部93Aおよび切欠き部94Aは、セルホルダ90の第1送風開口部93と略対面する位置であり、左右を区画する第1区画リブ40Aに設定されている。なお、上下連通部93Aは、本発明に係る連通孔に相当し、電池セル72の段積み方向で連通されている。なお、図示符号F3は、流れる冷却風を示している。
【0077】
具体的には、第1送風開口部93と略対面する第1区画リブ40Aには、上部が切り欠かれるようにして設定される切欠き部94Aが設けられている。この切欠き部94Aが設けられる第1区画リブ40Aには、セパレートホルダ90Aを上下に連通させる上下連通部93Aが設けられている。このように、セパレートホルダ90Aを設けて、3本縦置きの電池セル72a,72bを上下2段で段積みする場合であっても、下側の電池セル72bまで風を送ることができる、つまり、上下で段積みされる電池セル72a,72bそれぞれの冷却の偏りを減らすことができて、上記した専用充電器20で電池セル72を満充電とするに際しての電池セル72の充電効率性を向上させることができる。
【0078】
なお、本発明に係る電池パックにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。すなわち、上記した実施の形態にあっては、電池セルの個数が3個や6個に設定されるものであったが、本発明に係る電池セルの個数としては複数であればよく、このような個数に限定されるものではない。また、本発明に係る通風路部や分割風路部を設定するリブ形状としては、上記した実施の形態の左右区画リブ40および前後区画リブ45に限定されることなく、適宜の形状を選択することができる。