特許第6404146号(P6404146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ショーワの特許一覧

<>
  • 特許6404146-ポンプ装置および船舶推進機 図000002
  • 特許6404146-ポンプ装置および船舶推進機 図000003
  • 特許6404146-ポンプ装置および船舶推進機 図000004
  • 特許6404146-ポンプ装置および船舶推進機 図000005
  • 特許6404146-ポンプ装置および船舶推進機 図000006
  • 特許6404146-ポンプ装置および船舶推進機 図000007
  • 特許6404146-ポンプ装置および船舶推進機 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404146
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】ポンプ装置および船舶推進機
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/18 20060101AFI20181001BHJP
   C23F 13/02 20060101ALI20181001BHJP
   B63H 20/08 20060101ALI20181001BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   F15B15/18
   C23F13/02 A
   B63H20/08 510
   F16K27/00 Z
   C23F13/02 G
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-43764(P2015-43764)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-161120(P2016-161120A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】筒井 隼人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】香川 敦
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−136448(JP,A)
【文献】 特開平04−005190(JP,A)
【文献】 特開昭63−023076(JP,A)
【文献】 特開2009−150422(JP,A)
【文献】 特開昭62−127578(JP,A)
【文献】 実開昭49−133222(JP,U)
【文献】 実開昭54−146421(JP,U)
【文献】 特開昭63−100187(JP,A)
【文献】 特開2012−071683(JP,A)
【文献】 米国特許第08834216(US,B1)
【文献】 実開昭61−031998(JP,U)
【文献】 特開平6−221213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00−15/28
F16K 17/00−17/168
F16K 27/00−27/12
B63H 1/00−25/52
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が流れる流路が形成された第1ケースと、
前記第1ケースと接触して設けられる第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に接続され、当該第1ケースおよび当該第2ケースの腐食を抑制する犠牲陽極と
を備え、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方は、当該第1ケースおよび当該第2ケース間の電気的な接続を遮断する絶縁部を有し、
前記流路内に設けられ当該流路内を流れる作動液の流れを制御するとともに、前記第1ケースおよび前記第2ケースを電気的に接続する弁部材を備える
ことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記弁部材は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に押しつけられる弁本体と、当該弁本体を付勢する付勢部材とを備える、
請求項1記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記弁本体は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうちのいずれか一方における前記絶縁部が形成されていない部分に押しつけられ、
前記付勢部材は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうちの他方における前記絶縁部が形成されていない部分に支持されながら前記弁本体を付勢する、
請求項2記載のポンプ装置。
【請求項4】
作動液が流れる第1流路が形成された第1ケースと、
前記第1ケースと接触して設けられるとともに、前記第1流路と連絡する第2流路が形成された第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に接続され、当該第1ケースおよび当該第2ケースの腐食を抑制する犠牲陽極と
を備え、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方は、他方と接触する部分に、当該他方との電気的な接続を遮断する絶縁部を有し、
前記第1流路および前記第2流路の少なくとも一方の内部に設けられ、前記第1ケースおよび前記第2ケースを電気的に接続する導通部材を備える
ことを特徴とするポンプ装置。
【請求項5】
前記第1流路内には、電気的な接続が可能な第1導電部が形成され、
前記第2流路内には、電気的な接続が可能な第2導電部が形成され、
前記導通部材は、弁本体と当該弁本体を付勢する付勢部材とを備えた弁部材であり、
前記弁本体及び前記付勢部材の一方が、第1導電部に接触し、
前記弁本体及び前記付勢部材の他方が、第2導電部に接触する、
請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
プロペラを有する船舶推進機本体と、
シリンダと、当該シリンダの内部を第1室と第2室とに区画するピストンと当該ピストンに端部が固定され当該シリンダから延出するピストンロッドとを有するシリンダ装置と、作動液を当該シリンダ装置内部に供給することにより当該シリンダ装置を伸縮させるポンプ装置とを備えるチルト・トリム装置と
を備え、
前記ポンプ装置は、
作動液が流れる流路が形成された第1ケースと、
前記第1ケースと接触して設けられる第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に接続され、当該第1ケースおよび当該第2ケースの腐食を抑制する犠牲陽極と
を備え、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方は、当該第1ケースおよび当該第2ケース間の電気的な接続を遮断する絶縁部を有し、
前記流路内に設けられ当該流路内を流れる作動液の流れを制御するとともに、前記第1ケースおよび前記第2ケースを電気的に接続する弁部材を備える
ことを特徴とする船舶推進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置および船舶推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船体と船舶推進機本体との間に連結したシリンダ装置を伸縮させることで、船体に対する船舶推進機本体の角度を変更する装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、船舶推進機の電蝕防止構造において、シリンダブロックにシリンダを一体的に形成してなり、シリンダにロッドガイドが固定される部分に電気的接続部を設け、シリンダの内部でロッドにピストンが固定される部分に電気的接続部を設けるとともに、シリンダからロッドが突出する最伸長時に、ロッドに固定されているピストンがロッドガイドに電気的に接続する状態で突当たるように構成するものが記載されている。
また特許文献2には、船体に固定したスターンブラケットにスイベルケースを上下揺動可能に軸支し、このスイベルケースに船外機本体を回転自在に支承せしめ、スターンブラケットとスイベルケースとの間にチルトシリンダ装置を介接してなる船外機において、船外機本体の下部に第1の流電陽極を取付け、スターンブラケットの水没部分に第2の流電陽極を取付け、これら第1、第2の流電陽極を第1の電気的接続回路で接続するとともに、この第1の電気的接続回路から第2の電気的接続回路を分岐し、この第2の電気的接続回路をチルトシリンダ装置に接続してなる船外機の防食機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−71683号公報
【特許文献2】特開平4−5190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば船舶推進機を海で使用した場合、海水により船舶推進機で使用されている金属がイオン化して溶け出す電界腐食が生じやすい。
そのため、よりイオン化しやすい金属からなる犠牲アノードを取り付け、犠牲アノードと船舶推進機の各部分とを電気的に接続させ、犠牲アノードの方を優先的に電界腐食させることで他の部分に電界腐食が生じるのを抑制することがある。
【0005】
しかしながら、船舶推進機を構成する部材のうち、他の部材に押しつけられる部分に電気的な接続を遮断する絶縁部を備える部材については、犠牲アノードと電気的に接続させるのが困難であり、ロッド部材に電界腐食が生じやすい問題があった。
本発明は、簡易な構成により犠牲アノードとの電気的な接続を確保し、電界腐食が生じにくいポンプ装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、作動液が流れる流路が形成された第1ケースと、前記第1ケースと接触して設けられる第2ケースと、前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に接続され、当該第1ケースおよび当該第2ケースの腐食を抑制する犠牲陽極とを備え、前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方は、当該第1ケースおよび当該第2ケース間の電気的な接続を遮断する絶縁部を有し、前記流路内に設けられ当該流路内を流れる作動液の流れを制御するとともに、前記第1ケースおよび前記第2ケースを電気的に接続する弁部材を備えることを特徴とするポンプ装置である。
ここで、前記弁部材は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に押しつけられる弁本体と、当該弁本体を付勢する付勢部材とを備えてもよい。
また、前記弁本体は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうちのいずれか一方における前記絶縁部が形成されていない部分に押しつけられ、前記付勢部材は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうちの他方における前記絶縁部が形成されていない部分に支持されながら前記弁本体を付勢してもよい。
他の観点から捉えると、本発明は、作動液が流れる第1流路が形成された第1ケースと、前記第1ケースと接触して設けられるとともに、前記第1流路と連絡する第2流路が形成された第2ケースと、前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に接続され、当該第1ケースおよび当該第2ケースの腐食を抑制する犠牲陽極とを備え、前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方は、他方と接触する部分に、当該他方との電気的な接続を遮断する絶縁部を有し、前記第1流路および前記第2流路の少なくとも一方の内部に設けられ、前記第1ケースおよび前記第2ケースを電気的に接続する導通部材を備えることを特徴とするポンプ装置である。
また、前記第1流路内には、電気的な接続が可能な第1導電部が形成され、前記第2流路内には、電気的な接続が可能な第2導電部が形成され、前記導通部材は、弁本体と当該弁本体を付勢する付勢部材とを備えた弁部材であり、前記弁本体及び前記付勢部材の一方が、第1導電部に接触し、前記弁本体及び前記付勢部材の他方が、第2導電部に接触してもよい。
さらに他の観点から捉えると、本発明は、プロペラを有する船舶推進機本体と、シリンダと、当該シリンダの内部を第1室と第2室とに区画するピストンと当該ピストンに端部が固定され当該シリンダから延出するピストンロッドとを有するシリンダ装置と、作動液を当該シリンダ装置内部に供給することにより当該シリンダ装置を伸縮させるポンプ装置とを備えるチルト・トリム装置とを備え、前記ポンプ装置は、作動液が流れる流路が形成された第1ケースと、前記第1ケースと接触して設けられる第2ケースと、前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方に接続され、当該第1ケースおよび当該第2ケースの腐食を抑制する犠牲陽極とを備え、前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方は、当該第1ケースおよび当該第2ケース間の電気的な接続を遮断する絶縁部を有し、前記流路内に設けられ当該流路内を流れる作動液の流れを制御するとともに、前記第1ケースおよび前記第2ケースを電気的に接続する弁部材を備えることを特徴とする船舶推進機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成により犠牲アノードとの電気的な接続を確保し、電界腐食が生じにくいポンプ装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るチルト・トリム装置が適用される船外機の概略構成図である。
図2】チルト・トリム装置の外観図である。
図3】チルト・トリム装置の部分断面図である。
図4】ポンプ装置の油圧回路である。
図5】リリーフバルブの構造を示す図である。
図6】(a)および(b)は、露出部を説明する図である。
図7】(a)乃至(c)は、変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るチルト・トリム装置1が適用される船外機5の概略構成図である。
船外機5は、船舶の船体2に対して推進力を発生する船外機本体5aと、船体2に対する船外機本体5aの傾斜角度θを調整するチルト・トリム装置1とを備えている。
【0010】
<船外機本体5aの概略構成>
船外機本体5aは、クランク軸(不図示)の軸方向が水面に対して垂直方向(図1では上下方向)に向くように置かれたエンジン(不図示)と、そのクランク軸の下端に回転一体に連結されて鉛直下方に延びるドライブ軸(不図示)とを有する。また、船外機本体5aは、このドライブ軸とべべルギヤ機構を介して連結されたプロペラ軸11と、このプロペラ軸11の後端に装着されたプロペラ12とを有する。
【0011】
また、船外機本体5aは、水面に対して垂直方向(図1では上下方向)に設けられたスイベルシャフト(不図示)と、水面に対して水平方向に設けられた水平軸14と、スイベルシャフトが回動自在に収容されるスイベルケース15とを有している。スイベルケース15は、チルト・トリム装置1の後述するシリンダ装置50のピストンロッド53のピン孔53aとピン(不図示)により連結される。
【0012】
さて、チルト・トリム装置1が調整する傾斜角度θには、トリム領域とチルト領域とが存在する。
トリム領域(θ0〜θ1)においては、船舶の姿勢に合せて船外機本体5aの傾斜角度θが調整される。さらに説明をすると、まず、船舶の速度が上がると船首が持ち上がり、プロペラ12が下方向に向いてしまうことがある。この場合、船外機本体5aにより生じる推力の効率が低下する。よって、トリム領域において船外機本体5aの傾斜角度θを調整し、プロペラ12を水面に対して水平方向に向けるようにし、推力の効率が低下することを抑制する。
【0013】
またチルト領域(θ1〜θ2)においては、船外機本体5aを傾斜させることで、船外機本体5aを水面より上に上げる(例えば、傾斜角度がθ2である図中二点鎖線で図示する状態)ことができる。これにより船舶の停泊中に船外機本体5aに貝類等が付着することを抑制し、船外機本体5aを損傷させにくくすることができる。
【0014】
<チルト・トリム装置1の概略構成>
図2は、チルト・トリム装置1の外観図である。
図3は、チルト・トリム装置1の部分断面図である。
チルト・トリム装置1は、図2図3に示すように、オイルの供給、排出によって伸縮するシリンダ装置50と、オイルを吐出するポンプ装置10と、ポンプ装置10を駆動するモータ70とを備えている。
【0015】
また、チルト・トリム装置1は、船外機本体5aのスイベルケース15を船体2に接続するスターンブラケット16(図1参照)を備えている。スターンブラケット16は、後述するシリンダ51のピン孔51bとピン(不図示)により連結される。
【0016】
また、チルト・トリム装置1は、犠牲陽極の一例であり、電界腐食が生じやすい金属からなる犠牲アノード27(図1参照)を備えている。本実施の形態では、犠牲アノード27は、スターンブラケット16(図1参照)の下部に設けられ、スターンブラケット16に対しボルト止めされている。
【0017】
ここで、チルト・トリム装置1には、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属からなる部品が多く使用されている。そのため、チルト・トリム装置1を特に海で使用した場合、金属間で生ずる電位差により、海水を介し電流が流れる。その結果、これらの金属がイオン化し、海水中に溶け出す電界腐食が生じやすい。
【0018】
よって本実施の形態では、これらの金属よりさらにイオン化しやすい金属からなる犠牲アノード27を設ける。そして上記金属からなる部品と犠牲アノード27とを電気的に接続し、犠牲アノード27を優先的に電界腐食させる。このことにより、他の部品に電界腐食が生じることを抑制している。
犠牲アノード27に使用することができる金属としては、亜鉛(Zn)、亜鉛合金、マグネシウム(Mg)、マグネシウム合金などを挙げることができる。
【0019】
<シリンダ装置50>
シリンダ装置50は、図3に示すように、軸心CL方向に延びたシリンダ51と、シリンダ51の内部に配置されて、シリンダ51の内部空間を第1室Y1と第2室Y2とに区画するピストン52とを備えている。また、シリンダ装置50は、ピストン52を軸心CL方向の一端部に保持して、ピストン52とともに、シリンダ51に対して軸心CL方向に移動するピストンロッド53を備えている。さらに、シリンダ装置50は、第1室Y1内のオイルを逃がすリリーフバルブ300(後述)を備えている。
以下では、シリンダ51の軸心CL方向における方向を示す場合には、図3中下方を「下方」と称し、図3中上方を「上方」と称する場合もある。
【0020】
シリンダ装置50は、第1室Y1にオイルが供給されると縮み、第2室Y2にオイルが供給されると伸びる。シリンダ装置50は、伸びる場合には第1室Y1からオイルを排出し、縮む場合には第2室Y2からオイルを排出する。
【0021】
シリンダ装置50は、シリンダ51の下方に突出部51aを有しており、突出部51aには、船外機本体5aのスターンブラケット16(図1参照)に接続するためのピン(不図示)が挿入されるピン孔51bが形成されている。また、ピストンロッド53の上端には、船外機本体5aのスイベルケース15(図1参照)に接続するためのピン(不図示)が挿入されるピン孔53aが形成されている。
【0022】
シリンダ51の下方に形成されたピン孔51bを介してシリンダ装置50がスターンブラケット16に連結され、ピストンロッド53に形成されたピン孔53aを介してシリンダ装置50がスイベルケース15に連結された状態で、シリンダ装置50が伸縮することで、スターンブラケット16とスイベルケース15との間の距離が変化する。そして、スターンブラケット16とスイベルケース15との間の距離が変化することで、船体2に対する船外機本体5aの傾斜角度θが変化する。
【0023】
<ポンプ装置10>
ポンプ装置10は、オイルを貯留するタンク180と、タンク180に配置されるとともにタンク180に貯留されたオイルを吐出するポンプ200とを備えている。
【0024】
<タンク180>
タンク180は、図3に示すように、ハウジング181と、ハウジング181とモータ70とによって囲まれた空間であるタンク室182とを有している。
図示の例におけるハウジング181は、上方が開口した有底円筒状である。そして、シリンダ51とハウジング181との間には、後述する第1流路111および第2流路112を構成する孔(不図示)が形成されている。
【0025】
また、ハウジング181の上方には、図3に示すように、上部の開口を液密に塞ぐようにモータ70が固定されている。モータ70は、駆動軸71がタンク室182に配置されたポンプ200に連結されており、回転駆動することによりポンプ200を回転駆動する。
【0026】
さて、第1ケースの一例であるハウジング181は、第2ケースの一例であるシリンダ51とは別体として設けられる。図示の例においては、ハウジング181は、ボルト183を介して、シリンダ51に対し固定されている。また、ハウジング181とシリンダ51とは互いに押しつけ合い、直接接触して配置される。この接触領域におけるハウジング181側の面を、ハウジング面181a、同じくシリンダ51側の面をシリンダ面51cと呼ぶ。
【0027】
また、ハウジング181およびシリンダ51は、例えばアルミニウムにより各々形成される。ハウジング181およびシリンダ51は、電界腐食が生じるのを抑制するため、各々の外周面には表面処理(アルマイト処理)が施されている。図示の例においては、絶縁部の一例でありハウジング181がその外周面表面処理が施された部分である被処理部181s(後述する図5参照)を備え、シリンダ51がその外周面表面処理が施された部分である被処理部51s(後述する図5参照)を備える。このような表面処理が施されていることにより、ハウジング181とシリンダ51とが直接接触している領域では、ハウジング181及びシリンダ51は電気的に接続されていない。
【0028】
なお、本実施形態においては、ハウジング181とシリンダ51とを固定するボルト183も、表面処理が施されている。すなわち、ハウジング181およびシリンダ51は、ボルト183を介して、電気的に接続されていない。
また、本実施形態においては、ハウジング181とシリンダ51とが直接接触する領域に、リリーフバルブ300(詳細は後述)が設けられている。このリリーフバルブ300は、タンク室182よりも下方であり、かつボルト183よりも上方に位置する。さらに、図示のボルト183は、ハウジング181とシリンダ51とを締結する部材のうち最も下方に位置する部材である。
【0029】
図4は、ポンプ装置10の油圧回路である。
<ポンプ200>
ポンプ200は、図4に示すように、タンク180に貯留されたオイルを各々吐出する第1吐出部201aおよび第2吐出部201bを有する第1ポンプ201と、オイルを各々吐出する第3吐出部203aおよび第4吐出部203bを有する第2ポンプ203とを備えている。
【0030】
ポンプ200は、モータ70が正転すると、第1ポンプ201の第1吐出部201aおよび第2ポンプ203の第3吐出部203aからオイルを吐出する。他方、ポンプ200は、モータ70が逆転すると、第1ポンプ201の第2吐出部201bおよび第2ポンプ203の第4吐出部203bからオイルを吐出する。
【0031】
<ポンプ装置10の流路、弁の配置>
図4に示すように、ポンプ装置10は、シリンダ装置50の第1室Y1と第1ポンプ201の第1吐出部201aとを接続する第1流路111と、シリンダ装置50の第2室Y2と第1ポンプ201の第2吐出部201bとを接続する第2流路112とを備えている。
【0032】
また、ポンプ装置10は、シリンダ装置50の第1室Y1と第2ポンプ203の第3吐出部203aとを接続する第3流路113と、シリンダ装置50の第2室Y2と第2ポンプ203の第4吐出部203bとを接続する第4流路114とを備えている。
図示の例においては、第3流路113は、第1流路111を介してシリンダ装置50の第1室Y1に接続され、第4流路114は、第2流路112を介してシリンダ装置50の第2室Y2に接続されている。
【0033】
また、ポンプ装置10は、第3流路113に設けられ、第2ポンプ203の第3吐出部203aから第1流路111へのオイルの流れを許容するとともに第1流路111から第3吐出部203aへの流れを妨げる第1チェックバルブ131を備えている。
また、ポンプ装置10は、第4流路114に設けられ、第2ポンプ203の第4吐出部203bから第2流路112へのオイルの流れを許容するとともに第2流路112から第4吐出部203bへの流れを妨げる第2チェックバルブ132を備えている。
【0034】
また、ポンプ装置10は、第3流路113とタンク180とを接続し、タンク180に貯められたオイルを第3吐出部203aまで流通させる第1吸入路121を備えている。
また、ポンプ装置10は、第4流路114とタンク180とを接続し、タンク180に貯められたオイルを第4吐出部203bまで流通させる第2吸入路122とを備えている。
【0035】
また、ポンプ装置10は、第1吸入路121に設けられ、タンク180から第2ポンプ203の第3吐出部203aへのオイルの流れを許容するとともに第3吐出部203aからタンク180への流れを妨げる第3チェックバルブ133を備えている。
また、ポンプ装置10は、第2吸入路122に設けられ、タンク180から第2ポンプ203の第4吐出部203bへのオイルの流れを許容するとともに第4吐出部203bからタンク180への流れを妨げる第4チェックバルブ134を備えている。
【0036】
また、ポンプ装置10は、第1流路111から分岐してタンク180に接続される第5流路115と、第5流路115に設けられ、後述する第6流路116の圧力を受けて第5流路115を開放する第5流路開閉弁141とを備えている。
また、ポンプ装置10は、第2流路112から分岐してタンク180に接続される第6流路116と、第6流路116に設けられ、第5流路115の圧力を受けて第6流路116を開放する第6流路開閉弁142とを備えている。
【0037】
また、ポンプ装置10は、第1流路111から分岐してタンク180に接続される第7流路117と、第2流路112から分岐してタンク180に接続される第8流路118とを備えている。
【0038】
また、ポンプ装置10は、第7流路117に設けられ、第7流路117のオイルの圧力が予め設定された第7所定圧力よりも高い場合に開き、第1流路111のオイルを、第7流路117を介してタンクに逃がす第7流路開閉弁143を備えている。
また、ポンプ装置10は、第8流路118に設けられ、第8流路118のオイルの圧力が予め設定された第8所定圧力よりも高い場合に開き、第2流路112のオイルを、第8流路118を介してタンクに逃がす第8流路開閉弁144を備えている。
【0039】
また、ポンプ装置10は、第3流路113から分岐してタンク180に接続される第9流路119と、第9流路119に設けられ、第2流路112の圧力を受けて第9流路119を開放する第9流路開閉弁145とを備えている。
【0040】
また、ポンプ装置10は、第4流路114から分岐してタンク180に接続される第10流路120と、第10流路120に設けられ、第10流路120のオイルの圧力が予め設定された第10所定圧力よりも高い場合に開き、第10流路120のオイルをタンク180に逃がす第10流路開閉弁146とを備えている。
【0041】
また、ポンプ装置10は、第1流路111と第2流路112とに接続されて、第1ポンプ101から吐出されたオイルの流れの向きを切り替える切替弁150を備えている。
切替弁150は、第1流路111上に設けられた第1開閉弁160と第2流路112上に設けられた第2開閉弁170とを備えている。
また、切替弁150には、第1開閉弁160と第2開閉弁170とを連通する連通路151が形成されている。
【0042】
また、ポンプ装置10は、シリンダ装置50の第1室Y1と第2室Y2とを接続するリリーフ路123を備えている。
また、ポンプ装置10は、リリーフ路123に設けられ、シリンダ装置50の第2室Y2の圧力が予め定められた第11所定圧力よりも高い場合に開き、第2室Y2のオイルを逃がすとともに、第1室Y1から第2室Y2へのオイルの流れを妨げるリリーフバルブ300と、第2室Y2からリリーフバルブ300に向けて流れるオイルの流れを絞るオリフィス55とを備える。
【0043】
<リリーフバルブ300>
図5は、リリーフバルブ300の構造を示す図である。
次に、図5を参照しながら、リリーフバルブ300およびその周辺の構造について説明をする。
まず、弁部材の一例であるリリーフバルブ300は、弁本体の一例である逆止ボール301と、付勢部材の一例であるコイルスプリング303とを備える。逆止ボール301およびコイルスプリング303は、銅や鉄あるいはこれらの合金などを含む金属や樹脂の所謂導電性材料で形成される。このため、弁本体及び付勢部材は、互いに接触することで、電気的な接続が可能になっている。
【0044】
また、リリーフバルブ300は、上述のようにリリーフ路123内に設けられる。ここで、流路の一例であるリリーフ路123について説明をすると、リリーフ路123は、オリフィス55に接続されリリーフバルブ300を収容するリリーフバルブ室51eと、リリーフバルブ室51eと第1室Y1(図3参照)とを接続する接続路51fとを備える。また、オリフィス55からリリーフバルブ室51eへと流入するオイル(作動液)は、接続路51fを介して第1室Y1へと流れる。
【0045】
リリーフバルブ室51eは、シリンダ51の外周面であるシリンダ面51cに開口する断面略円形の凹部により区画されるとともに、シリンダ面51cに開口する部分はハウジング181のハウジング面181aにより液密に塞がれる。
さらに説明すると、リリーフバルブ室51eは、本体部51gと、本体部51gを挟んでシリンダ面51cとは反対側(オリフィス55側)に設けられた小径部51hと、本体部51gよりもシリンダ面51c側に設けられシリンダ面51cに開口する大径部51iとを備える。なお、これらの本体部51g、小径部51hおよび大径部51i各々の表面は、シリンダ面51cと同様に、アルマイト処理が施された被処理部51sが形成されている。
【0046】
本体部51gは、リリーフバルブ300を内部に収容する。また、本体部51gは、本体部51gの軸線方向中央部にて接続路51fと連続する。さらに説明をすると、本体部51gの軸線と、接続路51fの軸線とは互いに直交する向きに延びるとともに、オリフィス55から本体部51gに流入してきたオイルは、その向きを変えて接続路51fへ流出する。
【0047】
また、本体部51gは、軸線方向小径部51h側の端部にて、小径部51h側に進むに従い径が小さくなるよう傾斜したテーパ部51jを備える。このテーパ部51jには、リリーフバルブ300の逆止ボール301が押しつけられる。
大径部51iは、リリーフバルブ室51e内のオイルを封止する封止部材184が収容される。図示の例における封止部材184は、略円環状の弾性部材(所謂Oリング)であり、封止部材184の内径は、コイルスプリング303の外径よりも大きい。また、この封止部材184は、ハウジング181のハウジング面181aに押しつけられて設けられる。
【0048】
次に、リリーフバルブ室51eを塞ぐハウジング181の構成について説明をする。まず、上述のようにハウジング181のハウジング面181aは、アルマイト処理が施された被処理部181sを備える。また、ハウジング181は、ハウジング面181aにおけるリリーフバルブ室51eと対向する部分に凹部181bを備える。凹部181bは、断面略円形であり、コイルスプリング303の一端303aを支持する。すなわち、凹部181bは、コイルスプリング303の座として機能する。
【0049】
さて、リリーフバルブ室51e内に収容されたリリーフバルブ300は、コイルスプリング303の一端303aが凹部181bによって支持され、逆止ボール301がテーパ部51jによって支持される。このことにより、コイルスプリング303は圧縮された状態となる。そして、圧縮されたコイルスプリング303の弾性力が、逆止ボール301をテーパ部51j側に付勢することにより、オリフィス55からリリーフバルブ室51e内に流入するオイルの圧力が制御される。
【0050】
<シリンダ51およびハウジング181の電気的接続>
図6(a)および(b)は、露出部51k,181cを説明する図である。さらに説明をすると、図6(a)は図5のVIa-VIaにおける断面であり露出部51kを示す図である。なお、図6(a)において逆止ボール301は省略している。また、図6(b)は図5のVIb-VIbにおける断面であり露出部181cを示す図である。
【0051】
次に、図5および図6を参照しながら、シリンダ51およびハウジング181の電気的な接続について説明をする。
図1で説明したように、犠牲アノード27は、船外機5の各部分と電気的に接続されている。図3で示したポンプ装置10においては、ハウジング181が、犠牲アノード27と電気的に接続されている。また、シリンダ51およびハウジング181は互いに接触して配置される。しかしながら、シリンダ51およびハウジング181の外周面は、上述のようにアルマイト処理がされている。そのため、シリンダ51およびハウジング181が直接接触している箇所では、電気的には接続されていない。
【0052】
そこで、本実施の形態ではリリーフバルブ室51eを形成する面の一部に電気的な接続を可能とする部分を設けた。また、この電気的に接続可能な部分に、導電性材料で構成されたリリーフバルブ300を接触させて配置した。このことにより、リリーフバルブ300を介して、シリンダ51とハウジング181とを導通(電気的に接続)させている。
【0053】
以下では、シリンダ51およびハウジング181を電気的に接続するための具体的な構成を説明する。
まず、図5および図6(a)に示すように、シリンダ51のテーパ部51jの一部には、アルマイト処理がされておらず、材質であるアルミが露出した部分(露出部)51kが形成されている。第2導電部の一例である露出部51kは、テーパ部51jにおける逆止ボール301が押しつけられる領域に位置する。なお、この露出部51kは、絶縁部が形成されていない部分の一例である。
【0054】
また、図5および図6(b)に示すように、ハウジング181の凹部181bにも同様に、アルマイト処理がされておらず、材質であるアルミが露出した部分(露出部)181cが形成されている。第1導電部の一例である露出部181cは、凹部181bにおけるコイルスプリング303の一端303aが押しつけられる領域に位置する。
【0055】
ここで、露出部51kおよび露出部181cは、リリーフバルブ室51eを区画する面の一部であり、リリーフバルブ室51eにはオイルが収容される。このオイルの存在により、露出部51kおよび露出部181cが腐食することが抑制される。
【0056】
さらに説明をすると、図5に示すように、露出部51kおよび露出部181cは、封止部材184よりも内径側の領域に形成されている。これらの部分は外周が封止部材184に囲まれている領域にあり、外部から進入してきた海水が到達し難い位置である。
【0057】
上記構成により、リリーフバルブ300がリリーフバルブ室51e内に配置された状態においては、逆止ボール301がシリンダ51の露出部51kに押しつけられ、コイルスプリング303の一端303aがハウジング181の露出部181cに押しつけられる。また、コイルスプリング303の他端303bと逆止ボール301とは互いに押しつけ合う。このことにより、リリーフバルブ300を介して、シリンダ51およびハウジング181が電気的に接続される。
【0058】
また、上記のように、コイルスプリング303は圧縮された状態でリリーフバルブ室51e内に配置される。このコイルスプリング303の弾性力により、例えば船外機5(図1参照)が外部から振動を受けた際にも、逆止ボール301が露出部51kから離間すること、あるいはコイルスプリング303の一端303aが露出部181cから離間することが抑制される。その結果、シリンダ51およびハウジング181における電気的な接続が確保される。付言すると、本実施の形態においては、リリーフバルブ300を用いることにより、シリンダ51およびハウジング181の電気的な接続を確保するための専用の部品が不要となる。
【0059】
また、露出部51kおよび露出部181cは、例えばそれぞれシリンダ51およびハウジング181がアルマイト処理される際に、マスキングを施すことにより形成される。すなわち、マスキングが施された領域は、他の領域とは異なり、アルマイト処理が施されることなく残る領域、すなわち露出部51kおよび露出部181cとなる。
なお、この形成方法とは異なり、シリンダ51およびハウジング181の外周面全体をアルマイト処理した後に、表面の一部を削るなど加工を施すことにより、露出部51kおよび露出部181cを形成してもよい。
【0060】
<変形例>
図7(a)乃至(c)は、変形例を説明する図である。
上記図5の説明においては、ハウジング181がリリーフバルブ室51eと対向する部分に凹部181bを備えることを説明したが、これに限定されない。
例えば、図7(a)に示すように、ハウジング281におけるリリーフバルブ室251eと対向する部分が平坦であり、凹部181b(図5参照)を備えない構成であってもよい。
さらに説明をすると、リリーフバルブ400を収容されるための空間(凹部)が、シリンダ251およびハウジング281のいずれか一方に設けられても、あるいは両方に設けられてもよい。
【0061】
また、上記図5の説明においては、リリーフバルブ室51eにおいてリリーフバルブ300を設けること、すなわちオリフィス55から流入してきたオイルがその流れの向きを変えて接続路51fへ流出する箇所において電気的な接続を確保することを説明したが、これに限定されない。
【0062】
例えば、図7(b)に示すように、シリンダ351およびハウジング381を形成してもよい。すなわち、オリフィス550から流入してきたオイルが、その流れの向きを変えることなく接続路510fへ流出するリリーフバルブ室351eにおいて、リリーフバルブ500を設ける構成であってもよい。
【0063】
また、上記図5の説明においては、リリーフバルブ300によって電気的な接続を確保することを説明したが、他のバルブに上記構成を採用してもよい。
あるいは、電気的な接続を確保する構成であれば、バルブ以外の部材であってもよい。例えば、図7(c)に示すように、オリフィス(第1流路)650から流入してきたオイルが接続路(第2流路)610fへ流出する空間であって、シリンダ451およびハウジング481によって挟まれた空間451fに、圧縮状態のスプリング501を配置してもよい。言い替えると、スプリング501が、空間451fで突っ張った状態となり、かつシリンダ(第1ケース)451の露出部451kと、ハウジング(第2ケース)481の露出部481bとに接するように配置してもよい。
【0064】
また、上記図5の説明においては、シリンダ51およびハウジング181が直接接触して配置されることを説明したが、これに限定されない。上述のリリーフバルブ300などにより、シリンダ51およびハウジング181が電気的に接続される構成であれば、シリンダ51およびハウジング181の間に他の部材が介在する構成であってもよい。
【0065】
上記では種々の実施の形態および変形例を説明したが、これらの実施の形態および変形例どうしを組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…チルト・トリム装置、5…船外機、5a…船外機本体、51…シリンダ、51k…露出部、181…ハウジング、181c…露出部、300…リリーフバルブ、301…逆止ボール、303…コイルスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7