特許第6404153号(P6404153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404153
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】光透過性導電材料
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20181001BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20181001BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G06F3/041 490
   G06F3/044 122
   G06F3/041 422
   H01B5/14 A
   G06F3/044 126
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-56497(P2015-56497)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-177479(P2016-177479A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】砂田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉城 武宣
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/136584(WO,A1)
【文献】 特開2014−41589(JP,A)
【文献】 特表2014−529841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
3/03
3/041 − 3/0489
H01B 5/00 − 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性支持体上に、端子部と電気的に接続するセンサー部と、端子部と電気的に接続しないダミー部を有する光透過性導電層を有し、センサー部および/またはダミー部は、網目形状を有する金属パターンからなり、該金属パターンは、平面に配置された複数個の点(母点)に対して形成されるボロノイ図形からなる網目形状を有し、該母点は、多角形を平面充填されてできた図形が有する個々の多角形に対して1つ配置され、かつダミー部の該母点の位置が、多角形の重心と多角形の各頂点を結んだ直線あるいは延長線上の、重心から多角形の各頂点の距離の任意の割合(A)の位置を結んでできる拡大縮小多角形内の任意の位置であり、センサー部内の少なくとも一部の該母点の位置が、多角形の重心と多角形の各頂点を結んだ直線あるいは延長線上の、重心から多角形の各頂点の距離の任意の割合(B)の位置を結んでできる拡大縮小多角形内の任意の位置であり、前記した任意の割合(A)および(B)がA>Bの関係を満たすことを特徴とする光透過性導電材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にタッチパネルに用いられる光透過性導電材料に関し、特に投影型静電容量方式のタッチパネルの光透過性電極に好適に用いられる光透過性導電材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器、あるいはカーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段としてタッチパネルが広く用いられている。
【0003】
タッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルでは、タッチセンサーとなる光透過性電極として、光透過性導電材料と光透過性導電層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、光透過性導電材料に電流を流し光透過性導電層付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルでは、タッチセンサーとなる光透過性電極として、基材上に光透過性導電層を有する光透過性導電材料を基本的構成とし、可動部分が無いことを特徴とすることから、高い耐久性、高い光透過率を有するため、様々な用途において適用されている。更に、投影型静電容量方式のタッチパネルは、多点を同時に検出することが可能であるため、スマートフォンやタブレットPC等に幅広く用いられている。
【0004】
従来、タッチパネルの光透過性電極に用いられる光透過性導電材料としては、基材上にITO(酸化インジウムスズ)導電膜からなる光透過性導電層が形成されたものが使用されてきた。しかしながら、ITO導電膜は屈折率が大きく、光の表面反射が大きいため、光透過性導電材料の光透過性が低下する問題があった。またITO導電膜は可撓性が低いため、光透過性導電材料を屈曲させた際にITO導電膜に亀裂が生じて光透過性導電材料の電気抵抗値が高くなる問題があった。
【0005】
ITO導電膜からなる光透過性導電層を有する光透過性導電材料に代わる材料として、光透過性支持体上に光透過性導電層として金属細線パターンを、例えば、金属細線パターンの線幅やピッチ、更にはパターン形状などを調整して網目形状の金属細線パターンを形成した光透過性導電材料が知られている。この技術により、高い光透過性を維持し、高い導電性を有する光透過性導電材料が得られる。網目形状の金属細線パターン(以下、金属パターンとも記載)が有する網目形状に関しては、各種形状の繰り返し単位を利用できることが知られており、例えば特開2013−30378号公報(特許文献1)では、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形、円、楕円、星形等の繰り返し単位、及びこれらの2種類以上の組み合わせパターンが開示されている。
【0006】
上記した網目形状の金属パターンを有する光透過性導電材料の製造方法としては、支持体上に薄い触媒層を形成し、その上にレジストパターンを形成した後、めっき法によりレジスト開口部に金属層を積層し、最後にレジスト層及びレジスト層で保護された下地金属を除去することにより、金属パターンを形成するセミアディティブ方法が、例えば特開2007−287994号公報、特開2007−287953号公報などに開示されている。
【0007】
また近年、銀塩拡散転写法を用いた銀塩写真感光材料を導電性材料前駆体として用いる方法が知られている。例えば特開2003−77350号公報、特開2005−250169号公報や特開2007−188655号公報等では、支持体上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する銀塩写真感光材料(導電性材料前駆体)に、可溶性銀塩形成剤及び還元剤をアルカリ液中で作用させて、金属(銀)パターンを形成させる技術が開示されている。この方式によるパターニングは均一な線幅を再現することができることに加え、銀は金属の中で最も導電性が高いため、他方式に比べ、より細い線幅で高い導電性を得ることができる。更に、この方法で得られた金属パターンを有する層はITO導電膜よりも可撓性が高く折り曲げに強いという利点がある。
【0008】
光透過性支持体上にこれらの金属パターンを有する光透過性導電材料は、液晶ディスプレイ上に重ねて配置されるため、金属パターンの周期と液晶ディスプレイの素子の周期とが干渉し合い、モアレが発生するという問題があった。近年は液晶ディスプレイには様々な解像度のものが使用されており、このことは上記した問題を更に複雑にしている。
【0009】
この問題に対し、例えば特開2011−216377号公報(特許文献2)、特開2013−37683号公報(特許文献3)、特開2014−17519号公報(特許文献4)、特表2013−540331号公報(特許文献5)などでは、金属細線のパターンとして、例えば「なわばりの数理モデル ボロノイ図からの数理工学入門」(非特許文献1)などに記載された、古くから知られているランダムパターンを用いることで、干渉を抑制する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−30378号公報
【特許文献2】特開2011−216377号公報
【特許文献3】特開2013−37683号公報
【特許文献4】特開2014−17519号公報
【特許文献5】特表2013−540331号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】なわばりの数理モデル ボロノイ図からの数理工学入門 (共立出版 2009年2月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
投影型静電容量方式のタッチパネルの電極として用いられる場合、後述のように透明支持体上に複数のセンサー部が設けられる。上記のようなランダムな金属パターンは、金属細線の分布が粗になる部分と密になる部分がランダムに現れるため、センサー部の電気特性にバラツキが生じる場合があった。その結果、検出感度が低下したり、バラツキが著しい場合には検出回路などの補正では吸収できず、使用できなくなる問題があった。
【0013】
本発明の課題は、液晶ディスプレイに重ねてもモアレが発生せず、センサー毎の電気特性のバラツキを圧縮することにより検出感度の向上を図ることができる光透過性導電材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、以下の光透過性導電材料によって、基本的に解決される。
(1)光透過性支持体上に、端子部と電気的に接続するセンサー部と、端子部と電気的に接続しないダミー部を有する光透過性導電層を有し、センサー部および/またはダミー部は、網目形状を有する金属パターンからなり、該金属パターンは、平面に配置された複数個の点(母点)に対して形成されるボロノイ図形からなる網目形状を有し、該母点は、多角形を平面充填されてできた図形が有する個々の多角形に対して1つ配置され、かつダミー部の該母点の位置が、多角形の重心と多角形の各頂点を結んだ直線あるいは延長線上の、重心から多角形の各頂点の距離の任意の割合(A)の位置を結んでできる拡大縮小多角形内の任意の位置であり、センサー部内の少なくとも一部の該母点の位置が、多角形の重心と多角形の各頂点を結んだ直線あるいは延長線上の、重心から多角形の各頂点の距離の任意の割合(B)の位置を結んでできる拡大縮小多角形内の任意の位置であり、前記した任意の割合(A)および(B)が、A>Bの関係を満たすことを特徴とする光透過性導電材料。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、液晶ディスプレイに重ねてもモアレが発生せず、光透過性が良好で、かつセンサー毎の電気特性のバラツキが圧縮された光透過性導電材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の光透過性導電材料の一例を示す概略図
図2】ボロノイ図形を説明するための図
図3】本発明の変形例の一例を説明するための図
図4】本発明のボロノイ図形を作成する方法を示す概略図
図5】本発明のボロノイ図形を作成する方法を示す概略図
図6】本発明のボロノイ図形を作成する方法を示す概略図
図7】実施例で用いた原稿
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明するにあたり、図面を用いて説明するが、本発明はその技術的範囲を逸脱しない限り様々な変形や修正が可能であり、以下の実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0018】
図1は、本発明の光透過性導電材料の一例を示す概略図である。図1において、光透過性導電材料1は、光透過性支持体2上の少なくとも一方に、網目形状の金属パターンからなるセンサー部11とダミー部12、周辺配線部14、端子部15と、パターンがない非画像部13を有する。ここで、センサー部11及びダミー部12は網目形状の金属パターンから構成されるが、便宜上、それらの範囲を輪郭線a(実在しない線)で示している。
【0019】
センサー部11は周辺配線部14を介して端子部15に電気的に接続しており、この端子部15を通して外部に電気的に接続することで、センサー部11で感知した静電容量の変化を捉えることができる。一方、端子部15に電気的に接続していない金属パターンは本発明では全てダミー部12となる。本発明において周辺配線部14、端子部15は特に光透過性を有する必要はないためベタパターン(光透過性を有さないパターン)でも良く、あるいはセンサー部11やダミー部12などのように光透過性を有する網目形状の金属パターンであっても良い。
【0020】
図1において光透過性導電材料1が有するセンサー部11は、光透過性導電層面内において第一の方向(図中x方向)に伸びた列電極である。該センサー部11はダミー部12を挟んで、光透過性導電層面内において、第二の方向(図中y方向)に複数列が並んでいる。センサー部11は図1にあるように、第二の方向(y方向)に一定の周期Lをもって複数列並んでいることが好ましい。センサー部11の周期Lは、タッチセンサーとしての分解能を保つ範囲で任意の長さを設定することができる。センサー部11の形状は一定の幅であっても良いが、図1に示すように第一の方向(x方向)にパターン周期を有することもできる。図1では、センサー部11に周期Mにて絞り部分を設けた例(ダイヤモンドパターンの例)を示した。また、センサー部11の幅(ダイヤモンドパターンにおいて絞られていない箇所の幅)も、タッチセンサーとしての分解能を保つ範囲で任意に設定することができ、それに応じてダミー部12の形状や幅も任意に設定することができる。
【0021】
本発明において、センサー部11とダミー部12は網目形状の金属パターンからなり、該網目形状の金属パターンは、母点に対して設けられたボロノイ辺からなる網目形状(以下、ボロノイ図形と記載)である。ボロノイ図形とは、情報処理などの様々な分野で応用されている公知の図形である。図2は本発明におけるボロノイ図形を説明するための図である。図2の(2−a)において、平面20上に複数の母点211が配置されている時、1つの任意の母点211に最も近い領域21と、他の母点に最も近い領域21とを境界線22で区切ることで、平面20を分割した場合に、各領域21の境界線22をボロノイ辺と呼ぶ。また、ボロノイ辺は任意の母点と近接する母点とを結んだ線分の垂直二等分線の一部になる。ボロノイ辺を集めてできる図形をボロノイ図形と呼ぶ。
【0022】
母点を配置する方法について、図2の(2−b)を用いて説明する。本発明においては、平面20を多角形で区切り、その区切りの中にランダムに母点211を配置する方法が用いられる。平面20を区切る方法としては、単一形状あるいは2種以上の形状の複数の多角形(以降、原多角形と称する)によって平面20を平面充填し、原多角形の重心と原多角形の各頂点を結んだ直線あるいは延長線上の、重心から原多角形の各頂点の距離の任意の割合の位置を結び拡大縮小多角形を作成し、この拡大縮小多角形にて平面20を区切る方法が用いられる。このようにして平面20を区切った後、拡大縮小多角形の中にランダムに、母点を1つ配置する。図2の(2−b)においては、正方形である原多角形23により平面20を平面充填し、次にその原多角形の重心24と原多角形の各頂点を結んだ直線の、重心24から原多角形の各頂点までの90%の位置を結んでできる縮小多角形25を作成し、最後に縮小多角形25の中に母点211をランダムに1つ配置している。
【0023】
本発明においては「砂目」を予防するために(2−b)のように単一の形状および大きさの原多角形23で平面充填することが好ましい。尚、「砂目」とはランダム図形の中に、特異的に図形の密度の高い部分と低い部分が現れる現象である。また、前記の原多角形の重心と原多角形の各頂点を結んだ直線あるいは延長線上の、重心から原多角形の各頂点までの位置の割合は、10〜300%の範囲が好ましい。300%を超えると砂目現象が現れる場合があり、10%未満では、ボロノイ図形に高い規則性が残り、液晶ディスプレイと重ねた時にモアレが生じる場合がある。
【0024】
原多角形の形状は正方形、長方形、菱形などの四角形、三角形、六角形が好ましく、中でも砂目現象を予防する観点から四角形が好ましく、更に好ましい形状は、長辺と短辺の長さの比が1:0.8〜1:1の範囲内の長方形である。原多角形の一辺の長さは好ましくは100〜2000μm、より好ましくは120〜800μmである。尚、本発明においてボロノイ辺は直線であることが最も好ましいが、曲線、波線、ジグザグ線などを用いることもできる。また、センサー部11とダミー部12が有する金属パターンの線幅は、導電性と光透過性を両立する観点から1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは2〜7μmである。
【0025】
本発明において、上記した方法で得られたボロノイ図形を、任意の方向に拡大もしくは縮小して得られる図形も本発明の変形例として挙げることができる。図3は本発明における変形例を説明するための図である。図3中、(3−a)は拡大縮小する前のボロノイ図形を図示したものである。この(3−a)におけるボロノイ図形をx方向に4倍拡大し、y方向は変化させなかった時の図形を図示したものが図3の(3−b)になる。(3−a)におけるボロノイ辺26は(3−b)の辺31に、(3−a)における母点211は(3−b)の母点311に相当する。
【0026】
上記した方法でセンサー部及びダミー部のボロノイ図形を作成するが、本発明においては、拡大縮小多角形を生成する、原多角形の重心から原多角形の各頂点の距離の割合が、ダミー部における割合(A)とセンサー部(の少なくとも一部)における割合(B)で異なっており、A>Bの関係を満足する。即ち、ダミー部の拡大縮小多角形の方が、センサー部(の少なくとも一部)の拡大縮小多角形より大きく、母点を生成する範囲が広くなっている。好ましい形態として、ダミー部における割合(A)の範囲が50〜300%、センサー部(の少なくとも一部)における割合(B)の範囲が10〜200%であり、前記範囲においてA>Bを満足する形態が挙げられる。更に好ましい形態として、ダミー部における割合(A)の範囲が50〜200%、センサー部(の少なくとも一部)における割合(B)の範囲が10〜100%であり、前記範囲においてA>Bを満足する形態を挙げることができる。
【0027】
図4は本発明のボロノイ図形を作成する方法を示す概略図である。図4において、平面は原多角形23により充填されており、原多角形がセンサー部11に一部分でも属する斜線を引いた領域Iと、その他の領域IIに分類される。図4において本発明のセンサー部の割合(B)の対象は領域Iであり、ダミー部の割合(A)の対象は領域IIである。尚、図4はA=80%、B=60%を図示している。このように領域Iは、含まれる原多角形の一部がセンサー部11に属していればよく、ダミー部にはみ出していてもよい。
【0028】
図5は本発明のボロノイ図形を作成する方法を示す別の概略図である。図5において、平面は原多角形23により充填されており、センサー部11に属する原多角形の一部である斜線を引いた領域Iと、その他の領域IIに分類される。図5において本発明のセンサー部の割合(B)の対象は領域Iであり、ダミー部の割合(A)の対象は領域IIである。尚、図5はA=70%、B=60%を図示している。
【0029】
図6は本発明のボロノイ図形を作成する方法を示す別の概略図である。図6において、平面は原多角形23により充填されており、センサー部11に属する原多角形の一部である斜線を引いた領域Iと、その他の領域IIに分類される。図6において本発明のセンサー部の割合(B)の対象は領域Iであり、ダミー部の割合(A)の対象は領域IIである。尚、図6はA=70%、B=50%を図示している。
【0030】
本発明では、センサー部の少なくとも一部が割合(B)の対象となることが必要であるが、その面積は、センサー全体の少なくとも5%以上、好ましくは10%以上である。割合(B)の対象となる領域の好ましいセンサー部内の位置としては、図5のように、センサー部11の幅方向中心領域(センサー部11の最も狭い幅にて帯状に存在する位置)であることが重要で、更には図6のように、センサー部11が最も狭くなっている位置が割合(B)の対象となることがより重要である。センサー部11が最も狭くなっている箇所が、最もセンサー性能(電気特性など)に影響を与えるため、センサー全体に対して小さい面積であっても有効に作用する。
【0031】
前述の通り、本発明ではボロノイ辺を作成する際に、平面を区切って、その区切りの中にランダムに母点を配置するが、かかる平面の取り方としては、図1におけるセンサー部11とダミー部12を合わせた領域全体を図2における平面20としても良く、あるいはセンサー部11とダミー部12を合わせた領域をいくつかの小さい領域に分割し、その分割した領域を図2における平面20としても良い。また後者の方法において、分割して得られたいくつかの小さい領域の大きさが全て同じ場合は、1つの領域を構成する金属パターンを単位図形とし、この単位図形を繰り返すことで、全体の金属パターンを形成することが可能である。
【0032】
先の図1の説明において述べたように、センサー部とダミー部の間には電気的な接続はない。仮の輪郭線aに沿った位置に断線部を設けることにより、ダミー部12が形成される。更に、仮の輪郭線aに沿った位置に加え、ダミー部内の位置に複数の断線部を設けてもよい。断線部分の幅は3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。
【0033】
本発明においてセンサー部11とダミー部12は網目形状の金属パターンにより形成される。かかる金属としては金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、及びこれらの複合材からなることが好ましい。また周辺配線部14及び端子部15もセンサー部11やダミー部12と同じ組成の金属により形成される金属パターンとすることは、生産効率の観点から好ましい。これら金属パターンを形成する方法としては、銀塩感光材料を用いる方法、同方法を用い更に得られた銀画像に無電解めっきや電解めっきを施す方法、スクリーン印刷法を用いて銀ペースト、銅ペーストなどの導電性インキを印刷する方法、銀インクや銅インクなどの導電性インクをインクジェット法で印刷する方法、あるいは蒸着やスパッタなどで導電性層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法、銅箔などの金属箔を貼り、更にその上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法など、公知の方法を用いることができる。中でも製造される金属パターンの厚みが薄くでき、更に極微細な金属パターンも容易に形成できる銀塩拡散転写法を用いることが好ましい。
【0034】
上記した手法により作製された金属パターンの厚みは、厚すぎると後工程(例えば他部材との貼合等)が困難になる場合があり、また薄すぎるとタッチパネルとして必要な導電性を確保し難くなる。よって、その厚みは好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。
【0035】
本発明の光透過性導電材料において、センサー部11とダミー部12の全光線透過率は好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更には88.5%以上であることが特に好ましい。また、センサー部11とダミー部12の全光線透過率は、その差が0.5%以内であることが好ましく、より好ましくは0.1%以内であり、更には同じであることがより好ましい。センサー部11とダミー部12のヘイズ値は2以下が好ましい。更にセンサー部11とダミー部12の色相を表すb値は2以下が好ましく、1以下がより好ましい。
【0036】
本発明の光透過性導電材料が有する光透過性支持体としては、ガラスやあるいはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等などの公知の光透過性を有する支持体を用いることが好ましい。ここで光透過性とは全光線透過率が60%以上であることを意味し、全光線透過率は80%以上であることがより好ましい。光透過性支持体の厚みは50μm〜5mmであることが好ましい。また光透過性支持体には指紋防汚層、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの公知の層を付与することもできる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<光透過性導電材料1>
光透過性支持体として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。なおこの光透過性基材の全光線透過率は91%であった。
【0039】
次に下記処方に従い、物理現像核層塗液を作製し、上記光透過性支持体上に塗布、乾燥して物理現像核層を設けた。
【0040】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0041】
<物理現像核層塗液の調製>銀塩感光材料の1mあたりの量
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキザール水溶液 0.2ml
界面活性剤(S−1) 4mg
デナコールEX−830 50mg
(ナガセケムテックス(株)製ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)
10質量%SP−200水溶液 0.5mg
((株)日本触媒製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)
【0042】
続いて、光透過性支持体に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、及び保護層を上記物理現像核液層の上に塗布、乾燥して、銀塩感光材料を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い、金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0043】
<中間層組成>銀塩感光材料の1mあたりの量
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
染料1 50mg
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成>銀塩感光材料の1mあたりの量
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0047】
<保護層1組成>銀塩感光材料の1mあたりの量
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0048】
このようにして得た銀塩感光材料に、図1のパターンの画像を有する透過原稿を密着し、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介して露光した。なお透過原稿におけるセンサー部11の周期Lは5.3mm、センサー部11のダイヤモンドパターンの絞り部分の周期Mは5.0mmである。図7は実施例で用いた透過原稿の拡大図である。
【0049】
図1および図7のパターンの画像を有する透過原稿において、センサー部11並びにダミー部12が有する金属パターンは図4に示した母点から形成されるボロノイ図形である。図4は、x方向の一辺の長さが0.26mm、y方向の一辺の長さが0.26mmである正方形を原多角形とし、この原多角形をx方向、y方向に並べて平面充填してあり、図4に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の60%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図4に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の80%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した図を示している。その後、任意の母点に最も近い領域と、他の母点に最も近い領域とを輪郭線で区切る作業を全ての母点に対して繰り返し行い透過原稿に用いるボロノイ図形を作成した。ボロノイ図形の線幅は5μmである。センサー部分とダミー部分との境界には幅20μmの断線部を設け、センサー部とダミー部の全光線透過率は共に、89.0%である。
【0050】
その後、下記拡散転写現像液中に20℃で60秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層、中間層、および保護層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。この処理を100回繰り返し、光透過性導電層として、図1および図7の形状を有する金属銀画像を有する光透過性導電材料1を100枚得た。得られた光透過性導電材料が有する光透過性導電層の金属銀画像は、図1および図7の形状を有する透過原稿と同じ形状、同じ線幅であった。また金属銀画像の膜厚は共焦点顕微鏡で調べ、0.1μmであった。
【0051】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する。
【0052】
<光透過性導電材料2>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図4に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の100%の位置を結んでできる拡大縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図4に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の80%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料2を得た。
【0053】
<光透過性導電材料3>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図4に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の80%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図4に示した領域IIに属する原多角形に対しても、原多角形の重心から各頂点までの距離の80%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料3を得た。
【0054】
<光透過性導電材料4>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図4に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の80%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図4に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の60%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料4を得た。
【0055】
<光透過性導電材料5>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図4に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の60%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図4に示した領域IIに属する原多角形に対しても、原多角形の重心から各頂点までの距離の60%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料5を得た。
【0056】
<光透過性導電材料6>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図5に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の60%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図5に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料6を得た。
【0057】
<光透過性導電材料7>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図5に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の80%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図5に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料7を得た。
【0058】
<光透過性導電材料8>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図5に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図5に示した領域IIに属する原多角形に対しても、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料8を得た。
【0059】
<光透過性導電材料9>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図5に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図5に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の50%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料9を得た。
【0060】
<光透過性導電材料10>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図5に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の50%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図5に示した領域IIに属する原多角形に対しても、原多角形の重心から各頂点までの距離の50%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料10を得た。
【0061】
<光透過性導電材料11>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図6に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の50%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図6に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料11を得た。
【0062】
<光透過性導電材料12>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図6に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の90%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図6に示した領域IIに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料12を得た。
【0063】
<光透過性導電材料13>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、網目図形の作製において、図6に示した領域Iに属する原多角形に対しては、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置し、図6に示した領域IIに属する原多角形に対しても、原多角形の重心から各頂点までの距離の70%の位置を結んでできる縮小多角形の中に母点を1つランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料13を得た。
【0064】
得られた光透過性導電材料1〜13について、以下の手順に従って視認性、及びセンサー抵抗値のバラツキについて評価した。
【0065】
<視認性>
得られた光透過性導電材料1〜13を、全面白画像を表示したAOC社製I2267FWH 21.5型ワイド液晶モニタの上に載せ、モアレ、あるいは砂目がはっきり出ているものを×、よく見ればわかるものを△、全くわからないものを○とした。
【0066】
<センサー抵抗値のバラツキ>
図1のパターンでは、センサー部11が10本存在する。得られた光透過性導電材料1〜13の各100枚について、それぞれ10本のセンサー部両端間の抵抗値をデジタルマルチメーターで測定した。得られた測定値から各光透過性導電材料毎に10本のセンサーの最大値と最小値の差を求め100枚について平均して、バラツキとして<視認性>の結果と共に表1に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1の結果から、本発明によって、液晶ディスプレイに重ねてもモアレが発生せず、かつ抵抗値のバラツキが圧縮された光透過性導電材料が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1 光透過性導電材料
2 光透過性支持体
11 センサー部
12 ダミー部
13 非画像部
14 周辺配線部
15 端子部
20 平面
21 領域
22 領域の境界線
23 原多角形
24 原多角形の重心
25 拡大縮小多角形
a 仮の輪郭線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7