(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1規格の放送を受信する第1受信部と、上記第1規格の放送から遅延した第2規格の放送を受信する第2受信部と、上記第1受信部で受信した上記第1規格の放送データに対する遅延処理を行うことにより、上記第1規格の放送データの出力タイミングを、上記第2受信部で受信した上記第2規格の放送データの出力タイミングに同期させる遅延処理部と、上記第1規格の放送または上記第2規格の放送の何れかに選択的に切り替えて放送データの出力を行う出力制御部とを備えた放送受信装置であって、
上記第1規格の放送の受信環境が、上記第1規格の放送から上記第2規格の放送への切り替えを必要とする環境か否かを判定する受信環境判定部と、
上記第1規格の放送から上記第2規格の放送への切り替えを必要とする環境であると上記受信環境判定部により判定された場合、上記遅延処理部の機能を有効とする第1モードを設定する一方、上記第1規格の放送から上記第2規格の放送への切り替えを必要とする環境ではないと上記受信環境判定部により判定された場合、上記遅延処理部の機能を無効とする第2モードを設定するモード制御部と、
移動案内を行うナビゲーション装置から目的地情報を取得する目的地情報取得部と、
上記ナビゲーション装置から自宅情報を取得する自宅情報取得部とを備え、
上記受信環境判定部は、上記目的地情報取得部により取得された上記目的地情報で示される目的地が、上記自宅情報取得部により取得された上記自宅情報で示される自宅の付近で受信可能な上記第1規格の放送の受信可能エリアの外部にあるか否かを判定し、上記目的地が上記受信可能エリアの外部にある場合は上記切り替えを必要とする環境であると判定し、上記目的地が上記受信可能エリアの外部にない場合は上記切り替えを必要とする環境ではないと判定することを特徴とする放送受信装置。
上記受信環境判定部は、上記受信可能エリアの内部にて受信可能な上記第1規格の放送のうち、現在受信中の上記第2規格の放送と同じ内容の上記第1規格の放送の受信感度が所定値以上になったか否かをさらに判定し、
上記受信感度が所定値以上になったと上記受信環境判定部により判定された場合、上記出力制御部が上記第2規格の放送から上記第1規格の放送に選択を切り替えて放送データの出力を行うとともに、上記モード制御部が上記第1モードから上記第2モードへ設定を変更することを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
上記モード制御部は、上記第1モードでは、上記遅延処理部の機能に加えて上記出力制御部の機能を有効とし、上記第2モードでは、上記遅延処理部の機能に加えて上記出力制御部の機能を無効とすることを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
第1規格の放送を受信する第1受信部と、上記第1規格の放送から遅延した第2規格の放送を受信する第2受信部と、上記第1受信部で受信した上記第1規格の放送データに対する遅延処理を行うことにより、上記第1規格の放送データの出力タイミングを、上記第2受信部で受信した上記第2規格の放送データの出力タイミングに同期させる遅延処理部と、上記第1規格の放送または上記第2規格の放送の何れかに選択的に切り替えて放送データの出力を行う出力制御部とを備えた放送受信装置による出力制御方法であって、
上記放送受信装置の受信環境判定部が、上記第1規格の放送の受信環境が、上記第1規格の放送から上記第2規格の放送への切り替えを必要とする環境か否かを判定する第1のステップと、
上記放送受信装置のモード制御部が、上記第1規格の放送から上記第2規格の放送への切り替えを必要とする環境であると上記受信環境判定部により判定された場合、上記遅延処理部の機能を有効とする第1モードを設定する一方、上記第1規格の放送から上記第2規格の放送への切り替えを必要とする環境ではないと上記受信環境判定部により判定された場合、上記遅延処理部の機能を無効とする第2モードを設定する第2のステップとを有し、
上記第1のステップにおいて、上記受信環境判定部は、上記放送受信装置の目的地情報取得部が移動案内を行うナビゲーション装置から取得した目的地情報で示される目的地が、上記放送受信装置の自宅情報取得部が上記ナビゲーション装置から取得した自宅情報で示される自宅の付近で受信可能な上記第1規格の放送の受信可能エリアの外部にあるか否かを判定し、上記目的地が上記受信可能エリアの外部にある場合は上記切り替えを必要とする環境であると判定し、上記目的地が上記受信可能エリアの外部にない場合は上記切り替えを必要とする環境ではないと判定する
ことを特徴とする出力制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明による第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態による放送受信装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示す放送受信装置100は、DAB放送(第1規格の放送の一例)と、IP放送(第2規格の放送の一例)とを受信して、受信したDAB放送の音声とIP放送の音声とを選択的に切り替えてスピーカ12に出力することが可能な装置である。
【0013】
放送受信装置100にはアンプ11が接続され、当該アンプ11にはスピーカ12が接続されている。また、放送受信装置100には、移動案内を行うナビゲーション装置13が接続されている。なお、ここでは放送受信装置100とナビゲーション装置13とが別体のものとして説明するが、一体のものであってもよい。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態による放送受信装置100は、第1受信部101、第1復調部102、DABバッファ103、第2受信部104、第2復調部105、IPバッファ106、遅延時間算出部107、遅延処理部108、出力制御部109、目的地情報取得部111、受信環境判定部112およびモード制御部113を備えている。
【0015】
上記各機能ブロック101〜113は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック101〜113は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0016】
第1受信部101は、DAB放送の放送波を受信する。第1復調部102は、第1受信部101によって受信されたDAB放送の放送波を復調する。DABバッファ103は、第1受信部101によって受信されたDAB放送(第1復調部102による復調後のDAB放送)に含まれている音声データを一時的に記憶する。
【0017】
第2受信部104は、IP放送の通信データを受信する。第2復調部105は、第2受信部104によって受信されたIP放送の通信データを復調する。IPバッファ106は、第2受信部104によって受信されたIP放送(第2復調部105による復調後のIP放送)に含まれている音声データを一時的に記憶する。
【0018】
なお、DABバッファ103の容量は、IPバッファ106の容量よりも大きく設計されている。これは、DABバッファ103に記憶されるDAB放送の音声データの中に、当該DAB放送よりも遅延して受信されてIPバッファ106に記憶されるIP放送の音声データと同一のデータが含まれるようにする必要があるからである。
【0019】
第2受信部104によって受信されるIP放送は、第1受信部101によって受信されるDAB放送と同一の内容である。ただし、第2受信部104によって受信されるIP放送は、第1受信部101によって受信されたDAB放送よりも遅延して受信される。第1受信部101がDAB放送の放送波を直接受信するのに対し、第2受信部104は、放送局からプロバイダ、インターネットサーバ等を経由して送信されてきたIP放送の通信データを受信するからである。
【0020】
出力制御部109は、第1受信部101によって受信されたDAB放送(第1復調部102による復調後のDAB放送)の音声データと、第2受信部104によって受信されたIP放送(第2復調部105による復調後のIP放送)の音声データとを選択的に切り替えて出力する。例えば、出力制御部109は、DAB放送の受信感度が所定値よりも大きい場合には、DAB放送に切り替えて出力する。一方、出力制御部109は、DAB放送の受信感度が所定値以下となった場合には、IP放送に切り替えて出力する。出力制御部109が出力した音声データは、アンプ11によって増幅され、スピーカ12から音声出力されることとなる。
【0021】
なお、DAB放送の受信感度が所定値を下回ったか否かは、例えば、第1復調部102により復調される放送データのBER(Bit Error Rate)が所定値より大きいか否かによって判定することが可能である。
【0022】
遅延時間算出部107は、DABバッファ103に記憶されたDAB放送の音声データと、IPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データとを比較することにより、DAB放送に対するIP放送の遅延時間を算出する。具体的には、遅延時間算出部107は、容量の小さいIPバッファ106に格納された音声データと同一のデータを、容量の大きいDABバッファ103の中から探して特定し、当該同一の音声データの受信タイミングの差異から、DAB放送とIP放送との時間差、つまりDAB放送に対するIP放送の遅延時間を算出する。
【0023】
遅延処理部108は、遅延時間算出部107によって算出された遅延時間に応じて、DABバッファ103に記憶されているDAB放送の音声データに対する遅延処理(タイムストレッチ)を行う。これにより、遅延処理部108は、出力制御部109が出力するDAB放送の音声データの出力タイミングを、出力制御部109が出力するIP放送の音声データの出力タイミングに同期させる。
【0024】
目的地情報取得部111は、ナビゲーション装置13から目的地情報を取得する。例えば、目的地情報取得部111は、ナビゲーション装置13において経路探索を行う際に目的地が設定されたときに、その目的地を表す目的地情報を取得する。取得する目的地情報は、例えば緯度・経度情報である。あるいは、住所情報であってもよい。
【0025】
受信環境判定部112は、DAB放送の受信環境が、当該DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境か否かを判定する。第1の実施形態では、受信環境判定部112は、目的地情報取得部111により目的地情報が取得された場合に、その目的地情報で示される目的地が、現在受信中のDAB放送の受信可能エリア(以下、現在受信可能エリアという)の外部にあるか否かを判定する。そして、目的地が現在受信可能エリアの外部にある場合は、IP放送への切り替えを必要とする環境であると判定する。一方、目的地が現在受信可能エリアの外部にない場合は、IP放送への切り替えを必要とする環境ではないと判定する。
【0026】
なお、ここで言う「IP放送への切り替えを必要とする環境」とは、目的地が設定された現時点ですぐにIP放送へ切り替えることが必要という意味ではなくて、誘導経路に沿って移動していった後、DAB放送の現在受信可能エリアの外部に出たときにIP放送へ切り替えることが必要になるという意味である。すなわち、このさき現在受信可能エリアの外部に出ることが確実で、エリア外に出ればDAB放送を受信できなくなることがあらかじめ分かっている環境ということである。
【0027】
目的地がDAB放送の現在受信可能エリアの外部にあるか否かを判定できるようにするために、受信環境判定部112は、DAB放送の各受信可能エリアを特定可能なエリア情報を有している。受信環境判定部112は、このエリア情報と、目的地情報取得部111により取得された目的地情報とを比較することにより、目的地がDAB放送の現在受信可能エリアの外部にあるか否かを判定する。
【0028】
モード制御部113は、DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境であると受信環境判定部112により判定された場合、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を有効とする同期ONモード(第1モードに相当)を設定する。一方、DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境ではないと受信環境判定部112により判定された場合、モード制御部113は、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を無効とする同期OFFモード(第2モードに相当)を設定する。
【0029】
同期ONモードが設定された場合、つまり、DAB放送の現在受信可能エリアの外部に目的地が設定されている場合は、現在受信中のDAB放送に対して遅延処理部108によりタイムストレッチ処理が実行される。これにより、放送受信装置100は、DAB放送の出力タイミングとIP放送の出力タイミングとが同期した状態を確保する。すなわち、この先の移動に伴いDAB放送の現在受信可能エリア外に出たことによってDAB放送の受信感度が悪化した場合に、DAB放送からIP放送へと時間差のないシームレスな切り替えを行うことが可能な状態を確保することができる。
【0030】
一方、第2モードが設定される場合とは、DAB放送の現在受信可能エリアの内部に目的地が設定されている場合、または、目的地情報取得部111がナビゲーション装置13から目的地情報を取得していない場合(目的地が設定されていない場合)が該当する。これらの場合は、遅延処理部108によるタイムストレッチ処理は実行されない。現在受信中のDAB放送の受信感度が悪化せず、継続してDAB放送を受信し続けることができる可能性が高く、IP放送への切り替えが不要と考えられるからである。タイムストレッチ処理が行われないので、出力されるDAB放送の音声のリアルタイム性を確保することができる。
【0031】
図2は、上記のように構成した第1の実施形態による放送受信装置100の動作例を示すフローチャートである。なお、この
図2に示すフローチャートは、放送受信装置100の電源がオンとされたときに開始する。
【0032】
なお、放送受信装置100の電源がオンにされると、
図2に示すフローチャートと並行して、DAB放送の受信およびその音声データのDABバッファ103への記憶に関する処理と、IP放送の受信およびその音声データのIPバッファ106への記憶に関する処理とが実行される。この処理と並行して、まず、出力制御部109は、第1復調部102から出力されるDAB放送の音声データを選択してアンプ11に出力する(ステップS1)。
【0033】
次に、目的地情報取得部111は、ナビゲーション装置13から目的地情報を取得したか否かを判定する(ステップS2)。目的地情報取得部111が目的地情報を取得した場合、その目的地がDAB放送の現在受信可能エリアの外部にあるか否かを判定する(ステップS3)。そして、目的地が現在受信可能エリアの外部にある場合、モード制御部113は、遅延時間算出部107および遅延処理部108に対して同期ONモードの設定を行う(ステップS4)。
【0034】
同期ONモードが設定された場合、遅延時間算出部107は、DABバッファ103に記憶されたDAB放送の音声データと、IPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データとを比較することにより、DAB放送に対するIP放送の遅延時間を算出する(ステップS5)。さらに、遅延処理部108は、遅延時間算出部107により算出された遅延時間に応じて、DABバッファ103に記憶されているDAB放送の音声データに対してタイムストレッチ処理を行う(ステップS6)。これにより、DAB放送の出力タイミングとIP放送の出力タイミングとが同期した状態となる。
【0035】
一方、上記ステップS2で目的地情報取得部111が目的地情報を取得していないと判定された場合、および、上記ステップS3で目的地が現在受信可能エリアの外部にはないと判定された場合、モード制御部113は、遅延時間算出部107および遅延処理部108に対して同期OFFモードの設定を行う(ステップS7)。同期OFFモードが設定された場合は、ステップS5,S6の処理は行わない。これにより、DAB放送の出力タイミングが遅延することはない。
【0036】
ステップS6またはステップS7の処理の後、出力制御部109は、DAB放送の受信感度が所定値以下となったか否かを判定する(ステップS8)。例えば、現在位置がDAB放送の現在受信可能エリア内にある場合は、DAB放送の受信感度が所定値以下となることはない。この場合、ステップS8の判定処理を繰り返し実行する。
【0037】
一方、目的地への移動によって、現在位置がDAB放送の現在受信可能エリアの外部に出ると、DAB放送の受信感度は所定値以下となるほどに悪化する。この場合、出力制御部109は、アンプ11に出力する音声をDAB放送からIP放送へ切り替える(ステップS9)。これにより、
図2に示すフローチャートの処理が終了する。
【0038】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態では、ナビゲーション装置13から目的地情報が取得された場合に、その目的地情報で示される目的地が、DAB放送の現在受信可能エリアの外部にあるか否か、すなわち、DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境であるか否かを判定する。そして、目的地が現在受信可能エリア外である場合は同期ONモードを設定することによって遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を有効とし、目的地が現在受信可能エリア内である場合は同期OFFモードを設定することによって遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を無効とするようにしている。
【0039】
このように構成した第1の実施形態によれば、目的地が現在受信可能エリアの外部に設定されている場合は、DAB放送を遅延させることによってDAB放送とIP放送との同期がとられる。そして、目的地への移動に伴って現在位置が現在受信可能エリアの外部に実際に出ると、DAB放送の受信感度が所定値以下に悪化するため、DAB放送からIP放送への切り替えが行われる。この切り替えを行う際には、DAB放送とIP放送との同期がとれた状態で、時間差のないシームレスな切り替えを行うことができる。
【0040】
一方、目的地が現在受信可能エリアの内部に設定されている場合は、目的地に向かって移動しても、受信感度が所定値以下に悪化することはないため、実際にDAB放送からIP放送への切り替えが行われることはなく、DAB放送の音声データが出力され続ける。また、目的地が設定されていない場合は、自宅周辺で移動している可能性が高く、DAB放送の現在受信可能エリアの外部に出て受信感度が所定値以下に悪化することはないと考えられる。この場合も、実際にDAB放送からIP放送への切り替えが行われることはなく、DAB放送の音声データが出力され続ける。これらの場合、DAB放送の遅延処理(タイムストレッチ処理)は行われないので、DAB放送の出力タイミングが遅れることはなく、出力される音声のリアルタイム性を確保することができる。
【0041】
以上のように、第1の実施形態によれば、DAB放送の現在受信可能エリア内では出力音声のリアルタイム性を確保しつつ、現在受信可能エリア外で受信感度が悪化してDAB放送からIP放送への切り替えを行う際には、シームレスな切り替えを行うことができる。
【0042】
(第2の実施形態)
以下、本発明による第2の実施形態を図面に基づいて説明する。
図3は、第2の実施形態による放送受信装置100’の機能構成例を示すブロック図である。なお、この
図3において、
図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、第2の実施形態による放送受信装置100’は、目的地情報取得部111を備えてない。また、受信環境判定部112およびモード制御部113に代えて受信環境判定部112’およびモード制御部113’を備えている。
【0044】
受信環境判定部112’は、現在受信中のDAB放送の受信感度が所定値以下になったか否かを判定する。そして、受信感度が所定値以下になった場合は、DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境であると判定する。一方、受信感度が所定値以下になっていない場合は、DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境ではないと判定する。なお、受信感度が所定値以下になったか否かは、例えば、第1復調部102により復調される放送データのBERが所定値より大きいか否かによって判定することができる。
【0045】
モード制御部113’は、現在受信中のDAB放送の受信感度が所定値より大きい場合に、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を無効とする同期OFFモードを設定する。例えば、放送受信装置100’の電源をオンとした直後の初期状態では、モード制御部113は同期OFFモードを設定する。一方、モード制御部113’は、DAB放送の受信感度が所定値以下になった場合に、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を有効とする同期ONモードを設定する。
【0046】
図4は、上記のように構成した第2の実施形態による放送受信装置100’の動作例を示すフローチャートである。なお、この
図4に示すフローチャートは、放送受信装置100’の電源がオンとされたときに開始する。
【0047】
なお、放送受信装置100’の電源がオンにされると、
図4に示すフローチャートと並行して、DAB放送の受信およびその音声データのDABバッファ103への記憶に関する処理と、IP放送の受信およびその音声データのIPバッファ106への記憶に関する処理とが実行される。
【0048】
この処理と並行して、まずモード制御部113’は、遅延時間算出部107および遅延処理部108に対して同期OFFモードの設定を行う(ステップS11)。また、出力制御部109は、第1復調部102から出力されるDAB放送の音声データを選択してアンプ11に出力する(ステップS12)。
【0049】
次に、受信環境判定部112’は、DAB放送の受信感度が所定値以下となったか否かを判定する(ステップS13)。例えば、現在位置がDAB放送の現在受信可能エリア内にある場合は、DAB放送の受信感度が所定値以下となることはない。この場合は、ステップS13の判定処理を繰り返し実行する。
【0050】
一方、移動によって現在位置がDAB放送の現在受信可能エリアの外部に出ると、DAB放送の受信感度は所定値以下となるほどに悪化する。この場合、受信環境判定部112’は、DAB放送の受信感度が所定値以下となったと判定する(ステップS13)。そして、モード制御部113’は、遅延時間算出部107および遅延処理部108に対して同期ONモードの設定を行う(ステップS14)。
【0051】
同期ONモードが設定された場合、遅延時間算出部107は、DABバッファ103に記憶されたDAB放送の音声データと、IPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データとを比較することにより、DAB放送に対するIP放送の遅延時間を算出する(ステップS15)。
【0052】
さらに、遅延処理部108は、遅延時間算出部107により算出された遅延時間に応じて、DABバッファ103に記憶されているDAB放送の音声データに対してタイムストレッチ処理を行う(ステップS16)。これにより、DAB放送の出力タイミングとIP放送の出力タイミングとが同期する。
【0053】
そして、このようにDAB放送の出力タイミングとIP放送の出力タイミングとの同期がとれた状態で、出力制御部109は、アンプ11に出力する音声をDAB放送からIP放送へ切り替える(ステップS17)。これにより、
図4に示すフローチャートの処理が終了する。
【0054】
以上詳しく説明したように、第2の実施形態では、放送受信装置100’の電源をオンとした初期状態では、同期OFFモードを設定して遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を無効とする。その後、DAB放送の受信感度が悪化したか否か、すなわち、DAB放送からIP放送への切り替えを直ちに行うことが必要な環境であるか否かを判定し、受信感度が悪化した場合は同期ONモードに切り替えて遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を有効としたうえで、タイムストレッチ処理を実行するようにしている。
【0055】
このように構成した第2の実施形態によれば、受信感度が良好なうちは、DAB放送からIP放送への切り替えが行われることはなく、DAB放送の音声データが出力され続ける。この場合、DAB放送の遅延処理(タイムストレッチ処理)は行われないので、DAB放送の出力タイミングが遅れることはなく、出力される音声のリアルタイム性を確保することができる。一方、受信感度が悪化すると、DAB放送を遅延させることによってIP放送に同期させたうえで、DAB放送からIP放送への切り替えが行われる。よって、時間差のないシームレスな切り替えを行うことができる。
【0056】
以上のように、第2の実施形態によれば、現在受信中のDAB放送の受信可能エリア内で受信感度が良好な場合は出力音声のリアルタイム性を確保しつつ、受信可能エリア外で受信感度が悪化してDAB放送からIP放送への切り替えを行う際には、シームレスな切り替えを行うことができる。
【0057】
(第3の実施形態)
以下、本発明による第3の実施形態を図面に基づいて説明する。
図5は、第3の実施形態による放送受信装置100”の機能構成例を示すブロック図である。なお、この
図5において、
図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0058】
図5に示すように、第3の実施形態による放送受信装置100”は、自宅情報取得部114を更に備えている。また、受信環境判定部112およびモード制御部113に代えて受信環境判定部112”およびモード制御部113”を備えている。
【0059】
自宅情報取得部114は、ナビゲーション装置13から自宅情報を取得する。例えば、ナビゲーション装置13において経路探索を行う際に目的地が設定されたときに、目的地情報取得部111が目的地情報を取得するのと共に、自宅情報取得部114が自宅情報を取得する。取得する自宅情報は、例えば緯度・経度情報あるいは住所情報である。
【0060】
受信環境判定部112”は、目的地情報取得部111および自宅情報取得部114により目的地情報および自宅情報が取得された場合に、その目的地情報で示される目的地が、自宅情報で示される自宅の付近で受信可能なDAB放送の受信可能エリア(以下、自宅付近受信可能エリアという)の外部にあるか否かを判定する。そして、目的地が自宅付近受信可能エリアの外部にある場合は、IP放送への切り替えを必要とする環境であると判定する。一方、目的地が自宅付近受信可能エリアの外部にない場合は、IP放送への切り替えを必要とする環境ではないと判定する。
【0061】
モード制御部113”は、DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境であると受信環境判定部112により判定された場合、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を有効とする同期ONモードを設定する。一方、DAB放送からIP放送への切り替えを必要とする環境ではないと受信環境判定部112により判定された場合、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を無効とする同期OFFモードを設定する。ただし、第3の実施形態では、自宅付近受信可能エリア内で受信可能なDAB放送の受信感度が所定値より大きい場合に、同期OFFモードの設定を行う。
【0062】
以上の機能を有する第3の実施形態によれば、自宅付近で受信可能な複数局のDAB放送の何れかに関する受信可能エリア内に目的地が設定されていれば、タイムストレッチ処理が行われないようにすることができる。これにより、例えば、自宅付近でよく視聴しているお気に入りのDAB放送(例えば、プリセットメモリに登録しておいた複数局のDAB放送)については、DAB放送からIP放送への切り替え時におけるシームレス性よりも、出力音声のリアルタイム性を優先的に確保することができる。
【0063】
また、第3の実施形態では、自宅付近受信可能エリアの外部に現在位置があるときに、自宅を目的地に設定した場合にも、自宅付近受信可能エリア内に目的地が設定されているため、当該自宅付近受信可能エリア内ではタイムストレッチ処理が行われないようにすることができる。
【0064】
この場合、受信環境判定部112”は、第1復調部102により復調されるDAB放送に含まれるBERに基づいて、自宅付近受信可能エリア内にて受信可能なDAB放送のうち、自宅付近受信可能エリア外の現在位置において受信中のIP放送と同じ内容のDAB放送について、受信感度が所定値以上になったか否かを判定する。そして、当該受信感度が所定値以上になったと判定された場合、出力制御部109がIP放送からDAB放送に選択を切り替えて放送データの出力を行うとともに、モード制御部113”が同期ONモードから同期OFFモードへ設定を変更する。これにより、自宅付近受信可能エリア外にいるときはシームレスリンク機能を有効とし、自宅付近受信可能エリア内に入った後はシームレスリンク機能を無効として出力音声のリアルタイム性を確保することができる。
【0065】
図6は、上記のように構成した第3の実施形態による放送受信装置100”の動作例を示すフローチャートである。なお、この
図6に示すフローチャートは、自宅付近受信可能エリアの外部において、放送受信装置100”の電源がオンとされたときに開始する。
【0066】
なお、放送受信装置100”の電源がオンにされると、
図6に示すフローチャートと並行して、DAB放送の受信およびその音声データのDABバッファ103への記憶に関する処理と、IP放送の受信およびその音声データのIPバッファ106への記憶に関する処理とが実行される。
【0067】
現在位置が自宅付近受信可能エリアの外部にある場合、DAB放送の受信感度が所定値以下となっているので、まず、出力制御部109は、第2復調部105から出力されるIP放送の音声データを選択してアンプ11に出力する(ステップS21)。
【0068】
次に、目的地情報取得部111および自宅情報取得部114は、ナビゲーション装置13から目的地情報および自宅情報を受信したか否かを判定する(ステップS22)。自宅付近受信可能エリアの外部(DAB放送の受信感度が所定値以下のエリア)において、目的地情報および自宅情報を受信しなかった場合、処理はステップS24に遷移する。
【0069】
一方、目的地情報および自宅情報を受信した場合、その目的地が自宅付近受信可能エリアの外部にあるか否かを判定する(ステップS23)。そして、目的地が自宅付近受信可能エリアの外部にある場合、モード制御部113”は、遅延時間算出部107および遅延処理部108に対して同期ONモードの設定を行う(ステップS24)。
【0070】
同期ONモードが設定された場合、遅延時間算出部107は、DABバッファ103に記憶されたDAB放送の音声データと、IPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データとを比較することにより、DAB放送に対するIP放送の遅延時間を算出する(ステップS25)。
【0071】
さらに、遅延処理部108は、遅延時間算出部107により算出された遅延時間に応じて、DABバッファ103に記憶されているDAB放送の音声データに対してタイムストレッチ処理を行う(ステップS26)。これにより、DAB放送の出力タイミングとIP放送の出力タイミングとが同期した状態となる。
【0072】
一方、上記ステップS23で目的地が自宅付近受信可能エリアの外部にはないと判定された場合、受信環境判定部112”は、自宅付近受信可能エリア内にて受信可能なDAB放送のうち、自宅付近受信可能エリア外の現在位置において受信中のIP放送と同じ内容のDAB放送の受信感度が所定値以上に上昇したか否かを判定する(ステップS27)。当該DAB放送の受信感度が所定値以上になっていない場合は、ステップS27の判定を繰り返す。
【0073】
その後、目的地(自宅)への移動によって、現在位置が自宅付近受信可能エリアの内部に入ると、上記DAB放送の受信感度が所定値以上となる。この場合、モード制御部113”は、遅延時間算出部107および遅延処理部108に対して同期OFFモードの設定を行う(ステップS28)。そして、出力制御部109”は、アンプ11に出力する音声をIP放送からDAB放送へ切り替える(ステップS29)。この場合、切り替え後のDAB放送に関して、遅延時間算出部107および遅延処理部108の処理は行わず、
図6に示すフローチャートの処理が終了する。
【0074】
以上詳しく説明したように、第3の実施形態では、ナビゲーション装置13から目的地情報および自宅情報が取得された場合に、目的地が自宅付近受信可能エリアの外部にあるか否かを判定する。そして、目的地が自宅付近受信可能エリア外である場合は、同期ONモードを設定することによって遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を有効とする。一方、目的地が自宅付近受信可能エリア内である場合は、当該自宅付近受信可能エリア内にて受信可能なDAB放送の受信感度が所定値より大きくなった時点で同期OFFモードを設定することにより、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を無効とするようにしている。
【0075】
このように構成した第3の実施形態によれば、目的地が自宅付近受信可能エリアの外部に設定されている場合は、DAB放送を遅延させることによってDAB放送とIP放送との同期がとられる。そして、目的地への移動に伴って現在位置が自宅付近受信可能エリアの外部に実際に出ると、DAB放送の受信感度が所定値以下に悪化するため、DAB放送からIP放送への切り替えが行われる。この切り替えを行う際には、DAB放送とIP放送との同期がとれた状態で、時間差のないシームレスな切り替えを行うことができる。
【0076】
一方、目的地が自宅付近受信可能エリアの内部に設定されている場合、特に、現在位置が自宅付近受信可能エリアの外部にあって、目的地が自宅に設定されているような場合に、目的地(自宅)に向かって移動している途中で、自宅付近受信可能エリアで受信可能なDAB放送の受信感度が所定値以上になると、IP放送からDAB放送への切り替えが行われる。この切り替えの際には同期OFFモードが設定されるので、DAB放送の遅延処理(タイムストレッチ処理)が行われることはなく、出力音声のリアルタイム性を確保することができる。
【0077】
以上のように、第3の実施形態によれば、自宅付近受信可能エリアの内部では出力音声のリアルタイム性を確保しつつ、自宅付近受信可能エリアの外部ではシームレスな切り替えを行うことができる。
【0078】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、第1モードおよび第2モードの一例として、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を有効とする同期ONモードと、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能を無効とする同期OFFモードを挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能に加えて出力制御部109の機能を有効とするハイブリッドONモードを第1モード、遅延時間算出部107および遅延処理部108の機能に加えて出力制御部109の機能を無効とするハイブリッドOFFモードを第2モードとしてもよい。
【0079】
また、上記第1〜第3の実施形態では、第1の規格の放送としてDAB放送を適用し、第2の規格の放送としてIP放送を適用しているが、本発明はこれに限らない。例えば、第1の規格の放送としてFM放送を適用し、第2の規格の放送としてIP放送を適用してもよい。また、第1の規格の放送としてDAB放送を適用し、第2の規格の放送としてFM放送を適用してもよい。
【0080】
その他、上記第1〜第3の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。