(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404160
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】インターホンシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 9/00 20060101AFI20181001BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
H04M9/00 J
G08B25/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-71766(P2015-71766)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-192689(P2016-192689A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】白井 雄一郎
【審査官】
白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−130335(JP,A)
【文献】
特開平04−369799(JP,A)
【文献】
特開2006−054826(JP,A)
【文献】
特開平04−070223(JP,A)
【文献】
特開平02−188094(JP,A)
【文献】
特開2007−067598(JP,A)
【文献】
特開2015−032960(JP,A)
【文献】
特開2011−035470(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0279674(US,A1)
【文献】
特開2015−061226(JP,A)
【文献】
特開2007−288653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B23/00−31/00
H04M9/00−9/10
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼び出し/通話のためのマイク及びスピーカを備えた少なくとも1つのインターホン子機と、前記インターホン子機から呼び出しを受けて応答する機能を備えた複数のインターホン親機とが通信ネットワークを介して接続されたインターホンシステムにおいて、
前記インターホン子機は、通常呼出動作と非常呼出動作との2つの呼出動作を実施する呼出制御部を有し、
前記通常呼出動作は、所定の通常呼出操作を受けて実施され、前記複数のインターホン親機のうち少なくとも1台の特定の前記インターホン親機を呼び出す制御を実施する一方、
前記非常呼出動作は、所定の非常呼出操作を受けて実施され、最初に前記通常呼出動作を実施し、所定時間内に応答が無ければ通信可能な他の前記インターホン親機を呼び出す制御を実施することを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記インターホン子機を複数備えると共に、前記インターホン子機同士は、任意の1つのインターホン子機から他の全てのインターホン子機に対して一斉放送を可能とし、
前記呼出制御部が実施する前記非常呼出動作は、通信可能な他の前記インターホン親機の呼び出しに対して所定時間内に応答がなければ、更に通信可能な全ての前記インターホン子機に対して送話路を形成し、前記非常呼出操作が成されている前記インターホン子機からの一斉放送を可能とする制御を実施することを特徴とする請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項3】
呼び出し/通話のためのマイク及びスピーカを備えた複数のインターホン子機と、前記インターホン子機から呼び出しを受けて応答する機能を備えた複数のインターホン親機とが通信ネットワークを介して接続されたインターホンシステムにおいて、
前記インターホン子機は、通常呼出動作と非常呼出動作との2つの呼出動作を実施する呼出制御部を有すると共に、前記インターホン子機同士は、任意の1つのインターホン子機から他の全てのインターホン子機に対して一斉放送を可能とし、
前記通常呼出動作は、所定の通常呼出操作を受けて実施され、前記複数のインターホン親機のうち少なくとも1台の特定の前記インターホン親機を呼び出す制御を実施する一方、
前記非常呼出動作は、所定の非常呼出操作が成されると実施され、最初に前記通常呼出動作を実施し、所定時間内に応答が無ければ通信可能な前記インターホン子機に対して送話路を形成し、前記非常呼出操作を受けた前記インターホン子機から一斉放送を可能とする制御を実施することを特徴とするインターホンシステム。
【請求項4】
前記インターホン子機は、押下操作で通常呼出を実施する呼出ボタンを有し、前記呼出ボタンが一定時間以上継続して押下されると非常呼出操作となることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のインターホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼び出し/通話機能を備えたインターホン子機と、通話機能を備えた複数のインターホン親機とを有し、機器同士が通信ネットワークを介して接続されたインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、呼び出し/通話機能を備えたインターホン子機と、通話機能を備えた複数のインターホン親機とがLAN等の通信ネットワークを介して接続されて呼び出し/通話を可能としたインターホンシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
このような、通信ネットワークを介して接続されたインターホンシステムは、無人駅等関係者が居ない場所から離れた場所にいる関係者を呼び出すのに便利であるし、地域において不審者の通報等の防犯に活用できる。更に災害発生時には緊急通報等に活用できるため、普及が見込まれている。
このようなシステムでは、インターホン子機からの呼出操作で、同時に複数のインターホン親機を呼び出しできるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−229989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、通信ネットワークを介して機器が接続されたインターホンシステムは、災害時に有効であると考えられているが、非常時の通報/通話においては、受信側の有人拠点や拠点間のインフラ部分が切断されたり停電になると通信できない問題がある。また、相手が転送設定されていれば、不在であっても他のインターホン親機を呼び出しできるが、呼び出し先の状態や途中の通信路の状態に関わらず、呼出信号が送信できなかった場合は、そのまま呼出しイベントは終了してしまい、呼び出し側はそれ以降の対策が取れなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、呼出先に設定されているインターホン親機から応答がない場合には、通信可能な他のインターホン機器に呼出先が切り替わって通報を可能とするインターホンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、呼び出し/通話のためのマイク及びスピーカを備えた少なくとも1つのインターホン子機と、インターホン子機から呼び出しを受けて応答する機能を備えた複数のインターホン親機とが通信ネットワークを介して接続されたインターホンシステムにおいて、インターホン子機は、通常呼出動作と非常呼出動作との2つの呼出動作を実施する呼出制御部を有し、通常呼出動作は、所定の通常呼出操作を受けて実施され、複数のインターホン親機のうち少なくとも1台の特定のインターホン親機を呼び出す制御を実施する一方、非常呼出動作は、所定の非常呼出操作を受けて実施され、最初に通常呼出動作を実施し、所定時間内に応答が無ければ通信可能な他のインターホン親機を呼び出す制御を実施することを特徴とする。
この構成によれば、非常呼出操作されたら、呼び出し先に設定されたインターホン親機から応答がなければ、通信可能な他のインターホン親機に呼出先を変更して呼び出しを継続するため、断線等で呼出信号が送信出来ないインターホン親機があっても何れかのインターホン親機から応答される確率が高く、非常時の呼び出しに有効である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、インターホン子機を複数備えると共に、インターホン子機同士は、任意の1つのインターホン子機から他の全てのインターホン子機に対して一斉放送を可能とし、呼出制御部が実施する非常呼出動作は、通信可能な他のインターホン親機の呼び出しに対して所定時間内に応答がなければ、更に通信可能な全てのインターホン子機に対して送話路を形成し、非常呼出操作が成されているインターホン子機からの一斉放送を可能とする制御を実施することを特徴とする。
この構成によれば、呼出可能なインターホン親機から応答がない場合は、応答する機能を備えていない通信可能な他のインターホン子機に対して音声の報音が可能となるため、非常事態の発生等を誰かに認識させることができる。
【0008】
請求項3の発明は、呼び出し/通話のためのマイク及びスピーカを備えた複数のインターホン子機と、インターホン子機から呼び出しを受けて応答する機能を備えた複数のインターホン親機とが通信ネットワークを介して接続されたインターホンシステムにおいて、インターホン子機は、通常呼出動作と非常呼出動作との2つの呼出動作を実施する呼出制御部を有すると共に、インターホン子機同士は、任意の1つのインターホン子機から他の全てのインターホン子機に対して一斉放送を可能とし、通常呼出動作は、所定の通常呼出操作を受けて実施され、複数のインターホン親機のうち少なくとも1台の特定のインターホン親機を呼び出す制御を実施する一方、非常呼出動作は、所定の非常呼出操作が成されると実施され、最初に通常呼出動作を実施し、所定時間内に応答が無ければ通信可能なインターホン子機に対して送話路を形成し、非常呼出操作を受けたインターホン子機から一斉放送を可能とする制御を実施することを特徴とする。
この構成によれば、呼び出し先に設定されたインターホン親機から応答がない場合は、応答する機能を備えていない通信可能な他のインターホン子機に対して音声の報音が可能となるため、早い段階で非常事態の発生等を誰かに認識させることができる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、インターホン子機は、押下操作で通常呼出を実施する呼出ボタンを有し、呼出ボタンが一定時間以上継続して押下されると非常呼出操作となることを特徴とする。
この構成によれば、インターホン子機に設ける操作ボタンは1つで済み、従来のインターホン子機から大きな設計変更を必要としない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非常呼出操作されたら、呼び出し先に設定されたインターホン親機から応答がなければ、通信可能な他のインターホン親機に呼出先を変更して呼び出しを継続するため、断線等で呼出信号が送信出来ないインターホン親機があっても何れかのインターホン親機から応答される確率が高く、非常時の呼び出しに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るインターホンシステムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】非常呼び出しの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るインターホンシステムの一例を示す概略構成図であり、1は呼び出し/通話機能を備えたインターホン子機(以下、単に「子機」と称する。)、2は子機1からの呼び出しを受けて応答する機能を備えたインターホン親機(以下、単に「親機」と称する。)であり、それぞれ複数設けられて、LAN或いはインターネット等の通信ネットワークNを介して互いに接続されている。尚、ここでは子機1を3台(第1子機1a,第2子機1b,第3子機1c)、親機2を6台(第1親機2a,第2親機2b,・・・第6親機2f)備えた構成を示している。
【0013】
子機1は、呼び出しを実施する呼出ボタン11、通話するためのマイク12及びスピーカ13、音声信号のA/D・D/A変換等を実施する音声処理部14、操作者を撮像するためのカメラ15、登録された呼出先親機2を記憶する呼出先記憶部16、子機1を制御する子機CPU17、通信ネットワークNを介して親機2と通信するための子機通信IF18等を備えている。
尚、呼出ボタン11は、押し方により登録された親機2のみ呼び出す通常呼出操作と、登録されていない親機2も含めて呼び出しを実施する非常呼出操作の2つの操作を可能としている。
【0014】
親機2は、呼び出しに対する応答操作等を行う操作部21、通話するためのマイク22及びスピーカ23、音声信号のA/D・D/A変換等を実施する音声処理部24、カメラ15の撮像映像を表示する表示部25、親機2を制御する親機CPU26、通信ネットワークNを介して子機1と通信するための親機通信IF27等を備えている。
【0015】
上記の如く構成されたインターホンシステムの動作は以下の様である。
図2は非常呼出操作を行った際の動作の流れを示すフローチャートを示し、この
図2を参照してまず非常呼び出しを説明する。非常呼び出しは、呼出ボタン11が一定時間(例えば、2秒間)に亘り押下されると、子機CPU17が非常呼び出し発生と判断して非常呼出動作を実施する。ここでは、第1子機1aが非常呼出操作されたとして説明する。
【0016】
第1子機1aの呼出ボタン11が非常呼出操作されると(S1)、まず通常呼出先でもある呼出先記憶部16に記憶された親機2に呼出信号を送信する。例えば、呼出先記憶部16に第1親機2aと第2親機2bが呼出先として記憶されていれば、この2台の親機2を特定し(S2)、呼出信号が送信される(S3)。呼出信号は通信ネットワークNを介して親機2に送信される。
この呼び出しは、例えば40秒等一定時間実施され、その間応答があったら(S4でYES)、応答があった親機2と通話路が形成されて通話が成され(S5)、その後待受状態に戻る。
【0017】
しかし、何れの親機2からも応答が無く一定時間が経過したら、或いは断線や故障等で呼出信号自体が送信されずに一定時間が経過したら、IPアドレス等から通信ネットワークNに接続されて通信が可能な他の親機2を捜索し(S6)、親機2が見つかったら(S7でYES)、その親機2に対して呼出信号を送信する(S8)。ここでは、第3親機2c〜第6親機2fの4台が通信可能であると認識し、この4台の親機2に対して呼出信号が送信され、応答があったら通話(S10)が行われ、通話終了後は待受状態に戻る。
【0018】
但し、この捜索した親機2からも応答が無かった(S9でNO)り、捜索した結果呼出先が見つからなかった(S7でNO)場合は、今度はIPアドレス等から通信ネットワークNに接続されて通信が可能な子機1を捜索する(S11)。
【0019】
子機1を捜索した結果、通信可能な子機1は、第2子機1b、第3子機1cの2台の子機1であることを認識し、それらの子機1に対して一斉放送信号を送信する(S12)。一斉放送信号を受信した子機1は、子機CPU17の制御によりスピーカ13から警報音を鳴動する(S13)。一方、非常呼出操作された第1子機1aの子機CPU17は、自身のスピーカ13から放送を促すメッセージ、例えば「お話し下さい」を報音させる(S14)。
こうして、一斉放送が可能であることを認識した操作者は、通報すべきメッセージを伝えることができ、接続されている放送先の子機1からそのメッセージが拡声して報音される。尚、子機1は他の子機1から放送が行われても、応答する機能を備えてはいない。
【0020】
一方、通常呼出操作は、呼出ボタン11の上述した非常呼出操作とならない所定時間未満の押下操作により実施される。呼出ボタン11の押下継続時間が所定時間に達しなかったら、子機CPU17は呼出操作が成されたと判断して、呼出動作を開始する。呼出動作は、呼出信号を生成して呼出先記憶部16に登録されている第1親機2a及び第2親機2bに送信すると共に、カメラ15の撮像映像を合わせて送信する。
呼出信号及び映像を通信ネットワークNを介して受信した親機2は、親機CPU26がスピーカ23から呼出音を報音させ、送信された映像を表示部25に表示させる。
こうして、親機2の呼出音に気づいた応答者が操作部21を所定の通話操作すると、通話路が形成されて、呼出者と応答者との間で通話が成される。
尚、上記非常呼出動作の場合も通常呼出動作と同様に、通話時には呼出操作した子機1のカメラ15の撮像映像が送信されて、応答した親機2の表示部25に表示される。
【0021】
このように、非常呼出操作された場合は、呼び出し先に設定された親機2から応答がなければ、通信可能な他の親機2に呼出先を変更して呼び出しを継続するため、断線等で呼出信号が送信出来ない親機2があっても何れかの親機2から応答される確率が高く、非常時の呼び出しに有効である。
また、呼び出しが転送された親機2から応答がない場合、或いは転送先の親機2が見つからなかった場合は、応答する機能を備えていない通信可能な他の子機1に対して音声の報音が可能となるため、非常事態の発生等を誰かに認識させることができる。
更に、子機1の通常呼び出しを行う呼出ボタン11を、非常呼出ボタンと兼用としたため、操作ボタンは1つで済み大きな設計変更を必要としない。
【0022】
尚、上記実施形態では、非常呼出を受けて通常呼出先である登録された親機2の呼び出しを実施し、応答がなかったら通信可能な親機2を捜索して捜索した親機2の呼び出しをその次に実施するが、登録された親機2から応答が無かった段階で、次は通信可能な子機1を捜索して、放送を実施しても良い。このように動作させれば、早い段階で一斉放送が可能となるため、非常事態の発生等を早く誰かに認識させることが可能となる。
また、非常呼出ボタンと通常呼出ボタンを兼用としているが、当然独立して設けても良い。
更に、子機1は1台でも本発明を構成できるが、その場合は他の子機1に対する放送機能は無い。
【符号の説明】
【0023】
1・・インターホン子機、2・・インターホン親機、11・・呼出ボタン(通常)、12・・マイク、13・・スピーカ、16・・呼出先記憶部、17・・子機CPU(呼出制御部)、21・・操作部、N・・通信ネットワーク。