(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱接着性を有する熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂から選択され、前記ビニル系単量体が(メタ)アクリル系単量体及びスチレン系単量体から選択される請求項1に記載の熱接着性を有する光拡散性樹脂粒子。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(熱接着性を有する光拡散性樹脂粒子)
熱接着性を有する光拡散性樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子と称する)は、熱接着性を有する熱可塑性樹脂の存在下でビニル系単量体を重合させることにより得られた粒子であり、かつ熱可塑性樹脂の海に、ビニル系単量体に由来する重合体の島が分散した海島構造を有する。樹脂粒子は、熱可塑性樹脂により熱接着性を示し、海島構造により光拡散性を示す。
【0011】
(1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、熱接着性(ホットメルト性)を示し、海島構造を形成し得る樹脂であれば特に限定されない。
ここで求められる熱接着性とは、常温で固体であり、使用時に熱により溶融し、各種フィルム基材等に圧着した際に、接着力を発現するものである。
また、海島構造を形成するために、熱可塑性樹脂とビニル系単量体由来の樹脂は、相溶性が低い樹脂同士であることが好ましい。相分離状態になりやすい条件を得るためには、熱可塑性樹脂とビニル系単量体由来の樹脂の溶解度パラメーター(以下、SP値と称することもある)の差が離れていた方が、容易に相分離しやすくなる。ここでいう、SP値とは、Fedorの推算法に基づき計算されるものであり、凝集エネルギーとモル分子容を基に計算されるもの(以下、計算法と称することもある)である(「SP値 基礎・応用と計算方法」山本秀樹著、株式会社情報機構、平成17年3月31日発行)。本方法により、計算できない場合においては、溶解度パラメーターが既知の溶媒に対し溶解するか否かの判定による、実験法によりSP値を算出(以下、実験法と称することもある)し、それを代用する(「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」 ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行)。
【0014】
(但し、ΣEcohは凝集エネルギー、ΣVはモル分子溶である)にて計算して求めることができる。
上記の数式中のEcoh及びVは、主な分子中のi個の原子及び基に与えられた一定の数値を示す。また、原子又は基に対して与えられたEcoh及びVの数値の代表例を、以下の表1に示す(塗料の研究No.152 Oct. 2010 41〜46頁)。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。また、光拡散フィルムに一般的に用いられているPETフィルムへの接着特性の観点から、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂が好適であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びポリエステル系樹脂がより好適である。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、東ソー社製ウルトラセンシリーズ(品番;722、710、735、685、680、634、635等)を挙げることができ、ポリエステル系樹脂としては日本合成化学社製ポリエスターシリーズ(品番;SP185、SP180、SP−182、SP−181等)を挙げることができる。特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、ビニル系単量体への溶解性、膨潤性の観点で、酢酸ビニル由来成分の含有量が15〜45重量%のものがよく、更に20〜35重量%のものがよい。
更には、熱接着性の観点において、溶融温度が50℃〜120℃、更に好ましくは55℃〜105℃程度の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0017】
(2)ビニル系単量体
ビニル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸又はそのエステル、メタクリル酸、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル等のメタクリル酸又はそのエステルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸系単量体は、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0018】
(メタ)アクリル酸系単量体以外のビニル系単量体として、例えばスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン又はその誘導体、酢酸ビニルのようなビニル基を有するものが挙げられる。
上記ビニル系単量体は単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
ビニル系単量体に由来する重合体と熱接着性を有する熱可塑性樹脂とは、50〜90重量部と10〜50重量部の割合で含まれることが好ましい。ビニル系単量体に由来する重合体の含有量が50重量部未満の場合、樹脂粒子が示す光拡散性が十分でないことがある。含有量が90重量部より多い場合、樹脂粒子が示す熱接着性が十分でないことがある。より好ましいビニル系単量体に由来する重合体の含有量は60〜85重量部であり、更に好ましいビニル系単量体に由来する重合体の含有量は65〜83重量部である。
【0019】
(3)架橋性単量体
ビニル系単量体には、架橋性単量体が含まれていることが好ましい。架橋性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族ジビニル系単量体が挙げられる。これら架橋性単量体は2種類以上組み合わせて用いることもできる。
架橋性単量体の使用割合は、ビニル系単量体及び架橋性単量体の合計中、0.5〜30重量%であることが好ましく、1〜20重量%がより好ましい。
【0020】
(4)その他の成分
樹脂粒子は、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料、有機溶剤等を含んでいてもよい。
【0021】
(5)形状
樹脂粒子は、1〜100μmの平均粒子径を有することが好ましい。平均粒子径が1μm未満の場合及び100μmより大きい場合、十分な光拡散性を有さないことがある。より好ましい平均粒子径は1〜80μmであり、更に好ましい平均粒子径は2〜60μmである。
樹脂粒子の外形は、熱接着性及び光拡散性が低下しない限り特に限定されない。より均一な熱接着性及び光拡散性を実現する観点から、樹脂粒子の外形はできるだけ球に近いことが好ましい。
【0022】
(樹脂粒子の製造方法)
樹脂粒子は、熱接着性を有する熱可塑性樹脂を溶解又は膨潤させた状態で含むビニル系単量体を重合させることにより得ることができる。具体的には、樹脂粒子は、懸濁重合、シード重合等の公知の方法で製造できる。懸濁重合は、特に限定されず、公知の条件で熱可塑性樹脂が溶解又は膨潤したビニル系単量体を、水性媒体(例えば、水、水と低級アルコールとの混合液等)に懸濁又は乳化させて液滴とし、次いで液滴中のビニル系単量体を重合させることにより行うことができる。
重合は、重合開始剤の存在下で行ってもよい。重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、ビニル系単量体100重量部に対して、0.1〜1.0重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0023】
(1)懸濁重合
熱可塑性樹脂の溶解又は膨潤は、30〜90℃程度で行うことが好ましい。
懸濁液又は乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、ビニル系単量体を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により分散させることで得ることができる。重合開始剤は、ビニル系単量体に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、ビニル系単量体とは別に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。
重合温度は、ビニル系単量体、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択できる。重合温度は、40〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃である。重合完了後、必要に応じて樹脂粒子を遠心分離して水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥、単離できる。
【0024】
上記重合工程において、樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、界面活性剤や無機系懸濁安定剤や高分子分散安定剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、二種以上併用されてもよい。界面活性剤の添加量は、ビニル系単量体及び熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
無機系懸濁安定剤としては、シリカ、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等が挙げられる。これらの無機系懸濁安定剤の添加量は、ビニル系単量体及び熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、添加量は目的とする粒子径や条件により適宜選択できる。
高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等である。ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、ビニル系単量体及び熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
次に、ビニル系単量体を重合させることで、樹脂粒子が得られる。
【0025】
(2)シード重合
シード重合法としては、予め作製した熱可塑性樹脂の微粒子をシード粒子として使用する方法である。シード粒子は、1〜100μmの平均粒子径を有していることが好ましい。
次に、ビニル系単量体と水性媒体とから構成される分散液にシード粒子を添加する。分散液は、公知の方法により作製できる。例えば、ビニル系単量体を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により分散させることで得ることができる。重合開始剤は、ビニル系単量体に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、ビニル系単量体とは別に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた分散液中のビニル系単量体の液滴の粒子径は、シード粒子よりも小さい方が、ビニル系単量体がシード粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
【0026】
シード粒子は、分散液に直接添加してもよく、シード粒子を水性分散媒に分散させた形態(以下、シード粒子分散液という)で添加してもよい。
シード粒子の分散液への添加後、シード粒子へビニル系単量体を吸収させる。この吸収は、通常、シード粒子を含む水性エマルジョンを、室温(約20℃)で1〜12時間攪拌することで行うことができる。また、水性エマルジョンを30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
シード粒子は、ビニル系単量体及び熱可塑性樹脂の吸収により膨潤する。シード粒子の膨潤度は、ビニル系単量体と熱可塑性樹脂とシード粒子との混合比率を変えることにより調節することが可能である。ここでいう膨潤度とは、膨潤前のシード粒子に対する膨潤後のシード粒子の体積比を意味する。なお、吸収の終了は光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定できる。
【0027】
次に、シード粒子に吸収させたビニル系単量体を重合させることで、樹脂粒子が得られる。重合温度は、ビニル系単量体、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択できる。重合温度は、40〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃である。重合反応は、シード粒子にビニル系単量体及び熱可塑性樹脂が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。重合完了後、必要に応じて樹脂粒子を遠心分離して水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥、単離してもより。
【0028】
上記重合工程において、樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、界面活性剤や高分子分散安定剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、二種以上併用されてもよい。界面活性剤の添加量は、ビニル系単量体及び熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等である。これらのうち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、ビニル系単量体及び熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0029】
界面活性剤や高分子分散安定剤は、シード重合の場合、シード粒子に単量体混合物を吸収させた後で添加してもよいし、ビニル系単量体及び熱可塑性樹脂を水系媒体に分散させる時に添加してもよい。分散時の添加によって、分散時のビニル系単量体及び熱可塑性樹脂の液滴の分散安定化と重合時の樹脂粒子の分散安定化との両方を得ることができる。
【0030】
(光拡散フィルム)
本発明によれば、上記樹脂粒子とバインダーとを含む塗布組成物から得られた光拡散フィルムが提供できる。 バインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダーをいずれも使用できる。例えば、アクリル系バインダー(三菱レイヨン社製:商品名ダイヤナールLR−102、ダイヤナールBR−106)等が挙げられる。樹脂粒子は、使用する用途により適宜調整されるが、バインダー100重量部に対して、0.1〜1000重量部の範囲で使用できる。
塗布組成物には、通常分散媒体が含まれる。分散媒体としては、水性及び油性の媒体がいずれも使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられ、水性の媒体としては、水、アルコール系溶剤が挙げられる。塗布組成物には、硬化剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。先ず、実施例及び比較例中の測定方法及び評価方法について説明する。
(樹脂粒子の平均粒子径及びCV値)
平均粒子径及びCV値は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、Xμmサイズのアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。具体的には、樹脂粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させ、これを本体備え付けのISOTON II(ベックマンコールター社:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く撹拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にコールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製:測定装置)本体にアパチャーサイズXμmをセットし、Current、Gain、Polarityをアパチャーサイズに合わせた所定の条件で測定を行う。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く撹拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。体積加重の平均径(体積%モードの算術平均径:体積メジアン径)を樹脂粒子の平均粒子径(X)として算出する。
【0032】
アパチャーサイズXμmは、平均粒子径が1μm未満の樹脂粒子に対しては細孔径20μmであり、1〜10μm未満の樹脂粒子に対しては50μmであり、平均粒子径が10〜30μm未満の樹脂粒子に対しては細孔径100μmであり、平均粒子径が30〜90μm未満を超える樹脂粒子に対しては細孔径280μmであり、平均粒子径が90μmを超える樹脂粒子に対しては細孔径400μmである。
変動係数(CV値)とは、標準偏差(σ)及び上記平均粒子径(X)から以下の式により算出された値である。
CV値(%)=(σ/X)×100
【0033】
(熱接着性)
樹脂粒子をPETフィルム上に均一に散布後、更にPETフィルムを上からかぶせ、140℃のホットプレート上でPETフィルム同士を圧着させ、冷却後にフィルム同士の接着性を確認する。
【0034】
(ドメイン:島の平均径)
粒子を可視光硬化性包埋樹脂中に包埋後、ウルトラミクロトーム LEICA ULTRACUT UCT(ライカマイクロシステムズ社製)とUltra Sonic(DiATOME社製)を用いて超薄切片(厚み70nm)を作製する。次いで、超薄切片を透過型電子顕微鏡H−7600(TEM:日立ハイテクノロジーズ社製)とカメラシステムER−B(AMT社製)とを用いて写真撮影を行い、粒子の断面構造を観察する。超薄切片作製時の染色剤は四酸化ルテニウムを用いる。
【0035】
(光抜け)
樹脂粒子100重量部添加に対して、アクリル系バインダー(商品名:三菱レイヨン社製:ダイヤナールLR−102)140重量部を混合した分散溶液に、トルエンとメチルエチルケトンを1:1で混合した溶液を260重量部添加する。これを遠心攪拌機により3分間攪拌する。得られた溶液を3時間放置した後、再び遠心攪拌機により3分間攪拌する。次いで、得られた溶液をPETフィルム上に100μmコーターを用いて塗布する。得られたフィルムを70℃に保った乾燥機にて1時間乾燥することで光拡散フィルムを得る。
得られた光拡散フィルムのムラ(悪い外観)の外観評価を行い、以下の基準で評価する。
◎:目視で感知されるムラは皆無である、極めて優れた外観
○:緩やかなムラが僅かながら確認される程度の、優れた外観
△:多少、所々にムラが確認される
×:全面に細かいムラがはっきりと確認される極めて悪い外観
【0036】
(実施例1)
攪拌機及び温度計を備えた容量500mLの耐圧容器に、ビニル系単量体としてスチレン40g及びメタクリル酸ブチル37.6gと、エチレン−酢酸ビニル樹脂(東ソー社製、製品名;ウルトラセン722、溶融温度65℃、酢酸ビニル含有量28重量%)20gとを投入し、攪拌しながら70℃に加温することで、エチレン−酢酸ビニル樹脂をビニル系単量体に溶解した。なお、溶融温度は示差走査熱量測定(JIS K6924−2;1997)により測定できる。
次いで、架橋剤としての1,9−ノナンジオールジメタクリレート2.4g、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド0.4g、連鎖移動剤としてのノルマルドデシルメルカプタン(以降、nDMと記載)0.03gを上記ビニル系単量体に添加し、均一に混合させた。
次いで、予め副分解法により調製したピロリン酸マグネシウム9gを含む水300gにラウリル硫酸ナトリウム0.15g溶解した水系分散媒を上記耐圧容器に投入し、400rpmの攪拌速度にてビニル系単量体の液滴を微細化し、約20μm程度の粒径に懸濁させた。
【0037】
次に、耐圧容器を90℃に加温して攪拌しながら懸濁重合を行い、引き続いて100℃で2時間加温処理を行い、室温に冷却後に重合物を取出した。重合物に酸洗浄、水洗を繰り返した後に、風乾して平均粒子径19.1μm及びCV値39%の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子をTEMにて観察した。TEM写真(700倍)を
図1に示す。
図1から、樹脂粒子は、内部に1〜5μm程度の平均径の大きさの異なるドメインを有していることが分かった。
得られた樹脂粒子をPETフィルム上に均一に散布後、更にPETフィルムを上からかぶせ、140℃のホットプレート上でPETフィルム同士を圧着させ、冷却した。その結果、PETフィルム同士の接着を確認し、用いた樹脂粒子が熱接着特性を有することを確認した。
【0038】
(実施例2)
攪拌速度を200rpmとすること以外は実施例1と同様にして平均粒子径45.5μm及びCV値35%の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子をTEMにて観察した。TEM写真(700倍)を
図2に示す。
図2から、樹脂粒子は、内部に1〜5μm程度の平均径の大きさの異なるドメインを有していることが分かった。
得られた樹脂粒子をPETフィルム上に均一に散布後、更にPETフィルムを上からかぶせ、140℃のホットプレート上でPETフィルム同士を圧着させ、冷却した。その結果、PETフィルム同士の接着を確認し、用いた樹脂粒子が熱接着特性を有することを確認した。
【0039】
(実施例3)
スチレンを33g、メタクリル酸ブチルを30g、エチレン−酢酸ビニル樹脂を33g、1,9−ノナンジオールジメタクリレートを2g、ベンゾイルパーオキサイドを0.33g、nDMを0.06g、撹拌速度を400rpmに変更すること以外は実施例2と同様にして平均粒子径48.3μm及びCV値35%の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子をTEMにて観察したところ、樹脂粒子は、内部に1〜5μm程度の平均径の大きさの異なるドメイン(海島構造)を有していることが分かった。島部はビニル系単量体に由来し、海部はエチレン−酢酸ビニル樹脂に由来している。
得られた樹脂粒子をPETフィルム上に均一に散布後、更にPETフィルムを上からかぶせ、140℃のホットプレート上でPETフィルム同士を圧着させ、冷却した。その結果、PETフィルム同士の接着を確認し、用いた樹脂粒子が熱接着特性を有することを確認した。
【0040】
(実施例4)
ビニル系単量体としてスチレン33g、メタクリル酸ブチルを20g及びメタクリル酸メチル11gを使用し、ベンゾイルパーオキサイドを0.4g、nDMを0.03g、ラウリル硫酸ナトリウムを0.04gに変更すること以外は実施例1と同様にして平均粒子径20.1μm及びCV値35%の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子をTEMにて観察したところ、樹脂粒子は、内部に1〜3μm程度の平均径の大きさの異なるドメインを有していることが分かった。
得られた樹脂粒子をPETフィルム上に均一に散布後、更にPETフィルムを上からかぶせ、140℃のホットプレート上でPETフィルム同士を圧着させ、冷却した。その結果、PETフィルム同士の接着を確認し、用いた樹脂粒子が熱接着特性を有することを確認した。
【0041】
(実施例5)
エチレン−酢酸ビニル樹脂として東ソー社製の製品名;ウルトラセン710(溶融温度69℃、酢酸ビニル含有量28重量%)7.5gを、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル(以降、AIBNと記載)0.4gを使用し、スチレンを21g、メタクリル酸ブチルを21g、1,9−ノナンジオールジメタクリレートを1.3g、nDMを0.04g、ラウリル硫酸ナトリウムを0.04g、耐圧容器温度を65℃に変更すること以外は実施例1と同様にして平均粒子径20.7μm及びCV値37%の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子をTEMにて観察したところ、樹脂粒子は、内部に1〜5μm程度の平均径の大きさの異なるドメインを有していることが分かった。
得られた樹脂粒子をPETフィルム上に均一に散布後、更にPETフィルムを上からかぶせ、140℃のホットプレート上でPETフィルム同士を圧着させ、冷却した。その結果、PETフィルム同士の接着を確認し、用いた樹脂粒子が熱接着特性を有することを確認した。
【0042】
(実施例6)
エチレン−酢酸ビニル樹脂としての東ソー社製の製品名;ウルトラセン710の量を5g、重合開始剤としてAIBN0.4gを使用し、スチレンを22.5g、メタクリル酸ブチルを22.5g、1,9−ノナンジオールジメタクリレートを1.4g、nDMを0.04g、ラウリル硫酸ナトリウムを0.04g、耐圧容器温度を64℃に変更すること以外は実施例1と同様にして平均粒子径17.5μm及びCV値37%の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子をTEMにて観察したところ、樹脂粒子は、内部に1〜5μm程度の平均径の大きさの異なるドメインを有していることが分かった。
得られた樹脂粒子をPETフィルム上に均一に散布後、更にPETフィルムを上からかぶせ、140℃のホットプレート上でPETフィルム同士を圧着させ、冷却した。その結果、PETフィルム同士の接着を確認し、用いた樹脂粒子が熱接着特性を有することを確認した。