特許第6404175号(P6404175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404175光学フィルタ並びにそれを使用した撮像装置及び画像形成装置
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  • 特許6404175-光学フィルタ並びにそれを使用した撮像装置及び画像形成装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404175
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】光学フィルタ並びにそれを使用した撮像装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   G02B5/30
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-89026(P2015-89026)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-206468(P2016-206468A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2016年11月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594190998
【氏名又は名称】株式会社ポラテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武市 義孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 理之
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝一
(72)【発明者】
【氏名】金田 政史
(72)【発明者】
【氏名】川島 孝之
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−133308(JP,A)
【文献】 特開2007−102183(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0081264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光層と基材との積層体を含む光学フィルタであって、
前記基材の前記偏光層と積層された面と反対の面に粘着層を有し、
透過波面収差(PV値)が0.4μm未満である撮像装置用及びヘッドアップディスプレイ用光学フィルタの製造方法であって、
粘着剤の固形成分に対して5倍以下の溶剤で希釈した粘着剤を塗布した後、乾燥させることによって前記粘着層を形成することを特徴とする撮像装置用及びヘッドアップディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタ並びにそれを使用した撮像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子を用いた撮像装置及び画像形成装置において、光学系へ入射する光の反射を防止するため等に偏光フィルタ等の光学フィルタを用いる技術が知られている。光学フィルタを用いることによって、反射を抑制し、画像を鮮明に撮像することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、光学フィルタを撮像装置や画像形成装置の光の入射側に配置して用いた場合、光学フィルタの透過波面収差(PV値)が大きいと透過した光の像に歪みが生じ、撮像される画像の歪みも大きくなる問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、透過波面収差が小さく、透過した光の像の歪みを小さくした光学フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、偏光層と基材との積層体を含む光学フィルタであって、前記基材の前記偏光層と積層された面と反対の面に粘着層を有し、透過波面収差(PV値)が0.4μm未満であることを特徴とする光学フィルタ。
【0006】
また、前記粘着層は、乾燥後の膜厚が10μm以上50μm以下であることが好適である。
【0007】
また、前記粘着層は、粘着剤の固形成分に対して5倍以下の溶剤で希釈した粘着材を塗布した後、乾燥させることによって形成されたものであることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学フィルタの透過波面収差を小さくし、像の歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態における光学フィルタの構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態における光学フィルタ100は、第1基材10、偏光層12、第2基材14及び粘着層16を積層した構成とされる。なお、本実施の形態では光学フィルタ100として偏光フィルタを例に説明するが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。
【0011】
第1基材10は、光学フィルタ100の保護層となる部材である。第1基材10は、任意に選択することができるが、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アクリルフィルム、環状オレフィン系フィルム等を用いることが好適である。一例として、TacBright社製P960GL等を適用することができる。第1基材10の厚さは、これに限定されるものではないが、20μm以上100μm以下とすることが好適である。
【0012】
偏光層12は、特定の方向に偏光した光のみを透過する偏光子を含む層である。偏光層12は、任意に選択することができるが、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムをヨウ素化合物等の二色性材料により染色し、延伸処理を行うことにより形成することができる。PVAフィルムは、一例として、クラレ製VF−PS#7500等を適用することができる。PVAフィルムは、例えば、延伸前において厚さ75μmのフィルムを延伸後において30μm程度となるまで延伸する。
【0013】
第2基材14は、光学フィルタ100の保護層となる部材である。第2基材14は、任意に選択することができるが、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アクリルフィルム、環状オレフィン系フィルム等を用いることが好適である。一例として、TacBright社製P960GL等を適用することができる。第2基材14の厚さは、これに限定されるものではないが、20μm以上100μm以下とすることが好適である。
【0014】
第1基材10及び第2基材14は、偏光層12に直接又は接着剤層を介して積層される。接着剤を用いる場合、水系の接着剤、すなわち接着剤成分を水に溶解又は分散させた接着剤を用いることが好適である。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂等にイソシアネート系化合物、エポキシ化合物等を配合した接着剤成分を用いることが好適である。
【0015】
粘着層16は、光学フィルタ100を他の光学部品に貼り合わせるための設けられる層である。粘着層16は、第2基材14の偏光層12と積層された表面と反対側の裏面に形成される。粘着層16は、アクリル系の粘着剤を用いて形成することが好適である。
【0016】
粘着層16は、アクリル系又はポリエステル系の粘着剤の固形成分をトルエンやメチルエチルケトン(MEK)等の溶剤で希釈した粘着材を第2基材14の裏面に塗布し、乾燥させることによって形成される。粘着剤は、アクリル系、ポリエステル系であれば特に限定されるものではなく、さらにこれら以外の粘着剤を使用してもよい。粘着層16の膜厚は、10μm以上50μm以下とすることが好適である。
【0017】
ここで、溶剤による固形成分の希釈率は5倍以下とすることが好適である。通常、溶剤による接着剤の固形成分の希釈率は6〜8倍以上であるが、このように高い希釈率の接着材を用いた場合には、光学フィルタ100の透過波面収差(PV値)が大きくなり、また透過画像に筋状の濃淡が発生し易くなる。これに対して、溶剤による接着剤の固形成分の希釈率を5倍以下とした場合には、光学フィルタ100の透過波面収差(PV値)を小さくでき、また透過画像に生ずる筋状の濃淡を抑制できる。
【0018】
例えば、アクリル系の粘着剤の固形成分をMEKで5倍に希釈した粘着材を第2基材14に塗布し、乾燥させたときの膜厚が23μmとなるように粘着層16を形成した光学フィルタ100では透過波面収差(PV値)は0.4μm未満であった。また、当該光学フィルタ100をカメラの前に設置する偏光フィルタとして使用したときに画像の歪みが改善された。また、当該光学フィルタ100を透過した画像に生ずる筋状の濃淡が低減された。
【0019】
一方、アクリル系の粘着剤の固形成分をMEKで6〜8倍に希釈した粘着材を第2基材14に塗布し、乾燥させたときの膜厚が23μmとなるように粘着層16を形成した光学フィルタでは透過波面収差(PV値)は0.8μmであった。また、当該光学フィルタを偏光フィルタとして使用した場合、本実施の形態における光学フィルタ100に比べて画像の歪みが大きく、画像に生ずる筋状の濃淡が強く現れた。
【0020】
以上のように、本実施の形態における光学フィルタ100によれば、透過波面収差を小さくすることができ、画像の歪みや筋状のノイズを低減することができる。したがって、光学フィルタ100をセンシングカメラに使用すれば、撮像された画像が鮮明になりセンシング精度を向上させることができる。また、液晶プロジェクタやヘッドアップディスプレイ(HUD)の防塵カバーに使用すれば、表示が鮮明になり、視認性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0021】
10 基材、12 偏光層、14 基材、16 粘着層、100 光学フィルタ。
図1