(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧着端子の、底部と該底部から延びる一対の側部を有する断面略U字状のバレル部内にリード線の芯線を配置し、アンビルとクリンパにより前記バレル部の前記側部を変形させて前記バレル部を前記芯線に圧着する圧着機構を具備した圧着端子の圧着装置であって、
潤滑油を保持可能でかつ柔軟性を有する部材からなり、前記バレル部を挿入可能な間隙を隔てて当該間隙の両側に配置された潤滑油保持部材を有する潤滑油塗布部と、
前記潤滑油塗布部に前記潤滑油を供給する潤滑油供給部と、
前記圧着端子を保持する圧着端子保持部と、
前記潤滑油保持部材と、前記バレル部の前記側部の上側端部とが接触しない位置まで、前記潤滑油塗布部と前記圧着端子保持部とを相対的に移動させ、前記間隙に前記バレル部を前記底部側から挿入して前記潤滑油保持部材に保持された前記潤滑油を当該バレル部の前記側部の外側に塗布する駆動部と
を具備したことを特徴とする圧着端子の圧着装置。
圧着端子の、底部と該底部から延びる一対の側部を有する断面略U字状のバレル部内にリード線の芯線を配置し、アンビルとクリンパにより前記バレル部の前記側部を変形させて前記バレル部を前記芯線に圧着する圧着機構を具備した圧着端子の圧着装置であって、
潤滑油を保持可能でかつ柔軟性を有する部材からなり、前記バレル部を挿入可能な間隙を隔てて当該間隙の両側に配置された潤滑油保持部材を有し、かつ上側部材と下側部材とを組み合わせ、これらの間に前記潤滑油保持部材を挟持した構成とされ、かつ、前記上側部材の内側に前記潤滑油を前記潤滑油保持部材に供給するための供給路となる溝が形成されている潤滑油塗布部と、
前記潤滑油塗布部に前記潤滑油を供給する潤滑油供給部と、
前記圧着端子を保持する圧着端子保持部と、
前記潤滑油塗布部と前記圧着端子保持部とを相対的に移動させ、前記間隙に前記バレル部を前記底部側から挿入して前記潤滑油保持部材に保持された前記潤滑油を当該バレル部の前記側部の外側に塗布する駆動部と
を具備したことを特徴とする圧着端子の圧着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにクリンパの内壁面(圧着面)に潤滑油を塗布する方法では、アンビルとクリンパとの間でバレル部を押圧し、バレル部の側部を変形させる際に、バレル部の側部がクリンパの内壁面(圧着面)に沿って摺動することによって、バレル部の側部の上側端部(例えば断面形状が略U字状とされたバレル部の開放側端部)がクリンパの内壁面に付着している潤滑油を掻き取り、この掻き取られた潤滑油がバレル部の内側に入リ込んでしまうことがある。
【0006】
そして、バレル部の内側に潤滑油が入リ込んでしまうと、バレル部内に内包されたリード線の芯線に潤滑油が付着してしまう。このように、潤滑油がリード線の芯線に付着すると、付着部分において芯線に腐食が発生する可能性がある。さらに、例えば、この圧着端子をガスセンサに用いる場合、潤滑油が付着した圧着端子をガスセンサ内に組み付けた際に、潤滑油の影響、例えば潤滑油が分解して発生した分解ガスの影響等によって、ガスセンサの測定に誤差が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたものである。本発明は、圧着端子のバレル部の内側に潤滑油が入り込むことを防止することのできる圧着端子の圧着装置、複数の圧着端子の圧着装置、圧着端子の圧着方法、及び複数の圧着端子の圧着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧着端子の圧着装置は、圧着端子の、底部と該底部から延びる一対の側部を有する断面略U字状のバレル部内にリード線の芯線を配置し、アンビルとクリンパにより前記バレル部の前記側部を変形させて前記バレル部を前記芯線に圧着する圧着機構を具備した圧着端子の圧着装置であって、潤滑油を保持可能でかつ柔軟性を有する部材からなり、前記バレル部を挿入可能な間隙を隔てて当該間隙の両側に配置された潤滑油保持部材を有する潤滑油塗布部と、前記潤滑油塗布部に前記潤滑油を供給する潤滑油供給部と、前記圧着端子を保持する圧着端子保持部と、前記潤滑油塗布部と前記圧着端子保持部とを相対的に移動させ、前記間隙に前記バレル部を前記底部側から挿入して前記潤滑油保持部材に保持された前記潤滑油を当該バレル部の前記側部の外側に塗布する駆動部とを具備したことを特徴とする。
【0009】
本発明の圧着端子の圧着装置では、潤滑油塗布部を具備し、この潤滑油塗布部は、潤滑油を保持可能でかつ柔軟性を有する部材からなり、バレル部を挿入可能な間隙を隔てて当該間隙の両側に配置された潤滑油保持部材を有する。そして、駆動部により、この潤滑油保持部材の間の間隙に、圧着端子のバレル部を挿入して当該バレル部の側部の外側に潤滑油を塗布する。したがって、バレル部の側部の外側にのみ潤滑油を塗布することができ、この塗布された潤滑油によって圧着時におけるクリンパとバレル部との摩擦を低減することができる。また、クリンパの圧着面に潤滑油を塗布した場合のように、バレル部がクリンパの圧着面に沿って摺動する際に、バレル部の側部の上側端部がクリンパの内壁面に塗布された潤滑油を掻き取り、この掻き取られた潤滑油がバレル部の内側に入リ込んでしまうことが無い。
【0010】
また、本発明の圧着端子の圧着装置において、潤滑油保持部材は、多孔質の材料から構成することができる。潤滑油保持部材を多孔質の材料とすることで、潤滑油保持部材にて潤滑油を適量に保持することができると共に、潤滑油保持部材の間の間隙に、圧着端子のバレル部が挿入されてバレル部が潤滑油保持部材に接触した際に、適度に変形することができ、バレル部に潤滑油を適量、塗布することができる。
【0011】
また、本発明の圧着端子の圧着装置において、潤滑油保持部材と接続端子保持部とを相対的に移動させる際、潤滑油保持部材とバレル部の側部の上側端部とが接触しない位置まで、移動させることが好ましい。すなわち、バレル部の側部の上側端部の手前まで潤滑油を塗布し、バレル部の側部の上側端部及びその近傍には潤滑油を塗布しないことが好ましい。これによって、バレル部の側部の上側端部に潤滑油が付着し、この上側端部に付着した潤滑油がバレル部の内側に入り込むことを防止することができる。
【0012】
また、本発明の圧着端子の圧着装置において、潤滑油塗布部は、上側部材と下側部材とを組み合わせ、これらの間に潤滑油保持部材を挟持した構成とし、かつ、上側部材の内側に潤滑油を潤滑油保持部材に供給するための供給路となる溝を形成した構成とすることができる。このような構成とすることによって、簡易に潤滑油塗布部を作製することができる。また、両側の潤滑油保持部材に均等に所定量の潤滑油を供給することができ、圧着端子のバレル部の外側面に、所定量の潤滑油を塗布することができる。
【0013】
本発明の複数の圧着端子の圧着装置は、複数の圧着端子のバレル部内に複数のリード線の芯線をそれぞれ配置し、アンビルとクリンパにより、連続して前記バレル部を前記芯線に圧着する複数の圧着端子の圧着装置であって、複数の前記圧着端子のうち1つ以上おきの前記圧着端子に対して、請求項1乃至4のいずれか1項記載の圧着端子の圧着装置を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の複数の圧着端子の圧着装置は、連続してバレル部を芯線に圧着する複数の圧着端子の圧着を行う場合、潤滑油塗布部によるバレル部の外側面への潤滑油の塗布は、必ずしも全ての圧着端子に対して行う必要はなく、1つ以上おき、例えば1つおきの圧着端子にのみ潤滑油の塗布を行ってもよい。これにより、潤滑油の使用量を低減できる。
【0015】
この場合、潤滑油を塗布した圧着端子の圧着と、潤滑油を塗布していない圧着端子の圧着とが交互に行われるが、潤滑油を塗布した圧着端子を圧着した際に、バレル部からクリンパの圧着面に潤滑油が移行し、圧着面に潤滑油が多少残存するので、この圧着面に残存した潤滑油を利用して次の圧着端子の圧着を行うことができる。圧着面に残存した潤滑油を利用して次の圧着端子の圧着を行う際は、直接圧着面に潤滑油を塗布した場合等と比べて圧着面に残存している潤滑油の量が少ないため、圧着面に付着した潤滑油がバレル部の内部に入り込むことは無い。
【0016】
なお、複数配列された圧着端子に対して圧着を行う際には、潤滑油塗布部を複数、例えば2つとし、かつ、これらの潤滑油塗布部を間隔を設けて配設し、例えば4つ配列された圧着端子の1つおきの2つの圧着端子に、同時に2つの潤滑油塗布部による潤滑油の塗布を行う構成等とすることができる。
【0017】
また、本発明の圧着端子の圧着方法は、底部と該底部から延びる一対の側部を有する断面略U字状のバレル部を有する圧着端子とリード線の芯線とを圧着する圧着端子の圧着方法であって、潤滑油を保持可能でかつ柔軟性を有する部材からなり、前記バレル部を挿入可能な間隙を隔てて当該間隙の両側に配置された潤滑油保持部材を有する潤滑油塗布部と、前記圧着端子を保持する圧着端子保持部とを相対的に移動させ、前記間隙に前記バレル部を前記底部側から挿入して当該バレル部の前記側部の外側に前記潤滑油を塗布する潤滑油塗布工程と、前記側部の外側に前記潤滑油が塗布された前記圧着端子の前記バレル部内に前記リード線の前記芯線を配置し、アンビルとクリンパにより前記バレル部の前記側部を変形させて前記バレル部を前記芯線に圧着する圧着工程とを具備したことを特徴とする。
【0018】
本発明の圧着端子の圧着方法では、潤滑油を保持可能でかつ柔軟性を有する部材からなり、バレル部を挿入可能な間隙を隔てて当該間隙の両側に配置された潤滑油保持部材を有する潤滑油塗布部と、圧着端子を保持する圧着端子保持部とを相対的に移動させ、間隙にバレル部を底部側から挿入して当該バレル部の側部の外側に潤滑油を塗布する潤滑油塗布工程を行う。この後、側部の外側に潤滑油が塗布された圧着端子のバレル部内にリード線の芯線を配置し、アンビルとクリンパによりバレル部の側部を変形させてバレル部を芯線に圧着する圧着工程を行う。したがって、バレル部の側部の外側にのみ潤滑油を塗布することができ、この塗布された潤滑油によって圧着時におけるクリンパとバレル部との摩擦を低減することができる。また、クリンパの圧着面に潤滑油を塗布した場合のように、バレル部がクリンパの圧着面に沿って摺動する際に、バレル部の側部の上側端部がクリンパの内壁面に塗布された潤滑油を掻き取り、この掻き取られた潤滑油がバレル部の内側に入リ込んでしまうことが無い。
【0019】
また、本発明の圧着端子の圧着方法において、潤滑油保持部材は、多孔質の材料から構成することができる。潤滑油保持部材を多孔質の材料とすることで、潤滑油保持部材にて潤滑油を適量に保持することができると共に、潤滑油保持部材の間の間隙に、圧着端子のバレル部が挿入されてバレル部が潤滑油保持部材に接触した際に、適度に変形することができ、バレル部に潤滑油を適量、塗布することができる。
【0020】
また、本発明の圧着端子の圧着方法において、潤滑油保持部材と接続端子保持部とを相対的に移動させる際、潤滑油保持部材とバレル部の側部の上側端部とが接触しない位置まで、移動させることが好ましい。すなわち、バレル部の側部の上側端部の手前まで潤滑油を塗布し、バレル部の側部の上側端部及びその近傍には潤滑油を塗布しないことが好ましい。これによって、バレル部の側部の上側端部に潤滑油が付着し、この上側端部に付着した潤滑油がバレル部の内側に入り込むことを防止することができる。
【0021】
本発明の複数の圧着端子の圧着方法は、複数の圧着端子のバレル部内に複数のリード線の芯線をそれぞれ配置し、アンビルとクリンパにより、連続して前記バレル部を前記芯線に圧着する複数の圧着端子の圧着方法であって、複数の前記圧着端子のうち1つ以上おきの前記圧着端子に対して、請求項6乃至8のいずれか1項記載の圧着端子の圧着方法を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明の複数の圧着端子の圧着方法は、連続してバレル部を芯線に圧着する複数の圧着端子の圧着を行う場合、潤滑油塗布部によるバレル部の外側面への潤滑油の塗布は、必ずしも全ての圧着端子に対して行う必要はなく、1つ以上おき、例えば1つおきの圧着端子にのみ潤滑油の塗布を行ってもよい。これにより、潤滑油の使用量を低減できる。
【0023】
この場合、潤滑油を塗布した圧着端子の圧着と、潤滑油を塗布していない圧着端子の圧着とが交互に行われるが、潤滑油を塗布した圧着端子を圧着した際に、バレル部からクリンパの圧着面に潤滑油が移行し、圧着面に潤滑油が多少残存するので、この圧着面に残存した潤滑油を利用して次の圧着端子の圧着を行うことができる。圧着面に残存した潤滑油を利用して次の圧着端子の圧着を行う際は、直接圧着面に潤滑油を塗布した場合等と比べて圧着面に残存している潤滑油の量が少ないため、圧着面に付着した潤滑油がバレル部の内部に入り込むことは無い。
【0024】
なお、複数配列された圧着端子に対して圧着を行う際には、潤滑油塗布部を複数、例えば2つとし、かつ、これらの潤滑油塗布部を間隔を設けて配設し、例えば4つ配列された圧着端子の1つおきの2つの圧着端子に、同時に2つの潤滑油塗布部による潤滑油の塗布を行う構成等とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧着端子のバレル部の内側に潤滑油が入り込むことを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧着端子の圧着装置100の全体概略構成を示す図であり、
図2は
図1の圧着端子の圧着装置100の背面側から見た場合の全体概略構成を示す図である。
【0029】
図1、
図2に示すように、圧着端子の圧着装置100は、圧着部110と、潤滑油塗布部120と、圧着端子保持部130と、駆動部131とを具備している。
【0030】
圧着部110は、アンビル111と、クリンパ112を具備している。そして、アンビル111と、クリンパ112により、圧着端子140のバレル部141内に、リード線142の芯線143を配置した状態で、バレル部141を加締めて、圧着端子140とリード線142とを固定する。
【0031】
アンビル111は、上方に向けて突出する凸部113を具備しており、アンビル111の上方に位置するクリンパ112の下端部には、凸部113に対応して上方に向けて凹陥された凹部114が形成されている。
図6、
図7に示すように、凸部113の上側面115は凹陥されており、凹部114の内側面の天井面である圧着面116は、略M字状に湾曲している。そして、クリンパ112が下降することによって、凸部113の上側面115と、凹部114の内側面の圧着面116との間でバレル部141を押圧して変形させ、
図7に示すように、バレル部141内にリード線142の芯線143を内包した状態に固定する。
【0032】
図1、
図2に示すように、圧着部110と隣接するように、潤滑油塗布部120が配設されている。この潤滑油塗布部120は、潤滑油を保持し、圧着端子140のバレル部141に塗布するための潤滑油保持部材122を有する。潤滑油保持部材122は、潤滑油を保持可能でかつ柔軟性を有する部材からなり、バレル部141を挿入可能な間隙123を隔てて当該間隙123の両側に配置されている。
【0033】
この潤滑油保持部材122としては、多孔質の材料を好適に使用することができる。潤滑油保持部材122を多孔質の材料とすることで、潤滑油保持部材122にて潤滑油を適量に保持することができると共に、潤滑油保持部材122の間の間隙123に、圧着端子140のバレル部141が挿入されてバレル部141が潤滑油保持部材122に接触した際に、適度に変形することができ、バレル部141に潤滑油を適量、塗布することができる。多孔質の材料としては、例えば、ポリオレフィン製の連続気孔スポンジ等を使用することができ、例えば「テクノポーラス清拭材(商品名)、IWX LFH−10EP(品番)、株式会社伏見製薬所製」を好適に使用することができる。しかしながら、潤滑油保持部材122は、これに限定されるものではなく、潤滑油をその表面及び表面近傍に適量保持することができ、柔軟性を有し、毛羽立ち難い材質のものであれば、どのような材料のものを使用してもよい。
図3にも示すように、本実施形態において、潤滑油保持部材122は、円柱状とされており、この円柱状の潤滑油保持部材122を、間隔123の両側に位置するように配置している。なお、潤滑油保持部材122は、円柱状に限定されるものではなく、角柱状のものを使用してもよい。
【0034】
図1、
図2に示すように、圧着部110と潤滑油塗布部120の列に平行するように、圧着端子保持部130が配設されている。この圧着端子保持部130は、圧着端子140を、そのバレル部141が圧着部110及び潤滑油塗布部120側に向けて突出するように保持可能とされている。圧着端子保持部130は、駆動部131により、図中に矢印で示すように、圧着部110と潤滑油塗布部120の列に沿って水平方向に移動可能とされており、さらに上下動可能とされている。
【0035】
潤滑油塗布部120の上部には、潤滑油塗布部120に潤滑油を供給するための潤滑油供給部150が接続されている。この潤滑油供給部150には、潤滑油を収容した潤滑油タンク(図示せず。)等が接続されている。潤滑油供給部150は、ディスペンサポンプ等の潤滑油供給機構を具備しており、所定量ずつ潤滑油を潤滑油塗布部120に供給できるようになっている。
【0036】
潤滑油塗布部120の内部には、潤滑油供給部150から供給された潤滑油を、潤滑油保持部材122に供給するための油路が形成されている。本実施形態において、潤滑油塗布部120は、
図4に示す上側部材124と、
図5に示す下側部材125とを組み合わせて構成されている。なお
図4において、(a)は上側部材124の下側面(内側面)の構成を示し、(b)は上側部材124を先端側((a)の下側)から見た場合の構成を示している。また、
図5において、(a)は下側部材125の上側面(内側面)の構成を示し、(b)は、下側部材125の側面の構成を示している。なお、以下では、
図4(a)、
図5(a)において下側を先端側、上側を後端側として説明を行う。
【0037】
上側部材124及び下側部材125は、例えば金属等から略長方形状に構成されている。
図4(a)に示すように、上側部材124の中央付近には、潤滑油供給部150からの潤滑油を導入するための潤滑油導入口40が形成されている。
【0038】
また、上側部材124の先端部には、長手方向に沿って2つの係止溝41が形成されており、係止溝41の間には先端部から後端側に切り込まれた切込部43が形成されている。これらの係止溝41によって、夫々潤滑油保持部材122が係止され、かつ、これらの潤滑油保持部材122の間に、
図1に示した間隔123が形成されるようになっている。
図4(b)に示すように、これらの係止溝41は、円柱状の潤滑油保持部材122の形状に合わせて、半円状とされている。さらに、上側部材124には、下側部材125と組み合わせてボルト等で固定するための4つの貫通孔42が形成されている。
【0039】
潤滑油導入口40には、上側部材124の長手方向に沿って、先端側に延びる第1溝51の一端が接続されており、第1溝51の他端(先端側)には、短手方向両側に延びる第2溝52が接続されている。第2溝52の両側端部には、夫々上側部材124の長手方向に沿って先端側に延びる第3溝53の一端が接続されている。第3溝53の他端側(先端側)の端部には、夫々上側部材124の短手方向に沿って内側に延びる第4溝54の一端が接続されており、第4溝54の他端には、上側部材124の長手方向に沿って両側に延びる第5溝55が接続されている。
【0040】
そして、第5溝55の両端部に、夫々上側部材124の短手方向に沿って内側に延びる第6溝56の一端が接続されている。合計4つ配設された第6溝56の他端は開放され潤滑油吐出口57とされており、これらの合計4つの潤滑油吐出口57から潤滑油保持部材122に潤滑油が供給されるようになっている。なお、第1溝51乃至第6溝56によって形成される油路の長さは、潤滑油導入口40から潤滑油吐出口57までの長さが、4つの潤滑油吐出口57について全て同一となっている。これによって、潤滑油導入口40から導入された潤滑油を、4つの潤滑油吐出口57から夫々同量供給することができる。
【0041】
次に、
図5を参照して下側部材125について説明する。
図5(a)に示すように、下側部材125の先端部には、長手方向に沿って2つの係止溝61が形成されており、係止溝61の間には先端部から後端側に切り込まれた切込部63が形成されている。これらの係止溝61は、円柱状の潤滑油保持部材122の形状に合わせて半円状とされ、前述した上側部材124の係止溝41に対応して形成されている。そして、上側部材124と下側部材125とを組み合わせた際に、上側部材124の係止溝41と下側部材125の係止溝61とによって、潤滑油保持部材122を挟持する構成となっている。また、下側部材125には、上側部材124の貫通孔42に対応して、上側部材124と組み合わせてボルト等で固定するための4つの貫通孔62が形成されている。なお、
図5(b)に示すように、下側部材125の後端側端部は、直角に折れ曲がり下方に向けて延びる形状となっている。
【0042】
以上のように構成された上側部材124と、下側部材125とを組み合わせ、係止溝41と係止溝61との間で潤滑油保持部材122を挟持し、貫通孔42,62にボルトを挿入してナット等と螺合して固定することによって潤滑油塗布部120が構成されている。そして、潤滑油導入口40から供給された潤滑油が、第1溝51乃至第6溝56によって形成された油路を通り、4つの潤滑油吐出口57から吐出し、潤滑油保持部材122に供給される。本実施形態では、潤滑油供給部150からディスペンサポンプ等によって一度に一定量の潤滑油が供給される。この一定量の潤滑油は、第1溝51乃至第6溝56によって形成された油路を通り、1/4ずつ潤滑油吐出口57から潤滑油保持部材122に供給される。この潤滑油は、潤滑油保持部材122の表面及び表面近傍に保持されるとともに、過剰に供給された潤滑油は、そのまま滴下する。
【0043】
そして、潤滑油保持部材122に適量の潤滑油が保持された状態で、
図3に示すように、潤滑油保持部材122の間の間隙123に、圧着端子140のバレル部141が底部145から挿入され、バレル部141の側部146の外側面に、潤滑油が塗布される。この時、
図2(b)に示すように、バレル部141の側部146の上側端部144が潤滑油保持部材122と接触しない所定位置まで、間隙123にバレル部141を挿入する。
【0044】
これによって、バレル部141の側部146の上側端部144から下側の所定領域には、潤滑油が塗布されない非塗布領域Aができる。この非塗布領域Aを設けることによって、アンビル111と、クリンパ112とを用いてバレル部141の圧着を行う際に、バレル部141の内部に潤滑油が入り込むことをより確実に防止することができる。
【0045】
すなわち、仮に非塗布領域Aを設けずにバレル部141の側部146の上側端部144まで潤滑油を塗布した場合、塗布した際に潤滑油が流れてバレル部141の内部に入り込む可能性がある。また、仮に非塗布領域Aを設けずにバレル部141の側部146の上側端部144まで潤滑油を塗布した場合、圧着する際にクリンパ112によってバレル部141の外側面が押圧された際に、潤滑油が押圧されてバレル部141の内部に入り込む可能性がある。このようにしてバレル部141の内部に潤滑油が入り込むことを、上記した非塗布領域Aを設けることによって確実に防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、駆動部131によって圧着端子140を上下動させてバレル部141の外側面に潤滑油を塗布するが、潤滑油塗布部120及び潤滑油保持部材122のいずれか、または両方を上下動させてもよい。以上のようにして、潤滑油塗布部120によりバレル部141の側部146の外側面に潤滑油を塗布した後、駆動部131によって、圧着端子保持部130を圧着部110のアンビル111の前方に移動させる。そして、
図6に示すように、アンビル111の凸部113の上にバレル部141を位置させる。
【0047】
次に、バレル部141の内部にリード線142の芯線143を位置させる。このとき、
図1に示すように、アンビル111と位置合わせされたリード線配置治具118にリード線142を配置する。これにより、リード線142の芯線143を、バレル部141内に適切に配置することができる。つまり、リード線142の芯線143がバレル部141からずれて配置されることが無い。このため、リード線142の芯線143がバレル部141に引っかかり、芯線143が曲がったり、切断したりすることを防止できる。
【0048】
この状態で、クリンパ112を下降させ、凸部113の上側面115と、凹部114の内側面の圧着面116との間でバレル部141を押圧して変形させ、
図7に示すように、バレル部141内にリード線142の芯線143を内包した状態に固定する。この際、バレル部141の外側面は、クリンパ112の凹部114の内側面、特に圧着面116に沿って摺動するが、バレル部141の外側面には潤滑油が塗布されているため摩擦を低減することができる。
【0049】
また、潤滑油をクリンパ112の凹部114の内側面に塗布した場合のように、上記したバレル部141の摺動によって、その上側端部144が凹部114の内側面に付着した潤滑油を掻き取るようにして、バレル部141の内側に入り込ませることが無い。さらに、前述したとおり、バレル部141の上側端部144から下側の所定領域は、潤滑油が塗布されない非塗布領域Aとされているので、さらに確実に潤滑油がバレル部141の内側に入り込むことを防止することができる。
【0050】
上記のようにして圧着を行った後、クリンパ112を上昇させ、アンビル111の上からリード線142が固定された圧着端子140を、取り除き、図示しない搬送機構によって所定の部位まで搬送する。そして、次の圧着端子140について、同様な塗布工程と圧着工程とを繰り返して実施する。
【0051】
以上のように、実施形態の圧着端子の圧着装置100及び圧着端子の圧着方法によれば、圧着端子140のバレル部141の内側に潤滑油が入り込むことを防止することができる。これによって、リード線142の芯線143に腐食が発生することを防止することができる。さらに、例えば、この圧着端子をガスセンサに用いる場合、潤滑油が付着した圧着端子をガスセンサ内に組み付けた際に、ガスセンサ等の中に入り込んだ潤滑油によって、ガスセンサ等が悪影響を受けることを防止することができる。
【0052】
次に、複数の圧着端子の圧着装置及び複数の圧着端子の圧着方法について説明する。なお、複数の圧着端子の圧着装置の概略は
図1の圧着端子の圧着装置100と同様の構成であるため、
図1を基に説明する。
【0053】
複数の圧着端子の圧着装置及び複数の圧着端子の圧着方法は、複数の圧着端子140のバレル部141にリード線142の芯線143を連続して圧着する装置及び方法である。この際、連続して複数の圧着端子140の圧着を行う場合、潤滑油塗布部120によりバレル部141の外側面への潤滑油の塗布は、必ずしも全ての圧着端子140に対して行う必要はなく、例えば1つおき(或いは2つ以上おき)の圧着端子140にのみ潤滑油の塗布を行ってもよい。以下、具体的な方法としては、1つおきのパターンについて説明する。
【0054】
具体的には、まず1番目に圧着端子の圧着装置100に送られてきた圧着端子140は、潤滑油塗布部120の潤滑油保持部材122の間の間隙123に、バレル部141が底部145から挿入され、バレル部141の側部146の外側面に、潤滑油が塗布される。その後、駆動部131によって、圧着端子保持部130を圧着部110のアンビル111の前方に移動させ、アンビル111の凸部113の上にバレル部141を位置させる。その後、バレル部141の内部にリード線142の芯線143を位置させ、クリンパ112を下降させることで、バレル部141内にリード線142の芯線143を内包した状態に固定する。そして、クリンパ112を上昇させ、アンビル111の上からリード線142が固定された圧着端子140を、取り除き、図示しない搬送機構によって所定の部位まで搬送する。
【0055】
次に、2番目に圧着端子の圧着装置100に送られてきた圧着端子140は、駆動部131によって、直接、圧着端子保持部130を圧着部110のアンビル111の前方に移動させ、アンビル111の凸部113の上にバレル部141を位置させる。つまり、潤滑油塗布部120の潤滑油保持部材122の間の間隙123に、圧着端子140を挿入しない。その後、バレル部141の内部にリード線142の芯線143を位置させ、クリンパ112を下降させることで、バレル部141内にリード線142の芯線143を内包した状態に固定する。そして、クリンパ112を上昇させ、アンビル111の上からリード線142が固定された圧着端子140を、取り除き、図示しない搬送機構によって所定の部位まで搬送する。
【0056】
その後、3番目に圧着端子の圧着装置100に送られてきた圧着端子140は、1番目に圧着端子の圧着装置100に送られてきた圧着端子140と同様に、潤滑油塗布部120、圧着部110の順に通過させる。
【0057】
このように、潤滑油を塗布した圧着端子140の圧着と、潤滑油を塗布していない圧着端子140の圧着とが交互に行われる。このとき、潤滑油を塗布した圧着端子140を圧着した際に、バレル部141からクリンパ112の圧着面116に潤滑油が移行して多少残存するので、この圧着面116に残存した潤滑油を利用して次の圧着端子140の圧着を行うことができる。圧着面116に残存した潤滑油を利用して次の圧着端子140の圧着を行う際は、直接圧着面116に潤滑油を塗布した場合等と比べて圧着面116に残存している潤滑油の量が少ないため、圧着面116に付着した潤滑油がバレル部141の内部に入り込むことは無い。
【0058】
なお、複数配列された圧着端子140に対して圧着を行う際には、潤滑油塗布部120を複数、例えば2つとし、かつ、これらの潤滑油塗布部120を間隔を設けて配設し、例えば4つ配列された圧着端子140の1つおきの2つの圧着端子140に、同時に2つの潤滑油塗布部120による潤滑油の塗布を行う構成等とすることができる。
【0059】
以上、本発明を実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。
【0060】
例えば、
図8(a)、(b)は、圧着前の圧着端子200の一例の構成を示すもので、
図8(a)は上面の構成を示し、
図8(b)は、側面の構成を示している。この圧着端子200は、例えば自動車用のガスセンサ等に使用されるものであり、一端側(
図8中左側)にリード線142の芯線143が固定されるバレル部201が配設されている。また、他端側(
図8中右側)には、屈曲され弾性的にセラミック等から構成されたガスセンサ素子の電極に接触される接触部202が形成されている。さらに、他端側(
図8中右側)には、圧着端子200を所定位置に係止するための係止部203が形成されている。本実施形態の圧着端子の圧着装置100及び圧着端子の圧着方法は、このような構成の圧着端子200の圧着に、好適に使用することができる。
【0061】
また、潤滑油保持部材122は、上述の実施形態では、円柱形状のものを使用していたが、これに限らず、多角形状や楕円形状のものを使用してもよい。