特許第6404180号(P6404180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404180
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20181001BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61G12/00 E
   H04M9/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-107771(P2015-107771)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-220749(P2016-220749A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】楠 浩和
(72)【発明者】
【氏名】柴田 龍成
(72)【発明者】
【氏名】永田 将基
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−274416(JP,A)
【文献】 特開2007−143841(JP,A)
【文献】 特開2008−029619(JP,A)
【文献】 特開2007−268019(JP,A)
【文献】 米国特許第08203439(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベット毎に設置された呼出ボタンの操作を受けて呼出信号を送出するナースコール子機と、ナースステーションに設置されて前記呼出信号を受けて呼び出しを報知するナースコール親機と、病室入口に設置されて病室内の前記呼出ボタン操作による呼び出しを報知する廊下灯とを有するナースコールシステムにおいて、
前記廊下灯は、患者氏名を画像表示する患者名表示部と、患者の本名に加えて偽名を前記患者名表示部に表示させる廊下灯表示制御部とを有し、
前記廊下灯表示制御部は、呼び出しのない待受時には患者氏名を表示せず、呼び出しが発生した段階で呼出元の患者の偽名を表示させ、その後特定の操作が成されたら本名を表示させる一方、
前記ナースコール親機は、患者氏名一覧を表示する一覧表示部と、
患者の本名と偽名を記憶する氏名記憶部と、
患者からの呼び出しのない待受時には前記一覧表示部に偽名を表示させ、前記ナースコール親機において所定の本名表示操作が成されたら本名を表示させる親機表示制御部とを有することを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
前記廊下灯は、医療従事者が携行するIDカードからIDを読み取るカード読み取り部を有し、
前記廊下灯表示制御部は、前記患者名表示部に偽名が表示された状態で前記カード読み取り部が前記IDを読み取ったら、前記患者名表示部に本名を表示させることを特徴とする請求項1記載のナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナースコールシステムに関し、特に患者のプライバシー保護を図ったナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナースコールシステムは、ベッド毎に設置されて患者が呼出操作するナースコール子機、病室前に設置されてナースコール子機からの呼び出しが発生したことを知らせると共に患者氏名を表示した廊下灯、及びナースステーションに設置されて患者からの呼び出しを報知すると共に応答するためのナースコール親機等を備えている。
【0003】
このうち廊下灯は、見舞者等の外来者の目に触れやすい病室の入口付近に設置されているため、プライバシー保護の観点から患者氏名を表示する構成は好ましい状況ではないが、看護師等の医療従事者が病室の患者を確認するには患者氏名の表示は欠かせない。
そのため、患者氏名表示部を液晶ディスプレイで構成することで、呼び出しのない待受状態では患者氏名を表示しないよう構成された廊下灯がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−21029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した待受時に患者氏名を表示しない廊下灯は、患者のプライバシー保護に効果を奏したが、呼出発生を受けて氏名が表示されたし、所定の操作で患者情報の表示が可能であったため、呼出発生時に通りかかった人は患者氏名を認識できたし、看護師等の医療従事者でなくても表示操作を知っていれば表示させることができたため、プライバシー保護機能は十分ではなかった。
【0006】
また、ナースコール親機はナースステーションに設置されていることで、ナースコール親機にパーソナルコンピュータから成るナースコール親機(PC型親機)を使用してディスプレイに患者情報を表示しても廊下からは距離があり確認し辛かったため、患者のプライバシーを保護できた。
ところが、近年の大型ディスプレイをナースコール親機に採用した構成は、患者氏名の一覧等を大型ディスプレイに表示すると、廊下からでも患者氏名を認識することが可能となるため、この表示に対しても患者のプライバシー保護を図る必要が生じてきた。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、廊下灯或いはナースコール親機において患者氏名が表示可能であっても、十分なプライバシー保護を図ることができるナースコールシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ベット毎に設置された呼出ボタンの操作を受けて呼出信号を送出するナースコール子機と、ナースステーションに設置されて呼出信号を受けて呼び出しを報知するナースコール親機と、病室入口に設置されて病室内の呼出ボタン操作による呼び出しを報知する廊下灯とを有するナースコールシステムにおいて、廊下灯は、患者氏名を画像表示する患者名表示部と、患者の本名に加えて偽名を患者名表示部に表示させる廊下灯表示制御部とを有し、廊下灯表示制御部は、呼び出しのない待受時には患者氏名を表示せず、呼び出しが発生した段階で呼出元の患者の偽名を表示させ、その後特定の操作が成されたら本名を表示させる一方、ナースコール親機は、患者氏名一覧を表示する一覧表示部と、患者の本名と偽名を記憶する氏名記憶部と、患者からの呼び出しのない待受時には一覧表示部に偽名を表示させ、ナースコール親機において所定の本名表示操作が成されたら本名を表示させる親機表示制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、待受時の廊下灯には患者氏名が表示されないし、呼び出しを受けて表示される氏名は偽名であるため、廊下を通る見舞者等に入院患者が誰であるか認識されることがない。よって、患者のプライバシーを確保できる。
加えて、ナースコール親機の一覧表示部に表示される患者氏名も、特定の表示操作をしない限り偽名で表示されるため、表示された患者氏名等が廊下から確認可能であっても、見舞者等が患者の本名を認識することはできない。よって、患者のプライバシーを確保できる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、廊下灯は、医療従事者が携行するIDカードからIDを読み取るカード読み取り部を有し、廊下灯表示制御部は、患者名表示部に偽名が表示された状態でカード読み取り部がIDを読み取ったら、患者名表示部に本名を表示させることを特徴とする。
この構成によれば、医療従事者はIDカードを廊下灯に読み取らせれば、廊下灯に表示されている偽名が本名に切り替わるため、本人照合をスムーズに且つ確実に実施できる。しかも、本名を表示させるにはIDカードが必要であるため、外来者が本名を確認することはできない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、待受時の廊下灯には患者氏名が表示されないし、呼び出しを受けて表示される氏名は偽名であるため、廊下を通る見舞者等に入院患者が誰であるか認識されることがない。よって、患者のプライバシーを確保できる。
また、ナースコール親機の一覧表示部に表示される患者氏名も、特定の表示操作をしない限り偽名で表示されるため、表示された患者氏名等が廊下から確認可能であっても、見舞者等が患者の本名を認識することはできない。よって、患者のプライバシーを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図である。
図2】廊下灯の回路ブロック図である。
図3】ナースコール親機の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図であり、1は患者が看護師を呼び出すためにベッド毎に設置されたナースコール子機、2は病室毎に設置されて患者からの呼び出しを病室前で報知する廊下灯、3は患者からの呼び出しに看護師が応答するためにナースステーションに設置されたナースコール親機、4は機器間の通信を制御する制御装置である。但し、ここではナースコール親機3を、壁面に設置されたボード型親機3aと、パーソナルコンピュータから成り各種データを入力できるPC型親機3bと、呼び出し/通話機能を備えた卓上型親機3cとの3種類の親機で構成した場合を示している。
ナースコール子機1は病室毎に廊下灯2に接続され、廊下灯2は廊下灯幹線L1を介して制御装置4に接続されている。ナースコール親機3は伝送線L2〜L4を介して制御装置4に接続されている。
【0014】
ナースコール子機1は、押下して呼出操作する呼出ボタン1aと壁面に設置された埋込型子機1bとで構成され、埋込型子機1bには呼出ボタン接続端子11、通話するためのマイク12及びスピーカ13が設けられている。
【0015】
図2は廊下灯2の回路ブロック図を示している。図2に示すように、廊下灯2は液晶ディスプレイ(LCD)からなり、患者氏名等を画像表示する患者名表示部21、患者名表示部21の表示を制御するLCDコントローラ22、LEDの点滅により患者からの呼び出しを通知する表示灯23、看護師及び医師等の医療従事者が携行しているIDカード(図示せず)からID情報を読み取るカード読み取り部24、表示や点滅動作をリセットして待受状態に復旧させる復旧ボタン25、廊下灯2を制御する廊下灯CPU26、制御装置4と通信する廊下灯第1IF27、ナースコール子機1と通信する廊下灯第2IF28等を備えている。
【0016】
図3はボード型親機3aの回路ブロック図を示している。PC型親機3b、卓上型親機3cは従来と同様の構成であるため説明を省略し、ここではボード型親機3aを中心にナースコール親機3を説明する。図3に示すように、ボード型親機3aは患者情報一覧を表示する例えば24インチの大型の液晶ディスプレイ(LCD)からなる表示部31、表示部31の表示を制御するLCDコントローラ32、呼び出しに応答するためのハンドセット32aを備えた通話部32、タッチパネルで構成された操作部33、患者の氏名を始め看護情報等の患者情報を記憶する患者情報記憶部34、看護師や医師等の医療従事者が携行するIDカードのID情報を記憶するID情報記憶部35、ボード型親機3a全体を制御する親機CPU36、制御装置4と通信する親機IF37等を備えている。
尚、患者情報記憶部34には、患者毎に設定された偽名も記憶されている。この偽名は、操作部33の操作やPC型親機3bの操作で作成されて設定される。
【0017】
上記の如く構成されたナースコールシステムの動作は以下の様である。ここでは、廊下灯2の患者名表示とボード型親機3aの表示部31の表示動作を中心に説明する。
呼び出しのない待受時は、廊下灯2の患者名表示部21は患者氏名が表示されず、例えば花や動物のイラストが表示されている(図示せず)。またナースコール親機3の表示部31には、患者氏名一覧が病室のレイアウトに合わせて表示されている。但し、患者氏名は偽名で表示される(図示せず)。
【0018】
この状態でナースコール子機1が呼出操作されると、廊下灯2を介してナースコール親機3に呼出信号が送信される。このとき廊下灯2では、廊下灯CPU26の制御により表示灯23が点滅して呼出発生の通知動作が実施されると共に、呼出元のナースコール子機1に関連付けられている偽名がボード型親機3aの患者情報記憶部34から読み取られて、患者名表示部21に表示される。尚、複数の患者が同じ病室に入院している場合は、呼出元の患者の偽名のみ表示され、他の患者の表示は成されない。
【0019】
一方、呼出信号を受信したボード型親機3aでは呼出音が鳴動し、親機CPU36の制御により呼出元のナースコール子機1に関連づけられている偽名がポップアップで拡大表示される。この呼び出しを受けて、看護師がハンドセット32aを取り上げると、呼出元のナースコール子機1との間の通話路が形成され、患者との通話が可能となる。
この間、表示切替操作が行われない限り患者氏名は偽名の表示が継続され、本名が表示されることはないが、ボード型親機3aの操作部33の所定の操作により本名の表示に切り替わる。具体的に、ポップアップ表示された患者氏名欄をタッチ操作すると、「詳細情報」ボタンが表示され、更にこのボタンをタッチ操作或いはクリック操作することで本名を含む患者情報が表示される。
【0020】
また、待受時にボード型親機3aにおいて患者の本名を確認したい場合は、表示されている患者一覧の確認したい患者氏名をタッチ操作すれば、「詳細情報」ボタンが表示され、このボタンをタッチ操作等することで患者の本名が表示される。
尚、呼出信号を受信した卓上型親機3cも呼出音を鳴動し、ハンドセットを取り上げる等の応答操作により通話路が形成され、患者との通話が可能となる。
【0021】
更に、呼び出しを受けて処置を行うために患者の居る病室に赴いた看護師が、廊下灯2で患者の本名を確認したい場合は、看護師が携行しているIDカードが使用される。廊下灯2に設置されたカード読み取り部24にIDカードを翳すと、ID情報が読み取られる。
こうしてID情報を入手した廊下灯CPU26は、ボード型親機3aの患者情報記憶部34に記憶されているID情報と照合し、一致するIDがあったら患者情報記憶部34から偽名を表示している患者の本名と共に詳細情報を読み取って、偽名に替えて表示させる。
【0022】
尚、このとき看護師に限らず、医師或いは配膳担当者等の医療従事者のIDカードを翳しても偽名の表示に替えて患者の本名と共に詳細情報が表示される。そして、この表示は、復旧ボタン25を操作することで復旧し、患者氏名の表示や表示灯23の表示動作はリセットされて待受状態に戻る。
【0023】
このように、待受時の廊下灯2には患者氏名が表示されないし、呼び出しを受けて表示される氏名は偽名であるため、廊下を通る見舞者等に入院患者が誰であるか認識されることがない。よって、患者のプライバシーを確保できる。
また、医療従事者はIDカードを廊下灯2に読み取らせれば、廊下灯2に表示されている偽名が本名に切り替わるため、本人照合をスムーズに且つ確実に実施できる。しかも、本名を表示させるにはIDカードが必要であるため、外来者が本名を確認することはできない。
更に、ボード型親機3aの表示部31に表示される患者氏名も、特定の表示操作をしない限り偽名で表示されるため、表示された患者氏名等が廊下から確認可能であっても、見舞者等が患者の本名を認識することはできない。よって、患者のプライバシーを確保できる。
【0024】
尚、上記実施形態は、ボード型親機3aにおける待受時の患者氏名の表示は、全て偽名としたが、患者の了解が得られていれば待受時の状態から本名を表示し、偽名を希望する患者のみ偽名で表示しても良い。また、ボード型親機3aでの本名表示操作も、IDカードにより可能としても良い。
更に、廊下灯2は患者の氏名及び偽名を表示する毎にボード型親機3aから読み取っているが、廊下灯2に別途患者氏名及び偽名等を記憶する専用の記憶部を設けても良い。
【符号の説明】
【0025】
1・・ナースコール子機、2・・廊下灯、3・・ナースコール親機、3a・・ボード型親機、4・・制御装置、21・・患者名表示部、24・・カード読み取り部、26・・廊下灯CPU(廊下灯表示制御部)、31・・表示部(一覧表示部)、34・・患者情報記憶部(氏名記憶部)、35・・ID情報記憶部、36・・親機CPU(親機表示制御部)。
図1
図2
図3