特許第6404184号(P6404184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404184車両用インナ構造体及びそれを用いた車両用構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404184
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】車両用インナ構造体及びそれを用いた車両用構造体
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   B60J5/00 P
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-132818(P2015-132818)
(22)【出願日】2015年7月1日
(65)【公開番号】特開2017-13645(P2017-13645A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100146112
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100167335
【弁理士】
【氏名又は名称】武仲 宏典
(74)【代理人】
【識別番号】100164998
【弁理士】
【氏名又は名称】坂谷 亨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直人
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−099424(JP,U)
【文献】 特開2011−225014(JP,A)
【文献】 特開2004−314697(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0227193(US,A1)
【文献】 特開平04−066323(JP,A)
【文献】 特開平07−165110(JP,A)
【文献】 特開2009−286351(JP,A)
【文献】 特開平11−310036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00−5/14
F16B 5/00−5/12
F16B 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルの内面に組合せてなる車両用インナ構造体であって、
この車両用インナ構造体は、複数に分割され互いに接合されたインナパネル部品からなり、
これらのインナパネル部品は、互いにインナパネル部品の端部同士が重なる重なり部において、一方のインナパネル部品の表面から凸状に張出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられ、
前記凸状に張出したビードの裏面の凹部に嵌り込むように他方のインナパネル部品の表面から凸状に張り出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられ、
前記一方のインナパネル部品の前記ビードは、他方のインナパネル部品に重なっていない部分まで前記重なり部から連続して延出し、
前記他方のインナパネル部品の前記ビードは、一方のインナパネル部品に重なっていない部分まで前記重なり部から連続して延出していることを特徴とする車両用インナ構造体。
【請求項2】
前記一方のインナパネル部品に設けられたビードと前記他方のインナパネル部品に設けられたビードの重なる部分の前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、それぞれ曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用インナ構造体。
【請求項3】
前記曲線状の断面形状を有したビードが、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって少なくとも1つ設けられたことを特徴とする請求項2に記載の車両用インナ構造体。
【請求項4】
前記曲線状の断面形状を有したビードが、前記重なり部の長さCの方向に対して傾斜した方向に向かって少なくとも1つ設けられたことを特徴とする請求項2に記載の車両用インナ構造体。
【請求項5】
前記一方のインナパネル部品に設けられたビードと前記他方のインナパネル部品に設けられたビードには、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって稜線を少なくとも1本有することを特徴とする請求項1に記載の車両用インナ構造体。
【請求項6】
前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、1つの三角形からなることを特徴とする請求項5に記載の車両用インナ構造体。
【請求項7】
前記1つの三角形の断面形状を有したビードの前記重なり部に直交する方向から見た前記ビードの幅が、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって異なることを特徴とする請求項6に記載の車両用インナ構造体。
【請求項8】
前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、複数の三角形からなることを特徴とする請求項5に記載の車両用インナ構造体。
【請求項9】
前記複数の三角形の大きさが同じであることを特徴とする請求項8に記載の車両用インナ構造体。
【請求項10】
前記複数の三角形の大きさが異なることを特徴とする請求項8に記載の車両用インナ構造体。
【請求項11】
前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、台形からなることを特徴とする請求項5に記載の車両用インナ構造体。
【請求項12】
前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、2本の直線とこの2本の直線の端点同士を結ぶ曲線から構成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用インナ構造体。
【請求項13】
アウタパネルと、このアウタパネルの内面に組合された請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両用インナ構造体と、を有したことを特徴とする車両用構造体。











【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用インナ構造体及びそれを用いた車両用構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用インナ構造体として、成形性の点からインナパネルを任意の位置で複数の部品に分割し、プレス成形後に接合する手法が採られることが多い。例えば、ドアインナパネル部品アッパ部とドアインナパネル部品ロア部を互いの結合壁部が板厚方向に重ね合わされた状態でリベット及び接着剤により結合されることで一体化されたドアインナパネルとして構成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−56025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したインナパネルを任意の位置で複数の部品に分割し、プレス成形後に接合し一体化されたドアインナパネルには、車両の前面衝突時に、接合部に荷重が集中する。また、車両の側面衝突時には、接合部近傍に曲げ変形が生ずる。しかし、この車両用インナ構造体としてのドアインナパネルのように、車両前後方向で複数の部品に分割、接合された構造であると、その接合部に荷重が集中した場合、接合部の強度不足から接合部を起点に破断が生じる虞がある。
【0005】
発明の目的は、前面衝突および側面衝突で荷重が負荷された際、接合部への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能な車両用インナ構造体及びそれを用いた車両用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、第1発明に係る車両用インナ構造体は、
アウタパネルの内面に組合せてなる車両用インナ構造体であって、この車両用インナ構造体は、複数に分割され互いに接合されたインナパネル部品からなり、これらのインナパネル部品は、互いにインナパネル部品同士が重なる重なり部において、一方のインナパネル部品の表面から凸状に張出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられ、前記凸状に張出したビードの裏面の凹部に嵌り込むように他方のインナパネル部品の表面から凸状に張り出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられた構成であることを特徴とする車両用インナ構造体である。
【0007】
また、第2発明に係る車両用インナ構造体は、第1発明に係る車両用インナ構造体において、前記一方のインナパネル部品に設けられたビードと前記他方のインナパネル部品に設けられたビードの重なる部分の前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、それぞれ曲線状であることを特徴とする。
【0008】
また、第3発明に係る車両用インナ構造体は、第2発明に係る車両用インナ構造体において、前記曲線状の断面形状を有したビードが、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって少なくとも1つ設けられたことを特徴とする。ここで、略平行とは、数学的に言う平行および平行±5°含めてを言う(以下においても同様)。
【0009】
また、第4発明に係る車両用インナ構造体は、第2発明に係る車両用インナ構造体において、前記曲線状の断面形状を有したビードが、前記重なり部の長さCの方向に対して傾斜した方向に向かって少なくとも1つ設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、第5発明に係る車両用インナ構造体は、第1発明に係る車両用インナ構造体において、前記一方のインナパネル部品に設けられたビードと前記他方のインナパネル部品に設けられたビードには、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって稜線を少なくとも1本有することを特徴とする。
【0011】
また、第6発明に係る車両用インナ構造体は、第5発明に係る車両用インナ構造体において、前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、1つの三角形からなることを特徴とする。
【0012】
また、第7発明に係る車両用インナ構造体は、第6発明に係る車両用インナ構造体において、前記1つの三角形の断面形状を有したビードの前記重なり部に直交する方向から見た前記ビードの幅が、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって異なることを特徴とする。
【0013】
また、第8発明に係る車両用インナ構造体は、第5発明に係る車両用インナ構造体において、前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、複数の三角形からなることを特徴とする。
【0014】
また、第9発明に係る車両用インナ構造体は、第8発明に係る車両用インナ構造体において、前記複数の三角形の大きさが同じであることを特徴とする。
【0015】
また、第10発明に係る車両用インナ構造体は、第8発明に係る車両用インナ構造体において、前記複数の三角形の大きさが異なることを特徴とする。
【0016】
また、第11発明に係る車両用インナ構造体は、第5発明に係る車両用インナ構造体において、前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、台形からなることを特徴とする。
【0017】
また、第12発明に係る車両用インナ構造体は、第5発明に係る車両用インナ構造体において、前記稜線を有したビードの前記重なり部の長さCの方向に直交する断面形状は、2本の直線とこの2本の直線の端点同士を結ぶ曲線から構成されていることを特徴とする。
【0018】
また、第13発明に係る車両用構造体は、アウタパネルと、このアウタパネルの内面に組合された第1発明〜第12発明のいずれか1つの発明に係る車両用インナ構造体と、を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る車両用インナ構造体は、
アウタパネルの内面に組合せてなる車両用インナ構造体であって、この車両用インナ構造体は、複数に分割され互いに接合されたインナパネル部品からなり、これらのインナパネル部品は、互いにインナパネル部品同士が重なる重なり部において、一方のインナパネル部品の表面から凸状に張出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられ、前記凸状に張出したビードの裏面の凹部に嵌り込むように他方のインナパネル部品の表面から凸状に張り出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられた構成であるため、
前面衝突および側面衝突で荷重が負荷された際、接合部への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能な車両用インナ構造体を提供することができる。
また、本発明に係る車両用構造体は、アウタパネルと、このアウタパネルの内面に組合された前記車両用インナ構造体と、を有した構成であるため、
前面衝突および側面衝突で荷重が負荷された際、接合部への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能な車両用構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の車両用インナ構造体の実施形態1に係る、複数に分割されたサイドドアインナパネル部品を示す模式図である。
図2図1に示すサイドドアインナパネル部品のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのAA断面図、(c)はそのBB断面図である。
図3図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例1のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのDD断面図である。
図4図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例2のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのEE断面図である。
図5図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例3のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのFF断面図である。
図6図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例4のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのGG断面図である。
図7図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例5のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのHH断面図である。
図8図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例6のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのII断面図である。
図9図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例7のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのJJ断面図である。
図10図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例8のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのKK断面図である。
図11図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例9のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのLL断面図である。
図12図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例10のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのMM断面図である。
図13図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例11のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのNN断面図、(c)はそのOO断面図である。
図14図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例12のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのPP断面図である。
図15図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例13のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのQQ断面図である。
図16図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例14のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのRR断面図である。
図17図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例15のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのSS断面図である。
図18図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例16のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのTT断面図、(c)はそのUU断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、如何にすれば、前面衝突および側面衝突で荷重が負荷された際、接合部への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能な車両用インナ構造体を提供することができるのか鋭意検討した。例えば、車両用インナ構造体に係る、複数に分割されたサイドドアインナパネル部品に前面衝突および側面衝突で荷重が負荷された際、接合部への荷重集中を抑制し、破断を回避することができるのか鋭意検討した。
【0022】
その結果、サイドドアアウタパネルの内面に組合せてなる複数に分割され互いに接合されたサイドドアインナパネル部品からなり、これらのサイドドアインナパネル部品は、互いにサイドドアインナパネル部品同士が重なる重なり部において、一方のサイドドアインナパネル部品の表面から凸状に張出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられ、前記凸状に張出したビードの裏面の凹部に嵌り込むように他方のサイドドアインナパネル部品の表面から凸状に張り出したビードが前記重なり部の少なくとも一部に設けられた構成であれば、車両の前面衝突時の荷重負荷を前記両ビードでも支持することにより、接合部への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能となる。また、車両の側面衝突時の荷重負荷で接合部近傍に曲げ変形が生じた際にも、一方のインナパネル部品に設けたビードと他方のインナパネル部品に設けたビードによる剛性増加、さらに前記両ビード同士が互いに干渉することによる摩擦抵抗で、接合部への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能なことを初めて見出した。
【0023】
なお、この見出された結果は、複数に分割されたサイドドアインナパネル部品に限定されるものではなく、複数に分割されたフードインナパネル部品、ラゲージインナパネル部品等の車両用インナ構造体に広く適用可能である。
【0024】
また、上述したような一方のインナパネル部品に設けられたビードと他方のインナパネル部品に設けられたビードは、複数に分割されたインナパネル部品を一体化させる場合の位置ずれ防止用の案内としての作用効果も奏する。
【0025】
また、本発明は、アウタパネルの内面に組合せてなる複数に分割されたインナパネル部品の材質についても特定なものに限定されるものではない。例えば、鋼製のアウタパネルと鋼製の複数に分割されたインナパネル部品の組合せ、アルミニウム合金製のアウタパネルとアルミニウム合金製の複数に分割されたインナパネル部品の組合せや鋼製のアウタパネルとアルミニウム合金製の複数に分割されたインナパネル部品の組合せ等、幅広く適用可能である。しかし、アルミニウム合金は成形性が悪いため、複数に分割されたインナパネル部品にアルミニウム合金を採用する場合は、本発明の構成がとりわけ有効である。また、このアルミニウム合金としては、JISあるいはAAに規格される5000系や6000系アルミニウム合金を用いるのが好ましい。
以下、本発明について、実施形態を例示しつつ、詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は本発明の車両用インナ構造体の実施形態1に係る、複数に分割されたサイドドアインナパネル部品を示す模式図、図2図1に示すサイドドアインナパネル部品のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのAA断面図、(c)はそのBB断面図である。
【0027】
図1において、10は一体化されたサイドドアインナパネル、11、12、13、14、15は一体化されたサイドドアインナパネル10を構成する複数に分割されたサイドドアインナパネル部品であり、サイドドアインナパネル部品12、14の各左端の紙面上側にサイドドアインナパネル部品11が重ねられ接合され、サイドドアインナパネル部品12、14の各右端の紙面上側にサイドドアインナパネル部品13が重ねられ接合され、サイドドアインナパネル部品15の左右の下端の紙面上側にサイドドアインナパネル部品11、13が重ねられ接合されている。なお、JISあるいはAAに規格される5000系や6000系アルミニウム合金製のサイドドアインナパネル10は鋼製のサイドドアアウタパネル(図示せず)の内面に組合せてある。
【0028】
図2において、一方のインナパネル部品としての上側のサイドドアインナパネル部品11の表面から凸状に張出したビード16が長さCを有した重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向かって1つ設けられ、このビード16の裏面の凹部に嵌り込むように他方のインナパネル部品としての下側のサイドドアインナパネル部品12の表面から凸状に張り出したビード17が前記重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向かって1つに設けられ、サイドドアインナパネル部品12の上にサイドドアインナパネル部品11が重ねられ、3箇所の接合部20でスポット溶接されている。なお、図2(b)に示すように、ビード16とビード17の重なる部分(詳細は、図2(c)参照)の前記重なり部の長さCの方向に直交するAA断面形状は、それぞれ曲線状である。ビード16とビード17のAA断面形状が曲線状であるため、ビードの作成が容易である。なお、前記長さCは、接合部20の直径をDとすると、下記式(1)で表される範囲が適当である。
D<C≦60[mm]−−−(1)
また、上記式(1)で表される範囲は、本実施形態ばかりでなく、後記変形例1〜10にも適用される。
【0029】
このような構成を採用することにより、車両の前面衝突時の荷重負荷を両ビード16、17でも支持することになり、接合部20への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能となる。また、車両の側面衝突時の荷重負荷で接合部20近傍に曲げ変形が生じた際にも、ビード16、17がそれぞれ設けられたことにより、サイドドアインナパネル部品11、12の接合部20近傍の剛性が増加するばかりか、さらにビード16、17同士が互いに干渉することによる摩擦抵抗で、接合部20への荷重集中を抑制し、破断を回避することが可能となる。
【0030】
以下、本実施形態の変形例について、特に差異のある部分について説明する。これらは、いずれも上述した本発明のメカニズムに立脚したものである。なお、以下同一構成部分には同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0031】
(変形例1)
図3図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例1のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのDD断面図である。
【0032】
図3において、ビード16、17は、それぞれ前記重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向いており、かつ、これらのビード16、17には、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって稜線16a、17aをそれぞれ1本ずつ有する。したがって、前面衝突時および側面衝突時の荷重経路が明確になる。また、図3(b)に示すように、これらの稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部の長さCの方向に直交するDD断面形状は、1つの三角形からなる。
【0033】
(変形例2)
図4図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例2のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのEE断面図である。
【0034】
図4において、ビード16、17は、それぞれ前記重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向いており、かつ、これらのビード16、17には、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって稜線16a、17aをそれぞれ2本ずつ有する。したがって、前面衝突時および側面衝突時の荷重経路がより明確になる。また、図4(b)に示すように、これらの稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部の長さCの方向に直交するEE断面形状は、台形からなる。
【0035】
(変形例3)
図5図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例3のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのFF断面図である。
【0036】
図5において、ビード16、17は、それぞれ前記重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向いており、かつ、これらのビード16、17には、前記重なり部の長さCの方向に略平行な方向に向かって稜線16a、17aをそれぞれ3本ずつ有する。したがって、前面衝突時および側面衝突時の荷重経路がより明確になる。また、図5(b)に示すように、これらの稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部の長さCの方向に直交するFF断面形状は、2つの三角形からなり、この2つの三角形の大きさが同じである。上述した実施形態1、変形例1、変形例2、本変形例(変形例3)の順番にビード16、17同士が互いに干渉することによる摩擦抵抗が増す。したがって、接合部20への荷重集中を抑制し、破断を回避する作用効果もこの順番に高まる。
【0037】
(変形例4)
図6図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例4のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのGG断面図である。
【0038】
図6において、図5に示す変形例3と異なる点は、図6(b)に示すように、稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部の長さCの方向に直交するGG断面形状が、2つの三角形からなり、この2つの三角形の大きさが異なることである。この構成を採用したことにより、斜め方向からの衝突に対しても、より強くなる。
【0039】
(変形例5)
図7図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例5のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのHH断面図である。
【0040】
図7において、図5に示す変形例3や図6に示す変形例4と異なる点は、図7(b)に示すように、稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部の長さCの方向に直交するHH断面形状が、2本の直線とこの2本の直線の端点同士を結ぶ曲線から構成されていることである。
【0041】
(変形例6)
図8図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例6のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのII断面図である。
【0042】
図8において、図3に示す変形例1と異なる点は、図8(a)および(b)に示すように、稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部に直交する方向から見た2本の外形線が平行ではなく、前記重なり部の長さCの方向の中央部付近で幅が狭くなるように構成されていることである。
【0043】
(変形例7)
図9図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例7のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのJJ断面図である。
【0044】
図9において、図3に示す変形例1や図8に示す変形例6と異なる点は、図9(a)および(b)に示すように、稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部に直交する方向から見た2本の外形線が平行ではなく、前記重なり部の長さCの方向の中央部付近で幅が広くなるように構成されていることである。
【0045】
(変形例8)
図10図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例8のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのKK断面図である。
【0046】
図10において、図4に示す変形例2と異なる点は、ビード16、17が、それぞれ前記重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向くのではなく、前記重なり部を含み、かつ、前記重なり部に直交する方向から見た外形線(すなわち、稜線16a、17a)が円形状になるように構成されていることである。また、図10(b)に示すように、これらの稜線16a、17aを有したビード16、17の前記重なり部の長さCの方向に直交するKK断面形状は、図4(b)同様に台形からなる。
【0047】
(変形例9)
図11図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例9のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのLL断面図である。
【0048】
図11において、図2に示す実施形態1と異なる点は、サイドドアインナパネル部品11の表面から凸状に張出したビード16が長さCを有した重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向かって2つ設けられ、これらのビード16の裏面の凹部に嵌り込むように他方のインナパネル部品としての下側のサイドドアインナパネル部品12の表面から凸状に張り出したビード17が前記重なり部を含むように前記長さCの方向に略平行な方向に向かって2つ設けられるように構成されていることである。
【0049】
(変形例10)
図12図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例10のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのMM断面図である。
【0050】
図12において、図10に示す変形例8と異なる点は、ビード16、17の重なり合う部分が、前記重なり部の右側に偏って構成されていることである。
【0051】
(変形例11)
図13図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例11のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのNN断面図、(c)はそのOO断面図である。
【0052】
図13において、図2に示す実施形態1と異なる点は、サイドドアインナパネル部品12の上にサイドドアインナパネル部品11が重ねられ、6箇所の接合部20でスポット溶接されている。したがって、図13(a)に示す前記重なり部の長さCも、図2(a)に示す前記重なり部の長さCよりも長く構成され、それと連動するように、ビード16、17の重なり合う部分の長さも長くなる(図13(c)参照)。なお、前記長さCは、接合部20の直径をDとすると、下記式(2)で表される範囲が適当である。
2×D<C≦60[mm]−−−(2)
また、上記式(2)で表される範囲は、本変形例11ばかりでなく、後記変形例12〜16にも適用される。
【0053】
「接合部20の箇所の増加」および「このような接合部20の箇所の増加による前記重なり部の長さCの増加に対応してビード16、17の各剛性も増加、さらにビード16、17同士の互いの干渉による摩擦抵抗の増加」により、前面衝突および側面衝突で荷重が負荷された際、接合部への荷重集中をより抑制し、破断を回避する能力が一段と向上する。このような趣旨の作用効果は、後述する図14に示す変形例12、図15に示す変形例13、図16に示す変形例14、図17に示す変形例15および図18に示す変形例16でも発揮される。
【0054】
(変形例12)
図14図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例12のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのPP断面図である。
【0055】
図14において、図3に示す変形例1と異なる点は、図13に示す変形例11と同様に、サイドドアインナパネル部品12の上にサイドドアインナパネル部品11が重ねられ、6箇所の接合部20でスポット溶接されている。したがって、図14(a)に示す前記重なり部の長さCも、図3(a)に示す前記重なり部の長さCよりも長く構成され、それと連動するように、ビード16、17の重なり合う部分の長さも長くなる。
【0056】
(変形例13)
図15図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例13のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのQQ断面図である。
【0057】
図15において、図4に示す変形例2と異なる点は、図13に示す変形例11と同様に、サイドドアインナパネル部品12の上にサイドドアインナパネル部品11が重ねられ、6箇所の接合部20でスポット溶接されている。したがって、図15(a)に示す前記重なり部の長さCも、図4(a)に示す前記重なり部の長さCよりも長く構成され、それと連動するように、ビード16、17の重なり合う部分の長さも長くなる。
【0058】
(変形例14)
図16図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例14のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのRR断面図である。
【0059】
図16において、図5に示す変形例3と異なる点は、図13に示す変形例11と同様に、サイドドアインナパネル部品12の上にサイドドアインナパネル部品11が重ねられ、6箇所の接合部20でスポット溶接されている。したがって、図16(a)に示す前記重なり部の長さCも、図5(a)に示す前記重なり部の長さCよりも長く構成され、それと連動するように、ビード16、17の重なり合う部分の長さも長くなる。
【0060】
(変形例15)
図17図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例15のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのSS断面図である。
【0061】
図17において、図13に示す変形例11と異なる点は、ビード16、17が、前記重なり部の長さCの方向に対して傾斜した方向に向かって設けられたことである。したがって、前面衝突時および側面衝突時等における荷重伝達経路の特殊性に対しても対応可能である。
なお、本変形例15におけるビード16、17の傾斜角度をθとし、上記重なり部の長さCの方向に配置された2つの接合部20の中心間隔をaとし、上記重なり部の長さCの方向に直交する方向に配置された2つの接合部20の中心間隔をbとし、ビード16、17の上記重なり部の長さCの方向に直交する方向の幅をW1とし、接合部20の直径をDとすると、上記傾斜角度θは、概ね下記式(3)で表される範囲が適当である。
0<θ<arctan{(b−W1−D)/a}[度]−−−(3)
本変形例15においては、ビード16、17が、それぞれ1つ設けられた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数設けることも可能である。
【0062】
(変形例16)
図18図1に示すサイドドアインナパネル部品の変形例16のA部拡大図であり、(a)は拡大斜視図、(b)はそのTT断面図、(c)はそのUU断面図である。
【0063】
図18において、図13に示す変形例11と異なる点は、図12に示す変形例10と同様に、ビード16、17の重なり合う部分が、前記重なり部の右側に偏って構成されていることである。
【0064】
本実施形態およびその変形例において、サイドドアインナパネル部品11、12にそれぞれ設けられたビード16、17の幅W(すなわち、前記重なり部の長さCの方向に直交する方向の寸法)は、接合部20の直径をDとすると、0.5×D〜5×Dの範囲が好ましい。なお、上述した変形例15のように、傾斜角度θを有したビード16、17の場合は、上記W1の方向余弦(すなわち、W1×cosθ)を以って、ビード16、17の幅Wとなる。前記0.5×D〜5×Dの範囲は、複数に分割されたサイドドアインナパネル部品のそれぞれ重なり部に要求される機械的強度(特に、引張強度と曲げ強度)を考慮し、適宜用いられる。
【符号の説明】
【0065】
10 車両用インナ構造体としてのサイドドアインナパネル
11、12、13、14、15 インナパネル部品としての分割されたサイドドアインナパネル部品
16、17 ビード
16a、17a 稜線
20 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
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