(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、敗血症性ショックの進行の間の、炎症性および抗炎症性タンパク質産生の概略図である。
【
図2】
図2は、一態様における、全体に抗体を示す高度に選択的な粒子を描いた概略図である。
【
図3】
図3は、別の態様による、抗体で機能化される半相互貫入ポリマーネットワークの合成を描いた概略図である。
【
図4】
図4は、さらに別の態様における、蠕動ポンプによって駆動される実験的な体外回路の概略図である。
【
図5】
図5は、さらに別の態様における、盲腸結紮穿刺後の敗血症ラットにおける静脈−静脈体外回路の概略図である。血液は大腿静脈から排出され、頸静脈を介して戻される。チューブの全長の一部または全部は、タンパク質除去のための活性表面を含むことができる。
【
図6】
図6は、さらに別の態様における、抗体を用いて機能化されるポリマー表面の合成を描いた概略図である。
【
図7】
図7は、別の態様による、体外回路を通る生体液の循環後の、時間に対する生体液中のサイトカイン濃度のプロットの図である。VEGFは標的サイトカインである。IL−6は、非標的タンパク質である。
【0010】
詳細な説明
本発明は、一般に、血液などの生体液から、タンパク質などの物質または生体分子を標的化除去するためのシステムおよび方法に関する。いくつかのケースにおいて、血液を、対象から取り出して処理し、対象に戻すことができる。血液透析およびプラズマフェレーシスなどの、血液から生物学的材料を除去するための従来の技術は、一般に非特異的であった(すなわち、それらは血液から多くのタンパク質/毒素を除去した)。対照的に、本明細書に記載の新規な方法およびデバイスは、血液などの生体液から、タンパク質などの特定または単一の物質を、特異的な様式で除去することができる。かかる高度に特異的なタンパク質除去は、炎症状態および自己免疫疾患の処置を含む、広範囲の臨床用途を有する。
本発明は、その用途において、以下の説明に示されまたは図面に描かれた要素の構成および配置には、限定されない。本発明は他の態様でも可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書で使用される表現および用語は説明のためであり、限定的とみなされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する」、「含有する(containing)」、「含む/関与する(involving)」およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその均等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0011】
本発明のいくつかの側面は、対象の生体液から特定の物質を除去するための、体外回路の使用に関する。例えば、血液などの生体液を対象から取り出し、いくつかの方法で処理し、ついで対象に戻すことができ、すなわち、回路によって、生体液を対象に戻すことが可能となる。対象の任意の生体液が、本発明の様々な側面に適合することが理解されるべきである。いくつかの態様において、例えば、生体液は血液、脳脊髄液またはリンパ液である。
また、本明細書に記載される方法および組成物は、対象の生体液からの除去の標的とされる任意の物質に適用できることが、理解されるべきである。いくつかの態様において、例えば、物質は、薬物、タンパク質、塩、ヘモグロビン、ミオグロビン、またはホルモンである。
いくつかの非限定的な態様において、生体液から除去されるべき物質は、以下を用いて標的化される:抗体−抗原相互作用、リガンド−受容体相互作用、薬物−受容体相互作用(例えば、ジャイレースサブユニットBおよびクメルマイシンなどの抗生物質)、DNAアプタマー、金属キレート剤を含むキレート剤(例えば、鉛のD−ペニシラミン、2,3−ジメルカプトコハク酸とのキレート化、および水銀の2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸とのキレート化)、分子インプリントポリマー(MIP)(例えばアドレナリンホルモンの除去のため)、塩の除去のための塩結合剤(例えば、カラギーナン(硫酸基の可変部分を有する、1,4結合型a−D−ガラクトースおよび1,3−結合型b−D−ガラクトース)イオンによるカリウムの除去)、タンパク質とリガンドの間のキラル相互作用、合成DNA−リガンド複合体、特異的結合部位を有するタンパク質(例えば、「鍵と鍵穴」の原則)およびリガンド−細胞相互作用(例えば、葉酸−葉酸塩受容体を介して)。いくつかの態様において、生体液から除去される物質は、ヘパリンまたは薬物である。
【0012】
一定の態様において、対象の生体液から取り除かれるべき物質は、サイトカインなどの、炎症を駆動する炎症性メジエーターである。本明細書で使用される「サイトカイン」は、免疫系の細胞によって分泌され、他の細胞に影響を与えるタンパク質を指す。サイトカインのいくつかの非限定的なグループとしては、インターロイキンおよびインターフェロンが含まれる。インターロイキンのいくつかの非限定的な例としては、1−18(IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17およびIL−18)が挙げられる。IL−1は、インターロイキン−1アルファおよびインターロイキン−1ベータ(IL−1アルファおよびIL−1ベータ)を含む。IL−5はまた、好酸球分化因子(EDF)としても知られている。IL−6はまた、B細胞刺激因子2(BSF−2)およびインターフェロンベータ−2としても知られている。インターフェロンのいくつかの非限定的な例としては、IFN−アルファ(IFN−α)、IFN−ベータ(IFN−β)、IFN−オメガ(IFN−ω)およびIFN−ガンマ(IFN−γ)が含まれる。サイトカインのさらなる例には、TNF−アルファ(TNF−α)、TGF−ベータ−1(TGF−β1)、TGF−ベータ−2(TGF−β2)、TGF−ベータ−3(TGF−β3)および血管内皮増殖因子(VEGF)が含まれる。
【0013】
本発明の一定の側面は、例えばそれを必要とする対象において、多くの炎症性疾患の特徴である異常な免疫応答を改変することに関する。いくつかの態様において、対象は、炎症性および抗炎症性サイトカインの異常なバランスを有しており、標的化タンパク質除去は、1または2以上のサイトカインを標的として、対象における炎症性および抗炎症性サイトカインのバランスを変化させる。対象は、炎症性疾患または自己免疫疾患などの免疫系に影響を与える障害を有することができる。具体例は、以下でより詳細に議論される。
いくつかの態様において、炎症性疾患は、敗血症または敗血症性ショックである。敗血症は、米国における重症患者の死亡の主要な原因である。重篤な敗血症や敗血症性ショックは主要なヘルスケアの問題であり、毎年世界中で何百万人もの人々に影響を与え、その発生率は増加している。例えば、米国では毎年75万人が敗血症を発症し、そのうち21万人以上が死亡している。
【0014】
敗血症性ショックは、重度の感染に対する無制御の免疫応答によって引き起こされ得る。免疫応答はしばしば二相性であり、初めに炎症バーストが生じ、免疫抑制が続く。最初の段階は、多臓器不全、循環虚脱、および死によって特徴付けられる。第一段階を生き残った患者は、重度の免疫抑制および二次感染によって特徴付けられる代償性抗炎症反応症候群を発症する。敗血症性ショックを発症した患者の多くは、後者の段階の間に病院で二次的に得た感染症で死亡する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、敗血症性ショックを細菌の注入、リポ多糖類の投与、または盲腸結紮穿刺(CLP)により誘導した場合の「サイトカインストーム」を記述する動物実験に基づき、敗血症は、感染により誘発される、無制御の炎症性応答を表すと考えられている。サイトカイン、例えば組織壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1−ベータ(IL−1β)、IL−6、VEGF、および多くについて、それらの関連が言及されている。しかしサイトカインはまた、敗血症に有益な効果も有する。免疫応答の重要な部分であることに加えて、それらのいくつかは抗炎症特性を有する(例えば、TGF−ベータ(TGF−β)、IL−10)。
【0015】
本発明の様々な態様は、対象の血液からの特定のサイトカインの除去に関連する。いくつかの態様において、対象の血液からの除去の標的とされるサイトカインはIL−6である。IL−6は、サイトカインネットワークの活性化状態のバイオマーカーであり、いくつかのサイトカインの影響を反映することが知られている。IL−6は、免疫および炎症応答の調節に主に関与する多面的なサイトカインである。IL−6は、TおよびBリンパ球、単球/マクロファージ、線維芽細胞、血管平滑筋細胞、内皮細胞、およびさらに腎臓のメサンギウムおよび尿細管上皮細胞によって生成され得る。IL−6は、様々な効果の上方制御をもたらす多くの生物学的特性を有している;例えば、組織因子およびマトリックス分解酵素の産生、C反応性タンパク質および肝細胞におけるフィブリノーゲンの形成、また、組織壊死因子−アルファのための正のフィードバックループの一部を形成する。循環するIL−6レベルは、敗血症の患者で再現可能に検出可能であり、高い濃度が転帰不良の前兆となる。従って、本発明の一定の態様において、IL−6の除去を目的とする抗体が使用される。
いくつかの態様において、除去のために標的化されるサイトカインはVEGFである。VEGFは、脈管形成および血管新生を刺激するシグナルタンパク質である;これは、内皮細胞の透過性、増殖、遊走、および生存を刺激し、炎症および凝固に寄与することが報告されている。敗血症は、VEGFの高レベルの発現および循環レベルと関連している。敗血症患者における上昇したVEGFレベルは、低TNF−アルファ(TNF−α)の効果に対して内皮細胞を感作し得て、内皮透過性を促進し、これにより敗血症の罹患率および死亡率に寄与することが示唆されている。本発明の一定の態様において、したがって、VEGFの除去に向けられた抗体が使用された。
【0016】
したがって、本発明の一定の態様は、一般的に生体液の改質に関し、例えば、体外回路、すなわち処置のために対象を出る流体用の、および該流体を例えば連続的に対象に戻すための回路を用いた、体外血液改質に関する。いくつかのケースにおいて、血液などの生体液を対象から取り出し、抗体もしくはリガンドなどの分子に暴露し、これは、血液からタンパク質(例えばIL−1またはVEGF)もしくは他の種などの1または2以上の物質を特異的に除去するために用いることができる。例えば、血液などの生体液を、1または2以上の表面、および抗体などの適切な薬剤を含有してよい体外回路を使用して、改質することができる。例えば、抗体またはリガンドなどの1または2以上の薬剤を、粒子または回路表面に固定して、抗体がサイトカインなどの種を標的とするために使用されるシステムの、機能的構成要素となるようにすることができる。表面は、例えば重合ドーパミン、ポリ(ジメチルシロキサン)、または本明細書に記載の他のポリマーなどの、ポリマーを含んでもよい。抗体/表面システムは、他の用途のうち、例えば:(1)体外回路の表面改質のため、および/または(2)強磁性(それらを磁気感受性にする)粒子、例えば超常磁性コアを有するナノ粒子の作製のためであることができる。
【0017】
例えば、体外回路の表面改質のために、体外回路のチャンバー構成要素は、一態様において、表面および抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでもよい。別の態様において、体外回路のチャンバー構成要素は、粒子および抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでもよい。チャンバーは、対象の血液が体外循環中に通過するコンパートメントまたはスペースを含んでいてもよい。例えば、体外回路内の表面は、少なくとも抗体で被覆することができ、それによって、システムを循環する血液からサイトカインを捕捉することが可能となる。
チャンバーは、本発明の異なる態様において様々な形態をとることができるが、典型的には、少なくとも1つの表面と、抗体またはその抗原結合フラグメント、リガンド、または受容体を含んでもよい。表面は、例えば、チャンバーの壁を規定する表面、チャンバー内に含まれる内部表面、または粒子の表面であってよい。一態様において、チャンバーは、明確に定義された長方形のチャンバーであってもよい。いくつかの態様においてはしかし、チャンバーは、チューブを含むことができ、例えば、チューブの少なくとも一部は、ポリマーまたは粒子および抗体で被覆されている。いくつかの態様において、チャンバーは、マイクロ流体デバイスを含むことができ、例えば、マイクロ流体チャネルの少なくとも一部は、ポリマーまたは粒子および抗体で被覆されている。
【0018】
体外回路の非限定的な例として、一組の態様において、血液などの流体を対象(例えばヒト)から取り出し、チューブの長さを通過させ、そして対象に戻す。チューブは表面を、血液からのタンパク質(または本明細書で論じる他の種)などの1または2以上の物質を抽出することができる表面を規定するチューブの一部として、含んでもよい。例えば、チューブの少なくとも一部は、本明細書で説明するように、少なくとも部分的に抗体で被覆された表面を含んでもよい。例えば、チューブの内側表面の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%が被覆されていてもよい。流体がチューブを通過すると、表面上の抗体(または抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはリガンドまたは受容体など)の少なくともいくつかは、血液からタンパク質(または本明細書で論じる他の種)などの1または2以上の物質を、例えばタンパク質の結合を介して、抽出することが可能である。
【0019】
いくつかの態様において、チャンバーまたはチューブは、表面および抗体またはその抗原結合フラグメント、リガンド、または受容体を担持する担体を、含むか含有する。担体は、例えば、ポリマー、セラミック、金属、および/または他の材料を含む、例えば固体粒子を含んでもよい。担体は任意の好適な形状、例えば粒子、繊維、リボンなどの形状を有してよい。担体は比較的不活性であってもよく、例えば担体は、チャンバー内の表面積を増加させるために使用される。担体は、チャンバー内に収容されてもよく、および/またはチャンバー内の表面に付着させてもよい。いくつかの態様において、チャンバーの表面積を増加して、表面の量および抗体の暴露を増加させることができ、これは例えば、チャンバー内への担体、バッフル、プレート、グリル、粒子、または他の適切な表面の組み込みなどにより実行される。いくつかの態様において、血液などの生体液は、対象から取り出され、表面との相互作用を介して改質され、ついで生体液の少なくとも一部は、対象に再導入される。
【0020】
しかし、別の組の態様において、抗体を含む粒子を対象に注入することができ、対象内の1または2以上のタンパク質または種に結合させ、次に除去して、これによりタンパク質(例えばIL−6またはVEGF)または他の種の、血液からの、例えば体外回路を介しての除去をもたらすことができる。例えば、一組の態様は一般に、対象の血液内にあることが疑われるタンパク質に選択的に結合する表面および抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、ナノ粒子などの磁気感受性粒子に関する。いくつかの態様において、磁気感受性粒子を対象に注入し、循環させる。タンパク質(または他の種)に結合するのに十分な時間の後、磁気感受性粒子は、対象から除去される。例えば、対象からの血液は、粒子(現在タンパク質または他の種に結合している)が体外回路を循環する血液から抽出されるような様式で、磁化された体外回路を介して取り出すことができる。いくつかの態様において、粒子は、生分解性および/または生体適合性である。いくつかの態様において、粒子は、約12時間まで、または約24時間まで、対象の生体液中を循環することを許容される。
【0021】
強磁性粒子などの磁気感受性粒子は、いくつかのケースにおいて、血液の他の要素よりも大きい密度を有するように選択することができる。したがって、いくつかの態様においてこれらの粒子は、遠心分離、磁化、またはこれらおよび/または他の技術の組み合わせによって、血液から除去される。一定の態様において、血液のアリコートを対象から取り出し、除去のために所望の生成物への最適な結合を可能にする条件下で、強磁性粒子の所定量と混合する。粒子:血液成分複合体が形成されると、例えば、試料を遠心分離および/または磁化して、標的血液成分を除去することができる。
上述の体外回路は、タンパク質または他の種を生体液から除去するために単独で用いることができ、または体外回路は、他のシステムおよび/または方法と組み合わせて使用することができる。例えば、いくつかの態様において、ポリマーまたは粒子および抗体は、炎症反応を防止(または少なくとも制御)するために、心臓手術中の心肺バイパス回路に組み込まれる。
【0022】
ポリマー/基材
本発明のいくつかの側面において、ポリマーを含む表面は、本明細書で説明するように基材の表面である。基材は、タンパク質(または他の種)などの特定の物質を、血液などの流体から抽出するのに使用することができる。いくつかのケースにおいて、基材は、ポリマーから形成されるか、またはこれを含むことができる。他のケースにおいて、基材は、ポリマーを上に被覆した材料から形成することができる。いくつかのケースにおいて、基材は、ミクロゲル粒子などの粒子として存在してもよい。本発明の一定の態様に適合する基材およびポリマーの非限定的な例は、2012年2月22日に出願されたPCT出願PCT/US2012/026008、およびMizrahi et al. (2011) Advanced Materials 23:H258-H262にさらに記載されており、これらは参照により組み込まれる。
基材は、任意の適切な形状を有してもよい。例えば基材は、粒子として、平面基材等として形成することができる。一組の態様において、基材は、ポリマーである。例えば、基材は、後述するように、例えばアクリルアミドと好適な金属キレート部分の重合を介して形成された、ポリ(アクリルアミド)などのポリマーを含んでよい。例えば、過硫酸アンモニウム、メチレンビスアクリルアミド、および/またはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(「TEMED」)への暴露により、アクリルアミドを重合してポリ(アクリルアミド)を形成することができる。いくつかのケースにおいて、重合は、エマルション内で発生して、例えば粒子を形成することができる。例えば、エマルジョンは、連続相(例えば有機または「油」環境)中に含まれる離散液滴(例えば水性環境中)内にモノマーが存在するところにおいて形成されることができ、重合が離散液滴内で誘発されて、ポリマー粒子を形成する。
【0023】
基材に用いることができる好適なポリマーのその他の例としては、限定されないが、例えばポリ(アクリルアミド)に加えておよび/またはこれの代わりに、ポリ(スチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、アガロースなどが挙げられる。さらに他の例としては、ポリエチレン、ポリスチレン、シリコーン、ポリフルオロエチレン、ポリアクリル酸、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフタルアミド、ポリフェニレン硫化物、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、および/またはポリプロピレンが挙げられる。これらのポリマーを用いて形成されたポリマー粒子または他の基材は、当業者に周知の技術を用いて形成することができる。
基材は、任意の適切な形状を有してもよい。例えば、基材は、粒子として、またはチャンバーもしくはチューブの表面として、存在することができる。いくつかの態様において、基材は、比較的大きい表面積を有することができる。例えば、付着した抗体またはその抗原結合フラグメント(またはリガンドまたは受容体など)を有する基材は、抗体等の付着表面積として少なくとも約0.01m
2、少なくとも約0.02m
2、少なくとも約0.03m
2、少なくとも約0.05m
2、少なくとも約0.1m
2、少なくとも約0.2m
2、少なくとも約0.3m
2、少なくとも約0.5m
2、少なくとも約1m
2、少なくとも約2m
2、少なくとも約3m
2、少なくとも約5m
2、または少なくとも約10m
2を有してよい。別の組の態様において、基材は、平均表面積として少なくとも約5m
2/g、少なくとも約7m
2/g、または少なくとも約10m
2/gを有してよい。いくつかの態様において、基材は、平均細孔容積として少なくとも約0.005cm
3/g、少なくとも約0.01cm
3/g、または少なくとも約0.02cm
3/gを有してよい。
【0024】
上述したように、基材は、1または2以上の粒子の形態をとることができる。いくつかのケースにおいて、粒子は、マイクロ粒子および/またはナノ粒子を含むことができる。「マイクロ粒子」は、マイクロメートルのオーダー(すなわち約1μmから約1mmの間)の平均直径を有する粒子であり、「ナノ粒子」は、ナノメートルのオーダー(すなわち約1nmから約1μmの間)の平均直径を有する粒子である。さらなる例として、粒子は、平均直径として、約5mmまたは2mm未満、または約1mm未満、または約500μm未満、約200μm未満、約100μm未満、約80μm未満、約60μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約30μm未満、約25μm未満、約10μm未満、約3μm未満、約1μm未満、約300nm未満、約100nm未満、約30nm未満、または約10nm未満を有してよい。いくつかの態様において、粒子は、少なくとも約1μmまたは少なくとも約10μmの平均直径を有してよい。また、粒子は球状または非球状であってもよい。粒子が非球状の場合、粒子は、例えば楕円体、立方体、繊維、チューブ、ロッド、または不規則な形状を有してよい。非球状粒子の平均直径は、非球状粒子と同一体積を有する完全な球体の直径である。
【0025】
一定の態様において、基材は、ゲルであってもよい。ゲルの非限定的な例としては、ポリ(アクリルアミド)ゲルまたはアガロースゲル、または本明細書に記載の他のゲル材料を含む。基材が粒子である場合、基材はミクロゲル粒子またはゲルマイクロ粒子の形状をとることができる。いくつかの態様において、ゲル粒子は、一緒に収集されてゲル材料または「ミクロゲル」を形成してもよい。ゲルは、典型的には、比較的固体またはゼリー状であり、その構造を形成するために架橋されたポリマーを含んでよい。いくつかのケースにおいて、ゲルはヒドロゲル、例えば水を含有するゲルであってよい。
本発明の一定の態様において、基材は多孔質であってよい。いくつかの態様において、基材は、比較的大きい表面積を有することができ、例えば平均表面積として少なくとも約5m
2/g、少なくとも約7m
2/g、または少なくとも約10m
2/gを有する。いくつかの態様において、基材は、平均細孔容積として少なくとも約0.005cm
3/g、少なくとも約0.01cm
3/g、または少なくとも約0.02cm
3/gを有してよい。別の態様において、基材は、平均細孔幅として少なくとも約5nm、少なくとも約7nm、または少なくとも約8nmを有してよい。かかる多孔性(porosity)と寸法は、例えば、TEM、SEM、BETなどの、当業者に周知の技術を用いて決定することができる。多孔性は、ポリマーの性質(例えば、本明細書に記載のものなどの特定のゲルは、典型的には比較的多孔質構造を形成する)により作ることができ、または多孔性は、基材に除去可能な他の材料を添加することによって誘導し、これにより基材内に多孔性を作ることができる。例えば、続いて溶解することができる塩または他の種などを、基材内に組み込むことができる。
【0026】
一組の態様において、基材は、例えば本明細書に記載の寸法を有する1または2以上の磁気感受性粒子の形状を取る。いくつかのケースにおいて、磁気感受性粒子は、磁気感受性である少なくとも1種の材料を含んで、例えば粒子を好適な磁場を用いて操作できるようにする。例えば、粒子は、強磁性材料または超常磁性材料、例えば鉄、コバルト、ニッケル等を含むことができる。いくつかのケースにおいて、粒子の磁気感受性部分は、本明細書に記載のように、ポリマーおよび/または抗体で被覆された粒子のコアである。
様々な態様において、ポリマーは、相互貫入または半相互貫入ポリマー、例えばネットワーク全体でポリマーサブユニットに取り付けられた抗体を有する半相互貫入ポリマーネットワークであってもよい。「相互貫入ポリマーネットワーク」または「IPN」は、典型的には、2または3以上のポリマー(これにはコポリマーを含む)の2または3以上のネットワークを含むポリマー材料を含み、これの少なくとも2つの異なるポリマーは、少なくとも部分的に、分子スケールで互いに交錯(interlaced)しているが、しかし互いに共有結合はしていない。これらのポリマーネットワークは、1または2以上の共有結合が破壊されない限り、理論的にも分離することができない。したがって、2または3以上の予め形成されたポリマーの混合物(例えば、混合物中またはブレンド中のように)は、相互貫入ポリマーネットワークではない。相互貫入ネットワークの具体的非限定的な例は、以下を含む:[ネット−ポリ(スチレン−stat−ブタジエン)]−ipn−[ネット−ポリ(エチルアクリレート)、ポリHEMA−ipn−ポリウレタン、またはポリHEMA−ipn−ポリシロキサン、ここで、「ポリHEMA」は、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)である]。
【0027】
当業者は、適切な技術を用いてIPNを調製することができ、これは例えば以下の技術である:設定された条件下で反応して、互いに共有結合しない2または3以上の異なる相互貫入ポリマーを形成する能力を有する、異なるポリマー前駆体を混合することにより;第1のポリマーを形成し、第2のポリマーの前駆体を相互貫入する様式で第1のポリマー中に拡散させて、これを反応させ、第1および第2ポリマーの間の結合を促進しない条件下で第2ポリマーを形成することにより;モノマーの2または3以上の異なるファミリーであって、各々が異なるメカニズムを介して重合可能である(例えば、ラジカル反応および縮合反応)が、しかし互いには反応することができないものを混合し、続いてまたは同時に該モノマーを、熱および/またはUV光を用いて重合させることにより;2または3以上の直鎖状または分岐ポリマーを、ペンダント反応基を有する少なくとも1つのポリマーとブレンドし、続いて鎖延長剤を添加して、各ポリマーを別々のネットワークに架橋することにより;および/または、第1ポリマーネットワークを部分的に重合して高膨潤性を可能にすること、および/または第2のポリマー前駆体を容易に拡散させ、第2のポリマー前駆体が第1ポリマーネットワークを貫通することを可能として、その後両方のポリマーネットワークを重合することを含む、多段階重合プロセスを進める、などによる。
【0028】
「半相互貫入ポリマーネットワーク」または「SIPN」は、一般的に、少なくとも1つのポリマーネットワーク(これは1または2以上のコポリマーを含んでよい)と1または2以上の直鎖状または分岐ポリマーの組み合わせを含むポリマー材料を含み、分子のスケールにおいて、少なくとも幾つかの直鎖状または分岐巨大分子による、ネットワークの少なくとも1つの貫入を特徴とする。半相互貫入ポリマーネットワークはまた、相互貫入ポリマーネットワークと同様にも定義できるが、ただし、構成成分の直鎖状または分岐ポリマー(単数または複数)が、いかなる共有結合を破壊することなく、ポリマーネットワーク(単数または複数)から(少なくとも理論的には)分離可能であるところが異なる。しかしながら、かかる分離には、ポリマーネットワークからの直鎖状または分岐ポリマー(単数または複数)の「解きはずし(unthreading)」が必要であり、これは多くのかかる系においては不可能である。半相互貫入ネットワークの特定の非限定的な例は、(ネット−ポリスチレン)−sipn−ポリ(塩化ビニル)である。
さらなる例として、相互貫入および/または半相互貫入ポリマーネットワークはまた、ポリエチレン(例えばテトラフルオロエチレン)とシリコーンポリマー、またはアクリレート(例えば、メチルメタクリレート)とウレタンおよび/または尿素との組み合わせから、形成することができる。当業者は、既知の技術によりSIPNを形成することができ、例えば、以下による:相互貫入ネットワークに関連して上述されたものなど技術を用いて;または直鎖状または分岐ポリマーの溶液をポリマーネットワーク中に拡散させることにより;2または3以上の直鎖状または分岐ポリマーネットワークを、ペンダント反応基を有する少なくとも1つのポリマーとブレンドし、続いて鎖延長剤を添加してポリマーネットワークの1つを架橋することにより;第1ポリマーネットワークを部分的に重合して高膨潤性を可能にすること、および/または第2のポリマー前駆体をその中に容易に拡散させ、その後第1ポリマーネットワークを重合することを含む、多段階重合プロセスを進める、など。
【0029】
本発明の材料は、半相互貫入成分(単数または複数)を含む相互貫入ネットワークを含むことができることを理解すべきであり;例えば、本発明の材料は、相互貫入する2つのポリマーのネットワーク、および、1つまたは両方の相互貫入ネットワークに関して半相互貫入する、第3のものを含むことができる(および、任意数の追加の相互貫入または半相互貫入成分を含むことができる)。相互貫入ネットワークは、1または2以上の半相互貫入成分を含むことができる。
当業者は、相互貫入および/または半相互貫入ポリマーネットワークを同定および/または決定するための、好適な技術を知っている。相互貫入および/または半相互貫入ポリマーネットワークからのポリマーの同定および/または決定のための、特徴付けの技術の例としては、マクロドメインに分離するポリマーまたはポリマーブレンドとは対照的に、ミクロドメインの観察を可能とする技術を含む。かかる技術の例としては、限定はされないが、以下を含む:示差走査熱量測定(DSC)、これは、複数のガラス転移温度の同定および/または決定を可能とする(すなわち、相互貫入および/または半相互貫入ポリマーネットワークにおいて、ネットワークを含むポリマーの各々は異なるガラス転移温度を有し得る);透過電子顕微鏡(TEM)、これは、相互貫入および/または半相互貫入ポリマーネットワークのミクロドメインの微視的な同定を可能にする;
13Cまたは
29SiのCP−MAS個体NMR、これは、架橋点を有するポリマーにおける相互貫入および/または半相互貫入ネットワークの、架橋点の可視化を許容する;中性子小角散乱(SANS)技術、これは、試料中のドメインの可視化を許容する;動的機械分析(DMA)、これは、相互貫入および/または半相互貫入ポリマーネットワーク内の各ポリマーのモジュラスの決定を許容する;など。
【0030】
本発明の一定の態様に関連する抗体および抗原結合フラグメントは複合体化することができ、あるいは当技術分野で知られた任意の方法に従ってポリマー系に関連付けることができることを理解すべきである。いくつかの態様において、ポリマー系は、プラズマ酸化または酸酸化などにより、表面酸化を介して活性化される。活性化されたポリマー系は、いくつかのケースにおいて、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)またはアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)などのアミノシランにより、アミノ化されてもよい。いくつかの態様において、抗体は、ヒスチジンリンカーにより重合ドーパミンに付着されている。いくつかの態様において、ヒスチジンリンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16以上のヒスチジンである。一定の態様において、ヒスチジンリンカーは、6〜8個のヒスチジンから形成される。いくつかの態様において、抗体は、APTMS−PEG−マレイミドリンカーによりポリマー系に付着されている。商業的に入手可能であり、当技術分野で知られている架橋剤の適切な種類の他の例としては、限定はされないが、ハロアセチルおよびピリジルジチオールが挙げられる。いくつかの態様において、抗体は、N−スクシンイミジルアクリレート(NSA)と、またはフラン官能基と結合することにより、化学的に修飾される(例えばディールス−アルダー反応のため)。いくつかの態様において、共重合は、修飾された抗体をアクリルアミド、水性過硫酸アンモニウムおよびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)と組み合わせることにより達成される。
【0031】
体外回路のチャンバー構成要素の表面などの表面を、本発明の一定の側面に関連するポリマーおよび/またはヒドロゲルにより、当分野に知られている任意の方法に従って、修飾可能であることを理解すべきである。いくつかの態様において、表面をポリマーミクロゲルフィルムで機能化する方法は、Singh et al. (2007) Biomacromolecules 8(10):3271-5に記載されているなどのポリアクリル酸のプラズマ誘導グラフト重合に基づく方法に由来する。いくつかの態様において、光親和性標識、すなわちアミノベンゾフェノンが、表面上に導入される。
一組の態様において、基材は、正または負に荷電することができて、タンパク質または他の分析物の分離を容易にする。例えば、分析物は正に荷電され、負に荷電された基材は、分析物の吸引を促進することができる。例えば、タンパク質は、タンパク質上のグルタミンまたはアスパラギンなどの残基により、正に荷電することができ、これは、負に荷電された粒子または他の基材に引き付けられる。別の例として、分析物は負に荷電することができ、正に荷電された粒子は、分析物の吸引を促進することができる。例えば、DNAまたはRNAなどの核酸は負に荷電されてもよく、核酸は、正に荷電された粒子または他の基材に吸引されてもよい。一組の態様において、アクリル酸または負に荷電された残基を生成する他の単量体を、ポリマー中に組み込むことができ、あるいは他の方法で基材上に加えて、基材上に負の電荷を付与する。別の組の態様において、正に荷電された残基(例えば、エチレンイミン)を生成するモノマーを用いて、例えば、ポリマーへの組み込みまたは基材へのその他の付加を介して、基材上に正の電荷を付与する。
【0032】
基材はまた、例えば、金属キレート部分、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはNTA(ニトリロ三酢酸)またはその誘導体であって、二価金属イオンを含む金属イオンが結合可能であるものを、含んでよい。金属キレート部分の他の非限定的な例としては、種々のポリアミノカルボン酸、例えばFura−2、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)等、および、これらの誘導体を含む。金属キレート部分は、二価金属イオンなどの金属イオンと結合または複合化できるものであってよい。金属キレート部分によってキレート化することができるイオンの非限定的な例には、ニッケル、コバルト、カルシウム、鉄等が含まれる。具体的な非限定的な例としては、金属キレート部分はニッケルイオンに結合することができ、こうして、金属キレート部分を含有する基材はまた、該基材内に分散したニッケルイオンを含有することができる。
【0033】
いくつかの態様において、金属キレート部分は、基材のポリマー構造内に組み込むことができる。金属キレート部分はモノマーとして存在してもよく、これは、種々のモノマーが重合および/または架橋されて、ポリマー基材を形成する、例えばコポリマーまたは相互貫入もしくは半相互貫入ポリマーネットワークを形成するからである。例えば、金属キレート部分は、ポリマーが形成された場合に、ポリマー中のモノマーまたは残基の1つは、金属キレート部分であるようなモノマーとして、ポリマー中に組み込むことができる。具体的な非限定的な例として、2,20−(5−アクリルアミド−1−カルボキシペンチルアザンジイル)二酢酸などのNTA誘導体を用いることができ、これはポリマー内に組み込まれた場合に、NTA残基を形成する。
いくつかの態様において、金属キレート部分は、基材全体に実質的に均一に分散させることができる。例えば、基材の表面上およびバルクまたは基材の中心における金属キレート部分の濃度は、実質的に同一であってもよい。例えば、基材の表面上とバルクまたは中心の間での、金属キレート部分の濃度の差は、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または約5%以下であることができ、ここでパーセンテージは、基材の表面上とバルクまたは中心でのこれらの濃度の平均に対して取られている。
【0034】
基材内での金属キレート部分の分布は、例えば金属キレート部分が、基材が形成されるにつれて基材の一体部分として形成される場合、比較的均一であることができる。例えば、金属キレート部分はポリマー内に、ポリマー内のモノマーのように組み込むことができ、こうして、ポリマー基材中に金属キレート部分の比較的均一な分布がもたらされる。
いくつかの態様において、金属イオンは、例えば基材を金属イオン含有流体に、例えばイオンが拡散またはその他の力(例えば電荷引力)を介して基材に貫入することができるような様式で暴露することにより、基材内に分散させることができる。いくつかのケースにおいて、基材は、流体に浸漬してもよい。金属イオンは、例えば暴露の長さに応じて、均一または不均一に基材内に分布させることができる。例えば、金属キレート部分が基材内に比較的均一に分布されている場合、金属キレート部分に引き寄せられる金属イオンも同様に、基材内で比較的均一となることができる。
【0035】
抗体
本発明の一定の側面は、対象の血液内にあることが疑われるタンパク質に選択的に結合する、抗体に関する。抗体は、一般にジスルフィド結合による少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むタンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはV
Hと略記)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C
H1、C
H2およびC
H3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVRまたはV
Lと略記)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。V
HおよびV
L領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。各V
HおよびV
Lは、3つのCDRと4つのFRから構成され、これらはアミノ末端からカルボキシ末端に次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)の様々な細胞を含む、宿主組織または因子への、免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0036】
本明細書で用いられる用語、抗体の「抗原結合フラグメント」は、抗原(例えば、サイトカイン)に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1または2以上の部分を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって実行できることが示されている。用語、抗体の「抗原結合フラグメント」に包含される結合フラグメントの例には、以下が挙げられる:(i)Fabフラグメント:V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインからなる、一価のフラグメント、(ii)F(ab’)
2フラグメント:ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む、二価フラグメント;(iii)V
HおよびC
H1ドメインからなる、Fdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのV
LおよびV
HドメインからなるFvフラグメント、(v)V
Hドメインまたは重鎖抗体の可変ドメインからなる、dAbフラグメント、例えばラクダ科重鎖抗体など(例えばV
HH);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);および(vii)(i)〜(vi)の抗原結合フラグメントを含むポリペプチド構築物。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、V
LおよびV
Hは別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え法を用いて、V
LおよびV
H領域が対となって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーにより、結合することができる(単鎖Fv(scFv)として知られる)。かかる単鎖抗体もまた、用語、抗体の「抗原結合部分」内に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、タンパク質分解フラグメント化手順、組換え核酸の発現などの従来の手順を使用して得られる。フラグメントは、インタクトな抗体と同様の様式で、有用性についてスクリーニングされる。
【0037】
本発明の単離された抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、IgEなどの多様な抗体アイソタイプを包含する。本明細書で用いられる「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)を指す。本発明の抗体は、全長であることができ、または、抗原結合フラグメントのみを、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、またはIgEの抗体定常および/または可変ドメインなどを含むことができ、または、Fabフラグメント、F(ab’)
2フラグメント、およびFvフラグメントからなることもできる。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の混合物であることができる。本発明の抗体は、本明細書に開示された方法により、または当技術分野において知られている多様な技術によって製造することができ、また多くのかかる抗体は、商業的に得ることができる。
本発明の側面は、当技術分野で周知の技術を用いて調製した抗体を含む、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体両方を包含する。モノクローナル抗体は、典型的には、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示すことができる。ポリクローナル抗体は、典型的には、特定の抗原に特異的に結合する抗体の混合物を含む、抗体分子の調製物を指す。
【0038】
モノクローナル抗体産生のプロセスは、抗体を産生する可能性を有する免疫体細胞を得ること、特に、目的の抗原でin vivoまたはin vitroのいずれかで以前に免疫化され、B細胞骨髄腫系との融合に適している、特定のBリンパ球を得ることを含んでよい。哺乳動物のリンパ球を、典型的には、所望のタンパク質またはポリペプチド、例えばサイトカインによって動物(例えば、マウス)をin vivoで免疫化することにより、免疫化する。かかる免疫化は、抗体の十分な力価を得るために、数週間までの間隔で必要に応じて繰り返される。一度免疫化されると、以下でさらに説明するように、動物は抗体産生リンパ球の供給源として使用することができ、該リンパ球はクローニングおよび組換え的に発現することができる。最後の抗原追加免疫後、動物を屠殺し、脾臓細胞を取り出す。マウスリンパ球は、本明細書中に記載のマウス骨髄腫株との安定な融合体の高いパーセンテージをもたらす。これらのうち、BALB/cマウスが好ましい。しかし、他のマウス系統、ラット、ウサギ、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマ、カエルなども、抗体産生細胞を調製するための宿主として使用することができる。ゲノムに挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を有するマウス系統(およびマウス免疫グロブリンを産生することができないもの)を用いることもできる。例としては、Medarex/GenPharm Internationalによって生産されるHuMAbマウス系統、およびAbgenixによって生産されるXenoMouse系統が挙げられる。かかるマウスは、免疫化に応答して、完全なヒト免疫グロブリン分子を産生する。
【0039】
分裂形質芽球ステージにあるこれらの抗体産生細胞は、優先的に融合する。体細胞は、抗原感作した動物のリンパ節、脾臓および末梢血から得ることができ、リンパ細胞の選択は、特定の融合系におけるそれらの経験的な有用性に大きく依存する。抗体分泌リンパ球を、次に(マウス)B細胞骨髄腫細胞または形質転換細胞と融合させ、これらは細胞培養物で無限に複製することができ、それにより、不死の免疫グロブリン分泌細胞株を産生する。得られた融合細胞またはハイブリドーマを培養し、得られたコロニーを、所望のモノクローナル抗体の産生についてスクリーニングする。かかる抗体を産生するコロニーをクローン化し、in vivoまたはin vitroのいずれかで増殖させて、大量の抗体を産生する。
ハイブリドーマ産生融合手順における使用に適した骨髄腫細胞株は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、および酵素欠損を有して、所望のハイブリドーマの増殖を支持する特定の選択培地中でのこれらの増殖を不可能にする。融合細胞株の産生に用いることができる、かかる骨髄腫細胞株の例としては、限定はされないが以下を含む:マウス由来の、Ag8、P3-X63/Ag8、X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4.1、Sp2/0-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7、S194/5XX0 Bul;ラット由来のR210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210;およびヒト由来のU-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2、UC729-6。当業者は、モノクローナル抗体を産生するための多くの日常的な方法を知っている。
【0040】
哺乳動物の骨髄腫細胞または細胞培養で無限に複製することができる、他の融合パートナーとの融合は、例えばポリエチレングリコール(「PEG」)または他の融剤を使用することにより、標準的な周知の技術によって達成される。
ポリクローナル抗体を産生する方法は当業者に周知である。非限定的な例としては、ポリクローナル抗体は、ポリペプチドを皮下的に、免疫前血清を得るために初めに採血されたニュージーランド白ウサギに投与することによって産生することができる。ポリペプチドは、6つの異なる部位において、部位当たり100μlの総容量を、典型的には1または2以上のアジュバントと共に接種(例えば注入)することができる。次にウサギは、最初の注射の2週間後に採血し、同じ抗原により6週間ごとに3回、追加免疫する。血清試料を各追加免疫の10日後に採取する。ポリクローナル抗体は血清から、好ましくは抗体を捕捉するためにアセチル化されたシトクロムを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、回収する。当業者は、ポリクローナル抗体を産生するための多くの日常的な方法を知っているであろう。
他の態様において、抗体は組換え抗体であってもよい。組換え抗体は、一般に、組換え手段によって調製、発現、作製または単離された抗体を含み、例えば、他の種の免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、遺伝子操作された抗体、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、または、免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体である。
【0041】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、好ましくは、単離されている。いくつかのケースでは、単離された抗体は、内因的に抗体を産生する生物には存在せず、すなわち抗体は、生物から単離されている。いくつかのケースでは、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、異なる抗原特異性を有する他の抗体(またはその抗原結合フラグメント)を実質的に含まない、抗体(またはその抗原結合フラグメント)を指す。ポリペプチド(例えば、サイトカイン)のエピトープ、アイソフォームまたはバリアントに特異的に結合する単離された抗体は、しかし、他の関連抗原に対する交差反応性を有してよく、例えば、サイトカインの変異形、または他の種からのポリペプチド(例えば、他の種のホモログ)を有してよい。さらに、単離された抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
本発明の抗体としては、限定はされないが、サイトカインに特異的結合する抗体を含む。本明細書で用いる場合、「選択的結合」は、抗原を他から識別するための抗体の使用を可能とするような選好を有する、所定の抗原に対する抗体の結合を指す。いくつかの態様において、抗体は単一のタンパク質に結合し、そのタンパク質を全ての他のタンパク質から識別することができる。他の態様において、抗体は、いくつかの異なる関連タンパク質に結合し、それらのタンパク質を全ての他のタンパク質から識別することができる。
【0042】
いくつかの態様において、複数の異なるモノクローナル抗体などの複数の抗体は、任意の時点でポリマー系に組み込まれ、一度に複数のサイトカインを除去可能な体外回路がもたらされる。そうすることで、系の非常に特異的な性質が保存され、さらに拡張されて、これまで記載されたことのない方法でタンパク質の群が除去される。
いくつかの態様において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、ナノモル以下の親和性で抗原に特異的に結合することができる。解離定数は、約1×10
−6、1×10
−7、1×10
−8、1×10
−9M以下、好ましくは約1×10
−10M以下、より好ましくは1×10
−11M以下である。特定の態様において、結合親和性は、約5×10
−10M未満である。
いくつかの側面において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、サイトカインなどのポリペプチドの立体配座エピトープに結合する。選択された抗体が立体配座エピトープに結合するかどうかを決定するために、それぞれの抗体を、天然のタンパク質を用いたアッセイ(例えば、非変性免疫沈降、細胞表面結合のフローサイトメトリー分析)および変性タンパク質(例えば、ウェスタンブロット、変性タンパク質の免疫沈降)で試験することができる。結果の比較は、抗体が立体配座エピトープと結合するかどうかを示す。天然のタンパク質に結合するが、変性タンパク質には結合しない抗体は、立体配座エピトープに結合する抗体であり、好ましい抗体である。
【0043】
いくつかの態様において、抗体よりもリガンドが、血液などの生体液中のタンパク質等の物質の選択的結合のために使用される。
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識に結合することができる。本発明の検出可能な標識は、当技術分野で周知の標準的なプロトコルによって、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに結合させることができる。いくつかの態様において、検出可能な標識は、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントに共有結合で結合することができる。共有結合は、既存の側鎖の直接縮合、または外部架橋部分の組み込みのいずれかによって、達成することができる。多くの二価または多価の薬剤は、タンパク質部分を、他のタンパク質、ポリペプチドまたはアミン官能基等に結合するのに有用である。例えば、文献には、カルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、およびジアゾベンゼンなどのカップリング剤が豊富に記載されている。このリストは当技術分野で周知の様々なカップリング剤を網羅することを意図するものではなく、むしろ、より一般的なカップリング剤の例示である。
【0044】
処置
本発明の方法は、いくつかの態様において、処置を必要とする対象を処置するために有用である。いくつかの態様において、処置を必要とする対象は、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する対象であることができる。例えば、処置を必要とする対象とは、敗血症または敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心肺バイパスに関連する全身性炎症反応症候群(SIRS)、重症筋無力症などを有する対象であることができる。他の態様において、処置を必要とする対象とは、アルツハイマー病などの神経変性疾患を有する対象であることができる。その最も広い意味において、用語「処置」または「処置する」は、治療的および予防的処置の両方を指す。処置を必要とする対象がある状態を経験している場合(すなわち、特定の状態を有するか、または有している場合)、「状態を処置すること」とは、障害もしくは疾患の重症度と関連する1もしくは2以上の症状を、緩和、低減または排除する、または疾患のさらなる進行を防ぐことを指す。処置を必要とする対象が状態を有するリスクにあるものであれば、対象を処置するとは、状態を有する対象のリスクを軽減すること、または対象が状態を発症するのを防ぐことを指す。
本明細書で使用される対象とは、ヒトまたは他の脊椎動物または哺乳動物を意味し、限定することなく、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類、鳥類、および霊長類、例えばサルを含む。
【0045】
「有効量」という用語は、所望の生物学的効果を実現するために必要または十分な量を指す。例えば、本発明に関連する、ポリマーまたは粒子および抗体もしくはその抗原結合フラグメントなどの薬剤の有効量は、炎症性疾患または自己免疫疾患などの疾患の1または2以上の症状を改善するのに十分な量であってよい。本明細書に提供される教示と組み合わせて、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重篤度および好ましい投与様式などの因子を重み付けすることによって、特定の対象の処置に有効な、効果的な予防的または治療的処置レジメンを計画することができる。任意の特定の用途のための有効量は、処置されている疾患または状態、対象のサイズ、および疾患または状態の重症度などの因子に依存して変化し得る。当業者は経験的に、過度の実験を必要とすることなく、本発明に関連する物質の有効量を決定することができる。
本発明の更なる側面は、遺伝的プロファイルに基づいた、対象のリスク階層化に関連する。遺伝子マイクロアレイなどの技術を使用することにより、遺伝子発現プロファイルに基づいて、敗血症性ショックの小児および成人は現在、高い精度で予測死亡率によりリスク階層化することができる。敗血症において死亡率を駆動する上方制御された遺伝子の検査により、それらの多くが炎症性タンパク質であることが明らかになった。したがって、本明細書に記載の技術は、個々の患者に対する生理活性回路を調整して、マイクロアレイ技術からの遺伝子フィンガープリントに基づき炎症性メジエーターを除去するために、使用することができる。
【0046】
本発明のさらなる側面は、本明細書に記載の方法および組成物の使用であって、例えば診断および/または予後の目的のために、生体液中の物質の存在を検出または分析するための使用に関する。いくつかの態様において、血液などの生体液を対象から取り出し、抗体などの薬剤に付着したポリマーまたは粒子と接触させ、該ポリマーまたは粒子との接触の間または後に分析する。いくつかの態様において、血液などの生体液は、体外回路を通る循環の間または後に分析される。例えば、いくつかのケースにおいて、対象からの血液は、チャンバーを含む体外回路を通って循環され、ここでチャンバーの少なくとも1つの表面は抗体などの特定の薬剤で被覆されて、生体液中のタンパク質などの特定の物質の存在および/または量の分析を可能にする。
本発明に関連する磁気感受性粒子は、これらを全身投与することが所望される場合、例えばボーラス注射または連続注入などの、注射による非経口投与用に処方することができる。注射用製剤は単位剤形で提供することができ、例えば、保存剤を添加したアンプルまたは複数用量容器においてである。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含有することができる。
【0047】
非経口投与のための医薬製剤としては、水溶性形態の活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液は適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどを含有してもよい。任意に、懸濁液は、高濃縮溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大させる好適な安定剤または薬剤を含有することができる。
代替的に、活性化合物は、使用前に例えば滅菌パイロジェンフリー水などの適切なビヒクルで構成するための、粉末形態であってもよい。
本明細書で記載のように処置することができる、炎症性障害の非限定的な例は以下を含む:敗血症または敗血症性ショック、急性または成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害(ALI)、尋常性座瘡、喘息、自己免疫疾患、セリアック病、慢性の前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流障害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植拒絶反応、血管炎、間質性膀胱炎、アテローム性動脈硬化症、アレルギー;皮膚筋炎、多発性筋炎、および封入体筋炎などの炎症性筋疾患、チェディアック−東症候群および慢性肉芽腫症。
【0048】
本明細書で記載のように処置することができる、自己免疫疾患の非限定的な例は以下を含む:全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、強皮症、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、潰瘍性大腸炎、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌腺症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病/バロー同心円状硬化症、ベーチェット病、バーガー病、Bickerstaff型脳炎、ブラウ症候群、水疱性天疱瘡、癌、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多病巣性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ−ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、頭蓋動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、Degos病、ダーカム(Dercum)病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん性皮膚全身性硬化症、ドレスラー症候群、薬剤関連狼瘡、円板状紅斑性狼瘡、湿疹、子宮内膜症、腱付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、
【0049】
好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性線維形成異常骨化、線維化性肺胞炎(特発性肺線維症)、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹(妊娠性類天疱瘡)、化膿性汗腺炎、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(自己免疫性血小板減少性紫斑病)、IgA腎症、封入体筋炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)、川崎病、ランバート−イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患(LAD)、ルーゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症)、ルポイド肝炎(自己免疫性肝炎)、エリテマトーデス、Majeed症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラーフィッシャー症候群(ギランバレー症候群)、混合性結合組織病、斑状強皮症、ミュシャ−ハーバーマン病(Pityriasis lichenoides et varioliformis acuta)、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック病)、神経性筋緊張病、眼瘢痕性類天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、再発性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌に関連した小児自己免疫神経精神障害)、
【0050】
腫瘍随伴小脳変性症、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、Parsonnageターナー症候群、扁平部炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多発筋痛リウマチ、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病(若年性関節リウマチ)、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、Susac症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病(PANDAS)、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス(エリテマトーデス)、高安動脈炎、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られている)、血小板減少症、トロサ−ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎(特発性炎症性腸疾患「IBD」の一種)、混合性結合組織疾患とは異なる未分化結合組織疾患、未分化脊椎関節症、蕁麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症。
【0051】
マイクロ流体チャネル
上述したように一定の態様では、マイクロ流体チャネルを、例えば、抗体などの適切な薬剤で少なくとも部分的に被覆された表面として、使用することができる。マイクロ流体チャネルは一般に、約1mm未満の、および場合によっては約100μm未満の、幅または直径を有している。いくつかの態様において、より大きなチャネルを、本明細書に記載の任意の態様のために、マイクロ流体チャネルの代わりに、またはこれと組み合わせて、使用してもよい。例として、幅または直径が約10mm未満、約9mm未満、約8mm未満、約7mm未満、約6mm未満、約5mm未満、約4mm未満、約3mm未満、または約2mm未満のチャネルを、一定の例において用いてよい。全ての態様において、特定された幅は、最小幅(すなわち、特定された幅で、当該場所において、物品が異なる寸法では、より大きな幅を有することができる)、または最大幅(すなわち、当該場所において、物品は、特定されたよりも広い幅は有さないが、より大きい長さを有することができる)であることができる。従って例えば、マイクロ流体チャネルは、平均断面寸法(例えば、マイクロ流体チャネル内の流体フローに垂直方向の)として、約1mm未満、約500μm未満、約300μm未満、または約100μm未満を有してよい。いくつかのケースにおいて、マイクロ流体チャネルは、平均直径として約60μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約30μm未満、約25m未満、約10μm未満、約5μm未満、約3μm未満、または約1μm未満を有してよい。
【0052】
チャネルは任意のアスペクト比を、例えば、アスペクト比(平均断面寸法に対する長さ)として少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、より特に少なくとも約3:1、少なくとも約5:1、少なくとも約10:1等を有してよい。本明細書で使用する場合、流体またはマイクロ流体チャネルを参照した「平均断面寸法」とは、チャネル内の流体フローに対して一般に垂直方向で測定される。チャネルは、一般的に、流体輸送の制御を容易にする特性、例えば、構造特性および/または物理的もしくは化学的特性(疎水性対親水性)、および/または流体に力(例えば、包含力(containing force))を加えることができる他の特性を含む。チャネル内の流体は、部分的にまたは完全にチャネルを充填してもよい。いくつかのケースにおいて、流体は、チャネル内またはチャネルの一部内に何らかの方法で保持または閉じ込められてよく、例えば表面張力を用いるなどである(例えば、流体はチャネル内の、凹もしくは凸メニスカスなどのメニスカス内に保持される)。物品または基材内において、チャネルの一部(または全体)は、例えば、特定のサイズ以下であってもよく、例えば流体フローに垂直の最大寸法として、約5mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約500μm未満、約200μm未満、約100μm未満、約60μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約30μm未満、約25μm未満、約10μm未満、約3μm未満、約1μm未満、約300nm未満、約100nm未満、約30nm未満、または約10nm未満であってよい。一態様において、チャネルは毛細管である。いくつかのケースにおいて、デバイスは、1または2以上のチャンバーまたはリザーバを、流体を保持するために含むことができる。いくつかのケースにおいて、チャンバーは、1または2以上の流体輸送体および/または1または2以上のマイクロ流体チャネルと、流体連通することができる。
【0053】
本発明の一定の側面により、様々な材料および方法を用いて、例えばマイクロ流体チャネルなどのデバイスを形成することができる。例えば、本発明の様々な構成要素は固体材料から形成することができ、ここでチャネルは、マイクロマシニング、スピンコーティングおよび化学蒸着などの膜蒸着プロセス、レーザー加工、フォトリソグラフィ技術、湿式化学またはプラズマプロセスを含むエッチング法などを介して、形成することができる。例えば、Scientific American, 248:44-55, 1983 (Angell, et al)を参照。
一組の態様において、本発明のシステムおよびデバイスの様々な構成要素は、ポリマーから、例えばポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」またはテフロン(登録商標))などのエラストマーポリマーから形成することができる。例えば、一態様によれば、マイクロ流体チャネルを、PDMSまたは他のソフトリソグラフィー技術を使用して流体システムを別々に製造することにより、実現してもよい(この態様に適したソフトリソグラフィー技術の詳細は、Younan Xia and George M. WhitesidesのAnnual Review of Material Science, 1998, Vol. 28, pages 153-184に公開された「Soft Lithography」、およびGeorge M. Whitesides, Emanuele Ostuni, Shuichi Takayama, Xingyu Jiang and Donald E. IngberのAnnual Review of Biomedical Engineering, 2001, Vol. 3, pages 335-373に公開された「Soft Lithography in Biology and Biochemistry」に議論されている;これらの参考文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0054】
潜在的に好適なポリマーの他の例としては、限定はされないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリマー、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン、ポリ塩化ビニリデン、ビス−ベンゾシクロブテン(「BCB」)、ポリイミド、ポリイミドのフッ素化誘導体等が挙げられる。上記のものを含むポリマーが関与する組合せ、コポリマー、もしくはブレンドも想定される。デバイスはまた、複合材料から、例えばポリマーと半導体材料の複合体から形成してもよい。
【0055】
いくつかの態様において、本発明の種々の構成要素は、ポリマーおよび/またはフレキシブルな材料および/またはエラストマー材料から製造され、硬化可能な流体から簡便に形成することができて、成形(molding)を介する製造を容易にする(例えば、レプリカ成形、射出成形、キャスト成形、等)。硬化可能な流体は、固化するように誘導することができるか、または自然に固化して、流体ネットワークにおいてまたはこれと共に用いることが企図される流体を含有できる、および/または輸送できるような固体となる、本質的に任意の流体であってよい。一態様において、硬化可能な流体は、ポリマー液体または液状ポリマー前駆体(すなわち、「プレポリマー」)を含む。好適なポリマー液体は、例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ワックス、金属、またはその融点以上に加熱されるそれらの混合物もしくは複合材料を含むことができる。別の例として、好適なポリマー液体は、適切な溶媒中の1または2以上のポリマーの溶液を含んでよく、この溶液は、例えば蒸発により溶媒を除去すると、固体のポリマー材料を形成する。例えば溶融状態からまたは溶媒蒸発によって固化させることができるかかるポリマー材料は、当業者に知られている。多くがエラストマーである、多様なポリマー材料は好適であり、これらはまた、1つまたは両方の鋳型(mold)マスターがエラストマー材料で構成されている態様について、鋳型または鋳型マスターを形成するのに適している。かかるポリマーの例の非限定的なリストには、シリコーンポリマー、エポキシポリマー、およびアクリレートポリマーの一般的クラスのポリマーが含まれる。エポキシポリマーは、一般にエポキシ基、1,2−エポキシド、またはオキシランと称される三員環エーテル基の存在によって特徴付けられる。例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを、芳香族アミン、トリアジン、および脂環式主鎖に基づく化合物に加えて、使用することができる。別の例では、周知のノボラックポリマーを含む。本発明に従って使用するのに適したシリコーンエラストマーの非限定的な例としては、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシランなどのクロロシランを含む前駆体から形成されるものが挙げられる。
【0056】
シリコーンポリマーは一定の態様において用いられ、例えば、シリコーンエラストマー・ポリジメチルシロキサンである。PDMSポリマーの非限定的な例としては、Dow Chemical Co. Midland, MIから商標Sylgardとして、特にSylgard 182、Sylgard 184、およびSylgard 186として販売されているものを含む。PDMSを含むシリコーンポリマーはいくつかの有益な特性を有しており、本発明のマイクロ流体構造の製造を単純化する。例えば、かかる材料は安価であり、容易に入手可能で、熱による硬化を介してプレポリマー液体から固化させることができる。例えば、PDMSは、プレポリマー液を例えば約65℃から約75℃の温度に、例えば約1時間の暴露時間暴露することにより、典型的に硬化可能である。また、PDMSなどのシリコーンポリマーはエラストマーとすることができ、したがって、本発明の一定の態様に必要な、比較的高いアスペクト比を有する非常に小さな外観を形成するために有用であり得る。フレキシブルな(例えば、エラストマー)鋳型またはマスターは、この点で有利であり得る。
【0057】
本発明のマイクロ流体構造などの構造を、PDMSなどのシリコーンポリマーから形成することの1つの利点は、かかるポリマーの、例えば、空気プラズマなどの酸素含有プラズマに曝露することによって酸化される能力であり、こうして酸化された構造は、その表面に、他の酸化されたシリコーンポリマー表面にまたは種々のその他のポリマーもしくは非ポリマー材料の酸化表面に架橋することができる、化学基を含有する。したがって、成分が製造され、続いて酸化され、他のシリコーンポリマー表面に、または酸化されたシリコーンポリマー表面と反応する他の基材の表面に、別の接着剤または他の密封手段を必要とすることなく、本質的に不可逆的に密封されることができる。ほとんどの場合、密封は、酸化されたシリコーン表面を別の表面に、シールを形成するための補助圧力の適用を必要とすることなく単純に接触させることにより、完了することができる。すなわち、予め酸化されたシリコーン表面は、適切な合わせ面に対して接触接着剤として機能する。具体的には、酸化されたPDMSなどの酸化されたシリコーンはまた、それ自体に不可逆的に密封可能であることに加えて、それ自体以外の一定範囲の酸化材料、例えば、PDMS表面と同様の方法で(例えば、酸素含有プラズマへの曝露を介して)酸化されている、ガラス、ケイ素、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス状炭素、およびエポキシポリマーに、不可逆的に密封することができる。本発明の文脈において有用な酸化および密封方法、ならびに全体的な成形技術は当技術分野において記載されており、例えば、題名「Rapid Prototyping of Microfluidic Systems and Polydimethylsiloxane」Anal. Chem., 70:474-480, 1998 (Duffy et al.)の論文に記載されており、これは参照により本明細書に組みこまれる。
【0058】
キット
別の側面において、本発明は、前述の1または2以上の組成物を含むキットを対象とする。本明細書で使用される「キット」とは、典型的には、本発明の1または2以上の組成物、および/または例えば前述のものなどの本発明に関連する他の組成物を含む、パッケージまたはアセンブリーを定義する。キットの各組成物は、存在する場合、液体形態(例えば溶液中)、または固体形態(例えば、乾燥粉末)で提供されてよい。一定のケースにおいて、組成物のいくつかは、例えば、キットと共に提供されていてもされていなくてもよい適切な溶媒または他の種を添加することによって構成可能であるか、あるいは(例えば活性型へと)加工することができる。本発明に関連してよいその他の組成物の例としては、限定はされないが、溶媒、界面活性剤、希釈剤、塩、バッファー、乳化剤、キレート剤、充填剤、酸化防止剤、結合剤、増量剤、保存剤、乾燥剤、抗菌剤、針、シリンジ、包装材料、チューブ、ボトル、フラスコ、ビーカー、皿、フリット、フィルター、リング、クランプ、ラップ、パッチ、容器、テープ、接着剤などであり、これらは例えば、組成物の成分を、例えば試料および/または対象に対する特定の使用のために、使用する、投与する、改質する、組み立てる、貯蔵する、包装する、調製する、混合する、希釈する、および/または保存するためのものである。
【0059】
本発明のキットは、いくつかのケースにおいて、本発明の組成物に関連して提供される指示書であって、該指示書が本発明の組成物に関連付けられるべきであることを当業者が認識するような、任意の形式の前記指示書を含んでよい。例えば指示書は、キットに付随する組成物および/または他の組成物の、使用、改質、混合、希釈、保存、投与、組み立て、貯蔵、包装、および/または調製のための指示を含むことができる。いくつかのケースにおいて、指示書はまた、組成物の使用のため、例えば試料などに対する特定の使用のための、指示を含むことができる。指示書は、当業者によりかかる指示書を収容するのに適した伝達手段として認識される、任意の形態で提供することができ、例えば、文書または発表、口頭、可聴(例えば電話)、デジタル、光学的、視覚的(例えばビデオテープ、DVDなど)、または電子通信(インターネットまたはウェブベースの通信を含む)などであり、任意の様式で提供される。
【0060】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書で議論されている本発明の1または2以上の態様を促進する方法に向けられている。本明細書中で使用される「促進された」とは、ビジネスを行う全ての方法であって、以下を含むがこれに限定されないものが挙げられる:本明細書で議論される本発明のシステム、デバイス、装置、物品、方法、組成物、キット等に関連した、販売(selling)、広告、割り当て、ライセンス、契約、指示、教育、研究、輸入、輸出、交渉、資金調達、融資、取引、販売(vending)、再販、流通、修理、交換、保証、告訴、特許など。促進の方法は、任意の当事者によって実行することができ、これには、限定はされないが以下を含む:個人の当事者、会社(公共または民間)、共同経営会社、法人、トラスト、契約またはサブ契約機関、カレッジや大学などの教育機関、研究機関、病院または他の医療機関、政府機関など。促進活動は、本発明に明らかに関連する、任意の形式の通信を含んでよい(例えば、文書、口頭、および/または電子通信、例えば電子メール、電話、インターネット、ウェブベースなどを含むがこれらに限定されない)。
一組の態様において、促進方法は、1または2以上の指示書を含んでよい。本明細書において、「指示書」とは、指示的効用の要素を定義することができ(例えば、説明書、ガイド、警告、ラベル、メモ、FAQまたは「よくある質問」等)、通常は、本発明に付随する、および/または本発明のパッケージに付随する文書での指示書を含む。指示書はまた、任意の形式の指示的通信を含むことができ(例えば、口頭、電子、可聴、デジタル、光学的、視覚的等)、これは、指示が、例えば本明細書で議論された本発明に関連することをユーザーが明確に理解するような、任意の様式で提供される。
【0061】
本明細書に記載の技術は、以前に開発された技術に対して大きな利点を提供する。例えば、いくつかのケースにおいて、既存の体外システム(例えば血漿交換または血液濾過など)に対して、表面改質を通じて大きな特異性を付与するという利点;既存のモノクローナル抗体の技術に対して、時間を限定した効果を提供するという利点;および、特異性を維持しつつ一度に複数のタンパク質を除去する能力(どれだけ多くのモノクローナル抗体がシステムに組み込まれているかに応じて)。
2012年5月14日に出願されたMcAlvin, et al.による米国仮特許出願第61/646,674号、名称「Systems and Methods for Extracorporeal Blood Modification」は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
以下の実施例は、本発明の一定の態様を説明することを意図し、本発明の完全な範囲を例示するものではない。
【0062】
例
例1:生体液中のサイトカインなどの特定物質の循環レベルを減少可能な、抗体で機能化した体外回路の構築
敗血症は重度の感染によって引き起こされることができ、多数の要因に依存して炎症性または抗炎症性サイトカインのいずれかの誘導をもたらし得る。敗血症には、低血圧および臓器機能不全の原因となる初期の炎症バーストと、続いて免疫抑制をもたらす抗炎症反応という、少なくとも2つのステージが関与すると考えられている。本明細書に記載の方法およびデバイスを使用して、疾患のステージに合わせて時間的にカスタマイズされた標的化サイトカイン除去により、敗血症症候群を調節する。過去には多くの試験が、敗血症において免疫系を調節することを目的とした薬剤を用いて行われた。初期の生存は改善したものの、長期生存には差がなかった(おそらくより悪い)。フェレーシス、濾過、血液透析によるサイトカインの除去は、サイトカインのレベルを効果的に減衰させるが(サイトカインの両方のタイプを非特異的に除去)、臨床転帰は改善されない。ここで、敗血症症候群の適切な局面に時間的に限定された、高度に特異的なサイトカイン除去が可能な、生物学的に活性な体外回路が開発される。
【0063】
本明細書に記載の方法およびデバイスを使用して、離散時点において候補サイトカインを操作することにより、敗血症症候群をその進行の任意の時点で減衰させることができる。生物学的に活性な体外回路が記載され、これは、循環している生体液の組成を大きな特異性で改質することが可能である。初めに、インターロイキン−6(IL−6)を、特定のサイトカインの例として標的化する。表面に固定した機能性ミクロゲルによって、または磁場を用いて除去することができる機能的な強磁性ナノ粒子(FFN)を循環させることによって、または任意の他の機能性ポリマー系により、結果は、敗血症の対象におけるIL−6レベルを減衰させることである。本明細書に記載の生物学的に活性な回路を用いた、例えばIL−6などのサイトカインの減衰は、敗血症患者において、心臓および腎臓機能障害を発症する程度を改善することができる。
【0064】
生体液中のサイトカインなどの特定物質の循環レベルを減少可能な生物学的に活性な体外回路(BAEC)の設計、生産および特徴付けのための、ミクロゲルの使用
ここで、ミクロゲルをモノクローナル抗体(MAb)で機能化して、生体液からサイトカインを除去することができる機能性ミクロゲルを作製する。試験生体液の例は、IL−6と制御性サイトカインTNF−アルファ(TNF−α)を意図的に富化したウシ胎児血清から成る。機能性ミクロゲルを用いて、強磁性ナノ粒子(FFN)(粒子状鉄コアを有するミクロゲルマイクロ粒子)を構築するか、またはこれを、実験的体外回路(EC)の表面改質のために使用する。最初のアプローチでは、FFN:IL−6複合体を、外部磁界を回路に印加することによって除去する。第2のシステムでは、改質された体外回路は、循環する試験生体液からのIL−6を、流体が回路を通り抜けるにつれて管腔表面に固定する。除去効率、能力および特異性は、試験流体中のサイトカイン濃度を、各BAECシステムで処理する前後に定量することによって特徴付ける。
一例として、半相互貫入ポリマーネットワークを、全体的にサブユニットに固定したモノクローナル抗体(例えば、ラット抗IL−6抗体)を用いて構成する。得られたミクロゲルを用いて、2種類の生物活性体外回路を開発する(循環するIL−6を標的化)。
【0065】
第1のBAECについて、半相互貫入ポリマーネットワークを改質して、超常磁性コアを有するナノ粒子を作製する。これらの強磁性ナノ粒子は、IL−6などの特定のタンパク質に結合して複合体を形成し、これは、外部磁場が回路内のリザーバに印加されると、循環から除去される。有機膨潤粒子内への磁性粒子のカプセル化は、当分野で周知の方法に従って達成される。IL−6の結合の成功と循環からの効率的な磁気駆動の除去を用いて、複雑な生体液が改質される。
第2のBAECシステムは、体外回路の管腔表面などの表面を半相互貫入ポリマーネットワークで被覆することにより、開発される。ミクロゲルシステムによる表面改質は、当分野で周知の方法に従って達成され、本明細書において、ミクロゲルを回路の表面に共有結合でつなぐために使用される。
両方のシステムを特異性、除去効率および除去能力について試験して、これらが、臨床の現実を近似する条件下において、複雑な生物学的溶液からIL−6を除去可能であることを決定する。
【0066】
生体分子の混合物から特定のタンパク質を固定化することができるミクロゲルシステムは、2012年2月22日に出願されたPCT出願PCT/US2012/026008に記載されており、これは参照により組み込まれる。いくつかの態様において、マトリックス全体に分散されたリガンドキレート部分を有する粒子が生成される。このシステムは、従来技術に比べて高いリガンド密度、優れた性能を有しており、溶液中のタンパク質によって簡単に貫通される。
ミクロゲルシステム内のポリマーなどのポリマーは、標的タンパク質に対する抗体で機能化して、表面に固定することができる。代替的に、超常磁性マグネタイト粒子をマトリックスのコアに組み込んで磁気捕捉粒子を作製し、これを注入し、その後、これらが懸濁されている流体(
図2)を磁化することにより収集する(
図2)。
【0067】
方法
ミクロゲル:MAbの合成
抗体半相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルの合成は、モノクローナルラット抗ラットIL−6 IgG(RAIL−6)を、当技術分野で周知の方法を用いてリン酸緩衝液中のN−スクシンイミジルアクレリート(NSA)とカップリングして、化学的に修飾することより達成される(Miyata et al. (1999) Nature 399(6738):766-9;Shoemaker et al. (1987) Applied Biochemistry and Biotechnology 15(1):11-24)。NSAを、RAIL−6 IgG(NSA/RAIL−6 IgGのモル比は6:1)を含有するリン酸緩衝液(0.02M、pH7.4)に添加し、反応物を36℃で1時間インキュベートして、ビニル基をRAIL−6 IgGに導入する。結果として得られるビニル(RAIL−6 IG)は、透析チューブを用いて精製する。アクリルアミドをビニル(RAIL−6 IgG)溶液に、レドックス開始剤として0.1Mの水性過硫酸アンモニウムと0.8Mの水性N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)と共に添加し、共重合を25℃で3時間実施して、重合RAIL−6 IgGを合成する(
図3)。
【0068】
BAEC表面改質
ポリマーミクロゲルフィルムでチューブを機能化する方法は、ポリアクリル酸のプラズマ誘導グラフト重合に基づく従来の方法から誘導される(Singh et al. (2007) Biomacromolecules 8(10):3271-5)。方法をより一般的にするため、および接着性ミクロゲルフィルムを、生物学的環境においてより安定にするために、光親和性標識、すなわち、アミノベンゾフェノンを表面に導入する。UV照射による励起時に、ベンゾフェノンファミリーの分子は、任意の近くのポリマー鎖から脂肪族水素原子を取り出して共有炭素−炭素結合を形成する能力を有する。ミクロゲルがベンゾフェノンのすぐ近くに存在する場合、ベンゾフェノンは、基材とミクロゲル膜の間の接着剤として機能することができる。
【0069】
強磁性粒子
磁性ミクロゲルナノ粒子は、ミクロゲルの製造における慣用の懸濁、エマルジョンまたは沈殿重合を使用して、超常磁性マグネタイトをポリマー内に埋め込むことにより、製造される。
生物学的試験溶液の調製
インターロイキン−6をウシ胎児血清(FBS)に、3種類の濃度:20、110および200pg/mlで添加する。これらの値は、敗血症ラットにおけるIL−6濃度を経時的に測定した、以前の研究者からのものである。対照として、TNF−アルファを、20pg/mlにて溶液に添加する。
【0070】
実験の設定
両方のBAECシステムについて、回路は、ローラーポンプ、およびMedtronic R-14シリコーンリザーバブラダー(bladder)と三方コックを含む、30cmのポリ塩化ビニルループのチューブ(内径3mm)から成る(
図4)。回路には生物学的試験液が充填され、ローラーポンプは、30−40ml/分の流量を得るように操作される。この流量は、動物試験で使用されている成体雄Sprague-Dawleyラット(350−450g)についての100ml/kg/分と同様である。調査に応じて、ブラダー表面はIL−6を捕捉するための機能性ミクロゲルで改質されているか、または、外部磁界が印加されて、回路へのFFN注入後に形成される循環中のIL−6複合体を除去する。生物学的溶液は、2つの方法のいずれかによって処理される。
1.IL−6を除去するための表面改質EC:生物学的懸濁液は、IL−6の除去効率および除去能力を特徴付けるために、所定の期間回路を通って循環される。特異性は、対照としてTNF−アルファ(TNF−α)を用いて評価される。当初のこれらの間隔は、1、2および4時間である。持続時間と表面化学の調整が、必要に応じて、動物試験に進む前に性能の最適化のために行われる。処理された生物学的試験溶液は、ELISAおよび細胞培養実験のために3方コックから取り出される。
【0071】
2.磁気支援のIL−6除去:マイクロ粒子をリザーバブラダーのポートの1つに注入し、所定の時間(初期値は1、2、4時間)循環させる。循環時間の終了時に、外部磁界をリザーバブラダーに印加して、循環からの機能強磁性ナノ粒子:IL−6複合体を固定化する。処理された生物学的懸濁液は、ELISAおよび細胞培養実験のために3方コックから取り出される。IL−6レベルを減衰させるために必要なマイクロ粒子の量は、それらの性能の特徴として決定される。
サイトカイン濃度の評価
処理された生物学的試験溶液中のTNF−アルファ(TNF−α)およびIL−6の濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、ラットポリクローナル抗ラットサイトカイン抗体を用いて測定する。
【0072】
例2.IL−6が富化された生体液を生物学的に活性な体外回路で処理するin vitroの生物学的影響の特徴付け
ここでは、サイトカインを富化した試験流体を、2つのBAECシステムのいずれかを通って循環させる。第1の処理群について、IL−6を標的化するFFNを回路に注入し、所定の時間循環させ、続いてFFN:IL−6複合体を外部磁場の印加により除去する。第2の処理群は、管腔表面がIL−6標的化されたFMにより改質されたECから構成され、ここではIL−6のEC内腔への固定化が生じる。ラット心筋細胞は、BAEC処理の前後に生体液中で培養し、収縮性および生存能力を評価する。これらの実験は、IL−6を除去することによる、細胞の生存率および収縮へのBAECの影響を実証する。
サイトカインを富化した生物学的液体を含有する培地中での心筋細胞の培養が関与する実験に基づき、IL−6が負の変力性特性(inotropic property)を有する証拠が積み重ねれつつある。in vitroの収縮性のパラメータならびに細胞毒性は、IL−6濃度に影響される。本明細書に記載した、BAECシステムで処理したサイトカイン富化生体液では、試験流体からのIL−6の枯渇がもたらされる。各BAECシステムの、心筋細胞の抑制および細胞毒性を改変する能力は、IL−6除去の前後の生体液で培養された細胞における、これらのパラメータを比較することによって実証される。これらの実験は、これらの生物活性回路の生物学的影響への洞察を提供する。さらに、これらの実験は、候補タンパク質(単数または複数)を除去するための生体液の処理、および細胞機能に対するタンパク質除去の効果の特徴付け(細胞機能に対するタンパク質の仮定された影響によって導かれる、細胞型の選択)についての枠組みを提供する。
【0073】
方法
心室筋細胞を、成体雄Sprague-Dawleyラット(300〜400g)から得て、以前に記載されている標準的な酵素技術を用いて、コラゲナーゼ灌流法により調製する(Lee et al. (1979) Nature 278(5701):269-71;Louch et al. (2011) Journal of Molecular and Cellular Cardiology 51(3):288-98)。単離された細胞は、10
4細胞/mLの濃度に希釈し、24ウェルプレート中(2mLのアリコート)37℃、5%CO
2にて、生物学的試験溶液と共に0〜48時間インキュベートする。
【0074】
心筋抑制活性の検出
使用する方法は、以前にPathan et al. (2002) Critical Care Medicine 30(10):2191-8に記載されたものから適合される。タイロード液中での心室筋細胞(140mMのNaCl、6mMのKCl、1mMのMgCl
2、2mMのCaCl
2、10mMのグルコース、10mMのN−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸、さらに、pHを7.3〜7.4に調節するためのNaOH)は、倒立顕微鏡のステージ上のPerspexチャンバーに入れ、表面に自然に付着させる。5分後、細胞を1ml/分の速度でタイロード液で灌流し、37℃に温める。収縮は、電場刺激(0.5Hz、30V、0.2ミリ秒)によって誘導する。個々のセルは、モニタに表示される。エッジ検出装置を用いて細胞長さを測定し、収縮による長さの変化を電気信号として送信する。筋細胞収縮は、収縮の振幅、収縮速度および弛緩速度によって特徴付けられる。
【0075】
心室筋細胞の生存率の決定
試験溶液を添加した後、細胞生存率を定量的に評価するために、比色アッセイ(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド[MTT]キット、Promega G4100; Madison, WI)を使用する。生きている心筋細胞では、黄色のテトラゾリウム塩が、不溶性の紫色のホルマザン結晶に代謝される。界面活性剤を添加して結晶を可溶化し、色はその後に分光光度法によって定量する。
心室筋細胞に対する試験物質の影響
細胞収縮性は、試験物質への暴露の直前および5分後に特徴付けて、筋細胞収縮の急性変化を評価する。潜在効果は、インキュベーションの24〜48時間後に測定する。細胞生存率は、試験溶液中でのインキュベーションの24時間後および48時間後に定量化する。
【0076】
例3:生物学的に活性な体外回路を使用した、敗血症ラットからの循環サイトカインの固定化
インターロイキン−6は、髄膜炎菌性敗血症における心筋抑制および急性腎障害の発症に関与する。ここでは、体外回路技術を、盲腸結紮穿刺(CLP)モデルで敗血症にされたラットに用いて、次にIL−6除去のためにBAECシステムに接続する。サイトカイン濃度を所定の時間間隔で測定する。心筋機能は心エコー検査によって評価し、腎障害は、血清BUNおよびクレアチニン、ならびに剖検組織学によって特徴付ける。IL−6レベルは、心筋機能および腎障害の測定値と相関する。
【0077】
心エコー検査は、小型の動物における心臓血管系を画像化するための一番の方法であるが、その理由は、これが非侵襲的で汎用性が高く、一連の研究に広く利用可能で適しているからである。グローバルな収縮機能の指標を、容易かつ確実に得ることができる。血中尿素窒素(BUN)および血清クレアチニンの上昇は、マウスにおけるIL−6に関連する腎障害で測定されており、これは障害の組織学的死後マーカーと相関している。これらの理由のために、心エコー検査を用いて心筋機能を連続的に測定し、BUNおよびクレアチニンは、血液循環からのIL−6の除去に伴う腎機能を測定するために用いる。
負の変力性特性を有することに加えて、IL−6は、急性腎障害(AKI)を媒介することが実証されている。したがって、盲腸結紮穿刺により敗血症にされたラットは、心筋抑制および、IL−6濃度の循環と直接相関するAKIを呈するはずである。ここで、BAECシステムを、敗血症ラットにおけるIL−6レベルの減衰について試験する。生物活性回路を用いた処理を受けている間、IL−6レベルを経時的に測定する。心エコー検査を用いて、心筋機能を測定する;血中尿素窒素、クレアチニンおよび死後組織学を用いて、AKIの程度を測定する。これらのパラメータは循環するIL−6レベルと相関し、これらのシステムがin vivoでどのように実行されるかについての洞察を提供する。
【0078】
方法
敗血症性ショックの誘導と静脈−静脈回路の開始
ここでは、敗血症ラットを静脈−静脈回路(
図5)に接続する。腹腔内ナトリウムペントバルビタール(50mg/kg)による麻酔の誘導後、成体雄Sprague-Dawleyラットに、盲腸結紮穿刺(CLP)によって敗血症をもたらす。蘇生液として50mL/kgの生理食塩水を皮下ボーラス投与し、動物をケージに戻し、食物および水を自由に摂取させる。7時間後、CLP動物に再度麻酔し、気管切開を介して血管カテーテルを挿管する。機械的換気を、ハーバードげっ歯類ベンチレーターにより10mL/kgの一回換気量で行って、動脈PO
2を35〜45mmHgの間に維持する。右大腿静脈と右頸静脈を分離し、適切なサイズの血管カテーテルでカニューレを挿入する。ヘパリン(1000IU)を、回路にフローを開始する前に投与する。回路は、30−40ml/分(100ml/kg/分)の速度で流れるように設定する。動物は、表面改質ECまたは磁気的補助されたIL−6除去のいずれかで処置される。所定の時間間隔で、心筋機能(収縮期駆出率、短縮フラクション)を心エコー検査によって監視する。BUNおよび血清クレアチニンをサンプリングして、急性腎障害(AKI)を同定する。循環IL−6およびTNF−アルファ濃度は、ラット特異的ELISAにより処置の間モニタリングする。
【0079】
IL−6除去のための表面改質EC
CLPの7時間後、表面改質EC群に割り当てられた動物を、機械的な換気に供して回路上に配置する。血液を三方コックから取り出し、心エコー検査は、CLPの8、12、16、および20時間後に行う。
磁気補助IL−6除去
CLPの7時間後、機能的強磁性マイクロ粒子群に割り当てられた動物を、機械的な換気に供して回路上に配置する。強磁性マイクロ粒子は、カニューレ挿入手順の間に静脈内注射する。外部磁場を、CLPの8、12および16時間後に静脈リザーバに印加して、循環からオプソニン化サイトカインを除去する。血液を取り出し、心エコー検査を、CLPの8、12、16、および20時間後に行う。
【0080】
腎臓の組織学的評価
敗血症誘発性AKIのためのいくつかの異なる病態生理学的メカニズムが提案されており、全身性サイトカインストームまたは局所的サイトカイン反応が主要な特徴である。最近、IL−6媒介性炎症が、虚血後の腎障害を増強することが実証されている。腎臓を安楽死後のラットから取り出して、ホルムアルデヒドで固定し、次いでエタノールで脱水する。組織をパラプラストに包埋して切片化し、次にキシレンで脱パラフィン化し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。次いで試料を、多形核(PMN)白血球の腎組織への流入について評価する。皮質の間隙空間への浸潤白血球の総数は、20高倍率視野におけるPMNの数をカウントすることによって定量的に評価する。
マロンジアルデヒド(MDA)測定
腎臓試料中のMDAレベルを、炎症から生じる脂質過酸化の指標として決定する。腎組織試料を1.15%KCl溶液中で均質化し、ホモジネートをSDS、酢酸、チオバルビツール酸、および蒸留水の反応混合物に加える。混合物を煮沸した後、MDAを分光光度的方法(650nm)で定量する。
【0081】
ICAM−1およびP−セレクチンの免疫組織化学的分析
腎切片におけるICAM−1およびP−セレクチンの局在を、前の記載と同様にして決定する(Patel et al. (2005) Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 312(3): p. 1170-8)。腎切片を、一次抗ICAM−1または抗P−セレクチン抗体[PBS中1:500(v/v)]と共に、4℃で一晩インキュベートする。内因性のアビジンとビオチンをブロックした後、抗原−抗体複合体の特異的標識を、色素原ジアミノベンジジンを用いて可視化する。
統計分析
全ての分析は、IBMのSPSS統計19ソフトウェアを使用して実施する。特に明記しない限り、全ての結果は、連続スケールで測定する。群間の、収縮振幅、収縮振幅および細胞生存率におけるパーセンテージ変化の比較は、マン−ホイットニー検定により評価する。クラスカルワリス検定を用いて、群間の、インターロイキン6、BUNおよびクレアチニン濃度の差を評価する。短縮フラクションおよび収縮期駆出率についての臨床群間比較も、クラスカルワリス検定を用いて行う。組織学的スコアリングのために、データは一元配置分散分析を用いて分析する。
【0082】
例4:生体液から循環するサイトカインを選択的に除去可能なポリマーチューブの表面改質を含む、生物学的に活性な体外回路(BAEC)の構築
BAECを、3mmの内径を有するポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)のチューブを使用して開発した。最初に、VEGFを特定のサイトカインの例として標的化し、PDMSチューブの内面を機能化して、ポリマー基材が抗VEGF抗体にAPTMS−NHS PEGマレイミドリンカーを介して接続されるようにした。これにより、チューブを通過する生体液からVEGFを選択的に除去可能な表面が作製された。
方法
BAEC表面機能化
PDMSチューブの管腔表面の機能化は、4つの連続反応(
図6)を介して達成された。第1に、PDMS表面を、プラズマ酸化剤を2分間用いて酸化して、反応性のSi−OH部分を作製した。第2に、活性化されたPDMS表面を、乾燥アセトン中5%(w/v)アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)と共に60分インキュベートして、APTMSをシラノール部分に共有グラフトした。第3に、NHS−PEG−マレイミドをpH8.5で添加し、PDMS表面に付着した(APTMS)−(マレイミドPEG)アンカーをもたらした。加水分解を防ぐために、チューブは、pH5.5で、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)中で保存した。第4に、抗VEGF抗体を加え、(APTMS)−(マレイミドPEG)アンカーを、抗体のチオール基に共有結合させた。非特異的結合を減少させるために、表面は、リン酸緩衝生理食塩水中(pH7.4)の5%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)で48時間インキュベートした。
【0083】
生物学的試験溶液の調製
VEGF(標的サイトカイン)およびIL−6(非標的対照サイトカイン)の懸濁液を、リン酸緩衝生理食塩水中(pH7.4)の5%(w/v)BSA溶液中に、2000pg/mlの濃度で調製した。
実験の設定
生物学的試験溶液を、出口と、抗VEGF抗体で機能化されたPDMSチューブによって接続された入口とを有するリザーバに入れた。回路を通るリザーバ流体の連続循環は、37℃にて40mL/分の生理学的に関連する流量で、蠕動ポンプにより駆動された。
サイトカイン濃度の評価
処理された生物学的試験液中のVEGFおよびIL−6の濃度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって経時的に定量した。循環する全てのVEGFは、4時間後に溶液から除去されたが、IL−6は大きく影響されなかった(
図7)。
【0084】
例5:生体液から循環するサイトカインを選択的に除去可能なマイクロ流体チャネルの表面改質を含む、生物学的に活性な体外回路(BAEC)の構築
BAECを、マイクロ流体チャネルを使用して開発する。PDMSマイクロ流体チャネルは、20〜80マイクロメートル(μm)の範囲の内径を用いて構築されてきた。例4の方法を使用して、PDMSマイクロ流体チャネルの内面を機能化して、ポリマー基材が抗VEGF抗体にマレイミドリンカーを介して接続されるようにした。これにより、マイクロ流体チャネルを通過する生体液からVEGFを選択的に除去可能なシステムが作製された。
【0085】
例6:細胞培養モデルにおけるサイトカイン除去(scavenging)の生物学的効果の実証
VEGFおよびIL−6は、in vivoでの微小血管透過性(すなわち毛細血管漏出)を強化し、in vitroで内皮細胞単層の透過性を増加させる。半透膜上に成長した内皮細胞単層は、アルブミンに対して不透過性である。VEGFおよび/またはIL−6でインキュベートした場合、これらは時間と共に透過性となる(毛細血管漏出の発生に類似している)。これは、拡散アルブミン透過性アッセイにより定量化することができる。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、VEGFおよび/またはIL−6を含有する培地(未処理のサイトカイン培地)で、所定の時間インキュベートする。分離されたHUVEC単層を、VEGFおよび/またはIL−6を除去するために様々な時間機能化された回路を通る循環に供された、サイトカインが富化された培地中(すなわち処理培地)でインキュベートする。拡散アルブミン透過性を各集団で定量化し、選択的サイトカイン濾過の、毛細管漏出の発生に対する影響を記録する。
【0086】
均等物
本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの側面を説明したが、様々な変更、修正および改良が、当業者に容易に想起されるであろうことが理解されるべきである。かかる変更、修正および改良は、本開示の一部であることが意図され、また本発明の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、前述の説明および図面は例示に過ぎない。
当業者は、日常的な実験以上のものを使用することなく、本明細書に記載の本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識し、または確認することができるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
本明細書に開示された特許文献を含む全ての文献は、特に本明細書で参照された開示に関し、その全体が参照により組み込まれる。この出願は、2012年2月22日に出願されたPCT出願PCT/US2012/026008、名称「Particles and Other Substrates Useful in Protein Purification and Other Applications」の全図面および明細書の全部分を含むその内容全体を、参照によって組み入れる。