特許第6404242号(P6404242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404242がんの治療のための併用療法としてのエリブリンおよびレンバチニブの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404242
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】がんの治療のための併用療法としてのエリブリンおよびレンバチニブの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20181001BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20181001BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20181001BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20181001BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20181001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61K31/47
   A61K31/357
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
   A61P43/00 121
【請求項の数】24
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-562231(P2015-562231)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公表番号】特表2016-528162(P2016-528162A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】JP2014067723
(87)【国際公開番号】WO2014208774
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月23日
(31)【優先権主張番号】61/839,542
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】野本 研一
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ジアイ
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/129100(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/166899(WO,A1)
【文献】 特表2008−501715(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/144463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72,
A61K31/00−31/80,
A61K47/00−47/69,
A61P1/00−43/00
CAplus (STN),,
MEDLINE (STN),
EMBASE (STN),
BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療するための組合せ医薬であって、(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組合せ医薬。
【請求項2】
前記対象が、ヒト患者である、請求項1に記載の組合せ医薬。
【請求項3】
前記対象が、がんと診断される、がんの治療中である、またはがんからの治療後回復期である、請求項1または2に記載の組合せ医薬。
【請求項4】
前記がんが、原発性腫瘍、転移または固形腫瘍である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項5】
前記がんが、乳がん、膵がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、皮膚がん(例えば黒色腫)、前立腺がん、脳がん、頭頚部がん、肝がん、腎臓がん、膀胱がん、胃がん、消化器がん、血液のがん(例えば白血病)、リンパ系のがん、甲状腺がん、骨がん(例えば骨肉腫)および線維肉腫からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項6】
前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸エリブリンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項7】
前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸レンバチニブである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項8】
前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、静脈内注入により投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項9】
前記静脈内注入が、約1分から約20分間、または約2分から約5分間である、請求項に記載の組合せ医薬。
【請求項10】
前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、約0.1mg/mから約20mg/mの範囲にある量、または約1.4mg/mもしくは1.1mg/mの量で投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項11】
前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、21日サイクルの1日目および8日目の各々に1回投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項12】
前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、経口で投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項13】
前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、約0.1mgから約100mgの範囲にある量、または約4mgから約24mgの範囲にある量で投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項14】
前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、毎日投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項15】
前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩、および前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、実質的に同時にまたは連続して投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項16】
前記治療が、(i)がん細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍体積を減少させる;(iii)腫瘍退縮速度を増大する;(iv)周辺の器官へのがん細胞浸潤を減少または遅延させる;(v)腫瘍転移を減少または遅延させる;(vi)腫瘍成長を減少または阻害する;(vii)がんの出現および/または再発を防止または遅延させる、および/または無病もしくは腫瘍なしの生存期間を延長する;(viii)全生存期間を増大する;(ix)治療の頻度を減少させる;および/または(x)がんに関連した症状の1つまたは複数を緩和する、請求項1から15のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項17】
対象におけるがんを治療する、腫瘍サイズを減少させる、または腫瘍に対する免疫応答を誘発または増大するのに使用するためのキットであって、(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、キット。
【請求項18】
(i)前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩、および(ii)前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、剤形である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
エリブリンまたはその薬学的に許容される塩を含む、がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療するための医薬組成物であって、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩と共に対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項20】
レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療するための医薬組成物であって、エリブリンまたはその薬学的に許容される塩と共に対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項21】
前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩、および前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、実質的に同時にまたは連続して投与される、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸エリブリンである、請求項19から21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸レンバチニブである、請求項19から21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象の治療において使用するための、または対象における腫瘍のサイズを減少させるための医薬品の調製における、(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過剰な細胞増殖、例えばがんに関連した疾患を治療するのに使用するための方法および組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
がんは、特定のタイプの細胞の制御できない悪性の成長によって各々特徴づけられる広範な疾患を記述するために使用される用語である。このような細胞を含む組織で始まり、がんが、診断の時点でなんらさらなる組織に広がっていない場合、例えば、手術、放射線照射、または別のタイプの局所療法により治療されうる。しかし、がんがその起源の組織から転移した証拠がある場合、治療に対して異なるアプローチ法が一般に使用される。実際に、転移の範囲を決定することが可能でないので、治療に対する全身的なアプローチ法は、拡散のなんらかの証拠が検出されたときに通常には行われる。これらのアプローチ法は、例えば、急速な分裂細胞、例えばがん細胞の成長に干渉する化学療法剤の投与に関連する。
【0003】
ハリコンドリンBは、海綿のクロイソカイメン(Halichondria okadai)から当初単離され、順次、アキシネラ属(Axinella)種、パケリア・カルテリ(Phakellia carteri)およびリソデンドリクス(Lissodendoryx)種で見出された構造的に複雑な巨大環状化合物である。ハリコンドリンBの総体合成は、1992年に刊行された(Aicher et al., J. Am. Chem. Soc. 114:3162-3164, 1992)。ハリコンドリンBは、チューブリン重合、微小管アセンブリ、β−チューブリン架橋、チューブリンに結合するGTPおよびビンブラスチン、およびインビトロでのチューブリン依存性GTP加水分解を阻害することが示された。この分子は、インビトロおよびインビボで抗がん特性を有することも示された。抗がん活性を有するハリコンドリンB類似体は、米国特許第6,214,865 B1号に記載されている。
【0004】
エリブリンは、ハリコンドリンBの合成類似体である。エリブリンは、ER−086526としても知られており、CAS番号253128−41−5およびUS NCI表示番号NSC−707389が割り当てられた。エリブリンのメシル酸塩(メシル酸エリブリン、商品名HALAVEN(登録商標)の下に市販されており、E7389としても知られている)は、術後補助療法または転移治療のいずれかでアントラサイクリンおよびタキサンを含むに違いない転移性疾患の治療のために少なくとも2回の化学療法レジメンを先に受けた乳がんを有する患者の治療に関して承認されている。
【0005】
メシル酸エリブリンについての化学名は、
(2R,3R,3aS,7R,8aS,9S,10aR,11S,12R,13aR,13bS,15S,18S,21S,24S,26R,28R,29aS)−2−[(2S)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル]ヘキサコサヒドロ−3−メトキシ−26−メチル−20,27−ビス(メチレン)−11,15:18,21:24,28−トリエポキシ−7,9−エタノ−12,15−メタノ−9H,15H−フロ[3,2−i]フロ[2’,3’:5,6]ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキサシクロペンタコシン−5(4H)−オン、メタンスルホネート(塩)であり、それは、
【0006】
【化1】
として表すことができる。
【0007】
E7080(メシル酸レンバチニブとしても知られる)は、血管内皮増殖因子(VEGF)、繊維芽増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRα)、KITがん原遺伝子受容体およびRETがん原遺伝子受容体を含む複数の受容体チロシンキナーゼ(例えば、血管新生および腫瘍増殖に関連する受容体チロシンキナーゼ)の活性阻害剤である。それは、CAS番号857890−39−2が割り当てられた(417716−92−8も参照されたい)。メシル酸レンバチニブについての化学名は、4−[3−クロロ−4−[[(シクロプロピルアミノ)カルボニル]アミノ]フェノキシ]−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド、メタンスルホネート(1:1)である。[それは、4−[3−クロロ−4−(N’−シクロプロピルウレイド)フェノキシル]−7−メトキシキノリン−6−カルボキサミド、およびN−{4−[(6−カルバモイル−7−メトキシキノリン−4−イル)オキシ]−2−クロロフェニル}−N’−シクロプロピル尿素モノメタンスルホネートとも名付けられる。]メシル酸レンバチニブは、
【0008】
【化2】
として表すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、エリブリンとレンバチニブの併用が(例えば、相乗的な)抗腫瘍効果を改善することを示すという観察に基づいている。したがって、本発明は、がん治療レジメンでのエリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)およびレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)の共投与、ならびにこのような治療のためのこれらの薬剤の使用を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象(例えば、ヒト患者)を治療する方法を提供する。その方法は、対象に(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸レンバチニブ)を投与することを含む。本発明は、本明細書に記述されるとおり、そのような対象の治療のためのこれらの薬剤の使用、ならびにそのような対象の治療のための医薬品の調製のためのこれらの薬剤の使用も提供する。本明細書の方法の説明全てが、このような使用の内容で利用可能である。
【0011】
対象は、がんと診断されたとき、がんの治療中、またはがんからの治療後回復期でありうる。さらに、がんは、原発性腫瘍、転移、および/または固形腫瘍でありうる。種々の例において、がんは、乳がん、膵がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、皮膚がん(例えば黒色腫)、前立腺がん、脳がん、頭頚部がん、肝がん、腎臓がん、膀胱がん、胃がん、消化器がん、血液のがん(例えば白血病)、リンパ系のがん、甲状腺がん、骨がん(例えば骨肉腫)および線維肉腫からなる群から選択することができる。
【0012】
エリブリンまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)を、例えば約1分から約20分間、または約2分から約5分間静脈内注入によって投与することができる。さらに、エリブリンまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)を、約0.1mg/mから約20mg/m、または約1.4mg/mまたは1.1mg/mの範囲にある量で投与することができる。さらに、エリブリンまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)を、21日サイクルの1日目および8日目の各々に1回投与することができる。
【0013】
レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸レンバチニブ)を、経口で、例えば約0.1mgから約100mg、または約4mgから約24mgの範囲にある量で投与することができる。さらに、種々の例で、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸レンバチニブ)を毎日投与することができる。
【0014】
エリブリンまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸レンバチニブ)を、実質的に同時にまたは連続して投与することができる。
【0015】
本発明の方法による治療は、(i)がん細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍体積を減少させる;(iii)腫瘍退縮速度を増大する;(iv)周辺の器官へのがん細胞浸潤を減少または遅延させる;(v)腫瘍転移を減少または遅延させる;(vi)腫瘍成長を減少または阻害する;(vii)がんの出現および/または再発を防止または遅延させる、および/または無病もしくは腫瘍なしの生存期間を延長する;(viii)全生存期間を増大する;(ix)治療の頻度を減少させる;および/または(x)がんに関連した症状の1つまたは複数を緩和することができる。
【0016】
本発明は、対象における腫瘍のサイズを減少させる方法も含む。これらの方法は、対象に(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸レンバチニブ)を投与することを含む。さらに、本発明は、本明細書に記述されるとおり、対象における腫瘍のサイズを減少させるためのこれらの薬剤の使用を含む。
【0017】
さらに、本発明は、対象におけるがんを治療する、腫瘍サイズを減少させる、または腫瘍に対する免疫応答を誘発または増大するのに使用するためのキットを含む。キットは、(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸レンバチニブ)を含む。任意選択で、これらの薬剤は、剤形で存在する。
【0018】
本発明の他の特徴は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】マウスのA375ヒト悪性黒色腫異種移植モデルにおけるE7389をE7080と併用した抗腫瘍効果を示すグラフである。データは、平均±SEM(n=6)を表す。移植後17日および24日での矢印は、治療の開始日を示し、矢印は、E7389を表し、線は、E7080を表す。i.v.=静脈内、p.o.=per os(経口)、Q1D×14=14日間1日1回、Q7D×2=2週間週に1回。*30日目のE7389 3.0mg/kg単一薬剤に対するP<0.05(ダネット多重比較検定に続く一元配置分散分析)。
図2】E7389単独、E7080単独、およびE7389+E7080の併用で治療した動物の相対体重変化を示すグラフである。データは、平均±SEM(n=6)を表す。移植後17日および24日における矢印は、治療の開始日を示し、矢印は、E7389を表し、線は、E7080を表す。i.v.=静脈内、p.o.=per os(経口)、Q1D×14=14日間1日1回、Q7D×2=2週間週に1回。単独で、E7389が3.0mg/kgで投与された後、および併用治療群で体重減少が観察された。体重減少からの部分的回復は、薬物治療の完了で全てのマウスで観察された。
図3】マウスのNCI−H1993(左)またはPC−9(右)ヒト非小細胞肺がん異種移植片におけるE7389をE7080と併用した抗腫瘍効果を示すグラフである。データは、平均±SD(n=5)を表す。0日目および7日目における矢印は、E7389の注入を示し、0日目から11日目までの線は、E7080の治療を示す。i.v.=静脈内、p.o.=per os(経口)、Q1D×12=12日間1日1回、Q7D×2=2週間週に1回。*P<0.05:併用群対各単独療法群の統計学的分析(測定されたANOVA検定が繰り返される)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、エリブリンおよびレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸塩)の投与に関与するがんを治療する方法、ならびにがん治療のためのこれらの薬剤の使用またはそのための医薬品の調製を提供する。下の実施例区分に示されるとおり、メシル酸エリブリンおよびメシル酸レンバチニブは、併用される場合、互いの抗がん効果を増強する。一例では、併用療法が、腫瘍退縮を生じる。したがって、本発明の方法によりエリブリンおよびレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸塩)を投与することによるがんの治療は、(i)がん細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍体積を減少させる;(iii)腫瘍退縮速度を増大する;(iv)周辺の器官へのがん細胞浸潤を減少または遅延させる;(v)腫瘍転移を減少または遅延させる;(vi)腫瘍成長を減少または阻害する;(vii)がんの出現および/または再発を防止または遅延させる、および/または無病もしくは腫瘍なしの生存期間を延長する;(viii)全生存期間を増大する;(ix)治療の頻度を減少させる;および/または(x)がんに関連した症状の1つまたは複数を緩和することができる。
【0021】
医薬組成物、投与量、および方法
エリブリン(およびその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)の合成の方法は、例えば米国特許第6,214,865号;米国特許第7,982,060号;米国特許第8,350,067号;および米国特許第8,093,410号に記述されており、その各々は、参照により本明細書に組み込まれる。レンバチニブ(およびその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)に関連する方法およびその合成は、例えば米国特許第7,612,092号に記述されており、それは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
上述のとおり、エリブリンおよび/またはレンバチニブは、塩形態で本発明において任意選択で使用することができる。無機酸塩であろうと有機酸塩であろうと、使用される塩に関してなんの特定の制限もない。例えば、塩は、メタンスルホン酸塩(例えば、メシル酸エリブリンまたはメシル酸レンバチニブ)、塩酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、スーパーリン酸塩(super phosphoric acid salt)、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリシン酸(salicic acid)塩、酒石酸塩、パントテン酸塩(pantotenic acid salt)、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(パモエート)等から選択しうる。
【0023】
エリブリンまたはレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸塩)を含む医薬組成物は、当業界で知られる標準方法を使用して調製することができる(例えば上述の特許を参照されたい)。本発明で使用される医薬組成物は、例えば生理学上許容しうる希釈剤、担体、賦形剤または安定化剤中で所望程度の純度を有する活性成分を混合または溶解することにより調製することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (20thedition), ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PAを参照されたい)。許容しうる希釈剤としては、水および生理食塩水が挙げられ、任意選択で、緩衝剤、例えばリン酸、クエン酸または他の有機酸;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸を含めた抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性高分子、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン;単糖類、二糖類、またはグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含めた他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはPEGが挙げられる。
【0024】
任意選択で、本発明の配合物は、薬学的に許容される保存剤を含有する。いくつかの実施形態では、保存剤濃度は、0.1%から2.0%、典型的にv/vの範囲にある。適切な保存剤としては、製薬業界で知られているもの、例えばベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンが挙げられる。さらに、エリブリンおよび/またはレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸塩)配合物は、薬学的に許容される塩、例えば塩化ナトリウムを、例えばおよそ生理学上の濃度で、任意選択で含む。したがって、一例で、エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)は、0.9%塩化ナトリウム注射液(USP)中で配合される。別の例では、レンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)は、経口投与のために、例えば液体、錠剤またはカプセル形態で配合される。
【0025】
いくつかの例で、上述の配合物(および他のもの)は、薬物の非経口投与のために使用されることができる。したがって、薬物は、静脈内、腫瘍内、腫瘍周囲、動脈内、皮内、膀胱内、眼の、筋肉内、皮内、腹腔内、肺、皮下および経皮経路を含めた経路により投与することができる。例えば経粘膜、経皮、吸入、膣内、直腸および経口投与経路を含めた他の経路も使用することができる。
【0026】
投与されるエリブリンおよび/またはレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸塩)の投与量は、当業者により評価されうるとおり、他の因子と共に、標的疾患のタイプ、デリバリー方法の選択、ならびに患者の年齢、性別および体重、症状の重度に依存して著しく異なりうる。所望の効果(例えば、腫瘍退縮;例えば、上で規定された効果(i)〜(x)の列挙も参照されたい)を得る量およびレジメンを使用して、薬物が投与される。量は、当業界で知られるとおり、がん治療の1つまたは複数の特徴で付加的または相乗的効果(例えば腫瘍退縮)を有しうる。
【0027】
薬物は、実質的に同時にまたは連続して、またはいずれかの順で(例えば、レンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)の前にエリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)の投与、またはその逆)で患者に投与することができる。化学療法剤を投与するために使用される多くのレジメンは、例えば、薬物(または複数の薬物)の投与、続いて例えば患者が治療のなんらかの有害な副作用から回復する期間(例えば、1週〜4週)の後のこの治療の反復に関する。典型的には、エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)および/またはレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)投与のサイクルの数は、4回〜8回、例えば4回〜7回または6回である。各投与で両方の薬物を使用すること、または代わりに、望ましくはいくつか(または全て)の治療にただ1つの薬物を含ませてもよい。
【0028】
したがって、例えば、エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)の1日投与量は、例えば、0.001mg/mから約100mg/m(例えば、約0.01mg/mから約50mg/m、0.1mg/mから約5mg/mの範囲で、または約0.7mg/mから約1.5mg/mの範囲で、またはこれらの範囲にある任意の1用量で(例えば、1.4mg/mまたは1.1mg/m))の範囲内としうる。薬物は、1用量として1日、1週、1月または1年1回を投与しうる。または1日、1週、1月または1年当たり1回用量超の薬物を投与しうる。例えば、1つの投与プロトコールで、薬物は、21日サイクルの1日目および8日目に1日1回投与しうる。別の例で、薬物は、28日サイクルの1日目、8日目および15日目に1日1回投与しうる。薬物は、例えば1分から1時間(またはより長く)の経過にわたり、例えば2分から5分かけて投与しうる。
【0029】
さらに具体的には、一例で、メシル酸エリブリンの推奨用量は、21日サイクルの1日目および8日目に2分から5分かけて静脈内で投与される1.4mg/mである。穏やかな肝障害(Child−Pugh A)を有する患者におけるメシル酸エリブリンの推奨用量は、21日サイクルの1日目および8日目に2分から5分かけて静脈内で投与される1.1mg/mである一方で、中程度の肝障害(Child−Pugh B)を有する患者におけるメシル酸エリブリンの推奨用量は、21日サイクルの1日目および8日目に2分から5分かけて静脈内で投与される0.7mg/mである。さらに、中程度の腎障害(30〜50mL/分のクレアチニンクレアランス)を有する患者におけるメシル酸エリブリンの推奨用量は、21日サイクルの1日目および8日目に2分から5分かけて静脈内で投与される1.1mg/mである。別の例では、1.1mg/mメシル酸エリブリンが、28日サイクルの1日目、8日目および15日目に2分から5分かけて静脈内で投与される。
【0030】
その薬物は、例えば約0.1mgから約100mg、例えば約4mgから約24mgの範囲で、または、この範囲(例えば15mg)内の任意の1回量で投与しうるが、成人についてのレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)の1日投与量は、特に限定されない。薬物は、1用量として、1日、1週、1月または1年1回投与しうる。または、1日、1週、1月または1年当たり1用量超の薬物を投与しうる。例えば、1つの投与プロトコールでは、薬物は、21日サイクルの1日目および8日目に1日1回投与しうる。他の実施形態で、薬物は、28日サイクルの1日目、8日目および15日目に、または35日サイクルの1日目、8日目、15日目および22日目に1日1回投与しうる。代わりに、薬物は、エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)の投与のサイクルの経路を通して1日1回投与し、その後、任意選択で、薬物は、エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)投与の1つまたは複数の追加のサイクルの経路を通して毎日投与しうる。さらに、レンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)は、1つまたは複数のサイクルのエリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)治療の完了に続き定期的に(例えば、毎日、毎週、または週に2回)、任意選択で、さらに数週、数か月または数年間(例えば、無期限に)投与しうる。
【0031】
エリブリンおよびレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸塩)について上述の投薬レジメンは、同じ「1日目」に典型的に開始し、様々のレジメン(例えば、上述のもののいずれか1つ)は、2つの薬物について一緒に使用することができる。したがって、例えば、両方の薬物は、21日サイクルの1日目および8日目に投与しうる。両方の薬物は、28日サイクルの1日目、8日目および15日目などに投与しうる。代わりに、1つの薬物(例えば、エリブリン、またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)は、21日サイクルの1日目および8日目に投与しうる。一方で、他の薬物(例えば、レンバチニブ、またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)は、28日サイクルの1日目、8日目および15日目に投与しうる。別の選択肢では、エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)は、21日サイクルの1日目および8日目に2分から5分かけて静脈内で投与される。一方で、レンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)は、エリブリン、またはその薬学的に許容される塩(例えばメシル酸エリブリン)と同じ日に、4mg〜24mgで開始しながら1日1回投与される。
【0032】
エリブリンおよびレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸塩)に加えて、本発明の方法は、1つまたは複数の追加の治療薬剤の投与も含みうる。これらの薬剤の中で、免疫調節剤(例えば、抗体またはワクチン)、化学療法剤/抗腫瘍剤、抗細菌剤、制吐剤、および抗炎症剤が適切である。
【0033】
本発明の方法は、対象(例えば、ヒト患者)におけるがんを治療または予防するためにおよび/または腫瘍サイズを減少させるために使用できる。対象は、がんと診断される、がん発生のリスクのある、がんの治療中である、またはがんからの治療後回復期でありうる。さらに、方法は、転移および/または再発を治療または予防するために使用することができる。腫瘍を除去するかまたは腫瘍のサイズを減少させるために手術的手段、放射線療法、および/または焼灼療法と併用した治療も見据えられるが、治療は、化学療法単独としてもよい。
【0034】
本発明の方法により治療することができるがんのタイプとしては、例えば、乳がん、膵がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、皮膚がん(例えば黒色腫)、前立腺がん、脳がん、頭頚部がん、肝がん、腎臓がん、膀胱がん、胃がん、消化器がん、血液のがん(例えば白血病)、リンパ系のがん、甲状腺がん、骨がん、(例えば骨肉腫)および線維肉腫が挙げられる。
【0035】
キット
本発明は、エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)を有する容器および/またはレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)を有する容器を含むキットも提供する。そのようなキット中の薬物は、がんを治療する必要のある患者でそれを治療するのに十分な量(例えば、単回投与に、または複数投与に十分な量)で提供することができる。したがって、キットは、1用量エリブリン(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸エリブリン)および/またはレンバチニブ(またはその薬学的に許容される塩、例えばメシル酸レンバチニブ)医薬組成物の有効量を各々含む複数容器を含みうる。任意選択で、医薬組成物を投与するのに必要な装置、デバイスおよび/または希釈剤もキットに含まれうる。さらに、キットは、がんを有する患者をその薬物で治療するための追加の構成要素、例えば指示または投与スケジュールを含みうる。
【0036】
本発明を以下の実施例により例示するが、これは本発明を限定するものではない。
実施例
【実施例1】
【0037】
マウスのA375ヒト悪性黒色腫異種移植片におけるE7389をE7080と併用した効果
要旨
静脈内E7389(メシル酸エリブリン)を経口E7080(メシル酸レンバチニブ)と併用した抗腫瘍活性を、メスの胸腺欠損マウスにおける皮下のA375ヒト悪性黒色腫異種移植片を用いた前臨床モデルで実験した。E7389を、0.05、0.2、または3.0mg/kg(最大耐用量[MTD])、単独で投与するか、15mg/kgのE7080(MTD)と同時投与した。E7389とE7080の併用は、腫瘍退縮を生じた一方で、各単一薬剤は、腫瘍成長の遅延を生じた。15mg/kgのE7080の14日間毎日投薬(Q1D×14)と併用した2週間、週当たり1回(Q7D×2)スケジュールでの3.0mg/kgのE7389の投与は、動物において追加の体重減少を生じた。しかし、体重は、薬物治療の完了により回復した。
【0038】
方法
試験化合物の投薬配合物の調製
E7080を、WFIに1.5mg/mLの濃度で溶解した。E7080投薬溶液を7日間配合した。保存溶液を、アリコート量取り、4℃で使用まで保存した。0.5mg/mLのE7389を、0.005mg/mL、0.02mg/mLおよび0.3mg/mLの濃度で生理食塩水中に3%ETOHで希釈した。E7389を、投薬の各日について新たに配合した。
【0039】
抗腫瘍活性の測定
A375ヒト悪性黒色腫細胞を、5%CO加湿インキュベーター中、37℃で10%胎仔ウシ血清および1%のペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミンで補足したダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)成長培地中の単層培養物中で維持した。接種の日に、トリプシン処理により、細胞を収穫し、洗浄し、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Matrigelで1:1(v/v)で混合した。80匹のメスの免疫不全マウス(マウス/Crl:NU−Foxn1nu;Charles River Laboratories)に、A375悪性黒色腫細胞(動物当たり5×10細胞)を、0.1mL体積中で、26ゲージの針を使用して、右腋窩領域の近くに皮下で接種した。
【0040】
実験は、ビヒクルで治療された対照群、E7389またはE7080のいずれかについての単一薬剤薬物治療群および3つの併用薬物治療群(表1で要約される)からなる。各群は、治療の最初の日に総数48匹のマウスについて6匹のマウスからなる。80匹の内48匹のマウスを、それらの腫瘍体積に基づいて選択し、8つの群に無作為に分け、それらは、腫瘍移植の17日後の各群においておよそ300mmの平均腫瘍体積を生じた。無作為化に続き、薬物治療を開始した。10g体重当たり0.1mLの体積で、E7080を、14日間毎日(Q1D×14)経口で投与した。E7389(0.05mg/kg)を、14日間毎日静脈内で投与した。併用群では、E7389を、E7080の経口投与の3時間後に投与した。E7389を0.2mg/kgまたは3.0mg/kgで、単一薬剤として、またはE7080(Q1D×14)との併用のいずれかで、Q7D×2で投与した。対照群を、ビヒクルで治療した(14日間経口の毎日投薬(Q1D×14)についてWFI、および静脈内投薬について生理食塩水中の3%ETOH、Q7D×2スケジュールで)。
【0041】
全般的に健康なマウスを毎日観察した。腫瘍体積を、式(1×w)/2=mm(式中、1およびwは、各測定で収集された大きい方および小さい方の垂直寸法(larger and smaller perpendicular dimensions)を指す)を使用してカリパー測定(mm)により決定した。腫瘍寸法および体重を、治療の最初の日に開始して1週当たり2回記録した。相対体重を以下のとおり計算した:相対体重=(測定の日における体重)/(治療の最初の日における体重)。
【0042】
得られたデータは、各測定で群の平均体重および各測定で群の平均腫瘍体積からなる。腫瘍体積について平均±SEMおよび各実験群について相対体重を計算した。
【0043】
腫瘍測定が、最長軸で≧20mmに達したか、または潰瘍が生じた動物を、研究終結前に安楽死させた。研究を、30日目に終結させた。
【0044】
表1:A375ヒト悪性黒色腫異種移植片におけるE7389をE7080と併用した抗腫瘍活性の調査についての研究デザイン
【0045】
【表1】
【0046】
統計学的分析
E7389の3.0mg/kg単一薬剤投与およびE7080の15mg/kg群との併用の統計学的分析を、一元配置分散分析(ANOVA)、続いてダネット多重比較検定により行った。P<0.05の値は、統計学的に有意であるとみなされた。グラフパッドプリズムソフトウエア(Graphpad prism software)(バージョン5)を使用して、統計学的分析を行った。
【0047】
結果
図1は、マウスのA375ヒト悪性黒色腫異種移植片におけるE7389をE7080と併用した効果を示す。E7389またはE7080のいずれかの単一薬剤投与は、3.0mg/kg(E7389についてのMTD)および15mg/kg(E7080についてのMTD)の最高用量で、腫瘍成長の遅延を生じるが、腫瘍退縮は生じなかった。E7389とE7080の併用は、試験された全用量で、E7389の抗腫瘍活性を増強した。用量依存形態で全ての併用群で腫瘍成長阻害が観察された(図1)。E7080と併用した3.0mg/kgのE7389の投与は、追加の体重減少を引き起こした。しかし、体重減少からの回復が、薬物治療の完了で観察された(図2)。
【0048】
E7080が、14日間1日1回経口で投与された。0.05mg/kgのE7389が、14日間毎日静脈内で投与された。併用設定で、E7389を、E7080の経口投与の3時間後に投与した。0.2mg/kgまたは3.0mg/kgのE7389を単一薬剤として、または併用でのいずれかでQ7D×2で投与した。研究を、移植の30日後に終結させた。3.0mg/kg(Q7D×2)および0.05mg/kgのE7389(Q1D×14)を15mg/kgのE7080毎日投与(Q1D×14)と併用した投与は、この研究で腫瘍退縮を生じた。
【0049】
結論
3.0mg/kgでのE7389単独および併用治療は、A375ヒト悪性黒色腫異種移植モデルにおける強力な抗腫瘍活性を示した。体重減少は、全動物が、薬物治療の終結により部分的に回復したときに可逆的に表れた。15mg/kgのE7080毎日投薬(Q1D×14)と併用したメトロノミックスケジュール(metronomic schedule)(0.05mg/kgのQ1D×14)での低用量で投与されたE7389は、E7389の3.0mg/kg単一薬剤治療と比較して有意な腫瘍退縮を生じた。
【実施例2】
【0050】
併用療法による患者における乳がんの治療
乳がんを有する患者を、以下のプロトコールによりE7389(メシル酸エリブリン)とE7080(メシル酸レンバチニブ)の併用で治療する。E7389を、21日サイクルの1日目および8日目に2分から5分かけて静脈内で1.4mg/mで投与する。同日に開始しながら、E7080は、E7389治療の21日サイクルの各日に、24mg/日で経口で投与される。医療専門家によって決定されるとおり、因子、例えば副作用の発生および重度、ならびに臨床効果に依存して、4〜6サイクルの総数で患者を治療する。任意選択で、E7080治療は、E7389治療サイクルの終了後に継続する。
【実施例3】
【0051】
マウスのNCI−H1993およびPC−9ヒト非小細胞肺がん異種移植片におけるE7389をE7080と併用した効果
要旨
静脈内E7389(メシル酸エリブリン)を経口E7080(メシル酸レンバチニブ)と併用した抗腫瘍活性は、メスの胸腺欠損マウスにおける皮下のNCI−H1993またはPC−9ヒト非小細胞肺がん異種移植片を有する前臨床モデルで試験された。E7389を1.5mg/kg、単独で投与するか、または10mg/kgのE7080と同時投与した。E7389とE7080の併用は、各単独療法のものより明らかに強力な抗腫瘍活性を示した。
【0052】
方法
試験化合物投薬配合物の調製
E7080を、1.0mg/mLの濃度でDW中に溶解させた。0.5mg/mLのE7389を、0.15mg/mLの濃度で、生理食塩水で希釈した。
【0053】
抗腫瘍活性の測定
ヒト非小細胞肺がんセルライン、NCI−H1993およびPC−9を、10%胎仔ウシ血清および1%のペニシリン−ストレプトマイシン−アンホテリシンで補足されたRPMI−1640培地中の単層培養物中に、37℃で、5%CO加湿インキュベーター中で維持した。接種の日に、トリプシン処理により細胞を収穫し、洗浄し、培地/GelTrexで1:1(v/v)に混合した。メスの免疫不全マウス(マウス:BALB/c Slc nu/nu;Japan SLC,Inc.)に、NCI−H1993およびPC−9ヒト非小細胞肺がん細胞(動物当たり10×10細胞)を、0.1mL体積中で、26ゲージの針を使用して、右腋窩領域の近くに皮下で接種した。
【0054】
実験は、注射なしの対照群、E7389(1.5mg/kg)またはE7080(10mg/kg)のいずれかについての単一薬剤薬物治療群、および併用薬物治療群からなった。各群は、5匹のマウスから構成された。マウスは、それらの腫瘍体積に基づいて選択され、腫瘍細胞接種の10日後(NCI−H1993)または8日後(PC−9)各群で、およそ200mm(NCI−H1993:191mm、PC−9:227mm)の平均腫瘍体積を生じる群に無作為に分けられた。無作為化に続いて、薬物治療を開始した。E7389(1.5mg/kg)を、2週間毎週静脈内に投与した(Q7D×2)。E7080を、12日間毎日経口で投与した(Q1D×12)。両方の薬物は、10g体重当たり0.1mLの体積で投与された。
【0055】

腫瘍体積(mm)=長さ(mm)×幅(mm)×1/2
長さ:腫瘍の最大直径
幅:長さと垂直な直径
を使用してカリパー測定(mm)により、腫瘍体積を決定した。
【0056】
各実験群についての腫瘍体積に関する平均±SDを計算した。
【0057】
統計学的分析
二元配置RM−ANOVA検定により、各単一薬剤投与群および併用群または注射なしの群の統計学的分析を行った。P<0.05の値は、統計学的に有意であるとみなされた。グラフパッドプリズムソフトウエア(バージョン6.02)を使用して統計学的分析を行った。
【0058】
結果
図3は、マウスのNCI−H1993(左)またはPC−9(右)ヒト非小細胞肺がん異種移植片におけるE7389をE7080と併用した効果を示す。E7389(1.5mg/kg)またはE7080(10mg/kg)の単一治療は、両方の異種移植モデルで明らかな抗腫瘍活性を生じた。E7389とE7080の併用は、両方の異種移植モデルでの各単一治療のものより抗腫瘍活性を明らかに増強した。
【0059】
結論
E7389とE7080の併用治療は、各単一治療のものより明らかに強力な抗腫瘍活性を示した。
【0060】
特定の実施形態
本発明の特定の実施形態は以下のとおりである:
[1]がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療する方法であって、前記対象に(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
[2]前記対象が、ヒト患者である、[1]に記載の方法。
[3]前記対象が、がんと診断される、がんの治療中である、またはがんからの治療後回復期である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記がんが、原発性腫瘍である、[1]から[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5]前記がんが、転移である、[1]から[3]のいずれか一つに記載の方法。
[6]前記がんが、固形腫瘍である、[1]から[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7]前記がんが、乳がん、膵がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、皮膚がん(例えば黒色腫)、前立腺がん、脳がん、頭頚部がん、肝がん、腎臓がん、膀胱がん、胃がん、消化器がん、血液のがん(例えば白血病)、リンパ系のがん、甲状腺がん、骨がん(例えば骨肉腫)および線維肉腫からなる群から選択される、[1]から[6]のいずれか一つに記載の方法。
[8]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸エリブリンである、[1]から[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9]前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸レンバチニブである、[1]から[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、静脈内注入により投与される、[1]から[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11]前記静脈内注入が、約1分から約20分の間である、[10]に記載の方法。
[12]前記静脈内注入が、約2分から約5分の間である、[11]に記載の方法。
[13]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、約0.1mg/mから約20mg/mの範囲にある量で投与される、[1]から[12]のいずれか一つに記載の方法。
[14]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、約1.4mg/mまたは1.1mg/mの量で投与される、[13]に記載の方法。
[15]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、21日サイクルの1日目および8日目の各々に1回投与される、[1]から[14]のいずれか一つに記載の方法。
[16]前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、経口で投与される、[1]から[15]のいずれか一つに記載の方法。
[17]前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、約0.1mgから約100mgの範囲にある量で投与される、[1]から[16]のいずれか一つに記載の方法。
[18]前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、約4mgから約24mgの範囲にある量で投与される、[17]に記載の方法。
[19]前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、毎日投与される、[1]から[18]のいずれか一つに記載の方法。
[20]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩、および前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、実質的に同時にまたは連続して投与される、[1]から[19]のいずれか一つに記載の方法。
[21]前記治療が、(i)がん細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍体積を減少させる;(iii)腫瘍退縮速度を増大する;(iv)周辺の器官へのがん細胞浸潤を減少または遅延させる;(v)腫瘍転移を減少または遅延させる;(vi)腫瘍成長を減少または阻害する;(vii)がんの出現および/または再発を防止または遅延させる、および/または無病もしくは腫瘍なしの生存期間を延長する;(viii)全生存期間を増大する;(ix)治療の頻度を減少させる;および/または(x)がんに関連した症状の1つまたは複数を緩和する、[1]から[20]のいずれか一つに記載の方法。
[22]対象における腫瘍のサイズを減少させる方法であって、前記対象に(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
[23]対象におけるがんを治療する、腫瘍サイズを減少させる、または腫瘍に対する免疫応答を誘発または増大するのに使用するためのキットであって、(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、キット。
[24](i)前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩、および(ii)前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、剤形である、[23]に記載のキット。
[25]がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療する方法において使用するためのエリブリンまたはその薬学的に許容される塩であって、前記化合物が、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩と共に前記対象に投与されることを特徴とする、エリブリンまたはその薬学的に許容される塩。
[26]前記化合物および前記レンバチニブ、または前記その薬学的に許容される塩が、実質的に同時にまたは連続して投与される、[25]に記載のエリブリンまたはその薬学的に許容される塩。
[27]前記化合物が、メシル酸エリブリンである、[25]または[26]に記載のエリブリンまたはその薬学的に許容される塩。
[28]がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療する方法において使用するためのレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩であって、前記化合物が、エリブリンまたはその薬学的に許容される塩と共に前記対象に投与されることを特徴とする、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩。
[29]前記化合物および前記エリブリン、または前記その薬学的に許容される塩が、実質的に同時にまたは連続して投与される、[28]に記載のレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩。
[30]前記化合物が、メシル酸レンバチニブである、[28]または[29]に記載のレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩。
[31]エリブリンまたはその薬学的に許容される塩を含む、がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療するための医薬組成物であって、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩と共に対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
[32]レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象を治療するための医薬組成物であって、エリブリンまたはその薬学的に許容される塩と共に対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
[33]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩、および前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、実質的に同時にまたは連続して投与される、[31]または[32]に記載の医薬組成物。
[34]前記エリブリンまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸エリブリンである、[31]から[33]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
[35]前記レンバチニブまたは前記その薬学的に許容される塩が、メシル酸レンバチニブである、[31]から[33]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
[36]がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象の治療における、または対象における腫瘍のサイズを減少させるための、(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用。
[37]がんを有するか、またはがん発生のリスクのある対象の治療において使用するための、または対象における腫瘍のサイズを減少させるための医薬品の調製における、(i)エリブリンまたはその薬学的に許容される塩、および(ii)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【0061】
項目[2]から[21](方法)に関して上述の種々の実施形態が、項目[22](方法)、[36](使用)および[37](使用)に利用可能である。
【0062】
他の実施形態
本発明は、その特定の実施形態に関連して記述された一方で、さらなる改変ができること、本出願が、一般に、本発明の原理を含み、本発明が属する技術内の既知または慣行の範囲にある本発明の開示からこのような離脱を含む本発明の任意の変法、使用または適合を網羅することが意図されること、規定前に本発明の必須の特徴に使用されうることが分かる。
【0063】
本明細書で明記された全ての刊行物および特許出願は、各独立の刊行物または特許出願が、参照によりそれらの全体で組み込まれることが特別におよび個々に示されるのと同じ範囲まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
内容が反対に示さない限り、本明細書中の単数形態の使用、例えば「a」および「the」は、対応の複数形態の表示を除外しない。同様に、複数の用語の使用は、対応する単数形態の表示を除外しない。他の実施形態は、以下の請求項の範囲内にある。
図1
図2
図3