(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404243
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】ブローバイヒーター
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
F01M13/00 L
F01M13/00 G
F01M13/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-562845(P2015-562845)
(86)(22)【出願日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】JP2015053776
(87)【国際公開番号】WO2015122438
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2016年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-24699(P2014-24699)
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100199255
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】岡 崎 剛
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−063884(JP,A)
【文献】
特開2013−130102(JP,A)
【文献】
特開2012−215137(JP,A)
【文献】
特開平09−088540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガスが通流し下流側に開口する筒体を有するブローバイヒーターであって、
前記筒体は、断面において内周面側から外周面側に向けて徐々に拡径する傾斜面が設けられていることにより、下流側の肉厚が開口端に向かって減少するように形成されており、
前記傾斜面は、前記筒体の下流側の全周縁にわたって設けられている
ことを特徴とするブローバイヒーター。
【請求項2】
前記筒体は、下流側に向かって断面積が減少する部位を有する金属管によって構成されており、
前記金属管の開口端近傍の内周側には、当該開口端近傍の肉厚が開口端に向かって減少するように、傾斜面部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のブローバイヒーター。
【請求項3】
前記金属管の開口端近傍の内周側の全周縁には、当該開口端近傍の全周縁の肉厚が開口端に向かって減少するように、傾斜面部が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のブローバイヒーター。
【請求項4】
前記傾斜面部は、断面曲線状の面部を有している
ことを特徴とする請求項2または3に記載のブローバイヒーター。
【請求項5】
前記傾斜面部は、前記金属管の外周面と共に角部を形成している
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のブローバイヒーター。
【請求項6】
前記金属管は、プレス打ち抜きによって形成された金属平板を筒状に加工することで形成されている
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のブローバイヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのブローバイガスを加熱して、当該ブローバイガスに含まれる水分等が管路内壁部に付着ないし氷結することを防止するブローバイヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
環境汚染を避けるために、エンジンのブローバイガスを大気開放しないで、エンジンの吸気経路に環流させることが行われている。そして、このようなブローバイガス環流管路において、ブローバイガスに含まれる水分等が管路内壁部に付着ないし氷結することを防止するために、従来よりブローバイガスヒーターが広く用いられている。
【0003】
図6は、従来のブローバイガスヒーターを示す概略斜視図であり(特開2012−215137の
図11に対応)、
図7は、
図6のブローバイガスヒーターがブローバイガス環流通路に設けられた例を示す概略断面図である(特開2012−215137の
図9に対応)。
【0004】
図6及び
図7に示すように、ブローバイガスの通路となる金属管55が平滑壁部55dと部分円筒壁部55eとを有している(
図6参照)。従って、金属管55の断面開口形状は、部分円形状である。平滑壁部55dの先端と部分円筒壁部55eの先端とが、金属管55の共通の開口端面を形成しており、平滑壁部55dの先端全体が、金属管55の開口面の最後部55cとなっており、部分円筒壁部55eの先端の中央部が、金属管55の開口面の最先部55bとなっている(
図6及び
図7参照)。平滑壁部55dは、加熱源取付管54を介して、電子セラミックヒーターである加熱源56と対向するように配置されている。加熱源56には、プラグ部材57を介して、電力が供給されるようになっている。
【0005】
また、金属管55は、その断面開口面積が先端側ほど小さくなるように形成された絞り部55fを有している。
【0006】
図7に示すように、金属管55の突出部55aが、接続管61における内壁面61dよりも吸気通路軸線側a1へ突出するように配置される。金属管55に付着するブローバイガスの水分ないし油分は、突出部55aを伝ってその先端側(下方)へ流動し、水滴化ないし油滴化が促される。
【0007】
ブローバイガスの水分ないし油分が水滴化ないし油滴化されると、その後に氷結等した場合でも、その氷塊が小体積であるため、例えばターボインペラーの損傷等の発生を抑制することができる。水滴化ないし油滴化のサイズが小さければ小さい程、その効果が顕著となる。
【0008】
本件発明者は、ブローバイガスヒーターの開口端の形状に鋭意工夫を凝らすことにより、特開2012−215137に記載された構成と比較して水滴化ないし油滴化(飛沫化)のサイズを顕著に低減できることを知見した。
【0009】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、ブローバイガスに含まれる水分ないし油分等の水滴化ないし油滴化(飛沫化)のサイズを顕著に低減できるブローバイガスヒーターを提供することである。
【0010】
本発明は、ブローバイガスが通流し下流側に開口する筒体を有するブローバイヒーターであって、前記筒体は、下流側の肉厚が開口端に向かって減少するように形成されていることを特徴とするブローバイヒーターである。
【0011】
本発明によれば、ブローバイガスが通流する筒体の肉厚が開口端に向かって減少するように形成されていることにより、当該筒体の開口端面において水分ないし油分が滞留できる面積が小さいため、水分ないし油分の当該開口端面での滞留量が低減され、結果的に当該開口端面から飛散していく水滴ないし油滴のサイズが顕著に低減される。このことにより、飛散した水滴ないし油滴がその後に氷結等した場合でも、その氷塊が小体積であるため、例えばターボインペラーの損傷等の発生を抑制することができる。
【0012】
好ましくは、前記筒体は、下流側の全周縁の肉厚が開口端に向かって減少するように形成されている。この場合、開口端面の全周において水分ないし滞留量が低減されるため、開口端面から飛散していく水滴ないし油滴のサイズが開口端面の全周において顕著に低減される。
【0013】
一般的には、例えば、前記筒体は、下流側に向かって断面積が減少する部位(絞り部)を有する金属管によって構成される。このような金属管は、例えば、プレス打ち抜きによって形成された金属平板を筒状に加工することで形成され得る。
【0014】
そして、筒体である金属管の下流側の肉厚を開口端に向かって減少させる具体例として、例えば、当該金属管の開口端近傍の内周側に、当該開口端近傍の肉厚が開口端に向かって減少するように、傾斜面部が形成される。
【0015】
この場合も、好ましくは、前記金属管の開口端近傍の内周側の全周縁に、当該開口端近傍の全周縁の肉厚が開口端に向かって減少するように、傾斜面部が形成される。この場合、開口端面の全周において水分ないし油分の滞留量が低減されるため、開口端面から飛散していく水滴ないし油滴のサイズが開口端面の全周において顕著に低減される。
【0016】
前記傾斜面部は、断面直線状の面部を有していてもよいし、断面曲線状の面部を有していてもよい。傾斜面部が断面曲線状の面部を有する場合には、金属管の内周面から滑らかに(角部を形成することなく)連続していることが好ましい。この場合、金属管内の水分ないし油分を金属管の内周面から開口端に向けてより円滑に誘導することができる。一方、傾斜面部が断面曲線状の面部を有する場合であっても、開口端側においては、前記金属管の外周面と共に角部を形成していることが好ましい。この場合、当該角部における表面張力の作用により、当該角部において水分ないし油分の飛沫化が促される(滞留が生じにくい)ため、水滴ないし油滴のサイズがより一層顕著に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態のブローバイガスヒーターを示す概略斜視図である。
【
図2】
図1のブローバイガスヒーターの概略断面図である。
【
図3】
図1のブローバイガスヒーターの金属管の開口端近傍の形状を示す概略断面図である。
【
図4】金属管の開口端近傍の形状の他の例を示す概略断面図である。
【
図5】金属管の開口端近傍の形状の更に他の例を示す概略断面図である。
【
図6】従来のブローバイガスヒーターを示す概略斜視図である(特開2012−215137の
図11)。
【
図7】
図6のブローバイガスヒーターがブローバイガス環流通路に設けられた例を示す概略断面図である(特開2012−215137の
図9)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態のブローバイガスヒーターを示す概略斜視図であり、
図2は、
図1のブローバイガスヒーターの概略断面図であり、
図3は、
図1のブローバイガスヒーターの金属管の開口端近傍の形状を示す概略断面図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施の形態のブローバイガスヒーター10は、ブローバイガスの通路となる金属管5が平滑壁部5dと曲面壁部5eとを有している(
図1参照)。金属管5の断面開口形状は、略半月形状である。平滑壁部5dの先端全体と曲面壁部5eの先端とが、金属管5の共通の開口端面5aを形成している(
図2参照)。平滑壁部5dは、電子セラミックヒーターである加熱源6と直接対向するように配置されている。加熱源6には、プラグ部材7を介して、電力が供給されるようになっている。また、金属管5は、その断面開口面積が先端側ほど小さくなるように形成された絞り部5fを有している。
【0020】
金属管5の開口端面5aが、不図示の吸気通路管内へ突出するように配置されている。
【0021】
金属管5に付着するブローバイガスの水分ないし油分は、開口端面5aまで誘導されて、当該開口端面5aにおいて水滴化ないし油滴化され、不図示の吸気通路管内を流れる気流内へ飛散する。
【0022】
本実施の形態では、金属管5の下流側の肉厚が開口端面5aに向かって減少するように形成されている。具体的には、
図3に示すように、金属管5の開口端面5aの近傍の内周側に、当該開口端面5aの近傍の肉厚が開口端面5aに向かって減少するように、傾斜面部5gが形成されている。
図3に示すように、本実施の形態では、傾斜面部5gが断面直線状の面部を有している。
【0023】
以上のような本実施の形態によれば、ブローバイガスが通流する金属管5の肉厚が開口端面5aに向かって減少するように形成されているため、当該金属管5の開口端面5aにおいて水分ないし油分が滞留できる面積が小さく、水分ないし油分の当該開口端面5aでの滞留量が低減され、結果的に当該開口端面5aから飛散していく水滴ないし油滴のサイズが顕著に低減される。このことにより、飛散した水滴ないし油滴がその後に氷結等した場合でも、その氷塊が小体積であるため、例えばターボインペラーの損傷等の発生を抑制することができる。
【0024】
なお、本実施の形態において、傾斜面部5gは、金属管5の開口端面5aの近傍の内周側の全周縁に、当該開口端面5aの近傍の全周縁の肉厚が開口端面5aに向かって減少するように形成されていることが好ましい。この場合、開口端面5aの全周において水分ないし油分の滞留量が低減され、開口端面5aから飛散していく水滴ないし油滴のサイズが開口端面5aの全周において顕著に低減される。
【0025】
次に、
図4は、金属管5の開口端近傍の形状の他の例を示す概略断面図である。
図4に示す例では、
図3に示す例とは異なり、金属管5の開口端面5aの近傍の内周側と外周側との両方に、それぞれ傾斜面部5g及び傾斜面部5hが形成されている。
【0026】
このような例においても、金属管5の開口端面5aにおいて水分ないし油分が滞留できる面積が小さく、水分ないし油分の当該開口端面5aでの滞留量が低減されるため、結果的に当該開口端面5aから飛散していく水滴ないし油滴のサイズが顕著に低減される。このことにより、飛散した水滴ないし油滴がその後に氷結等した場合でも、その氷塊が小体積であるため、例えばターボインペラーの損傷等の発生を抑制することができる。
【0027】
本件発明者による実験によれば、傾斜面部5g及び傾斜面部5hの傾斜角度につき、金属管5の開口端面5aを基準にして45度くらいの角度までであれば、良好な飛沫化が得られる。
【0028】
次に、
図5は、金属管5の開口端近傍の形状の更に他の例を示す概略断面図である。
図5に示す例では、
図3に示す例とは異なり、傾斜面部5gが断面曲線状の面部を有している。更に詳しくは、
図5に示す例では、傾斜面部5gは金属管5の内周面から滑らかに(角部を形成することなく)連続している一方で、金属管5の外周面と共に角部5cを形成している。
【0029】
このような例では、金属管5内の水分ないし油分を金属管5の内周面からより円滑に誘導することができ、且つ、角部5cにおける表面張力の作用により当該角部5cにおいて水分ないし油分の飛沫化が促される(滞留が生じにくい)ため、水滴ないし油滴のサイズがより一層顕著に低減される。
【0030】
なお、筒体は、プレス打ち抜きによって形成された金属平板を筒状に加工するものに限られず、ダイキャストによって成形される金属製のものや、射出成形によって成形される伝熱性の高い樹脂製のものでもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 ブローバイガスヒーター
5 金属管
5a 開口端面
5d 平滑壁部
5e 曲面壁部
5f 絞り部
5g 傾斜面部
5h 傾斜面部
6 加熱源
7 プラグ部材
54 加熱源取付管
55 金属管
55a 突出部
55b 先端部
55c 最後部
55d 平滑壁部
55e 部分円筒壁部
55f 絞り部
56 加熱源
57 プラグ部材
61 接続管
61d 内壁面