特許第6404269号(P6404269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404269
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20181001BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61F13/533 100
   A61F13/533 200
   A61F13/47 300
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-114960(P2016-114960)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-217285(P2017-217285A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】小縄 聡子
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−186541(JP,A)
【文献】 特開2004−283231(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/074319(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収性物品の前方側の肌当接面に、平面視で、吸収性物品の前端側に膨出する湾曲線からなる内側曲線と、この内側曲線よりも前端側に位置し、吸収性物品の前端側に膨出する湾曲線からなるとともに、両端が前記内側曲線の両端にそれぞれ接続する外側曲線とにより区画された閉領域部分を肌当接面側から窪ませた凹面状の低圧搾部が形成されるとともに、前記低圧搾部内に、前記内側曲線及び外側曲線に沿ってそれぞれ離散的に複数の高圧搾部が形成され、前記内側曲線に沿って形成された前記高圧搾部は、前記内側曲線の全長に亘って配置され、前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部は、前記外側曲線の中央部であって外側曲線全長の30〜70%の長さ範囲に配置され、前記外側曲線の両端部には配置されないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記低圧搾部は、平面形状が三日月形状を成している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部のうち、吸収性物品の幅方向中央に配置された高圧搾部は、前記高圧搾部の中で最大の面積を有している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部は、一方向に長い平面形状を有するとともに、長軸方向が吸収性物品の長手方向線に対して斜めに傾斜して配置されたものを含んでいる請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記内側曲線に沿って形成された前記高圧搾部のうち、前記外側曲線に沿って形成された隣り合う高圧搾部の間隔が大きな部分に対応する位置に配置された高圧搾部は、その間隔に応じて相対的に大きな面積で形成されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記低圧搾部よりも吸収性物品の後端側に間をあけて、両側部にそれぞれ長手方向に沿って左右対の長手方向圧搾溝が形成されるとともに、前記低圧搾部の両端の延長線上に前記長手方向圧搾溝の前端部が位置している請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記内側曲線に沿って形成された前記高圧搾部の面積の合計と、前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部の面積の合計とが同等である請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品の後方側の肌当接面に、平面視で、吸収性物品の後端側に膨出する湾曲線からなる後方内側曲線と、この後方内側曲線よりも後端側に位置し、吸収性物品の後端側に膨出する湾曲線からなるとともに、両端が前記後方内側曲線の両端にそれぞれ接続する後方外側曲線とにより区画された閉領域部分を肌当接面側から窪ませた凹面状の後方低圧搾部が形成されるとともに、前記後方低圧搾部内に、前記後方内側曲線及び後方外側曲線に沿ってそれぞれ離散的に複数の後方高圧搾部が形成され、前記後方内側曲線に沿って形成された前記後方高圧搾部は、前記後方内側曲線の全長に亘って配置され、前記後方外側曲線に沿って形成された前記後方高圧搾部は、前記後方外側曲線の中央部に配置され、前記後方外側曲線の両端部には配置されない請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは肌当接面側から窪ませた平面視で略三日月形状の圧搾部が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れを防止するとともに、装着時に身体の形状に沿って吸収性物品を変形しやすくする等のため、肌当接面側から非肌側に向けて窪ませた圧搾部を種々の形態で形成する技術が存在する。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、吸収体の後部側に前部側に向かう円弧状のエンボス溝を形成する技術が提案されている。また、下記特許文献2では、前方領域に幅方向に延びる前方圧搾溝と、排泄部対向領域における長手方向に沿う両側部に長手方向に延びる一対の縦圧搾溝とを有し、前記前方圧搾溝及び各縦圧搾溝は、幅方向内側に向かって括れる括れ部を形成しながら連接されており、前記前方圧搾溝は、幅方向中央部にて後方側に向かって窪んだ窪み部を有している吸収性物品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−113955号公報
【特許文献2】特開2015−97719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載のものでは、円弧状のエンボス溝を基点として吸収性物品が長手方向に変形することにより、身体の前後方向の丸みに沿いやすくなると考えられるが、身体の幅方向の丸みに沿った変形については何ら考慮されておらず、身体へのフィット性が不十分で、ヨレや漏れが発生するおそれがあった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された吸収性物品では、前方圧搾溝が、右斜め前方に凸状に突出した円弧状の右凸部圧搾溝と、左斜め前方に凸状に突出した円弧状の左凸部圧搾溝とを有し、右凸部圧搾溝及び左凸部圧搾溝は、中心線にてV字状に窪んだ窪み部にて交差し連接されているため、この窪み部を基点として中央部が幅方向に折れ曲がることにより、前方部に縦方向のシワが生じやすかった。また、左右にそれぞれ斜め前方に凸状に突出した円弧状の凸部圧搾溝が形成されているため、この圧搾溝によって前方両側部の剛性が高められ、前方両側部が身体の幅方向の丸みに沿って変形しにくくなると考えられる。このため、肌面との間に隙間が生じてヨレや漏れの原因になるおそれがある。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、身体の形状に沿って変形しやすくするとともに、ヨレや漏れが発生しにくい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収性物品の前方側の肌当接面に、平面視で、吸収性物品の前端側に膨出する湾曲線からなる内側曲線と、この内側曲線よりも前端側に位置し、吸収性物品の前端側に膨出する湾曲線からなるとともに、両端が前記内側曲線の両端にそれぞれ接続する外側曲線とにより区画された閉領域部分を肌当接面側から窪ませた凹面状の低圧搾部が形成されるとともに、前記低圧搾部内に、前記内側曲線及び外側曲線に沿ってそれぞれ離散的に複数の高圧搾部が形成され、前記内側曲線に沿って形成された前記高圧搾部は、前記内側曲線の全長に亘って配置され、前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部は、前記外側曲線の中央部であって外側曲線全長の30〜70%の長さ範囲に配置され、前記外側曲線の両端部には配置されないことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、前記内側曲線の全長に亘って配置された高圧搾部によって内側曲線が全長に亘って高剛性化されるとともに、前記外側曲線の中央部であって外側曲線全長の30〜70%の長さ範囲に配置された高圧搾部によって外側曲線の中央部が高剛性化されるため、これらの高剛性化した曲線部分を基点として吸収性物品が長手方向に湾曲しやすくなり、前記内側曲線に沿って前側が立ち上がることにより、身体の前後方向の丸みに沿って変形しやすくなる。また、外側曲線の両端部には前記高圧搾部が配置されていないため、前記高圧搾部が形成された領域に比べ相対的に剛性が低下するので、前記低圧搾部より前方側の両側部が肌側に湾曲しやすくなり、吸収性物品の前方部が身体の幅方向の丸みに沿って変形しやすくなる。このように吸収性物品の前方側が身体の前後方向の丸み及び幅方向の丸みに沿って変形しやすくなるため、吸収性物品が肌面にフィットしてヨレや漏れが発生にくくなる。
【0011】
また、吸収性物品が身体の幅方向の丸みに沿って変形したとき幅方向中央部に長手方向に沿って縦ジワが入りやすくなるが、本発明に係る吸収性物品では、前記外側曲線の中央部に高圧搾部が集中して配置されているため、この縦ジワの発生を抑えることができ、装着感を良好に保つことができる。
【0012】
また、前記高圧搾部は内側曲線及び外側曲線に沿ってそれぞれ離散的に複数配置してあるため、高圧搾部によって硬化した部分の装着時の違和感が軽減できるとともに、吸収性物品が身体の前後方向の丸みに沿って変形するのに加えて、高圧搾部同士に間隔が設けられているため身体の幅方向の丸みに沿って変形しやすくなる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記低圧搾部は、平面形状が三日月形状を成している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記低圧搾部の平面形状が三日月形状で形成されているため、この低圧搾部によって、幅方向中央部の剛性が高く、幅方向両側部の剛性が低く形成されるようになる。このため、吸収性物品が身体の幅方向の丸みに沿って変形しやすくなる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部のうち、吸収性物品の幅方向中央に配置された高圧搾部は、前記高圧搾部の中で最大の面積を有している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、前記外側曲線に沿って形成された高圧搾部のうち、吸収性物品の幅方向中央に配置された高圧搾部が最大面積を有するようにしているため、この最大面積の高圧搾部を基点として、両側部が身体の幅方向の丸みに沿って変形しやすくなる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部は、一方向に長い平面形状を有するとともに、長軸方向が吸収性物品の長手方向線に対して斜めに傾斜して配置されたものを含んでいる請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、前記外側曲線に沿って形成された高圧搾部として、一方向に長い平面形状を有するとともに、長軸方向が吸収性物品の長手方向線に対して斜めに傾斜して配置されたものが含まれるようにしている。この高圧搾部の長軸方向を吸収性物品の幅方向に一致させないことにより、この高圧搾部によって身体の幅方向に沿って湾曲するのが妨げられるのを防止するとともに、この高圧搾部の長軸方向を吸収性物品の長手方向に一致させないことにより、この高圧搾部を基点として吸収性物品に縦ジワが入るのを防止している。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記内側曲線に沿って形成された前記高圧搾部のうち、前記外側曲線に沿って形成された隣り合う高圧搾部の間隔が大きな部分に対応する位置に配置された高圧搾部は、その間隔に応じて相対的に大きな面積で形成されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、前記内側曲線に沿って形成された高圧搾部のうち、前記外側曲線に沿って形成された隣り合う高圧搾部同士の間隔が大きな部分に対応する位置に配置された高圧搾部は、その間隔に応じて相対的に大きくするのが好ましく、これによって低圧搾部内での内側曲線に沿って形成された高圧搾部による剛性と、外側曲線に沿って形成された高圧搾部による剛性とが互いに補間しあって、余計なシワが入るのが防止できる。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記低圧搾部よりも吸収性物品の後端側に間をあけて、両側部にそれぞれ長手方向に沿って左右対の長手方向圧搾溝が形成されるとともに、前記低圧搾部の両端の延長線上に前記長手方向圧搾溝の前端部が位置している請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、前記低圧搾部よりも吸収性物品の後端側に間をあけて、両側部にそれぞれ長手方向に沿って左右対の長手方向圧搾溝を形成した場合において、前記低圧搾部の両端の延長線上に長手方向圧搾溝の前端部を位置している。これによって、前記長手方向圧搾溝が低圧搾部の両端の延長線上にない場合に発生しやすくなる縦ジワが防止できるとともに、前記内側曲線に沿って吸収性物品が湾曲しやすくなる。
【0023】
請求項7に係る本発明として、前記内側曲線に沿って形成された前記高圧搾部の面積の合計と、前記外側曲線に沿って形成された前記高圧搾部の面積の合計とが同等である請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項7記載の発明では、前記内側曲線に沿って形成された高圧搾部と前記外側曲線に沿って形成された高圧搾部とを同等の合計面積とすることによって、内側曲線と外側曲線のいずれかの剛性が高くなることなく、同等の剛性となるので、低圧搾部が身体の丸みにフィットしやすくなる。
【0025】
請求項8に係る本発明として、前記吸収性物品の後方側の肌当接面に、平面視で、吸収性物品の後端側に膨出する湾曲線からなる後方内側曲線と、この後方内側曲線よりも後端側に位置し、吸収性物品の後端側に膨出する湾曲線からなるとともに、両端が前記後方内側曲線の両端にそれぞれ接続する後方外側曲線とにより区画された閉領域部分を肌当接面側から窪ませた凹面状の後方低圧搾部が形成されるとともに、前記後方低圧搾部内に、前記後方内側曲線及び後方外側曲線に沿ってそれぞれ離散的に複数の後方高圧搾部が形成され、前記後方内側曲線に沿って形成された前記後方高圧搾部は、前記後方内側曲線の全長に亘って配置され、前記後方外側曲線に沿って形成された前記後方高圧搾部は、前記後方外側曲線の中央部に配置され、前記後方外側曲線の両端部には配置されない請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
上記請求項8記載の発明では、吸収性物品の後方側にも同様に低圧搾部を設けることにより、後方部分を身体の丸みに沿って変形しやすくし、後方部分のヨレや漏れを防止している。
【発明の効果】
【0027】
以上詳説のとおり本発明によれば、身体の形状に沿って変形しやすくなるとともに、ヨレや漏れが発生しにくい吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】低圧搾部10の拡大平面図である。
図5】人体の股間部の正面側斜視図である。
図6】装着時の変形状態を示す生理用ナプキン1の斜視図である。
図7】本発明に含まれない圧搾溝の拡大平面図である。
図8】他の形態例に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0030】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向に沿ってほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記透液性表面シート3の非肌側に隣接して、前記透液性表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0031】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0032】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0033】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0034】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0035】
図1及び図2に示されるように、前記吸収体4の体液排出部Hに対応する部位を含む領域に、肌側に増厚された吸収体の中高部6を設けるのが好ましい。前記中高部6は、吸収体4の肌側面に隣接するとともに、吸収体4の幅方向中央部に配置され、吸収体4より幅寸法及び長手寸法が小さく形成されている。前記中高部6の厚みは、厚すぎると剛性が上がり身体への密着性が低下するし、薄すぎると体液排出部Hとの密着性が低下するため3〜25mm、好ましくは5〜18mmとするのがよい。
【0036】
前記中高部6は、少なくとも着用者の体液排出部Hに対応する部位を含む領域に配置されている。この中高部6は、体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけて連続する細長形状に形成してもよいし、体液排出部Hに対応する部位を含む領域のみに配置し、これより後側の臀部溝に対応する部位を含む領域には配置しないようにしてもよい。
【0037】
前記中高部6を、体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけて連続する細長形状に形成した場合、体液排出部Hに対応する部位の後方に、両側の外形線が幅方向内側に膨出して形成された幅狭部を設けるのが好ましい。幅狭部を設けることにより、着用者の体液排出部Hの後端から臀部溝の開始位置にかけての肌面に形成される細かな凹凸にもフィットしやすくなり、肌面との密着性が向上できる。
【0038】
前記中高部6は、少なくともパルプ繊維と合成繊維とを含むとともに、前記パルプ繊維:合成繊維の比率を重量換算で80〜20:20〜80、好ましくは40〜60:60〜40で混合したものが望ましい。また、前記中高部6は吸水性ポリマーを含有することができる。前記吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。配合量は中高部6が吸収体4側への浸透を促進する必要上、配合量を多くすると所謂ゲルブロッキング現象が起きるため、パルプ繊維及び合成繊維の合計重量に対して重量換算で1〜10%の割合で配合するのが望ましい。なお、吸水性ポリマー含有率が50%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなるため望ましくない。
【0039】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0040】
前記サイド不織布7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップW、Wを形成してもよい。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップWをショーツの内面に止着するようになっている。
【0041】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、図2に示されるように、外側に傾斜しながら表面側に起立する直線状の立体ギャザーBS、BSが左右対で形成されている。
【0042】
〔圧搾部について〕
本生理用ナプキン1では、生理用ナプキン1の前方側の肌当接面に、透液性表面シート3の外面側から窪ませた凹面状の低圧搾部10が形成されている。この低圧搾部10は、詳細には図4に示されるように、平面視で、生理用ナプキン1の前端側に膨出する湾曲線からなる内側曲線12と、この内側曲線12よりも生理用ナプキン1の前端側に位置し、生理用ナプキン1の前端側に膨出する湾曲線からなるとともに、両端が前記内側曲線12の両端にそれぞれ接続する外側曲線13とにより区画された閉領域部分を肌当接面側(透液性表面シート3の外面側)から非肌側(不透液性裏面シート2側)に向けて窪ませたものである。前記低圧搾部10内には、前記内側曲線12及び外側曲線13に沿ってそれぞれ離散的に複数の高圧搾部11、11…が形成されている。前記内側曲線12に沿って形成された高圧搾部11…(14…)は、内側曲線12の全長に亘って配置され、前記外側曲線13に沿って形成された高圧搾部11…(15…)は、外側曲線13の中央部に配置され、外側曲線13の両端部には配置されないようになっている。
【0043】
前記低圧搾部10は、前記内側曲線12及び外側曲線13により区画され、平面形状が生理用ナプキン1の略幅方向に沿うとともに、中央部が生理用ナプキン1の前端側に膨出する三日月形状を成している。すなわち、前記低圧搾部10は、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLに対して左右対称に形成されるとともに、この長手方向中心線CL上に、前記内側曲線12と外側曲線13とのナプキン長手方向の離間距離が最大となる部分が位置し、生理用ナプキン1の両側部に向かうに従って、前記離間距離が徐々に小さくなるように形成されている。
【0044】
前記低圧搾部10のナプキン幅方向寸法Bは、両側のサイド不織布7、7の離間距離より小さく形成されるとともに、吸収体幅に対して40〜80%、好ましくは50〜70%で形成されている。幅寸法Bが吸収体幅に対して40%未満である場合には、吸収体4が変形する際に低圧搾部10が基点として作用しにくく、幅寸法Bが吸収体幅の80%を超える場合には、前記低圧搾部10によって吸収体4が硬くなりすぎて装着時の違和感が生じるようになる。
【0045】
また、生理用ナプキン1の長手方向中心線CL上におけるナプキン長手方向寸法Lは、5〜20mm、好ましくは10〜15mmとするのが望ましい。長手寸法Lが5mm未満である場合には、低圧搾部10により剛性を高める効果が得られにくく、長手寸法Lが20mmを超える場合には、吸収体4が硬くなりすぎて装着時に違和感を感じるようになる。
【0046】
前記低圧搾部10は、着用者の体液排出部Hに対応する部位より前端側、具体的には前記中高部6の前端よりも前端側、より具体的には両側部に形成されたウイング状フラップWよりも前端側であって、吸収体4の前端までの間に形成されている。これにより、生理用ナプキン1が、前記低圧搾部10を基点として、着用者の股間部よりも前端側の身体の前側部分の丸みに沿って変形できるようになる。
【0047】
前記低圧搾部10と吸収体4の前端との離間距離Yは、5〜30mm、好ましくは10〜20mmとするのがよい。前記離間距離Yが5mm未満である場合には、低圧搾部10を基点として吸収体4の前端部分を変形させる効果が得られにくく、離間距離Yが30mmを超える場合には、低圧搾部10より前端側にシワやヨレが発生しやすくなる。
【0048】
前記高圧搾部11、11…は、前記内側曲線12と外側曲線13とにより区画された低圧搾部10内に形成されるとともに、前記低圧搾部10より圧搾深さが深く形成されたドット状の圧搾部である。前記高圧搾部11…は、内側曲線12及び外側曲線13に沿ってそれぞれ配置されている。前記高圧搾部11が内側曲線12又は外側曲線13に沿って配置されるとは、高圧搾部11の周縁が内側曲線12又は外側曲線13に接するように配置されるか、各曲線12、13に接していなくても低圧搾部10の内側曲線12と外側曲線13との離間部分の中央に沿って引いた中心線を境に、各曲線側に配置されることを意味する。ただし、内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14…のうち、内側曲線12の両端部に配置された高圧搾部14aは、外側曲線13との離間距離が短いため、低圧搾部10の中心線より外側曲線13側にはみ出ている場合があるが、この場合でも内側曲線12に接するように配置されたものが、内側曲線12に沿って形成された高圧搾部11である。
【0049】
前記低圧搾部10は、図4に示されるように、内側曲線12のほぼ全長に亘って複数の高圧搾部14、14…が離散的に配置された内側の高圧搾部配置領域16と、外側曲線13の中央部に集中して複数の高圧搾部15、15…が離散的に配置された外側の高圧搾部配置領域17と、外側曲線13の両側部にそれぞれ高圧搾部が配置されない高圧搾部非存在領域18とに画成されている。
【0050】
前記内側の高圧搾部配置領域16において、隣り合う高圧搾部14、14の内側曲線12に沿った離間距離は、ほぼ等間隔とするか、最も小さな離間距離と最も大きな離間距離との比が3倍以下、好ましくは2.5倍以下するのがよい。これにより、内側曲線12のほぼ全長に亘ってほぼ均等に前記高圧搾部14…による剛性の強化ができるようになる。
【0051】
前記内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14…の数は、4〜20個、好ましくは6〜14個とするのがよい。前記内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14は、図4に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向中心線CL上には配置せず、この中心線CLの両側に左右対称に配置するのが好ましい。
【0052】
一方、前記高圧搾部配置領域17の外側曲線13に沿う長さは、外側曲線13の全長の30〜70%、好ましくは40〜60%とするのがよい。高圧搾部配置領域17の長さが外側曲線13全長の30%未満では、前記高圧搾部15による十分な増強効果が望めないとともに、前記長さが外側曲線13全長の70%を超えると、両側部の高圧搾部非存在領域18が小さくなりすぎて、生理用ナプキン1の前方両側部の変形が生じにくくなる。
【0053】
前記高圧搾部配置領域17に配置される高圧搾部15の数は、3〜15個、好ましくは3〜7個とするのがよい。前記高圧搾部配置領域17では、生理用ナプキン1の長手方向中心線CL上に高圧搾部15が配置され、その両側に左右対称に1又は複数の高圧搾部15が配置されるパターンとするのが好ましい。長手方向中心線CL上に高圧搾部15を配置することにより、この中央の高圧搾部15を基点として、両側が幅方向に湾曲しやすくなり、身体の形状にフィットするようになる。
【0054】
前記内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14と、前記外側曲線13に沿って形成された高圧搾部15とは、内側曲線12及び外側曲線13の半径方向にできる限り重ならない位置に互い違いに配置するのが好ましい。これにより、これらの高圧搾部14、15を半径方向に重なる位置に配置した場合の縦ジワの発生などが防止できるようになる。なお、前記高圧搾部14と15は、半径方向に一部が重なったり、若干の隙間が生じても構わない。
【0055】
以上の構成からなる生理用ナプキン1では、図5及び図6に示されるように、内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14によって内側曲線12が全長に亘って高剛性化されるとともに、外側曲線13に沿って形成された高圧搾部15によって外側曲線13の中央部が高剛性化されるため、これらの高剛性化した曲線部分を基点として、生理用ナプキン1が長手方向に湾曲しやすくなり、前記内側曲線12に沿って前側が立ち上がることにより、身体の前後方向の丸みに沿って変形しやすくなる。また、外側曲線13の両端部には、前記高圧搾部15が配置されない高圧搾部非存在領域18が設けられているため、中央部の高圧搾部配置領域17に比べて相対的に剛性が低下し、生理用ナプキン1の前記低圧搾部10より前方側の両側部が肌側に湾曲しやすくなり、身体の幅方向の丸みに沿って変形しやすくなる。このように生理用ナプキン1の前方側が身体の前後方向の丸み及び幅方向の丸みに沿って変形しやすくなるため、生理用ナプキン1が肌面にフィットしてヨレや漏れが発生しにくくなる。
【0056】
また、生理用ナプキン1が身体の幅方向の丸みに沿って変形したとき、幅方向中央部に長手方向に沿って縦ジワが入りやすくなるが、本生理用ナプキン1では、外側曲線13の中央部に前記高圧搾部配置領域17を設けているため、幅方向中央部が高圧搾部配置領域17の高圧搾部15によって補強され、縦ジワの発生を抑えることができ、装着感を良好に保つことができるようになる。
【0057】
また、前記高圧搾部11は、内側曲線12及び外側曲線13に沿ってそれぞれ離散的に配置されているため、高圧搾部11によって剛性が高められたことによる装着時の違和感が軽減できるとともに、生理用ナプキン1が身体の前後方向の丸みに沿って変形するのに加えて、身体の幅方向の丸みに沿って変形しやすくなる。
【0058】
図4に示されるように、前記外側曲線13に沿って形成された高圧搾部15…のうち、生理用ナプキン1の長手方向中心線CL上に配置された高圧搾部15aは、低圧搾部10内に形成された全ての高圧搾部11…の中で最大の面積を有しているのが好ましい。これにより、この最大面積の高圧搾部15aを基点として、両側部が身体の幅方向の丸みに沿って変形しやすくなる。この最大面積の高圧搾部15aの面積としては、最も小さな高圧搾部11の面積の5倍〜10倍程度とするのが好ましい。
【0059】
また、前記最大面積の高圧搾部15aは、図4に示されるように、多角形状や星形、花形など外方側に突出した複数の凸部を有する平面形状(図示例では星形)で形成するのが好ましく、このときの高圧搾部15aの配置は、外側曲線13の中央に凸部が接するようにすると、この最大面積の高圧搾部15aの外側曲線13に接した凸部を基点として幅方向中央部から両側部がそれぞれ湾曲変形しやすくなるので好ましい。
【0060】
図4に示されるように、前記外側曲線13に沿って形成された高圧搾部15は、一方向に長い平面形状を有するとともに、長軸方向が生理用ナプキン1の長手方向線(長手方向中心線CL)に対して斜めに傾斜して配置された高圧搾部15bを含むようにするのが好ましい。この高圧搾部15bは、幅方向中央部に配置された前記最大面積の高圧搾部15aの両側にそれぞれ配置するのがよい。この高圧搾部15bの長軸方向を生理用ナプキン1の幅方向に一致させないことにより、この高圧搾部15bが配置された部分の幅方向に沿う湾曲変形を妨げないとともに、この高圧搾部15bの長軸方向を生理用ナプキン1の長手方向に一致させないことにより、この高圧搾部15bを基点とした縦ジワが入るのが防止できる。
【0061】
前記高圧搾部15bの配置は、図示例のように、幅方向内側が生理用ナプキン1の中心側に傾斜するように配置するのが好ましい。このときの前記高圧搾部15bの長軸と生理用ナプキン1の長手方向中心線CLとの成す角度αは、30〜60°、特に40〜50°とするのが好ましい。このように配置された高圧搾部15bを幅方向中央の両側に設けることによって、この高圧搾部15bを基点として低圧搾部10領域が幅方向に沿って更に湾曲しやすくなる。
【0062】
前記高圧搾部15bの平面形状は、雫形、長円、楕円、長方形など一方向に長い平面形状を有するものであればいずれでもよいが、図示例のように長軸方向の一方側が他方側より幅広に形成された雫形とするのが好ましい。このとき、図示例のように、幅広に形成された一方側を外側曲線13に近い側(生理用ナプキン1の前端側)に向けて配置すると、外側曲線13側に力が作用しやすく、生理用ナプキン1が外側曲線13に沿って湾曲しやすくなる。
【0063】
一方、内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14…は、全長に亘ってほぼ同等の面積で形成してもよいし、図4に示されるように、一部が相対的に大きな面積で形成されるようにしてもよい。具体的には、前述の通り、内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14は、外側曲線13に沿って形成された高圧搾部15と、内側曲線12及び外側曲線13の半径方向に重ならない位置に配置され、外側曲線13に沿って形成された隣り合う高圧搾部15、15の離間部分にほぼ一致して配置されているが、内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14…のうち、外側曲線13に沿って形成された隣り合う高圧搾部15、15の離間距離が大きな部分に対応する位置に配置された高圧搾部14bは、その離間距離に応じて相対的に大きな面積で形成することができる。これによって、内側曲線12及び外側曲線13の半径方向に対して、高圧搾部14、15が配置されないことによる剛性が極端に低下した部分が形成されなくなるため、低圧搾部10内での内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14…による剛性と、外側曲線13に沿って形成された高圧搾部15…による剛性とが互いに補間しあって、余計なシワが入るのが防止できる。
【0064】
本生理用ナプキン1では、図1に示されるように、前方側に形成された前記低圧搾部10の他に、前記中高部6の近傍外側部位置に、透液性表面シート3の外面側から不透液性裏面シート2に向けて窪ませた圧搾溝を形成することができる。具体的に図1に示される例では、前記低圧搾部10よりも生理用ナプキン1の後端側に間隔をあけて配置されるとともに、体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけての両側部にそれぞれ、ナプキン1のほぼ長手方向に沿って連続して形成された前側長手方向圧搾溝20、20と、この前側長手方向圧搾溝20の後側に離間して配置されるとともに、臀部溝の後端部分に対応する部位の両側部にそれぞれ、ナプキン1のほぼ長手方向に沿って連続して形成された後側長手方向圧搾溝21、21と、前記後側長手方向圧搾溝21、21の後側に離間して配置されるとともに、ナプキン1の長手方向中心線CLを幅方向に横断し、かつ後方に向けて膨出する湾曲形状からなる後端湾曲形圧搾溝22とから構成されている。これらの圧搾溝20〜22は、透液性表面シート3の外面側からの熱エンボスにより、透液性表面シート3から吸収体4にかけて一体的に圧搾したものである。
【0065】
前記低圧搾部10の後側に隣接して配置された前側長手方向圧搾溝20、20は、図4に示されるように、前端部が低圧搾部10の両端の延長線S上に位置するように配置するのが望ましい。このように延長線S上に前側長手方向圧搾溝20の前端部を配置すると、低圧搾部10が身体の丸みに沿って変形した際の前記延長線Sに沿って発生するシワが抑えられるようになる。これに対して、図7に示されるように、前側長手方向圧搾溝20の前端部が、低圧搾部10の両端の延長線S上にない場合、図示例では前側長手方向圧搾溝20の前端部が低圧搾部10の両端の延長線Sより内側に配置された場合、身体の丸みに沿って変形した低圧搾部10のシワが、この延長線Sに沿って発生しやすくなる。また、前記延長線Sに沿ってシワが発生することによって低圧搾部10が変形しにくくなる。ここで、前記低圧搾部10の両端の延長線Sとは、低圧搾部10の内側曲線12と外側曲線13との離間部分の中央を通る中心線の低圧搾部10両端での接線である。また、前記延長線S上に前側長手方向圧搾溝20の前端部が位置するとは、前記延長線Sが前側長手方向圧搾溝20の前端部の溝幅内を通ることを意味する。
【0066】
次いで、前記内側曲線12に沿って形成された高圧搾部14…の面積の合計と、前記外側曲線13に沿って形成された高圧搾部15…の面積の合計とは、同等にするのが好ましい。これらの面積が同等とは、一方の面積が他方の面積の±5%以内、好ましくは±3%以内であることである。これによって、前記高圧搾部14、15によって高められた剛性が、内側曲線12と外側曲線とで同等となるので、低圧搾部10が身体の丸みに沿って変形しやすく、フィット性が向上するようになる。
【0067】
〔他の形態例〕
上記形態例では、前記低圧搾部10を生理用ナプキン1の前方側のみに設け、後方側には、後方に向けて膨出する湾曲形状からなる溝幅が一定の後端湾曲形圧搾溝22を配置していたが、図8に示されるように、この後端湾曲形圧搾溝22に代えて(図示例)、又はこの後端湾曲形圧搾溝22の後方に離間して、平面視で、生理用ナプキン1の後端側に膨出する湾曲線からなる後方内側曲線32と、この後方内側曲線32よりも後端側に位置し、生理用ナプキン1の後端側に膨出する湾曲線からなるとともに、両端が前記後方内側曲線32の両端にそれぞれ接続する後方外側曲線33とにより区画された閉領域部分を肌当接面側から窪ませた凹面状の後方低圧搾部30が形成されるとともに、前記後方低圧搾部30内に、後方内側曲線32及び後方外側曲線33に沿ってそれぞれ離散的に複数の後方高圧搾部31が形成され、前記後方内側曲線32に沿って形成された前記後方高圧搾部34は、前記後方内側曲線32の全長に亘って配置され、前記後方外側曲線33に沿って形成された後方高圧搾部35は、前記後方外側曲線33の中央部に配置され、前記後方外側曲線33の両端部には配置されないこととしてもよい。これによって、生理用ナプキン1の後方側においても同様に、身体の前後方向の丸み及び幅方向の丸みに沿って変形しやすくなり、ヨレや漏れが発生しにくくなる。
【符号の説明】
【0068】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…中高部、7…サイド不織布、9…糸状弾性伸縮部材、10…低圧搾部、11・14・15…高圧搾部、12…内側曲線、13…外側曲線、16・17…高圧搾部配置領域、18…高圧搾部非存在領域、20…前側長手方向圧搾溝、21…後側長手方向圧搾溝、22…後端湾曲形圧搾溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8