(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電子部品搭載箱の取付け構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記の実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0012】
[実施形態]
まず、実施形態に係る電子部品収容箱について説明する。
図1は、実施形態に係る電子部品収容箱の斜視図である。
図2は、実施形態に係る電子部品収容箱の部分断面斜視図である。
図3は、実施形態に係る電子部品収容箱の部分断面斜視図である。
図4は、実施形態に係る電子部品収容箱の分解斜視図である。ここで、
図1および
図4は筐体のアッパーカバーが取り外された状態の図であり、
図2は
図1におけるA−A断面図であり、
図3は
図1におけるB−B断面図である。また、各図のX方向は、本実施形態における電子部品収容箱の幅方向である。Y方向は、本実施形態における電子部品収容箱の奥行き方向であり、幅方向と直交する方向である。Z方向は、本実施形態における電子部品収容箱の上下方向であり、幅方向、および奥行き方向と直交する方向である。Z1方向は、電子部品収容箱の車体側に対する組み付け方向であり、下方向である。Z2方向は、Z1方向と反対方向であり、上方向である。
【0013】
本実施形態における電子部品収容箱1は、図示しない電池モジュール付近などに設置され、電源と車両内に搭載されるインバータや各種電子機器との間を接続するものである。電子部品収容箱1は、種々の電子部品を収容するものであり、本実施形態ではジャンクションボックスなどの電気接続箱などである。電子部品収容箱1は、
図1および
図4に示すように、車体側取付け部材100に取付けられることで、車体に取付けられるものであり、筐体2と、筐体本体3と、ロアカバー4と、不図示のアッパーカバーと、電子部品5と、第1バスバー6と、第2バスバー7と、防振ユニット8と、減衰部材9とを備える。
【0014】
電子部品収容箱1は、
図1に示すように、取付け構造Tにより、車体側取付け部材100に対して取付けられている。取付け構造Tは、防振構造Sと、減衰構造Rとを備える。
【0015】
ここで、車体側取付け部材100は、筐体2が設置されるものであり、例えば、電子モジュールが取付けられるシート下の板金などの車体を構成するパネルである。車体側取付け部材100は、電子部品収容箱1が取付けられる、すなわち筐体2が設置される筐体設置面100aを有する。車体側取付け部材100は、筐体設置面100aに複数の固定ピン101と、第1摺動ピン102と、第2摺動ピン103とが形成される。
【0016】
固定ピン101は、防振構造Sの一部を構成するものである。固定ピン101は、筐体設置面100aのうち、Z方向から見て筐体2の4つの角部と対向する位置から突出し、Z2方向に延在して形成される。固定ピン101は、円柱形状であり、外周面に雄ねじが形成される。
【0017】
第1摺動ピン102および第2摺動ピン103は、減衰構造Rの一部を構成するものであり、第2摺動部である。各摺動ピン102、103は、筐体設置面100aのうち、Z方向から見て各固定ピン101で囲まれた領域(矩形状の領域)のほぼ中央部から突出し、Z2方向にそれぞれ延在して、X方向に並んで形成される。各摺動ピン102、103は、筐体2の後述する第1摺動孔36、第2摺動孔37にそれぞれ挿入し易くするために先細りの円柱形状に形成される。
【0018】
筐体2は、絶縁性の合成樹脂などによって形成され、
図4に示すように、筐体本体3と、ロアカバー4と、アッパーカバーとを備え、少なくとも1以上の電子部品5が搭載される。
【0019】
筐体本体3は、電子部品5、第1バスバー6および防振ユニット8を収容するものである。筐体本体3は、本体部31と、複数の爪部32と、リレー収容部33と、第2バスバー収容部34と、凹部35とを備える。
【0020】
本体部31は、Z方向から見て、X方向が長手方向となる略矩形状の箱状部材であり、Z方向における下面に不図示の開口部が形成され、内部空間部が形成される。本体部31は、Z方向から見て矩形状の4つの角部が略円弧状に切り欠かれて形成される。本体部31は、収容面31aおよび側壁31bを有する。収容面31aは、本体部31の上面である。側壁31bは、Z方向から見て、収容面31aの外周に沿ってZ1方向に延在して形成される。側壁31bは、不図示の複数の係止部が形成される。側壁31bは、Y方向に沿って側壁31bを貫通し、筐体本体3の内部空間部と筐体本体3の外部を連通する貫通孔31cが形成される。貫通孔31cは、Y方向から見て矩形状に形成されており、後述の第1バスバー6の外部端子接続部61b、62b、63b、64bが内部空間部から外部に突出できる大きさに形成される。
【0021】
爪部32は、防振構造Sの一部を構成するものであり、後述のゴムマウント81が装着されるものである。爪部32は、Z方向から見て筐体本体3の各角部において側壁31bからそれぞれ外側に突出して形成される。爪部32は、外側の端部から側壁31bに向かってU字状に切り欠かれた切欠き部32aが形成される。切欠き部32aは、ゴムマウント81の後述する溝部81bが挿入されるものである。
【0022】
リレー収容部33は、電子部品5を個別に収容するものである。リレー収容部33は、収容面31aから突出した収容壁部により収容空間部が形成され、電子部品5が収容空間部に挿入される。収容空間部を構成する収容面31aには、電子部品5のリレー端子が貫通するリレー端子貫通孔が複数設けられる。本実施形態におけるリレー収容部33は、X方向において、本体部31の凹部35を挟んで形成されている。
【0023】
第2バスバー収容部34は、第2バスバー7の後述の各足部71b、72b、73b、74bを個別に収容するものである。第2バスバー収容部34は、収容面31aから突出した収容壁部により収容空間部が形成され、足部71b、72b、73b、74bが収容空間部に挿入される。本実施形態における第2バスバー収容部34は、X方向において、各リレー収容部33の凹部35側と反対側にY方向に並んで形成されている。
【0024】
凹部35は、収容面31aのうち、各リレー収容部33の間に、Z1方向に窪んで形成される。凹部35は、Z方向から見て略四角形状に形成される。凹部35は、第1摺動孔36および第2摺動孔37が形成される。
【0025】
第1摺動孔36は、減衰構造Rの一部を構成するものであり、第1摺動部である。第1摺動孔36は、収容面31aからZ方向に沿って本体部31を貫通する貫通孔であり、第1摺動ピン102が挿入される。第1摺動孔36は、Y方向に沿って対向する長辺を有する長穴形状に形成される。第1摺動孔36は、減衰部材9が装着された状態において、対向する長辺が第1摺動ピン102と接触する大きさに形成される。
【0026】
第2摺動孔37は、減衰構造Rの一部を構成するものであり、第1摺動部である。第2摺動孔37は、収容面31aからZ方向に沿って本体部31を貫通する貫通孔であり、第2摺動ピン103が挿入される。第2摺動孔37はX方向に沿って対向する長辺を有する長穴形状に形成される。第2摺動孔37は、減衰部材9が装着された状態において、対向する長辺が第2摺動ピン103と接触する大きさに形成される。
【0027】
ロアカバー4は、第1バスバー6を収容するものである。ロアカバー4は、本体部41と、第1バスバー収容部42と、開口部43と、端子保持部44とを備える。
【0028】
本体部41は、Z方向から見て、X方向が長手方向となる略矩形状の皿状部材であり、上面に開口部が形成され、内部空間部が形成される。本体部41は、Z方向から見て矩形状の4つの角部が略円弧状に切り欠かれて形成されており、本体部31の開口部から内部空間部に挿入され、筐体本体3を下方向から閉塞する。本体部41は、収容面41aおよび側壁41bを有する。収容面41aは、本体部41の上面である。側壁41bは、Z方向から見て、収容面41aの外周に沿ってZ2方向に延在して形成される。側壁41bは、複数の係止部41cが形成される。本体部41は、筐体本体3にロアカバー4を組み付ける際に、本体部31に挿入され、複数の係止部41cが本体部31の複数の係止部とそれぞれ係止されることで、本体部31に保持される。側壁41bは、Y方向から見て貫通孔31cと対向する位置に、切欠き部41dが形成される。切欠き部41dは、貫通孔31cを外部に露出させることで、本体部31の内部空間部および本体部41の内部空間部を外部と連通するものである。
【0029】
第1バスバー収容部42は、第1バスバー6の後述の各リレー端子接続部61a、62a、63a、64aを個別に収容するものである。第1バスバー収容部42は、収容面41aから突出した収容壁部により収容空間部が形成され、リレー端子接続部61a、62a、63a、64aが収容空間部に挿入される。本実施形態における第1バスバー収容部42は、X方向に配列されており、収容壁部に同一方向の切欠きが形成される。
【0030】
開口部43は、収容面41aからZ方向に沿って本体部41を貫通し、Z方向から見て略四角形状に形成される。開口部43は、筐体本体3の凹部35が開口部43をZ1方向に挿入できる大きさに形成される。
【0031】
端子保持部44は、各外部端子接続部61b、62b、63b、64bを保持するものである。端子保持部44は、収容面41aのうち、切欠き部41dと連続する外周の一部が内側に向かってY方向に沿ってオフセットし、さらにオフセットされた部分からZ2方向に向かって突出して形成される。端子保持部44は、Z2方向の端部に各外部端子接続部61b〜64bに対応する複数の溝部44aが形成される。端子保持部44は、各溝部44aに各外部端子接続部61b、62b、63b、64bがそれぞれ収容された状態で、Y方向において各外部端子接続部61b〜64bを貫通孔31cと対向する位置に形成される。
【0032】
電子部品5は、例えば、電子部品収容箱1と車体側取付け部材100との間に防振構造Sを介在させることが要求されるもの、すなわち作動時に振動を発生するものである。本実施形態における電子部品5は、
図1および
図4に示すように、例えば、バッテリなどの電源から入力された高電圧の電力を、内部に備えるスイッチのオンオフのなどの作動によって制御して電子部品5の外部の各種電子機器に出力する高電圧リレー5A、5Bである。高電圧リレー5A、5Bは、略直方体形状に形成され、リレー収容部33に収容される。高電圧リレー5A、5Bは、負荷入力端子部51と、隔壁板52と、不図示のリレー端子とを備える。
【0033】
負荷入力端子部51は、導電性を有する金属などで形成され、外部からの電力を入力するものである。負荷入力端子部51は、高電圧リレー5A、5Bの外周面を構成する複数の面の1つに一対で形成される。負荷入力端子部51は、第2バスバー7が接触した状態で、第2バスバー7を高電圧リレー5A、5Bに対して取付ける不図示の締結部材が挿入される挿入孔51aを有する。挿入孔51aは、締結部材と螺合するねじが内周面に形成されている。
【0034】
隔壁板52は、1つの高電圧リレー5A、5Bに取付けられた2つの第2バスバー71〜74の接触を防止するものである。隔壁板52は、絶縁性の合成樹脂などで形成され、一対の負荷入力端子部51の間に、外周面から突出して形成される。隔壁板52は、2つの第2バスバー71〜74の間に介在することで、短絡を防止することができる。
【0035】
リレー端子は、高電圧リレー5A、5Bの内部のスイッチなどによって制御された電力を、電子部品収容箱1の外部の各種電子機器に対して供給するものである。リレー端子は、高電圧リレー5A、5Bの外周面を構成する複数の面のうち、収容面31aと対向する面から突出してZ1方向に延在し、複数形成される。各リレー端子は、リレー収容部33に設けられたリレー端子貫通孔を貫通して、各リレー端子接続部61a、62a、63a、64aとそれぞれ電気的に接触する。
【0036】
第1バスバー6は、
図4に示すように、筐体本体3とロアカバー4との間に収容され、電子部品収容箱1の外部の各種電子機器と電子部品5とをそれぞれ電気的に接続するものである。第1バスバー6は、複数のバスバー、本実施形態では、第1バスバー61、62、63、64から構成される。各第1バスバー61〜64は、導電性を有する金属製であり、平板状に形成される。各第1バスバー61〜64は、それぞれ一方の端部に、Z2方向に向かって直角に屈曲したリレー端子接続部61a、62a、63a、64aがそれぞれ形成される。各リレー端子接続部61a〜64aは、第1バスバー収容部42にそれぞれ収容される。各第1バスバー61〜64は、それぞれ他方の端部に、Z2方向に向かって直角に屈曲して延在し、さらにY方向に沿って直角に屈曲した外部端子接続部61b、62b、63b、64bがそれぞれ形成される。各外部端子接続部61b〜64bは、各溝部44aにそれぞれ収容された状態で、貫通孔31cを介して外部に露出し、外部の各種電子機器と接続された接続端子等と電気的に接続される。
【0037】
第2バスバー7は、
図1および
図4に示すように、筐体本体3とアッパーカバーとの間に収容され、バッテリなどの電源と高電圧リレー5A、5Bとをそれぞれ電気的に接続するものである。第2バスバー7は、複数のバスバー、本実施形態では、第2バスバー71、72、73、74から構成される。各第2バスバー71〜74は、導電性を有する金属製であり、平板状に、Z方向から見て直角に屈曲した屈曲部を有して形成される。第2バスバー71〜74は、それぞれ一方の端部が各負荷入力端子部51とそれぞれ電気的に接触し、挿入孔51aと対向する位置に貫通孔71a、72a、73a、74aがそれぞれ形成される。第2バスバー71〜74は、それぞれ他方の端部に、Z方向と直角に屈曲した足部71b、72b、73b、74bが形成される。足部71b〜74bは、各第2バスバー収容部34にそれぞれ収容された状態で、バッテリなどの電源と接続された接続端子等と電気的に接続される。
【0038】
防振ユニット8は、防振構造Sの一部を構成するものである。防振ユニット8は、電子部品5の作動時における振動が筐体2を介して車体側取付け部材100に伝搬することを抑制するものである。防振ユニット8は、弾性を有する防振部材81と、カラー部材82と、締結部材83とを備える。
【0039】
防振部材81は、筐体2に装着され、かつ固定ピン101に挿入され、筐体2の荷重を車体側取付け部材100に対して支持するものである。本実施形態における防振部材81は、例えばゴムマウントであり、円筒形状に形成される。防振部材81は、筐体本体3の爪部32に挿入され、かつ車体側取付け部材100の筐体設置面100aに軸方向の一方の端部、すなわちZ1方向の端部が接触するものである。防振部材81は、貫通孔81aと、溝部81bを有する。貫通孔81aは、カラー部材82が挿入されるものである。溝部81bは、爪部32の切欠き部32aに挿入されるものであり、防振部材81の軸方向周りの外周面に全周に渡って、内側に凹んで形成される。
【0040】
カラー部材82は、防振部材81の貫通孔81aに挿入され、かつ固定ピン101に挿入され、防振部材81と固定ピン101との間に介在することで、防振部材81に対するスペーサーとして機能するものである。カラー部材82は、合成樹脂など防振部材81より荷重による変形が困難な材料により構成されており、本体部82aと、つば部82bと、貫通孔82cとを有する。本体部82aは、円筒形状に形成され、軸方向の長さが防振部材81の軸方向の長さと同一(略同一も含む)に形成される。つば部82bは、防振部材81の軸方向における抜けを防止するものであり、本体部82aの軸方向周りの外周面のうち、Z2方向の端部に半径方向外側に突出して形成されている。貫通孔82cは、本体部82aを軸方向の両端部で貫通するものであり、固定ピン101が挿入されるものである。
【0041】
締結部材83は、固定ピン101に挿入された防振部材81およびカラー部材82を車体側取付け部材100との間で保持するものである。締結部材83は、例えばフランジ付ナットである。締結部材83は、固定ピン101と螺合するものであり、つば部82bと接触する。
【0042】
ここで、本実施形態の防振構造Sは、上述のように、固定ピン101と、爪部32と、防振ユニット8とによって構成され、筐体2と車体側取付け部材100との間に設けられる。
【0043】
減衰部材9は、各摺動孔36、37と各摺動ピン102、103との間にそれぞれ介在し、車体側取付け部材100に対する筐体2の相対移動時に、各摺動孔36、37と各摺動ピン102、103との摺動抵抗を発生させるものである。減衰部材9は、例えば、弾性を有するゴムダンパーであり、第1ゴムダンパー91と、第2ゴムダンパー92とから構成される。
【0044】
第1ゴムダンパー91および第2ゴムダンパー92は、貫通孔91a、92aを有する長穴の環状にそれぞれ形成され、第1摺動孔36の内周面および第2摺動孔37の内周面にそれぞれ沿って装着される。第1ゴムダンパー91は、車体側取付け部材100に対する筐体2の相対移動時に、第1摺動孔36と第1摺動ピン102との摺動抵抗を発生させるものである。第2ゴムダンパー92は、車体側取付け部材100に対する筐体2の相対移動時に、第2摺動孔37と第2摺動ピン103との摺動抵抗を発生させるものである。各ゴムダンパー91、92のZ方向における両端部は、各ゴムダンパー91、92の外周面から突出し、各摺動孔36、37よりも大きくなるように、各ゴムダンパー91、92の外側に向かって延在された縁部91b、92bがそれぞれ形成される。各ゴムダンパー91、92は、Y方向から見て、内周面がZ1方向およびZ2方向から径方向内側に向かって勾配が形成される。従って、勾配の頂点部に向かうにつれ貫通孔91a、92aは狭くなり、貫通孔91a、92aの長穴形状における短辺方向の幅は各摺動ピン102、103の径よりも狭くなる。
【0045】
以上により、本実施形態の減衰構造Rは、防振構造Sと異なるものであり、第1摺動孔36、第1摺動ピン102および第1ゴムダンパー91とからなるY方向に対応する一組と、第2摺動孔37、第2摺動ピン103および第2ゴムダンパー92とからなるX方向に対応する一組とで構成される減衰構造Rとからなり、筐体2と車体側取付け部材100との間に設けられる。
【0046】
次に、電子部品収容箱1の車体側取付け部材100に対する取付け手順の一例を説明する。作業員は、まず、第1ゴムダンパー91を第1摺動孔36に圧入して装着し、第2ゴムダンパー92を第2摺動孔37に圧入して装着する。次に作業員は、ロアカバー4に対して第1バスバー6を収容した状態で、ロアカバー4を筐体本体3に保持する。次に、作業員は、筐体本体3に対して高電圧リレー5A、5Bおよび第2バスバー7を収容した状態で、アッパーカバーを筐体本体3に保持する。これにより、電子部品収容箱1を組み立てる。次に作業員は、ゴムマウント81の貫通孔81aにカラー部材82の本体部82aを挿入する。次に作業員は、カラー部材82を装着したゴムマウント81を、爪部32の切欠き部32aに挿入し、ゴムマウント81の溝部81bに爪部32を挿入し、爪部32に対してゴムマウント81を装着する。次に、作業員は、各カラー部材82の貫通孔82cと、各固定ピン101をそれぞれZ方向において対向させる。次に作業員は、筐体2を車体側取付け部材100に対してZ1方向に移動させることで、各貫通孔82cに各固定ピン101をそれぞれZ1方向に挿入させる。次に、作業員は、筐体2を車体側取付け部材100に対してZ1方向にさらに移動させることで、第1ゴムダンパー91の貫通孔91aに対して第1摺動ピン102を、第2ゴムダンパー92の貫通孔92aに対して第2摺動ピン103を挿入させる。このとき、第1摺動ピン102および第2摺動ピン103は、第1ゴムダンパー91および第2ゴムダンパー92をそれぞれ弾性圧縮し、第1ゴムダンパー91および第2ゴムダンパー92に対して摺動可能に圧入される。次に作業員は、ゴムマウント81およびカラー部材82のZ1方向の端部が筐体設置面100aに接触し、筐体2が車体側取付け部材100に対して離間している状態で、各固定ピン101に各締結部材83をそれぞれ螺合させて、固定ピン101に挿入されたゴムマウント81およびカラー部材82を車体側取付け部材100との間で保持することで、筐体2を車体側取付け部材100に対して取付ける。
【0047】
次に、電子部品収容箱1の取付け構造Tの機能について説明する。まず、防振構造Sについて説明する。高電圧リレー5A、5Bは、車輌の状態に応じて作動する。高電圧リレー5A、5Bが作動すると、振動が発生し、筐体2に伝搬する。筐体2に伝搬した振動は、防振構造Sを介して車体側取付け部材100に伝搬される。このとき、弾性を有するゴムマウント81が電子部品収容箱1の荷重を支持しているため、筐体本体3の爪部32からゴムマウント81に振動が伝搬されるが、防振ユニット8を含む筐体2の系の固有振動数は低下するので、ゴムマウント81を介して、車体側取付け部材100に伝搬する振動は、電子部品5の振動より低減され、防振構造Sにより筐体2から車体側取付け部材100への振動の伝搬が抑制される。
【0048】
次に、減衰構造Rについて説明する。例えば、車輌走行中に路面の凹凸などによって、車体側取付け部材100に振動が発生する。ここで、筐体2は、防振構造Sを介して車体側取付け部材100に荷重が支持されており、筐体2と車体側取付け部材100とは異なる系となる。従って、車体側取付け部材100が振動すると、筐体2は、その振動に追随して位相のズレを生じながら共振して振動し始める。つまり、筐体2は、車体側取付け部材100に対して相対移動する。例えば、筐体2が車体側取付け部材100に対してX方向に相対移動した場合は、第2摺動孔37が第2摺動ピン103に対して長穴方向に摺動する。例えば、筐体2が車体側取付け部材100に対して、Y方向に相対移動した場合は、第1摺動孔36が第1摺動ピン102に対して長穴方向に摺動する。例えば、筐体2が車体側取付け部材100に対してZ方向に相対移動した場合は、第1摺動孔36および第2摺動孔37が、第1摺動ピン102および第2摺動ピン103に対して、孔の軸方向に摺動する。つまり、相対移動時、いずれの方向においても、第1摺動ピン102の外周面102aおよび第2摺動ピン103の外周面103aが、第1ゴムダンパー91および第2ゴムダンパー92と接触しながら相対移動することとなるため、摺動抵抗が発生する。摺動抵抗により発生する摩擦エネルギーは、相対移動している筐体2の運動エネルギーの一部が摺動抵抗によって熱エネルギーに変換されたものである。従って、運動エネルギーが熱エネルギーに変換された分だけ運動エネルギーは減少する。これにより、運動エネルギーが減少することで、筐体2の振動は減衰される。
【0049】
以上のように、本実施形態では、筐体2と車体側取付け部材100との間に、防振構造Sと異なる減衰構造Rを備える。減衰構造Rの減衰部材9(第1ゴムダンパー91、第2ゴムダンパー92)は、筐体2に装着されて、第1摺動部(第1摺動孔36および第2摺動孔37)と第2摺動部(第1摺動ピン102および第2摺動ピン103)との間に介在して摺動抵抗を発生させる。摺動抵抗による摩擦エネルギーによって、相対移動している筐体2の運動エネルギーを減少させることができる。従って、防振部材81が装着されることで筐体2の固有振動数が低下し、車体側取付け部材100が振動した場合の振動周波数に近い値となっても、共振時における共振点付近の振動の伝達率である共振倍率や、振動の振幅および加速度を下げることができ、振動を減衰することができる。つまり、従来における電子部品収容箱の取付け構造と比較して、本実施形態の電子部品収容箱1の取付け構造Tは、相対移動量を減少させることができる。これにより、防振構造Sにより電子部品収容箱1が車体側取付け部材100に対して相対的に移動した場合でも、電子部品収容箱1に搭載された電子部品5に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、車体側取付け部材100に対する筐体2の取付け時に、各固定ピン101を各貫通孔82cに挿入している状態で、第1摺動ピン102、第2摺動ピン103を第1摺動孔36、第2摺動孔37にそれぞれ挿入させて取付ける。従って、筐体2などの各部材における成型上の公差や、ゴムマウント81の筐体2に対する装着位置のバラツキなどにより、各固定ピン101を各貫通孔82cに挿入した際に生じる、予め設定された筐体2の取付け位置に対するX方向およびY方向の位置ズレを、第1摺動ピン102、第2摺動ピン103を第1摺動孔36、第2摺動孔37にそれぞれ挿入することで抑制し、筐体2を上記取付け位置に対して位置決めして取付けることができる。また、これにより、作業員が確実かつ簡易に筐体2を車体側取付け部材100に取付けることができる。
【0051】
また、本実施形態における減衰構造Rは、Z方向に延在した第1摺動ピン102をY方向に沿って形成された第1摺動孔36に挿入し、第2摺動ピン103をX方向に沿って形成された第2摺動孔37に挿入するものである。これにより、X、Y、Zの各方向のいずれかの方向に相対移動が生じても、第1摺動ピン102、第2摺動ピン103を確実に減衰部材9に接触させて摺動抵抗を発生させることができる。さらには、例えば筐体2が車室のスペースの都合などにより斜めに取付けられた場合においても、減衰構造Rは、筐体2にとって互いに直交する3次元方向に対応するので、いずれの方向に対しても摺動抵抗を発生させることができ、筐体2の取付け状態に係らず、電子部品収容箱1に搭載された電子部品5に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、第1摺動孔36および第2摺動孔37を長穴形状としているが、これに限らず第1摺動ピン102および第2摺動ピン103が摺動抵抗を発生させることができれば、例えば円形状、楕円形状であってもよい。
【0053】
本実施形態では、電子部品5が振動を発生するものであるが故に電子部品収容箱1が防振構造Sを備えるとしているが、電子部品5が振動を発生するものであるとは限らず、その他の理由により電子部品収容箱1に防振構造Sが要求されるものであってもよい。