(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係るコネクタの第1の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のコネクタ11は、
図1に示すように、互いに嵌合する雌ハウジング12(一方のハウジング)と雄ハウジング13(他方のハウジング)とを備えて構成され、雌ハウジング12と雄ハウジング13が嵌合することで、雌ハウジング12に収容された雌端子14と雄ハウジング13に収容された雄端子15が、電気的に接続されるようになっている。雌端子14と雄端子15には、それぞれ電線16,17が接続されている。雌ハウジング12は、雄ハウジング13との嵌合時に雄ハウジング13の内側に嵌め込まれてロックされるようになっている。
図1では、各ハウジングにそれぞれ2本ずつ端子が収容されているが、端子の収容数は2本に限られない。なお、以下では、
図1のX方向を前後方向、Y方向を幅方向、Z方向を高さ方向とし、各コネクタの嵌合方向をそれぞれ前方と定義し、
図1の上側を上方と定義して説明する。
【0015】
雌ハウジング12は、絶縁性の合成樹脂製であり、
図1及び
図2に示すように、前後方向と直交する断面が、幅方向を長手とする長円型の筒状に形成されている。雌ハウジング12は、雌端子14を収容して前後方向に延びる2個のキャビティ18,18が内部に形成された基部19と、基部19から後方へ突出する電線保持部20とが一体的に設けられ、左右対称に形成されている。
【0016】
キャビティ18は、
図2に示すように、基部19の幅方向に隣り合せて配置され、互いに仕切られて左右対称に形成されている。キャビティ18内には、前方へ延びるランス(不図示)が設けられ、ランスで各雌端子14を係止させることで、各雌端子14をキャビティ18内の設定位置に保持している。キャビティ18は、基部19の前端面21の開口22を介して前方に開放されるとともに、電線保持部20を前後方向に貫通する電線挿通孔23(
図1)と連通して後方に開放されている。
【0017】
基部19には、キャビティ18の開口22を内側に位置させて前端面21に支持された円筒状の雌側筒状体24が前方へ突出して設けられる。雌側筒状体24は、樹脂製であり、基部19と一体形成されている。雌側筒状体24の外周面は、基部19の外周面と全周にわたって段付き状に小さく形成されている。基部19には、外周面の上部から上方へ突出して前後方向に延びる一対の突条部25,25と、外周面の下部から下方へ突出して前後方向に延びる膨出部26とが一体形成されている。一対の突条部25,25は、基部19の前端から後端にわたって延びるとともに、互いに幅方向に離れて設けられ、その上面には前後方向にわたって上方へ突出する第1リブ27,27が設けられる。一対の突条部25,25の内側には、上方へ突出するロック部28が設けられる。ロック部28は、前方に向かって低くなる傾斜面29を有している。膨出部26は、基部19の前端から後端にわたって延びるとともに、断面矩形状に形成され、その下面には前後方向にわたって下方へ突出する一対の第2リブ30,30が設けられる。なお、第1リブ27と第2リブ30については、後で詳しく述べる。
【0018】
雌端子14は、
図1に示すように、導電性の金属板材等で形成され、電線16の芯線を圧着接続する電線接続部31と、角筒状の電気接触部32とが一体形成されている。電線接続部31に一端が接続された電線16の外周面には、環状のゴム栓33が装着されている。雌端子14は、電線保持部20の電線挿通孔23に後方から挿入され、ゴム栓33が電線挿通孔23に押し込まれる。これにより、ゴム栓33は電線16の外周面及び電線挿通孔23の内周面とそれぞれ密着されて電線挿通孔23の開口が密封される。電線挿通孔23から挿入されてキャビティ18内の所定位置に保持された雌端子14は、電気接触部32が、基部19の開口22から設定距離だけ後退させた位置に先端部が配置されている。
【0019】
雄ハウジング13は、
図1に示すように、合成樹脂製であり、雄端子15が収容されて前後方向に延びる2個のキャビティ34,34が内部に形成された筒状のハウジング本体35と、ハウジング本体35から前方へ突出するフード部36と、ハウジング本体35から後方へ突出する電線保持部37とが一体的に設けられ、左右対称に形成されている。
【0020】
キャビティ34は、
図3に示すように、ハウジング本体35の幅方向に隣り合わせて配置され、互いに仕切られて左右対称に形成されている。キャビティ34内には、前方へ延びるランス(不図示)が設けられ、ランスで各雄端子15を係止させることで、各雄端子15をキャビティ34内の設定位置に保持している。キャビティ34は、ハウジング本体35の前端面38の開口39を介して前方に開放されるとともに、電線保持部37を前後方向に貫通する電線挿通孔40と連通して後方に開放されている。
【0021】
フード部36は、雌ハウジング12の基部19と略相似形の内周面の断面形状を有して基部19を収容可能に形成されている。フード部36には、
図3に示すように、前端部から立ち上がる壁部41が設けられ、この壁部41は、一対の第1切欠き部42,42と、一対の第1切欠き部42,42の内側に位置する第2切欠き部43を有している。一対の第1切欠き部42,42は、フード部36の奥側の内周面とそれぞれ前後方向に連続して形成され、それぞれの奥側のフード部36の内周面には、第3リブ44,44が設けられる。フード部36の内周面の下部には、雌ハウジング12の膨出部26が挿入される案内溝45が、フード部36の前端から後端にわたって、前後方向に延びて形成されている。案内溝45には、前後方向にわたって上方に突出する一対の第4リブ46,46が設けられる。フード部36の内部には、ハウジング本体35の前端面38の開口39を内側に位置させて前端面38に支持された円筒状の雄側筒状体47が前方へ突出して設けられる。雄側筒状体47は、樹脂製であり、ハウジング本体35と一体形成されている。なお、第3リブ44と第4リブ46については、後で詳しく述べる。
【0022】
ハウジング本体35には、一端部が支持されて、前後方向に沿って前方へ延びるロックアーム48が設けられる。ロックアーム48は、ハウジング本体35の幅方向の両側面から起立する一対の側壁部49,49を幅方向に連ねる基端部50と、基端部50の幅方向の中央部から前方へ延びるアーム部51とを有している。ロックアーム48は、基端部50を支点として、アーム部51の前端部が水平方向に対して上方へ変位するようになっている。このアーム部51の前端下部には、
図5に示すように、下方へ突出する被ロック部52が設けられる。一対の側壁部49,49は、
図1に示すように、ロックアーム48を包囲するように、ハウジング本体35からフード部36の壁部41にわたって設けられる。ロックアーム48の上端面は、側壁部49の上端面と同じ高さか、それよりも低い高さに設定されている。
【0023】
雄端子15は、
図1に示すように、導電性の金属板材等で形成され、電線17の芯線を圧着接続する電線接続部53と、雌端子14の電気接触部32に挿入される棒状の雄タブ54とが一体形成されている。電線接続部53に一端が接続された電線17の外周面には、環状のゴム栓55が装着されている。雄端子15は、電線保持部37の電線挿通孔40に後方から挿入され、ゴム栓55が電線挿通孔40に押し込まれる。これにより、ゴム栓55は電線17の外周面及び電線挿通孔40の内周面とそれぞれ密着されて電線挿通孔40の開口が密封される。電線挿通孔40から挿入されてキャビティ内の所定位置に保持された雄端子15は、雄タブ54が、ハウジング本体35の前端面38の開口39から突出して、雄側筒状体47の前端よりも前方へ突出して設けられる。
【0024】
次に、各キャビティ18,34の防水構造について説明する。
図4及び
図5に示すように、雌側筒状体24は、雌ハウジング12と雄ハウジング13の嵌合時に、雄側筒状体47の内部に挿入されて嵌合するようになっている。雌側筒状体24は、雄側筒状体47よりも高い剛性を有し、前後方向と直交する断面が、幅方向を長手とする略長円型の円筒状に形成されている。雌側筒状体24は、全周にわたって前後方向にストレート状に形成される後端部24aと、前方に向かって先窄みとなるように全周にわたってテーパ状に形成された前端部24bとを有し、後端部24aの外周面が、雄側筒状体47との嵌合面となっている。
【0025】
雄側筒状体47は、全周にわたって前後方向にストレート状に形成され、雌側筒状体24の後端部24aの外周面と全周にわたって接触する内周面を有している。具体的に、雄側筒状体47の内周面は、雌側筒状体24が挿入されると、雌側筒状体24の外周面によって内周面が全周にわたって押圧される大きさに設定されている。雄側筒状体47の先端内周面には、前方に末広がりとなる傾斜面56が形成され、この傾斜面56は、雌側筒状体24を雄側筒状体47の内部へ案内する機能を有している。なお、雄側筒状体47の前端面38から前方への突出長さは、雌側筒状体24の前端面21から前方への突出長さよりも長く設定されている。
【0026】
次に、コネクタの嵌合時の基本動作について説明する。まず、
図4に示すように、雌ハウジング12と雄ハウジング13を正対させた状態から相対的に近づけ、雌ハウジング12の基部19(挿入部)を雄ハウジング13のフード部36(筒部)に挿入する。
【0027】
雌ハウジング12を雄ハウジング13に挿入すると、雌ハウジング12の一対の突条部25,25が、それぞれ雄ハウジング13の第1切欠き部42,42を通過するとともに、雌ハウジング12の被ロック部52が、雄ハウジング13の第2切欠き部43を通過する。また、雌ハウジング12の膨出部26が、雄ハウジング13の案内溝45に沿って挿入される。
【0028】
続いて、雌ハウジング12の挿入が進むと、雌ハウジング12のロック部28の傾斜面29に沿って、雄ハウジング13のロックアーム48の被ロック部52が乗り上げて、アーム部51が上方へ撓み変位する。そして、アーム部51の被ロック部52がロック部28を乗り越えたところで、アーム部51が弾性復帰する。これにより、被ロック部52がロック部28に係止され、両ハウジング12,13は、正規の嵌合状態が保持される。
【0029】
一方、両ハウジング12,13が嵌合されると、
図5に示すように、雌側筒状体24は、雄側筒状体47に挿入された状態で嵌合され、雌側筒状体24の外周面が、雄側筒状体47の内周面を全周にわたって押圧する。この押圧によって、雄側筒状体47は、例えば先端部が拡径方向に弾性変形し、この弾性変形によって発生した復元力が、雌側筒状体24の外周面を押圧する。その結果、雌側筒状体24と雄側筒状体47は、全周にわたって弾性的に当接され、雌ハウジング12の開口22と雄ハウジング13の開口39との隙間が水密にシールされる。また、雌ハウジング12の電線挿通孔23は、ゴム栓33により密封され、雄ハウジング13の電線挿通孔40は、ゴム栓55により密封されている。したがって、各キャビティ18,34に水が浸入するのを防ぐことができる。このように、本実施形態では、雌側筒状体24と雌側筒状体24の嵌合による防水構造を採用することで、シール部材などが不要になり、防水構造を簡素化できるので、コネクタの小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0030】
ところで、本実施形態のコネクタ11のように、一方のハウジングの挿入部(雌ハウジング12の基部19)が、他方のハウジングの筒部(雄ハウジング13のフード部36)に挿入されて互いに嵌合する一対のハウジングを備えるコネクタの場合、一方のハウジングの挿入を容易にするために、一方のハウジングの挿入部の外周面と他方のハウジングの筒部の内周面との間に所定のクリアランスが設定されている。しかし、このクリアランスがばらついて、大きくなると、両ハウジングの嵌合時にハウジング間にがたつきが発生し、小さくなると、一方のハウジングの挿入負荷が増大するといった問題がある。
【0031】
また、一方のハウジングの挿入部と他方のハウジングの筒部との間のクリアランスによっては、挿入部が傾いた姿勢で筒部に挿入されることがある。
図6は、本実施形態のコネクタを例に、雌ハウジング12が、雄ハウジング13に傾いた姿勢で挿入された挿入初期の状態を示す図である。この場合、
図7に示すように、挿入部である雌ハウジング12の基部19の前端面21に形成されたキャビティ18の開口22による、雄端子15の拾いが円滑に行えなくなることが考えられる。
【0032】
次に、このような問題に対応するために、本実施形態のコネクタ11に設けられたリブについて説明する。本実施形態の雌ハウジング12の基部19の外周面には、
図8及び
図10に示すように、一対の突条部25,25の上面に沿ってそれぞれ形成された一対の第1リブ27,27(外リブ)と、膨出部26の下面に沿って形成された一対の第2リブ30,30(外リブ)とが、周方向に分散して設けられる。第1リブ27,27は、それぞれ突条部25の上面に基部19の前端から後方の後端にわたって上方へ段付き状に突出して前後方向に延びている。第2リブ30,30は、それぞれ膨出部26の下面に、幅方向に離間して設けられ、基部19の前端から後方の後端にわたって下方へ段付き状に突出して前後方向に延びている。第1リブ27と第2リブ30の前端部には、前端に向かって突出高さが低くなる傾斜面57が形成されている。
【0033】
第1リブ27と第2リブ30は、それぞれ、基部19の前端から設定距離Kだけ離れた位置までの突出高さがL1に設定され、基部19の前端から設定距離Kだけ離れた位置から後端までの段部58の突出高さが、L1よりも大きいL2に設定されている。突出高さL1は、雌ハウジング12の基部19と雄ハウジング13のフード部36の嵌合時における、基部19の外周面とフード部36の内周面との間のクリアランス(例えば、膨出部26の下面と案内溝45の上面との隙間の距離、以下、適宜クリアランスと略す。)の設定値より小さく設定され、雌ハウジング12の基部19と雄ハウジング13のフード部36が嵌合したときに、第1リブ27と第2リブ30の両方がフード部36の内周面と接触しない高さに設定されている。また、段部58の突出高さL2は、クリアランスの設定値以上に設定され、雌ハウジング12の基部19を雄ハウジング13のフード部36に挿入したとき、第1リブ27と第2リブ30の段部58がいずれもフード部36の内周面と接触する高さに設定されている。各リブの段部58は、
図8のように、前端部に傾斜面59が設けられ、前方から段部58に向かって突出高さが次第に高くなるように形成されている。第1リブ27と第2リブ30の前後方向と直交する断面形状は、円弧状をなしているが、矩形状に形成されていてもよい。なお、各リブの段部58の前後方向の長さは、基部19の前端からの設定距離K、段部58の突出高さL2等を考慮して設定することができる。
【0034】
本実施形態の雄ハウジング13のフード部36の内周面には、
図9及び
図10に示すように、一対の第1切欠き部42,42と連なって奥側(後方)へ延びる内周面に沿ってそれぞれ形成された一対の第3リブ44,44(内リブ)と、案内溝45の上面に沿って形成された一対の第4リブ46,46(内リブ)とが、周方向に分散して設けられる。第3リブ44,44は、それぞれフード部36の内周面の前端から後方の後端にわたって、下方へ段付き状に突出して前後方向に延びている。第4リブ46,46は、それぞれ案内溝45の上面に幅方向に離間して設けられ、案内溝45の前端から後方の後端にわたって上方へ段付き状に突出して前後方向に延びている。第3リブ44と第4リブ46の前端部には、前端に向かって突出高さが低くなる傾斜面60が形成されている。
【0035】
第3リブ44と第4リブ46は、それぞれ、突出高さが一律にL2よりも小さいL1に設定されている。すなわち、第3リブ44と第4リブ46の突出高さL1は、基部19の外周面とフード部36の内周面との間のクリアランスの設定値よりも小さく設定され、雌ハウジング12の基部19と雄ハウジング13のフード部36とが嵌合したときに、第3リブ44と第4リブ46の両方が基部19の外周面と接触しない高さに設定されている。
【0036】
各リブは、
図10に示すように、雌ハウジング12と雄ハウジング13との嵌合時において、周方向で互いの位置をずらして配置されている。すなわち、第1リブ27と第3リブ44は、各ハウジングの上部で互いに離間して周方向に隣り合うように配置され、第2リブ30と第4リブ46は、各ハウジングの下部で互いに離間して周方向に隣り合うように配置されている。本実施形態では、一対の第1リブ27,27が、一対の第3リブ44,44の内側に配置されているが、一対の第3リブ44,44の外側に配置されていてもよい。また、本実施形態では、一対の第2リブ30,30が、一対の第4リブ46,46の内側に配置されているが、一対の第4リブ46,46の外側に配置されていてもよい。
【0037】
ここで、雌ハウジング12の第1リブ27と第2リブ30は、雌ハウジング12を前後方向からみたとき、雌ハウジング12の基部19(挿入部)の外周面の幾何学的中心(中心軸)を通る面に対して面対称の位置(具体的には左右対称)に配置され、雄ハウジング13の第3リブ44と第4リブ46は、雄ハウジング13を前後方向からみたとき、雄ハウジング13のフード部36(筒部)の内周面の幾何学的中心(中心軸)を通る面に対して面対称の位置(
図10では左右対称)に配置されている。すなわち、第1〜第4リブ27,30,44,46は、雌ハウジング12と雄ハウジング13との嵌合時において、基部19(挿入部)の外周面又はフード部36(筒部)の内周面の幾何学的中心(中心軸)を通る面に対して面対称の位置に配置されている。なお、各リブの位置は、これに限らず、例えば、第1リブ27と第2リブ30は、雌ハウジング12を前後方向からみたとき、雌ハウジング12の基部19の外周面の幾何学的中心に対して点対称の位置に配置され、第3リブ44と第4リブ46は、雄ハウジング13を前後方向からみたとき、雄ハウジング13のフード部36の内周面の幾何学的中心に対して点対称の位置に配置されていてもよい。すなわち、第1〜第4リブ27,30,44,46は、雌ハウジング12と雄ハウジング13との嵌合時において、基部19(挿入部)の外周面又はフード部36(筒部)の内周面の幾何学的中心(中心軸)に対して点対称の位置に配置されていてもよい。このように各リブを配置することで、フード部36に挿入された基部19のフード部36に対する偏芯を抑制することができるから、雌端子14と雄端子15の間の位置ずれを防ぐことができ、端子間の良好な接触を維持することができる。
【0038】
以上述べたように、本実施形態では、雌ハウジング12において、外リブである第1リブ27と第2リブ30が、基部19の前端から後方の段部58まで突出高さL1の高さで形成され、さらに、雄ハウジング13において、内リブである第3リブ44と第4リブ46が、フード部36の前端から後方にわたって突出高さL1の高さで設けられている。そのため、例えば、
図11に示すように、雌ハウジング12の基部19が、雄ハウジング13のフード部36に対して傾いた姿勢(下向き)で挿入された場合、基部19の外周面が第4リブ46に当接され、かつ、基部19の第1リブ27がフード部36の内周面と当接されることで、挿入初期の段階で基部19の傾きを矯正することができる。これにより、基部19の前端面21の開口22による雄端子15の拾いを円滑に行うことができ、かつ、雌側筒状体24と雄側筒状体47を適正な角度で嵌合させることができる。
【0039】
この場合、各リブの突出高さL1は、基部19の外周面とフード部36の内周面との間のクリアランスの設定値より小さく設定されているので、
図12に示すように、各リブとフード部36の内周面又は基部19の外周面との間に隙間を設けることができ、基部19をフード部36に挿入する際の挿入負荷の増加を抑制することができる。また、第1リブ27と第2リブ30の前端部には傾斜面57が形成されるとともに、第3リブ44と第4リブ46の前端部には傾斜面60が形成されているので、雌ハウジング12の基部19の姿勢を傾斜面57,60に沿って円滑に矯正することができる。また、各リブは、互いに周方向の位置をずらして配置されるので、基部19を挿入する際のリブ同士の接触を防ぐことができ、各リブの前後方向の長さの設計自由度を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態では、第3リブ44と第4リブ46の突出高さを、第1リブ27と第2リブ30の突出高さL1と同一に設定しているが、L2より小さければ、L1と異なる突出高さに設定することもできる。
【0041】
また、本実施形態では、雌ハウジング12の基部19を雄ハウジング13のフード部36に挿入していくと、基部19の外周面から突出する第1リブ27の段部58と第2リブ30の段部58がそれぞれフード部36に挿入される。これにより、基部19の外周面とフード部36の内周面との間のクリアランスを小さく設定しなくても、各リブの段部58が挿入されることで、クリアランスを極小化できるから、雌ハウジング12と雄ハウジング13の嵌合時におけるハウジング間のがたつきを防止することができる。また、雌ハウジング12の基部19は、各リブを設けたことで、フード部36の内周面との接触面積を制限することができ、しかも、第1リブ27と第2リブ30の段部58は、基部19の前端から設定距離Kだけ離れた位置から後方にわたって設けられるから、基部19をフード部36に挿入する際の挿入負荷の増加を抑制することができる。
【0042】
ここで、第1リブ27と第2リブ30は、各リブの段部58の突出高さL2が、基部19の外周面とフード部36の内周面との間のクリアランスの設定値よりも大きく設定された場合、フード部36に挿入された段部58が、フード部36の内周面を押し付けることになるが、各段部58の前端部には傾斜面59が形成されており、しかも、段部58によって押し付けられるフード部36の内周面は先端側の一部に限られるので、挿入力の増加を抑制することができる。また、各リブの段部58の突出高さL2は、クリアランスの設定値よりも小さく設定することもできる。この場合、クリアランスを極小化できないが、L2はL1よりも大きく設定されるので、クリアランスをより減少させることができ、しかも、設定距離Kを短くして段部58の前後方向の長さを調整すれば、ハウジング間のがたつきを十分抑制することができる。なお、段部58は、第1リブ27と第2リブ30に設けられているが、これに代えて、又は、これとともに、第3リブ44と第4リブ46に対しても、同様に、フード部36の前端から後方にわたって設定距離Kだけ離れた位置から後方にわたって突出高さK2の段部を設けることも可能である。
【0043】
また、設定距離Kは、雌側筒状体24と雄側筒状体47との嵌合が開始される前に、段部58がフード部36に挿入されるように長さを設定することが好ましい。これによれば、段部58がフード部36に挿入されることで、フード部36に対して基部19を位置決めすることができるので、雌側筒状体24と雄側筒状体47の位置ずれを防ぐことができ、良好な防水性を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態では、基部19の外周面に、第1リブ27と第2リブ30を設け、フード部36の内周面に第3リブ44と第4リブ46を設けているが、例えば、基部19の外周面には、第1リブ27と第2リブ30のいずれか一方が設けられ、フード部36の内周面には、第3リブ44と第4リブ46のいずれか一方が設けられていてもよく、各リブの本数は、特に限定されるものではない。また、各リブが設けられる周方向の位置は、本実施形態のように、雌ハウジング12と雄ハウジング13との嵌合状態におけるコネクタ11の上下方向、つまり、第1リブ27と第3リブ44をロックアーム48の幅方向の両側近傍のコネクタ11の上部に設ける一方、第2リブ30と第4リブ46をコネクタ11の下部に設けているが、これに限られず、例えば、基部19の外周面とフード部36の内周面の幅方向(左右方向)にそれぞれ設けることもできる。
【0045】
以下では、本発明に係るコネクタの他の実施形態について説明する。ただ、これらの実施形態はいずれも基本的には第1の実施形態と同様である。したがって、以下では、各実施形態に特徴的な構成についてだけ説明し、第1の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0046】
(第2の実施形態)
本実施形態が、第1の実施形態と相違する点は、雌側筒状体24と雄側筒状体47の嵌合による防水構造において、
図13(a)に示すように、雌側筒状体24と雄側筒状体47の互いに対向する面のうち、雌側筒状体24の対向面71に、全周にわたって雄側筒状体47の対向面(不図示)と接触する環状突起72を設け、その環状突起72に、雌側筒状体24の前端側から後端側に向かって突出高さが低くなる傾斜面73を形成した点である。
【0047】
本実施形態では、雌側筒状体24の対向面71に環状突起72を設けたことにより、雌側筒状体24と雄側筒状体47は、互いの嵌合時に環状突起72が雄側筒状体47の対向面と押し付け合うので、雌側筒状体24の挿入力の増加を抑制しつつ、シール性が高められ、雌側筒状体24と雄側筒状体47によるキャビティ18,34の防水性を高めることができる。
【0048】
ところが、この環状突起72は、樹脂成形時に金型の抜け方向に設けられるので、金型の離型時に環状突起72が金型に引っ掛かり易くなっている。
【0049】
その点、本実施形態の環状突起72は、頂部がR面をなして断面が三角状に形成され、後方に向かう傾斜面73は、前方に向かう傾斜面74よりも対向面71に対して緩やかなテーパ状の環状面を有し、環状突起72の頂部から対向面71に向かって突出高さが連続して低くなるように形成されている。このように、環状突起72は、雌側筒状体24の前端側から後端側に向かって突出高さが連続して低くなる傾斜面74を有しているので、樹脂成形時において金型を矢印の方向へ離型させた場合、金型を傾斜面74に沿って引き抜くことができ、その結果、環状突起72に対する金型の引っ掛かりが抑制され、環状突起72の形状を保持することができる。なお、雌側筒状体24は、金型が傾斜面74に沿って移動するときは、縮径方向に弾性変形するが、金型の離型が完了すると、元の状態に復元される。
【0050】
また、
図13(b)に示すように、雌側筒状体24に代えて、雄側筒状体47の対向面75に全周にわたって雌側筒状体24の対向面(不図示)と接触する環状突起76が設けられる場合、その環状突起76に、雄側筒状体47の前端側から後端側に向かって突出高さが連続して低くなる傾斜面77を形成することもできる。これによれば、樹脂成形時において金型を矢印の方向へ離型させた場合、金型を傾斜面77に沿って引き抜くことができ、その結果、環状突起76に対する金型の引っ掛かりを抑制することができるので、環状突起72の形状を保持することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
本実施形態が、第1の実施形態と相違する点は、雌側筒状体24と雄側筒状体47の嵌合による防水構造において、雄側筒状体47の前方への突出長さのみを長くした点にある。
図14は、雌側筒状体24と雄側筒状体47の嵌合状態を模式化した図である。ここで、
図14(a),(b)は、雌側筒状体24の前方への突出長さと、雌側筒状体24の外周面と雄側筒状体47の内周面が接する前後方向の長さ(ラップ長)が同じである。
【0052】
図14(a)に示すように、雄側筒状体47の前方への突出長さL3を、
図14(b)に示す雄側筒状体47の前方への突出長さL4よりも長く設定することで、雌側筒状体24を雄側筒状体47の先端部で接触させることができる。すなわち、雄側筒状体47は、先端に向かうほど、拡径方向に対する拘束力が小さくなるので、雌側筒状体24の外周面と雄側筒状体47の内周面が接するラップ領域を、雄側筒状体47の先端側に位置させるほど、雌側筒状体24を雄側筒状体47に挿入する際の挿入力、つまり、雌ハウジング12を雄ハウジング13に挿入する際の挿入力を低減することができる。なお、本実施形態では、雌側筒状体24と雄側筒状体47のラップ長が保持されるので、雌側筒状体24と雄側筒状体47による防水性を保持することができる。
【0053】
ここで、雄側筒状体47の前方への突出長さL3に対する雌側筒状体24と雄側筒状体47のラップ長の比率(ラップ率)は、例えば、50%未満であることが好ましい。