(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下部の第4のソーラーサブセルは、1.10eVのバンドギャップを有し、前記第3のソーラーサブセルは、1.40〜1.42eVのバンドギャップを有し、前記第2のソーラーサブセルは、1.73eVのバンドギャップを有し、前記上部の第1のソーラーサブセルは、2.10eVのバンドギャップを有する、
請求項1に記載の多接合反転変成ソーラーセル。
前記第2のソーラーサブセルに隣接する、前記第2のソーラーサブセルと前記第3のソーラーサブセルとの間、及び/又は前記第3のソーラーサブセルと前記傾斜中間層との間の分布ブラッグ反射器(DBR)層をさらに備え、該DBR層は、該DBR層上に配置されたソーラーサブセルに光が入射して通過し、前記光の少なくとも一部を前記DBR層によって前記ソーラーサブセル内に反射できるように配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の多接合反転変成ソーラーセル。
前記分布ブラッグ反射器層は、それぞれの屈折率が不連続な格子整合材料の複数の交互層で構成され、該交互層間の前記屈折率の差分は、所与の反射率を達成するために必要な周期数を最小化するために最大化され、各周期の厚み及び屈折率は、ストップバンド及びその限界波長を決定し、前記分布ブラッグ反射器層は、複数のp型AlxGa1-xAs層で構成された第1のDBR層と、前記第1のDBR層の上に配置された、y>xとする複数のp型AlyGa1-yAs層で構成された第2のDBR層とを含む、
請求項5に記載の多接合反転変成ソーラーセル。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、1つの態様において多接合ソーラーセルを提供する。1つの実施形態では、この多接合ソーラーセルが、第1のバンドギャップを有する上部の第1のソーラーサブセルと、上部の第1のソーラーサブセルに隣接し、第1のバンドギャップよりも低い第2のバンドギャップを有する第2のソーラーサブセルと、第2のソーラーサブセルに隣接して量子井戸を含み、第2のバンドギャップよりも低い第3のバンドギャップを有する第3のソーラーサブセルと、第3のソーラーサブセルに隣接し、第3のバンドギャップよりも高い第4のバンドギャップを有する傾斜中間層と、傾斜中間層に隣接し、第3のバンドギャップよりも低い第5のバンドギャップを有し、第3のソーラーサブセルに対して格子不整合である下部の第4のソーラーサブセルとを含む。
【0009】
本開示は、別の態様においてソーラーセルの製造方法を提供する。1つの実施形態では、この方法が、第1の基板を準備するステップと、第1の基板上に、第1のソーラーサブセル、第2のソーラーサブセル及び第3のソーラーサブセルを形成する第1の一連の半導体材料の層を堆積させるステップと、第3のソーラーサブセル上に傾斜中間層を堆積させるステップと、傾斜中間層上に、第3のソーラーサブセルと格子整合した第4のソーラーサブセルを形成する第2の一連の半導体材料の層を堆積させるステップと、一連の層の上部に代用基板を取り付けて接合するステップと、第1の基板を除去するステップとを含む。
【0010】
1又は2以上の実施形態では、傾斜中間層を、一方で第3のソーラーサブセルと格子整合し、他方で第4のソーラーサブセルと格子整合するように組成的に傾斜させることができる。
【0011】
1又は2以上の実施形態では、傾斜中間層を、第3のソーラーサブセルの面内格子パラメータ以上であって第4のソーラーサブセルの面内格子パラメータ以下の面内格子パラメータを有することという制約に従ってAs、P、N、Sb系のIII−V族化合物半導体のいずれかで構成することができ、傾斜中間層は、第3のソーラーサブセル及び第4のソーラーサブセルのバンドギャップエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有することができる。
【0012】
1又は2以上の実施形態では、傾斜中間層を、0<x<1、0<y<1とする(In
xGa
1-x)yAl
1-yAsで構成することができ、x及びyは、バンドギャップがその厚み全体にわたって一定のままであるように選択される。
【0013】
1又は2以上の実施形態では、傾斜中間層のバンドギャップが、その厚み全体にわたって1.42〜1.60eVの値を有することができる。
【0014】
1又は2以上の実施形態では、傾斜中間層のバンドギャップが、その厚み全体にわたって1.5〜1.6eVの値で一定を保つことができる。
【0015】
1又は2以上の実施形態では、上部の第1のサブセルを、AlInGaP又はInGaPのエミッタ層とAlInGaPのベース層で構成することができ、第2のサブセルを、InGaPのエミッタ層とAlGaAsのベース層で構成することができ、第3のサブセルを、InGaP又はGaAsのエミッタ層及びGaAsのベース層で構成することができ、下部の第4のサブセルを、InGaAsのベース層及びベースと格子整合するInGaAsのエミッタ層で構成することができる。
【0016】
1又は2以上の実施形態では、第4のソーラーサブセルが、約1.05〜1.15eVのバンドギャップを有することができ、第3のソーラーサブセルが、約1.40〜1.42eVのバンドギャップを有することができ、第2のソーラーサブセルが、約1.65〜1.78eVのバンドギャップを有することができ、第1のソーラーサブセルが、約1.92〜2.2eVのバンドギャップを有することができる。
【0017】
1又は2以上の実施形態では、第4のソーラーサブセルが、約1.10eVのバンドギャップを有することができ、第3のソーラーサブセルが、約1.40〜1.42eVのバンドギャップを有することができ、第2のソーラーサブセルが、約1.73eVのバンドギャップを有することができ、第1のソーラーサブセルが、約2.10eVのバンドギャップを有することができる。
【0018】
1又は2以上の実施形態では、第1のソーラーサブセルを、AlInGaPで構成することができ、第2のソーラーサブセルを、InGaPのエミッタ層及びAlGaAsのベース層で構成することができ、第3のソーラーサブセルを、GaAs又は(In
xのxの値を0〜1%とする)In
xGaAsで構成することができ、第4のソーラーサブセルを、InGaAsで構成することができる。
【0019】
1又は2以上の実施形態では、第2のサブセル及び上部の第1のサブセルの各々が、半導体元素に加えてアルミニウムを含む。
【0020】
1又は2以上の実施形態では、第2のサブセル及び上部の第1のサブセルの各々が、4つの全てのサブセルの平均バンドギャップが1.44eVよりも大きくなるような量のアルミニウムを含む。
【0021】
1又は2以上の実施形態では、サブセルの組成及びそのバンドギャップの選択により、「寿命初期」(BOL)以降の、「寿命末期」(EOL)時間と呼ばれる所定の期間における、AM0の宇宙空間に展開された際の所定の高温値(摂氏50〜70度)において前記ソーラーセルの効率が最大化される。
【0022】
いくつかの実施形態では、所定の期間が、少なくとも2年、5年、10年、又は少なくとも15年である。
【0023】
1又は2以上の実施形態では、サブセルの組成及びそのバンドギャップの選択により、初期展開時ではなく、初期展開後にAM0の宇宙空間にソーラーセルが連続的に展開された後の、1〜20をxとする少なくともx年の、4つの全てのサブセルの平均バンドギャップが1.44eVよりも大きな所定の期間における所定の高温値(摂氏50〜70度)においてソーラーセルの効率が最大化される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示の範囲から逸脱することなく、セル構造に対して(単複の)さらなる層を追加又は削除することができる。
【0025】
本開示のいくつかの実装は、上述した概要に示す態様及び特徴よりも少ない態様及び特徴を組み込み、又は実装することもできる。
【0026】
本明細書で説明する装置及び方法は、以下の詳細な説明を参照して以下の添付図面と合わせて検討することによってより良くさらに完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
用語解説
「寿命末期(EOL)」とは、光起電力システムが展開されて稼働できていた寿命初期後の所定の期間を意味する。EOL時間は、例えばソーラーセルの設計者が他の設計目的に加えて指定された時点における技術性能要件を満たすようにソーラーセルのサブセル及びソーラーセルの下位層の組成を規定するのに必要な光起電力システムの技術性能仕様の一部として顧客が指定することができる。「EOL」という用語は、EOL時間以降に光起電力システムが稼働できず、又は電力を生成しないことを示唆するものではいない。
【0029】
「ZTJ」は、市販のSolAero Technologies社の3重接合ソーラーセルの製品名を示す。
【0030】
以下、本発明の例示的な態様及び実施形態を含む詳細について説明する。同じ参照番号を用いて同じ又は機能的に類似する要素を識別する図面及び以下の説明への参照は、例示的な実施形態の主な特徴を高度に単純化した図の形で説明するように意図したものである。さらに、図面は、実際の実施形態の全ての特徴を示すものでも、図示の要素の相対的寸法を示すものでもなく、縮尺通りではない。
【0031】
33%効率の4重接合InGaP
2/GaAs/In
0.30Ga
0.70As/In
0.60Ga
0.40As(バンドギャップはそれぞれ1.91eV/1.42eV/1.03eV/0,70eV)反転変成多接合セルは、標準的なZTJ3重接合デバイスよりも寿命初期(BOL)において(相対的に)効率が10%高く、150μm厚の低質量リジッド基板に恒久的に接合した時に40%低い質量を有することができる。さらに、反転変成技術は、基板と格子整合する(InGaP及びGaAsが最初に成長する)高品質材料と、格子不整合な高品質材料(In
0.30Ga
0.70As及びIn
0.60Ga
0.40As)とを同時に実現可能にすることにより、一体化できる材料の選択肢を広げることができる。変成法の利点は、光学的に透明なステップ傾斜したバッファ層の頂部で成長したInGaAsサブセルを介して広範囲の赤外線バンドギャップにアクセスできることであると考えられる。さらに、変成材料は、ほぼ完全な量子効率、有利に低いE
g−V
ocオフセット及び高効率を提供することができる。大抵の場合、追加コストを伴わない効率向上はめったに実現されない。例えば、4重接合反転変成多接合セルは、厚いエピタキシと複雑な処理に起因してZTJよりもコストが掛かることがある。さらに、反転エピタキシャル薄膜を成長基板から除去し、表を上にしてリジッド基板に一時的に又は恒久的に接合して前面加工を完了することができる。さらに、結果として、従来のZTJソーラーセルとほとんど区別できない全上部コンタクト型セルを得ることができる。しかしながら、4重接合反転変成多接合セルは、ZTJの高効率で低質量な暫定的置き換えになるにも関わらず、顧客は、その[ドル又はユーロ/ワットで評価した]高い特殊コストによって新たな又は交換セル技術を採用したがらないこともある。
【0032】
本開示による反転変成4重接合AlInGaP/AlGaAs/GaAs/InGaAs(バンドギャップはそれぞれ、2.1eV/1.73eV/1.42eV/1.10eV)ソーラーセルの設計は、最適化された多接合セルは全てのサブセル間で均衡のとれた光電流を発生し、1200nm〜2000nmの赤外線スペクトルを含む太陽スペクトル全体を使用すべきであるという点で、一般的な通念と一致しない。本開示では、高バンドギャップ電流整合3重接合スタックを最初に成長させた後に、1つの実施形態では「下部」サブセルを形成する格子不整合1.10eVInGaAsサブセルを成長させる。その後、反転InGaAsサブセルを成長基板から除去し、その後に通常のソーラーセルとして4重接合ソーラーセルを加工できるようにリジッドな担体に接合する。
【0033】
提案する構造は、寿命初期(BOL)効率は従来の反転変成4重極接合型ソーラーセルより低いにも関わらず、高温寿命末期(以下、「HT−EOL」と呼ぶ)$/Wを設計メトリックとして使用した場合、HT−EOL電力を10%増加させ、HT−EOL$/Wを大幅に減少させることができる。
【0034】
提案する技術は、3つの格子整合サブセルと1つの格子不整合サブセルとを用いて4接合型デバイスを構成している点で既存の技術(例えば、米国特許第8,969,712号)と異なる。これまでの反転変成4重接合型ソーラーセルは、2つの格子整合サブセルと2つの格子不整合サブセルとを用いて構成されていた。この結果、例えばソーラーセルが、(i)薄い上部セルを使用することによってIn及びPの使用量を減少させ、(ii)傾斜バッファ層の数を2から1に減少させ、(iii)必要なInの量に起因して高価になり得る高濃度In含有下部セルの必要性を排除できる、という点で、提案する構造のエピタキシのコストを安価にすることができる。
【0035】
反転変成多接合(IMM)ソーラーセルの基本製造概念は、ソーラーセルのサブセルを基板上で「逆」順に成長させることである。すなわち、本来であれば太陽放射に面する「上部」サブセルである高バンドギャップサブセル(すなわち、1.9〜2.3eVのバンドギャップを有するサブセル)をGaAs又はGeなどの半導体成長基板上にエピタキシャル成長させ、従ってこのようなサブセルをこのような基板に格子整合させる。その後、この高バンドギャップサブセル上で1又は2以上の低バンドギャップの中間サブセル(すなわち、1.3〜1.9eVのバンドギャップを有するサブセル)を成長させることができる。
【0036】
この中間セル上に少なくとも1つの下部サブセルを形成して、少なくとも1つの下部サブセルが成長基板に対して実質的に格子不整合であるとともに、この少なくとも1つの下部サブセルが第3のさらに低いバンドギャップ(例えば、0.8〜1.2eVのバンドギャップ)を有するようにする。その後、この「下部」サブセル又は実質的に格子不整合の下部サブセル上に代用基板又は支持構造体を取り付け又は設け、その後に成長半導体基板を除去する。(その後、この成長基板は、第2の及びその後のソーラーセルの成長に再利用することができる。)
【0037】
本開示のソーラーセルに関連する構造及び工程には、本出願人の関連出願に開示する反転変成多接合ソーラーセルの様々な異なる特徴を含めることもできる。しかしながら、より具体的に言えば、本開示は、全てを単一の成長基板上で成長させた
1つのみの変成層を使用する4接合反転変成ソーラーセルの製造に関する。本開示では、結果として得られる構造が4つのサブセルを含み、これらのバンドギャップは、それぞれ1.92〜2.2eV(例えば、2,10eV)、1.65〜1.78eV(例えば、1.73eV)、1.42〜1.50eV(例えば、1.42eV)、及び1.05〜1.15eV(例えば、1.10eV)である。
【0038】
半導体構造における層の格子定数及び電気特性は、反応器の適切な成長温度及び成長時間の指定、並びに適切な化学組成及びドーパントの使用によって制御されることが好ましい。有機金属気相エピタキシ法(OMVPE)、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、分子ビームエピタキシ法(MBE)、又は逆成長用のための他の気相成長法などの気相成長法を使用することにより、ソーラーセルを形成するモノリシック半導体構造内の層が、必要な厚み、元素組成、ドーパント濃度及び傾斜型と導電型を有して成長できるようになる。
【0039】
図1に、GaAs成長基板上に4つのサブセルA、B、C及びDを逐次形成した後の本開示による多接合ソーラーセルを示す。具体的には、砒化ガリウム(GaAs)であることが好ましいが、ゲルマニウム(Ge)又は他の好適な材料であってもよい基板101を示している。GaAsの場合、基板は15度のオフカット基板であり、すなわち米国特許出願公開第2002/0229662号(Stan他)にさらに完全に記載されているように、その表面が(100)面から(111)面に向かって15度ずれて配向されていることが好ましい。
【0040】
Ge基板の場合には、基板101上に核生成層(図示せず)を直接堆積させる。基板上又は(Ge基板の場合)核生成層上には、バッファ層102及びエッチストップ層103をさらに堆積させる。GaAs基板の場合、バッファ層102はGaAsであることが好ましい。Ge基板の場合、バッファ層102はInGaAsであることが好ましい。その後、層103上にGaAsのコンタクト層104を堆積させ、このコンタクト層上にAlInPの窓層105を堆積させる。窓層105上には、n+エミッタ層106及びp型ベース層107から成るサブセルAをエピタキシャル堆積させる。サブセルAは、一般に成長基板101と格子整合する。
【0041】
なお、多接合太陽電池の構造は、格子定数及びバンドギャップ要件に従って、周期律表に記載されているIII〜V族の元素のいずれかの好適な組み合わせによって形成することができ、III族は、ホウ素(B)、アルミ(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びタリウム(T)を含む。IV族は、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)を含む。V族は、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)及びビスマス(Bi)を含む。
【0042】
1つの実施形態では、エミッタ層106がInGa(Al)P
2で構成され、ベース層107がInGa(Al)P
2で構成される。この化学式中の括弧内のアルミニウム又はAlの表現は、Alが任意の構成要素であることを意味し、この例では0%〜40%の量で使用することができる。
【0043】
サブセルAは、後述する本開示による処理ステップの完了後には、最終的に反転変成構造の「上部」サブセルになる。
【0044】
ベース層107の上部には、好ましくはp+AlGaInPである裏面電界(「BSF」)層108を堆積し、これを用いて再結合損失を低減する。
【0045】
BSF層108は、ベース/BSF界面近傍の領域から少数キャリアを追い出して再結合損失の影響を最小限に抑える。換言すれば、BSF層108は、ソーラーサブセルAの裏面での再結合損失を低減することによってベースでの再結合を低減する。
【0046】
BSF層108の上部には、トンネルダイオード、すなわちサブセルAをサブセルBに接続するオーミック回路要素を形成する一連の高濃度にドープされたp型及びn型層109a及び109bを堆積させる。層109aは、p++AlGaAsで構成されることが好ましく、層109bは、n++GaInPで構成されることが好ましい。
【0047】
トンネルダイオード層109a/109bの上部には、好ましくはn+InGaPである窓層110を堆積させる。窓層110の材料構成要素としてInGaPを利用する利点は、米国特許出願公開第2009/0272430号(Cornfeld他)にさらに完全に記載されているように、InGaPが、隣接するエミッタ層111と密接に一致する屈折率を有する点である。サブセルBで使用される窓層110は、界面再結合損失を低減させるようにも作用する。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなくセル構造において(単複の)さらなる層を追加又は削除できることが明らかなはずである。
【0048】
窓層110の上部には、サブセルBの層であるn型エミッタ層111及びp型ベース層112を堆積させる。これらの層は、(Ge基板又は成長テンプレートについては)それぞれInGaP及びAlInGaAs、又は(GaAs基板については)それぞれInGaP及びAlGaAsで構成されることが好ましいが、格子定数及びバンドギャップ要件に一致する他のいずれかの好適な材料を使用することもできる。従って、サブセルBは、GaAs、InGaP、AlGaInAs、AlGaAsSb、GaInAsP、又はAlGaInAsPのエミッタ領域と、GaAs、InGaP、AlGaInAs、AlGaAsSb、GaInAsP、又はAlGaInAsPのベース領域とで構成することができる。
【0049】
これまでに開示されている反転変成太陽電池の実装では、第2のサブセル又はサブセルBがホモ構造であった。本開示では、米国特許出願公開第2009/007830号(Stan他)に開示される構造と同様に、第2のサブセル又はサブセルBを、InGaPエミッタを含むヘテロ構造とし、その窓層をInAlPからAlInGaPに転化する。米国特許出願公開第2009/0272430号(Cornfeld他)にさらに完全に記載されているように、この変更によって第2のサブセルの窓/エミッタ界面における屈折率の不連続性が減少する。さらに、窓層110を好ましくはエミッタ層111の3倍にドープして、フェルミ準位を伝導帯に近づくように高め、従って窓/エミッタ界面にバンド曲がりを生じさせて少数キャリアをエミッタ層に拘束する。
【0050】
セルBの上部には、BSF層109と同じ機能を果たすBSF層113を堆積させる。BSF層113上には、p++/n++トンネルダイオード層114a及び114bをそれぞれ層109a及び109bと同様に堆積させ、オーミック回路要素を形成してサブセルBをサブセルCに接続する。層114aは、p++AlGaAsで構成されることが好ましく、層114bは、n++InGaPで構成されることが好ましい。
【0051】
その後、トンネルダイオード層114上に、好ましくはn+型GaInPで構成された窓層118を堆積させる。この窓層は、サブセル「C」での再結合損失を低減させるように作用する。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなくセル構造においてさらなる層を追加又は削除できることが明らかなはずである。
【0052】
窓層118の上部には、セルCの層であるn+エミッタ層119及びp型ベース層120を堆積させる。これらの層は、それぞれn+型GaAs及び
p型GaAs、又はヘテロ接合サブセルについてはn+型InGaP及びp型GaAsであることが好ましいが、格子定数及びバンドギャップ要件に一致する他のいずれかの好適な材料を使用することもできる。
【0053】
いくつかの実施形態では、サブセルCを、バンドギャップが1.40〜1.42eVの(In)GaAsとすることができる。このように成長させると、セルは、GaAsと同じ格子定数を有するが、インジウムの割合が0%<In<1%と低くなり、格子緩和して転位を生じることなくサブセルのバンドギャップがわずかに低くなる。この場合、サブセルは、歪んではいるが依然として格子整合しており、GaAsよりも低いバンドギャップを有する。このことは、サブセルの短絡電流をわずかに改善してソーラーセル全体の効率を高める役に立つ。
【0054】
いくつかの実施形態では、第3のサブセル又はサブセルCが、サブセルのバンドギャップを約1.3eVに効果的に下げる量子井戸又は量子ドットを有することができる。上述した他のサブセルの他のバンドギャップ範囲は、全て同じままである。このような実施形態では、第3のサブセルが、依然としてGaAs基板と格子整合している。通常、量子井戸は、低バンドギャップ又は高格子定数のInGaAs(例えば、〜1.3eVのバンドギャップ)と、高バンドギャップ又は低格子定数のGaAsPとを組み込むことによって「歪平衡」している。エピタキシの交互になった高/低原子格子/層は、歪みを平衡させて材料を格子整合に保つ。
【0055】
その後、セルCの上部に、好ましくはInGaAlAsで構成された、BSF層108及び113と同じ機能を果たすBSF層121を堆積させる。
【0056】
BSF層121上には、p++/n++トンネルダイオード層122a及び122bをそれぞれ層114a及び114bと同様に堆積させ、オーミック回路要素を形成してサブセルCをサブセルDに接続する。層122aは、p++GaAsで構成されることが好ましく、層122bは、n++GaAsで構成されることが好ましい。
【0057】
トンネルダイオード122a/122b上には、好ましくはn型GaInPで構成されたアルファ層123を約1.0ミクロンの厚さに堆積させる。このようなアルファ層は、貫通転位が上部及び中間サブセルA、B及びC内に成長方向と逆に、又はサブセルD内に成長方向に伝播するのを防ぐためのものであり、米国特許出願公開第2009/0078309号(Cornfeld他)にさらに具体的に記載されている。
【0058】
アルファ層123上には、界面活性剤を用いて変成層(又は傾斜中間層)124を堆積させる。層124は、半導体構造において貫通転位の発生を最小化しながら格子定数がサブセルCからサブセルDに緩やかな遷移するように、好ましくは格子定数が単調に変化する組成的にステップ傾斜した一連のInGaAlAs層であることが好ましい。層124のバンドギャップは、その厚み全体にわたって一定であり、1,5〜1.6eVにほぼ等しく、又は中間サブセルCのバンドギャップよりもわずかに大きな値と一致することが好ましい。傾斜中間層の1つの実施形態は、中間層のバンドギャップが約1.5〜1.6eV又は他の適切なバンドギャップにおいて一定を保ったままであるようにx及びyを選択した、(In
xGa
1-x)yAl
1-yAsで構成されているものとして表すこともできる。
【0059】
変成層124の界面活性剤支援成長では、層124の表面特性を高めるように層124の成長中に反応器に好適な化学元素を導入する。好ましい実施形態では、このような元素を、セレン(Se)又はテルル(Te)などのドーパント原子又はドナー原子とすることができる。従って、変成層124に少量のSe又はTeが取り込まれ、完成したソーラーセル内に残る。Se又はTeは、好ましいn型ドーパント原子ではあるが、他の非等電子界面活性剤を使用することもできる。
【0060】
界面活性剤支援成長は、はるかに滑らかな又は平坦な表面をもたらす。表面トポグラフィは、半導体材料が成長してその層が厚くなると、この半導体材料のバルク特性に影響を及ぼすので、界面活性剤の使用によって活性領域の貫通転位が最小化され、従ってソーラーセル全体の効率が改善される。
【0061】
非等電子界面活性剤を使用する代わりに、等電子界面活性剤を使用することもできる。アンチモン(Sb)又はビスマス(Bi)などの元素は、変成バッファ層においてInGaPのP原子、又はInGaAlAsのAs原子と同じ価電子数を有するので、「等電子の」という用語は、このような元素の界面活性剤を意味する。通常、このようなSb又はBi界面活性剤は、変成層124に組み込まれない。
【0062】
上記で引用したWanlass他の論文に記載されている反転変成構造では、変成層が、各層が0.25μmの厚みを有する9つの組成的に傾斜したInGaPステップから成る。この結果、Wanlass他の各層は、異なるバンドギャップを有する。本開示の好ましい実施形態では、層124が、格子定数が単調に変化して各層が約1.5eVの同じバンドギャップを有する複数のInGaAlAsの層で構成される。
【0063】
InGaAlAsなどの一定バンドギャップの材料を利用する利点は、砒素系の半導体材料を標準的な市販のMOCVD反応器においてはるかに容易に処理できる一方で、少量のアルミニウムによって変成層の放射光透過性が確実になる点である。
【0064】
本開示の好ましい実施形態では、製造容易性及び放射光透過性の理由で変成層124に複数のInGaAlAs層を利用するが、本開示の他の実施形態では、異なる材料系を利用してサブセルCからサブセルDへの格子定数の変化を実現することもできる。従って、組成的に傾斜したInGaPを使用するWanlassのシステムは、本開示の第2の実施形態である。本開示の他の実施形態では、ステップ傾斜した材料とは対照的に、連続傾斜した材料を利用することができる。より一般的には、傾斜中間層を、第2のソーラーセルの面内格子定数以上であって第3のソーラーセルの面内格子定数以下の面内格子定数を有し、第2のソーラーセルのバンドギャップエネルギーを上回るバンドギャップエネルギーを有することという制約に従って、As、P、N、Sb系のIII−V族化合物半導体のいずれかで構成することができる。
【0065】
変成バッファ層124上には、好ましくはn+型AlGaInAsPで構成されたアルファ層125を約1.0μmの厚さに堆積させる。このようなアルファ層は、貫通転位が上部及び中間サブセルA、B及びC内に成長方向と逆に、又はサブセルD内に成長方向に伝播するのを防ぐためのものであり、米国特許出願公開第2009/0078309号(Cornfeld他)にさらに具体的に記載されている。
【0066】
その後、アルファ層125上に、好ましくはn+型InGaAlAsで構成された窓層126を堆積させる。この窓層は、第4のサブセル「D」における再結合損失を低減するように作用する。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなくセル構造においてさらなる層を追加又は削除できることが明らかなはずである。
【0067】
窓層126の上部には、セルDの層であるn+エミッタ層127及びp型ベース層128を堆積させる。これらの層は、それぞれn+型InGaAs及びp型InGaAs、又はヘテロ接合サブセルについてはn+型InGaP及びp型InGaAsであることが好ましいが、格子定数及びバンドギャップ要件に一致する他のいずれかの好適な材料を使用することもできる。
【0068】
その後、セルDの上部に、好ましくはp+型InGaAlAsで構成された、BSF層108、113及び121と同じ機能を果たすBSF層129を堆積させる。
【0069】
BSF層129上には、好ましくはp++型InGaAlAsで構成された高バンドギャップのコンタクト層130を堆積させる。
【0070】
多接合光起電力セルの最低バンドギャップ光起電力セル(すなわち、図示の実施形態ではサブセル「D」)の底部(非照射)側に位置するこのコンタクト層130の組成は、(i)その下部(非照射側)の裏面オーミック金属コンタクト層がミラー層としても機能し、(ii)吸収を防ぐためにこのコンタクト層を選択的にエッチング除去する必要がないように、セルを通過する光の吸収を低減するように構築することができる。
【0071】
p型半導体コンタクト層130上には、金属コンタクト層131を堆積させる。この金属は、一連の金属層Ti/Au/Ag/Auであることが好ましい。
【0072】
また、選択する金属コンタクト設計は、オーミックコンタクトを活性化する熱処理後に、半導体との間に平坦な界面を有するものでもある。この設計は、(1)半導体から金属を分離する誘電体層を金属コンタクト領域に堆積させて選択的にエッチングする必要がなく、(2)コンタクト層が対象波長範囲にわたって鏡面反射的となるように行われる。
【0073】
任意に、金属層131上に接着層(例えば、ミズーリ州ローラのBrewer Science社製のWafer Bond)を堆積させて、支持基板又は代用基板を取り付けることができる。いくつかの実施形態では、代用基板をサファイアとすることができる。他の実施形態では、代用基板をGaAs、Ge又はSi、或いは他の好適な材料とすることができる。代用基板は、厚みが約40milであり、後で接着剤及び基板を除去しやすいように4mm間隔で直径約1mmの穴を開けることができる。接着層を使用する代わりに、金属層131に好適な基板(例えば、GaAs)を共晶的又は恒久的に接合することもできる。
【0074】
任意に、基板101及びバッファ層102を除去する一連のラッピングステップ及び/又はエッチングステップによって元の基板を除去することもできる。特定のエッチング液の選択は、成長基板に依存する。
【0075】
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bは、金属コンタクト層131が図の底部にくるように配向して元の基板を除去した、
図1の実施形態と同様のソーラーセルの実施形態の断面図である。また、例えばHCl/H
20溶液を用いてエッチストップ層103も除去している。
【0076】
当業者には、本開示の範囲から逸脱することなくセル構造において(単複の)さらなる層を追加又は削除できることが明らかなはずである。例えば、本発明の様々な実施形態では、1又は2以上の分布ブラッグ反射器(DBR)層を加えることもできる。
【0077】
図2A及び
図2Bは、分布ブラッグ反射器(DBR)層122cを含む、
図1の実施形態と同様のソーラーセルの実施形態の断面図である。
【0078】
図2Aは、第3のソーラーサブセルCに光が入射して通過し、少なくとも光の一部を第3のソーラーサブセル内に反射できるように第3のソーラーサブセルCに隣接して第3のソーラーサブセルCと傾斜中間層124との間に配置された分布ブラッグ反射器(DBR)層122cを含む、
図1の実施形態と同様のソーラーセルの第1の実施形態の断面図である。
図2Aでは、分布ブラッグ反射器(DBR)層122cが、具体的には第3のソーラーサブセルCとトンネルダイオード層122a/122bとの間に位置する。
【0079】
図2Bは、第3のソーラーサブセルCに光が入射して通過し、少なくとも光の一部を第3のソーラーサブセル内に反射できるように第3のソーラーサブセルCに隣接して第3のソーラーサブセルCと傾斜中間層124との間に配置された分布ブラッグ反射器(DBR)層122cを含む、
図1の実施形態と同様のソーラーセルの第2の実施形態の断面図である。
図2Bでは、分布ブラッグ反射器(DBR)層122cが、具体的にはトンネルダイオード層122a/122bと傾斜中間層124との間に位置する。
【0080】
図3A及び
図3Bは、
図2A及び
図2Bに示す分布ブラッグ反射器層122cに加えて分布ブラッグ反射器(DBR)層114を含む、
図1の実施形態と同様のソーラーセルの実施形態の断面図である。
【0081】
図3Aは、
図2A及び
図2Bに示す分布ブラッグ反射器層122cに加えて、第2のソーラーサブセルBに光が入射して通過し、少なくとも光の一部を第2のソーラーサブセル内に反射できるように第2のソーラーサブセルBに隣接して第2のソーラーサブセルBと第3のソーラーサブセルCとの間に配置された分布ブラッグ反射器(DBR)層114を含む、
図1の実施形態と同様のソーラーセルの第1の実施形態の断面図である。
図3Aでは、分布ブラッグ反射器(DBR)層114が、具体的には第2のソーラーサブセルとトンネルダイオード層114a/114bとの間に位置し、分布ブラッグ反射器(DBR)層122cが、具体的には第3のソーラーサブセルCとトンネルダイオード層122a/122bとの間に位置する。
【0082】
図3Bは、
図2A及び
図2Bに示す分布ブラッグ反射器層122cに加えて、第2のソーラーサブセルBに光が入射して通過し、少なくとも光の一部を第2のソーラーサブセルB内に反射
するように第2のソーラーサブセルBに隣接して第2のソーラーサブセルBと第3のソーラーサブセルCとの間に配置された分布ブラッグ反射器(DBR)層114を含む、
図1の実施形態と同様のソーラーセルの第2の実施形態の断面図である。
図3Bでは、分布ブラッグ反射器(DBR)層114が、具体的には第2のソーラーサブセルとトンネルダイオード層114a/114bとの間に位置し、分布ブラッグ反射器(DBR)層122cが、具体的にはトンネルダイオード層122a/122bと組成傾斜層124との間に位置する。
【0083】
いくつかの実施形態では、分布ブラッグ反射器(DBR)層114及び/又は122cを、それぞれの屈折率を不連続にした格子整合材料の複数の交互層で構成することができる。いくつかの実施形態では、所与の反射率を達成するために必要な周期数を最小化するために交互層間の屈折率の差分が最大化され、各周期の厚み及び屈折率がストップバンド及びその限界波長を決定する。
【0084】
いくつかの実施形態では、分布ブラッグ反射器(DBR)層114及び/又は122cが、複数のp型Al
xGa
1-xAs層で構成された第1のDBR層と、第1のDBR層上に配置され、複数のp型Al
yGa
1-yAs層で構成された第2のDBR層とを含み、この場合、yはxよりも大きく、0<x<1、0<y<1である。
【0085】
本開示は、高温EOL性能を高める目標を達成するために可能な限り多くの高バンドギャップサブセルを組み込むべきであるという設計ルールに従う反転変成多接合ソーラーセルを提供する。例えば、高バンドギャップサブセルは、温度が上昇するにつれて、より大きな割合のセル電圧を保持することができ、これによって温度上昇の際の電力損失を低減する。この結果、例示的な反転変成多接合ソーラーセルのHT−BOL及びHT−EOL性能は、いずれも従来のセルよりも高くなると期待することができる。
【0086】
例えば、標準的な3接合型商用ソーラーセル(ZTJ)について、寿命初期(BOL)及び寿命末期において室温(RT)28℃と高温(HT)70℃とで測定したセル効率(%)は以下の通りである。
【0087】
本開示において説明したIMMXソーラーセルの場合、対応するデータは以下の通りである。
IMMXソーラーセルは、BOLの28℃及び70℃の両方において標準的な商用ソーラーセル(ZTJ)よりもセル効率がわずかに高い。しかしながら、本開示において説明したIMMXソーラーセルは、5×10
14e/cm
2の1MeV電子等価フルエンスでは、標準的な商用ソーラーセル(ZTJ)を上回る実質的に向上したセル効率(%)を示し、1×10
15e/cm
2の1MeV電子等価フルエンスでは、標準的な商用ソーラーセル(ZTJ)を上回る劇的に向上したセル効率(%)を示す。
【0088】
通常、地球低軌道(LEO)衛星は、5年の耐用寿命にわたって5×10
14e/cm
2と同等の放射線を受ける。通常、地球同期軌道(GEO)衛星は、15年の耐用寿命にわたって5×10
14〜1×10
15e/cm
2と同等の放射線を受ける。
【0089】
宇宙空間に存在する幅広い電子及び陽子エネルギーは、実験室条件下で作成できる放射線環境において多様なタイプの放射線の影響を説明する方法を必要とする。宇宙空間におけるソーラーセルの劣化を推定する方法は、Brown他[Brown,W.L.、J.D.Gabbe、及びRosenzweig著、「テルスター放射線実験の結果(Results of the Teistar Radiation Experiments)」、Bell System Technical J.、第42巻、1505頁、1963年]、及びTada[Tada,H.Y.、J.R.Carter,Jr.、B.E.Anspaugh、及びR.G.Downing著、「太陽電池放射線ハンドブック(Solar Cell Radiation Handbook)」、第3版、JPL出版 82−69頁、1982年]によって記載された技術に基づく。要約すれば、全方向性宇宙放射線は、正規化エネルギーにおいて、特定の放射線粒子に関して、損傷等価一方向フルエンスに変換される。この等価フルエンスは、この変換を可能にするように相対損傷係数(RDC)が正しく定められた時に考慮される全方向性宇宙放射線によって生じる損傷と同じ損傷を生じる。特定のソーラーセル構造の相対損傷係数(RDC)は、カバーガラスの異なる厚み値に加えて多くのエネルギー及びフルエンスレベルの下で推測的に測定される。所与の宇宙環境について等価フルエンスが決まると、計算されたフルエンスレベルの一方向垂直入射粒子束をソーラーセルに照射することにより、実験室においてパラメータ劣化を評価することができる。通常、等価フルエンスは、1MeV電子又は10MeV陽子を単位として表される。
【0090】
ソフトウェアパッケージSpenvis(www.spenvis.oma.be)を用いて、持続期間、高度、方位角などによって定められる特定の衛星ミッション中にソーラーセルが曝される特定の電子及び陽子フルエンスを計算する。Spenvisは、ジェット推進研究所によって開発されたEQFLUXプログラムを用いて、捕捉放射線と指定されたミッション環境の持続時間のための太陽陽子モデルとによって予測されるフルエンスへの曝露について、1MeVの損傷等価電子フルエンス及び10MeVの損傷等価陽子フルエンスをそれぞれ計算する。損傷等価フルエンスへの変換は、多接合セルについて定められた相対損傷係数(Marvin,D.C.著、「放射線環境における多接合ソーラーセル性能の評価(Assessment of Multijunction Solar Cell Performance in Radiation Environments)」 Aerospace Report No.TOR−2000(1210)−1、2000年)に基づく。異なる材料は、従来のソーラーセルで使用される材料よりも損傷耐性が大きかったり、又は小さかったりする場合があるので、最終的に、新たなセル構造には新たなRDC測定が必要になる。15年間の地球同期衛星ミッションについて広く認められている総ミッション等価フルエンスは、1MeV・1×10
15電子/cm
2である。
【0091】
本明細書で説明した例示的なソーラーセルは、上部2つの各サブセルの半導体組成にアルミニウムの使用を必要とすることができる。III−V族化合物半導体業界では、アルミニウムを組み込むと、深い準位のドナー欠陥、高いドーピング補償、短い少数キャリア寿命、セル電圧の低下、及びBOLのE
g−V
oc計量の増加に起因して、BOLサブセル性能が劣化することが広く知られている。要するに、アルミニウム含有サブセルでは、E
g−V
ocの増加が最も厄介な欠点と考えられ、他の欠点は、ドーピング工程の修正又はベース厚の薄化によって軽減することができる。
【0092】
さらに、BOLでは、優れたサブセルの室温におけるE
g−V
ocは約0.40であるということが広く認められている。IMMXセルの関心サブセルには、BOLのEg−V
ocの広いばらつきが存在することがある。しかしながら、本出願人らは、HT−EOLにおけるE
g−V
oeを調査することにより、アルミニウム含有サブセルが、III−V族ソーラーセルで使用される他の材料ほど悪くないことを示す場合もあると分かった。例えば、EOLにおける全てのサブセルは、アルミニウム濃度又は格子整合の程度に関わらず、室温28℃において約0.6というほぼ一定のE
g−V
ocを示すことが分かった。
【0093】
例示的な反転変成多接合ソーラーセルの設計理念は、材料のバンドギャップが減少するにつれて出費が増える赤外線サブセルを採用する従来のセル効率改善の方向に相対するものと言われている。例えば、多くの場合、通常の設計目標は、太陽光スペクトル全体に及ぶ全てのサブセル間の正しい電流整合である。さらに、MBEによって成長する希釈窒化物、直立変成、及び反転変成多接合ソーラーセル設計を含む周知の手法は、セルに大幅なコストを加え、HT−EOL性能を少ししか改善しない場合もある。さらに、高価な赤外線サブセルではなく安価な高バンドギャップサブセルをセル構成に組み込んだ時に、低いHT−EOL$/Wを達成することができる。本明細書で説明した例示的なソーラーセルの設計理念を可能にする鍵は、アルミニウム含有サブセルがHT−EOLにおいて良好に機能することの観察である。