(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電子回路の第1の部分が、前記スタイレットに機械的に結合された第1のハウジング内に配設され、前記電子回路の第2の部分が、第2のハウジング内に配設され、可撓性ケーブルを介して前記第1の部分に接続可能にリンクされる、請求項1に記載の装置。
前記電子回路の第1の部分が、前記スタイレットに機械的に結合された第1のハウジング内に配設され、前記電子回路の第2の部分が、第2のハウジング内に配設され、無線インターフェースを介して前記第1の部分にリンクされる、請求項1に記載の装置。
前記スタイレットおよび前記ケーブルは、使い捨てパーツとして構成され、前記電子回路および前記ハウジングは、複数回使用パーツとして構成される、請求項4に記載の装置。
貫通する長手方向ボアを備える、近位端部および遠位端部を有するカテーテルをさらに備え、前記スタイレットは、前記カテーテルの前記長手方向ボア内に選択的に配設されるようにサイズ設定され構成される、請求項1に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
脳を含む生体内の構造体に関する情報を収集するために超音波を使用することは、少なくとも1940年代初頭から実施されてきた。超音波は、典型的には圧電材料から作製される電気的に励起される変換器によって組織中に放出され得る。超音波は、変換器から放出されると、衝突する構造体と相互作用し、衝突した構造体の物理的特徴に応じて伝播、反射、または分散され得る。特に、超音波が異なる音響インピーダンスを有する材料(この場合には、通常は組織または流体)間で伝送される場合には、反射すなわち「エコー」が生じる。
【0003】
人体内の実質的に流体を充填されたコンパートメントの中または近傍における医用デバイスの配置を特に補助するために超音波を使用することもまた、新しいものではない。参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,690,117号は、光学撮像をさらに組み込んだ超音波チップを備えたシラスティック頭蓋内カテーテルについて説明している。標準的な診断用超音波システムは、血管でのカニューレ挿入、嚢胞の切開、およびドレーンカテーテルの配置等を補助するために通例的に使用される。
【0004】
ヒトが知覚可能な時間スケールで音波のエコーが遠隔地の構造物から反射することによる反響位置決定法を利用することもまた、新しいものではない。初期のソナーシステムは、音響変換器、増幅器、およびスピーカのみから構成され、音波が、変換器から水中に放出され、次いでオペレータが、エコーに関して変換器からの増幅された信号を聴き取るものであった。エコーが変換器に戻るのに要する時間が、反射構造体までの距離を示した。この種の技術は、医用超音波において直接使用可能ではない。なぜならば、これらの距離は短く(通常は10cm未満)、補助なしのヒトの知覚では明瞭に把握できないほどエコーが高速で戻るからである。
【0005】
構造体の位置を判定し、次いで「時間を引き延ばした」音声情報としてその情報を符号化するために反響位置決定法または電波探知法を使用することもまた、新しいものではない。例えば、多数の現代の自動車は、危険センサを組み込んでいるが、ここでは、反響位置決定法または電波探知法が、障害物を検出するために使用され、フィードバックが、一連の音声「ビープ音」として運転者に与えられる。すなわち、障害物がより近いほど、ビープ音はより高速で鳴り、障害物が車両から所定の距離内に位置する場合には最終的に連続トーンにまで変わる。この場合に、車両と障害物との間の多様な距離におけるエコー時間の差異は、ミリ秒単位となり得るが、一方で距離を示すビープ音間の期間は、秒単位となり得るため、後者はヒトによる知覚が容易に可能である。したがって、エコー時間は、知覚可能になるように「引き延ばされる」。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図1a】流体が充填された空間が存在する場合の戻りエコー信号を示す図である。
【
図1b】流体が充填された空間が存在するか否かを判定するための、およびこの空間の位置を判定するためのアルゴリズムを示す図である。
【
図1c】流体が充填された空間の中間に対応する「引き延ばされた」時間を計算するためのアルゴリズムを示す図である。
【
図1d】リングダウン信号または他の初期ノイズ信号が存在する場合の流体で充填された空間に対する超音波変換器の位置を追跡するためのアルゴリズムを示す。
【
図2】本発明の一実施形態による無線結合システムの信号取得および伝送部分の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による無線結合システムの信号処理、制御、およびユーザインターフェース部分の概略図である。
【
図4】電源およびユーザインターフェースを備える全回路が、超音波変換器を組み込んだ中空部材に直接的に結合されたハウジングに組み込まれた、本発明の一実施形態を示す図である。中空部材は、カテーテル内に挿入されて図示される。
【
図5】超音波変換器を組み込んだ中空部材が、可撓性ケーブルにより電源およびユーザインターフェースを備える回路に結合された、本発明の一実施形態を示す図である。
【
図5a】超音波変換器を組み込んだ中空部材が、電源およびユーザインターフェースを備え得る回路の一部分に直接的に結合され、次いで回路のこの部分が、可撓性ケーブルにより電源およびユーザインターフェースを収容し得る追加の回路に結合された、本発明の一実施形態を示す図である。
【
図6】脳脊髄液を排液するためのカテーテルに挿入された、超音波変換器を組み込んだ中空部材の遠位端部の詳細図である。このカテーテルは、カテーテルの先端部に中空部材を押し通すことを可能にする特徴を組み込む。
【
図7】脳脊髄液を排液するためのカテーテルに挿入された、超音波変換器を組み込んだ中空部材の遠位端部の詳細図である。超音波変換器を組み込んだ中空部材は、カテーテルの先端部に押し通される。
【
図8】脳脊髄液を排液するためのカテーテルに挿入された、超音波変換器を組み込んだ中空部材の遠位端部の詳細図である。このカテーテルは、遠位端部が開口し、それにより超音波変換器の前方に妨げのない音響経路を与える。
【
図9】脳脊髄液を排液するためのカテーテルに挿入された、超音波変換器を組み込んだ中空部材の遠位端部の詳細図である。このカテーテルは、遠位端部が開口し、それにより超音波変換器の前方に妨げのない音響経路を与える。カテーテルの先端部は、カテーテルの先端部の内部にリップが存在するように設計される。中空部材は、挿入時にその一部分がカテーテルのリップを押圧し得る一方で、カテーテルの開口先端部内に超音波変換器を依然として位置決めし得るように設計される。
【
図10】変換器用の電気接続部と保護コーティングとを有する、超音波変換器を組み込んだ中空部材の遠位端部の一実施形態の詳細図である。
【
図11】変換器用の電気接続部と保護コーティングとを有する、超音波変換器を組み込んだ中空部材の遠位端部の別の実施形態の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に
図1を参照すると、送信/受信切替え回路11に結合された超音波変換器10が示される。この実施形態では、送信/受信回路11は、信号プロセッサ15またはシステムコントローラ22のいずれかへの制御接続部を伴わずに図示されるが、他の実施形態では、かかる制御接続部が組み込まれてもよい。信号発生器14が、送信増幅器12に接続される。この実施形態では、送信増幅器12は、利得が信号プロセッサ15により制御される可変利得増幅器として図示されるが、他の実施形態では、増幅器12は、固定利得増幅器であってもよく、またはシステムコントローラ22により制御されてもよい。送信増幅器12は、送信/受信切替え回路11の送信ポートに接続される。送信/受信切替え回路11の受信ポートは、受信増幅器13に接続され、この受信増幅器13は、信号プロセッサ15に接続される。この実施形態では、受信増幅器13は、利得が信号プロセッサ15により制御される可変利得増幅器として図示されるが、他の実施形態では、増幅器13は、固定利得増幅器であってもよく、またはシステムコントローラ22により制御されてもよい。
【0011】
信号プロセッサ15は、オーディオプロセッサ16、ディスプレイプロセッサ17、およびタクタイルプロセッサ18に接続され、このオーディオプロセッサ16、ディスプレイプロセッサ17、およびタクタイルプロセッサ18はいずれも、ユーザインターフェースの要素を駆動してユーザに情報を提供するように意図されたものである。オーディオプロセッサ16は、可聴情報を生成し得る音声変換器19に接続される。ディスプレイプロセッサ17は、視覚情報を生成し得る視覚ディスプレイ20に接続される。タクタイルプロセッサ18は、接触することにより感知され得る情報を生成し得るタクタイル機構21に接続される。
【0012】
好ましい一実施形態では、音声変換器19は圧電変換器である。別の実施形態では、音声変換器19は、電磁スピーカであってもよい。多数の異なる音声変換器技術が、本発明の意図を実現するために使用され得る点が理解されよう。
【0013】
好ましい一実施形態では、視覚ディスプレイ20が、1つまたは複数の光発光ダイオード(LED)から構成される。かかる一実施形態では、単一のLEDが、発光される光の明度の調節によってユーザに流体の存在もしくは不在および/または流体までの距離を示すために使用されてもよい。別のかかる実施形態では、2つ以上のLEDが、LEDにより発せられる光の色の組合せの調節によりユーザに流体の存在または不在を示すために使用されてもよい。別のかかる実施形態では、2つ以上のLEDが、明度および色彩の両方の調節による流体インジケータとして使用されてもよい。別のかかる実施形態では、多数のLEDが、流体の存在または不在に関する情報を伝達する画像が形成され得るように配置されてもよい。かかる一実施形態では、画像は、テキスト、グラフィック、またはそれらの両方であってもよい。さらなる一実施形態では、視覚ディスプレイ20は、1つまたは複数の液晶ディスプレイから構成される。多数の異なるディスプレイ技術が、本発明の意図を実現するために使用され得る点が理解されよう。
【0014】
好ましい一実施形態では、タクタイル機構21は、電気モータに装着された非対称重りなどの電気機械振動デバイスである。かかる一実施形態では、振動速度が、流体の存在もしくは不在および/または流体までの距離を示すために使用され得る。別のかかる実施形態では、振動強度が、インジケータとして使用され得る。別のかかる実施形態では、振動速度または振動強度が、インジケータとして時間の経過と共に変化され得る。かかる一実施形態の一例として、振動の存在または不在が、超音波変換器の正面における流体の存在または不在を示し、その一方で、短く断続する振動間の時間が、超音波変換器面から流体までの距離を示す。別の実施形態では、ソレノイドが、触覚フィードバックをもたらす機構を動かすために使用され得る。ハプティック技術を含む多数の異なる触覚フィードバック技術が、本発明の意図を実現するために利用され得ることが理解されよう。
【0015】
オーディオプロセッサ16、ディスプレイプロセッサ17、タクタイルプロセッサ18、視覚ディスプレイ20、およびタクタイル機構21は、システムコントローラ22に接続されるように図示される。本発明の任意の特定の実施形態において、これらの接続は、必要であっても必要でなくてもよい。
【0016】
ユーザ入力25は、ユーザがシステムへの他の入力をイネーブルにする、ディスエーブルにする、設定する、または供給するための手段を提供する。好ましい一実施形態では、ユーザ入力25は、電気機械スイッチを組み込む。他の実施形態では、ユーザ入力25は、電位差計、ロータリエンコーダ、または近接センサを組み込んでもよい。多数の異なる入力技術が、本発明の意図を実現するために利用され得る点が理解されよう。
【0017】
電源24が、電力を必要とする要素に電力を供給する。電源は、好ましくは充電式電池であるが、非充電式電池、コンデンサなどの別の蓄電デバイス、または幹線もしくは電気エネルギー発生装置からエネルギーを引く電力供給装置であってもよい。
【0018】
一実施形態では、システムコントローラ22は、信号発生器14を始動させて電気波形を生成し、この電気波形は、送信増幅器12により増幅され、送信/受信切替え回路11を通過し、変換器10を励起し、それによりこの変換器10が振動し音波を生成し、この音波が、変換器と接触状態にある組織を通過して進む。送信/受信切替え回路11は、増幅された送信信号が受信増幅器13に進むのを実質的に阻止する。送信/受信切替え回路は、周知されており長年にわたり診断用超音波システムで使用されてきたダイオードベース方向制御回路であってもよい。代替的には、切替え回路は、システムコントローラ22または信号プロセッサ15のいずれかにより制御される固体スイッチであってもよい。このシステムにより生成される音波の周波数は、非常に多様であってもよいが、好ましくは1〜20MHzの範囲内である。パルスとして送信される波サイクル数もまた、非常に多様であってもよいが、好ましくは1〜20サイクルの範囲である。システムのパルス繰返し周波数もまた、非常に多様であってもよいが、好ましくは1〜20000Hzの範囲内である。
【0019】
変換器に結合された組織から変換器10に戻るエコーが、変換器10により電気波形に変換され、送信/受信切替え回路11を経由して受信増幅器13へと送られる。次いで、増幅された信号は、信号プロセッサ15に送られて解析される。好ましい一実施形態では、信号プロセッサ15は、デジタル信号プロセッサであってアナログデジタル変換器を組み込むため、受信増幅器13の出力は、デジタル形状に変換され得る。別の実施形態では、信号プロセッサ15は、アナログ信号プロセッサであり、これは、受信信号の振幅が所定限度または適応限度を超過しているか否かを判定するしきい値検出器と同様の単純なものであってもよい。好ましい一実施形態では、信号プロセッサ15は、時間利得補償(TGC)を実行するために受信増幅器13の利得を制御する。TGCは、音波が組織または流体を通りより長い距離にわたり移動するのに比例して、音波のエネルギー損失を補償するために利得が時間の経過と共に増大される、長年にわたり診断用超音波システムに組み込まれてきた周知のコンセプトである。
【0020】
信号プロセッサ15は、流体を充填された空間が変換器10の正面に存在するか否かを主に判定し、もし存在する場合にはユーザへのフィードバックにより適した形態へとこの情報を変換するために、戻りエコーを表す信号を解析することに関与する。
図1aは、流体を充填された空間の存在を示す典型的な信号の時間-振幅特性を示す。かかる図では、時間は、音波が移動する距離をさらに表すことが理解されよう。概ね、組織内における秒速約1540メートルの音速についての仮説を行う。信号は、点155で開始し、これは、システムが、流体を充填された空間を探知するために使用されることとなる音波を生成するように超音波変換器を励起する時点に相当する。強力な初期信号150が、変換器のリングダウンなどの効果により存在する場合がある。この初期信号は、流体検出とは無関係であり、最小限に抑えられるべきである。信号の次の部分151は、組織内の特徴からの低レベルエコーを表す。エコー特徴152は、組織から流体への伝送を表すより高い振幅特徴であり、一方で信号の次の部分153は、本質的にエコーが存在せず、流体を表す。エコー特徴154は、流体から組織への伝送を表すより高い振幅特徴であり、一方で信号の次の部分155は、流体コンパートメントの奥の組織特徴からのさらなるエコーを表す。特徴152、153、および154の組合せは、流体を充填された空間の標識を、すなわち組織から流体への伝送を示す初期エコー特徴と、その後の比較的エコーのない領域と、その後の流体から組織への伝送を示す後続エコー特徴とを形成する。
【0021】
信号特徴152および154は、それらの大きさが比較的大きいことによりエコー信号中の周辺特徴から概ね区別されるため、流体空間を自動的に識別するためのアルゴリズムが実施され得る。
図1bは、かかる1つのアルゴリズムを示す。この実施形態では、アルゴリズムは、初めに2値検波信号166をその非アクティブ状態に設定し、次いでエコー信号に包絡線検波160を実施することにより比較的平滑な戻りエコー信号を生成することによって実施される。フィルタリング動作が、解析に対する信号の適正を改善するために包絡線検波の前または後に追加されてもよい。好ましい一実施形態では、帯域制限フィルタ161が、包絡線検波の前に設けられ、遷移フィルタ162とその後の平滑フィルタ163が、包絡線検波の後に設けられる。かかるフィルタは、多数の異なるタイプの処理を実施し得る点が理解されよう。処理ブロック164が、周辺領域よりも著しく大きな振幅を有し組織-流体間界面と一致する期間を有する特徴が見つかるまでエコー信号の部分をその開始から連続的に調査することによって、信号特徴152に対応する初期信号特徴を識別しようと試みる。一実施形態では、かかる特徴は、その振幅が周辺信号領域の振幅の2倍を超過し、その期間が組織および流体に問い合わせを行うために使用される超音波信号のパルス長を超過する場合に見出されるとみなされる。信号特徴が見つかった場合には、処理ブロック165が、周辺領域よりも著しく大きな振幅を有し組織-流体間界面に一致する期間を有する特徴が見つかるまでエコー信号のさらなる部分を連続的に調査することによって、特徴154に対応する後の信号特徴を識別しようと試みる。このパターンの信号特徴が見つかった場合には、流体を充填された空間が見つかったとみなされ、2値検波信号166がそのアクティブ状態へと変更される。
【0022】
検出性能の改良のために具体的な用途に関連する解剖学的構造の知識が適用されてもよいことが理解されよう。例えば、本発明が脳室排液カテーテルの配置を誘導するために使用されることとなる用途では、大多数の場合において、脳室は、初めの2センチメートルの組織では見つからず、脳表面から8センチメートルよりも深い位置でもやはり見つからないことが知られている。したがって、一実施形態では、これらの距離外の流体空間を示す信号特徴は、検出の目的により無視される。
【0023】
流体を充填された空間が検出されると、超音波変換器の面からのその空間の大まかな距離と、超音波ビームの方向におけるその空間の大まかな大きさとが、
図1aの特徴152および154に対応する信号特徴から初期超音波パルスと戻りエコーとの間の時間間隔を計算することによって容易に判定される。特徴152および154を表す時点は、好ましくはそれらの時間長の中間点であることが好ましいが、それらの時間長の中の任意の位置、直前、または直後となるように選択されてもよい。これらの3つの時点が判定されると、流体を充填された空間に対して医用デバイスを誘導するために使用されることとなる超音波変換器の現在位置が、判定され、ユーザにフィードバックを供給するために使用され得る。処理ブロック164および165が、これらの2つの時点を判定し、それらを記憶し、出力168および169を介して後の処理にそれらを利用可能にする。実際的な一実装形態では、出力168および169は、例えばデジタルシステムにおけるサンプルなどの任意の適切なスケールで、またはマイクロ秒を表す数字として時間を表し得る。したがって、
図1bに図示するアルゴリズムは、流体を充填された空間が超音波変換器の正面に存在するか否かに関して、および存在する場合にこの空間の前縁および後縁が変換器の正面のどの深さに位置するかに関しての示唆を与える。
【0024】
流体を充填された空間の検出は、数十マイクロ秒内に行われ得る。超音波が、1540メートル/秒または約1.54ミリメートル/マイクロ秒で組織を通り進むと仮定した場合に、超音波変換器から4cmに位置する流体を充填された空間は、約52マイクロ秒で
図1aの特徴152に対応する初期エコーをもたらす。超音波ビームの方向における流体を充填された空間の大きさが約1cmである場合には、
図1aの特徴154に対応するエコーは、流体中の音速に応じて約12マイクロ秒後に到達する。かかる短い時間フレームで発生する事象は、一般的にはヒトによる知覚が不可能であり、そのため何らかの機構が、知覚可能にするために時間、空間、またはその両方に関してそれらの事象の表出を引き延ばすために使用されなければならない。この単純な一例は、オシロスコープであり、これは、メガヘルツまたはギガヘルツの帯域を有し得る電気波形を測定するが、ディスプレイ上で信号の詳細をユーザが調査するのを可能にし、マイクロ秒またはナノ秒の信号情報が、ディスプレイ上に引き延ばされ、信号情報が知覚可能になるようにある時間にわたって保持される。オシロスコープは、初期の診断用超音波システムで使用されたが、
図1aに示すものと同様の表示を生成することが実際に可能であった。超音波撮像システムは、一般的に、明度として信号振幅を、距離として時間を、表示において符号化する。一連のエコー信号が、処理および蓄積されて、信号画像が生成される。
【0025】
以前の検査員は、長年にわたり、組織内の流体を充填された空間の発見を補助するために、
図1aに示すのと同様の情報を表示するためにオシロスコープまたはオシロスコープと同様のディスプレイを使用してきた。最近、この技術は、脳内の脳脊髄液の検出のために実演されており、脳内の脳室排液カテーテルの正確な配置を補助するために提案されている。この技術の限界は、このオシロスコープと同様のディスプレイが、直観的なものとはなり得ず、ユーザが解釈する必要がある点である。本発明の1つの目的は、より容易に理解され得るようにエコー情報の提示を単純化することによって、より具体的には流体を充填された空間を自動的に識別し、時間引き延ばし技術を利用して理解の容易なフォーマットでユーザに対して情報を提示し、音声フィードバック、視覚フィードバック、および触覚フィードバックを単体でまたは組合せで使用することによって、この限界を克服することである。
【0026】
図1cは、
図1bのアルゴリズムの出力を使用して上述の時間引き延ばし動作を実施するためのアルゴリズムを示す。初めに、処理ブロック180が、出力168および169を使用して流体を充填された空間の前縁と流体を充填された空間の後縁との間の半距離に対応する時点を計算する。これは、音波が、変換器から流体を充填された空間の中間に進み変換器に戻るのに要するおおよその時間を表す。次いで、乗算器181が、この時間をヒトに知覚可能なものにする引き延ばし係数とこの時間とを乗算する。好ましい一実装形態では、この引き延ばし係数は、約20000になるように選択され、そのため50マイクロ秒の時間は、1秒に引き延ばされる。出力182は、この「引き延ばされた」時間を表す。
【0027】
ここで再び
図1を参照すると、ならびに上述のおよび
図1bおよび
図1cに示すアルゴリズムが信号プロセッサ15により実施されるという理解の下では、出力166および182は、オーディオプロセッサ16、ディスプレイプロセッサ17、およびアクチュエータプロセッサ18に与えられる。好ましい一実装形態では、オーディオプロセッサ16は、出力166がアクティブである場合に出力182により示される時間的割合で繰り返される短い可聴トーンまたは「ビープ音」を表す電気信号を発生し、それ以外の場合には信号は発生されない。この電気信号は、次いで音声変換器19により一連の可聴ビープ音を発生させるために使用される。この好ましい実施形態では、ディスプレイプロセッサ17は、出力166がアクティブである場合に出力182により示される時間的割合で点滅するようにLEDを駆動するのに適した電気信号を発生し、他の場合には信号は発生されない。この電気信号は、次いでこの場合には単なるLEDである視覚ディスプレイ20を駆動するために使用され、それによりLEDは上述のように点滅する。この好ましい実施形態では、アクチュエータプロセッサ18は、出力166がアクティブである場合に出力182により示される時間的割合のパルスとして触覚的に知覚可能な動作となるのに十分な質量のばね復帰式プランジャでソレノイドを駆動するのに適した電気信号を発生し、他の場合には信号は発生されない。この電気信号は、次いでこの場合には上述の単なるソレノイドであるタクタイル機構21を駆動するために使用される。したがって、この実施形態では、超音波変換器10の正面の約4センチメートルの位置に中心を有する流体を充填された空間が存在する場合に、音声変換器19は、1Hzのビープ音を発生し、視覚ディスプレイ20は、1Hzで点滅し、タクタイル機構21は、1Hzの触覚的に知覚可能な物理運動を行う。超音波変換器10が、流体を充填された空間のより近くに移動されることにより、音声フィードバック、視覚フィードバック、および触覚フィードバックの割合は上昇する。
【0028】
音声フィードバック機構、視覚フィードバック機構、または触覚フィードバック機構の中の任意のものが、システムコントローラ22により任意の組合せでイネーブルまたはディスエーブルにされてもよい点が理解されよう。また、任意の特定の実装形態において、音声フィードバック、視覚フィードバック、または触覚フィードバックのための機構は、少なくとも1つのかかるフィードバック機構が存在する限りにおいて、存在してもまたは存在しなくてもよい点が理解されよう。また、任意の特定の実装形態において、音声フィードバック、視覚フィードバック、または触覚フィードバックのための機構は、同時に異なるタイプのフィードバックを供給するために使用されてもよい点が理解されよう。例えば、一実施形態では、視覚ディスプレイ20は、流体を充填された空間が検出されない場合には赤色光を、およびかかる空間が検出される場合には緑色光を表示し得る一方で、オーディオプロセッサ16および音声変換器19は、かかる空間が検出された場合には流体を充填された空間までの距離を示す一連のビープ音を発生させ、タクタイル機構21は、超音波変換器が流体を充填された空間内に位置すると判定された場合には物理運動によりフィードバックを供給する。音声フィードバック、視覚フィードバック、および触覚フィードバックのための機構は、ユーザにフィードバックを供給するために多数のかかる組合せで使用され得る点が明らかであろう。
【0029】
超音波変換器10が流体を充填された空間のより近くに移動されると、ある時点で、信号特徴152が、信号特徴150と混合し、信号特徴150と区別不能になり得る点が理解されよう。超音波変換器が、流体を充填された空間を通り移動されると、最終的に、信号特徴154が、信号特徴150と混合し、信号特徴150と区別不能になり得る。
図1dは、この状況が実際にどのように対処され得るかをさらに示す。
【0030】
図1dでは、
図1aで識別される信号特徴に対応する特徴が参照される。このアルゴリズムは、ボックス210で初期化され、ボックス210は、流体を充填された空間に到達したというあらゆる示唆を消去し、処理ブロック213で記憶されたあらゆる位置を消去する。判定ブロック211は、本明細書において説明されるように
図1aの信号特徴152および154が見つかったか否かを示して、流体を充填された空間の存在を示す。これらの信号特徴が見つからなかった場合には、アルゴリズムは、その初期化状態210に戻る。信号特徴が見つかった場合には、処理ブロック212が、信号特徴150の終了を判定する。一実施形態では、この判定は、
図1bのブロック163の後にしきい値テストによって行われ得る。処理ブロック213が、信号特徴154の開始を判定する。一実施形態では、この判定は、
図1bのブロック164で実施され得るようなしきい値テストによって行われ得る。次いで、処理ブロック213は、任意の以前に記憶された位置に対して信号特徴154の位置を比較する。現在位置が、以前に記憶された位置から所定の距離内にある場合には、追跡が正常に行われたとみなされ、特徴154が識別されたと示される。記憶された位置情報が、このアルゴリズムの第1の繰返しの場合と同様に消去される場合には、特徴154は、やはり見つかったものとして示される。信号特徴154の位置が、以前に記憶された位置から所定の距離外に位置する場合には、追跡は正常に行われなかったとみなされ、特徴154は識別されなかったものとして示される。判定ブロック214は、信号特徴154の開始が処理ブロック213で見つかったか否かを判定する。この開始が見つからなかった場合には、追跡は迷宮入りとなり、アルゴリズムは初期化状態210に戻る。この開始が見つかった場合には、判定ブロック215は、信号特徴154の開始が信号特徴150の終了の所定許容誤差内に位置するか否かを判定する。この所定許容誤差内に位置する場合には、流体を充填された空間に到達しているという示唆がユーザに与えられる。この所定許容誤差内に位置しない場合には、アルゴリズムは処理ブロック154に戻る。
【0031】
図2は、
図1に示す、しかし無線送信機36および受信機37が追加されたシステムの一部分のブロック図である。
図3は、
図2から省かれている
図1の要素の残りの部分を示し、無線受信機50および無線送信器51が追加されている。したがって、
図2および
図3に示すシステムの組合せは、無線送信機および無線受信機と共に形成される無線リンクを介して適切なデータを送出することによって、
図1に示すシステムに関して上記で論じた機能の全てを組合せにおいて実装し得る。好ましい一実装形態では、無線リンクは、低出力ブルートゥース(商標)構成要素と共に形成されるが、RF手段、光学手段、および超音波手段を含む多数の異なる通信形態がこのリンクを形成するために使用されてもよい点が理解されよう。また、例えば、
図1のシステムコントローラ22による信号発生器14の制御が、システムコントローラ52から無線により信号プロセッサ35におよび次いで信号プロセッサ34にかかる制御情報を送ることによって実施され得るなど、かかる無線リンクを最も効率的に組み込むために
図1のアーキテクチャに対していくつかの修正がなされてもよい点が理解されよう。また、例えば別の実施形態では、無線送信機36が、受信増幅器35に直接接続されてもよく、信号処理機能が、無線リンクの他方の側で実施されるなど、上述の無線リンクは、
図1のアーキテクチャの多数の異なる位置に配置されてもよい点が理解されよう。かかる一実装形態では、無線受信機36は、システムコントローラ52からの超音波パルスの送信を開始させるための手段を提供するために、信号発生器34に直接接続されてもよい。また、例えば帯域制限フィルタ機能が、
図2の信号プロセッサ35において実装されてもよく、一方で
図3に示すシステムに追加される追加の信号プロセッサが、検出動作および平滑化動作を実施し得るなど、同様の実装形態が、無線リンクの両側にいくつかの信号処理機能を組み込んでもよい点が理解されよう。
【0032】
本発明は、脳の脳室の中の1つから脳脊髄液を排液するためにカテーテルの配置を誘導するのに特に適する。
図4は、
図1に示すシステムの物理的実装形態を示す。
図1の変換器10に対応する超音波変換器が遠位端部に位置決めされた中空部材、すなわち「スタイレット」71が、排液カテーテル70の破断図の内部に示される。排液カテーテルは、その遠位端部付近のカテーテルの側部に少なくとも1つの排液ポートを組み込むが、かかるポートは、この図では示されない。排液カテーテル70の先端部は、以下でさらに説明されるようにカテーテル70の他の方法で閉じられた端部にスタイレット71を押し通すことを可能にする「魚口」スリット72を組み込む。好ましくは導電材料から作製され、超音波変換器の面に結合されるスタイレット71は、超音波変換器の後部に接続されたワイヤをさらに備え、このワイヤは、導電性スタイレットとの組合せにおいて、
図1の接続部23に対応する電気回路を形成する。スタイレット71は、ハウジング73に機械的に結合され、ハウジング73は、
図1の他の要素に対応する電子機器および電源を収容する。この実施形態では、電源は、好ましくは電池電源であるが、コンデンサなどの別の蓄電デバイス化、または幹線もしくは電気エネルギー発生装置からエネルギーを引く電力供給装置であってもよい。グラフィックディスプレイ76およびLEDランプ75が、共に
図1の視覚ディスプレイ20に対応するものとして図示され、また同様にユーザ入力74が、
図1のユーザ入力25に対応するものとして図示される。
【0033】
図5は、
図4の実施形態と同様の実施形態を示し、ここでは
図4のスタイレット71に対応するスタイレット81が、電子機器および電源を収容するハウジング83に小型同軸ケーブル82によって接続される。この実施形態では、電源は、好ましくは充電式電池であるが、非充電式電池、コンデンサなどの別の蓄電デバイス、または幹線もしくは電気エネルギー発生装置からエネルギーを引く電力供給装置であってもよい。
図4のカテーテル70に対応するカテーテル80の近位端部が図示され、同様にグラフィックディスプレイ86およびLEDランプ85が、
図4の要素76および75にそれぞれ対応するものとして図示される。また、
図4のユーザ入力74に対応するユーザ入力84が図示される。
【0034】
図5aは、
図4の実施形態と同様の実施形態を示し、ここでは
図4のスタイレット71に対応するスタイレット201が、電子機器を収容するハウジング202に機械的に結合され、次いでこのハウジング202は、電子機器を収容するハウジング204へとケーブル203によって接続される。ハウジング202は、実際には中空スタイレット201と同様であってもよい点が理解されよう。一実施形態では、1つまたは複数の誘導子またはコンデンサなどの電気調整構成要素が、中空スタイレット201の遠位端部にて変換器のごく物理的近傍に組み込まれ得る。電源は、ハウジング202、ハウジング204、またはそれらの両方に組み込まれてもよい点が理解されよう。好ましくは、電源が、ハウジング204に組み込まれ、ハウジング202に収容された電子機器により必要とされる任意の電力が、ケーブル203を介して供給される。この実施形態では、電源は、好ましくは充電式電池であるが、非充電式電池、コンデンサなどの別の蓄電デバイス、または幹線もしくは電気エネルギー発生装置からエネルギーを引く電力供給装置であってもよい。
図4のカテーテル70に対応するカテーテル200の近位端部が図示され、同様にグラフィックディスプレイ205およびLEDランプ206が、
図4の要素76および75にそれぞれ対応するものとして図示される。
図4のユーザ入力74に対応するユーザ入力207もまた図示される。
【0035】
図6および
図7は、カテーテルの端部にスタイレットの遠位端部を押し通すことを可能にするカテーテルの構成をさらに示す。
図6では、遠位端部に超音波変換器を組み込んだスタイレット91が、排液カテーテルの破断図の内部に図示される。上述のように、排液カテーテルは、遠位端部付近のカテーテルの側部に少なくとも1つの排液ポートを組み込むが、かかるポートは、この図では示されない。スリット92が、カテーテルの遠位端部に切り込まれ、それにより開口が形成され得る。
図7では、スタイレット101は、カテーテル100の遠位端部のスリットに押し通されて図示される。
【0036】
図8に図示するようにカテーテルを作製することが可能であり、スタイレット111の遠位端部は、カテーテル110の開口端部を貫通して常に露出される。かかる一実装形態は、カテーテルが、脳組織内に挿入された場合にスタイレット上で「ずれ上がる」という問題を有する場合がある。この問題は、
図9に示す一実施形態により対処され得る。ここでは、スタイレット122が、特徴123を組み込むことにより、スタイレット222の横寸法、すなわち最も一般的には直径が、その遠位端部付近で縮小される。この特徴は、カテーテル120の遠位端部の対応する「リップ」特徴に対して整合し、そのため超音波変換器124を組み込んだスタイレットの遠位端部は、露出されるが、力が、スタイレットを介してカテーテルに印加され得る。好ましくは、カテーテル120の遠位端部は、カテーテル121の本体の材料よりも高い剛性を有する材料から作製される。
【0037】
図11は、
図4のスタイレット71に対応するスタイレット140の内部の
図1の変換器10に対応する超音波変換器141の一実施形態の構造詳細を示す。ここでは、超音波変換器は、最も好ましくは圧電セラミック材料から作製され、正面および背面が好ましくは銀または金である導電性金属でめっきされる。ワイヤ142が、変換器のめっき処理された背面に接合され、変換器は、接着剤で中空スタイレット140の内部に接合される。変換器の背面のめっきは、変換器のエッジに到達しないように構成され、それによりスタイレットは電気接触状態にはない。導電性材料の小片143が、変換器141の面におよびスタイレット140の遠位端部に接合され、それにより変換器の正面が、スタイレットと電気接触状態になる。好ましくはラテックスまたはエポキシである音響伝播性保護コーティング144が、スタイレットの先端部に配設される。導電性材料143は、変換器の正面のめっきが変換器のエッジの周囲を囲み、そのためスタイレットと電気接触状態にある場合には、不要となることが明らかであろう。したがって、超音波変換器140は、導電性スタイレット140を介して接地されてもよく、送信される信号および受信される信号は、ワイヤ142を介して伝達され得る。
【0038】
また、
図12は、
図4のスタイレット71に対応するスタイレット192の内部の
図1の変換器10に対応する超音波変換器190の一実施形態の構造詳細を示す。ここでは、変換器の前面のめっきが、変換器の側部の周囲を囲み、そのため追加の導電性要素が、変換器の前面と保護層191との間で不要となる。追加の特徴193が、中空スタイレットに追加され、これは、スタイレットの遠位端部付近の幅狭部であり、変換器190の逆進防止装置として機能することにより製造時の位置決めを補助する。
【0039】
本発明が、その特定の実施形態を参照として詳細に説明されたが、様々な他の修正が、本発明の主旨および範囲内において実施され得る点が理解されよう。