(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タンパク質の少なくとも80%が、38−42℃での少なくとも30日間の貯蔵、20−24℃での少なくとも1年間の貯蔵、および/または2−4℃での少なくとも3年間の貯蔵の後に高性能サイズ排除クロマトグラフィーで単一ピークとして現れるか、または
38−42℃での少なくとも30日間の貯蔵、20−24℃での少なくとも1年間の貯蔵、および/または2−4℃での少なくとも3年間の貯蔵の後に高性能サイズ排除クロマトグラフィーで15重量%以下の凝集したタンパク質を有する、
請求項1に記載の製剤。
【発明を実施するための形態】
【0023】
配列の簡単な説明
配列番号:1は、9E4VL可変領域のアミノ酸配列である。
【0024】
配列番号:2は、ヒトVLアクセプター配列(NCBI受入コードAAY33350)の可変領域のアミノ酸配列である。
【0025】
配列番号:3は、Hu9E4VLv1可変領域のアミノ酸配列である。
【0026】
配列番号:4は、Hu9E4VLv2可変領域のアミノ酸配列である。
【0027】
配列番号:5は、Hu9E4VLv3可変領域のアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号:6は、m9E4VH可変領域のアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号:7は、ヒトVHアクセプター配列(NCBI受入コードAAC50998)の可変領域のアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号:8は、Hu9E4VHv1可変領域のアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号:9は、Hu9E4VHv2可変領域のアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号:10は、Hu9E4VHv3可変領域のアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号:11は、Hu9E4VHv4可変領域のアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号:12は、野生型ヒトαシヌクレインのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号:13は、N末端にアルギニンを有する、ヒト化9E4軽鎖定常領域のアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号:14は、ヒト化9E4重鎖定常領域のアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号:15は、Hu9E4VLv1可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号:16は、Hu9E4VLv2可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号:17は、Hu9E4VLv3可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0040】
配列番号:18は、Hu9E4VHv1可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0041】
配列番号:19は、Hu9E4VHv2可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0042】
配列番号:20は、Hu9E4VHv3可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0043】
配列番号:21は、Hu9E4VHv4可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0044】
配列番号:22は、Hu9E4VLシグナルペプチドのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号:23は、Hu9E4VLシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
【0046】
配列番号:24は、Hu9E4VHシグナルペプチドのアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号:25は、Hu9E4VHシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
【0048】
配列番号:26はHu9E4VLコンセンサスアミノ酸配列である。
【0049】
配列番号:27はHu9E4VHコンセンサスアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号:28は、N末端にアルギニンを有さない、ヒト化9E4軽鎖定常領域のアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号:29は、(a)可変領域(バージョン3)、および(b)N末端にアルギニンを有する定常領域を含むヒト化9E4軽鎖のアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号:30は、(a)可変領域(バージョン3)、および(b)N末端にアルギニンを有さない定常領域を含むヒト化9E4軽鎖のアミノ酸配列である。
【0053】
配列番号:31は、(a)可変領域(バージョン3)、および(b)定常領域を含むヒト化9E4重鎖のアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号:32は、(a)可変領域(バージョン3)、および(b)BIPバージョン重鎖G1m3アロタイプ定常領域を含むヒト化9E4重鎖のアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号:33は、BIPバージョン重鎖G1m3アロタイプ定常領域のアミノ酸配列である。
【0056】
定義
「抗体」という用語は、無傷の抗体およびその結合フラグメントを含む。典型的には、フラグメントは無傷の抗体と競合し、それから標的への特異的結合について誘導されたものである。フラグメントは別々の重鎖、別々の軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)c、Fv、単鎖抗体、およびシングルドメイン抗体を含む。「抗体」という用語はまた、二重特異性抗体を含む。二重特異性または二価抗体は2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である(例えば、Songsivilai and Lachmann, Clin. Exp. Immunol., 79:315−321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol., 148:1547−53 (1992)を参照されたい)。
【0057】
基本的な抗体構造単位はサブユニットの四量体である。各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対を含み、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50−70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に関与する、約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。最初に発現されると、この可変領域は、典型的には切断可能なシグナルペプチドに結合される。シグナルペプチドのない可変領域は時として、成熟可変領域と呼ばれる。よって、例えば、軽鎖成熟可変領域は、軽鎖シグナルペプチドを有さない軽鎖可変領域を意味する。各鎖のカルボキシ末端部分は、主としてエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。定常領域はCH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域のいずれかまたは全てを含んでよい。
【0058】
軽鎖はκまたはλのいずれかとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、またはεとして分類され、抗体のアイソタイプを、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして規定する。軽鎖および重鎖内では、可変および定常領域は、約12またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖はまた、約10またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域を含む。(一般に、Fundamental Immunology (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y., 1989), Ch. 7を参照されたい)(参照により、その全体が全ての目的のために組み込まれる)。
【0059】
各軽鎖/重鎖対の成熟可変領域は抗体結合部位を形成する。よって、無傷の抗体は2つの結合部位を有する。二価または二重特異性抗体を除き、2つの結合部位は同じである。鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域により連結される比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。各対の2つの鎖からのCDRは、フレームワーク領域により整列され、特異的エピトープに結合できる。N末端からC末端へと、軽鎖および重鎖はどちらも、領域FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。アミノ酸の各領域への割当は、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest(国立衛生研究所、ベテスダ、MD、1987および1991)、またはChothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901−917 (1987);Chothia et al., Nature 342:878−883 (1989)の定義に従う。Kabatはまた、広く使用される番号付け協定(Kabat番号付け)を提供し、この場合、異なる重鎖間または異なる軽鎖間の対応する残基には同じ番号が割り当てられる。
【0060】
パーセンテージ配列同一性はKabat番号付け協定により最大限に整列された抗体配列を用いて決定される。整列後、対象抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の全成熟可変領域)が基準抗体の同じ領域と比較された場合、対象抗体領域と基準抗体領域間のパーセンテージ配列同一性は、対象および基準抗体領域の両方において同じアミノ酸により占有された位置の数を、2つの領域の整列された位置の総数(ギャップはカウントされない)で割り、100をかけてパーセンテージに変換したものである。
【0061】
アミノ酸置換を保存的または非保存的として分類するために、アミノ酸を下記の通りグループ分けする:グループI(疎水性側鎖):ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;グループII(中性親水性側鎖):Cys、Ser、Thr;グループIII(酸性側鎖):Asp、Glu;グループIV(塩基性側鎖):Asn、Gln、His、Lys、Arg;グループV(鎖配向に影響する残基):Gly、Pro;ならびにグループVI(芳香族側鎖):Trp、Tyr、Phe。保存的置換は、同じクラス内のアミノ酸間の置換を含む。
【0062】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと変換することに相当する。
【0063】
発明の抗体は、典型的には、それらの指定された標的に少なくとも10
6、10
7、10
8、10
9、または10
10M
−1の親和定数で結合する。そのような結合は、検出可能なほど規模が大きく、少なくとも1つの関連しない標的に対して起こる非特異的結合と区別できるという点で、特異的結合である。特異的結合は特定の官能基間の結合の形成または特定の空間的適合(例えば、ロックと鍵型)の結果であってよく、一方、非特異的結合は通常、ファンデルワールス力の結果である。しかしながら、特異的結合は、必ずしも、モノクローナル抗体がただ1つの標的だけに結合することを意味しない。
【0064】
「症状」という用語は、被験体により知覚される疾患の主観的なエビデンス、例えば歩調の変化を指す。「徴候」は、医師により観察される疾患の客観的なエビデンスを指す。
【0065】
被験体が、少なくとも1つの公知の危険因子(例えば、遺伝的な、生化学的な、家族歴、曝露状況)を有し、これにより、その危険因子を有する個体が、その危険因子を有さない個体よりも疾患を発症する統計的に有意に大きなリスクに置かれる場合、個体は疾患のリスクが増加する。統計学的有意性はp≦0.05を意味する。
【0066】
文脈から別様に明らかにならない限り、「約」という用語は、明言された値の平均の標準偏差または明言された値の+/−5%内の値、どちらか大きい方を包含する。
【0067】
「9E4抗体」という用語は、CDRの各々が実質的に9E4のものである任意の抗体を指し、よって、マウス、キメラ、ベニヤ化、およびヒト化9E4を含む。
【0068】
文脈から別様に明らかにならない限り、範囲への言及は、その範囲内の任意の整数を含む。
【0069】
詳細な説明
I.一般
9E4は、ヒトαシヌクレインのアミノ酸残基118−126内のエピトープに結合する抗体である。この抗体のヒト化形態は、WO/2013/063516号(参照により、その全体が全ての目的のために組み込まれる)に記載される。本出願は、9E4(時として、9E4抗体と呼ばれる)のキメラ、ベニヤ化、またはヒト化形態を組み込んだ液体および凍結乾燥製剤を提供する。製剤は、以下でさらに記載されるように、抗体に安定性を付与する成分の組み合わせを有するように設計される。
【0070】
II.標的分子
天然ヒト野生型αシヌクレインは、下記アミノ酸配列を有する140アミノ酸のペプチドである:
MDVFMKGLSK AKEGVVAAAE KTKQGVAEAA GKTKEGVLYV GSKTKEGVVH GVATVAEKTK EQVTNVGGAV VTGVTAVAQK TVEGAGSIAA ATGFVKKDQL GKNEEGAPQE GILEDMPVDP DNEAYEMPSE EGYQDYEPEA (配列番号:12)
(Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:11282−6);GenBank受入番号:P37840。タンパク質は3つの認識されたドメインを有する:アミノ酸1−61に及ぶKTKEリピートドメイン;約アミノ酸60−95に及ぶNAC(非アミロイド成分)ドメイン;ならびに約アミノ酸98〜140に及ぶC末端酸性ドメイン。
【0071】
文脈から別様に明らかにならない限り、αシヌクレインまたはそのフラグメントへの言及は、以上で示される天然ヒト野生型アミノ酸配列、およびそのヒトアレルバリアント、特にレビー小体病と関連するもの(例えば、バリアントE46K、A30PおよびA53T、最初の文字は配列番号:12におけるアミノ酸を示し、数字は配列番号:12におけるコドン位置を示し、第2の文字はアレルバリアントにおけるアミノ酸を示す)を含む。そのようなバリアントは任意で、以下で記載される発明の態様のいずれかにおいて個々にまたは任意の組み合わせで存在してよい。誘導された突然変異E83Q、A90V、A76Tは、αシヌクレイン凝集を増強させ、これらはまた、個々にまたは互いとの組み合わせでおよび/またはヒトアレルバリアントE46K、A30PおよびA53Tとの組み合わせで存在してよい。
【0072】
III.レビー小体病
レビー小体病(LBD)は、ドーパミン作動系の変性、運動変化、認知障害、およびレビー小体(LB)の形成により特徴付けられる。(McKeith et al., Neurology (1996) 47:1113−24)。レビー小体は神経細胞で見出される球状タンパク質沈着物である。それらが脳中に存在すると、アセチルコリンおよびドーパミンを含む化学伝達物質の作用を中断して脳の正常な機能を破壊する。レビー小体病としては、パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)(レビー小体型認知症(DLB)としても知られている)、アルツハイマー病のレビー小体バリアント(LBV)、アルツハイマー病とパーキンソン病の複合型、および多系統萎縮症(MSA;例えば、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、およびシャイ・ドレーガー症候群)が挙げられる。DLBDはアルツハイマーおよびパーキンソン病の両方の症状を共有する。DLBDは、主にレビー小体の位置がパーキンソン病と異なる。DLBDでは、レビー小体は主に皮質内で形成する。パーキンソン病では、それらは主に黒質で形成する。他のレビー小体病としては、純粋自律神経失調症、レビー小体嚥下障害、偶発的LBD、および遺伝性LBD(例えば、αシヌクレイン遺伝子、PARK3およびPARK4の突然変異)が挙げられる。
【0073】
IV.ヒト化9E4抗体
A.結合特異性および機能特性
発明のヒト化抗体は、ヒトαシヌクレインに特異的に結合する。いくつかのヒト化抗体の親和性(すなわち、Ka)は、好ましくはマウス抗体9E4の親和性の5または2倍以内である。いくつかのヒト化抗体はマウス9E4抗体の親和性と同じ(実験誤差内)かまたはそれを超える親和性を有する。好ましいヒト化抗体は、ヒトαシヌクレインへの結合に関し、マウス抗体9E4と同じエピトープに結合し、および/またはマウス抗体9E4と競合する。
【0074】
いくつかの抗体では、ヒト化9E4は二重特異性抗体の1つのアームを形成し、そのもう一方のアームは、血液脳関門上で発現される受容体、例えばインスリン受容体、インスリン様増殖因子(IGF)受容体、レプチン受容体、またはリポタンパク質受容体、または好ましくはトランスフェリン受容体に結合する抗体である(Friden et al., PNAS 88:4771−4775, 1991;Friden et al., Science 259:373−377, 1993)。そのような二重特異性抗体は、受容体介在性経細胞輸送により血液脳関門を横切って移動させることができる。二重特異性抗体の脳取り込みは、二重特異性抗体を操作して、その血液脳関門受容体への親和性を低減することにより、さらに増強させることができる。受容体に対する親和性を低減すると、脳内でのより広い分布が得られた(例えば、Atwal. et al. Sci. Trans. Med.3, 84ra43, 2011; Yuet al. Sci. Trans. Med.3, 84ra44, 2011を参照されたい)。
【0075】
例示的な二重特異性抗体はまた、下記のものであってよい:(1)二重可変ドメイン抗体(DVD−Ig)、この場合、各軽鎖および重鎖は2つの可変ドメインを短ペプチド結合により直列に含む(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD−Ig(商標)) Molecule, In: Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010));(2)Tandab、これは2つの単鎖ダイアボディの融合物であり、標的抗原の各々に対する2つの結合部位を有する四価二重特異性抗体が得られる;(3)フレキシボディ、これはscFvのダイアボディとの組み合わせであり、多価分子が得られる;(4)いわゆる「ドックアンドロック」分子(プロテインキナーゼAにおける「二量体化およびドメインドッキング」に基づく)、これは、Fabに適用すると、異なるFabフラグメントに結合された2つの同一のFabフラグメントから構成される三価二重特異性結合タンパク質が得られ得る;(5)例えば、ヒトFc−領域の両末端に融合された2つのscFvを含む、いわゆるスコーピオン分子。二重特異性抗体を調製するために有用なプラットフォームの例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:BiTE(Micromet)、DART(MacroGenics)、FcabおよびMab2(F−star)、Fc改変IgG1(Xencor)またはDuoBody(Fabアーム交換に基づく、Genmab)。
【0076】
B.ヒト化抗体
ヒト化抗体は遺伝子改変抗体であり、この場合、非ヒト「ドナー」抗体由来のCDRがヒト「アクセプター」抗体配列中にグラフトされる(例えば、Queenら、US5,530,101号および5,585,089号;Winterら、US5,225,539号、Carter、US6,407,213号、Adair、US5,859,205号6,881,557号、Foote、US6,881,557号を参照されたい)。アクセプター抗体配列は、例えば、成熟ヒト抗体可変領域配列、そのような配列の複合物、ヒト抗体配列のコンセンサス配列(例えば、Kabatの軽鎖および重鎖可変領域コンセンサス配列、1991、上記)、または生殖系列可変領域配列であってよい。重鎖のための好ましいアクセプター配列は、NCBI受入コードAAC50998(GI:1791009)のヒト成熟重鎖可変領域または生殖系列IGHV3−7’01もしくはIGHV3−7’02由来の他の成熟重鎖可変領域(クローン名V3−7またはVH3−11)(Glas et al., Clin Exp Immunol. 107:372−80, 1997)、またはこれらの生殖系列配列の1つを組み込んだ成熟重鎖可変領域配列である。軽鎖については、好ましいアクセプター配列は、NCBI受入コードAAY33350(GI:63102889)を有する軽鎖成熟可変領域または生殖系列IGKV1D−39またはIGKV1−39由来の他の成熟軽鎖配列(クローン名O2またはO12)(Kramer et al., Eur J Immunol. 35:2131−45, 2005)、またはこれらの生殖系列配列の1つを組み込んだ軽鎖成熟可変領域配列である。よって、発明のヒト化抗体は、マウス9E4抗体(ドナー抗体)由来のKabatにより規定される3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRならびに存在する場合、完全にまたは実質的にヒト抗体配列由来の、成熟可変領域フレームワーク配列および定常領域を有する抗体を含む。同様に、ヒト化重鎖は、マウス9E4抗体の重鎖由来のKabatにより規定される3つの重鎖CDR、ならびに、存在する場合、完全にまたは実質的にヒト抗体重鎖配列由来の成熟重鎖可変配列および重鎖定常領域配列を有する重鎖を含む。同様に、ヒト化軽鎖は、マウス9E4抗体の軽鎖由来のKabatにより規定される3つの軽鎖CDR、ならびに、存在する場合、完全にまたは実質的にヒト抗体軽鎖配列由来の成熟軽鎖可変配列および軽鎖定常領域配列を有する軽鎖を含む。Kabatにより規定される対応する残基の少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が同一である場合、抗体鎖の成熟可変領域フレームワーク配列または抗体鎖の定常領域配列は、それぞれ、実質的にヒト成熟可変領域フレームワーク配列またはヒト定常領域配列に由来する。
【0077】
ヒト成熟可変領域フレームワーク残基由来のあるアミノ酸は、CDRコンフォメーションおよび/または抗原への結合へのそれらの潜在的な影響に基づいて置換のために選択できる。そのような潜在的な影響は、モデリング、特定の場所でのアミノ酸の特性の検査、または特定のアミノ酸の置換または変異誘発の効果の実験による観察により調査される。
【0078】
例えば、1つのアミノ酸がマウス成熟可変領域フレームワーク残基と選択されたヒト成熟可変領域フレームワーク残基との間で異なる場合、ヒトフレームワークアミノ酸は、アミノ酸が:
(1)非共有結合により抗原に直接結合し
(2)CDR領域に隣接し
(3)またはCDR領域と相互作用する(例えば、約6ÅのCDR領域内にある)
(4)重鎖と軽鎖との間の相互作用を媒介する
ことが合理的に予測される場合、マウス抗体由来の等価のフレームワークアミノ酸により置換できる。
【0079】
発明は、3つの例示されたヒト化軽鎖成熟可変領域(Hu9E4VLv1−v3;配列番号:3−5)および4つの例示されたヒト化重鎖成熟可変領域(Hu9E4VHv1−v4;配列番号:8−11)を含むマウス9E4抗体のヒト化形態を含む製剤を提供する。配列番号:4は、マウス9E4軽鎖の3つのKabat CDRおよびAAY33350の成熟可変領域フレームワークを含む。配列番号.3および5は、表2で示される逆突然変異を含む。配列番号:11は、マウス9E4の3つのKabat CDRおよびAAC50998の成熟可変領域フレームワークを含む。配列番号:8−10は表3で示される逆突然変異を含む。
【0080】
発明は、本明細書で開示されるヒト化9E4抗体のバリアントを含む製剤を提供し、ここで、ヒト化重鎖成熟可変領域は、配列番号:8−11に対し少なくとも90%、95%または99%同一性を示し、ヒト化軽鎖成熟可変領域は、配列番号:3−5に対し少なくとも90、95または99%配列同一性を示すが、指定された配列番号:からのいずれの変異も、Kabat CDRではなく、成熟可変領域フレームワークにおいて起こる。いくつかのそのような抗体では、位置L36はYまたはFにより占有され、および/または位置L83はFまたはLにより占有され、および/または位置H73はNまたはDにより占有され、および/または位置H93はAまたはSにより占有される(ここでの位置は全て、本出願での他のどこでも同じように、Kabat番号付けによる)。いくつかのそのような抗体では、Hu9E4VLv1−v3およびHu9E4VHv1−v4における逆突然変異のいくつかまたは全ては保持される。言い換えれば、重鎖位置H73およびH93の1つまたは両方は、それぞれ、DおよびAにより占有される。同様に、いくつかの抗体では、軽鎖位置L36およびL83の1つまたは両方は、それぞれFおよびLにより占有される。いくつかの抗体では、位置H73、H93、L36およびL83の1、2、3または4つ全ては、それぞれD、A、FおよびLにより占有される。いくつかの抗体では、0、1、または2つの位置が重鎖成熟可変領域フレームワークにおいて、配列番号:11に対して変更され、0、1、または2つの位置が軽鎖成熟可変領域フレームワークにおいて、配列番号:4に対して変更される。
【0081】
発明は、いくつかの抗体が配列番号:11の3つのKabat CDRを含むヒト化重鎖および配列番号:4の3つのKabat CDRを含むヒト化軽鎖を含む製剤を提供し、ただし、位置L36(Kabat番号付け)はFまたはYにより占有されおよび/または位置L83(Kabat番号付け)はLまたはFにより占有され、および/または位置H73(Kabat番号付け)はDまたはNにより占有され、および/または位置H93(Kabat番号付け)はSまたはAにより占有されることを条件とする。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)は、Fにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置L83はFにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36(Kabat番号付け)はFにより占有され、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L83(Kabat番号付け)はLにより占有され、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置H73(Kabat番号付け)はDにより占有され、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置H93(Kabat番号付け)はSにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置H93(Kabat番号付け)はAにより占有される。いくつかのそのような抗体では、位置L36はYにより占有され、位置L83はFにより占有され、位置H73はNにより占有され、位置H93はSにより占有される。位置L36、L83、H73、およびH93ならびにそれらの組み合わせに望ましい残基を有するいくつかの例示的な抗体は下記表1に列挙される。
【表1】
【表2】
【表3】
【0082】
いくつかの抗体では、重鎖成熟可変領域は配列番号:10と指定されたアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、軽鎖成熟可変領域は配列番号:5または配列番号:3と指定されたアミノ酸配列を有する。いくつかのそのような抗体では、重鎖成熟可変領域は配列番号:10と指定されたアミノ酸配列を有し、軽鎖成熟可変領域は配列番号:5または配列番号:3と指定されたアミノ酸配列を有する。いくつかのそのような抗体では、重鎖成熟可変領域は配列番号:10と指定されたアミノ酸配列を有し、軽鎖成熟可変領域は配列番号:5と指定されたアミノ酸配列を有する。
【0083】
他のアミノ酸置換が成熟可変領域フレームワークで、例えば、CDRと接触していない残基において生成され得る。しばしば、バリアントヒト化配列において生成される置換は、置換されるアミノ酸に対して保存的である。いくつかの抗体では、Hu9E4VLv1−v3およびHu9E4VHv1−v4に対する置換(保存的であるかないかに関係なく)は、Hu9E4VLv1−v3およびHu9E4VHv1−v4に対する得られた抗体の結合親和性または効力、すなわち、そのヒトαシヌクレインに結合する能力に実質的な効果を有さない。
【0084】
バリアントは典型的にはHu9E4VLv1−v3およびHu9E4VHv1−v4の重鎖および軽鎖成熟可変領域配列と、少数(例えば、典型的には、軽鎖または重鎖成熟可変領域フレームワークのいずれか、または両方において、1、2、3、5または10以下)の置換、欠失または挿入だけ異なる。
【0085】
以下で記載される製剤は、以上で、または配列表においてまたは出願のどこかで記載されるヒト化9E4鎖のいずれかを、ヒトαシヌクレインに特異的に結合するヒト化9E4抗体を形成する軽鎖および重鎖の任意の組み合わせで含んでよい。
【0086】
C.キメラおよびベニヤ化抗体
発明はさらに、非ヒト抗体、特に9E4のキメラおよびベニヤ化形態を提供する。
【0087】
キメラ抗体は非ヒト抗体(例えば、マウス)の軽鎖および重鎖の成熟可変領域が異なる種の抗体由来の軽鎖および重鎖定常領域と組み合わされた抗体である。典型的には、軽鎖および重鎖定常領域はヒト起源であるが、定常領域は必要に応じ(例えば、適切な動物モデルでの非ヒト抗体の試験を容易にするため)、異なる非ヒト種、例えばラットを起源としてよい。そのような抗体は実質的にまたは完全に、可変領域を供給する非ヒト(例えば、マウス)抗体の結合特異性を保持し、約3分の2ヒト(または異なる非ヒト種)配列である。
【0088】
ベニヤ化抗体は、非ヒト抗体のいくらかの、および通常全てのCDRならびに非ヒト可変領域フレームワーク残基のいくらかを保持するが、B−またはT−細胞エピトープに寄与し得る他の可変領域フレームワーク残基、例えば露出残基(Padlan, Mol. Immunol. 28:489, 1991)をヒト抗体配列の対応する位置由来の残基と置き換えたヒト化抗体の型である。結果として、CDRが完全にまたは実質的に非ヒト抗体由来であり、非ヒト抗体の可変領域フレームワークが置換により、よりヒト様とされる抗体が得られる。9E4のベニヤ化形態は発明に含まれる。
【0089】
D.定常領域の選択
キメラ、ベニヤ化またはヒト化抗体の重鎖および軽鎖可変領域は、ヒト定常領域の少なくとも一部に連結させることができる。定常領域の選択は、一部には、抗体依存性細胞介在型細胞傷害、抗体依存性細胞食作用および/または補体依存性細胞傷害が所望されるかどうかに依存する。例えば、ヒト同位体IgG1およびIgG3は補体依存性細胞傷害性を有し、ヒトアイソタイプIgG2およびIgG4は有さない。ヒトIgG1およびIgG3はまた、ヒトIgG2およびIgG4よりも強い細胞媒介性エフェクター機能を誘導する。軽鎖定常領域はλまたはκであってよい。例示的なヒト軽鎖κ定常領域は配列番号:13のアミノ酸配列を有する。いくつかのそのような軽鎖κ定常領域は、核酸配列によりコードされてよい。配列番号:13のN末端アルギニンは省略でき、この場合、軽鎖κ定常領域は配列番号:28のアミノ酸配列を有する。いくつかのそのような軽鎖κ定常領域は、核酸配列によりコードされてよい。例示的なヒトIgG1重鎖定常領域は、配列番号:14のアミノ酸配列(C末端リジンありまたはなし)または配列番号:31の重鎖定常領域成分を有する。いくつかのそのような重鎖定常領域は、核酸配列によりコードされてよい。抗体は、2本の軽鎖および2本の重鎖を含む四量体として、別々の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvとして、または重鎖および軽鎖成熟可変ドメインがスペーサーにより連結される単鎖抗体として発現させることができる。
【0090】
ヒト定常領域は、異なる個体間でアロタイプバリエーションおよびイソアロタイプバリエーションを示し、すなわち、定常領域は異なる個体において、1つ以上の多型位置で異なり得る。イソアロタイプは、イソアロタイプを認識する血清が1つ以上の他のアイソタイプの非多型領域に結合するという点でアロタイプとは異なる。よって、例えば、別の重鎖定常領域は、IgG1 G1m3アロタイプであり、配列番号:32の定常領域をコードするアミノ酸配列を有する。別の重鎖定常領域は配列番号:33のアミノ酸配列を有する。さらに別の重鎖定常領域は、C末端リジンを欠いていることを除き、配列番号:32の定常領域(content region)をコードするアミノ酸配列を有する。さらに別の重鎖定常領域はC末端リジンを欠いていることを除き、配列番号:33のアミノ酸配列を有する。
【0091】
軽鎖および/または重鎖のアミノまたはカルボキシ末端での1つのまたはいくつかのアミノ酸、例えば重鎖のC末端リジンは、分子の一部または全てにおいて欠損してもよく、誘導体化されてもよい。置換は定常領域において、エフェクター機能、例えば補体媒介性細胞傷害またはADCCを低減または増加させるために(例えば、Winterら、米国特許第5,624,821号;Tsoら、米国特許第5,834,597号;ならびにLazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:4005, 2006を参照されたい)、またはヒトにおける半減期を長くするために(例えば、Hinton et al., J. Biol. Chem. 279:6213, 2004を参照されたい)なされてよい。例示的な置換としては、抗体の半減期を増加させるための、位置250でのGlnおよび/または位置428でのLeu(EU番号付けがこの段落において定常領域に対して使用される)が挙げられる。位置234、235、236および/または237のいずれかでまたは全てでの置換はFcγ受容体、特にFcγRI受容体に対する親和性を低減させる(例えば、US6,624,821号を参照されたい)。いくつかの抗体は、エフェクター機能を低減するために、ヒトIgG1の位置234、235および237でのアラニン置換を有する。任意で、ヒトIgG2における位置234、236および/または237はアラニンで置換され、位置235はグルタミンで置換される(例えば、US5,624,821号を参照されたい)。
【0092】
E.組換え抗体の発現
抗体は組換え発現により生成させることができる。抗体をコードする核酸は、所望の細胞型(例えば、CHOまたはSp2/0)における発現のためにコドンが最適化されていてよい。組換え核酸コンストラクトは典型的には、抗体鎖のコード配列に作動可能に連結される発現制御配列を含み、天然に関連するまたは異種のプロモーター領域を含む。発現制御配列は、真核生物宿主細胞をトランスフォームまたはトランスフェクトできるベクターにおける真核生物プロモーター系であってよい。ベクターが適切な宿主に組み込まれたら、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベル発現、および交差反応抗体の収集および精製に好適な条件下で維持される。抗体鎖をコードする1つまたは複数のベクターはまた、抗体鎖をコードする核酸のコピー数の増幅を可能にするために選択できる遺伝子、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼを含んでよい。
【0093】
大腸菌は抗体、特に抗体フラグメントを発現させるのに特に有用な原核生物宿主である。微生物、例えば酵母もまた、発現に有用である。サッカロマイセスは好ましい酵母宿主であり、要望通りに発現制御配列、複製開始点、終止配列などを有する好適なベクターがある。典型的なプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の解糖酵素を含む。誘導性酵母プロモーターは、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロムC、およびマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素からのプロモーターを含む。
【0094】
哺乳類細胞は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチドセグメントを発現させるために使用できる。Winnacker, From Genes to Clones, (VCH Publishers, NY, 1987)を参照されたい。無傷の異種タンパク質を分泌できる多くの好適な宿主細胞株が当技術分野において開発されており、CHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、HEK293細胞、L細胞、ならびにSp2/0およびNS0を含む非抗体産生骨髄腫が含まれる。非ヒト細胞を使用することは有利であり得る。これらの細胞に対する発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、エンハンサー(Queen et al., Immunol. Rev. 89:49 (1986))、および必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列を含んでよい。好適な発現制御配列は内在性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、などに由来するプロモーターである。Co et al., J. Immunol. 148:1149 (1992)を参照されたい。
【0095】
抗体重鎖および軽鎖をコードするベクター(複数可)を細胞培養物に導入して、細胞プールを、無血清培地で増殖生産性および生成物品質についてスクリーニングできる。最高産生細胞プールをその後、FACSに基づく単細胞クローニングに供してモノクローナル系を生成させてもよい。50pgまたは100pg/細胞/日を超える特定生産性は、7.5g/L培養物を超える生成物力価に対応し、有利であり得る。単細胞クローンにより産生される抗体はまた、濁度、濾過特性、PAGE、IEF、UV走査、HP−SEC、炭水化物−オリゴ糖マッピング、質量分析、および結合(bining)アッセイ、例えばELISAまたはBiacoreについて試験できる。選択されたクローンはその後、複数のバイアル中で貯蔵され、その後の使用のために凍結保存され得る。
【0096】
発現されるとすぐに、抗体は、プロテインA捕獲、カラムクロマトグラフィー(例えば、疎水性相互作用またはイオン交換)、ウイルス不活性化のための低pHなどを含む当技術分野の標準手順により精製され得る(一般に、Scopes, Protein Purification (Springer−Verlag, NY, 1982)を参照されたい)。
【0097】
抗体の商業的生産のための方法は、コドン最適化、プロモーター、転写要素、およびターミネーターの選択、無血清単細胞クローニング、細胞バンキング、コピー数の増幅のための選択マーカーの使用、CHOターミネーター、無血清単細胞クローニング、タンパク質力価の改善を含む(例えば、US5,786,464号、US6,114,148号、US6,063,598号、US7,569,339号、WO2004/050884号、WO2008/012142号、WO2008/012142号、WO2005/019442号、WO2008/107388号、およびWO2009/027471、およびUS5,888,809号を参照されたい)。
【0098】
V.核酸
発明はさらに、以上で記載される重鎖および軽鎖のいずれかをコードする核酸を提供する。典型的には、核酸はまた、成熟重鎖および軽鎖に融合されるシグナルペプチド(例えば、配列番号:23および25によりコードできる配列番号:22および24のアミノ酸配列を有するシグナルペプチド)もコードする。核酸上のコード配列は、コード配列の発現を確実にするための調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナルなどと動作可能に連結されていてよい。重鎖および軽鎖をコードする核酸は、単離された形態で存在してよく、または1つ以上のベクター中にクローニングされ得る。核酸は、例えば、重複オリゴヌクレオチドの固体合成またはPCRにより合成され得る。重鎖および軽鎖をコードする核酸は、1つの連続的な核酸として、例えば、一つの発現ベクター内で連結されていてよく、または別々であってよく、例えば、それぞれがそれ自体の発現ベクター中にクローニングされ得る。
【0099】
VI.治療応用
発明は、そのような疾患を患う、またはそのリスクがある患者において、レビー小体病を治療するまたはその予防を実施するいくつかの方法を提供する。治療に適している患者は、LBDの疾患のリスクがあるが症状を示さない個体、ならびに現在、シヌクレイン病の症状または初期警告徴候、例えば、EEG緩徐化、精神神経症状(うつ病、認知症、幻覚、不安、感情鈍麻、快感消失)、自律神経系の変化(起立性低血圧、膀胱障害、便秘、便失禁、流涎症、嚥下障害、性機能障害、脳血流の変化)、感覚的変化(嗅覚、疼痛、色識別知覚異常)、睡眠障害(レム睡眠行動障害(RBD)、下肢静止不能症候群/周期性四肢運動、過眠症、不眠)ならびに種々の他の徴候および症状(疲労、複視、霧視、脂漏、体重減少/増加)を示す患者を含む。よって、本方法は、LBDの既知の遺伝的リスクを有する個体に予防的に投与できる。そのような個体としては、この疾患を経験した近親者を有するもの、およびそのリスクが遺伝的または生化学的マーカーの分析により決定されているものが挙げられる。PDに対するリスクの遺伝子マーカーは、αシヌクレインまたはパーキン、UCHLI、およびCYP2D6遺伝子における突然変異;特にαシヌクレイン遺伝子の位置30および53での突然変異を含む。現在、パーキンソン病を患う個体は、静止時振戦、筋強剛、動作緩慢および姿勢不安定を含むその臨床症状から認識できる。
【0100】
無症候性患者では、治療は任意の年齢で(例えば、10、20、30)開始できる。通常、しかしながら、患者が40、50、60または70に到達するまで治療を始める必要はない。治療は典型的には、ある期間にわたって複数回投与を必要とする。治療は、抗体、または治療薬(例えば、αシヌクレインペプチドの切断型)に対する活性化されたT−細胞またはB−細胞応答を時間と共にアッセイすることによりモニタできる。応答が降下すると、ブースター投与が示唆される。
【0101】
抗体は、患者における有益な治療反応(例えば、患者における神経突起および/または軸索αシヌクレイン凝集物の低減、神経炎性ジストロフィーの低減、認知機能の改善、および/または認知低下の逆転、治療または防止)を生成させる条件下での投与により、患者においてレビー小体病を治療する、またはその予防を実施するために使用できる。いくつかの方法では、新皮質および/または基底核のニューロピルにおける神経炎性ジストロフィーの面積は、対照集団に比べ治療患者では、平均して少なくとも10%、20%、30%、または40%だけ低減させることができる。
【0102】
認知障害、認知機能の進行性の低下、脳形態の変化、および脳血管機能の変化は、レビー小体病を患う、またはそのリスクがある患者で一般に観察される。本抗体の投与は、そのような患者において認知機能の低下を阻止または遅延させることができる。
【0103】
発明はまた、シナプス密度および/または樹状突起(dentritic)密度を保存または増加させる方法を提供する。シナプスまたは樹状突起(dentritic)密度の変化指数は、シナプス形成(シナプトフィジン)および/または樹状突起(MAP2)のマーカーにより測定できる。いくつかの方法では、シナプスまたは樹状突起(dentritic)密度は、健康な被験体におけるシナプスまたは樹状突起(dentritic)密度のレベルまで回復させることができる。いくつかの方法では、治療患者におけるシナプスまたは樹状突起(dentritic)密度の平均レベルは、未治療対照患者の集団と比べて、5%、10%、15%、20%、25%、30%またはそれを超えて上昇させることができる。
【0104】
VII.治療方法
予防的適用では、抗体または抗体を誘導するための薬剤またはこれを含む製剤が、疾患にかかりやすい、またはそのリスクがある患者に、リスクを低減し、重症度を軽減し、または疾患の少なくとも1つの徴候または症状の発症を遅延するのに有効なレジーム(投与の用量、頻度および経路)で投与される。いくつかの予防的適用では、レジームは、脳内でのαシヌクレインおよび切断フラグメントの蓄積を阻止または遅延する、および/またはその毒性効果を阻止または遅延するおよび/または行動の欠陥の発症を阻止/または遅延するのに有効である。治療的適用では、抗体または抗体を誘導するための薬剤が、レビー小体病の疑いがある、またはすでにこれを患う患者に、疾患の少なくとも1つの徴候または症状を寛解させるまたはそのさらなる悪化を少なくとも阻止するのに有効なレジーム(投与の用量、頻度および経路)で投与される。いくつかの治療的な適用では、レジームは、αシヌクレインおよび切断フラグメントのレベル、関連する毒性および/または行動の欠陥を低減するかそのさらなる増加を少なくとも阻止するのに有効である。
【0105】
レジームは、個々の治療患者が、発明の方法により治療されていない同等患者の対照集団の平均転帰よりも好ましい転帰を達成した場合、または、より好ましい転帰が対照臨床試験(例えば、第II相、第II/III相または第III相試験)において治療患者対対照患者において、p<0.05または0.01またはさらに0.001レベルで証明された場合、治療的にまたは予防的に有効であると考えられる。
【0106】
有効な用量は多くの異なる因子によって変動し、因子としては投与手段、標的部位、患者の生理的状態、例えばレビー小体病の型、患者がApoEキャリアかどうか、患者がヒトか動物か、投与された他の薬剤、および治療が予防的か治療的か、が挙げられる。
【0107】
抗体の例示的な投与量範囲は約0.1〜50mg/kg患者体重である。抗体は、そのような用量で毎日、一日置きに、毎週、2週間ごとに、毎月、年4回、毎年または実験分析により決定される任意の他のスケジュールに従い、投与できる。例示的な治療は、複数回投与での、例えば、少なくとも6ヶ月の長期間にわたる投与を必要とする。追加の例示的な治療レジームは、2週間毎に1回または1ヶ月に1回または3〜6ヶ月毎に1回の投与を必要とする。
【0108】
抗体は末梢経路を介して投与でき、(すなわち、投与された抗体は血液脳関門を横切り、脳内の対象部位に到達する。投与経路は局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、くも膜下腔内、腹腔内、鼻腔内または筋肉内を含む。抗体の投与のためのいくつかの経路は静脈内および皮下である。この型の注射は最も典型的には、腕または脚筋肉内で実施される。いくつかの方法では、薬剤は、沈着物が蓄積した特定の組織中に直接注射され、例えば頭蓋内注射である。
【0109】
本レジームは、治療される疾患の治療または予防において有効な別の薬剤と組み合わせて投与できる。例えば、パーキンソン病の場合、αシヌクレインに対する免疫療法WO/2008/103472号、レボドパ、ベンザセリド、カルビドパ、ドーパミンアゴニスト、非麦角系ドーパミンアゴニスト、カテコール−O−メチル(「COMT」)阻害剤、例えば、例として、エンタカポン(entacopone)またはトルカポン(tolcopone)、モノアミンオキシダーゼ(「MAO」)阻害剤、例えば、例として、ラサギリン(rasagaline)、アマンタジン、または抗コリン薬が本レジームと組み合わせて使用できる。
【0110】
有効投与量の、以下でより詳細に記載される医薬製剤のいずれかは、シヌクレイン病を有する、またはそのリスクがあるヒト患者を治療的にまたは予防的に処置するために投与できる。以下で記載される製剤のいくつかは、患者への静脈内投与、例えば4週毎の投与に好適な注入バッグに添加できる。患者の中には、パーキンソン病と診断されている者もいる。本明細書で記載される製剤は、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約10mg/kgまたは約30mg/kgヒト化9E4原薬の用量で投与できる。何人かの患者においては、用量は、耐性、安全性、薬物動態、効力および経験的に決定できる他のパラメータに従い、さらに調整できる。
【0111】
VIII.製剤
発明の製剤(医薬組成物としても知られている)は抗体(例えば、マウス9E4(ATCC受入番号PTA−8221)のキメラ、ベニヤ化またはヒト化バージョン)またはその抗原結合性フラグメント、バッファー、1つ以上の糖および/またはポリオールおよび界面活性剤を含み、約5〜約7.5の範囲内のpHを有する。製剤は、液体形態または凍結乾燥形態で貯蔵するために調製できる。凍結乾燥形態で貯蔵される場合、製剤は、本明細書で記載される濃度および特性に、液体(例えば、滅菌水)を用いて再構成できる。凍結乾燥組成物が、水の添加により特定の成分濃度およびpHの製剤を生成するように再構成できると言われる場合、凍結乾燥製剤は単に水を添加するだけで(すなわち、追加の量の成分を供給したり、pHを変化させるために酸または塩基を添加したりせずに)、そのように再構成できることを意味する。凍結乾燥される前の(prelyophilized)液体製剤の濃度および特性はまた、凍結乾燥製剤が製剤凍結乾燥前と同じ体積に再構成される場合、以下で記載されるものと一致していてよい。体積が異なる場合、製剤の濃度は比例的に調整されなければならない。例えば、再構成される体積が凍結乾燥前体積の半分である場合、凍結乾燥前製剤中の成分の濃度は再構成される製剤中の濃度の半分であるはずである。
【0112】
任意で、CHO細胞培養から精製された9E4抗体を以下で記載されるように製剤中に再懸濁し、凍結乾燥前貯蔵の間一時的に凍結し、凍結乾燥し、凍結乾燥前と同じ濃度へと水で再構成する。そのような製剤は好ましくは、凍結、凍結乾燥、貯蔵、および再構成を通して抗体を安定化しなければならず、ならびに、非経口投与に好適である。例示的なワークフローでは、精製抗体は約40mg/mlで製剤3(表10)中に再懸濁され、−40℃でバッグ内で凍結保存される。バッグは室温で3時間解凍され、内容物がプールされる。製剤は0.2ミクロン滅菌濾過器(sterile filer)を通して滅菌濾過される。バイアルに5.4mlの製剤を充填し、凍結乾燥する。凍結乾燥したバイアルを2−8℃で貯蔵する。凍結乾燥したバイアルを、滅菌水(例えば、製剤によって、およそ5.0〜5.4mlの滅菌水)を添加することにより再構成する。5mlの再構成した製品をその後、患者への静脈内注入のための20−100mlの生理食塩水、乳酸リンゲル液、または5%デキストロース溶液などを含むIVバッグの出入り口に添加する。
【0113】
いくつかの製剤は増量剤を含み、これは、糖/ポリオール成分と同じであってもよく、またはそうでなくてもよい。典型的には、製剤は、例えば、0.2μmまたは0.22μmフィルタを用いた除菌により達成されるように、無菌である。いくつかの製剤は≦約3CFU/30mLのバイオバーデンを有する。いくつかの製剤は≦約0.1EU/mgの細菌エンドトキシンを含む。発明の製剤はまた一般に、以下でさらに規定されるように、凍結解凍に際しフラグメント化および/または凝集が低い〜検出不能なレベルで安定している。さらに他の製剤は凍結乾燥したケーキの再構成後、少なくとも3ヶ月間、摂氏40度で安定である。いくつかの製剤では、抗体の約10%未満が製剤中で凝集物として存在する。いくつかの製剤では、抗体の約5%以下が製剤中で凝集物として存在する。
【0114】
いくつかの製剤では、抗体は、約5mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で存在する。いくつかの製剤では、抗体は、約5mg/mL〜約50mg/mLの範囲内の濃度で存在する。いくつかの製剤では、抗体は、約25mg/mL〜約50mg/mLの範囲内の濃度で存在する。例えば、抗体は約35−45mg/mlまたは約40mg/mLの濃度で存在し得る。抗体は、約50mg/バイアル〜約500mg/バイアルの、またはそれを超える量の無菌液体剤形で存在し得る。抗体は、約40mg/バイアル〜約500mg/バイアルの凍結乾燥剤形で存在し得る。例えば、抗体は、約250−350mg/バイアルまたは約200mg/バイアルの無菌液体または凍結乾燥剤形で存在し得る。
【0115】
開示される製剤中で使用される抗体は、治療的部分、例えば細胞傷害性薬物、放射線治療薬、免疫調節物質、二次抗体(例えば、抗体ヘテロコンジュゲートを形成するため)、または製剤化された抗体(例えば、キメラ、ベニヤ化またはヒト化9E4)の活性を促進または増強する任意の他の生物活性剤と結合させてよい。代表的な治療的部分としては、レビー小体病またはシヌクレイン病の症状の治療、管理、または寛解に有用であることが知られている薬剤が挙げられる。
【0116】
製剤化された抗体は以上で記載される抗体9E4のキメラ、ベニヤ化またはヒト化バージョンのいずれかを含んでよい。例えば、抗体は、配列番号:4の3つのKabat CDRを含む軽鎖可変領域および配列番号:11の3つのKabat CDRを含む重鎖可変領域を含んでよい。製剤は配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5のいずれか1つ含むアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および/または配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、または配列番号:11のいずれか1つを含むアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体を含有してよい。いくつかの製剤は配列番号:5を含むアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体を含有する。いくつかの製剤は、配列番号:10を含むアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体を含有する。例えば、製剤化された抗体は配列番号:5を含むアミノ酸配列を有する軽鎖および配列番号:10を含むアミノ酸配列を有する重鎖を含んでよい。
【0117】
バッファー、例えば、例として、ヒスチジン、コハク酸塩、およびクエン酸塩バッファーが、抗体に対して好適なpHを達成するために、開示される製剤で使用される。いくつかの製剤は約5.5〜約7の範囲内のpH、例えば、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7.0のpHを有する。いくつかの製剤は、約5.5〜約6.5の間のpHを有する。いくつかの製剤は約6.0のpHを有し、他の製剤は約6.5のpHを有する。いくつかの製剤では、クエン酸塩バッファーまたはコハク酸塩バッファーは約10mM〜約30mMの範囲内の濃度で、例えば、約15−25mMまたは約20mMの濃度で存在する。いくつかのクエン酸塩バッファーは、クエン酸ナトリウム無水物およびクエン酸一水和物を、それぞれ、約15mM〜約20mMの範囲内および約2mM〜約6mMの範囲内の濃度で含む。
【0118】
製剤のための好適な糖および/またはポリオールとしては、トレハロース、スクロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。糖/ポリオールは、増量剤、凍結保護剤(lyoprotecting agent)、および/または張度調整剤として機能する。例えば、いくつかの製剤は、約220mM〜約260mMの範囲内の濃度で存在するトレハロース、約220mM〜約260mMの範囲内の濃度で存在するスクロース、または約20mM〜約40mMの範囲内の濃度で存在するスクロースおよび約200mM〜約220mMの範囲内の濃度で存在するマンニトールの混合物を含む。いくつかの製剤は約230mMまたは240mMの濃度で存在するトレハロースを含む。他の製剤は約230mMまたは240mMの濃度で存在するスクロースを含む。他の製剤は、約50mMの濃度で存在するスクロースおよび約200mMの濃度で存在するマンニトールの混合物を含む。別の製剤は、約28mMの濃度で存在するスクロースおよび約212mMの濃度で存在するマンニトールの混合物を含む。いくつかのそのような製剤は約250−400、300−400、または300−350mOsm/kgの範囲の浸透圧、例えば、335mOsm/kgなどにより特徴付けられる。
【0119】
製剤は好ましくは、抗体の凝集および表面への吸収を低減するために界面活性剤を含む。好適な界面活性剤としては、約0.005重量%〜約0.05重量%の範囲内の濃度で存在するポリソルベート20(PS20)が挙げられる。PS20は、そうでなければ9E4抗体の製剤中で起こるであろう凝集または濁度の著しい増加に対して保護する。ポリソルベート20は約0.01%〜約0.05%の範囲内の濃度で存在し得る。例えば、濃度は0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、または0.05%であってよい。あるいは、いくつかの製剤では、ポリソルベート20は、約0.05g/L、0.1g/L、0.15g/L、0.2g/L、0.25g/L、0.3g/L、0.35g/L、0.4g/L、0.45g/L、または0.5g/Lの範囲内の濃度で存在する。いくつかの製剤は、ポリソルベート20を0.2g/Lの濃度(すなわち、0.163mmol/L)で含む。
【0120】
例示的な製剤(液体、凍結乾燥前または凍結乾燥後再構成される)は、約5.5〜約7の範囲内のpHにより特徴付けられ、下記を含む:(a)約10mg/ml〜約50mg/mlの範囲内の濃度での、抗体9E4のキメラ、ベニヤ化、またはヒト化バージョン、または抗原への結合に関し9E4と特異的に競合するそのフラグメント;(b)約10mM〜約30mMの範囲内の濃度で存在するクエン酸塩バッファーまたはコハク酸塩バッファー;(c)約220mM〜約260mMの範囲内の濃度で存在するトレハロース、約220mM〜約260mMの範囲内の濃度で存在するスクロース、および約20mM〜約40mMの範囲内の濃度で存在するスクロースおよび約200mM〜約220mMの範囲内の濃度で存在するマンニトールの混合物から選択される1つ以上の糖およびポリオール(「糖/ポリオール」);ならびに(d)約0.005重量%〜約0.05重量%の範囲内の濃度で存在するポリソルベート20。例えば、製剤は、下記を含んでよい:(a)配列番号:29として明記されるアミノ酸配列を有する軽鎖および配列番号:32として明記されるアミノ酸配列を含む重鎖(C末端リジンありまたはなし)を含み、約40mg/mLの濃度で存在する抗体;(b)約20mMの濃度でのクエン酸塩バッファー;(c)約230mMの濃度でのトレハロース;(d)約0.02%の濃度でのポリソルベート20;ならびに約6.0のpH。
【0121】
いくつかの凍結乾燥製剤は下記を含む:(a)抗体9E4のヒト化バージョンまたはその抗原結合性フラグメント;(b)クエン酸塩;(c)トレハロース;ならびにポリソルベート20。凍結乾燥製剤は約200mgの抗体を含んでよい。いくつかの凍結乾燥製剤は、滅菌水で再構成させることができる。いくつかの凍結乾燥製剤は100−300または150−250mgの9E4抗体、15−35または20−25mgのクエン酸ナトリウム無水物、1.65−2.75または2−2.3mgのクエン酸一水和物、360−500または400−470mgのトレハロース無水物、および0.5〜1.5mgまたは0.75〜1.25mgのポリソルベート20を含む。例示的な凍結乾燥製剤は200mgの9E4抗体(例えば、ヒト化9E4抗体)、25mgのクエン酸ナトリウム無水物、2.15mgのクエン酸一水和物、435mgのトレハロース無水物、および1mgのポリソルベート20を含む。別の例示的な凍結乾燥製剤は200mgの9E4抗体(例えば、ヒト化9E4抗体)、25mgのクエン酸ナトリウム無水物、3.15mgのクエン酸一水和物、435mgのトレハロース無水物、および1mgのポリソルベート20を含む。そのような製剤は、好ましくは約5mlの体積に再構成される。他の凍結乾燥製剤は同じ成分をこの段落で開示されるいずかと同じ割合で、しかし異なる量で含む(例えば、400mgの抗体、50mgのクエン酸ナトリウム、4.3mgのクエン酸一水和物、870mgのトレハロース無水物、および2mgのポリソルベート20)。
【0122】
凍結乾燥製剤は、好ましくは、約30−50または35−45mg/mL、好ましくは約40mg/mLの抗体濃度;(b)約10−30または15−25mM、好ましくは約20mMの濃度で存在するクエン酸塩バッファー;(c)約160−330または200−260mM、好ましくは約230mMの濃度で存在するトレハロース;(d)約0.1−0.3または0.15〜0.25g/L、好ましくは約0.2g/Lの濃度で存在するポリソルベート20;ならびに(e)約5.5−6.5、好ましくは約6.0のpHに、再構成される。
【0123】
液体または再構成された凍結乾燥製剤は、好ましくは実質的に等張であり、約250−350mOsm/kg水の浸透圧を意味する。いくつかの製剤は、約335mOsm/kgの浸透圧を有する。いくつかの製剤は、270−300mOsm/kgの浸透圧を有する。液体または再構成された凍結乾燥製剤はまた、高浸透圧性>350mOsm/kg水または低浸透圧性(<250mOsm/kg水)であってよい。
【0124】
いくつかの凍結乾燥製剤は、白色から黄色がかった粉末に見える。いくつかの液体または再構成された凍結乾燥製剤は、実際には異物を含まない溶液に見え、少数の半透明、白色から白みがかった製品に典型的な粒子を含み得る。いくつかの液体または再構成された凍結乾燥製剤は、≦約6,000の顕微鏡でないと見えない粒子≧10μm/バイアル(体積=5ml)および/または≦約600の顕微鏡でないと見えない粒子≧25μm/バイアルを含む。いくつかの液体または再構成された凍結乾燥製剤は、無色から淡黄色に見える(≦参照溶液BY3)。いくつかの液体または再構成された凍結乾燥製剤は、透明からわずかに乳白色に見える(≦参照懸濁液III)。
【0125】
記載される製剤のいずれも、本明細書で成分であると記載されるもの以外の、医薬賦形剤、担体などなしで製造できる。そのような製剤は、列挙された成分で構成され、または、製剤の特性に影響しないわずかな量の他の成分が存在する場合、列挙された成分で本質的に構成されると記載できる。製剤は、好ましくはヒトに投与するための薬物の調製のためにFDAにより認可されたまたは承認可能な適正製造基準(GMP)下で製造される。
【0126】
開示される製剤で使用される抗体はまた、例えば、シヌクレイン病を診断する、シヌクレイン病の進行をモニタする、および/または治療の効力を評価するのに有用な検出可能な標識と結合されてよい。記載されるように製剤化された抗体は、シヌクレイン病、例えばパーキンソン病を有するまたはこれにかかりやすい被験体における、またはそのような被験体から得られる適切な生体試料におけるそのような決定を実施するのに特に有用である。ヒト化9E4抗体に結合または連結させることができる代表的な検出可能な標識としては、下記が挙げられる:様々な酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えばストレプトアビジンビオチン(streptavidinlbiotin)およびアビジン/ビオチン;蛍光材料、例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocynate)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリン;発光材料、例えばルミノール;生物発光材料、例えばルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン;放射性材料、例えば限定はされないがヨウ素(
131I、
125I、
123I、
121I)、炭素(
14C)、硫黄(
5S)、トリチウム(
3H)、インジウム(
115In、
113In、
112In、
111In)、およびテクネチウム(
99Tc)、タリウム(
201Ti)、ガリウム(
68Ga、
67Ga)、パラジウム(
103Pd)、モリブデン(
99Mo)、キセノン(
133Xe)、フッ素(
18F)、
153Sm、
177Lu、
159Gd、
149Pm、
140La、
175Yb、
166Ho、
90Y、
47Sc、
186Re、
188Re、
142Pr、
105Rh、
97Ru、
68Ge、
57Co、
65Zn、
85Sr、
32P、
153Gd、
169Yb、
51Cr、
54Mn、
75Se、
113Sn、および
117Tin;様々なポジトロン断層撮影を使用するポジトロン放出金属、非放射性常磁性金属イオン、および放射標識されたまたは特定の放射性同位体にコンジュゲートされた分子。
【0127】
治療的部分および/または検出可能な物質はマウス、キメラ、ベニヤ化、またはヒト化9E4抗体に直接、または間接的に、中間物(例えば、リンカー)を介して、当技術分野で知られている技術を使用して結合またはコンジュゲートされる。例えば、Arnon et al., ‘‘Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therap’’, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243−56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., ‘‘Antibodies For Drug Delivery’’, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623−53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, ‘‘Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review’’, in Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475−506 (1985); ‘‘Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy’’, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303−16 (Academic Press 1985)、およびThorpe et al., Immunol. Rev., 1982, 62:119−58を参照されたい。
【0128】
開示される製剤で使用される抗体はまた、マウス、キメラ、ベニヤ化、またはヒト化9E4抗体の修飾形態を含み、これらは、対応する未修飾抗体に比べ増加したインビボ半減期を有する。そのような修飾形態は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合により調製できる。1つの例として、抗体半減期延長のための代表的な方法はWO02/060919号において記載される。
【0129】
本発明は、少なくとも約30日間38℃−42℃で安定である(例えば、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により評価される)抗体製剤、20℃−24℃で少なくとも約1年間安定性を有する製剤、および2℃−4℃で少なくとも約3年間安定性を有する製剤を包含する。凍結乾燥製剤の安定性は、凍結乾燥状態での貯蔵に関して評価される。製剤は、時間および温度のこれらの特定の組み合わせの1つ以上でのインキュベーション後に、低い〜検出不能のフラグメント化および/または低い〜検出不能の凝集として下記定義を満たす場合、安定であると考えられる。より特定的には、開示される製剤は低い〜検出不能レベルの抗体凝集および/またはフラグメント化、または抗体フラグメント化および/または凝集において初期レベルを超える低いまたは検出不能な増加(例えば、約10%未満の凝集)を示す。いくつかの製剤は、≦約5%の合わせた凝集および/またはフラグメント化を示す。低い〜検出不能レベルのフラグメント化を有する製剤は、総タンパク質の少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%を、例えば、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により決定すると単一ピークに、または還元型キャピラリーゲル電気泳動(rCGE)により2つのピーク(1つが、抗体重鎖および抗体軽鎖の各々に対応する)に含み、分解されていない抗体を表し、かつ、それぞれ5%を超える、4%を超える、3%を超える、2%を超える、1%を超える、または0.5%を超える総タンパク質を有する他の単一ピークを含まない。低い〜検出不能レベルの凝集を有する製剤は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により測定すると、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、または約0.5重量%以下の凝集タンパク質を含む。例えば、いくつかの製剤では、抗シヌクレイン抗体の約10%未満が凝集物として存在する。発明の安定な製剤はまた、キメラ、ベニヤ化またはヒト化9E4の生物活性(複数可)をほとんど、または全く損失しておらず、例えば、ELISAおよび/または追加の機能アッセイにより測定可能な結合親和性を有し、これは、初期の測定可能値の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%である。いくつかの製剤は、参照材料の初期の測定可能値の約60%〜約140%である結合親和性を有する。
【0130】
IX.医薬製剤の調製
本発明はまた、医薬製剤を調製する方法を提供する。発明の1つの態様では、そのような方法は下記を含む:(a)細胞が抗体を細胞培地中に分泌するように、それらのゲノムに、マウス抗体9E4(ATCC受入番号PTA−8221)の軽鎖および重鎖、またはそのキメラ、ベニヤ化、またはヒト化バージョンをコードする核酸を安定に組み込んだ哺乳類細胞を培養すること、;(b)抗体を細胞培地から精製すること;ならびに(c)以上で記載される製剤のいずれかを調製すること。
【0131】
医薬製剤の調製は、物理的安定性、化学的安定性、および生物活性からなる群より選択される、製剤中の抗体の少なくとも1つの特性を評価する追加の工程を含んでよい。
【0132】
例えば、哺乳類細胞は抗体の産生のために培養でき、ここで、哺乳類細胞は、それらのゲノムに、ヒト化9E4抗体の軽鎖および重鎖をコードする核酸を安定に組み込んでいる。この目的のために有用な哺乳類細胞は、それらのゲノムに配列番号:29として明記される抗体軽鎖および配列番号:31または32として明記される抗体重鎖をコードする核酸配列を安定に組み込んでいる宿主細胞を含む。
【0133】
抗体の産生のために、開示される核酸はベクター中に含まれる。いくつかの実施例では、ベクターは、宿主細胞においてDNAの発現を引き起こすことができる好適な制御配列に作動可能に連結される、マウス9E4抗体、またはそのキメラ、ベニヤ化、またはヒト化バージョンをコードする核酸を含む。そのような制御配列は、転写を引き起こすプロモーター(例えば、当技術分野で知られている構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター)、そのような転写を制御する任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、および転写および翻訳の終了を制御するための配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子(例えば、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス、アデノ随伴−ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、ワクチニアウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルスおよびサイトメガロウイルスベクター)、または単純にゲノムインサートであってもよい。好適な宿主にトランスフォームされると、抗体核酸は宿主のゲノム中に組み込まれ、またはベクターは宿主ゲノムとは独立に複製して機能し得る。
【0134】
開示される核酸は、ベクターに単独で、または組み合わせて(例えば、抗体軽鎖をコードする核酸および抗体重鎖をコードする核酸の組み合わせ)含まれる。
【0135】
発明の抗体製剤を調製するために有用な宿主細胞としては哺乳類細胞が挙げられ、ヒト起源の細胞、ヒト胚性腎臓細胞、サル腎臓細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞、マウスセルトリ細胞、ヒト子宮頸癌(HeLa)細胞、イヌ腎臓細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝臓細胞、マウス乳房腫瘍細胞、およびNS0細胞が含まれる。
【0136】
あるいは、キメラ、ベニヤ化、またはヒト化9E4抗体は、化学合成により調製でき、その後、開示される製剤で使用できる。
【0137】
開示される製剤を調製するために使用される抗体は、典型的には単離または精製され、すなわち、細胞材料またはそれらが産生される細胞由来の他の混入タンパク質を実質的に含まず、または化学的に合成される場合、化学的前駆体または他の化学薬品を実質的に含まない。例えば、細胞材料を実質的に含まない抗体は約30%、25%、20%、15%、10%、8%、5%、2%、1%、0.5%、0.1%、またはそれ未満(乾燥重量による)より少ない混入タンパク質を有する抗体の調製物を含む。抗体が組換えで生成される場合、これはまた、培地を実質的に含まず、よって、培地は約30%、25%、20%、15%、10%、8%、5%、2%、1%、0.5%、0.1%、またはそれ未満より少ないタンパク質調製物の体積に相当する。抗体が化学合成により生成される場合、抗体は好ましくはタンパク質の合成に関与する化学的前駆体または他の化学薬品を実質的に含まず、またはこれらから分離されている。したがって、そのような抗体調製物は、約30%、25%、20%、15%、10%、8%、5%、2%、1%、0.5%、0.1%、またはそれ未満(乾燥重量による)より低い化学的前駆体または抗体原薬以外の化合物を有する。例えば、抗体原薬のいくつかの調製物は、下記アッセイにより決定される下記純度を有する:プロテインA ELISA(≦約25ng/mg)、CHOP ELISA(≦約100U
2/mg)、IGF−1 ELISA(≦約1ng/mg)、インスリン ELISA(≦約1ng/mg)、およびDNAqPCR(≦約3pg/mgタンパク質)。抗体原薬のいくつかの調製物は、≦約10CFU/mLのバイオバーデンを有する。抗体原薬のいくつかの調製物は、≦約0.5EU/mgの細菌エンドトキシンを含む。組換えで発現される抗体の精製は、当技術分野で知られている多くの方法のいずれか、例えば、例として、アフィニティークロマトグラフィー、酸処理、深層濾過、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、ナノ濾過、限外濾過、透析およびダイアフィルトレーションを利用できる。
【0138】
精製された抗体原薬は、本明細書で記載される製剤のいずれかを含む溶液に調整され、所望の濃度に希釈され、使える状態になるまで貯蔵され得る。任意で、製剤は使える状態になるまで濃縮形態で貯蔵できる。
【0139】
液体製剤は、それらの安定性プロファイルによって、凍結形態で、冷蔵下で、または室温で貯蔵でき、それは経験的に決定できる。場合によっては、さらなる濾過工程が適用される。本明細書で記載される製剤のいくつかは凍結乾燥され、粉末形態で貯蔵され得る。凍結乾燥製剤は、それらの安定性プロファイルによって、凍結形態、冷蔵下でまたは室温で貯蔵でき、それは経験的に決定できる。例えば、凍結乾燥製剤は、約2℃〜8℃の温度で貯蔵され得る。そのような場合、製剤は患者への投与前に再構成され、本明細書で記載される濃度で存在する抗体および賦形剤を有する液体製剤が得られる。場合によっては、製剤は滅菌水中で再構成される。場合によっては、製剤は再構成され、患者に投与するための注入バッグに添加される。再構成された製剤は、患者への投与前に、安定性プロファイルと一致する期間の間、冷蔵下でまたは室温で貯蔵され得る。凍結乾燥および再構成技術は当技術分野で知られており、実施例で記載される。
【0140】
液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤のいずれかは、患者に投与する前に、希釈剤、例えば生理食塩水またはリンゲル液を含む注入バッグに添加できる。注入バッグの体積は、液体製剤または構成された凍結乾燥製剤の体積(例えば、1−10ml)に比べて、通常比較的大きい(例えば、50ml〜1L、または100−500ml)。いくつかの液体、例えば生理食塩水、乳酸リンゲル液、または5%デキストロース溶液は注入バッグ中で使用でき、その各々は実質的に等張である。例示的なレジームでは、約5mlの液体または再構成された凍結乾燥製剤が生理食塩水の100−mlバッグの出入口を介して注射され、iv注入により、約1時間の期間にわたって約1.75ml/分の流速で投与される。
【0141】
このように、本発明はまた、凍結乾燥した抗体原薬ならびに再構成および使用のための説明書を含む医薬品を包含する。いくつかの医薬品は下記を含む:(a)約40〜約200mgの抗体を粉末形態で含むバイアル;ならびに(b)抗体の再構成のための説明書。例示的な医薬品は下記を含み:(a)粉末形態で、約200mgの抗体、約25mgのクエン酸ナトリウム無水物、約3.15mgのクエン酸一水和物、約435mgのトレハロース無水物および約1mgのポリソルベート20を含むバイアル;(b)再構成のための説明書;ならびに(c)注入のために再構成された製剤を調製するための説明書、ここで、(i)抗体は、配列番号:29として明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号:32として明記されるアミノ酸配列を含む重鎖(C末端リジンありまたはなし)を含み;ならびに(ii)再構成説明書は、5mLの抽出可能な体積への注射のための水を用いた再構成を要求する。
【0142】
実施例
下記実施例は、発明の形態を説明するために含められている。下記実施例のある一定の態様は、発明の実施において功を奏するように、本共同発明者により見出された、または企図された技術および手順の観点から記載される。本開示および当技術分野における一般レベルの技術を考慮すると、当業者は、下記実施例は例示にすぎないことが意図されること、ならびに多くの変更、改変、および修正が発明の範囲から逸脱せずに使用可能であることを認識する。
【0143】
実施例1:発現ベクターの調製
重鎖および軽鎖両方の可変領域のヒト化9E4特異配列(それぞれ、配列番号:32および29)を、高生産の強化を可能にする遺伝要素(例えば、転写増強エレメント(TS)、ポリアデニル化シグナル、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ変異体)を含む発現ベクターにサブクローニングした。
【0144】
プラスミドpCETHu9E4VLv3.hCKを鋳型として使用して、軽鎖の可変領域をPCRにより単離し、フラグメントの5’端にEcoRV制限部位および3’端にKpnI制限部位を導入し、同じ制限酵素で消化したベクターpBI−60およびpBI−90にサブクローニングした。これらのベクターはヒトκ鎖のゲノム定常領域を含んだ。加えて、ベクターpBI−60およびpBI−90は、選択中の高生産の強化のために、減弱された選択マーカーネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードする。pBI−60はネオマイシンホスホトランスフェラーゼのF240I変異体をコードし、ベクターpBI−90はD227V変異体をコードする。
【0145】
プラスミドpCETHu9E4VHv3.hlgG1を鋳型として使用して、ヒト化9E4重鎖の可変領域をPCRにより単離し、サブクローニングのために、5’端にMfeI制限部位および3’端にBlpI制限部位を導入した。可変領域を、G1m(3)アロタイプのヒトIgG1のゲノム定常領域を含む、MfeIおよびBamHIで消化した真核生物発現ベクターpBI−61にクローニングした。ベクターはハムスター由来の選択可能なマーカーであるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする。
実施例2:ヒト化9E4抗体の産生
【0146】
プラスミドspBI−61/9E4HCおよびpBI−60/9E4LCを、無血清増殖培地にあらかじめ適応させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に同時トランスフェクトした。細胞を合成培地中、ウシ由来成分なしで増殖させた。樹立細胞株のための培地は下記の通りとした:
【表4】
接種前(preinocculation)培地の調製:
1)WFI開始体積 総体積の80%;開始温度28〜35℃
2)リスト(上記)に従い、各々の前の成分が完全に溶解するとすぐに、成分を1つずつ添加。
3)WFI残りの体積0.176L/L培地
4)濾過前、pHを7.00〜7.20に調整
5)濾過前、モル浸透圧濃度は280〜320mOsmol/kgである
接種後添加物:
栄養分供給培地
3%グルタミン溶液
グルコース溶液(500g/L)
1M炭酸ナトリウム溶液
2%消泡剤エマルジョン
【表5】
栄養分供給培地の調製:
1)WFI開始体積 総体積の70%;開始温度30〜40℃
2)リスト(上記)に従い、各々の前の成分が完全に溶解するとすぐに、成分を1つずつ添加
3)WFI残りの体積0.179L/L培地
4)濾過前、pHを6.90〜7.10に調整
5)濾過前、浸透圧は1185〜1585mOsmol/kgである
培地濾過:
プレフィルタ−0.2μmフィルタ
最終フィルタ−0.1μmフィルタ
【0147】
抗体を、産生細胞株が最終的に誘導された安定なトランスフェクト細胞からプールした。プール由来材料をプロテインA−アフィニティークロマトグラフィーおよび他の精製技術により、以下で記載されるように精製した。
【0148】
実施例3:抗体精製
プロテインAは、ヒト化、ベニヤ化、またはキメラ9E4抗体の親和性精製のために使用される細菌タンパク質である。プロテインAクロマトグラフィーは典型的には、澄んだ細胞培養上清をカラム上にpH6−8にて通過させることを含み、この条件下では抗体が結合し、望まれない成分、例えば宿主細胞タンパク質、細胞培地成分、および推定ウイルスはカラムを素通りする。任意的な中間洗浄工程を実施して非特異的に結合した不純物をカラムから除去でき、続いて、pH2.5−4で生成物を溶離できる。それらの樹脂バックボーン組成に基づき分類されるプロテインA樹脂の型としては、ガラスまたはシリカ系、例えば、Prosep vA、Prosep vA Ultra(Millipore);アガロース系、例えば、Protein A Sepharose Fast Flow、MabSelect(GE Healthcare);ならびに有機ポリマ系、例えば、ポリスチレン−ジビニルベンゼンPoros AおよびMabCapture(Applied Biosystems)が挙げられる。いくつかの溶離バッファー成分、例えば酢酸、クエン酸、リン酸、アルギニンHClおよびグリシンHClを使用できる。
【0149】
ウイルスは、数ある方法の中でも特に、低いpHでの処理または濾過により除去できる。現在のウイルス保持フィルタは非常に小さな細孔を有するウルトラフィルタまたはマイクロフィルタである。ウイルス濾過膜は親水性ポリエーテルスルホン(PES)、親水性ポリビニリデン(PVDF)および再生セルロースから製造される。
【0150】
デプスフィルタは細胞培養ブロスの清澄化において使用され、膜フィルタ上の容量が維持され、またはクロマトグラフィーカラムまたはウイルスフィルタが保護される。デプスフィルタは典型的には、セルロース、珪藻土などの多孔性濾過助剤およびイオン荷電樹脂バインダから製造される。デプスフィルタはサイズ排除および吸着結合の両方を使用して分離を達成できる。
【0151】
イオン交換クロマトグラフィーは、所定のバッファー系におけるそれらの正味荷電に基づきタンパク質に結合する正電荷または負電荷を持つ樹脂を使用する。高い特異度で標的抗体を結合し、放出する条件(例えば、pHおよびイオン強度)を決定できる。反対に、抗体以外のほとんど全ての他の試料成分に結合する条件を見出すことができる。アニオン交換クロマトグラフィーは正電荷を持つ基(弱塩基性、例えばジエチルアミノエチル、DEAEまたはジメチルアミノエチル、DMAE;または強塩基性、例えば四級アミノエチル、Qまたはトリメチルアンモニウムエチル、TMAEまたは四級アミノエチル、QAE)を使用する。
【0152】
カチオン交換クロマトグラフィーは、負電荷を持つ官能基で修飾された樹脂を使用する。それらは強酸性リガンド、例えばスルホプロピル、スルホエチルおよびスルホイソブチル基または弱酸性リガンド、例えばカルボキシル基であってよい。カチオン交換クロマトグラフィーは、中性〜塩基性の範囲のpIを有する多くのmAbに対する精製プロセスのために適用されている。抗体はローディング工程中に樹脂上に結合され、溶離バッファー中の導電率を増加させる、またはpHを増加させることにより溶離される。負電荷を持つプロセス関連不純物、例えばDNA、いくつかの宿主細胞タンパク質、浸出されたプロテインAおよびエンドトキシンは、ロードおよび洗浄画分で除去される。カチオン交換クロマトグラフィーはまた、脱アミド生成物、酸化種およびN末端切断型、ならびに所望の抗体由来の高分子量種を分離できる。抗体のカチオン交換樹脂上での結合は、pHおよび導電率、および樹脂の型に依存する。SP Sepharose FFおよびSP Sepharose XLは2つの一般的な市販樹脂である。
【0153】
限外濾過は、抗体濃縮およびバッファー交換のための圧力駆動の膜プロセスである。限外濾過はサイズに基づく分離であり、この場合、膜細孔より大きな種は保持され、より小さな種は自由に通過する。限外濾過における分離は、所定の圧力駆動力下での、異なる成分の膜を横切る濾過率の違いにより達成される。バッファー交換はダイアフィルトレーションモードを用いて達成され、この場合、最終の所望の組成物のバッファーは残余分系に同じ速度で添加され、ここで、濾液は除去され、よって、一定の残余分体積が維持される。1〜20nmの範囲の膜細孔を有する限外濾過は、500ダルトン〜1,000キロダルトンの分子量の範囲の種の分離を提供できる。
【0154】
9E4抗体生成物を収集濾液から、rProtein−Aアフィニティークロマトグラフィーにより、GE HEALTHCARE製のMabSelect樹脂を使用して捕獲した。生成物は、プロテインA樹脂に中性pHで結合し、100mM酢酸ナトリウムでのイソクラチックモードにてpH3.0で溶離される。宿主細胞不純物および細胞培地成分のほとんどがこの工程中に低減される。半PAINバッファー(500mM NaCl、1.34mMKCl、4mM Na
2HPO
4×2H
2O、0.735mM KH
2PO4×2H
2O、0.125%PVP=コリドン17、7.5%イソプロパノール、4.3mM NaOH、250mM L−アルギニン−HCL、pH7.4、導電率45mS/cm)を用いた別の洗浄工程を実施し、カラム上に依然として残る成分を除去し、中和AT生成物プール中の濁度を最小に抑えた。プロテインA工程を、収集プールを同様のロードで分割することにより最大3のサイクルで実施した。カラムを、1.47mM KH2PO4×2H2O、8.03mM Na2HPO4×2H2O 137mM NaCl、2.68mM KClを用いてpH7.4±0.2および導電率16±3mS/cmに平衡化して貯蔵溶液を除去し、ローディングのためのカラムを準備した。カラムにその後、最大30g/Lの収集濾液をロードし、洗浄し(それぞれ、3バッファー、3カラム体積)、溶離した。溶離後、カラムを0.1Mリン酸によりストリッピングし、次のサイクルのために平衡化し、または、その後のサイクルが次の日に実施される場合、完全に再生して貯蔵する。0.1Mリン酸(ストリップ)、6M尿素および1M酢酸による完全再生を最後のサイクル後に実施する。
【0155】
プールして0.2μm濾過したMabSelect生成物プールを、1M酢酸によりpH3.5に調整し(撹拌)、60−70分間室温でウイルス不活性化のためにインキュベートする(撹拌なし)。撹拌下での中和を、1Mトリス塩基の添加により実施し、pH5.50±0.20とする。
【0156】
酸処理した生成物プールは直ちに、次の深層濾過工程に回される。Cuno Zeta Plus 60ZAによる深層濾過は、濁度の除去のための工程である。ウイルス不活性化された生成物プールを、0.2μmPES膜フィルタと直列の以上で言及されるデプスフィルタ材料から構成される二段階プロセスにより濾過する。
【0157】
深層濾過生成物プールを、GE HEALTHCARE製のQ−Sepharose Fast Flow樹脂を用いるアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)により、フロースルーモードでさらに精製した。AEX工程は、残留宿主細胞DNAを低減し、ウイルスを除去する。カラムを、Q平衡化バッファー(42.8mMトロメタモール−HCl7.2mMトリス塩基、39mM NaCl)によりpH7.50±0.20および導電率8.0±1.0mS/cmに平衡化して貯蔵溶液を除去し、ローディングのためのカラムを準備した。ローディング中、生成物はカラムを通って流れ、一方で不純物は樹脂に結合した。ローディング/溶離後、カラムをQ平衡化バッファーで洗浄し、カラム上の移動相中に残る生成物を回収した。生成物回収後、カラムを再生して最後に保存した。
【0158】
調整したQ−Sepharose生成物プールを、Applied Biosystems製のPoros HS50を用いるカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)によりさらに精製した。生成物は低塩濃度条件下で(36.2mM CH
3COONa×3H
2O、13.8mM CH
3COOH、58.5mM NaCl、pH5.1、導電率8mS/cm)カラムに結合し、その後、イソクラチックモードで、高塩濃度条件下で(38mM CH
3COONa×3H
2O、12mM CH
3COOH、228mM NaCl、pH5.1、導電率25.5mS/cm)溶離した。中間の塩量(37.2mM CH
3COONa×3H
2O、12.8mM CH
3COOH、102.5mM NaCl、pH5.1、導電率13.5mS/cm)による追加の洗浄工程を実施し、混入物質、例えば宿主細胞タンパク質、高分子量生成物バリアントおよび浸出されたプロテインAを除去した。CEX工程を最大2サイクルで実施した。そのような場合、調整したAEXプールは2つの等体積に分けられ、個々にCEXカラム上で処理される。
【0159】
ウイルス濾過(VF)は、ウイルス粒子の除去のための第2の直交法を特定的に提供し、これは、20nmより大きな粒子(例えばパルボウイルス)を除去するように設計された。ウイルス濾過は、Poros HS50生成物プールの、直列の0.1μmプレフィルタおよびウイルスフィルタ(Planova 20N、Asahi Kasei)を通る圧力移動により、ナノフィルタを横切る1.0bar圧力降下を用いて達成された。ウイルスフィルタの完全性試験を使用前(リークテスト)および使用後(リークテストおよび金粒子試験)に実施した。
【0160】
ナノ濾過した生成物プールを、約20g/L(UF1)まで濃縮し、その後、≧6体積のダイアフィルトレーションバッファー(17mM C
6H
5Na
3O
7×2H
2O、3mMC
6H
8O
7×H
2O、pH6、導電率4mS/cm)に対して一定体積で透析濾過する。ダイアフィルトレーション後、プールを、約75g/L(UF2)まで濃縮した。最後に、残余分をUF/DF系から、ダイアフィルトレーションバッファーでフラッシングすることにより除去し、約52g/Lの濃度(=「30kD生成物プール」)とした。
【0161】
30kD生成物プールを比4+1で5倍トレハロース/Tween20(ポリソルベート20)スパイクバッファー(17mM C
6H
5Na
3O
7×2H
2O、3mM C
6H
8O
7×H
2O、1150mMトレハロース×2H
2O、1g/Lポリソルベート20、pH5.9、導電率1.0mS/cm)と混合し、製剤バッファー(17mM C
6H
5Na
3O
7×2H
2O、3mM C
6H
8O
7×H
2O、230mMトレハロース×2H
2O、0.2g/Lポリソルベート20、pH6.0、導電率3.30mS/cm)で希釈し、40.0±2.0g/Lのタンパク質濃度を得た。
【0162】
バルク材料を、直列につながれた0.2μmプールフィルタおよび0.2μmバッグフィルタを通して濾過した。0.2μmフィルタへの追加のプレフィルタが粒子除去のために実装され得る。0.2μmプールフィルタを完全性に対して試験した。プールフィルタが試験で不合格な場合、各バッグフィルタを別々に、完全性に対して試験する。
【0163】
実施例4:製剤開発
この実施例を通して、配列番号:29の軽鎖配列および配列番号:32の重鎖配列を有するヒト化9E4抗体を使用した。
【0164】
物理化学的キャラクタリゼーション
可能性のある製剤成分の選択を容易にするために、ヒト化9E4抗体の熱(termal)特性を決定した。示差走査熱量測定(「DSC」)、直角光散乱(「RALS」)および内部蛍光(「IF」)技術を分析で使用した。精製抗体を最初に10℃から71℃まで加熱し、その後71℃から10℃まで冷却し、その後再び10℃から83℃まで加熱し、その後再び、83℃から10℃まで、冷却し、最後に再び10℃から95℃まで加熱した。DSCサーモグラムから2つの転移が明らかになり、1番目は71℃で、2番目は83℃であった。
図1を参照されたい。71℃の転移は、実験条件下で可逆であった。RALSおよびIFサーモグラムにより、中間温度で単一の転移が明らかになった。
【0165】
pH最適化
ヒト化9E4の安定性を次に、3.5〜8.0の範囲のpH値を有する混合バッファー系で分析した。再び、DSC、RALS、およびIF技術を分析において使用した。前述の様に、2つの転移がDSCサーモグラムにおいて検出され(pH3.5で検出された第3の転移を除いて)および単一の中間転移がRALSおよびIFサーモグラム(termogram)において検出された。DSC分析における第1の熱転移は6.5のpHまでpHの増加と共に増加し、そこで、約71℃で横ばい状態になった(表4、下記、および
図2)。DSC分析における第2の熱転移は5.0と6.5の間のpHで、約83℃でピークとなった。RALS分析における熱転移は、4.5−8.0のpH範囲で約77℃のままであり、IF熱転移は同じpH範囲にわたり75℃と77℃の間で変動した(
図2)。結果に基づき、5.5〜7.0のpH範囲がヒト化9E4抗体に対して最大安定性を提供すると決定された。
【表6】
【0166】
バッファー選択
ヒト化9E4抗体に関するpH依存性安定性の結果に基づき、非経口使用のために薬学的に許容され、pH5.5と7.0の間のpH範囲で十分な緩衝能を提供できるバッファー系を同定した。これらのバッファー系は20mMクエン酸塩バッファー(pH5.5;6.0)、20mMヒスチジンバッファー(pH6.0;6.5;7.0)、および20mMコハク酸塩バッファー(pH6.5)を含んだ。20mMコハク酸塩および20mMヒスチジンバッファー中でのヒト化9E4抗体の熱安定性をDSC、RALS、およびIFにより試験した。DSCにより決定されるように、5.5と6.0の間のpHで、クエン酸塩バッファー中のヒト化9E4抗体は、ヒスチジンバッファー中のヒト化9E4抗体と比べて著しく高い第2の熱転移(Tm2)を示した(表5、下記)。反対に、6.5と7.0の間のpHで、ヒスチジンバッファー中のヒト化9E4抗体は、クエン酸塩バッファー中のヒト化9E4抗体と比べて、より高い第1の熱転移(Tm1)を示した。(表5)。RALS技術を使用すると、ヒスチジン緩衝抗体について熱転移は検出されなかった。しかしながら、クエン酸塩で緩衝された抗体は、pH5.5および6.0で、78℃で熱転移を示した。
【0167】
コハク酸塩緩衝ヒト化9E4抗体(pH6.5)をまた、DSCおよびRALSにより分析し、結果をクエン酸塩緩衝(pH6.5)およびヒスチジン緩衝(pH6.5)抗体と比較した。DSC分析では、クエン酸塩およびコハク酸塩バッファー中の第2の熱転移(Tm2)は、ヒスチジン(histinde)バッファー中よりもおよそ1℃高く、試験された条件下でのタンパク質のわずかに高い安定性が示された。pH6.5のコハク酸塩およびクエン酸塩バッファーに関し、RALSにより同等な転移温度が検出された。
【0168】
これらの研究結果に基づき、20mMクエン酸塩(pH6.0)および20mMコハク酸塩(pH6.5)バッファーを、凍結乾燥医薬品を生成させ、その長期安定性を試験するのに使用するために選択した。
【表7】
【0169】
糖/ポリオール選択
フリーズドライ製剤におけるヒト化9E4抗体の安定性を増加させることを目的に、抗体の熱安定性に対する糖およびポリオールの影響を分析した。評価した糖/ポリオールはトレハロース、スクロース、またはスクロースおよびマンニトールの混合物を含んだ。240mMトレハロース、240mMスクロース、および50mMスクロース/200mMマンニトールをそれぞれ、20mMコハク酸塩(pH6.5)、20mMヒスチジン(pH6.5)、および20mMクエン酸塩(pH6.5)バッファーに添加した。ヒト化9E4抗体の安定性をその後、DSCにより、製剤の各々について評価した。DSC結果により、様々な糖/ポリオールが、第1および第2の熱転移をより高い温度にシフトさせたことが明らかになり、安定化効果が示された(表6、下記)。しかしながら、トレハロース製剤が一貫して最も高い熱転移を有した(表6)。加えて、ヒスチジン製剤における第2の転移温度(Tm2)はクエン酸塩およびコハク酸塩製剤よりも低かった(表6)。
【表8】
【0170】
RALS測定もまた、様々な糖/ポリオールを用いて、コハク酸塩またはクエン酸塩バッファー(pH6.50)中で製剤化されたヒト化9E4抗体に対して実施した。コハク酸塩バッファーでは、240mMトレハロース製剤は最も高い転移温度(77℃)を有し、240mMスクロース製剤は中間転移温度(76℃)を有し、50mMスクロース/200mMマンニトール製剤は最も低い転移温度(75℃)を有した。クエン酸塩バッファーでは、240mMトレハロース製剤および50mMスクロース/200mMマンニトール製剤は同じ転移温度(78℃)を有し、240mMスクロース製剤はより低い転移温度(77℃)を有した。クエン酸塩製剤に関する熱転移でのたった1℃の差は試験変動性内であった。
【0171】
界面活性剤
熱安定性に対するポリソルベート20(「PS20」)の効果をDSCを使用して試験し、ヒト化9E4抗体の転移温度に影響しないことが決定された。しかしながら、PS20のプラス効果が振盪ストレスに関して観察された。2つの製剤を、振盪ストレスに対するそれらの反応に関して試験した:(A)20mMクエン酸塩、pH6.0、230mMトレハロース、0.02%(w/w)PS20;ならびに(B)25mMクエン酸塩、pH6.0、230mMトレハロース。PS20を有する製剤(製剤A)は、より低い程度の泡形成および24時間の振盪後であっても一定の濁度レベルを提供した。製剤Bは強い泡形成を有し、3時間の振盪後に濁度が増加した。いずれの製剤でも、振盪研究中、視認可能な粒子の生成は得られなかった。
【0172】
次に、振盪により誘導される製剤濁度に対するPS20の効果を評価した。製剤Aの濁度は24時間の振盪後であっても増加しなかった。対照的に、製剤Bの濁度はほとんど2倍となり、振盪前17FNU(ホルマジン比濁分析単位)から、24時間の振盪後32FNUに増加した(表7)。
【表9】
【0173】
振盪前後の抗体凝集の測定は同様にPS20の安定化効果を証明する。製剤AおよびB中の単量体抗体および凝集した抗体の量を、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により、振盪前、振盪の3、6、および24時間後に評価した。製剤A中のPS20の存在は、凝集した抗体の量のわずかな増加(0.2%)(表8)および単量体抗体の量の対応する減少(0.2%)(表9)と相関した。対照的に、製剤B(PS20あり/なし)は、凝集した抗体の4倍高い増加を示し(表8)、それに応じて単量体抗体の量の高められた減少(0.9%)を示した(表9)。
【表10】
【表11】
【0174】
このように、振盪研究の結果により、PS20は、ヒト化9E4抗体製剤において濁度および抗体凝集の望ましくない増加を防止することが明らかになった。
【0175】
凍結乾燥実行可能性研究
前記分析に基づき、製剤1−4(表10、下記)をヒト化9E4抗体の凍結乾燥形態での貯蔵の実行可能性を評価するために選択した。
【表12】
【0176】
凍結乾燥サイクルを開発する際の初期工程として、凍結したF1−F4製剤の熱特性を研究した。Mettler Toledo DSC 821機器を使用して、製剤の各々のガラス転移(Tg’)温度を決定した。下記凍結/解凍サイクルの間測定を実施した:
凍結:5K/分で5℃から70℃まで。
保持:−70℃で3分。
加熱:5K/分で−70℃から25℃まで。
表11はこのように同定されたガラス転移温度を列挙する。製剤2および4(スクロースおよびマンニトールを含む)はトレハロース製剤と比べてより低いTg’を示し、一方、異なるバッファーの使用はTg’に著しく影響しなかった。それらのより高いTg’のために、トレハロース製剤(製剤1および3)は一次乾燥中、より高い製品温度に耐えることができ、これはフリーズドライプロセスにとって好ましい。
【表13】
【0177】
決定したガラス転移温度に基づき、2つの異なる凍結乾燥サイクルを開発し、試験した。第1のサイクルは、−10℃(棚温度)で実施される一次乾燥工程を含む(表12)。第2のサイクルにおける一次乾燥工程は、−20℃(棚温度)で実施する(表13)。
【表14】
【表15】
【0178】
凍結乾燥実行可能性研究を小規模で、Epsilon 2−12D、GT−12−B凍結乾燥機(Christ)を用いて実施した。0.2μm濾過後、製剤化された抗体の5.4ml±0.2mlアリコートを20mlバイアルに添加した(I型透明ガラスバイアル、20/25mL、Blow Back、Schott製)。得られたバイアルは5.0mlの公称充填容積および200mg/バイアルの公称投与量を有した。凍結乾燥後の意図される再構成体積は5.0ml水であった。バイアルを手作業で凍結乾燥機にロードし、サイクル1またはサイクル2に従い凍結乾燥した。製品温度をバイアルに入れたPT100センサを使用してモニタした。サイクルをずれなく実施した。製剤を水の結晶化前に−6.5℃の最低温度まで過冷却し、その後、製剤を−50℃まで凍結させた。一次乾燥相では、0.10mbarの真空(キャパシタンスマノメータ)を、−10℃(サイクル1)または−20℃(サイクル2)の棚温度で適用した。サイクル1では、これらのパラメータにより、昇華中−28℃〜−25℃の平均製品温度が得られた。サイクル2では、これらのパラメータにより昇華中−30℃未満の平均製品温度が得られた。一次乾燥の実際の持続期間は両方のサイクルで約40時間であった。一次乾燥後、棚温度を30℃(二次乾燥)まで増加させ、未凍結水の脱離を可能にした。二次乾燥相は、凍結乾燥製剤が約1%の最終水分レベルを有するという目的で、8時間の期間に設定した。凍結乾燥後、バイアルに栓をし(Stelmi C1404 6720GC 6 TP3、20mm)、密閉した(アルミニウムフリップオフシール、20mm)。
【0179】
トレハロース含有製剤は凍結乾燥後完全にアモルファスとなり、いくらかの縮みを示した。対照的に、マンニトール含有製剤は部分的に結晶であり、縮みを示さなかった。製剤全てについてケーキ高さは約11mmであった。ケーキ質量は約685mg(F1)、516mg(F2)、700mg(F3)、および520mg(F4)であった。全ての製剤で、ケーキは淡黄色を有した。
【0180】
水分レベル、再構成時間、顕微鏡でないと見えない粒子の数を含む、サイクル1およびサイクル2により生成された凍結乾燥製剤の特性を分析し、比較した。表14(下記)を参照されたい。加えて、凍結乾燥製剤の品質を、凍結乾燥前の製品品質と比較した。試験した追加の特性としては、透明性、pH、モル浸透圧濃度、モノマー対凝集物の量、密度、HICパターン、および活性(データ示さず)が挙げられる。全体としては、製品品質に対するマイナス影響は、凍結乾燥および再構成後に観察されず:製品外観、色、視認可能な粒子レベル、透明性、pH、モル浸透圧濃度、タンパク質量、モノマ量、HICパターン、および活性は凍結乾燥プロセスにより著しく変化しなかった。さらに、サイクル1(100−140秒)およびサイクル2(100−170秒)の両方により凍結乾燥した製剤に関する再構成時間は許容可能であり、かつ測定された顕微鏡でないと見えない粒子レベルは薬局方規格未満であった。
【表16】
【0181】
凍結乾燥サイクル2が、マンニトールおよびスクロースを含む製剤に対するより長い再構成時間およびわずかに高い顕微鏡でないと見えない粒子レベル(2−10μm)をもたらすという傾向のため、サイクル1の改定に基づく凍結乾燥サイクルを促進安定性研究での使用のために選択した。改定された凍結乾燥サイクルは60時間ではなく40時間のより短い一次乾燥相(工程8)、8時間ではなく12時間の延長した二次乾燥相(工程10)を含んだ。凍結乾燥製剤中の水分レベルをさらに低減させるためにより長い二次乾燥相が含まれた。
【0182】
凍結乾燥製剤の促進安定性研究
製剤F1−F4(表10で示される、上記)を、表15で示される凍結乾燥サイクル(下記)を使用したことを除き、以上で記載される通り凍結乾燥した。促進安定性研究では、凍結乾燥製剤を40℃にて、75%相対湿度(RH)で、1、2、または3ヶ月の期間貯蔵した。貯蔵後、製剤を水(5.0ml)で再構成し、再構成された製剤の特性を調査し、凍結乾燥の直後に再構成した製剤の特性(「初期値」)と比較した。
【表17】
【0183】
凍結乾燥製剤のケーキ色は淡黄色であり、凍結乾燥実行可能性研究における観察と一致した。ケーキ外観は全ての場合において許容可能であり、トレハロース製剤(F1&F3)は、凍結乾燥製品のアモルファス特性(X線粉末回折により確認)により縮む傾向があった。マンニトール(monnitol)含有凍結乾燥製剤(F2&F4)は部分的に結晶であり、本質的に縮みを示さなかった。ケーキ外観および製剤の色は3ヶ月間の40℃での貯蔵にわたって変化しなかった。
【0184】
再構成前の凍結乾燥製剤の水分レベルは40℃では3ヶ月後に著しく変化しなかった。凍結乾燥直後の製剤では水分レベルは0.90%〜1.36%の範囲であり;3ヶ月後、それらは0.84%〜1.47%の範囲であった。表16(下記)を参照されたい。同じ製剤の異なる試料において観察された水分レベルの違いは、試験方法の変動に起因する。しかしながら、スクロースおよびマンニトールを含む製剤は、一貫してトレハロースを含む製剤よりも、高いレベルの水分を含んだ。
【表18】
【0185】
凍結乾燥製剤の全てについて再構成時間は許容可能であり、49〜97秒で変動した。再構成製剤の全ての外観は同等であり、40℃では3ヶ月後であっても視認可能な粒子はなかった。加えて、製剤の色は、前凍結乾燥製剤と比べて、同じ期間にわたって不変のままであった(<BY5)。
【0186】
タンパク質濃度、モル浸透圧濃度およびpHにおいて関連する変化は、40℃での3ヶ月後、製剤のいずれについても観察されなかった(データ示さず)。しかしながら、濁度における増加差異が観察された。表17で示されるように(下記)、マンニトール含有製剤(F2&F4)は、濁度のより大きな増加を示した(3ヶ月にわたって6−7FNU)が、トレハロース含有製剤(F1&F3)はより小さな増加を示した(たった2FNU)。
【表19】
【0187】
再構成された製剤中の顕微鏡でないと見えない粒子をマイクロフローイメージング(MFI)法により測定した。2つの個々の試料を製剤および時間点毎に測定した。凍結乾燥直後(すなわち、40℃での貯蔵なし)の製剤再構成に関し、顕微鏡でないと見えない粒子のレベルを表18(下記)に示し、対応する棒グラフを
図3に示す。1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月間40℃で貯蔵された製剤中で検出される顕微鏡でないと見えない粒子のレベルを表19−21に、それぞれ示し(下記を参照されたい)、対応する棒グラフを
図4−6に、それぞれ示す。
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【0188】
MFI分析により、試験した製剤中の顕微鏡でないと見えない粒子レベルは凍結乾燥直後には同等であったが、マンニトールおよびスクロース含有製剤(F2およびF4)中のレベルは、1ヶ月後に劇的に増加し、その後、増加し続けたことが明らかになった。その結果、製剤2は、ちょうど1ヶ月後に、10ミクロン以上の顕微鏡でないと見えない粒子(≧10.00μm)および25ミクロン以上の顕微鏡でないと見えない粒子(≧25.00μm)に関する薬局方限度を超え、製剤4は2ヶ月の40℃での貯蔵後に顕微鏡でないと見えない粒子に関する薬局方限度を超えた。対照的に、トレハロース含有製剤(F1およびF3)は粒子形成の著しい増加を示さず、40℃で少なくとも3ヶ月の間、顕微鏡でないと見えない粒子に関する薬局方限度未満のままであった。
【0189】
4つの製剤中の顕微鏡でないと見えない粒子をまた、2ヶ月の40℃での貯蔵後に光オブスキュレーション(obscuration)により測定した。光オブスキュレーションは、MFI測定とは異なる結果を与えることが知られている技術であり、典型的にはより低くなる傾向がある。表22で示される(下記)ように、製剤2は、光オブスキュレーションにより検出される最も高いレベルの顕微鏡でないと見えない粒子を有し、一方、他の製剤はより低い、より同等なレベルの顕微鏡でないと見えない粒子を有する。
【表24】
【0190】
製剤をまた、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HP−SEC)により分析し、凍結乾燥状態で40℃での貯蔵後の凝集およびモノマー形態の抗体のパーセンテージを決定した。表23で示されるように(下記)、凝集した抗体のパーセンテージは、マンニトールおよびスクロース含有製剤において2.5%〜4.4%だけ増加したが、一方、トレハロース含有製剤ではほんの1.0%〜1.1%だけの増加となった。凝集した抗体のレベルが製剤中で増加するにつれ、単量体抗体のパーセンテージはそれに応じて減少した。表24を参照されたい。製剤および40℃での貯蔵の時間の関数としての単量体抗体の量のグラフ表示を
図7に示す。
【表25】
【表26】
【0191】
製剤をまた、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により、それらの40℃での貯蔵にわたって特徴付けた。各製剤に関して、プレピーク(比較的親水性)、主ピーク、およびポストピーク(比較的疎水性)をHICにより検出できる。時間に伴うタンパク質構造の変化は、起こるピークの各々の面積変化によりモニタできる。HIC分析の結果を表25−27で示す(下記)。プレピークの面積の変化は、製剤の各々に関して同等であった。主ピークおよびポストピーク面積の変化はより著しく、トレハロース含有とマンニトール/スクロース含有製剤の間で異なった。特に、マンニトール/スクロース含有製剤(F2およびF4)は、3ヶ月の貯蔵期間にわたって、それぞれ、主ピーク面積において8.4%および5.4%減少を示した。対照的に、トレハロース含有製剤(F1およびF3)は同じ期間にわたって、それぞれ、主ピーク面積において4.7%および4.5%減少を示した。以前はマンニトール/スクロース含有製剤の主ピークにあったタンパク質のほとんどが疎水性ポストピークへシフトし、製剤F2およびF4のポストピーク面積は、それぞれ、6.4%および4.6%だけ増加した。
【表27】
【表28】
【表29】
【0192】
製剤をまた、等電点電気泳動およびキャピラリーイメージング(iCE)により特徴付けた。製剤の各々は3つのピークパターンを示し、酸性ピーク、主ピーク、および塩基性ピークを含んだ。表28で示されるように、製剤1はピークパターンにおいて、3ヶ月の40℃での貯蔵中、最小の変化を示し、一方、製剤2−4は塩基性ピーク面積において、時間に伴い大きな増加を示した。
【表30】
【0193】
製剤の各々における抗体の抗原結合活性もまた、調査した。抗体は、3ヶ月の40℃での貯蔵を通して、製剤に関係なく、高い抗原結合活性を保持した。
【0194】
製剤をまた、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF処理)中の凝集物形成に関して試験した。製剤3は最小量の凝集物形成を示し、製剤2は最大を示し;製剤1および4は中間量の凝集を示した(データ示さず)。
【0195】
促進安定性データの全てを考慮すると、製剤F1およびF3は、3ヶ月の貯蔵後、製剤F2およびF4と比べて優れた安定性を示す。これは、製剤F2およびF4(マンニトール/スクロース含有製剤)が、濁度、HP−SEC、顕微鏡でないと見えない粒子、HIC、およびiCEにより検出されるように、比較的不十分な安定性を示すという事実を反映している。製剤F1およびF3を比較すると、1つの著しい違いは、F1は、限外濾過/ダイアフィルトレーション処理中、F3よりもわずかに多い凝集物を生成する傾向があるということである。そのため、F3を好ましい製剤として選択した。
【0196】
凍結解凍に関する製剤安定性
製剤F3を、その凍結解凍に関してヒト化9E4抗体を安定化させる能力について次に試験した。この目的を達成するために、ヒト化9E4抗体を精製し、製剤F3中で再懸濁した。ヒト化9E4を40mg/mlで含む20mlのF3をその後、Sartorius Stedim Flexboy 30mlバッグに充填し、バッグを−40℃で凍結した。5サイクルまでの凍結/解凍サイクルを1バッグにつき実施した。製剤F3中のヒト化9E4抗体の分析試験を凍結前ならびに1、3および5凍結/解凍サイクル後に実施した。3サイクルまでの凍結−解凍サイクル後では、著しい変化は検出されなかった。5凍結/解凍サイクル後、凝集した抗体のレベルのわずかな増加(0.2%)が検出され、HICおよびiCEパターン(patters)の小さな変化が観察された。全ての他のアッセイ結果、例えば、色および視認可能な粒子の目視検査(visual insepection)、透明性、UV走査、HP−SEC、浸透圧、pH、顕微鏡でないと見えない粒子数、および抗体活性は、5凍結−解凍サイクル後変化しなかった。
【0197】
形態および細部の様々な変更がそれらにおいて、本発明の精神および範囲から逸脱せずに可能である。文脈から別様に明らかにならない限り、任意の実施形態、態様、要素、特徴、工程などは他と組み合わせて使用できる。引用と関連する情報が時間と共に変化する可能性がある場合、最も早い有効出願日での引用と関連する情報が意味され、引用のための最も早い有効出願日は、本出願または引用を開示するより早い優先出願の出願日を意味する。この明細書本体内で引用される全ての参考文献、登録特許および特許出願は、これにより、その全体が、全ての目的のために、参照により組み込まれる。任意の実施形態、態様、特徴、要素、工程などは、文脈により別様に示されない限り、他と組み合わせることができる。組成物がある一定の特定成分を含むように言われる場合、出願は、文脈により別に要求されない限り、選択的に、組成物は、特定成分から構成され得る、または本質的に構成される得ることを開示すると、読まれるべきである。例えば、抗体鎖が特定された配列番号を含むアミノ酸配列を有するように言われている場合、文脈により別に要求されない限り、選択的に、抗体鎖は、配列番号から構成できる、または本質的に構成できると理解されるべきである。