【氏名又は名称】ニンポー インスティテュート オブ マテリアルズ テクノロジー アンド エンジニアリング, チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザー発生ユニットを含み、前記レーザー発生ユニットが発生したレーザーがワークの表面に形成された吸収保護層の表面にある拘束層を通過した後に前記吸収保護層に作用し、前記吸収保護層がプラズマ衝撃波を形成して前記ワークの表面に作用する、ワーク表面に対するレーザー衝撃強化装置であって、
一端が開口した共振空胴をさらに含み、前記共振空胴には前記レーザー発生ユニットが発生した前記レーザーを前記共振空胴に入力させるためのレーザー入口が設けられ、
前記共振空胴にはさらに流体入口が設置され、前記拘束層は該流体入口を介して注入された流体であり、
前記共振空胴の開口端面と前記吸収保護層の表面が接触して、前記拘束層を前記共振空胴内に制限させ、
前記共振空胴は、衝撃波共振の集約を生じることができる形状に加工されており、
前記共振空胴は、前記開口端面に近く、かつ、前記共振空胴の中心軸に対し前記流体入口とは反対側の位置に流体出口がさらに設けられており、前記流体が前記流体入口から注入して、前記流体出口から流出し、流動状態を形成することを特徴とする、ワーク表面に対するレーザー衝撃強化装置。
【背景技術】
【0002】
レーザー衝撃強化技術は、強いレーザーにより生じる超高圧衝撃波をワーク表面に用いて、レーザー衝撃強化処理を行う技術である。現在、レーザー衝撃強化技術はすでに航空、船舶、機械工学等の分野で広く適用されており、特に航空機エンジンブレードの抗疲労処理に用いられる。
【0003】
既存のワーク表面に対するレーザー衝撃強化装置は、レーザー発生ユニットと、ワーク表面に位置する吸収保護層と、吸収保護層表面に位置する拘束層を含む。
拘束層の機能は、レーザーエネルギーを通過させて吸収保護層に作用させるとともに、プラズマ膨張時の反作用力をできるかぎり多く提供し、衝撃波結合効率を向上させることである。現在、中国国内外では、拘束層として通常は光学ガラス等の固体材料を採用したり、透明拘束層として厚さ約0.5〜1mmの水膜等のフレキシブル材料を採用したりしている。
吸収保護層の機能は、レーザーを吸収し、プラズマを発生させるとともに、バリア機能を有するのでレーザー及びプラズマのワークへの損傷を回避することができる。現在、吸収保護層として、通常はペンキ、フレキシブルテープまたは所定の厚さの金属箔シート等が用いられている。
【0004】
該レーザー衝撃強化処理プロセスは
図1に示すとおりであり、短パルス(一般的に50ナノ秒以内)により、高出力密度(GW/cm
2)のレーザーが透明拘束層を通過し、金属等のワーク表面に塗工または貼り付けられた吸収保護層に作用して、吸収保護層がレーザーエネルギーを吸収後に急速に気化させて、緻密な高温・高圧プラズマを形成する。該プラズマは引き続きレーザーエネルギーを吸収した後に急激に昇温膨張して、衝撃波を形成する。
衝撃波強度は数GPa(10
9Pa)オーダーに達し、多くのワーク材料の降伏強度より遥かに高くなる。
【0005】
該衝撃波は吸収保護層を通過した後、ワーク表面に作用し、且つその内部に伝達して、ワーク表面に塑性変形と圧縮残留応力場を生じる。これによって、表層材料が塑性変形し、転移密度を増加させることで晶粒が微細化し、圧縮応力と硬さを向上させるとともに、材料の抗疲労、抗摩耗及び抗腐食性能が著しく向上できる。
【0006】
例えば、特許文献1の「レーザー衝撃処理の方法と装置」、特許文献2の「レーザー衝撃方法」、特許文献3の「低エネルギーレーザーを用いたレーザー衝撃処理」及び特許文献4の「クランクシャフトフィレットレーザー衝撃処理強化方法」等はいずれも該レーザー衝撃強化プロセスを採用している。
【0007】
しかし、
図1に示したように、明らかに、ワーク表面に施された吸収保護層がレーザーエネルギーを吸収した後に形成されたプラズマ衝撃波は、約半分しかワーク表面に作用しておらず、残りの半分は外部へ散失してしまうことが分かる。つまり、既存のレーザー衝撃強化プロセスにおいては、ほぼ50%のエネルギーが損失するので、そのエネルギー利用率はとても低い。そのため、所定の処理効果を実現させるためには、レーザーエネルギーを高めるしかできず、従来のレーザー衝撃強化用のレーザーは、一般的にパルスエネルギーが1ジュールを遥かに超えるナノ秒パルスを使用する傾向にある。
【0008】
しかし、このようなレーザー装置は販売価格が高価でありながら、レーザーシステムが極限状態で動作するため、信頼性が低くなる。そのため、レーザー衝撃強化用のエネルギー利用効率を向上させて、レーザーシステムに対するエネルギー要求を低減する必要があり、これにより、レーザー信頼性の保証を前提とした上で処理効果を高める必要がある。
【0009】
また、拘束層において、水膜はコストが低く、フレキシブル性が良い、リサイクルして使用でき、複雑な曲面に対する適用性が強い等の利点があるため、広く使用されている。
【0010】
しかし、拘束層として水膜を使う場合、
(1)実際の操作プロセスにおいて約0.5−1mmの水膜厚さを安定して制御することが難しい。例えば、一般的にはノズルを用いて側面から水膜を施しているが、水膜の厚さはワーク形状や位置の変化に伴って変化しやすく、また、加工プロセスにおける衝撃波は水膜の破れや飛散を引き起こし易いため、加工の一致性と光路デバイスの信頼性に影響する、
(2)固体の拘束に対して水膜の拘束は剛性が足りたいため、衝撃波に対する効果が良くなく、不安定な拘束等の状況が発生しやすく、最終的にレーザー衝撃強化効果を弱めることにつながるといった問題が存在する。
【0011】
水膜に対して、ガラス等の固体類の拘束層の方がレーザー衝撃波に対する拘束効果が良い。しかし、その加工適応性は劣り、形状が比較的に複雑な局所衝撃領域を満足させることはできない。また、ガラスはプラズマと衝撃波の作用の下では割れてしまうため、一般的には一度の衝撃のみにしか適応せず、繰り返して利用することは難しい。
【0012】
特許文献5の「レーザー衝撃処理に用いるフレキシブルフィルム」は、成分の異なる二種類のシリコーンゲルと添加剤を用いて、所定の比例で配合調製して硬化させた後、拘束層を形成し、その上に86−1型黒塗料のエネルギー吸収保護層をスプレーコーティングし、エネルギー吸収保護層と拘束層を一体に集めたフレキシブルフィルムを形成する。
該フレキシブルフィルはエネルギー吸収保護層と拘束層を一体に集めたフレキシブルフィルムを形成できるものの、その拘束剛性度はガラスのような拘束強度まで至らず、かつ気泡等の潜在的な品質上の隠れた問題が存在するとともに、フレキシブルフィルム制作プロセスが複雑且つ煩雑であり、本分野の利用促進にとっては不利である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記ワークとは、工業分野に適用される部材であり、金属部材等のようなレーザー衝撃波の作用によって塑性変形と圧縮残留応力場を生じできる任意の部材であってもよい。
【0018】
前記共振空胴体材料に制限はなく、一般的に比較的高い衝撃波耐性と反射度を具備する材料が選択されるが、SS304ステンレス、高密度のタングステン合金等、及びセラミック材料等のような材料も利用できる。
前記共振空胴体の内面の具体的な形状に制限がなく、効率よく率衝撃波共振の集約を生じることができる形状となるように加工されて成り、楕円体と放物面形等を含む。
前記共振空胴の開口端形状に制限はなく、円形、正方形、長方形等であってよい。
【0019】
前記流体は光エネルギー伝達に好適な任意の気体と液体を含む。気体は空気、窒素ガス等を含むが、これらに限定されない。流体は水及びその溶液を含むが、これらに限定されない。
【0020】
前記吸収保護層材料に制限はなく、金属箔片、黒塗料とテープ等を含む。
【0021】
前記レーザー発生ユニットが発生させるレーザーの波長に制限はなく、共振空胴内に必要な衝撃波を発生させるのに用いられるものであれば使用でき、10640/1064/800/532/517/355ナノメートル等を含む。
【0022】
このように、本発明が提供するワーク表面に対するレーザー衝撃強化装置は共振空胴を含み、拘束層として流体を選択して用いており、かつ、該拘束層の全部又は一部が共振空胴内に制限される。
【0023】
該装置を用いてレーザー衝撃強化処理を行う際、その処理プロセスは
図2に示すとおりである。即ち、作業状態の時、レーザー発生ユニットからのレーザーが共振空胴内の流体を通過して吸収保護層に作用し、吸収保護層は、レーザーエネルギーを吸収した後気化してプラズマを発生し、このプラズマが引き続きレーザーエネルギーを吸収した後膨張し、高強度の球面衝撃波を形成する処理プロセスであり、該球面衝撃波の具体的な伝播プロセスAは、一部の球面衝撃波がワークに作用し、かつその内部に伝播し、もう一部の球面衝撃波は共振空胴内面へ伝播するプロセスであり、共振空胴内面へ伝播した球面衝撃波は該共振空胴内面の反射を経た後、再度球面衝撃波を形成し、上述の伝播プロセスAを繰り返し、このように伝播プロセスAを複数回繰り返すものである。即ち、共振空胴の存在により、本来外へ散失する衝撃波が利用され、共振空胴の反射と集波の作用の下、一つのレーザーパルスが誘発する衝撃波が複合衝撃波を形成でき、ワーク表面に二回又はそれより多く作用し、一つのパルスで複数回の衝撃の効果を実現し、エネルギー利用率が大きく向上する。
【0024】
図3は既存のレーザー衝撃強化装置においてレーザーパルスが誘発する衝撃波形と、本発明の共振空胴付きレーザー衝撃強化装置においてレーザーパルスが誘発する波形との比較概念図である。即ち、既存のレーザー衝撃強化装置中には共振空胴がないため、一つのパルスは有効な衝撃ピークが一つしか生じず、その後減衰し、衝撃波の持続時間は比較的短く、およそレーザーパルス幅の1〜3倍であり、その波形は
図3のAに示すとおりである。
【0025】
一方、本発明のレーザー衝撃強化装置は共振空胴を含み、波形は
図3のBに示され、直接ワークへ伝播した衝撃波が一つ目の波頂を形成し、ワークから離れた衝撃波は共振空胴の反射を経て、収束した後二つ目の波頂を形成し、このように反射を繰り返し、二つ又はそれより多くの有効衝撃波を形成し、エネルギー利用率を大きく向上させることで、レーザー衝撃強化効果を向上させている。
【0026】
一方で、本発明のレーザー衝撃強化装置において、拘束層として流体を選択して用い、なおかつ、該拘束層を共振空胴内に制限することで、流体拘束層の形状を固定し、既存の技術における、流体拘束層の厚さが制御しにくく、安定性に劣る問題を効果的に解决している。
上述のレーザー衝撃強化装置をさらに好適化するため、本発明は以下の好適化措置を提案している。
【0027】
衝撃波が共振空胴内の発射収束を経て再度衝撃波を形成する過程中に、気泡を形成するおそれがあり、再衝撃強化の効果に影響を与えることが考えられる。好ましくは、前記共振空胴には流体出口も設け、前記流体を流体入口より注入し、流体出口により流出させ、流動状態を形成する。この好適化の措置には、
(1)前記流体を本格的に流動させ、流体の流れを利用して、再度衝撃波を形成する過程中に形成される気泡を低減させる一方で、該過程中に少量の気泡が形成されても、該流体の流れが迅速に気泡を共振空胴から連れ出し、レーザー光路の安定性を保持し、該気泡の衝撃強化効果への悪影響の低減に寄与することと、
(2)流体出口を設置したことにより、共振空胴内圧力をガイドし調整することができ、これによって共振空胴体とワーク間の間隔を制御できる、
という利点がある。
【0028】
共振空胴内の流体の吸収保護層と共振空胴の連結箇所での漏出が減少するように、好ましくは、共振空胴と吸収保護層の連結箇所に密封部材を設ける。
【0029】
本発明において、共振空胴の開口端面と吸収保護層が互いに接触し、前記接触は密封接触と非密封接触を含む。本発明における拘束層は流体であるため、共振空胴の開口端面と吸収保護層が密封接触の場合、流体は完全に共振空胴内に制限され、漏出がない。
しかし、実際の適用においては、共振空胴の開口端面と吸収保護層を密封接触となるように制御することは比較的難度が高い。共振空胴の開口端面と吸収保護層が密封接触ではない場合、少量の流体がそこから漏出してしまう。しかし、該漏出は本発明の有効性を阻害するものでなく、逆に、少量の流体の漏出は、共振空胴体の吸収保護層に対する摩擦力の減少に寄与する。
【0030】
また、レーザーがレーザー入口を通過して効率よく共振空胴に入りやすいように、好ましくは、レーザー発生ユニットとレーザー入口の間にライトガイドユニットを設け、レーザー発生ユニットが発生したレーザーが、効率よくレーザー入口に通し、共振空胴に進入させる。該ライトガイドユニットは反射鏡からなるフレキシブル光道管システムであってもよく、光ファイバ等であってもよい。
【0031】
作業状態時にプラズマ衝撃波及び流体がレーザー入口の所で散失しないように、好ましくは、レーザー入口の所にスペーサA、耐高圧透明窓材シート及びスペーサBを設ける。耐高圧透明ウィンドウシートはスペーサAとスペーサBの間に位置し、その材料は石英板、レンズ等を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本発明のレーザー衝撃強化装置を用いてワークに強化処理を行う処理方法は、
ワークを洗浄処理した後表面に吸収保護層を施す第1ステップ、
共振空胴の開口端面と吸収保護層表面を互いに接触させ、流体入口を通して共振空胴内へ流体を注入する第2ステップ、
レーザー発生ユニットが発生したレーザーがレーザー入口を経由して共振空胴に入り、流体を通過して吸収保護層に作用し、衝撃波を形成するステップであって、該衝撃波の伝播プロセスAは、一部の衝撃波が直接ワークに作用して、ワークを強化し、もう一部の衝撃波が共振空胴の内面に伝播し、共振空胴内面の反射を経て、集波した後、再度衝撃波を形成し、前記伝播プロセスAを繰り返すものであり、このように複数回繰り返した後、レーザー発生ユニットをオフにする第3ステップ、
ワークを取り外し、表面に残った吸収保護層を洗浄する第4ステップである。
【0033】
前記第1ステップにおいて、ワーク表面に吸収保護層を施す方法はペンキ、テープ及び金属箔片を含むが、これらに限定されない。
ワーク表面の異なる領域にレーザー衝撃強化を行うために、好ましくは、処理プロセス中に、共振空胴開口端面と吸収保護層表面の接触位置を調整する、即ち、前記第3ステップの後に、共振空胴の開口端面と吸収保護層表面が接触している位置を変更し、第3ステップを繰り返す第3ステップ’を一回又は複数回行い、その後第4ステップを行う。
ただし、第3ステップ’において、共振空胴の開口端面と吸収保護層表面が互いに接触している位置を変更する手段には制限がない。
例えば、運動機構を用いることにより、ワークとレーザー衝撃強化装置に相対運動を生じさせてもよく、各種寸法のワーク処理要求に適用させるため、ワークの移動のみ、レーザー衝撃強化装置の移動のみ、もしくは両者ともに移動する形態を含む。
【0034】
ワークのレーザー衝撃強化効率をさらに上げるため、好ましくは、二組の装置を用いてワークの上下両面に同時に強化処理を行う方法であり、具体的な処理プロセスは、
ワークを洗浄処理した後、上、下面にそれぞれ吸収保護層を施す第1ステップ、
二組のレーザー衝撃強化装置中の二つの共振空胴の開口端面をぞれぞれ吸収保護層の上面、下面に接触させ、その後それぞれ流体入口を通して共振空胴内へ流体を注入する第2ステップ、
二組のレーザー衝撃強化装置中のレーザー発生ユニットが発生したレーザーがそれぞれ二つのレーザー入口を経由して共振空胴に入り、流体を通過して吸収保護層に作用し、吸収保護層が衝撃波を形成するステップであって、該衝撃波の伝播プロセスAは、一部の衝撃波がワークに直接作用してワークを強化し、他の一部の衝撃波が共振空胴の内面へ伝播し、共振空胴内面の反射を経て、集波した後、再度衝撃波を形成し、前記伝播プロセスAを繰り返すものであり、このように複数回繰り返した後、レーザー発生ユニットをオフにする第3ステップ、
ワークを取り外し、表面に残った吸収保護層を洗浄する第4ステップ。
【0035】
上述した二種類の処理方法において、衝撃波が共振空胴内の発射収束を経て再度衝撃波を形成する過程の中で、気泡を形成して再衝撃強化の効果に影響を及ぼすおそれがあることを考慮すると、好ましくは、共振空胴に流体出口も設け、前記第2ステップにおいて、前記流体は流体入口を通して注入し、流体出口を通って流出させ、流動状態を形成することが好ましい。
【0036】
以下に、添付図面と実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を理解しやすくするためのものであり、本発明の保護範囲を何ら限定するものではない。
【0037】
(実施例1)
本実施例において、レーザー衝撃強化装置は
図4に示したように、レーザー発生ユニット10と、一端が開口した共振空胴19を含み、該共振空胴19の開口端面と吸収保護層6の表面が互いに密封接触し、“アンダーカット”構造を形成する。該共振空胴19にはさらにレーザー入口13と流体入口22と流体出口5が設けられている。
【0038】
処理用のワーク4の表面は吸収保護層6であり、本実施例において、ワーク4は金属ワークで、吸収保護層6はアルミニウム箔である。
吸収保護層6の表面は拘束層20である。
該拘束層20は共振空胴19内に位置し、流体入口22を通して注入された脱イオン水である。
【0039】
マイクロ型水ポンプ3が外部水槽2中の脱イオン水を管路8を介して流体入口22から共振空胴19内に圧送し、また流体出口5を経由して共振空胴19から排出して、循環流動状態を形成する。
管路8と流体入口22の連結部は第1連結部21であり、管路8と流体出口5の連結部は第2連結部7である。さらに、流量調整バルブを設置して流体の流量を測定する。
レーザーがレーザー入口13を通って効率よく安定して共振空胴19に入射させるため、レーザー発生ユニット10とレーザー入口13の間にライトガイドユニットを設けて、レーザー発生ユニットが発生したレーザーを効率的にレーザー入口に通して共振空胴に入射させる。
【0040】
該ライトガイドユニットは、光伝送ユニット11と、光伝送ユニットジョイント12と、平凸コリメータレンズ14と平凸集光レンズから構成される。
該ライトガイドユニットは、例えば
図5に示した光学デバイスで構成されたライトガイドユニットや、
図6に示した多関節ライトガイドアームを採用したライトガイドユニットや、
図7に示した特殊の光ファイバを採用したライトガイドユニットなどの他の構成を採用することもできる。
【0041】
動作状態においてプラズマ衝撃波がレーザー入口13で散失することを回避するため、レーザー入口13に第1スペーサ16と、耐高圧ガラス17と第2スペーサ18を設ける。耐高圧ガラス17は第1スペーサ16と第2スペーサ18の間に設置され、その材料は石英板又はレンズであってよい。
共振空胴19と吸収保護層6との接触面の密封性を高めるため、共振空胴19と吸収保護層6との接触面に密封部材23を設置する。
コンピュータ9はレーザー発生ユニット10とマイクロ型水ポンプ3を制御するためのものである。
【0042】
該レーザー衝撃強化装置を用いてワークに強化処理を行う処理方法は下記ステップを含む。
【0043】
第1ステップ:アセトンやアルコール等の液体を利用してワークを洗浄し、乾燥させた後にアルミニウム箔で構成された吸収保護層6をワーク4の表面に塗布する。
【0044】
第2ステップ:共振空胴19の開口端面と吸収保護層6の表面を密封部材23を介して密封接触させた後、水ポンプ3を動作させて流体入口22を経由して共振空胴19内に拘束層としての脱イオン水20を満たし、かつ、流体出口5によって脱イオン水20を流動させ、流量調整バルブ1を調整して脱イオン水20の流速を0.2mL/s程度にする。
【0045】
第3ステップ:コンピュータ9がレーザー発生ユニット10を制御して起動させる。
該レーザー発生ユニット10は、例えば532ナノメートル波長、25ナノ秒パルス幅、1−10ジュールパルスエネルギーのレーザー光を発生できるNd:YAG固体パルスレーザー発生ユニットを適用することができる。
【0046】
パルスレーザー装置のパラメータを調整してパラメータが所定の要求を満たすようにし、レーザービームはレーザー発生ユニット10から発射され、光伝送ユニット11を介して光伝送ユニットジョイント12に伝送される。
調整ジョイント12内の平凸集光レンズ15の上下距離を調整してレーザービームが脱イオン水20を通過して吸収保護層6に作用するようにする。
【0047】
吸収保護層6は、レーザーエネルギーを吸収して迅速に気化するとともに緻密な高温高圧プラズマを形成し、該プラズマがレーザーエネルギーを引き続き吸収した後に膨張して高強度な球面衝撃波を形成する。
ワーク4に向かった一部の球面衝撃波がワーク4に直接作用してワーク4を強化し、もう一部の球面衝撃波は入射波として共振空胴19内面で反射された後、レーザービームの焦点近傍で収束反射波を形成し、再度衝撃波となって前記のプロセスを繰り返すことでによって複合衝撃波を形成し、2回以上ワーク4を衝撃強化する。
【0048】
第4ステップ:レーザー衝撃が完了した後、コンピュータ9がレーザー発生ユニット10と水ポンプ3を順番にオフになるように制御してから、ワーク4を取り外し、その後ワーク4表面に残留した吸収保護層6を除去する。
【0049】
ワーク4表面の異なる領域にレーザー衝撃強化を行うために、本実施例は運動機構を利用して、ワーク4とレーザー衝撃強化装置が互いに運動するように構成した。具体的には、各寸法のワーク処理要求に適応ようするため、移動作業台を利用してワーク(
図10Aに示す)を移動させたり、工業ロボットを利用してレーザー衝撃強化装置を移動(
図10Bに示す)させたり、或いは、両者をともに移動(
図10Cに示す)させる構成であってもよい。
【0050】
具体的な処理方法は、上記処理プロセスにおいて、共振空胴19の開口端面と吸収保護層6の表面との接触位置を調整する方法であって、即ち、上記ステップ(3)の後に、運動機構によって、共振空胴19の開口端面と吸収保護層6の表面との互いの接触位置を変化させて第3ステップを繰り返す第3’ステップを一回又は複数回実行し、その後に第4ステップを実行する方法である。
【0051】
運動機構によって、ワーク表面の衝撃領域はオーバーラップ軌跡を形成する。
図9と10に示すように、共振空胴19の出口端面が
図9に示すものと異なる形状(円形、正方形又は長方形)である場合、形成された衝撃領域のオーバーラップした軌跡は
図10に示すようになる。
【0052】
ワーク4のレーザー衝撃強化効率をさらに高めるために、本実施例における二つのレーザー衝撃強化装置を使って該ワーク4の上面と下面に同時に強化処理を行う方法を用いることもできる。具体的な処理プロセスは
図11に示すようになる。
【0053】
第1ステップ:アセトン、アルコール等の液体でワーク4を洗浄し、且つ乾燥させた後、アルミニウム箔吸収層をワーク4表面に塗布する。
【0054】
第2ステップ:二つのレーザー衝撃強化装置の二つの共振空胴の開口端面と吸収保護層の表面を密封部材を介して密封接触させ、その後にそれぞれ水ポンプを起動して、各流体入口を経由して各共振空胴内に脱イオン水を注入させるともに、流体出口によってイオン水を循環流動させる。また、流量調整バルブを調整させて脱イオン水の流速を変更することもできる。
【0055】
第3ステップ:コンピュータによって該二つのレーザー衝撃強化装置のレーザー発生ユニットを起動させて、それぞれレーザー発生ユニットのパラメータを所定要求を満たすように調整する。レーザー発生ユニットから発射されたレーザーが、ライトガイドユニットを経由して共振空胴に入射し、脱イオン水を通過した後に吸収保護層に照射する。
吸収保護層は、レーザーエネルギーを吸収して迅速に気化するとともに緻密な高温高圧プラズマを形成する。該プラズマは、引き続きレーザーエネルギーを吸収した後に膨張して高強度な球面衝撃波を形成し、ワーク4に向かった一部の球面衝撃波はワーク4に直接作用してワーク4を強化し、もう一部の球面衝撃波は入射波として共振空胴内面で反射された後、レーザーの焦点近傍で収束反射波を形成し、再度衝撃波となって前記プロセスを繰り返す。ワークの上面と下面に複合衝撃波を形成し、ワーク4を2回以上衝撃強化する。
【0056】
第4ステップ:レーザー衝撃作業が完了した後、コンピュータによって二つのレーザー発生ユニットと水ポンプを順番にオフさせてから、ワーク4を取り外した後にワーク4の上面と下面に残留した吸収保護層を除去する。
【0057】
(実施例2)
本実施例において、
図12に示したように、レーザー衝撃強化装置はレーザー発生ユニットと一端が開口した共振空胴を含み、該共振空胴の開口端面と吸収保護層の表面が非密封的に接触しており、“アンダーカット”構造を形成している。
該共振空胴にはレーザー入口と流体入口と流体出口がさらに設けられいる。
処理対象となるワーク表面は吸収保護層を有する。
【0058】
本実施例において、ワークは金属ワークであり、吸収保護層はアルミニウム箔である。吸収保護層表面は拘束層である。
該拘束層は共振空胴内に位置され、且つ流体入口から注入された気体であって、例えば空気や窒素ガス等で構成されることができる。
該気体は、ガスポンプによって外部ガスボンベから流体入口を経由して共振空胴内に圧送され、また流体出口を経由して共振空胴から排出されることによって流動状態を形成させる。
【0059】
レーザーをレーザー入口から効率よく共振空胴に入射させるために、レーザー発生ユニットとレーザー入口の間にライトガイドユニットを設け、レーザー発生ユニットによって発生されたレーザーを効率よくレーザー入口を通して共振空胴に進入させる。
該ライトガイドユニットは、光伝送ユニットと、光伝送ユニットジョイントと、平凸コリメータレンズと、平凸集光レンズとで構成することができる。また、該ライトガイドユニットは他の形態を用いることもできる。
【0060】
動作状態の際にプラズマ衝撃波がレーザー入口で散失するのを避けるため、レーザー入口の付近に第1スペーサと耐高圧ガラスと第2スペーサを設けることができる。耐高圧ガラスは第1スペーサと第2スペーサの間に位置し、その材料は石英板又はレンズであってよい。
【0061】
共振空胴と吸収保護層との接触面は非密封であるため、そこで少量の気体の漏出が生じるが、この漏出は本実施例の有効性を阻害するものではなく、逆に、少量の漏出は共振空胴体の吸収保護層に対する摩擦力を低減することに寄与する。
【0062】
該レーザー衝撃強化装置を用いてワークに強化処理を実行する処理方法は、実施例1における処理方法と類似しており、ここでの詳細説明は省略する。
【0063】
以上、前記実施例を参照しながら本発明の技術構成を詳細に説明したが、理解すべきなのは、上述したものは本発明の具体的な実施例にすぎず、本発明を制限するものではなく、かつ、本発明の原則的な範囲内で行う如何なる修正、補足又は類似した形態の置換等も、すべて本発明の保護範囲に含まれる。