【課題を解決するための手段】
【0013】
我々は、今回、その結晶形態を本明細書において「本発明の化合物」と呼ぶことができる、マルトール第二鉄の異なる多形体を生成できることを見出した。1つの多形体型は、調製の容易性及び安定性、例えば熱力学的安定性等のある特定の態様が必要となる場合のいくつかの状況において好ましい可能性がある。他の状況では、より高い溶解度及び/又は優れた薬物動態のために、異なる多形体が好ましい可能性がある。本発明の多形体は、改善された若しくはより良好なバイオアベイラビリティ、又は改善された若しくはより良好な安定性若しくは溶解度の点で、利点を提供し得る。
【0014】
「マルトール第二鉄」という用語は、本明細書において使用される場合、トリマルトール第二鉄及びINNマルトール第二鉄という名称の両方を指す。
【0015】
本発明の一態様において、15.6及び22.5±0.25又は0.2度のそれぞれにおける、2θ(度)で表される特徴的な結晶ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、マルトール第二鉄のI型多形体であって、任意選択で、多形体の質量を基準として約92wt.%超、例えば約95wt.%超、好ましくは約96wt.%超、又は約98wt.%超、又は約99wt.%超、例えば約99.8wt.%超のマルトール第二鉄を含むI型多形体が提供される。
【0016】
本発明の更なる態様において、8.3±0.25度における、2θ(度)で表されるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、マルトール第二鉄のII型多形体が提供される。
【0017】
本発明の更に別の態様において、7.4±0.25度における、2θ(度)で表されるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、マルトール第二鉄のIII型多形体が提供される。
【0018】
本発明の更に別の態様において、9.5及び14.5±0.2度における、2θ(度)で表されるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、マルトール第二鉄のIV型多形体が提供される。
【0019】
2θ(度)の測定値は、一般に、室温、例えば約5℃から約40℃、好ましくは約10℃から約30℃での測定値を指す。
【0020】
ピークの相対強度は、試料調製技術、試料載置手順、用いられる特定の機器、及び試料の形態に依存して変動し得る。更に、機器の変動及び他の因子は、2θ値に影響し得る。したがって、本明細書で任意の実施形態において定義されるように、本発明の多形体に対するXRPDピークの帰属は、例えば、±0.2、例えば±0.1又は±0.05だけ変動し得る。XRPDピーク値に関する「約」という用語は、例えば±0.25又は±0.2、例えば±0.1又は±0.05を含み得る。これらの範囲は、本明細書において言及されるピーク値(度)のいずれにも適用され得る。
【0021】
本発明の別の実施形態において、I型又はII型多形体等のマルトール第二鉄多形体の調製のための方法であって、クエン酸第二鉄をマルトールアニオンと合わせて、マルトール第二鉄を含む混合物を形成する工程を含み、マルトール第二鉄種結晶の使用を含む、方法が提供される。種結晶は、本明細書に記載のようなI型及び/又はII型多形体を含んでもよく、これらの多形体は、本明細書に記載の方法を使用して調製してもよい。
【0022】
本発明の別の態様において、I型多形体の調製のための方法であって、クエン酸第二鉄をマルトールアニオンと合わせて、マルトール第二鉄多形体I型を含む混合物を形成する工程を含み、I型及び/又はII型多形体を含むマルトール第二鉄種結晶の使用を含み、好ましくは、形成された多形体を、乾燥前に(典型的には水で)洗浄する、方法が提供される。
【0023】
本発明の更なる態様において、II型多形体の調製のための方法であって、クエン酸第二鉄を溶液中のマルトールアニオンと合わせて、マルトール第二鉄多形体II型を含む混合物を形成する工程を含み、好ましくは、I型及び/又はII型多形体を含むマルトール第二鉄種結晶の使用を含み、好ましくは、形成された多形体を、乾燥前に(典型的には水で)洗浄する、方法が提供される。
【0024】
本発明はまた、本発明による多形体又はそれらの混合物と、薬学的に許容される補助剤、希釈剤又は担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0025】
更に、本発明は、本明細書において定義されるようなI型及びII型多形体を含む組成物を提供する。
【0026】
本発明の一態様において、本発明の多形体は、対象における、貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏の予防又は治療における使用のためのものである。貧血は、好ましくは、鉄欠乏性貧血である。
【0027】
本発明の更なる態様において、対象における、貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏の予防又は治療用の医薬の製造のための、本発明の多形体の使用が提供される。貧血は、好ましくは、鉄欠乏性貧血である。
【0028】
本発明は、更に、貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏の予防又は治療のための方法であって、本発明による多形体をそのような治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。貧血は、好ましくは、鉄欠乏性貧血である。
【0029】
好ましくは、本発明の多形体は、約90%超、例えば約95%超が結晶性(例えば、約98%超が結晶性、特に100%又はほぼ100%が結晶性)である型で得られる。「実質的に結晶性」とは、約60%超、好ましくは約75%超、より好ましくは約80%超(例えば約90%)が結晶性であることが含まれる。結晶化度(%)は、当業者により、粉末X線回折(XRPD)を使用して決定され得る。また、固体NMR、FT-IR、ラマン分光法、示差走査熱量測定(DSC)、微小熱量測定及び真密度の計算等の他の技術が使用してもよい。
【0030】
本発明の多形体は、近似的2θ値(度)、及び括弧内のそれらのピークの相対強度の表示を用いた、以下の特徴的な結晶ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とし得るが、約25〜100%のパーセント相対強度は「vs」(非常に強い)、約10〜25%は「s」(強い)、約3〜10%は「m」(中程度)、及び約1〜3%は「w」(弱い)で示される。
【0031】
I型:
I型多形体は、好ましくは、およそ(すなわち約、又は近似的に)15.6及び22.5±0.25又は0.2度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。回折パターンは、典型的には、約6.9、7.4、8.3、9.3、10.5、又は約11.8度、例えば8.3又は11.8±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、又は全て、又はそれぞれにおけるピークを含まない。
【0032】
好ましくは、マルトール第二鉄のI型多形体は、15.6及び22.5±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度における、2θ(度)で表される特徴的な結晶ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0033】
I型多形体は、約11.4、12.8、13.7、16.9、18.5、19.6、20.0、20.7、23.0、23.8、25.2、25.8又は28.0±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される1つ又は複数の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とし得る。
【0034】
好ましくは、I型多形体は、約11.4、12.8、13.7、16.9、18.5、19.6、20.0、20.7、23.0、23.8、25.2、25.8又は28.0±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される2つ以上、3つ以上、4つ以上又は5つ以上の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0035】
例えば、I型多形体は、好ましくは、11.4、15.6、16.9、22.5、及び23.8度のそれぞれにおける、並びに任意選択で、13.7、19.6、20.7、22.5、25.2及び25.8±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、2つ以上、3つ以上又はそれぞれにおける2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。
【0036】
例えば、I型多形体は、約11.4、12.8、13.7、15.6、16.9、18.5、19.6、20.0、20.7、22.5、23.0、23.8、25.2及び25.8±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度のそれぞれにおける、2θ(度)で表されるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とし得るが、任意選択で、回折パターンは、約8.3、10.5、及び約11.7度、例えば8.3、10.5又は11.7±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、又は両方、又はそれぞれにおけるピークを含まない。
【0037】
最も好ましくは、I型多形体は、以降の実施例1により示されるような特徴的なピークの全てを含み、I型多形体は、好ましくは、室温で本質的に
図3に示される粉末X線ディフラクトグラムを特徴とし得る。
【0038】
I型多形体は、23℃において、蒸留水又は脱イオン水等の水に対し、約9.0mg/ml以上、例えば約9.0mg/mlから約12mg/ml、例えば約9.3mg/mlから約11mg/ml、又は約9.5mg/mlから約10.5mg/ml、例えば約9.6mg/mlの溶解度を有し得る。
【0039】
I型多形体は、好ましくは、多形体の質量を基準として、約92wt.%超、例えば約95wt.%超、好ましくは約96wt.%超、又は約98wt.%超、又は約99wt.%超、例えば約99.8wt.%超の結晶性マルトール第二鉄を含む。
【0040】
I型多形体の融点は、典型的には約300℃、例えば299.8℃±0.5℃である。
【0041】
代替的に又は追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて定義されるようなI型多形体は、約300℃、例えば299.8℃±0.5℃の融点を特徴とし得る。
【0042】
II型:
II型多形体は、好ましくは、およそ(すなわち約、又は近似的に)8.3±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。回折パターンは、典型的には、約6.9、7.4、9.3、9.5、10.5、11.4又は約13.7度、例えば11.4又は13.8±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、又は全て、又はそれぞれにおけるピークを含まない。
【0043】
好ましくは、II型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)8.3及び11.8度±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含み、任意選択で、回折パターンは、約11.4、12.8、16.9又は19.6±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2つ以上におけるピークを含まない。
【0044】
或いは、II型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)8.3及び11.8度±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含み、回折パターンは、11.4及び/又は19.6±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度におけるピークを含まない。
【0045】
好ましくは、II型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)8.3、11.8、13.4、14.5、及び15.6度のそれぞれ、並びに任意選択で、15.5、16.7、21.1、22.8、及び24.6度±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、2つ以上、3つ以上、又はそれぞれの2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。
【0046】
典型的には、II型多形体は、約11.8、12.5、13.4、14.5、15.5、15.6、16.2、16.7、18.7、19.2、19.9、20.6、21.1、22.8、23.7、24.6、25.1、25.7、27.1又は29.1±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される1つ又は複数の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0047】
より好ましくは、II型多形体は、約11.8、12.5、13.4、14.5、15.5、15.6、16.2、16.7、18.7、19.2、19.9、20.6、21.1、21.7、22.8、23.7、24.6、25.1又は25.7±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される2つ以上、3つ以上、4つ以上又は5つ以上の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0048】
例えば、II型多形体は、約8.3、11.8、12.5、13.4、14.5、15.5、15.6、16.2、16.7、18.7、19.2、19.9、20.6、21.1、22.8、23.7、24.6、25.1、及び25.7度、並びに任意選択で、27.1及び29.1±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度のそれぞれにおける、2θ(度)で表されるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とし得るが、任意選択で、回折パターンは、約11.4、12.7、16.9又は19.6±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度、好ましくは11.4±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、又は全てにおけるピークを含まない。
【0049】
最も好ましくは、II型多形体は、以降の実施例2により示されるような特徴的なピークの全てを含み、II型多形体は、室温で本質的に
図5に示される粉末X線ディフラクトグラムを特徴とし得る。
【0050】
II型多形体は、23℃において、蒸留水又は脱イオン水等の水に対し、7.0mg/ml以下、例えば約4.5mg/mlから約6.9mg/ml、例えば約5mg/mlから約6.5mg/ml、又は約5.5mg/mlから約6.2mg/ml、例えば約5.9mg/mlの溶解度を有し得る。
【0051】
II型多形体は、好ましくは、多形体の質量を基準として、70質量%超、80質量%超、又は90質量%超、例えば95質量%超、又は99質量%超の結晶性マルトール第二鉄を含む。
【0052】
II型多形体の融点は、典型的には約294℃、例えば約293.7℃±1℃である。
【0053】
代替的に又は追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて定義されるようなII型多形体は、約294℃、例えば約293.7℃±1℃の融点を特徴とし得る。
【0054】
III型:
III型多形体は、好ましくは、およそ(すなわち約、又は近似的に)7.4±0.3、±0.25又は0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。回折パターンは、典型的には、約6.9、8.3、9.5、11.3、12.0、12.5、12.9、14.5又は約15.8度、例えば6.9、9.5、11.3±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、又は2つ以上、又は3つ以上、又はそれぞれにおけるピークを含まない。
【0055】
III型多形体は、典型的には、結晶構造内に例えば1-4-ジオキサンを含む溶媒和物である。
【0056】
好ましくは、III型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)7.4及び9.3度、並びに任意選択で、22.5度±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含み、任意選択で、回折パターンは、約9.5、11.4、12.9、16.3、19.6、19.8、及び22.9±0.1、例えば約±0.05度の2つ以上におけるピークを含まない。
【0057】
或いは、III型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)7.4及び9.3及び22.5度±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度のそれぞれの2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。
【0058】
好ましくは、III型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)7.4、9.3、22.1、22.5及び23.6度のそれぞれ、並びに任意選択で、11.6、13.6、14.0、15.1、17.0、18.2、24.9及び27.4度±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、2つ以上、3つ以上、又はそれぞれの2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。
【0059】
典型的には、III型多形体は、約9.3、10.5、11.6、13.6、14.0、15.1、17.0、17.7、18.2、18.7、20.5、21.2、22.1、22.5、23.6、24.9、27.4又は30.6±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される1つ又は複数の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0060】
より好ましくは、III型多形体は、約9.3、10.5、11.6、13.6、14.0、15.1、17.0、17.7、18.2、18.7、20.5、21.2、22.1、22.5、23.6、24.9、27.4又は30.6±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される2つ以上、3つ以上、4つ以上又は5つ以上の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0061】
例えば、III型多形体は、約7.4、9.3、11.6、13.6、14.0、15.1、17.0、17.7、18.2、18.7、20.5、21.2、22.1、22.5、23.6、24.9、及び27.4±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度のそれぞれにおける、2θ(度)で表されるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とし得る。
【0062】
最も好ましくは、III型多形体は、以降の実施例3により示されるような特徴的なピークの全てを含み、III型多形体は、室温で本質的に
図7に示される粉末X線ディフラクトグラムを特徴とし得る。
【0063】
III型多形体は、好ましくは、多形体の質量を基準として、70質量%超、80質量%超、又は90質量%超、例えば95質量%超、又は99質量%超の結晶性マルトール第二鉄を含む。
【0064】
III型多形体の融点は、典型的には約301℃、例えば301℃±0.5℃である。
【0065】
代替的に又は追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて定義されるようなIII型多形体は、約301℃、例えば301℃±0.5℃の融点を特徴とし得る。
【0066】
IV型:
IV型多形体は、好ましくは、およそ(すなわち約、又は近似的に)9.5及び14.5±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。回折パターンは、典型的には、約6.9、8.3、10.5、11.7、12.0、12.2、12.5、13.0、13.4及び約15.8度、例えば6.9、8.3、11.7±0.25又は±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、又は2つ以上、又は3つ以上、又はそれぞれにおけるピークを含まない。
【0067】
IV型は、典型的には溶媒和物ではなく、一般に結晶構造内に溶媒を含まない。
【0068】
好ましくは、IV型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)9.5及び14.5度、並びに任意選択で、15.5度±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。
【0069】
或いは、IV型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)9.5、14.5、及び15.5度±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。
【0070】
好ましくは、IV型多形体は、およそ(すなわち約、又は近似的に)9.5、11.4、12.8、14.5、及び15.5度のそれぞれ、並びに任意選択で、19.9、23.1、25.0及び25.8度±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度の1つ若しくは複数、2つ以上、3つ以上、又はそれぞれの2θ値(度)を有する特徴的な結晶ピークを含む。
【0071】
典型的には、IV型多形体は、約11.4、12.8、13.7、15.5、18.5、19.9、23.1、25.0及び25.8±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される1つ又は複数の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0072】
より好ましくは、IV型多形体は、約11.4、12.8、13.7、15.5、18.5、19.9、23.1、25.0及び25.8±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度から選択される、2θ(度)で表される2つ以上、3つ以上、4つ以上又は5つ以上の更なるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0073】
例えば、IV型多形体は、9.5、11.4、12.8、14.5、15.5、19.9、及び23.1±0.2又は±0.1、例えば約±0.05度のそれぞれにおける、2θ(度)で表されるピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とし得る。
【0074】
最も好ましくは、IV型多形体は、以降の実施例4により示されるような特徴的なピークの全てを含み、IV型多形体は、室温で本質的に
図9に示される粉末X線ディフラクトグラムを特徴とし得る。
【0075】
IV型多形体は、好ましくは、多形体の質量を基準として、70質量%超、80質量%超、又は90質量%超、例えば95質量%超、又は99質量%超の結晶性マルトール第二鉄を含む。
【0076】
IV型多形体の融点は、典型的には約303℃、例えば302.8℃±1又は±0.5℃である。
【0077】
代替的に又は追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて定義されるようなIV型多形体は、約303℃、例えば302.8℃±1又は±0.5℃の融点を特徴とし得る。
【0078】
本発明の多形体は、好ましくは、実質的に結晶学的に純粋である。「実質的に結晶学的に純粋」とは、粉末X線回折(XRPD)測定により判断されるように、約5%未満、より好ましくは約3%未満、特に約1%未満の化合物の他の結晶形態及び/又は化合物の非晶質形態を含有する、化合物の結晶形態を意味する。
【0079】
したがって、例えばXRPD、固体
1H NMR、ラマン又は近IRにより決定されるように、多形体I型は、好ましくはIIからIV型を実質的に含まない。また、例えばXRPD、固体
1H NMR、ラマン又は近IRにより決定されるように、多形体II型は、好ましくはI、III及びIV型を実質的に含まない。また、例えばXRPD、固体
1H NMR、ラマン又は近IRにより決定されるように、III型は、好ましくはI、II及びIV型を実質的に含まず、IV型は、好ましくはI、II及びIII型を実質的に含まない。本発明のこの態様において、「実質的に含まない」は、多形体の量を基準として、他の型の量の合計が50質量%未満、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、又は好ましくは0.1質量%以下、例えば約0質量%であることを意味する。
【0080】
驚くべきことに、バッチサイズ、再結晶化又はスラリー化のための溶媒、種結晶の種類、スラリー条件及び洗浄又は乾燥条件等のプロセス条件は、マルトール第二鉄のどの多形体が生成されるかに影響し得ることが判明した。
【0081】
本発明は、I型又はII型等のマルトール第二鉄多形体の調製のための方法であって、クエン酸第二鉄をマルトールアニオンと合わせて、マルトール第二鉄多形体を形成する工程を含み、本明細書に記載のようなI型及び/又はII型多形体の種結晶等のマルトール第二鉄種結晶の使用を含む方法を提供する。
【0082】
本明細書において定義されるようなIII型多形体は、本明細書において定義されるようなI型及び/又はII型多形体を、1,4-ジオキサンを含む溶液と合わせて、混合物を形成する工程を含む方法により生成し得る。溶液はまた、水を含んでもよい。溶液又は混合物の温度は、約30℃超、例えば31℃から50℃、例えば35℃から45℃、例えば約40℃であってもよい。
【0083】
混合物は、30分から2時間、例えば約1時間の期間撹拌してもよい。
【0084】
好ましくは、ある期間の撹拌後、混合物は、濾過、例えば研磨濾過(polish filter)する。当業者には、例えば焼結ガラスフィルターを使用することによる研磨濾過が、溶液から実質的に全ての固体粒子を除去し得ることが理解される。
【0085】
好ましくは、多形体III型を生成する方法は、種結晶の使用を含まない。
【0086】
好ましくは研磨濾過された混合物は、好ましくは室温まで冷却し、任意選択で、吸引濾過して固体を得る。得られた固体は、例えば真空炉内で、例えば少なくとも40℃、例えば約45℃の温度で乾燥させてもよい。得られた固体は、多形体III型を含む。
【0087】
本明細書において定義されるようなIV型多形体は、本明細書において定義されるようなI型及び/又はII型多形体を、2-クロロブタン、TBME(tert-ブチルメチルエーテル)、又は3-メチル-1-ブタノールの1つ又は複数を含む溶液と合わせて、混合物を形成し、続いて結晶化させる工程を含む方法により生成し得る。
【0088】
IV型多形体は、上記溶媒からの冷却結晶化、例えば混合溶媒冷却結晶化の後に得ることができる。
【0089】
好ましくは、多形体IV型を生成する方法は、種結晶の使用を含まない。
【0090】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおける、I型又はII型多形体を形成するための本発明の方法は、
(a)クエン酸第二鉄を含む水溶液、例えば水等の水溶液中のクエン酸第二鉄の溶液を形成する工程と、
(b)マルトールを、水等の水溶液中の塩基と合わせて、マルトールアニオンを含む溶液を形成する工程と、
(c)クエン酸第二鉄の水溶液を、マルトールアニオンを含む水溶液と合わせる工程であって、マルトール第二鉄(多形体I型及び/又はII型)の種結晶を添加する、工程と、
(d)マルトール第二鉄の多形体を単離する工程と
を含んでもよい。
【0091】
典型的には、工程(a)は、溶液中のクエン酸第二鉄を加熱し、続いて例えば約35℃以下、例えば約20℃から30℃の温度に冷却する工程を含む。
【0092】
工程(b)において、溶液の温度は、好ましくは、約15℃から30℃、例えば約20℃から25℃の温度に維持する。塩基は、任意の好適な塩基であってもよいが、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又はカリウムである。
【0093】
工程(c)に関しては、マルトール第二鉄を形成するのに必要なマルトールアニオンの鉄に対するモル比3:1のモル量を超える、鉄に対して好ましくはモル過剰のマルトールアニオンを、好ましくは使用する。例えば、マルトールアニオンの第二鉄に対するモル比は、好ましくは3:1超であり、例えば、マルトールアニオンの鉄に対するモル比は、約3.5:1から3.05:1、例えば約3.15:1であってもよい。
【0094】
工程(c)における温度は、約35℃未満、例えば約20℃から約25℃に維持してもよい。マルトール第二鉄種結晶は、好ましくは、使用されるクエン酸第二鉄及びマルトールの量で得ることができるマルトール第二鉄の理論収量を基準として、約1.5%w/w未満、例えば好ましくはマルトール第二鉄の理論又は最大可能収量の約0.1%w/wから1.0%w/w又は0.5%w/wまでの量で添加する。
【0095】
任意選択で、合わせた溶液を撹拌する。撹拌は、少なくとも10分間、例えば1時間以上、例えば2時間から6時間の期間継続してもよい。
【0096】
一般に可溶性副生成物を含む、水等の水溶液中のマルトール第二鉄のスラリーを、工程(c)の間に形成することができ、スラリーは、例えば撹拌しながら少なくとも10分間等の期間、室温に放置してもよい。或いは、スラリーは、10分間超の間、例えば少なくとも30分間又は少なくとも2時間、例えば、任意選択の撹拌を行いながら、室温に放置してもよい。
【0097】
スラリーは、典型的には、溶液中のマルトール第二鉄の沈殿物、すなわちマルトール第二鉄の懸濁液を含む。スラリーは、好ましくは、可溶性副生成物を除去するために、例えば少なくとも3回水で洗浄し、得られたマルトール第二鉄は乾燥させる。乾燥は、当技術分野において公知の任意の手段を使用して行うことができる。濾床乾燥機(filter bed dryer)を使用してもよい。
【0098】
多形体I型を形成する方法は、典型的には、多形体I型及び/又はII型を含む種結晶等を播種する工程と、濾過等により単離する工程と、形成された多形体I型を含む沈殿物を水等で洗浄する工程と、洗浄された多形体を、真空炉内等で30℃超、例えば45℃超の温度で、又は真空なしで60℃超の温度で、例えば1時間から12時間の期間乾燥させる工程とを含む。沈殿物を含むスラリーは、好ましくは、室温、例えば約5℃から約40℃、好ましくは約10℃から約30℃で、30時間未満の間、例えば2時間から24時間撹拌する。
【0099】
多形体II型を形成する方法は、典型的には、多形体I型及び/又はII型を含む種結晶等を播種する工程と、濾過等により単離する工程と、形成された多形体II型を含む沈殿物を水等で洗浄する工程と、洗浄された多形体を、真空炉内等で30℃超、例えば45℃超の温度で、又は真空なしで60℃超の温度で、例えば12時間超の期間乾燥させる工程とを含む。沈殿物を含むスラリーは、好ましくは、少なくとも35℃、例えば約40℃の温度で、30時間超の間、例えば36時間から48時間撹拌する。
【0100】
II型多形体はまた、I型を含む水性スラリーを、35℃を超える、又は少なくとも35℃、例えば約40℃以上の温度で、長期間、例えば少なくとも48時間撹拌することにより形成し得る。
【0101】
I型多形体を生成するために使用される種結晶は、好ましくは、I型を含む種結晶である。結晶は、実施例1に記載するようにして得ることができる。
【0102】
II型多形体を生成するために使用する種結晶は、本明細書に記載するようにして調製し得る、I型及びII型多形体を含む種結晶であってもよい。
【0103】
方法は、連続又はバッチプロセスとして行うことができる。方法がバッチプロセスとして行う場合、バッチの量は、驚くべきことに、どの多形体型が生成されるかに影響し得る。
【0104】
バッチサイズが20kg以下、例えば1kgから18kg又は5kg若しくは10kgから16kgである場合、I型多形体が生成され得る。これは、短い乾燥時間に起因し得る。或いは、バッチサイズが20kg超、例えば21kgから100kg、又は25kgから50kg、例えば22kgから28kgである場合、長い乾燥時間に起因してII型多形体が生成され得る。バッチサイズが20kg超であり、種結晶がI型及びII型多形体の混合物である場合、II型多形体が生成され得る。バッチサイズが20kg超であり、種結晶がI型多形体のものである場合、I型及びII型の混合物が生成され得る。
【0105】
当業者に理解され得るように、得られる結晶形態は、結晶化プロセスの速度論及び熱力学の両方に依存する。ある特定の熱力学的条件下(溶媒系、温度、圧力及び本発明の化合物の濃度)において、1つの結晶形態は、別の(又は実際に他のいかなる)結晶形態よりも安定となり得る。しかしながら、相対的に、比較的低い熱力学的安定性を有し得る他の結晶形態が、速度論的に有利となり得る。したがって、更に、時間、不純物プロファイル、撹拌、種の存在等の速度論的因子もまた、どの形態が現れるかに影響し得る。したがって、本明細書において議論される手順は、マルトール第二鉄の特定の結晶形態を得るために、当業者により適宜適合され得る。
【0106】
上で述べたように、本発明の多形体はまた、室温において、本明細書に添付する
図3、
図5、
図7又は
図9に示される粉末X線回折パターンに本質的に従う粉末X線回折パターンを特徴とし得る(実施例1から4を参照されたい)。I型、II型、III型及びIV型のそれぞれに関して同じ結晶形態が形成されたことが、それぞれのパターン[すなわち、好ましい試料方位並びにそれぞれの機器設定(例えば、装置の種類、標準化及び/又は較正)等の実験誤差を許容した、ピークの相対的間隔]から当業者に明確となった場合、多形体型が別のものと「本質的に」同じ粉末X線回折パターンを示すことが、当業者に理解される。
【0107】
本発明の多形体は、驚異的に改善された物理的及び/又は化学的安定性を有し得る。
【0108】
本明細書において定義される「安定」という用語は、化学的安定性及び固体状態安定性を含む。
【0109】
「化学的安定性」とは、化合物が、単離された固体形態で、又は、化合物が薬学的に許容される担体、希釈剤若しくは補助剤と混合して提供され得る固体製剤の形態で、通常の保存条件下、僅かな程度の化学的劣化又は分解を伴って保存し得ることが含まれる。
【0110】
「固体状態安定性」には、化合物を、単離された固体形態で、又は化合物が薬学的に許容される担体、希釈剤若しくは補助剤と混合して提供され得る固体製剤の形態で、通常の保存条件下で保存でき、僅かな程度の固体状態の変換(例えば、結晶化、再結晶化、結晶性の喪失、固体状態相転移、水和、脱水、溶媒和又は脱溶媒和)が無視できる程度であることを含める。
【0111】
「通常の保存条件」の例は、マイナス80℃からプラス50℃の間(好ましくは0℃から40℃の間、より好ましくは室温、例えば15℃から30℃の間)の温度、0.1バールから2バールの間(好ましくは大気圧)の圧力、及び/又は460ルクスのUV/可視光への長期間(すなわち6カ月以上)の曝露を含む。そのような条件下において、本発明の多形体は、約15%未満、より好ましくは約10%未満、特に約5%未満が、適宜、化学的に劣化/分解している、又は固体状態が変換されていることを見出し得る。上述の温度及び圧力の上限及び下限は、通常の保存条件の極値を表していること、並びに、これらの極値のある特定の組合せは、通常の保存中には経験されない(例えば、50℃の温度及び0.1バールの圧力)ことが、当業者に理解される。
【0112】
「通常の保存条件」という用語はまた、5%から95%(好ましくは10%から60%)の間の相対湿度を含み得る。しかしながら、本発明によるある特定の結晶形態の場合、通常の温度/圧力において、ある特定の極値の相対湿度への長期曝露の結果、水和及び/又は脱水による立体構造又は結晶構造の変化が生じ得る。
【0113】
本発明の化合物の調製及び特性決定は、以降で説明する。本発明の化合物の異なる結晶形態は、粉末X線回折(XRPD)法を使用して、例えば以降で説明するようにして容易に特定決定できる。
【0114】
本発明の多形体は、当業者に周知の技術、例えばデカンテーション、濾過及び/又は遠心分離を使用して単離し得る。
【0115】
我々は、本明細書に記載の結晶化プロセスを用いることにより、高い化学的純度を有する本発明の化合物を生成することが可能であることを見出した。
【0116】
本発明の多形体が本明細書に記載のようにして調製する場合、得られる多形体は、マルトール第二鉄の他の多形体と比較して、上述のような改善された化学的及び固体状態安定性、並びに改善された溶解度及び吸湿性プロファイルを有する型であり得る。
【0117】
本発明の多形体は、薬理活性を有するため、有用である。したがって、それらは、医薬品として適用される。
【0118】
本発明の多形体は、鉄欠乏性貧血等の貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏の治療及び/又は予防的治療の両方において適用される。
【0119】
「対象」という用語は、本明細書において使用される場合、哺乳動物、例えばヒト、並びに動物、例えばウシ、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ及びブタを含む。したがって、上で議論した使用及び治療方法は、ヒト又は動物の身体の治療を含み得る。
【0120】
「有効量」という用語は、治療された患者に治療効果を付与する多形体の量を指す。効果は、客観的(例えば、いくつかの試験若しくはマーカーにより測定可能)又は主観的(例えば、対象が効果を示唆する、若しくは効果を感じる)であってもよい。
【0121】
本発明の多形体及び組成物は、薬学的に許容される剤形で、経口投与、静脈内投与、皮下投与、口腔内投与、直腸内投与、経皮投与、経鼻投与、気管内投与、気管支内投与、舌下投与、任意の他の非経口経路又は吸入により投与し得る。例えば、医薬組成物は、液剤、懸濁剤、ヘプタフルオロアルカンエアロゾル剤及び乾燥粉末製剤の形態で局所的に(例えば、肺及び/若しくは気道又は皮膚に);或いは、例えば、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤若しくは顆粒剤の形態で経口投与により、又は液剤若しくは懸濁剤の形態での非経口投与により、又は皮下投与により、又は坐剤の形態での直腸内投与により、又は経皮投与により全身的に投与し得る。好ましくは、本発明の多形体及び組成物は、経口投与する。
【0122】
本発明の多形体は、単独で投与してもよいが、好ましくは、経口投与用の錠剤、カプセル剤又はエリキシル剤、直腸内投与用の坐剤、非経口又は筋肉内投与用の無菌溶液剤又は懸濁液剤、及び同様のものを含む、公知の医薬製剤として投与する。医薬製剤の種類は、意図される投与経路及び標準的な薬務を十分考慮して選択し得る。そのような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対し化学的に不活性であってもよく、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さなくてもよい。
【0123】
そのような製剤は、標準的及び/許容される薬務に従って調製し得る。別様には、好適な製剤の調製は、発明によらずに、ルーチン的な技術を使用して、並びに/又は標準的及び/若しくは許容される薬務に従って、当業者により達成され得る。
【0124】
したがって、本発明の更なる態様によれば、薬学的に許容される補助剤、希釈剤及び/又は担体と混合して、上で定義されたような本発明の多形体を含む医薬製剤が提供される。そのような製剤は、上述のようにして投与し得る。医薬製剤の活性成分である本発明の多形体(すなわち結晶形態)は、より小さい粒子まで破砕又は粉砕してもよい。
【0125】
本発明の多形体(すなわち活性成分)の有効性及び物理的特性等に応じて、挙げることができる医薬製剤は、活性成分(すなわち本発明の多形体)が少なくとも1質量%(又は少なくとも10質量%、少なくとも30質量%又は少なくとも50質量%)で存在するものを含む。すなわち、活性成分の医薬組成物の他の成分(すなわち、補助剤、希釈剤及び担体の添加)に対する比は、質量比少なくとも1:99(又は少なくとも10:90、少なくとも30:70、又は少なくとも50:50)である。
【0126】
製剤中の本発明の多形体の量は、状態の重症度、及び治療される患者、並びに用いられる化合物に依存するが、発明によらずに当業者により決定され得る。
【0127】
本発明は、更に、上で定義されたような医薬製剤の調製のための方法であって、上で定義されたような本発明の多形体を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤又は担体と混合する工程を含む方法を提供する。
【0128】
本発明の多形体はまた、他の治療薬剤、例えば、鉄欠乏性貧血等の貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏の治療に同じく有用であるものと組み合わせてもよい。或いは、本発明の多形体は、使用される唯一の治療薬であってもよい。本発明の多形体及び組成物はまた、他の治療と組み合わせてもよい。
【0129】
障害、及び治療される患者、並びに投与経路に依存して、本発明の多形体及び組成物は、それを必要とする患者に様々な治療有効用量で投与し得る。しかしながら、哺乳動物、特にヒトに投与される用量は、本発明に関連して、合理的な時間枠にわたって哺乳動物内で治療応答をもたらすのに十分であるべきである。厳密な用量及び組成の選択、並びに最も適切な送達レジメンは、中でも、製剤の薬理学的特性、治療されている状態の性質及び重症度、並びにレシピエントの健康状態及び精神的な鋭敏さ、更に、特定の化合物の有効性、治療される患者の年齢、状態、体重、性別及び応答、並びに疾患の段階/重症度によっても影響されることが、当業者に認識される。
【0130】
投与は、連続的又は断続的(例えば、ボーラス注入による)であってもよい。投与量はまた、投与のタイミング及び頻度により決定され得る。経口又は非経口投与の場合、本発明の多形体の投与量は、1日約0.01mgから約1000mgまで変動し得る。
【0131】
いずれにしても、医師又は他の当業者は、個々の患者に最も好適となる実際の投与量をルーチン的に決定することができる。上述の投与量は、平均的な場合の例であり、当然ながら、より高い、又はより低い投与量範囲が有利となる個々の状況が存在し得、それらは本発明の範囲内である。
【0132】
本明細書において、例えば量(例えば値、質量、体積、モル)、温度、結晶化度、劣化度、純度、溶解の程度及び活性成分の用量に関連して「約」という単語が用いられる場合は常に、そのような変数が近似的であり、したがって本明細書において指定される数から±10%、例えば±5%、好ましくは±2%(例えば±1%)変動し得ることが理解される。
【0133】
本発明の多形体は、マルトール第二鉄の他の多形体型と比較して、改善された取扱いの容易性を提供する型であり得、改善された化学的及び固体状態安定性を有する型で生成され得るという利点を有する。したがって、本発明の多形体は、長期間にわたり保存される場合安定であり得る。特に、多形体II型は、マルトール第二鉄の他の多形体型と比較して、改善された熱力学的安定性を有し得る。
【0134】
本発明の多形体はまた、マルトール第二鉄の他の多形体型と比較して、改善された溶解度及び吸湿性プロファイルを有し得る。
【0135】
本発明の化合物、すなわち多形体I、II、III及びIV型はまた、マルトール第二鉄の他の多形体型より良好な収量で、より高い純度で、より短い時間で、より便利に、及びより低い費用で調製し得るという利点を有し得る。
【0136】
本発明の化合物、すなわち多形体I、II、III及びIV型はまた、上述の適応又はその他に使用されるかを問わず、マルトール第二鉄の他の多形体に比べて、より有効であり、より毒性が低く、より長く作用し、より強力であり、生じる副作用が少なく、吸収がより容易であり、並びに/又はより良好な薬物動態プロファイル(例えばより高い経口バイオアベイラビリティ及び/若しくはより低いクリアランス)を有し、並びに/又は他の有用な薬理学的、物理的、若しくは化学的特性を有することができるという利点を有し得る。
【0137】
更なる態様において、本発明は、薬学的に許容される希釈剤又は担体を一緒に含む本発明による医薬組成物に関する。
【0138】
「薬学的に許容される」とは、担体が、活性成分(マルトール第二鉄)と適合性があり、そのレシピエントに有害とはならないという点で「許容可能」でなければならないという通常の意味が含まれる。
【0139】
組成物は、散剤、カプセル剤若しくは錠剤等の固体でも、又は液体の形態でもよい。好適な固体希釈剤及び担体は、デンプン、デキストリン及びステアリン酸マグネシウムを含む。メチルセルロース及びポビドン等の安定剤及び懸濁化剤、並びにラクトース等の他の錠剤化剤(tableting agent)及びAerosil 2000(商標)等の流動助剤もまた使用し得る。
【0140】
特に有用な希釈剤及び担体は、湿潤剤又は界面活性剤、好ましくは非イオン性又はイオン性界面活性剤である。好適な非イオン性界面活性剤の例は、ポリオキシル-10-オレイルエーテル及びポリソルベートを含む。好適なイオン性界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0141】
液体担体は、無菌及び発熱物質不含であってもよく、その例は、生理食塩水及び水である。
【0142】
本発明の多形体及び組成物は、鉄錯体の製剤に関連した特定の利点を提供し得る。鉄化合物の液体製剤は、経口及び非経口投与に特に好適となり得る。そのような用途において、いくつかの公知の鉄錯体の溶解度は不十分である。
【0143】
マルトール第二鉄多形体及び前記の型を含む組成物は、様々な様式での獣医学又はヒトにおける使用のための医薬品として使用するために、生理学的に許容される希釈剤又は担体と配合し得る。しかしながら、希釈剤又は担体が水及び/又は有機溶媒中の非無菌溶液以外である組成物が、一般に好ましい。したがって、マルトール第二鉄は、液体希釈剤を組み込んだ水性、油性又は乳化組成物として適用できるが、液体希釈剤は、最も一般的には、非経口投与に用いられ、したがって、便利には無菌及び発熱物質不含であり得る。したがって、特に興味深い組成物の1つの形態は、無菌注射溶液の形態を有する。しかしながら、ヒトにおける貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏の治療には、より一般的には経口投与が好ましく、本発明の組成物は、好ましくはその経路で与えられる。
【0144】
ヒトにおける経口投与の場合、デンプン、ラクトース、デキストリン又はステアリン酸マグネシウム等の固体担体を組み込んだ組成物を使用することがより一般的である。そのような固体組成物は、便利には、例えば錠剤、カプセル剤(スパンスル剤を含む)等の形態に成形し得る。しかしながら、固体形態を嚥下するのが困難である患者への経口投与には、液体調製物が特に有用である。そのような困難は、関節炎に関連した貧血に罹患している患者においてよく見られる。
【0145】
注射又は経口経路以外の投与形態、例えば坐剤の使用もまた考慮し得る。
【0146】
本発明の2つ以上のマルトール第二鉄多形体が医薬組成物に含有されてもよいが、単一の多形体だけが存在するのが好ましく、他の活性化合物も含まれてもよい。典型的な添加剤としては、貧血の治療を促進する能力を有する化合物、例えば葉酸が挙げられる。亜鉛源も挙げることができる。
【0147】
好ましくは、本発明の多形体及び組成物は、薬における使用に好適である。
【0148】
本発明の多形体及び組成物は、特に消化管の出血性障害から生じる重篤な貧血の治療に特に有用である。そのような障害を有する患者の多くは、標準的な第一鉄抗貧血化合物に耐性を有さない。第一鉄調製物は、そのような状態においては禁忌となり得るか、又は警告の対象となり得る。更に、輸血又は静脈注射を伴う入院治療を必要とする可能性がある患者は、本発明の多形体及び組成物により、外来患者としての治療が可能になり、治療費がかなり削減される。
【0149】
本発明の多形体及び医薬組成物は、対象の体内若しくは血流内の鉄レベルの増加並びに/又は貧血を伴う若しくは伴わない鉄欠乏等の貧血の予防及び/若しくは治療をもたらすための対象の治療方法であって、前記対象に、以前に定義されたような有効量の組成物を投与する工程を含む方法において使用し得る。
【0150】
本明細書に記載の多形体及び組成物は、貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏の治療において有用である。「鉄欠乏」という用語は、本明細書において使用される場合、貧血を伴わない鉄欠乏を指し、これは、例えば、貧血にまで進行しなかった鉄欠乏であってもよい。誤解を避けるために、貧血を伴う又は伴わない鉄欠乏は、鉄による治療が治療上有益であるような、鉄欠乏に関連した全ての疾患及び状態に関する。そのような疾患は、合併症としての鉄欠乏又は兆候及び症状をもたらす鉄欠乏を有すると認識される疾患である。鉄欠乏はまた、鉄欠乏症又は低鉄血症とも呼ばれ、長期的な鉄摂取不足、吸収の低下、及び/又は過剰の血液(鉄)損失から生じる。
【0151】
鉄欠乏の症状及び兆候は、鉄欠乏性貧血が生じる前に現れる可能性があり、これらに限定されないが、疲労、脱毛、痙攣、過敏症、めまい、脆い又は溝のある爪、異食症及び氷食症等の食欲障害、免疫機能の低下、慢性心不全、発育遅延、小児における行動及び学習問題、高齢者における認知並びにプラマー-ビンソン症候群(PVS)を含む。
【0152】
鉄欠乏性貧血に関連した状態は、これらに限定されないが、慢性腎疾患(CKD)、全身紅斑性(SLE)、関節リウマチ、血液がん(例えばホジキン病)、慢性細菌感染症(例えば骨髄炎)、ウイルス性肝炎、HIV、AIDS、消化管の疾患、例えば炎症性腸疾患(IBD)、例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎、産婦人科学的及び産科学的状況、例えば重度の子宮出血、妊娠及び出産を含む。
【0153】
例えば、本発明の多形体は、高齢者における認知を改善するために使用し得る。「高齢者」という用語は、例えば、60歳超、例えば70歳から100歳の年齢のヒト等の哺乳動物を含み得る。
【0154】
本発明の多形体及び組成物はまた、参照により本明細書に組み込まれるWO2009/138761に記載の治療において使用することもできる。
【0155】
本発明を、添付の図面を参照しながら、以下の例により例示するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。