特許第6404359号(P6404359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404359部品装着システムおよび部品装着装置の異常停止診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404359
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】部品装着システムおよび部品装着装置の異常停止診断方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20181001BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   H05K13/08 B
   H05K13/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-551460(P2016-551460)
(86)(22)【出願日】2014年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2014076615
(87)【国際公開番号】WO2016051602
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 成樹
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−201331(JP,A)
【文献】 特開2008−60463(JP,A)
【文献】 特開2013−74064(JP,A)
【文献】 特開2005−64366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持する保持手段と、
前記保持手段による前記部品の保持が正常に実行されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されたと判定された場合、前記保持された部品を対象物に装着する装着手段と、
前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されなかったと判定された場合、前記保持手段による前記部品の保持を再実行するリカバリ処理を行うリカバリ手段と、
を有する部品装着装置を備える部品装着システムであって、
前記リカバリ処理の実行回数を計数する計数手段と、
前記リカバリ処理の実行回数が規定回数に達した場合、前記部品装着装置を異常停止する異常停止手段と、
オペレータの操作に基づいて前記部品装着装置の異常停止を解除する解除手段と、
前記異常停止手段により前記部品装着装置が異常停止されてから前記解除手段により該異常停止が解除されるまでの経過時間を計時する計時手段と、
前記計時した経過時間に基づいて、前記規定回数を更新する規定回数更新手段と、
を備えることを特徴とする部品装着システム。
【請求項2】
請求項1記載の部品装着システムであって、
前記規定回数更新手段は、前記経過時間が所定時間未満の状況で前記異常停止が解除された場合には、前記規定回数を増加させ、前記経過時間が所定時間以上の状況で前記異常停止が解除された場合に、前記規定回数を減少させる
ことを特徴とする部品装着システム。
【請求項3】
請求項2記載の部品装着システムであって、
前記規定回数更新手段は、前記経過時間が前記所定時間未満の状況で前記異常停止が解除される度に、前記規定回数を所定回数ずつ増加させる
ことを特徴とする部品装着システム。
【請求項4】
請求項2または3記載の部品装着システムであって、
前記規定回数更新手段は、前記経過時間が前記所定時間以上の状況で前記異常停止が解除された場合に、前記規定回数を初期値に戻す
ことを特徴とする部品装着システム。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の部品装着システムであって、
オペレータの操作に基づいて前記規定回数の初期値を設定する初期値設定手段を備える
ことを特徴とする部品装着システム。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載の部品装着システムであって、
前記判定手段は、前記部品の保持が正常に実行されない保持不良の種類を判定し、
前記計数手段は、前記保持不良の種類毎に前記リカバリ処理の実行回数を計数し、
前記規定回数として、前記保持不良の種類毎に対応付けられた複数の規定回数が設けられ、
前記異常停止手段は、前記リカバリ処理の実行回数が、前記判定された保持不良の種類に対応する規定回数に達した場合に、前記部品装着装置を異常停止し、
前記規定回数更新手段は、前記判定された保持不良に対して前記部品装着装置が異常停止され該異常停止が解除された場合に前記計時手段により計時された経過時間に基づいて、当該判定された保持不良の種類に対応する規定回数を更新する
ことを特徴とする部品装着システム。
【請求項7】
部品を保持する保持手段と、前記保持手段による前記部品の保持が正常に実行されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されたと判定された場合に前記保持された部品を対象物に装着する装着手段と、前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されなかったと判定された場合に前記保持手段による前記部品の保持を再実行するリカバリ処理を行うリカバリ手段とを備える部品装着装置の異常停止の要否を診断する異常停止診断方法であって、
前記リカバリ処理の実行回数を計数し、
前記リカバリ処理の実行回数が規定回数に達した場合、前記部品装着装置を異常停止し、
オペレータの操作に基づいて前記部品装着装置の異常停止を解除し、
前記部品装着装置を異常停止してから該異常停止を解除するまでの経過時間を計時し、
前記計時した経過時間に基づいて、前記規定回数を更新する
ことを特徴とする部品装着装置の異常停止診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を保持して対象物に装着する部品装着装置を備える部品装着システムおよび部品装着装置の異常停止の要否を診断する異常停止診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の部品装着システムでは、エラーの発生に対してリカバリ処理を実行するものが知られている。例えば、特許文献1には、部品吸着エラーが発生すると、吸着エラー画面を表示し、吸着エラー画面にてリカバリが指示されると、部品を再装着するリトライ処理(リカバリ処理)を実行するものが開示されている。また、特許文献1には、部品の認識エラーが発生すると、認識エラーが発生した部品(不良部品)を廃棄部に移動させて排出する排出処理を行った後、認識エラーが発生した部品が排出されたか否かを判定し、排出が未完了であれば、排出処理を繰り返すリトライ処理を行い、リトライ回数が所定回数に達すると、オペレータにエラーを報知すると共に装置本体を停止させるものも開示されている。
【特許文献1】特開2005−64366号公報
【発明の開示】
【0003】
こうした部品装着システムは、リカバリ処理の実行回数の上限として規定回数を設け、リカバリ処理の実行回数が規定回数に達すると、装置を異常停止させるのが通常である。オペレータは、異常停止が発生すると、異常の要因を確認し、必要な処置を行った上で、異常停止を解除しなければならない。しかしながら、異常停止の要因の中には生産を継続してもよいと考えられる要因もあり、全ての異常に対してリカバリ処理を一律に規定回数実行した後、装置を異常停止させると、生産効率を著しく低下させてしまう。
【0004】
本発明は、異常停止の発生頻度を減らして、効率をより向上させることを主目的とする。
【0005】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の部品装着システムは、
部品を保持する保持手段と、
前記保持手段による前記部品の保持が正常に実行されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されたと判定された場合、前記保持された部品を対象物に装着する装着手段と、
前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されなかったと判定された場合、前記保持手段による前記部品の保持を再実行するリカバリ処理を行うリカバリ手段と、
を有する部品装着装置を備える部品装着システムであって、
前記リカバリ処理の実行回数を計数する計数手段と、
前記リカバリ処理の実行回数が規定回数に達した場合、前記部品装着装置を異常停止する異常停止手段と、
オペレータの操作に基づいて前記部品装着装置の異常停止を解除する解除手段と、
前記異常停止手段により前記部品装着装置が異常停止されてから前記解除手段により該異常停止が解除されるまでの経過時間を計時する計時手段と、
前記計時した経過時間に基づいて、前記規定回数を更新する規定回数更新手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の部品装着システムでは、部品の保持が正常に実行されたか否かを判定し、部品の保持が正常に実行されたと判定された場合、保持された部品を対象物に装着し、部品の保持が正常に実行されなかったと判定された場合、部品の保持を再実行するリカバリ処理を行う部品装着装置を備えるものにおいて、リカバリ処理の実行回数を計数し、リカバリ処理の実行回数が規定回数に達した場合に部品装着装置を異常停止し、オペレータの操作に基づいて部品装着装置の異常停止を解除する。そして、部品装着装置が異常停止されてからその異常停止が解除されるまでの経過時間を計時し、計時した経過時間に基づい規定回数を更新することとしている。ここで、部品装着装置が異常停止されてからその異常停止が解除されるまでの経過時間は、オペレータの作業時間に対応するものとして考えることができる。このため、異常停止が解除されるまでの経過時間が短いほど、オペレータの作業時間が短く、異常は軽微であったといえる。したがって、異常停止が解除されるまでの経過時間に基づいてリカバリ処理の繰り返し回数(規定回数)を設定することにより、異常の程度に応じて部品装着装置の異常停止の発生頻度を適切なものとすることができ、部品装着装置の効率をより向上させることができる。
【0008】
こうした本発明の部品装着システムにおいて、前記規定回数更新手段は、前記経過時間が所定時間未満の状況で前記異常停止が解除された場合には、前記規定回数を増加させ、前記経過時間が所定時間以上の状況で前記異常停止が解除された場合に、前記規定回数を減少させるものとすることもできる。こうすれば、停止時間が比較的短い軽微な異常に対して、リカバリ処理の繰り返し回数を増加させるため、装置の異常停止の発生頻度を減らすことができる。
【0009】
この態様の本発明の部品装着システムにおいて、前記規定回数更新手段は、前記経過時間が前記所定時間未満の状況で前記異常停止が解除される度に、前記規定回数を所定回数ずつ増加させるものとすることもできる。なお、規定回数は、上限回数を超えない範囲内で所定回数ずつ増加させるものとしてもよい。
【0010】
また、これらの態様の本発明の部品装着システムにおいて、前記規定回数更新手段は、前記経過時間が前記所定時間以上の状況で前記異常停止が解除された場合に、前記規定回数を初期値に戻すものとすることもできる。こうすれば、異常停止の時間が比較的長い重大な異常に対して、装置を迅速に異常停止させることができる。
【0011】
また、本発明の部品装着システムにおいて、オペレータの操作に基づいて前記規定回数の初期値を設定する初期値設定手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、顧客の多様なニーズに対応することができる。
【0012】
さらに、本発明の部品装着システムにおいて、前記判定手段は、前記部品の保持が正常に実行されない保持不良の種類を判定し、前記計数手段は、前記保持不良の種類毎に前記リカバリ処理の実行回数を計数し、前記規定回数として、前記保持不良の種類毎に対応付けられた複数の規定回数が設けられ、前記異常停止手段は、前記リカバリ処理の実行回数が、前記判定された保持不良の種類に対応する規定回数に達した場合に、前記部品装着装置を異常停止し、前記規定回数更新手段は、前記判定された保持不良に対して前記部品装着装置が異常停止され該異常停止が解除された場合に前記計時手段により計時された経過時間に基づいて、当該判定された保持不良の種類に対応する規定回数を更新するものとすることもできる。こうすれば、保持不良の種類に応じて適した規定回数を自動設定することができる。
【0013】
本発明の異常停止診断方法は、
部品を保持する保持手段と、前記保持手段による前記部品の保持が正常に実行されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されたと判定された場合に前記保持された部品を対象物に装着する装着手段と、前記判定手段により前記部品の保持が正常に実行されなかったと判定された場合に前記保持手段による前記部品の保持を再実行するリカバリ処理を行うリカバリ手段とを備える部品装着装置の異常停止の要否を診断する異常停止診断方法であって、
前記リカバリ処理の実行回数を計数し、
前記リカバリ処理の実行回数が規定回数に達した場合、前記部品装着装置を異常停止し、
オペレータの操作に基づいて前記部品装着装置の異常停止を解除し、
前記部品装着装置を異常停止してから該異常停止を解除するまでの経過時間を計時し、
前記計時した経過時間に基づいて、前記規定回数を更新する
ことを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例としての部品実装システム1の構成の概略を示す構成図である。
図2】部品実装機10の構成の概略を示す構成図である。
図3】部品供給装置20の構成の概略を示す構成図である。
図4】部品実装機10の制御装置70と管理装置80との電気的な接続関係を示す説明図である。
図5】部品実装機10の制御装置70により実行される部品実装処理の一例を示すフローチャートである。
図6】管理装置80により実行される規定回数更新処理の一例を示すフローチャートである。
図7】管理装置80により実行される初期値設定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例としての部品実装システム1の構成の概略を示す構成図であり、図2は、部品実装機10の構成の概略を示す構成図であり、図3は、部品供給装置20の構成の概略を示す構成図であり、図4は、部品実装機10の制御装置70と管理装置80との電気的な接続関係を示す説明図である。なお、図1および図2の左右方向がX軸方向であり、前(手前)後(奥)方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0017】
部品実装システム1は、図1に示すように、基板Sの搬送方向(基板搬送方向)に並べて配置された複数台の部品実装機10と、部品実装システム全体を管理する管理装置80とを備える。
【0018】
部品実装機10は、その外観としては、図2に示すように、基台11と、基台11に支持された本体枠12とにより構成されている。この部品実装機10は、図2に示すように、本体枠12の中段部に設けられた支持台14と、基板Sを搬送する基板搬送装置30と、部品Pを供給する部品供給装置20と、部品供給装置20により供給された部品Pを吸着ノズル51に吸着させて基板搬送装置30により搬送された基板S上へ実装するヘッド50と、ヘッド50をXY方向へ移動させるXYロボット40と、実装機全体をコントロールする制御装置70(図4参照)とを備える。また、部品実装機10は、これらの他に、ヘッド50に設けられ基板Sに付された基板位置決め基準マークを撮像するためのマークカメラ56や、吸着ノズル51に吸着させた部品Pの吸着姿勢を撮像するためのパーツカメラ60なども備えている。
【0019】
部品供給装置20は、図3に示すように、キャリアテープが巻回されたテープリール22と、駆動モータ26の駆動によってテープリール22からキャリアテープを引き出して部品供給位置まで送り出すテープ送り機構24と、キャリアテープからトップフィルムを剥がして部品が露出された状態(部品をピックアップ可能な状態)とする図示しない剥離部と、装置全体を制御する制御基板28とを備えるテープフィーダとして構成されている。この部品供給装置20(テープフィーダ)は、支持台14に形成された図示しないフィーダ台に着脱可能に構成されている。
【0020】
制御基板28は、部品供給装置20(テープフィーダ)がフィーダ台に装着されると、コネクタ29を介して部品実装機10の制御装置と通信可能に接続される。コネクタ29は、部品実装機10から給電を受けて、テープ送り機構24(駆動モータ26)や、制御基板28などの各部へ供給する給電コネクタとして構成されている。したがって、オペレータは、部品供給装置20(テープフィーダ)を、フィーダ台から一旦取り外した後、フィーダ台に再装着させることで、部品供給装置20の電源をリセットすることができる。
【0021】
基板搬送装置30は、図2に示すように、ベルトコンベア装置32を備えており、ベルトコンベア装置32の駆動により基板Sを図1の左から右(基板搬送方向)へと搬送する。基板搬送装置30の基板搬送方向(X軸方向)中央部には、搬送された基板Sを裏面側からバックアップするバックアッププレート34が設けられている。
【0022】
ヘッド50は、図4に示すように、吸着ノズル51をZ軸(上下)方向に移動させるZ軸アクチュエータ52と、吸着ノズル51をZ軸周りに回転させるθ軸アクチュエータ54とを備える。吸着ノズル51の吸引口は、電磁弁57を介して真空ポンプ58およびエア配管59のいずれか一方に選択的に連通するようになっている。制御装置70は、吸着ノズル51の吸引口が真空ポンプ58に連通するよう電磁弁57を駆動することで、吸引口に負圧を作用させて部品Pを吸着することができ、吸着ノズル51の吸引口がエア配管59に連通するよう電磁弁57を駆動することで、吸引口に正圧を作用させて部品Pの吸着を解除することができる。
【0023】
XYロボット40は、図2に示すように、本体枠12の上段部に前後方向(Y軸方向)に沿って設けられたY軸ガイドレール43と、Y軸ガイドレール43に架け渡された状態でY軸ガイドレール43に沿って移動が可能なY軸スライダ44と、Y軸スライダ44の下面に左右方向(X軸方向)に沿って設けられたX軸ガイドレール41と、X軸ガイドレール41に沿って移動が可能なX軸スライダ42とを備える。X軸スライダ42にはヘッド50が取り付けられており、制御装置70は、XYロボット40を駆動制御することにより、XY平面上の任意の位置にヘッド50を移動させることができる。
【0024】
パーツカメラ60は、吸着ノズル51に吸着させた部品Pがパーツカメラ60の上方を通過する際、部品Pを撮像し、得られた撮像画像を制御装置70へ出力する。制御装置70は、パーツカメラ60によって撮像された撮像画像に画像処理を施すことで、吸着ノズル51に吸着されている部品Pが正しい部品であるか否かを識別したり、部品Pが吸着ノズル51に正しく吸着されているか否かを判定したりする。
【0025】
制御装置70は、図4に示すように、CPU71を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU71の他に、ROM72と、HDD73と、RAM74と、入出力インタフェース75とを備える。これらは、バス76を介して電気的に接続されている。制御装置70には、X軸スライダ42の位置を検知するX軸位置センサ47からの位置信号や、Y軸スライダ44の位置を検知するY軸位置センサ49からの位置信号、マークカメラ56からの画像信号、パーツカメラ60からの画像信号などが入出力インタフェース75を介して入力されている。一方、制御装置70からは、部品供給装置20への制御信号や、基板搬送装置30への制御信号、X軸スライダ42を移動させるX軸アクチュエータ46への駆動信号、Y軸スライダ44を移動させるY軸アクチュエータ48への駆動信号、Z軸アクチュエータ52への駆動信号、θ軸アクチュエータ54への駆動信号、電磁弁57への駆動信号などが入出力インタフェース75を介して出力されている。また、制御装置70は、管理装置80と双方向通信可能に接続されており、互いにデータや制御信号のやり取りを行っている。
【0026】
管理装置80は、例えば、汎用のコンピュータであり、図4に示すように、CPU81とROM82とHDD83とRAM84と入出力インタフェース85などを備える。これらは、バス86を介して電気的に接続されている。この管理装置80には、マウスやキーボード等の入力デバイス87から入力信号が入出力インタフェース85を介して入力されている。また、管理装置80からは、ディスプレイ88への画像信号が入出力インタフェース85を介して出力されている。HDD83は、基板Sの生産計画を記憶している。ここで、基板Sの生産計画とは、各部品実装機10においてどの部品をどの順番で基板Sへ実装するか、また、そのように部品Pを実装した基板Sを何枚作製するかなどを定めた計画をいう。この生産計画には、生産する基板に関する基板データや使用するヘッド50に関するヘッドデータ、使用する吸着ノズル51に関するノズルデータ、実装する部品Pに関する部品データ、各部品の実装位置に関する実装位置データなどが含まれている。管理装置80は、オペレータが入力デバイス87を介して入力したデータ(生産枚数や基板データ、部品データ、実装位置データ等)に基づいて生産計画を作成し、作成した生産計画を各部品実装機10へ送信する。
【0027】
次に、こうして構成された実施例の部品実装システム1(部品実装機10)の動作について説明する。図5は、制御装置70のCPU71により実行される部品実装処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、オペレータによって生産の開始が指示されたときに実行される。制御装置70は、管理装置80から送信された生産計画を受信し、受信した生産計画に従って部品実装処理を実行する。
【0028】
部品実装処理が実行されると、制御装置70のCPU71は、まず、部品供給装置20から供給された部品Pを吸着ノズル51に吸着させる吸着動作を行う(S100)。ここで、吸着動作は、具体的には、部品Pの真上にヘッド50に装着された吸着ノズル51が来るようXYロボット40を駆動制御した後、吸引口が部品Pに当接するまで吸着ノズル51が下降するようZ軸アクチュエータ52を駆動制御し、吸着ノズル51の吸引口に負圧が作用するよう電磁弁57を駆動制御することにより行う。続いて、CPU71は、吸着ノズル51に吸着させた部品Pがパーツカメラ60の上方へ移動するようXYロボット40を駆動制御して(S110)、部品Pをパーツカメラ60で撮像する(S120)。
【0029】
そして、CPU71は、撮像された画像(撮像画像)に画像処理を施して(S130)、吸着不良が発生していないか否か(吸着ノズル51に部品Pが正常に吸着されているか否か)を判定する(S140)。なお、吸着不良には、吸着ノズル51に部品Pが吸着されていない吸着ミスや、吸着ノズル51に部品Pが立った状態で吸着されている立ち吸着エラー、吸着ノズル51に吸着されている部品Pに許容範囲を超える吸着ズレが発生している吸着ズレエラー、吸着ノズル51に吸着されている部品Pが正しい部品でない部品違いエラー等が含まれる。
【0030】
CPU71は、吸着不良が発生していないと判定すると、リカバリ回数Nrを値0に初期化し(S150)、吸着ノズル51に吸着させた部品Pを基板Sの実装位置に実装する実装動作を行って(S160)、部品実装処理を終了する。ここで、実装動作は、具体的には、吸着ノズル51に吸着させた部品Pが基板Sの実装位置の真上に来るようXYロボット40を駆動制御した後、その部品Pが基板Sの実装位置に当接するまで吸着ノズル51が下降するようZ軸アクチュエータ52を駆動制御し、吸着ノズル51の吸引口に正圧が作用するよう電磁弁57を駆動制御することにより行う。
【0031】
一方、CPU71は、吸着不良が発生していると判定すると、リカバリ回数Nrが規定回数Nth以上であるか否かを判定する(S170)。ここで、規定回数Nthは、許容されるリカバリ処理の繰り返し回数を意味し、管理装置80が後述する規定回数更新処理を実行することによって更新される。なお、規定回数Nthは、生産開始時には初期値Niniが設定される。CPU71は、リカバリ回数Nrが規定回数Nth未満であると判定すると、リカバリ回数Nrを値1インクリメントすると共に(S180)、S100に戻って吸着動作を繰り返すリカバリ処理を行う。なお、CPU71は、リカバリ処理として、吸着動作の前に、吸着ノズル51に吸着されている部品Pを排出する排出処理を行う。ここで、吸着不良の発生要因としては、部品供給装置20(テープフィーダ)によるテープ送りの異常や、吸着ノズル51の異常、画像処理の異常等、様々な要因が考えられるが、吸着不良の発生要因によっては生産を継続しても支障が無い場合がある。そこで、規定回数Nthの範囲内でリカバリ処理を繰り返すことで、異常停止に伴う生産効率の低下を防止しているのである。一方、CPU71は、リカバリ回数Nrが規定回数Nth以上であると判定すると、部品実装機10の異常停止を行い(S190)、停止信号を管理装置80へ送信する(S200)。停止信号を受信した管理装置80は、後述するエラー報知を行う。これにより、オペレータは、異常停止の状況を確認し、必要な処置を行った後、異常停止を解除することとなる。異常停止の解除は、本実施例では、オペレータが部品供給装置20(テープフィーダ)をフィーダ台から取り外して再装着させることで、フィーダ電源をリセットすることにより行うものとした。なお、部品供給装置20(テープフィーダ)は、フィーダ電源がリセットされると、テープ送り機構24(スプロケット)の原点位置合わせ等の所定の初期化動作を行う。
【0032】
ここで、前述したように、CPU71は、吸着不良が発生していないと判定して実装動作を行う場合には、リカバリ回数Nrを値0に初期化するから、吸着不良の発生が連続してリカバリ処理の連続実行回数が規定回数Nth以上とならない限り、異常停止を行わない。
【0033】
CPU71は、停止信号を管理装置80に送信すると、オペレータによって解除操作がなされるまで待機し(S210)、解除操作がなされると、停止解除信号を管理装置80へ送信すると共に(S220)、リカバリ回数Nrを値0にリセットし(S230)、S100の処理(実装動作)に戻る。これにより、部品実装機10は、異常停止の状態を解除し、生産を再開することとなる。
【0034】
次に、管理装置80が実行する規定回数更新処理について説明する。図6は、管理装置80のCPU81が実行する規定回数更新処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0035】
規定回数更新処理が実行されると、管理装置80のCPU81は、まず、図5の部品実装処理のS200で制御装置70により送信される停止信号を受信したか否かを判定する(S300)。CPU81は、停止信号を受信していないと判定すると、S330の処理に進み、停止信号を受信したと判定すると、タイマTをスタートすると共に(S310)、エラー報知を行う(S320)。なお、エラー報知は、ディスプレイ88上に警告画面を表示すると共に警告音を発することで、オペレータに対してエラー発生の報知を行う。
【0036】
次に、CPU81は、部品実装機10が異常停止中であるか否かを判定し(S330)、異常停止中であると判定すると、部品実装機10の制御装置70から解除信号を受信したか否かを判定する(S340)。CPU81は、異常停止中でないと判定したり、解除信号を受信していないと判定すると、規定回数更新処理を一旦終了する。一方、CPU81は、異常停止中であり且つ解除信号を受信したと判定すると、タイマTをストップし(S350)、タイマTの値が規定時間Tth未満であるか否かを判定する(S360)。ここで、タイマTは、部品実装機10が異常停止されてからその異常停止が解除されるまでの経過時間であり、オペレータの作業時間として考えることができる。このため、タイマTの値が規定時間Tth未満である場合には、オペレータの作業時間が短く、部品実装機10の異常の程度は比較的軽微であったと考えられ、タイマTの値が規定時間Tth以上である場合には、オペレータの作業時間が長く、部品実装機10の異常の程度は比較的重大であったと考えられる。規定時間Tthは、本実施例では、フィーダ電源をリセットするリセット作業に通常要する時間よりも若干長い時間(例えば15秒)として定められている。即ち、規定時間Tthは、部品実装機10に目立った異常がなく、オペレータが早期に解除操作を行う場合を想定したものである。CPU81は、タイマTが規定時間Tth未満であると判定すると、規定回数Nthが上限値Nmax(例えば、5回)未満であるか否かを判定し(S370)、規定回数Nthが上限値Nmax未満であると判定すると、規定回数Nthを所定値(例えば、値1)だけインクリメントし(S380)、規定回数Nthが上限値Nmax以上であると判定すると、規定回数Nthの更新を行わない。即ち、規定回数Nthは、上限値Nmaxのままである。一方、CPU81は、S360でタイマTが規定時間Tth以上であると判定すると、規定回数Nthを初期値Niniに戻す(S390)。ここで、初期値Niniは、例えば、0回や1回とすることができる。なお、初期値Niniは、後述する初期値設定処理にてオペレータが変更することができるようになっている。
【0037】
CPU81は、こうして規定回数Nthを更新すると、更新した規定回数Nthを部品実装機10の制御装置70に送信し(S400)、タイマTをリセットして(S410)、規定回数更新処理を終了する。
【0038】
次に、初期値設定処理について説明する。図7は、管理装置80のCPU81により実行される初期値設定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、オペレータの指示によって実行される。
【0039】
初期値設定処理が実行されると、管理装置80のCPU81は、初期設定画面をディスプレイ88に表示してオペレータによる設定操作を受け付ける(S500)。そして、CPU81は、オペレータにより設定操作がなされたと判定すると(S510)、その設定値を初期値に更新して(S520)、初期値設定処理を終了する。ここで、本実施例では、初期値は、値0から上限値Nmaxまでの範囲内で設定できるようにした。したがって、初期値として上限値Nmaxを設定すれば、異常停止がなされるまでのリカバリ回数Nrは、部品実装機10が異常停止されてからその異常停止が解除されるまでの経過時間に拘わらず一定回数となる。
【0040】
以上説明した実施例の部品実装システム1は、吸着不良が発生した場合に、リカバリ回数Nrが規定回数Nth以上となるまでリカバリ処理を繰り返し、リカバリ回数Nrが規定回数Nth以上となると、部品実装機10を異常停止させるものにおいて、部品実装機10が異常停止してからその異常停止が解除されるまでの経過時間(タイマT)を計時し、計時した経過時間に基づいて規定回数Nthを更新する。具体的には、経過時間が規定時間Tth未満の場合に規定回数Nthを増加させ、経過時間が規定時間Tth以上の場合に規定回数Nthを減少させる。これにより、オペレータの作業時間が短い比較的軽微な異常に対して、装置の異常停止の発生頻度を減らすことができる。この結果、生産効率をより向上させることができる。しかも、経過時間が規定時間Tth以上の場合に規定回数Nthを初期値に戻すから、停止時間が比較的長い重大な異常に対して、装置を迅速に異常停止させることができる。また、初期値は、オペレータの操作によって変更可能としているから、顧客の多様なニーズに対応することができる。
【0041】
実施例の部品実装システム1では、規定回数Nthを吸着不良の種類に拘わらず一律に定めるものとしたが、吸着不良の種類毎に異なる規定回数Nthを定めるものとしてもよい。この場合、制御装置70のCPU71は、S140,S170〜S200の処理において、吸着不良が発生したと判定した場合にその不良種類を特定し、特定した不良種類に対応するリカバリ回数Nrをインクリメントし、リカバリ回数Nrを特定した不良種類に対応する規定回数Nthと比較し、リカバリ回数Nrが規定回数Nth以上の場合に停止信号と特定した不良種類とを管理装置80へ送信する。また、管理装置80のCPU81は、S370〜S400の処理において、停止信号と共に受信した不良種類に対応する規定回数Nthを更新して制御装置70に送信する。
【0042】
実施例の部品実装システム1では、CPU71は、吸着不良の発生が連続してリカバリ処理の連続実行回数(リカバリ回数Nr)が規定回数Nthに達した場合に部品実装機10を異常停止するものとしたが、これに限定されるものではなく、吸着不良の発生が連続しない場合であっても、リカバリ処理の累積実行回数が規定回数Nthに達すると、異常停止を行うものとしてもよい。この場合、部品実装処理のS150を省略するものとすればよい。なお、リカバリ処理の累積実行回数は、所定時間が経過すると、値0に初期化してもよい。
【0043】
実施例の部品実装システム1では、部品実装機10が異常停止してからその異常停止が解除されるまでの経過時間(タイマT)が規定時間Tth未満の場合に、規定回数Nthを所定値(値1)ずつ徐々に増加させるものとしたが、これに限定されるものではなく、一度に上限値Nmaxに更新してもよいし、経過時間の長短によって規定回数Nthを変化させてもよい。後者の場合、例えば、経過時間が短いほど、多くなるように規定回数Nthを更新するものとしてもよい。
【0044】
実施例の部品実装システム1では、部品実装機10が異常停止してからその異常停止が解除されるまでの経過時間が規定時間Tth以上の場合には、規定回数Nthを一度に初期値に戻すものとしたが、これに限定されるものではなく、所定値ずつ(例えば、値1ずつ)徐々に戻すものとしてもよい。
【0045】
実施例の部品実装システム1では、部品実装機10が異常停止してからその異常停止が解除されるまでの経過時間(タイマT)の計時や規定回数Nthの更新、初期値の設定を、管理装置80で行うものとしたが、これに限定されるものではなく、部品実装機10で行うものとしてもよい。
【0046】
実施例の部品実装システム1では、規定回数Nthの初期値をオペレータの操作によって変更できるようにしたが、変更できないようにしてもよい。
【0047】
ここで、本実施例の主要な要素と発明の開示の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、吸着ノズル51が「保持手段」に相当し、図5の部品実装処理のS130,S140の処理(画像処理)を実行する制御装置70のCPU71が「判定手段」に相当し、部品実装処理のS160の処理(実装動作)を実行するCPU71が「装着手段」に相当し、部品実装処理のS100,S180の処理(リカバリ処理)を実行する制御装置70のCPU71が「リカバリ手段」に相当し、部品実装処理のS170の処理(リカバリ回数Nrのインクリメント)を実行する制御装置70のCPU71が「計数手段」に相当し、部品実装処理のS190の処理(異常停止)を実行する制御装置70のCPU71が「異常停止手段」に相当し、部品実装処理のS210,S220の処理を実行する制御装置70のCPU71が「解除手段」に相当し、図6の規定回数更新処理のS300〜S350の処理(タイマTのスタート、ストップ)を実行する管理装置80のCPU81が「計時手段」に相当し、規定回数更新処理のS360〜S400の処理(規定回数Nthをインクリメントしたり初期値に戻す処理)を実行する管理装置80のCPU81が「規定回数更新手段」に相当する。また、図7の初期値設定処理を実行する管理装置80のCPU81が「初期値設定手段」に相当する。
【0048】
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、部品実装システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 部品実装システム、10 部品実装機、11 基台、12 本体枠、14 支持台、20 部品供給装置、21 ケース、22 リール、24 テープ送り機構、26 駆動モータ、28 制御基板、29 コネクタ、30 基板搬送装置、32 ベルトコンベア装置、34 バックアッププレート、40 XYロボット、41 X軸ガイドレール、42 X軸スライダ、43 Y軸ガイドレール、44 Y軸スライダ、46 X軸アクチュエータ、47 X軸位置センサ、48 Y軸アクチュエータ、49 Y軸位置センサ、50 ヘッド、51 吸着ノズル、52 Z軸アクチュエータ、54 θ軸アクチュエータ、56 マークカメラ、57 電磁弁、58 真空ポンプ、59 エア配管、60 パーツカメラ、70 制御装置、71 CPU、72 ROM、73 HDD、74 RAM、75 入出力インタフェース、76 バス、80 管理装置、81 CPU、82 ROM、83 HDD、84 RAM、85 入出力インタフェース、86 バス、87 入力デバイス、88 ディスプレイ、S 基板、P 部品。
図1
図2
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図7