特許第6404369号(P6404369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404369
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21K 9/66 20160101AFI20181004BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20181004BHJP
   F21W 131/405 20060101ALN20181004BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20181004BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20181004BHJP
【FI】
   F21K9/66
   F21V3/02 400
   F21W131:405
   F21Y103:10
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-573237(P2016-573237)
(86)(22)【出願日】2016年1月5日
(86)【国際出願番号】JP2016050144
(87)【国際公開番号】WO2016125511
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-20311(P2015-20311)
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾山 和也
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−251080(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0296281(US,A1)
【文献】 特開2013−33725(JP,A)
【文献】 特開2012−138240(JP,A)
【文献】 特開2013−58316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/66
F21S 2/00
F21V 3/02
F21W 131/405
F21Y 103/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点光源である複数の発光ダイオード素子が直線に沿って配列され、
前記発光ダイオード素子からの光を拡散する平板状の光拡散面を有する配光部材を備え、
前記配光部材は、長尺方向が前記複数の発光ダイオード素子を配列する前記直線に平行となるように配されており、
前記配光部材は、3つの平板状部分が稜線部を介して連なる断面台形状の部分を有し、前記台形の上底または下底のうち短い方の辺に対応する光拡散面が前記台形の頂面とされており、前記台形の頂面が斜面よりも幅狭に形成されており、
前記台形の頂面には、その内側に沿って遮光部材が配置されており、
前記複数の発光ダイオード素子の配列から出射した光が前記断面台形状の内角側に対して入射されるように、前記配光部材が配置されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記発光ダイオード素子は、配列基板上に配置され、前記配列基板はさらにベース基板上に載置されており、
前記配光部材の断面は、前記複数の光拡散面の幅が異なるものであり、前記ベース基板の中央を通り、かつ、ベース基板に垂直な直線に対して非対称形状となっていることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の照明装置であって、
前記遮光部材は、光反射部材であることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から照明装置の光源として、直管型の蛍光灯などが用いられていた。蛍光灯は指向性のない配光特性であり、管を中心として全方向に均等に光を出射することができた。このような指向性のない配光特性の照明装置では、均等に照射された光で全方向を照射することができるため、天井照明や看板の内照灯、ショーケースの照明などに用いられてきた。
【0003】
図12は従来の照明装置の構造を示しており、図12(a)は概略斜視図であり図12(b)は照明装置内部での光源を示す部分拡大断面図である。照明装置1は、光を拡散するカバー2の内部に直管型蛍光灯などの光源3が保持具4によって取り付けられた構造をしている。図13は、光源3として直管型蛍光灯を用いた場合の照明装置1での配光を示した模式断面図である。
【0004】
カバー2の背面側に取り付けられた光源3からは、蛍光灯を中心として全方向に均等に照射光3aが出射される。カバー2の前面中央領域2aでは、光源3の正面に位置しているため照射光3aの光量が多く最も明るくなる。また、照射光3aが全方向に対して均等であることから、カバー2の前面端部領域2bでもムラが少なく明るくなり、側面領域2cでもある程度の明るさとなり、背面領域2dに対しても光が照射される。
【0005】
このような全方向に均一な配光特性の光源を用いることは、全体をムラなく照射するための用途に適しており、特に看板の内照灯やショーケースの照明などにおいて効果的である。しかし、光源3として蛍光灯を用いると、省エネルギー性能の向上には限界がある。また、1〜2年に1回程度の頻度で蛍光灯を交換する必要があり、看板などのように照明装置が高い位置に設置されている場合には、蛍光灯の交換費用が必要となるためメンテナンス費用が高額になってしまう。また、蛍光灯からの光には紫外光が含まれているために、屋外に設置されていると虫を引き寄せやすいという問題があった。
【0006】
そこで近年では、照明装置の光源として発光ダイオードを用いたものが採用されることが多くなってきた。発光ダイオードは紫外光をほぼ含まないように設計でき、かつ長寿命なため、光源として蛍光灯を用いた場合の課題の多くを解決できると見込まれる。しかし、発光ダイオードからの出射光は一般的に指向性が高く、特定の発光方向に対しては明るいが他の方向には光量が不足してしまう。
【0007】
図14は、光源3として発光ダイオードを用いた場合の照明装置1での配光を示した模式断面図である。カバー2の背面側に発光ダイオードを直列に配置した光源では、図14に示すように前方に強い指向性のある照射光3bが出射される。
【0008】
カバー2の前面中央領域2aでは、光源3の正面に位置しているため照射光3aの光量が非常に多く極端に明るくなる。また、照射光3aが前方に強い指向性であることから、カバー2の前面端部領域2bでも側面領域2cでも暗く、背面領域2dに対しては光源3から直接光が照射されない。このような指向性の高い配光の照明装置は、カバー2全体に光を照射する必要がある用途には適しておらず、特に看板の内照灯やショーケースの照明などにおいては蛍光灯を発光ダイオードに置き換えることが困難である。
【0009】
特許文献1などでは、このような指向性の高い発光ダイオードの欠点を解決するため、レンズ等を用いて発光ダイオードからの配光特性を制御することが提案されている。図15は、レンズを用いて指向性を改善した発光ダイオードを示す模式断面図である。発光ダイオードパッケージ8は、配線が形成された配列基板5上にLED(Light Emitting Diode)チップ6を搭載し、LEDチップ6を覆うようにレンズ7が配置されている。図16は発光ダイオードパッケージ8からの出射光の配光特性を示すグラフである。LEDチップ6から前方方向へ出射された光は、レンズ7で横方向に配光されるために、配列基板5に垂直な方向(グラフ上方の180度方向)への光量が減少し横方向(グラフ側方の90度方向)への光量が増加している。特許文献1等では、図17に示すように発光ダイオードパッケージ8を複数配置して照明装置の光源として用いている。
【0010】
しかし、LEDチップ6からの配光を制御するためのレンズ7は、LEDチップ6の配光特性やチップサイズ等に応じて個別に設計する必要があり、高い加工精度も要求されるため高価になるという問題があった。また、所望の配光特性を得るためには正確な位置決めをする必要もあり、配列基板5の取付けや複数個の発光ダイオードパッケージ8同士の電気的接続などの工数も必要となるため、全体としてコスト低減が難しいという問題もあった。
【0011】
最近になって、広い配光特性のLEDランプを用いたものが提供されるようになってきている。図18はこのようなLEDランプの配光特性を示すグラフである。図19は、光源3として広い配光特性のLEDランプを用いた場合の照明装置1での配光を示した模式断面図である。
【0012】
広い配光特性のLEDランプでは、図19に示すように前方だけではなく側方や後方に対しても照射光3cが出射される。カバー2の前面中央領域2aでは、光源3の正面に位置しているため照射光3aの光量が多くとても明るくなる。また、照射光3cが側方にも照射されることから、カバー2の前面端部領域2bにもある程度の光が照射されて多少の明るさを確保できる。しかし側面領域2cや背面領域2dに対して照射される光は十分ではなく全体として光のムラが生じてしまう。
【0013】
上述したように、発光ダイオードを光源とする従来技術では、発光ダイオードの配光分布における指向性を十分に低下できていないため、照明装置からの光照射にムラができてしまうという問題を十分に解消できていない。特にショーケースの照明や天井照明に用いる際には、外部から複数の発光ダイオードの点灯位置が粒として視認できて眩しく感じることや、光を照射される対象で反射してグレアが多くなってしまうという問題があり、照明装置の特性として好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2014−165140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、簡便な構成で組立も容易であり、発光ダイオードを光源として用いた場合にも配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、点灯位置を粒として視認しにくく眩しさやグレアを抑制できる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、点光源である複数の発光ダイオード素子が直線に沿って配列され、前記発光ダイオード素子からの光を拡散する平板状の光拡散面を有する配光部材を備え、前記配光部材は、長尺方向が前記複数の発光ダイオード素子を配列する前記直線に平行となるように配されており、前記配光部材は、3つの平板状部分が稜線部を介して連なる断面台形状の部分を有し、前記台形の上底または下底のうち短い方の辺に対応する光拡散面が前記台形の頂面とされており、前記台形の頂面が斜面よりも幅狭に形成されており、前記台形の頂面には、その内側に沿って遮光部材が配置されており、前記複数の発光ダイオード素子の配列から出射した光が前記断面台形状の内角側に対して入射されるように、前記配光部材が配置されていることを特徴とする。
【0017】
このような本発明の照明装置では、同一材料で一体に形成した配光部材により発光ダイオードからの光を拡散することから、配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、発光ダイオードの点灯位置を粒として視認しにくくでき、眩しさやグレアを抑制できる。また、配光部材を簡便な構成とすることができ、組立も容易となる。
【0020】
また、前記配光部材は、3つの平板状部分が稜線部を介して連続した断面台形状の部分を有し、前記複数の発光ダイオード素子の配列から出射した光が前記断面台形状の内角側に対して入射されるように、前記配光部材が配置されている。
【0021】
また、本発明の一実施態様では、前記発光ダイオード素子は、配列基板上に配置され、前記配列基板はさらにベース基板上に載置されており、前記配光部材の断面は、前記複数の光拡散面の幅が異なるものであり、前記ベース基板の中央を通り、かつ、ベース基板に垂直な直線に対して非対称形状となっている。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、簡便な構成で組立も容易であり、発光ダイオードを光源として用いた場合にも配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、点灯位置を粒として視認しにくくでき、眩しさやグレアを抑制できる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の照明装置を示す模式断面図。
図2】第1実施形態の照明装置における光の散乱を示す模式断面図。
図3】照明装置全体での断面方向での配光特性を示すグラフ。
図4】照明装置にカバーを取り付けた状態を示す模式斜視図。
図5】照明装置の取り付け構造を示す部分拡大断面図。
図6】第1実施形態の照明装置を用いた照明器具での配光を示した模式断面図。
図7A】配光部材の頂角が20度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図7B】配光部材の頂角が30度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図7C】配光部材の頂角が40度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図7D】配光部材の頂角が50度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図7E】配光部材の頂角が60度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図7F】配光部材の頂角が70度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図7G】配光部材の頂角が80度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図7H】配光部材の頂角が90度のときの照明装置の配光特性を示すグラフ。
図8】第2実施形態の照明装置を示す模式断面図。
図9】第2実施形態の照明装置の組み立てを示す模式断面図。
図10】第3実施形態の照明装置を示す模式断面図。
図11】第4実施形態の照明装置を示す模式断面図。
図12図12(a)は従来の照明装置の概略斜視図で、図12(b)は従来の照明装置の内部での光源を示す部分拡大断面図。
図13】光源として直管型蛍光灯を用いた場合の照明装置での配光を示した模式断面図。
図14】光源として発光ダイオードを用いた場合の照明装置での配光を示した模式断面図。
図15】レンズを用いて指向性を改善した発光ダイオードを示す模式断面図。
図16】発光ダイオードパッケージからの出射光の配光特性を示すグラフ。
図17】発光ダイオードパッケージを複数配置して光源として用いた照明装置の斜視図。
図18】LEDランプの配光特性を示すグラフ。
図19】光源として広い配光特性のLEDランプを用いた場合の照明装置での配光を示した模式断面図。
図20図20(a),(b)は、第5実施形態の照明装置を示す模式断面図。
図21】第6実施形態の照明装置を示す模式断面図。
図22】第6実施形態の照明装置全体での断面方向での配光特性を示すグラフ。
図23図23(a)はショーケースの照明として第1実施形態の照明装置を用いた場合を示す図で、図23(b)はショーケースの照明として第6実施形態の照明装置を用いた場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の照明装置10を示す模式断面図である。照明装置10は、配光部材11と、複数のLED12と、配列基板13と、ベース基板14とを備えている。
【0025】
配光部材11は、LED12からの光を拡散するための部材であり、光拡散面である3つの平板状部分11aが稜線部11bで接続されて断面三角形状の筒状をなしている。平板状部分11aおよび稜線部11bは、同一材料で一体に形成されて内部に空洞11cが形成されている。空洞11cの内部には、複数のLED12と、配列基板13と、ベース基板14が配置されている。
【0026】
配光部材11は、LED12からの光を内部で拡散して透過する機能を有しており、成型の容易性から乳白色の樹脂等が好ましく、樹脂中に散乱材を混入した樹脂などを用いることができる。特に材料は限定されないが、一般的なシーリングライトのカバーに利用されるものと同様の材料(例えば、商品名「ML−3107ZHP」「ML−2120ZHP」「ML−3500ZAH」、帝人株式会社製)を用いることができる。配光部材11に用いる材料としては、光を拡散させる程度や用途に応じて乳白色の色の濃さを選択する。
【0027】
このような光を拡散する樹脂材料で配光部材11を形成すると、押し出し成型などの手法を用いて容易に断面三角形状の長尺な筒状を形成することができ、レンズの成型に用いられるような高精度でその分高価な金型を必要とせず、成型に要する時間も短縮でき生産性と加工性を大幅に向上できる。また、配光部材11としてレンズではなく光を散乱させる部材を用いていることから、レンズの成型に要求されるほどの加工精度や光学的精密さは必要なく、押し出し成型時に多少の凹凸や筋が生じても配光部材11全体の特性としては許容される。したがって、本発明の配光部材11を用いると、光学設計に自由度をもたせることができ、LEDとレンズの正確な位置合わせや光軸合わせなどの精密な組立工程も不要となり、簡便な構成で容易に組立てることが可能となる。
【0028】
LED12は、電流を供給されて特定色を発光する発光ダイオードパッケージもしくは発光ダイオードチップである。照明装置10として特定の色のみを発光する場合には単色もしくは複数の発光ダイオードチップの組み合わせを用いることができる。また、照明装置として白色を発光する場合には、青色光や紫色光、紫外光などを発光するLEDチップと蛍光体などの波長変換部材の組み合わせによる発光ダイオードパッケージを用いることができる。
【0029】
配列基板13は、LED12が搭載されて電気的に接続される基板であり、セラミックやガラスエポキシ樹脂などの絶縁体からなる基板や、可撓性を有するフレキシブル基板、金属を絶縁体で分離した複合基板などを用いることができる。配列基板13に搭載された複数のLED12は、配列基板上に形成された配線によって相互に電気的に接続されて、直列や並列などの回路を構成する。
【0030】
ベース基板14は、表面側に配列基板13が搭載されて配光部材11の内側面に接する部材である。ベース基板14の材料としては特に限定されないが、適度な放熱性や剛性、反射特性を有することが望ましく、金属やセラミックなどを用いることができる。LED12および配列基板13が搭載されていないベース基板14の裏面側は、配光部材11を構成している平板状部分11aの1つの面(底面)の内側に接している。ここで、配光部材11とベース基板14とが接しているとは両者が直接接触していてもよく、接着材料などを介して接触していてもよい。
【0031】
ベース基板14の幅は、配光部材11の底面である平板状部分11aの内寸と略同程度とすることが好ましい。また、ベース基板14の長さは、配光部材11の長さと同程度とすることが好ましい。これにより、ベース基板14上に配列基板13およびLED12を搭載した後に、配光部材11にベース基板14を挿入するだけで容易にLED12と配光部材11の位置決めをすることができる。
【0032】
配光部材11の空洞11c内部には、配列基板13およびLED12を搭載したベース基板14が配置され、配光部材11の両端部を封止部材等で封止している。これにより、配光部材11の内部に水分が進入することを防止でき、防湿性および防滴性を向上できる。
【0033】
図2は、第1実施形態の照明装置10における光の散乱を示す模式断面図である。LED12に電力が供給されて発光すると、LED12から配光部材11の内面に向かって光が照射される。LED12からの光15は、図2中に矢印で示すように進行して配光部材11の内面に到達し、配光部材11の内部を伝搬して散乱および分散の作用を受けて様々な方向に進行する配光16となり外部に照射される。このとき、光拡散面である平板状部分11aに入射した光は、面に対して垂直方向が中心となるような配光となる。
【0034】
図2中では光15として矢印を2本しか描いていないが、LED12からの光照射は、LED12自体の配光特性によって決まる強度分布となって、配光部材11の底面以外の平板状部分11aおよび底面に対向する稜線部11b(頂角)方向に進行し、入射した各領域で散乱および分散の作用を受けて外部に照射される。またLED12から出た光の一部は内部で反射され、また配光部材11から内部に放射される光もあるが、これらの多くも配光部材11に入り散乱され、同様に外部に照射される。
【0035】
図3は、照明装置10全体での断面方向での配光特性を示すグラフである。円の中心から外側に向かう同心円の目盛りは光強度を示し、底面の鉛直下方を0度として水平方向を90度とし、鉛直上方を180度とした配光分布が実線で示されている。図3では、底面に対向する稜線部11b(頂角)が成す角が50度の場合を示している。
【0036】
上述したように、LED12からの光は配光部材11の底面以外の平板状部分11aおよび頂角で散乱されるため、照明装置10全体の配光特性は、図3に示したように頂角方向での光量が減少し、斜め前方の光量が多く、側方にも十分に光量があり、後方にもある程度の光量が照射される分布となっている。
【0037】
図4は、照明装置10にカバー18を取り付けた状態を示す模式斜視図であり、図5は照明装置10の取り付け構造を示す部分拡大断面図である。前示したよう、照明装置10は、断面三角形状で長尺な筒状の配光部材11の内部に複数のLED12が配置されている。図4中では、配列基板13、ベース基板14および両端部の封止部材は省略している。照明装置10の両端部からは内部と電気的に接続された端子部が突出して設けられており、照明装置10の外部と接続されて電流が供給される。
【0038】
照明装置10はカバー18内の略中央部に保持具17によって挟持されて配置されている。保持具17は通常の蛍光灯を保持する部材と類似の構造であり、一対の湾曲した開閉板で閉じる方向にバネで付勢されて照明装置10を挟持するとともに、開く方向に力を加えることで照明装置10を取り付けることや取り外すことができる。カバー18には、通常の照明器具に用いられる乳白色の樹脂材料等を用いることができ、看板などの用途ではカバー18の表面に装飾や文字が描かれる。
【0039】
図6は、本実施形態の照明装置10を用いた照明器具での配光を示した模式断面図である。照明装置10からの照射光19は、図3に示したような配光分布となっている。したがって、カバー18の前面中央領域18aにも十分な光量が照射されるが、他の領域と比較して極端に明るくなることはない。また、照明装置10からは斜め前方に対して強い光を照らされることから、前面端部領域18bにも十分な光量が照射される。これにより、カバー18の前面での明るさにムラが少なく均一な光を照射することができる。
【0040】
また、カバー18の側面領域18cに対しても、照明装置10から側方に照射される光量が十分なので、側面領域18cも明るく照射することができる。さらに、背面領域18dに対しても照明装置10からある程度の光量が照射されることから、背面領域18dで散乱または反射された光によってカバー18全体を照射できる。このよう本実施形態の照明装置10を用いることで、照明器具のカバー18全領域にわたって明るさのムラを低減することができる。
【0041】
照明装置10の配光部材11は乳白色の材料で形成されており、LED12からの光を散乱して配向分布における指向性を十分に低減できる。これにより、照明装置10を用いた照明器具をカバー18の外部から観察しても、複数のLED12の点灯位置を粒として視認することがなく、眩しさやグレアを抑制でき、看板や天井照明、ショーケースの照明に用いる場合にも好ましい。
【0042】
図7A乃至図7Hは、配光部材11の頂角の角度を変えた場合の照明装置10の配光特性を示すグラフであり、それぞれ頂角が20度、30度、40度、50度、60度、70度、80度、90度の場合を示している。図1に示したように、配光部材11は光拡散面である2つの平板状部分11aが稜線部11bで連続して断面V字形状の頂角となっており、LED12からの光は断面V字形状の内角側に対して照射される。この頂角の角度を決定することで、図7A乃至図7Hのように配向分布を調整することができる。また、配光部材11の材料や厚さを適宜選択することでも配向分布を調整することができる。
【0043】
したがって、レンズによる配向分布の調整のように複雑な光学設計を必要とせず、頂角の角度を変更して押出し成型で配光部材11を形成するだけで容易に所望の配向分布を実現することができる。
【0044】
このように本発明の照明装置は、簡便な構成で組立も容易であり、配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、点灯位置を粒として視認しにくくでき眩しさやグレアを抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第1実施形態と共通の部分は説明を省略する。図8は、本発明の第2実施形態の照明装置20を示す模式断面図である。照明装置20は、配光部材21と、複数のLED22と、配列基板23と、ベース基板24とを備えている。
【0046】
配光部材21は、LED22からの光を拡散するための部材であり、光拡散面である2つの平板状部分21aが稜線部21bで接続されて断面V字形状の長尺形状をなしている。平板状部分21aおよび稜線部21bは、同一材料で一体に形成され稜線部21bで頂角を形成している。
【0047】
複数のLED22が配列基板23上に搭載されており、配列基板23はベース基板24上に搭載されている。また、ベース基板24は照明装置20の底面をなしており、配光部材21もベース基板24上に接着剤等の固定部材によって取り付けられている。これにより、第2実施形態の照明装置20では、ベース基板24と断面V字形状の配光部材21とで内部が空洞の断面三角形状の筒状となっている。
【0048】
照明装置20では、ベース基板24が底面として外部に露出されているから、LED12の発光に伴い発生する熱をベース基板24の裏面から外部に放熱しやすくなる。LED12は温度変化によって発光効率や発光波長が変化するという特性があるため、ベース基板24を裏面から露出させて放熱することで、LED12が高温になることを防止して照明装置20を安定して動作させやすくなる。必要に応じてベース基板24の裏面に放熱フィン等の部材を取り付けると、さらに放熱性を向上させることができる。
【0049】
図9は、照明装置20の組み立てを示す模式断面図である。本実施の形態でも、押し出し成型などの手法を用いて容易に断面V字形状の長尺な配光部材21を形成することができる。予め光を拡散する樹脂材料で配光部材21を形成しておき、LED22および配列基板23を搭載したベース基板24に配光部材21を取り付ける。ベース基板24の幅を配光部材21の開口幅と略一致させ、ベース基板24の長さを配光部材21の長さと同程度とすることが好ましい。
【0050】
配光部材21の縁部とベース基板24の縁部とを位置合わせして接合することで、断面三角形状の筒状となる。配光部材21とベース基板24の縁部を位置合わせするだけで、容易にLED22と配光部材21との位置決めをすることができる。このとき、配光部材21とベース基板24の長尺方向の全体にわたって接着剤を塗布し、配光部材21の両端部を封止部材等で封止する。これにより、照明装置20の内部に水分が進入することを防止でき、防湿性および防滴性を向上できる。
【0051】
本実施の形態でも、配光部材21は光拡散面である2つの平板状部分21aが稜線部21bで連続して断面V字形状の頂角となっており、LED22からの光は断面V字形状の内角側に対して照射される。この頂角の角度を決定することで、図7A乃至図7Hのように配向分布を調整することができる。また、配光部材21の材料や厚さを適宜選択することでも配向分布を調整することができる。したがって、レンズによる配向分布の調整のように複雑な光学設計を必要とせず、頂角の角度を変更して押出し成型で配光部材21を形成するだけで容易に所望の配向分布を実現することができる。
【0052】
このように本発明の照明装置は、簡便な構成で組立も容易であり、配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、点灯位置を粒として視認しにくくでき眩しさやグレアを抑制できる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第1実施形態と共通の部分は説明を省略する。図10は、本発明の第3実施形態の照明装置30を示す模式断面図である。照明装置30は、配光部材31と、複数のLED32と、配列基板33と、ベース基板34とを備えている。
【0054】
配光部材31は、LED32からの光を拡散するための部材であり、光拡散面である平板状部分31aと平板状部分31dが稜線部31bで接続されて断面台形状の筒状をなしている。平板状部分31a、31dおよび稜線部31bは同一材料で一体に形成され、平板状部分31dが幅の狭い底面を形成し、内部に空洞31cが形成されている。空洞31cの内部には、複数のLED32が配列基板33上に搭載され、配列基板33はベース基板34上に搭載され、ベース基板34は配光部材31の幅が広い底面に搭載されている。
【0055】
LED32からの光は、配光部材31の内面に向かって照射され、配光部材31の内面に到達し配光部材31の内部を伝搬して散乱および分散の作用を受けて様々な方向に進行する配光36となり外部に照射される。このとき、光拡散面である平板状部分31aおよび平板状部分31dに入射した光は、面に対して垂直方向が中心となるような配光となる。
【0056】
本実施の形態では、配光部材31が断面台形状の筒状であるため、LED32から前方に照射された光は平板状部分31dに到達して散乱される。したがって、LED32からの光は、底面に対して傾斜した平板状部分31aによる散乱の作用に加えて、頂面である平板状部分31dによる散乱の作用を受ける。これにより、頂面である平板状部分31dの幅などを選択することで、照明装置30の前方への光量を変更することができ、第1実施形態よりも前方への光量を増加させることができる。
【0057】
本実施の形態でも、配光部材31は光拡散面である平板状部分31a、31dが稜線部31bで連続しており、LED32からの光は頂面の内角側に対して照射される。この頂面と平板状部分31aの角度(頂角)を決定することで、図7A乃至図7Hのように配向分布を調整することができる。また、配光部材31の材料や厚さを適宜選択することでも配向分布を調整することができる。したがって、レンズによる配向分布の調整のように複雑な光学設計を必要とせず、頂角の角度および頂面の幅を変更して押出し成型で配光部材31を形成するだけで容易に所望の配向分布を実現することができる。
【0058】
このように本発明の照明装置は、簡便な構成で組立も容易であり、配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、点灯位置を粒として視認しにくくでき眩しさやグレアを抑制できる。
【0059】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第1実施形態と共通の部分は説明を省略する。図11は、本発明の第4実施形態の照明装置40を示す模式断面図である。照明装置40は、配光部材41と、複数のLED42と、配列基板43と、ベース基板44と、遮蔽部材47を備えている。
【0060】
配光部材41は、LED42からの光を拡散するための部材であり、光拡散面である平板状部分41aと平板状部分41dが稜線部41bで接続されて断面台形状の筒状をなしている。平板状部分41a、41dおよび稜線部41bは同一材料で一体に形成され、平板状部分41dが幅の狭い底面を形成し、内部に空洞41cが形成されている。空洞41cの内部には、複数のLED42が配列基板43上に搭載され、配列基板43はベース基板44上に搭載され、ベース基板44は配光部材41の幅が広い底面に搭載されている。また、平板状部分41dの内側に沿って、遮蔽部材47が取り付けられている。
【0061】
遮蔽部材47は、LED42からの光を遮るための部材であり、光を透過しない材料で形成されている。遮蔽部材47として、金属などの光を反射する材料を用いると、平板状部分41d方向に進行してきた光を平板状部分41a方向に反射でき、光を有効利用できることから好ましい。
【0062】
LED42からの光は、配光部材41の内面に向かって照射され、配光部材41の内面に到達した光が配光部材41の内部を伝搬して散乱および分散の作用を受けて様々な方向に進行する配光46となり外部に照射される。このとき、光拡散面である平板状部分41aに入射した光は、面に対して垂直方向が中心となるような配光となる。
【0063】
平板状部分41d方向に進行した光は、遮蔽部材47に到達して遮蔽または反射されるため、頂面である平板状部分41dには入射しない。したがって、LED42からの光は、底面に対して傾斜した平板状部分41aによる散乱の作用を受け、頂面である平板状部分41dでは散乱されない。これにより、頂面である平板状部分41dの幅などを選択することで、照明装置40の前方への光量を変更することができ、第1実施形態よりも前方への光量を減少させることができる。
【0064】
本実施の形態でも、配光部材41は光拡散面である平板状部分41a、41dが稜線部41bで連続しており、LED42からの光は頂面の内角側に対して照射される。この頂面と平板状部分41aの角度(頂角)を決定することで、図7A乃至図7Hのように配向分布を調整することができる。また、配光部材41の材料や厚さを適宜選択することでも配向分布を調整することができる。したがって、レンズによる配向分布の調整のように複雑な光学設計を必要とせず、頂角の角度および頂面の幅を変更して押出し成型で配光部材41を形成し、遮蔽部材47を選択するだけで容易に所望の配向分布を実現することができる。
【0065】
このように本発明の照明装置は、簡便な構成で組立も容易であり、配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、点灯位置を粒として視認しにくくでき眩しさやグレアを抑制できる。
【0066】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第1実施形態および第2実施形態と共通の部分は説明を省略する。図20は、本発明の第5実施形態の照明装置50を示す模式断面図である。照明装置50は、配光部材51と、複数のLED52と、配列基板53と、ベース基板54とを備えている。
【0067】
配光部材51は、LED52からの光を拡散するための部材であり、図20(a)に示す構成では、光拡散面である3つの平板状部分51aが接続部51bで接続されて断面三角形状の筒状をなしている。平板状部分51aは、同一材料で形成されてはいるが、一体的に形成されたものではない。すなわち、配光部材51は、個別の平板状部材である平板状部分51aを接続部51bで接続することにより、内部に空洞51cが形成された筒状とされている。接続部51bには、接着剤やパテ等の材料を用いても良い。あるいは、平板状部分51aの端部同士を融着させて接続部51bを形成しても良い。空洞51cの内部には、複数のLED52と、配列基板53と、ベース基板54が配置されている。
【0068】
配光部材51は、図20(b)に示すように、光拡散面である2つの平板状部分51aを接続部51bで接続し断面V字形状の長尺形状をなすように構成してもよい。この構成では、ベース基板54が照明装置50の底面をなしており、配光部材51もベース基板54上に接着剤等の固定部材によって取り付けられている。これにより、図20(b)に示す照明装置50では、ベース基板54と断面V字形状の配光部材51とで内部が空洞の断面三角形状の筒状となっている。
【0069】
このように本発明の照明装置は、簡便な構成で組立も容易であり、配光特性の指向性を低減させて側方や後方に対しても光を照射することができ、点灯位置を粒として視認しにくくでき眩しさやグレアを抑制できる。
【0070】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第2実施形態と共通の部分は説明を省略する。図21は、本発明の第6実施形態の照明装置60を示す模式断面図である。照明装置60は、配光部材61と、複数のLED62と、配列基板63と、ベース基板64とを備えている。
【0071】
配光部材61は、LED62からの光を拡散するための部材であり、光拡散面である平板状部分61aおよび61dが稜線部61bで接続されて断面V字形状の長尺形状をなしている。平板状部分61a、61dおよび稜線部61bは、同一材料で一体に形成され稜線部61bで頂角を形成している。
【0072】
複数のLED62が配列基板63上に搭載されており、配列基板63はベース基板64上に搭載されている。また、ベース基板64は照明装置60の底面をなしており、配光部材61もベース基板64上に接着剤等の固定部材によって取り付けられている。
【0073】
例えば、第1実施形態における照明装置10の断面では、配光部材11は、ベース基板14の中央を通り、かつ、ベース基板14に垂直な直線に対して対称となっている。これに対し、第6実施形態における照明装置60の断面では、配光部材61における平板状部分61aおよび61dの幅寸法が異なっており、ベース基板64の中央を通り、かつ、ベース基板64に垂直な直線に対して非対称形状となっている。
【0074】
図22は、照明装置60全体での断面方向での配光特性を示すグラフである。照明装置60全体の配光特性は、図22に示したように頂角方向での光量が減少し、斜め前方の光量が多く、側方にも十分に光量があり、後方にもある程度の光量が照射される分布となっている。さらに、配光部材61の断面形状が非対称であることにより、側方への光量も左右非対称となっている。照明装置60では、平板状部分61aおよび61dの幅寸法比を決定することで配向分布を調整することができる。
【0075】
照明装置60は、例えば、ショーケースなどにおいてケース内の商品(食品等)とケース上部に配置される看板部とを同時に照射する用途などにおいて有効である。
【0076】
図23(a)は、上部に看板部70を有し、かつ内部に商品80を陳列したショーケースにおいて、第1実施形態における照明装置10を用いて、看板部70と商品80とを同時に照射する場合を示す図である。照明装置10は、ショーケース内部の上方に配置される。このように、照明装置10を用いた場合、配光分布が左右対象であるため、看板部70に対しては照明が多く、商品80に対しては照明が少ないという事態が生じうる。
【0077】
これに対し、図23(b)は、同一のショーケースにおいて、第6実施形態における照明装置60を用いた場合を示す図である。このように、照明装置60を用いた場合、配光分布が左右非対象となるように調整可能であるため、看板部70に対する照明を少なく、商品80に対する照明を多くするように調整することで、看板部70および商品80の両方をバランスよく照らすことができる。
【0078】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
10、20、30、40、50、60…照明装置
11、21、31、41、51、61…配光部材
11a、21a、31a、31d、41a、41d、51a、61a、61d…平板状部分
11b、21b、31b、41b、61b…稜線部
51b…接続部
11c、31c、41c、51c…空洞
12、22、32、42、52、62…LED
13、23、33、43、53、63…配列基板
14、24、34、44、54、64…ベース基板
16、36、46…配光
17…保持具
18…カバー
18a…前面中央領域
18b…前面端部領域
18c…側面領域
18d…背面領域
19…照射光
47…遮蔽部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図20
図21
図22
図23