(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、電力需要家が使用する電力量を計測して表示する電力量計として、特許文献1で開示されるような電子式電力量計がある。
【0003】
この種の電力量計は、
図14に示すように、電力需要家が使用する電力量を計測すると共にその電力量を表示する本体部1を搭載したベース2と、そのベース2の前面に取り付けられたカバー3とからなる筐体4を具備する。
【0004】
ベース2の下部には、電力供給設備からの配電線が接続される電源側端子と、電力需要家内の負荷への配電線が接続される負荷側端子とを有する端子部5が設けられている。また、カバー3の前面は、本体部1での電力量表示が目視可能となっている。
【0005】
前述の構成からなる電力量計は、従来、以下の要領でもって電力需要家の構造物、例えば建築物の壁面(図示せず)に設けられた取り付け板6に取り付けられる。
【0006】
図15に示すように、取り付け板6の係止用ねじ7にベース2の係止部8を引っ掛け、そのベース1の端子部5の両側2箇所を取り付け板6に固定用ねじ9で固定する。その上で、
図16に示すように、カバー3をベース2の上方からスライドさせることにより、そのカバー3をベース2に嵌め込んで固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、前述した電力量計において、ベース2およびカバー3からなる筐体4がプラスチック等の樹脂製のものが採用されつつある。一方、この種の電力量計は、定格電流以下で使用するのが一般的であるが、電力需要家によっては定格電流を超えた状態で使用する場合もある。
【0009】
このように、定格電流を超えた過負荷状態で電力量計を長期間使用した場合、電力量計の構成部品の発熱、特に通電部分により電力量計自体が高温になる。その結果、計量機能等の異常になる可能性があり、また、これに起因する火災発生の原因にもなる。
【0010】
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、定格電流を超えた過負荷状態で長期間使用した場合でも、温度上昇による計量機能等の異常を未然に防止し得る電力量計の取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、樹脂製のベースとそのベースの前面に取り付けられた樹脂製のカバーとを備えた電力量計を電力需要家の構造物に設置する取り付け構造である。
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、ベースの背面と接触する金属製の放熱部材を、ベースと構造物との間に介在させたことを特徴とする。この放熱部材としては、金属板が有効である。
【0013】
本発明では、ベースの背面と接触する放熱部材を、ベースと構造物との間に介在させたことにより、定格電流を超える過負荷状態で電力量計を長期間使用した場合でも、その使用期間中、電力量計の構成部品で発生する熱は、ベースを介して放熱部材に伝わってその放熱部材から外部へ放出される。この放熱部材の熱伝導による放熱作用でもって電力量計自体が高温になることを抑制できる。
【0014】
本発明における放熱部材は、ベースと一体化されている構造が望ましい。
【0015】
このような構造を採用すれば、電力量計を構築物に新規に設置するに際して、ベースに放熱部材を予め取り付けておくことができ、電力量計の設置作業において、作業性の向上が図れる。
【0016】
本発明における放熱部材は、ベースと構造物との間に挿入可能なようにスリットを有する構造が望ましい。
【0017】
このような構造を採用すれば、構造物に設置された既設の電力量計に対して、スリットを利用することで、放熱部材を電力量計のベースと構造物との間に挿入するだけで組み付けることが可能となる。
【0018】
本発明における放熱部材は、電力量計の左右両側に位置する折り曲げ部を一体的に有する構造が望ましい。
【0019】
このような構造を採用すれば、折り曲げ部により放熱部材の表面積を増大させることができるので、放熱部材がより一層外部に晒されることになる。そのため、放熱部材の熱伝導による放熱作用をより一層発揮させることができる。その結果、過負荷状態での電力量計の長期間使用時、電力量計が高温になることをより一層抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、定格電流を超える過負荷状態で電力量計を長期間使用した場合でも、その使用期間中、電力量計の構成部品で発生する熱は、ベースを介して放熱部材に伝わってその放熱部材から外部へ放出される。この放熱部材の熱伝導による放熱作用でもって電力量計自体が高温になることを抑制できる。
【0021】
その結果、温度上昇による計量機能等の異常および火災発生を未然に防止することができ、信頼性が高く、安全性に富んだ電力量計を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る電力量計の取り付け構造の実施形態を図面に基づいて以下に詳述する。この実施形態では、一般家庭や工場などの電力需要家が使用する電力量を計測して表示する電子式電力量計を例示する。
【0024】
この実施形態の電力量計は、
図1に示すように、電力需要家が使用する電力量を計測すると共にその電力量を表示する本体部11を搭載したプラスチック等の樹脂製ベース12と、そのベース12の前面に取り付けられたプラスチック等の樹脂製カバー13とからなる筐体14を具備する。
【0025】
ベース12の上部には、本体部11が電気的に接続された配線基板などが搭載されている。また、ベース12の下部には、電力供給設備からの配電線が接続される電源側端子と、電力需要家内の負荷への配電線が接続される負荷側端子とを有する端子部15が設けられている。
【0026】
カバー13は、ベース12に搭載された本体部11および端子部15を覆う。カバー13の前面は、本体部11での電力量表示が目視可能となっている。このカバー13は、ベース12に対してその上方からスライドさせることによりベース12に取り付け可能となっている。
【0027】
以上の構成からなる樹脂製の筐体14を持つ電力量計は、電力需要家の構造物に設置される。具体的には、一般家庭や工場などの建築物の壁面(図示せず)に固定された構造物としての取り付け板16(
図1参照)に電力量計を取り付けるようにしている。
【0028】
この種の電力量計は、定格電流以下で使用するのが一般的であるが、電力需要家によっては定格電流を超えた状態で使用する場合がある。このように、定格電流を超えた過負荷状態で電力量計を長期間使用した場合、電力量計の構成部品の発熱により電力量計自体が高温になる。
【0029】
そこで、この実施形態の電力量計は、以下の取り付け構造でもって取り付け板16に設置される。つまり、
図1に示すように、ベース12の背面と接触する放熱部材としての金属板21を、ベース12と取り付け板16との間に介在させている。金属板21は、放熱性を考慮してベース12よりも若干大きい面積を有する略矩形状をなす。
【0030】
但し、金属板21の下端縁部は、電力量計の端子部15から下方へ食み出すことがないようにしている。このように、金属板21の下端縁部が端子部15から下方へ食み出さないことで、電力量計の端子部15に配電線を接続する作業時に、その配電線が金属板21に誤って接触しないように短絡事故を防止して安全性の確保を図っている。
【0031】
この金属板21は、例えば、熱伝導率の高いアルミ製が好ましいが、熱伝導性が良好な素材であれば他の金属製あるいは金属以外の素材製であってもよい。また、この実施形態では、放熱部材として板状のものを例示するが、シート状のものであってもよい。
【0032】
このように、熱伝導性が良好な金属板21を電力量計のベース12の背面に接触させた取り付け構造を採用したことにより、定格電流を超える過負荷状態で電力量計を長期間使用した場合でも、その使用期間中、電力量計の構成部品で発生する熱はベース12を介して金属板21に伝わってその金属板21から外部へ放出される。
【0033】
この金属板21の熱伝導による放熱作用でもって電力量計自体が高温になることを抑制できる。その結果、温度上昇による計量機能等の異常および火災発生を未然に防止することができる。このようにして、信頼性が高く、安全性に富んだ電力量計を電力需要家に設置することができる。
【0034】
以上で説明した金属板21(
図1参照)を新設の電力量計に取り付ける場合と、金属板31(
図5参照)を既設の電力量計に取り付ける場合とに分けて以下に詳述する。
【0035】
なお、金属板31は、前述した金属板21と同様、ベース12の背面と接触してそのベース12と取り付け板16との間に介在し、熱伝導による放熱作用でもって電力量計自体が高温になることを抑制する機能を発揮する。
【0036】
図1は、取り付け板16に新規に取り付けられた電力量計で、そのベース12と取り付け板16との間に金属板21が介在する取り付け構造を示す。
【0037】
電力量計を取り付け板16に新規に取り付ける場合に使用される金属板21は、
図2に示すように、その上部中央部位に取り付け板16の係止用ねじ17に引っ掛けるための係止用孔22を有すると共に、下部両側部位に取り付け板16にねじ止めするための固定用孔23を有する。
【0038】
図2に示すように、取り付け板16の係止用ねじ17に金属板21の係止用孔22を引っ掛ける。その上で、
図3に示すように、取り付け板16の係止用ねじ17に電力量計のベース12の係止部18を引っ掛かる。
【0039】
その上で、ベース12の端子部15の両側2箇所を金属板21の固定用孔23を介して取り付け板16に固定用ねじ19で締め付ける。最後に、
図4に示すように、カバー13をベース12の上方からスライドさせることにより、そのカバー13をベース12に嵌め込んで固定する。
【0040】
なお、金属板21を新設の電力量計に取り付ける場合、前述したように取り付け板16に金属板21と電力量計とを別々に取り付けている。一方、
図5および
図6に示すような金属板41を使用することも可能である。なお、
図6における拡大図は、X部およびY部の部分断面を示す。
【0041】
図5および
図6に示すように、電力量計のベース12に金属板41を予め取り付けておき、この金属板41と一体化した電力量計を取り付け板16(
図2参照)に設置するようにしてもよい。このように、ベース12に金属板41を予め取り付けておけば、電力量計を取り付け板16に設置する上で、作業性の向上が図れる。
【0042】
この場合、金属板41は、
図5に示すように、その略中央部位に電力量計のベース12に設けられた凸状の固定用突起42(ストッパ)に係止するための固定用孔43を有すると共に、その上下左右の複数部位(例えば4箇所)に電力量計のベース12に設けられた固定用溝44に挿入するための舌片状の固定用爪45を有する。
【0043】
この金属板41を電力量計のベース12に組み付けるに際しては、ベース12の背面側斜め上方から金属板41の固定用爪45をベース12の固定用溝44に挿入する。
図6に示すように、固定用爪45の固定用溝44への挿入が完了すると、ベース12の固定用突起42を金属板41の固定用孔43に嵌め込んで係止させることにより(
図6のX部拡大図参照)、ベース12に対する金属板41の固定が完了し、金属板41がベース12に一体化される。
【0044】
以上のような組み付けが可能なように、金属板41の固定用爪45は、切り起こし成形によりベース12側に突出した状態で下方へ延びるような形状を有する(
図5参照)。これに対して、ベース12の固定用溝44は、ベース12の背面に開口した凹所の内部で下方へ延びるような形状を有する(
図6のY部拡大図参照)。
【0045】
また、金属板41の上部中央部位には切り欠き部46が設けられている。このような切り欠き部46を設けることにより、金属板41が一体化された電力量計を取り付け板16に設置するに際して、ベース12の係止部18を取り付け板16の係止用ねじ17に引っ掛けることが容易となる(
図3参照)。
【0046】
さらに、金属板41の下部両側部位に固定用スリット47が設けられている。この固定用スリット47は、金属板41の下端縁に開口して固定用ねじ19(
図3参照)の挿通部位50まで延びている。固定用スリット47の開口部には、固定用ねじ19の挿通部位50への嵌合を容易にするため、拡開するテーパ部48が設けられている。
【0047】
なお、金属板41の固定用孔43に近接してU字状のスリット49を形成している。これにより、そのスリット49の内側に位置するランド部51(固定用孔43の形成部分)を弾性変形可能としている。
【0048】
これにより、金属板41が不要な時は、ランド部51を若干弾性変形させることにより、ベース12の固定用突起42から金属板41の固定用孔43を離脱させ、固定用突起42と固定用孔43との係合状態を解除することができる。このようにして、金属板41をワンタッチ式でベース12から取り外すことが可能となる。
【0049】
次に、
図7は、取り付け板16に取り付けられた既設の電力量計で、そのベース12と取り付け板16との間に金属板31が介在する取り付け構造を示す。
【0050】
電力量計が取り付け板16に既に取り付けられている場合に使用する金属板31は、
図9に示すように、その中央上下方向に延びる係止用スリット32を有すると共に、下部両側部位で上下方向に延びる固定用スリット33を有する。
【0051】
係止用スリット32は、金属板31の下端縁に開口して取り付け板16の係止用ねじ17と対応する位置まで延びている。また、固定用スリット33は、金属板31の下端縁に開口して固定用ねじ19と対応する位置まで延びている。係止用スリット32および固定用スリット33の開口部には、取り付け板16の係止用ねじ17および固定用ねじ19への挿入を容易とするために拡開するテーパ部34,35が設けられている。
【0052】
図8に示すように、取り付け板16に設置された既設の電力量計について、カバー13を上方へスライドさせることにより、ベース12からカバー13を取り外す。そして、
図9に示すように、ベース12の端子部15の両側に位置する固定用ねじ19を緩めた上で、金属板31を上方からベース12と取り付け板16との間に挿入する。
【0053】
このように固定用ねじ19を緩めると、ベース12の係止部18を取り付け板16の係止用ねじ17に引っ掛けただけの状態となる。そのため、ベース12と取り付け板16との間に隙間ができるので、その隙間を利用してベース12と取り付け板16との間に金属板31が挿入可能となる。
【0054】
その金属板31の挿入時、金属板31の係止用スリット32に取り付け板16の係止用ねじ17が挿通すると共に、金属板31の固定用スリット33に取り付け板16の固定用ねじ19が挿通する。
【0055】
この時、係止用スリット32および固定用スリット33の開口部にはテーパ部34,35が設けられていることから、係止用スリット32および固定用スリット33への係止用ねじ17および固定用ねじ19の挿入が容易である。
【0056】
金属板31の挿入が完了すると、係止用スリット32の最奥部が係止用ねじ17に当接すると共に、固定用スリット33の最奥部が固定用ねじ19に当接する。これにより、ベース12と取り付け板16との間で金属板31が位置決めされる。
【0057】
この状態で、ベース12の端子部15の両側に位置する固定用ねじ19を締め付けることにより、ベース12を金属板31を介して取り付け板16に固定する。その後、
図10に示すように、カバー13をベース12の上方からスライドさせることにより、そのカバー13をベース12に嵌め込んで固定する。
【0058】
このように、係止用スリット32および固定用スリット33が形成された金属板31を使用すれば、既設の電力量計を取り付け板16から取り外すことなく、電力量計のベース12と取り付け板16との間に金属板31を介在させることが可能となる。
【0059】
以上で説明した実施形態では、平板状の金属板21,41,31(
図2、
図5および
図9参照)を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、
図11、
図12および
図13に示すような形状の金属板26,56,36を使用することが可能である。
【0060】
図11は、
図2に示す金属板21の変形例で、新設の電力量計に対して使用する金属板26を示し、
図12は、
図5に示す金属板41の変形例で、新設の電力量計に対して使用する金属板56を示す。また、
図13は、
図9に示す金属板31の変形例で、既設の電力量計に対して使用する金属板36を示す。
【0061】
なお、
図11、
図12および
図13に示す金属板26,56,36の使用形態および取り付け方法については、
図2、
図5および
図9に示す金属板21,41,31と同様であるため、重複説明は省略する。
【0062】
これら金属板26,56,36は、
図11、
図12および
図13に示すように、電力量計の左右両側(
図1、
図6および
図7参照)に位置する折り曲げ部27,57,37を一体的に有する。このような折り曲げ部27,57,37を有することにより、金属板26,56,36の表面積を増大させることができる。
【0063】
その結果、金属板26,56,36の熱伝導による放熱作用をより一層発揮させることができる。折り曲げ部27,57,37を有する金属板26,56,36を使用することにより、過負荷状態での電力量計の長期間使用時、電力量計が高温になることをより一層抑制できる。
【0064】
なお、この折り曲げ部27,57,37の下端縁部は、金属板26,56,36の下端縁部よりも上側に位置する。このようにして、折り曲げ部27,57,37の下端縁部が電力量計の端子部15から導出した配電線から離隔した位置となるようにしている。
【0065】
このように、折り曲げ部27,57,37の下端縁部を電力量計の端子部15から導出した配電線から離隔した位置となるようにすることで、電力量計の端子部15に配電線を接続する作業時に、その配電線が金属製の折り曲げ部27,57,37に誤って接触しないように短絡事故を防止して安全性の確保を図っている。
【0066】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。