特許第6404414号(P6404414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404414
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】ブレーキディスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20181001BHJP
   B21D 53/34 20060101ALI20181001BHJP
   B21D 39/03 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   F16D65/12 R
   B21D53/34
   B21D39/03 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-137389(P2017-137389)
(22)【出願日】2017年7月13日
(62)【分割の表示】特願2014-6150(P2014-6150)の分割
【原出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2017-194165(P2017-194165A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-7906(P2013-7906)
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154303
【氏名又は名称】株式会社フジコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】横田 光宏
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−116600(JP,A)
【文献】 特開2009−030625(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第3032127(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/12
B21D 53/34
B21D 39/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸に取り付けられて当該車両の制動を行うためのブレーキディスクの製造方法において、
中央孔を有する略円環状板材から成り、当該中央孔の開口縁において内側に向かって突出した複数の突出部が形成されたロータを得るためのロータ加工工程と、
筒状部材から成り、前記突出部に対応した開口部が形成されたブラケットを得るためのブラケット加工工程と、
前記ブラケットを前記ロータ加工工程で得られたロータの中央孔に挿通させるとともに、前記ブラケットの開口部に前記ロータの突出部を嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させる一体化工程と、
を有し、且つ、前記ブラケット加工工程で得られたブラケットにおける少なくとも前記開口部が形成された部位を内側に変形させて縮径部を得る縮径加工工程を具備するとともに、前記一体化工程は、当該縮径加工工程を経たブラケットを前記ロータ加工工程で得られたロータの中央孔に挿通させた状態で、当該ブラケットの前記縮径部を外側に変形させて拡径させ、前記ブラケットの開口部に前記ロータの突出部を嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させることを特徴とするブレーキディスクの製造方法。
【請求項2】
前記一体化工程において、前記開口部に対して前記突出部をかしめることで前記ブラケットとロータとを一体化させるかしめ工程が行われることを特徴とする請求項1記載のブレーキディスクの製造方法。
【請求項3】
前記ロータは、ステンレス材から成るとともに、前記ブラケットは、アルミ材から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のブレーキディスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車軸に取り付けられて当該車両の制動を行うためのブレーキディスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車や二輪車等の車両に配設されて当該車両を制動可能なブレーキ装置として、ブレーキディスクとブレーキパッドとを具備したディスクブレーキ装置が普及するに至っている。かかるディスクブレーキ装置は、車両の車輪にブレーキディスクを取り付けて一体に回転可能とするとともに、そのブレーキディスクにブレーキパッドを押圧させることで、制動力を得るよう構成されている。
【0003】
従来のブレーキディスクとして、例えば略円環状板材から成るロータと、該ロータの中央に取り付けられる筒状のブラケットとを有して成るものが挙げられ、このようなブレーキディスクは、当該ブラケットを車両の車軸に取り付けるとともに、ロータにブレーキパッドを押圧させることで制動力を得るよう構成されていた。かかる従来のブレーキディスクは、ロータとブラケットとをリベット等の締結手段にて締結することで一体化させていた。なお、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のブレーキディスクにおいては、ロータとブラケットとを一体化させていたので、例えば鋳鉄等から成る一体成形部品のものに比べ、ロータ及びブラケットとしてそれぞれ最適な材料を選択して用いることができるという技術的メリットがあるものの、ロータとブラケットとをリベット等の締結手段にて締結することで一体化させていたので、少なくとも締結手段の分だけ、重量が大きくなってしまうとともに部品点数が多くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ロータ及びブラケットとしてそれぞれ最適な材料を選択することができ、かつ、軽量化を図り得るとともに部品点数を削減できるブレーキディスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、車両の車軸に取り付けられて当該車両の制動を行うためのブレーキディスクの製造方法において、中央孔を有する略円環状板材から成り、当該中央孔の開口縁において内側に向かって突出した複数の突出部が形成されたロータを得るためのロータ加工工程と、筒状部材から成り、前記突出部に対応した開口部が形成されたブラケットを得るためのブラケット加工工程と、前記ブラケットを前記ロータ加工工程で得られたロータの中央孔に挿通させるとともに、前記ブラケットの開口部に前記ロータの突出部を嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させる一体化工程とを有し、且つ、前記ブラケット加工工程で得られたブラケットにおける少なくとも前記開口部が形成された部位を内側に変形させて縮径部を得る縮径加工工程を具備するとともに、前記一体化工程は、当該縮径加工工程を経たブラケットを前記ロータ加工工程で得られたロータの中央孔に挿通させた状態で、当該ブラケットの前記縮径部を外側に変形させて拡径させ、前記ブラケットの開口部に前記ロータの突出部を嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させることを特徴とする。
【0009】
請求項記載の発明は、請求項1記載のブレーキディスクの製造方法において、前記一体化工程において、前記開口部に対して前記突出部をかしめることで前記ブラケットとロータとを一体化させるかしめ工程が行われることを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のブレーキディスクの製造方法において、前記ロータは、ステンレス材から成るとともに、前記ブラケットは、アルミ材から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、ブラケットの開口部にロータの突出部が嵌合して当該ブラケットとロータとが一体化されてブレーキディスクを得ることができるので、ロータ及びブラケットとしてそれぞれ最適な材料を選択することができ、かつ、軽量化を図り得るとともに部品点数を削減できる。
【0017】
さらに、縮径加工工程を経たブラケットをロータ加工工程で得られたロータの中央孔に挿通させた状態で、当該ブラケットの縮径部を外側に変形させて拡径させ、ブラケットの開口部にロータの突出部を嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させるので、開口部をブラケットの側壁に設けられた孔とすることができる。したがって、開口部としての孔にロータの突出部を嵌合させることで、ブラケットに対するロータの抜け止めと、回転方向に対する係止とを併せて図ることができるとともに、ロータとブラケットとをより強固に一体化させることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、一体化工程において、開口部に対して突出部をかしめることでブラケットとロータとを一体化させるかしめ工程が行われるので、ロータとブラケットとをより確実かつ強固に一体化させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、ロータは、ステンレス材から成るとともに、ブラケットは、アルミ材から成るので、ブレーキディスクにおけるロータの強度及び耐熱性の向上を図ることができ、かつ、ブラケットの軽量化及び放熱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るブレーキディスクを示す平面図及び正面図
図2図1におけるII−II線断面図
図3図1におけるIII−III線断面図
図4】同ブレーキディスクにおけるロータを示す平面図及び正面図
図5】同ブレーキディスクにおけるブラケットを示す平面図及び正面図
図6図5におけるVI−VI線断面図
図7】同ブレーキディスクの製造過程におけるブラケット(縮径加工工程を経たブラケット)を示す底面図及び断面図
図8】同ブレーキディスクの製造過程におけるロータ及びブラケット(一体化工程を経たロータ及びブラケット)を示す平面図及び正面図
図9図8におけるIX−IX線断面図
図10】同ブレーキディスクにおけるブラケットを得るためのプレス加工装置を示す模式図
図11】同ブレーキディスクにおけるブラケットに対して縮径加工工程を施すためのプレス加工装置を示す模式図
図12】同ブレーキディスクにおける一体化工程を施すためのプレス加工装置を示す模式図
図13】同ブレーキディスクにおけるかしめ工程を施すためのプレス加工装置を示す模式図
図14】同ブレーキディスクの製造工程を示すフローチャート
図15参考例に係るブレーキディスクを示す平面図
図16図15におけるXVI−XVI線断面図
図17】同ブレーキディスクにおけるロータを示す平面図及び正面図
図18】同ブレーキディスクにおけるブラケットを示す平面図及び正面図
図19】同ブレーキディスクの製造過程におけるロータの中央孔にブラケットを挿入させた状態(拡径工程前)を示す平面図
図20図19におけるXX−XX線断面図
図21】同ブレーキディスクに係る拡径工程を経て拡径されたブラケット(単体)を示す平面図及び正面図
図22】同ブレーキディスクの製造工程を示すフローチャート
図23】本発明の他の実施形態に係るブレーキディスクにおけるブラケットを示す縦断面図
図24】同ブレーキディスクにおけるブラケットをロータに対して一体化した状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態及び参考例について図面を参照しながら具体的に説明する。
実施形態に係るブレーキディスクは、自動車や二輪車等の車両の車軸に取り付けられて当該車軸と一体的に回転可能とされ、ブレーキパッドが押圧されることにより車両の制動力を得るためのものであり、図1〜3に示すように、ブレーキパッド(不図示)が押圧され得るロータ1と車両の車軸(不図示)に取り付けられるブラケット2とを一体化させて成るものである。
【0023】
ロータ1は、図4に示すように、中央孔1aを有する略円環状板材から成り、当該中央孔1aの開口縁において内側に向かって突出した複数の突出部1bが形成されたもので、本実施形態においては、ステンレス材から成るものである。また、本実施形態に係るロータ1は、それぞれの突出部1bが矩形状に形成されるとともに、中央孔1aの開口縁に沿って厚さ方向に段部1baが形成されている。なお、突出部1bに代えて平面視で他の形状のものとしてもよく、ロータ1に形成すべき数も任意に設定することができる。
【0024】
ブラケット2は、図5に示すように、側壁2a及び底部2bを有した有底の筒状部材から成り、側壁2aには、ロータ1の突出部1bに対応した開口部2cが形成されたものであり、本実施形態においては、アルミ材(アルミニウムを主な組成として含む材料であって、アルミニウム合金等を含む)から成るものである。かかるブラケット2の外径寸法は、ロータ1の中央孔1aの内径寸法(対向する突出部1b間の寸法)より若干大きく設定されており、後述する縮径加工工程を経ることにより、当該ロータ1の中央孔1aにブラケット2を挿通し得るようになっている。
【0025】
しかるに、本実施形態に係る開口部2cは、側壁2aの全周に亘って形成された貫通孔(ブラケット2の内部と外部とを貫通させた孔)から成り、ロータ1の中央孔1aにブラケット2を挿通させた状態において、突出部1bに対して略同一形状で且つ同一位置に形成されている。なお、ブラケット2の底部2bには、複数の取付孔2dが同心円上に形成されており、かかる取付孔2d及び車両の車軸に形成されたボルト孔(不図示)にボルト等を挿通して締め付けることで、ロータ1及びブラケット2から成るブレーキディスクを車両に取付可能とされている。図中符号2eは、ブラケット2の底部2bに形成された貫通孔を示している。
【0026】
ここで、本実施形態に係るブレーキディスクは、図1〜3に示すように、ブラケット2をロータ1の中央孔1aに挿通させるとともに、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させて成るものである。すなわち、ブラケット2をロータ1の中央孔1aに挿通させた状態で、突出部1bが開口部2cに挿入されて嵌合することで、ブラケット2に対するロータ1の軸方向(図2における上下方向)の抜け止めと回転方向の係止とが同時に行われているのである。
【0027】
すなわち、本実施形態に係るブレーキディスクは、ロータ1及びブラケット2の2部品にて成るとともに、溶着や接着工程を経ず、かつ、リベットやネジ等の締結手段を用いることなく、当該ロータ1及びブラケット2を一体化させて成るのである。また、開口部2cに挿通した突出部1bを塑性変形させることで、開口部2cに対して突出部1bをかしめ、ブラケット2とロータ1とを一体化させるようにするのが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態に係るブレーキディスクの製造方法について、図14に示すフローチャート等に基づいて説明する。
本実施形態に係るブレーキディスクは、図14に示すように、ロータ加工工程S1と、ブラケット加工工程S2と、縮径加工工程S3と、一体化工程S4と、かしめ工程S5とを有している。ロータ加工工程S1は、図4で示す如きステンレス材から成るロータ1(中央孔1aを有する略円環状板材から成り、当該中央孔1aの開口縁において内側に向かって突出した複数の突出部1bが形成されたロータ)を得るための工程である。なお、本実施形態に係るロータ1においては、例えばプレス加工により、中央孔1aの開口縁に沿って厚さ方向に段部1baを形成するようになっている。
【0029】
ブラケット加工工程S2は、図5、6で示す如きアルミ材から成るブラケット2(筒状部材から成り、突出部1bに対応した開口部2cが形成されたブラケット)を得るための工程であり、例えば図10で示す如きプレス加工装置を用いてブラケット2の外観形状を得るものとされる。かかるブラケット加工工程S2で用いられるプレス加工装置は、上型U1と下側D1とを有しており、これら上型U1と下側D1との近接又は衝合によって絞り加工を施し、ブラケット2の外観形状を得るものであり、その後、パンチ等によりブラケット2の所定位置に開口部2cが形成されるようになっている。
【0030】
縮径加工工程S3は、図7に示すように、ブラケット加工工程S2で得られたブラケット2における少なくとも開口部2cが形成された部位(本実施形態においては、開口部2cを含む所定範囲であってブラケットの開口縁部から延設された部位)を内側に変形(塑性変形)させて縮径部2fを得る工程であり、例えば図11で示す如きプレス加工装置を用いて当該縮径部2fを得るものとされている。かかる縮径加工工程S3で用いられるプレス加工装置は、内側に向かって膨出した部位aを有した上型U2と下側D2とを有しており、これら上型U2と下側D2との近接又は衝合によって、上型U2の部位aがブラケット2を内側に押圧して縮径部2fを形成し得るようになっている。
【0031】
一体化工程S4は、縮径加工工程S3を経たブラケット2をロータ加工工程S1で得られたロータ1の中央孔1aに挿通させるとともに、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させる工程である。特に、本実施形態に係る一体化工程S4は、縮径加工工程S3を経たブラケット2をロータ加工工程S1で得られたロータ1の中央孔1aに挿通させた状態で、当該ブラケット2の縮径部2fを外側に変形させて拡径させ、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させる工程とされている。
【0032】
本実施形態の一体化工程S4においては、例えば図12で示す如きプレス加工装置を用いて一体化させ得るものとされている。かかる一体化工程S4で用いられるプレス加工装置は、パンチ部Pを有した上型U3と下側D3とを有しており、これら上型U3と下側D3との近接又は衝合によって、パンチ部Pが縮径部2fを外側に押圧し、開口部2cに突出部1bを挿入して嵌合させ得るようになっている。すなわち、本実施形態によれば、予め縮径加工工程S3にて縮径部2fが形成されているので、ブラケット2をロータ1の中央孔1aに挿通させる際、突出部1bがブラケット2の側壁2aに干渉してしまうのを回避でき、挿通後、縮径部2fを再び拡径させ、開口部2cに突出部1bを嵌合し得るのである。
【0033】
また、本実施形態においては、一体化工程S4において、開口部2cに対して突出部1bをかしめることでブラケット2とロータ1とを一体化させるかしめ工程S5が行われる。かかるかしめ工程S5で用いられるプレス加工装置は、図13で示すように、上型U4と下側D4とを有しており、これら上型U4と下側D4との近接又は衝合によって、ロータ1の外形からはみ出た部位を押圧して塑性変形させるとともに、開口部2cに挿通した突出部1bを上下方向に押圧して僅かに塑性変形させることで、かしめが行われるようになっている。
【0034】
しかして、かしめ工程S5を経ることにより、図8、9で示す如き、ロータ1とブラケット2とが一体化されたブレーキディスクは、図1〜3で示すように、ロータ1の外形からはみ出た部位が上型U4にて圧縮されるので、ロータ1の表面とブラケット2の開口縁部とが略面一になるよう構成されている。なお、上型U4にて圧縮された部位の材料は、ロータ1の開口縁に形成された段部1baに流れるようになっている。
【0035】
以上により、ロータ1及びブラケット2が一体化されたブレーキディスクを得ることができる。本実施形態によれば、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bが嵌合して当該ブラケット2とロータ1とが一体化されてブレーキディスクを得ることができるので、ロータ1及びブラケット2としてそれぞれ最適な材料を選択することができ、かつ、締結手段等を不要とすることができることから、軽量化を図り得るとともに部品点数を削減できる。
【0036】
特に、本実施形態によれば、縮径加工工程S3を経たブラケット2をロータ加工工程S1で得られたロータ1の中央孔1aに挿通させた状態で、当該ブラケット2の縮径部2fを外側に変形させて拡径させ、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させるので、開口部2cをブラケット2の側壁2aに設けられた孔(貫通孔)とすることができる。したがって、開口部2cとしての孔にロータ1の突出部1bを嵌合させることで、ブラケット2に対するロータ1の抜け止めと、回転方向に対する係止とを併せて図ることができるとともに、ロータ1とブラケット2とをより強固に一体化させることができる。
【0037】
さらに、一体化工程S4において、開口部2cに対して突出部1bをかしめることでブラケット2とロータ1とを一体化させるかしめ工程S5が行われるので、ロータ1とブラケット2とをより確実かつ強固に一体化させることができる。なお、本実施形態においては、かしめ工程S5を行っているが、ロータ1とブラケット2との一体化が確実かつ強固に行われていれば、かしめ工程S5の如き別個の工程を省略することができる。また、かしめ工程は、上記実施形態のごときものに限定されず、例えば開口部2cに挿通した突出部1bの突端を塑性変形させることで、開口部2cに対して突出部1bをかしめるようにしてもよい。
【0038】
またさらに、本実施形態に係るロータ1は、ステンレス材から成るとともに、ブラケット2は、アルミ材から成るので、ブレーキディスクにおけるロータ1の強度及び耐熱性の向上を図ることができ、かつ、ブラケット2の軽量化及び放熱性の向上を図ることができる。なお、ロータ1及びブラケット2は、それぞれの機能を最適化し得るものであれば、任意の他の材料を選択することができ、これら部材を同一材料から成るものとすることもできる。
【0039】
次に、参考例に係るブレーキディスクについて説明する。
参考例に係るブレーキディスクは、実施形態と同様、自動車や二輪車等の車両の車軸に取り付けられて当該車軸と一体的に回転可能とされ、ブレーキパッドが押圧されることにより車両の制動力を得るためのものであり、図15、16に示すように、ブレーキパッド(不図示)が押圧され得るロータ1と車両の車軸(不図示)に取り付けられるブラケット2とを一体化させて成るものである。
【0040】
ロータ1は、図17に示すように、中央孔1aを有する略円環状板材から成り、当該中央孔1aの開口縁において内側に向かって突出した複数の突出部1bが形成されたもので、本参考例においては、ステンレス材から成るものである。なお、本参考例に係るロータ1にも、実施形態と同様、段部1baが形成されている。ブラケット2は、図18に示すように、側壁2a及び底部2bを有した有底の筒状部材から成り、側壁2aには、ロータ1の突出部1bに対応した開口部2cが形成されたものであり、本参考例においては、アルミ材(アルミニウムを主な組成として含む材料であって、アルミニウム合金等を含む)から成るものである。特に、本参考例に係るブラケット2の外径寸法Lbは、ロータ1の中央孔1aの内径寸法La(対向する突出部1b間の寸法)より若干小さく設定されており、実施形態に係る縮径加工工程を経ることなく、当該ロータ1の中央孔1aにブラケット2を挿通し得るようになっている。
【0041】
しかるに、本参考例に係る開口部2cは、実施形態と同様、側壁2aの全周に亘って形成された貫通孔(ブラケット2の内部と外部とを貫通させた孔)から成り、ロータ1の中央孔1aにブラケット2を挿通させた状態(但し、本参考例においては縮径加工工程を経ない円筒状のブラケット2を挿通させた状態)において、突出部1bに対して略同一形状で且つ同一位置に形成されている。
【0042】
ここで、本参考例に係るブレーキディスクは、図15、16に示すように、ブラケット2をロータ1の中央孔1aに挿通させるとともに、当該ブラケット2の側壁2a(開口部2cが形成された部位)に拡径部2aa(図16、21参照)を有しつつブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させて成るものである。すなわち、ブラケット2をロータ1の中央孔1aに挿通させた状態で、突出部1bが開口部2cに挿入されて嵌合することで、ブラケット2に対するロータ1の軸方向(図16における上下方向)の抜け止めと回転方向の係止とが同時に行われているのである。
【0043】
すなわち、本参考例に係るブレーキディスクは、実施形態と同様、ロータ1及びブラケット2の2部品にて成るとともに、溶着や接着工程を経ず、かつ、リベットやネジ等の締結手段を用いることなく、当該ロータ1及びブラケット2を一体化させて成るのである。また、開口部2cに挿通した突出部1bを塑性変形させることで、開口部2cに対して突出部1bをかしめ、ブラケット2とロータ1とを一体化させるようにするのが好ましい。
【0044】
次に、本参考例に係るブレーキディスクの製造方法について、図22に示すフローチャート等に基づいて説明する。
参考例に係るブレーキディスクは、図22に示すように、ロータ加工工程S1と、ブラケット加工工程S2と、一体化工程S3と、拡径加工工程S4と、かしめ工程S5とを有している。なお、ロータ加工工程S1、ブラケット加工工程S2及びかしめ工程S5或いは使用されるプレス加工装置等については、実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
一体化工程S3は、ブラケット加工工程S2で得られたブラケット2をロータ加工工程S1で得られたロータ1の中央孔1aに挿通させるとともに、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させる工程である。特に、本参考例に係る一体化工程S3は、ブラケット2の側壁2aにおける少なくとも開口部2cが形成された部位を外側に変形させて拡径させる拡径加工工程S4を有しており、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させる工程である。
【0046】
具体的には、拡径加工工程S4は、図19、20に示すように、ブラケット加工工程S2で得られたブラケット2(筒状の状態のブラケット2)をロータ加工工程S1で得られたロータ1の中央孔1aに挿通させた状態とし、当該ブラケット2の開口部2cが形成された部位(ブラケット2における開口側の側壁全体)を外側に変形させて拡径(開口側側壁を膨出)させることで拡径部2aa(図21参照)を形成することにより、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させ、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させる工程とされている。
【0047】
以上により、ロータ1及びブラケット2が一体化されたブレーキディスクを得ることができる。本参考例によれば、実施形態と同様、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bが嵌合して当該ブラケット2とロータ1とが一体化されてブレーキディスクを得ることができるので、ロータ1及びブラケット2としてそれぞれ最適な材料を選択することができ、かつ、締結手段等を不要とすることができることから、軽量化を図り得るとともに部品点数を削減できる。
【0048】
特に、本参考例に係る一体化工程は、ブラケット加工工程S2で得られたブラケット2(円筒形状)をロータ加工工程S1で得られたロータ1の中央孔1aに挿通させた状態で、当該ブラケット2の側壁における少なくとも開口部2cが形成された部位(本参考例においてはブラケット2の開口側側壁)を外側に変形させて拡径させ、ブラケット2の開口部2cにロータ1の突出部1bを嵌合させることで、当該ブラケット2とロータ1とを一体化させるので、締結手段等を不要とすることができることから、軽量化を図り得るとともに部品点数を削減できるとともに、実施形態の如くブラケットを縮径及び拡径させる工程がそれぞれ必要なものに比べ、製造工程を簡素化することができる。
【0049】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図23に示すように、側壁及び底部を有したブラケット3の側壁において、開口縁から切り欠いた切欠きを開口部3aとしたものを用いるようにしてもよい。すなわち、上記実施形態及び参考例における開口部2cが側壁に形成された孔であるのに対し、当該孔に代えて、図24に示すように、側壁において開口縁から切り欠いた切欠きを開口部3aとし、当該開口部3aにロータ1の突出部1bを嵌合させるものとしてもよいのである
【0050】
また、実施形態に係るロータ加工工程S1、ブラケット加工工程S2、縮径加工工程S3、一体化工程S4及びかしめ工程S5、或いは参考例に係るロータ加工工程S1、ブラケット加工工程S2、一体化工程S3、拡径加工工程S4及びかしめ工程S5は、図10〜13で示す如きプレス加工装置を用いるものに限定されず、任意の加工装置や工具等を用いて行われるものであってもよい。さらに、ロータ1の突出部、及びブラケット2の開口部の形状や寸法は、当該開口部に突出部を嵌合し得るものであれば、任意のものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
中央孔を有する略円環状板材から成り、当該中央孔の開口縁において内側に向かって突出した複数の突出部が形成されたロータを得るためのロータ加工工程と、筒状部材から成り、突出部に対応した開口部が形成されたブラケットを得るためのブラケット加工工程と、ブラケットをロータ加工工程で得られたロータの中央孔に挿通させるとともに、ブラケットの開口部にロータの突出部を嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させる一体化工程とを有し、且つ、ブラケット加工工程で得られたブラケットにおける少なくとも開口部が形成された部位を内側に変形させて縮径部を得る縮径加工工程を具備するとともに、一体化工程は、当該縮径加工工程を経たブラケットをロータ加工工程で得られたロータの中央孔に挿通させた状態で、当該ブラケットの縮径部を外側に変形させて拡径させ、ブラケットの開口部にロータの突出部を嵌合させることで、当該ブラケットとロータとを一体化させるブレーキディスクの製造方法であれば、他の形態のものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ロータ
1b 突出部
2 ブラケット
2c 開口部
2f 縮径部
2aa 拡径部
図1
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