(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
銀含有組成物中の前記ポリマー(b)の量が、前記組成物の重量をベースにして5重量%〜50重量%であり、かつ銀含有組成物中の前記固体粒子の量が、前記組成物の重量をベースにして45重量%〜85重量%である、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0006】
下記は本発明の詳細な説明である。
本明細書で使用される下記の用語は、文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、指定された定義を有する。
【0008】
用語の「殺菌剤」、「殺生物剤」、「防腐剤」または「抗菌化合物」は、特定の場所で微生物の死滅化、増殖の抑制、または増殖の制御ができる化合物を意味し、殺菌剤には、殺細菌剤、殺真菌剤および殺藻類剤が含まれる。用語の「微生物」には、例えば、真菌(酵母およびカビなど)、細菌、および藻類が含まれる。用語の「場所」は、微生物による汚染にさらされるシステムもしくは製品、またはその表面を意味する。
【0009】
殺菌剤の作用を受ける微生物には、限定されないが、黒酵母、セレウス菌、土壌細菌、ケトミウム・グロボーサム、エンテロバクター・エロゲネス、大腸菌、グリオクラディウム・ウィレンス、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、リステリア・モノサイトゲネス、マイコバクテリウム・ツベルクロシス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プロテウス・ミラビリス、プロテウス・バルガリス、緑膿菌、出芽酵母、トリチフス菌、ネズミチフス菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、フェカリス菌、ミュータンス菌、レジオネラ・ニューモフィラ、腸炎ビブリオ菌、スタキボトリス属、アスペルギルス・ニガー、カンジダ・アルビカンスおよびペニシリウム・フニクロスム、が挙げられる。
【0010】
特別の定めのない限り、本明細書で考察される温度は、セ氏温度(℃)、であり、パーセンテージ(%)および百万分の一(ppm)への言及は、重量ベースである。
【0011】
本明細書で使われ、FW Billmeyer、JR.によりTextbook of Polymer Science、second edition、1971、中で定義される「ポリマー」は、より小さい化学的反復単位による反応生成物から構成される比較的大きい分子である。ポリマーは、直鎖、分岐、星形、ループ形、超分岐、架橋、またはこれらの組み合わせの構造を有してもよく、また、ポリマーは、単一型の反復単位を有しても(「ホモポリマー」)、または、2種以上の型の反復単位を有してもよい(「共重合体」)。共重合体は、ランダムに、順序正しく、ブロック単位で、他の配置で、またはこれらの組み合わせで配置された種々の型の反復単位を有してもよい。
【0012】
ポリマーの分子量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル浸透クロマトグラフィーまたはGPCとも呼ばれる)などの標準的方法により測定できる。ポリマーは、500以上の数平均分子量(Mn)を有する。ポリマーは、極端に高いMnであってもよい。一部のポリマーは、1,000,000を超えるMnである。代表的ポリマーは、1,000,000以下のMnである。一部のポリマーは、架橋しており、架橋ポリマーは、無限のMnを持つと見なされる。
【0013】
本明細書で使われる「ポリマーの重量」は、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0014】
相互に反応してポリマーの反復単位を形成できる分子は、本明細書では「モノマー」と判断される。
【0015】
本発明に有用な種類のモノマーの一例は、例えば、エチレン性不飽和のモノマー(すなわち、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有するモノマー)である。このようなモノマーには、例えば、構造:
【化1】
を有するビニルモノマーが挙げられる。式中、各R1、R2、R3、およびR4は、独立に、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基など)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換もしくは未置換有機基、またはいずれかのこれらの組み合わせである。
【0016】
いくつかの適するビニルモノマーには、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、およびこれらの混合物が含まれる。エチレン誘導体には、例えば、置換または未置換アルカン酸のエテニルエステル(例えば、ビニルアセタートおよびビニルネオデカノアートを含む)、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケンの未置換または置換バージョンの化合物、およびこれらの混合物が含まれる。本明細書で使われる「(メタ)アクリル酸の」は、アクリル酸の、またはメタクリル酸の、を意味し、「(メタ)アクリラート」は、アクリラートまたはメタクリラートを意味し、および「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、およびこれらの組み合わせなどの少なくとも1個の結合化学基を有することを意味する。一部の実施形態では、置換モノマーには、例えば、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、ヒドロキシル基を有する、他の官能基を有するモノマー、および官能基の組み合わせを有するモノマーが含まれる。
【0017】
本明細書では、特定のモノマーを単独で、または他のモノマーと一緒に重合して作られるポリマーを、そのモノマーを重合単位として含むと表現する。
【0018】
ポリマーに共有結合しているがポリマー鎖の主鎖の一部ではない場合、本明細書では、ポリマーの一部である化学基を、「ペンダント型」であると表現する。
【0019】
本明細書で使われる「溶媒」は、25℃で液体であり、1雰囲気圧力下で25℃を超える沸点を有し、本発明のポリマー(b)を溶解できる物質である。本明細書では、個々のポリマー鎖が溶媒と密接に接触している場合、ポリマーは溶媒中に溶解すると見なされる。個々に溶解したポリマー鎖は、直鎖であっても分岐していてもよい。典型的な溶液では、それぞれのポリマー鎖は、ランダムコイル配置またはそれに極めて近い配置になっている。ポリマー溶液は、23℃で少なくとも5日間静置時にも、沈澱する、または分離相を形成することはない。ポリマー溶液は、肉眼で見て透明なものもあり、また濁って見えるものもある。
【0020】
溶媒は、純粋な物質であっても、または相互に溶解する複数の物質を含んでもよい。例えば、溶媒は、2種以上の混和性液体を含んでもよい。25℃で固体の物質は、それが液体中に溶解するか否かにかかわらず、溶媒の一部とは見なされない。本明細書では、溶媒が溶媒の重量をベースにして50重量%以上の水を含む場合、溶媒は「水性」である。全ての他の溶媒は、本明細書では、非水性であると見なされる。
【0021】
本明細書では、比率が「X:1以上(または以下)」と表現される場合、比率はY:1の値を有し、ここで、YがXに等しいか、またはそれより上(またはそれより下)であることを意味する。例えば、本明細書で、特定の比率が「3:1以上」であると表される場合、その比率は、例えば、3:1または4:1または100:1であってよいが、その比率は、例えば、2:1または1:1であり得ない。別の例では、本明細書で、特定の比率が「8:1以下」で表される場合、その比率は、例えば、8:1または7:1または0.5:1であってもよいが、その比率は、例えば、9:1または10:1であり得ない。
【0022】
本明細書では、ヘテロ環は、環の少なくとも1個のメンバーが窒素原子、酸素原子、または硫黄原子である環式有機ラジカルである。本明細書では、ヘテロ環は、環の少なくとも1対のメンバーが存在し、その対の2個のメンバーが二重結合で相互に連結されている場合、「不飽和または芳香族」であると見なされる。環の1個または複数個のメンバーが環のメンバーではない原子に二重結合により連結される場合であっても、環の全てのメンバーが単結合により相互に連結される場合、本明細書では、ヘテロ環は、「不飽和または芳香族」とは見なされない。
【0023】
粒子の一群は、中位径を特徴としてもよい。粒子の塊の半分が中位径より小さい直径の粒子から構成されている。粒子は、どのような形であってもよい。粒子は、球、ロッド、ディスク、不規則形状、他の形状、またはいずれかの組み合わせもしくはこれらの混合物であってよい。粒子が球でない場合は、本明細書では、その直径として、その粒子の最長の弦の長さを採用する。弦は、粒子の塊の中心を通り、その端点のそれぞれが粒子表面に位置する直線の線分である。
【0024】
本明細書では、25℃で固体である物質は、「固体」である。
【0025】
本明細書で使われる用語の「単離する」は、固体物質が初期混合物としての液体物質から始まり、その後固体物質が液体物質から分離されるプロセスを意味する。固体と液体の初期混合物は、溶液、分散液、スラリー、もしくはいずれか他の混合形態、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0026】
組成物の「固体含量」は、次のようにして決定される。組成物は、100℃以上で、組成物の分解温度未満の温度に加熱される。組成物は、試料の重量がそれ以上顕著に変化しなくなるまで、揮発性物質が飛散できる条件下(例えば、対流または真空など)で加熱される。固体含量は、加熱前の初期組成物重量に対する加熱後の組成物の最終重量の比率をパーセンテージで表した値である。
【0027】
本発明の銀含有組成物は、ペンダント型不飽和または芳香族ヘテロ環を有する1種または複数種のポリマー(本明細書では、「ポリマー(b)」と呼ばれる)を含む。
【0028】
好ましくは、ポリマー(b)は、ビニルポリマーである。本明細書では、ビニルポリマーは、ビニルモノマーから炭素−炭素二重結合の間で重合反応を行わせてポリマー主鎖を形成することにより生成されるポリマーである。好ましくは、ビニルポリマーは、フリーラジカル重合により作られる。
【0029】
特定のタイプのモノマーは、ポリマー(b)の重合単位として有用である。これらのタイプのモノマーは、下記で定義されるように、本明細書では、第1のモノマー、第2のモノマー、第3のモノマー、第4のモノマーおよび第5のモノマーと呼ばれる。本明細書では、これらのタイプは、重複することはない。例えば、第1のモノマーの定義に適合するモノマーは、第2、第3、第4、または第5などのモノマーの定義には適合しない。
【0030】
ポリマー(b)は、1種または複数種の第1のモノマーの重合単位を有する。第1のモノマーは、1個または複数個のペンダント型不飽和または芳香族ヘテロ環を有するモノマーである。本明細書では、ヘテロ環は、ヘテロ環が重合反応に寄与しないような方法で、モノマーに共有結合する場合、モノマーのペンダント型基である。すなわち、ヘテロ環は、モノマーが重合反応に加わった後でポリマー鎖上のペンダント型基になる。
【0031】
好ましいヘテロ環は、5個以上のヘテロ環メンバーを有するものである。また、別の観点から好ましいヘテロ環は、9個以下のヘテロ環メンバー、より好ましくは、7個以下のメンバーを有するものである。それぞれの適切なヘテロ環は、1個または複数個の窒素、もしくは1個または複数個の酸素、もしくは1個または複数個の硫黄、またはこれらの組み合わせである1個または複数個のヘテロ環メンバーを有する。
【0032】
好ましいヘテロ環は、2個の二重結合を有する5員環である。このようなヘテロ環の中で好ましいものは、ヘテロ原子が、1個の硫黄原子、または、1個の窒素原子と1個の酸素原子、または、1個の窒素原子、または、2個の窒素原子、または、3個の窒素原子、または、4個の窒素原子、またはこれらの組み合わせから選択されるものである。イミダゾールが好ましい。
【0033】
好ましい第1のモノマーは、ビニルイミダゾールである。好ましくは、全ての第1のモノマーは、ペンダント型不飽和または芳香族ヘテロ環を有するモノマーである。好ましくは、全ての第1のモノマーは、ビニルイミダゾールである。
【0034】
好ましくは、ポリマー(b)中の第1のモノマーの量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第1のモノマーの重合単位の重量で、15%以上、より好ましくは25%以上、より好ましくは35%以上である。好ましくはポリマー(b)中の第1のモノマーの量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第1のモノマーの重合単位の重量で、75%以下、より好ましくは65%以下、より好ましくは55%以下である。
【0035】
好ましくは、ポリマー(b)は、1種または複数種の第2のモノマーの重合単位を含む。本明細書では、第2のモノマーは、カルボン酸基およびカルボキシラート陰イオンを含まない。好ましい第2のモノマーは、(メタ)アクリル酸の置換または未置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸の置換または未置換アミド、ビニルアセタート、スチレン、置換スチレン、およびこれらの混合物、から選択される。より好ましくは、第2のモノマーは、(メタ)アクリル酸の未置換アルキルエステルである。
【0036】
好ましくは、ポリマー(b)中の第2のモノマーの量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第2のモノマーの重合単位の重量で、10%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。好ましくは、ポリマー(b)中の第2のモノマーの量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第2のモノマーの重合単位の重量で、80%以下、より好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0037】
好ましくは、ポリマー(b)は、1種または複数種の第3のモノマーの重合単位を含む。本明細書では、第3のモノマーは、1種または複数種のカルボン酸基またはカルボキシラート陰イオンを有する。好ましい第3のモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0038】
好ましくは、ポリマー(b)中の第3のモノマーの量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第3のモノマーの重合単位の重量で、2%以上、より好ましくは5%以上、より好ましくは、10%以上である。好ましくは、ポリマー(b)中の第3のモノマーの量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第3のモノマーの重合単位の重量で、45%以下、より好ましくは35%以下、より好ましくは25%以下である。
【0039】
任意選択で、ポリマー(b)は、1種または複数種の第4のモノマーの重合単位を含む。本明細書では、第4のモノマーは、1個または複数個のアルキレンオキシド鎖を有する。本明細書では、アルキレンオキシド鎖は、−(−R−O−)
n−の構造の化学基であり、式中、Rは直鎖または分岐アルキル基であり、nは1以上である。好ましい第4のモノマーは、Rが2〜4の炭素原子を有するもの、より好ましくは、Rが−CH
2CH
2−のものである。好ましい第4のモノマーは、nが2〜20のものである。好ましい第4のモノマーは、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリラートおよびポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラートである。
【0040】
1種または複数種の第4のモノマーが存在する場合は、ポリマー(b)中の第4のモノマーの好ましい量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第3のモノマーの重合単位の重量で、5%以上、より好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。1種または複数種の第4のモノマーが存在する場合、ポリマー(b)中の第4のモノマーの好ましい量は、ポリマー(b)の重量をベースにして、第4のモノマーの重合単位の重量で、75%以下、より好ましくは65%以下、より好ましくは55%以下である。
【0041】
任意選択で、ポリマー(b)は、1種または複数種の第5のモノマーの重合単位を含む。本明細書では、第5のモノマーは、第1、第2、第3、または第4のモノマーではない任意のモノマーである。好ましくは、ポリマー(b)中の第5のモノマーの重合単位の量は、ゼロ、またはポリマー(b)の重量をベースにして、0.1重量%未満である。
【0042】
好ましくは、ポリマー(b)の数平均分子量は、500以上である。好ましくは、ポリマー(b)の数平均分子量は、500,000以下、より好ましくは200,000以下、より好ましくは50,000以下、より好ましくは20,000以下、より好ましくは5、000以下である。
【0043】
好ましくは、本発明の銀含有組成物中の銀は、銀イオンの形であり、これは、組成物中の銀原子の90%以上が銀イオンの形であることを意味する。好ましくは、本発明の銀含有組成物中の銀の量は、組成物の重量をベースにして、重量で、5%以下、より好ましくは4%以下である。好ましくは、本発明の銀含有組成物中の銀の量は、組成物の重量をベースにして、重量で、2ppm以上、より好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上である。さらにより好ましくは、本発明の銀含有組成物中の銀の量は、組成物の重量をベースにして、重量で、30ppm以上、より好ましくは100ppm以上、より好ましくは300ppm以上、より好ましくは500ppm以上である。
【0044】
好ましくは、本発明の組成物中の銀イオンの一部または全部は、それぞれ、ポリマー(b)に結合している1個または複数個のヘテロ原子を含む1種または複数種の配位錯体に関与している。このような配位錯体は、本明細書では、「銀/ポリマー(b)錯体」と呼ばれる。 好ましくは、配位錯体に関与しているヘテロ原子は、ポリマー(b)の一部であるペンダント型不飽和または芳香族ヘテロ環中に存在する。好ましくは、銀イオンのモル数に対するポリマー(b)に結合しているペンダント型ヘテロ環のモル数の比率は、12:1以下、より好ましくは10:1以下、より好ましくは8:1以下である。好ましくは、銀イオンのモル数に対するポリマー(b)に結合しているペンダント型ヘテロ環のモル数の比率は、0.5:1以上、より好ましくは1:1以上、より好ましくは1.01:1以上、より好ましくは3:1以上である。
【0045】
また、好ましくは、銀/ポリマー(b)錯体は、1種または複数種の陰イオンを含む。好ましいのは、硝酸塩、アセタート、およびこれらの混合物である。好ましいのは、硝酸塩である。
【0046】
銀/ポリマー(b)錯体は、どのような方法で作製されてもよい。適切な方法は、米国特許第7,390,774号および同7,846,856号で教示されている。
【0047】
本発明の組成物は、2mm以下の中位径を有する固体粒子(本明細書では、「固体粒子(c)」と呼ばれる)を含む。固体粒子は任意の固体物質から作製できる。好ましいのは、鉱物およびポリマーである。鉱物中で好ましいのは、シリコンの酸化物、金属酸化物、および遷移金属酸化物であり、より好ましいのは、シリカゲルである。ポリマー中で好ましいのは、熱可塑性ポリマー、より好ましいのは、ポリオレフィンである。
【0048】
好ましくは、固体粒子(c)の中位径は、1mm以下である。好ましくは、固体粒子(c)の中位径は、2マイクロメートル以上、より好ましくは5マイクロメートル以上、より好ましくは10マイクロメートル以上である。
【0049】
本発明の組成物は、どのような方法で作製されてもよい。好ましい方法は、液体組成物(本明細書では、「スラリー」と呼ばれる)の使用を含む。スラリーは、銀イオン、ポリマー(b)、および固体粒子を含む。好ましくは、スラリーの成分の量は、スラリーの乾燥プロセスの終わりに、乾燥残渣が本発明の銀含有組成物となるように選択される。
【0050】
スラリーは、連続液体媒体中に固体粒子(c)が分布している液体である。固体粒子(c)の分布は、懸濁、分散、異なる形態の分布、またはこれらの組み合わせであってよい。スラリーが機械的な攪拌を受けない場合に、固体粒子に沈澱する傾向があってもなくてもよい。
【0051】
連続液体媒体は、溶媒を含む。溶媒は、25℃で液体である。溶媒は、好ましくは、水を含む。水の量は、溶媒の重量をベースにして、重量で、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。水の量は、溶媒の重量をベースにして、重量で、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。
【0052】
また、溶媒は、好ましくは、1種または複数種のアルキルアルコールを含む。好ましいのは、アルキル基が2〜6個の炭素を有するアルキルアルコールである。より好ましいのは、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびこれらの混合物である。エタノールの量は、溶媒の重量をベースにして、重量で、好ましくは、30%以上、より好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。エタノールの量は、溶媒の重量をベースにして、重量で、好ましくは、80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0053】
また、溶媒中の水の量が、溶媒の重量をベースにして、重量で50%以上の実施形態(本明細書では、「高水含量(high water)」実施形態と呼ばれる)も意図されている。高水含量実施形態では、溶媒中の水の量は、溶媒の重量をベースにして、重量で、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0054】
スラリー中の溶媒の量は、好ましくは、スラリーの重量をベースにして、重量で、20%以上、より好ましくは30%以上である。スラリー中の溶媒の量は、好ましくは、スラリーの重量をベースにして、重量で、70%以下、より好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0055】
好ましくは、スラリー中のポリマー(b)は、溶媒に溶解している。好ましくは、一部の銀/ポリマー(b)錯体は、スラリー中に存在する。
【0056】
スラリーは、どのような方法で作製されてもよい。好ましくは、溶液は、溶媒中でポリマー(b)および銀イオンから形成され、その溶液は、固体粒子不含である。好ましくは、その後、固体粒子(c)が、溶液と混合されてスラリーを形成する。好ましくは、溶液中の銀イオンの一部または全部が、銀/ポリマー(b)錯体に関与する。好ましくは、溶液と固体粒子(c)の混合の結果、本明細書で記載に記載のスラリーが生成するように、溶液の成分、溶液の量、および固体粒子(c)の量が選択される。
【0057】
スラリーが使用される実施形態では、好ましくは、固体物質はスラリーから単離される。この単離は、どのような方法で行われてもよい。スラリー中の溶媒の合計重量をベースにして、重量で、95%以上の溶媒が除去された場合に、単離が完了したと見なされる。好ましくは、単離プロセスの終わりに、単離プロセスにより除去された溶媒の量は、スラリー中の溶媒の合計重量をベースにして、重量で、98%以上、より好ましくは99%以上である。好ましくは、溶媒が除去された後に残っている物質は、追加の物質を全く添加することなく、本発明の銀組成物を形成する。好ましくは、単離は、溶媒を蒸発させることにより行われる。
【0058】
好ましくは、本発明の銀組成物中のポリマー(b)の量は、組成物の重量をベースにして、重量で、5%以上、より好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。好ましくは、本発明の銀組成物中のポリマー(b)の量は、組成物の重量をベースにして、重量で、50%以下、より好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
【0059】
本発明の組成物中の固体粒子の量は、好ましくは、組成物の重量をベースにして、重量で、45%以上、より好ましくは55%以上、より好ましくは65%以上である。本発明の組成物中の固体粒子の量は、好ましくは、組成物の重量をベースにして、重量で、85%以下、より好ましくは80%以下である。
【0060】
本発明の組成物では、一部または全ての固体粒子(c)は、銀イオンおよびポリマー(b)を含むコーティングを有する。コートされる単一の固体粒子(c)へのコーティング形式は、(I)固体粒子(c)の全部または一部を覆うことができる固体粒子表面上への連続層のコーティング物質、(II)固体粒子(c)表面上への2種以上の連続していないコーティング物質層のパッチ、(III)固体粒子(c)表面上に存在する複数のコーティング物質固体粒子、の内の1種または2種以上の組み合わせであってよい。コーティングは、1個の粒子(c)に対しては1つのコーティング形式を有し、異なる粒子(c)にはもう一つのコーティング形式を有してもよい。好ましくは、一部または全部の粒子(c)が形式(III)のコーティングを有する。
【0061】
コーティングが粒子(c)表面上に位置する複数の固体粒子を形成する実施形態では、好ましくは、コーティング粒子の中位径は、固体粒子(c)の中位径より小さい。好ましくは、固体粒子(c)の中位径に対するコーティング粒子の中位径の比率は、0.1:1以下、より好ましくは0.03:1以下、より好ましくは0.01:1以下である。
【0062】
粒子(c)のコーティングの場合、銀イオンおよびポリマー(b)が両方とも粒子(c)の表面上に位置する。銀イオンおよびポリマー(b)が一緒に混合されていてもよく、または相互に分離されていてもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。好ましくは、一部の銀/ポリマー(b)錯体は、粒子(c)の表面上に位置する。
【0063】
本発明の組成物の固体含量は、好ましくは、90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
【0064】
本発明の銀組成物は、目的に応じて使用できる。好ましくは、本発明の銀組成物は、マトリックスポリマーと混合されて、プラスチック物品が形成される。銀組成物は、例えば、ペレットまたは粉末形態または溶融形態のマトリックスポリマーと、任意選択で他の成分を加えて混合でき、得られた固体混合物を溶融状態で混合してプラスチック物品へと形成できる。銀組成物は、例えば、溶融マトリックスポリマー(溶融マトリックスポリマーは、任意選択で、既に他の成分と混合されていてもよい)に添加して、得られた混合物からプラスチック物品を形成してもよい。
【0065】
マトリックスポリマーは、いずれのタイプの熱可塑性ポリマーから作製されてもよい。好ましいマトリックスポリマーは、次の部類から選択される1種または複数種のポリマーを含む(それぞれの部類は、ホモポリマーおよび共重合体を含む):ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアセタート)、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、およびこれらの混合物。より好ましいのは、ポリオレフィンであり、より好ましいのは、ポリエチレンおよびポリプロピレンであり、より好ましいのは、ポリエチレンである。
【0066】
好ましくは、銀組成物、マトリックスポリマー、および任意選択の他の成分の混合物が作製される場合、組成物の量は、得られる混合物中の銀イオンの濃度が、混合物の重量をベースにして、重量で、1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、より好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上となるように選択される。好ましくは、銀組成物、マトリックスポリマー、および任意選択の他の成分の混合物が作製される場合、組成物の量は、得られる混合物中の銀イオンの濃度が、混合物の重量をベースにして、重量で、2,000ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下となるように選択される。
【0067】
本発明の一部の特定の実施形態が、以下のように記載される。
【0068】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、作製され、その後、マトリックスポリマーと、および任意選択の他の成分と接触させられる。このような実施形態では、本発明の組成物、マトリックスポリマー、および任意選択の他の成分の混合物は、溶融状態で処理され、プラスチック物品へと形成される。
【0069】
一部の実施形態では、銀組成物、マトリックスポリマー、および任意選択の他の成分の混合物が作製されるが、このような混合物は、本明細書では、「銀修飾ポリマー混合物」と呼ばれる。一部の実施形態では、銀修飾ポリマー混合物は、以下のプロセスを含む多段階プロセスにより作製される。本発明の組成物は、組成物の重量をベースにして、重量で、1%〜5%の銀の量で作製される。次に、その組成物は、マトリックスポリマーとして適する第2のポリマー、および任意選択の他の成分と混合され、さらに、任意選択で、溶融状態で処理され、第2の組成物の重量をベースにして、重量で、0.5%〜2.5%の銀の量の第2の組成物が作製される。その後、第2の組成物は、同様にマトリックスポリマーとして適し、第1のポリマーと同じでも異なっていてもよい第3のポリマーおよび、任意選択の他の成分と混合され、さらに、任意選択で、溶融状態で処理され、第3の組成物が作製される。これは、銀修飾ポリマー混合物として適格であり、第3の組成物をベースにして、重量で、30〜300ppmの銀の量である。
【0071】
室温(「RT」)は、約23℃であった。
【0074】
ポリマー溶液PS1の調製
米国特許第7,846,856号に記載の方法を使って、ポリマー溶液PS1を作製した。溶媒は、溶媒の重量をベースにして、重量で、70%エタノールおよび30%水とした。ポリマー組成は、ポリマー固体の重量をベースにして、重量で、45%ビニルイミダゾール、40%n−ブチルアクリラート、および15%アクリル酸とした。ポリマー固体は、溶液の重量をベースにして、重量で22.5%であった。銀イオンの量は、溶液の重量をベースにして、重量で2.9%であった。また、溶液は、アンモニウム、硝酸塩、および水酸化物イオンを含んでいた。溶液の色は、淡黄色であった。
【0075】
濃縮物の調製
RTで1000rpmでの攪拌下(IKAスターラー)、72gのPEP1またはSGP1を100gのPS1中に少しずつ添加した。30分の混合後、得られた黄色粘性液体を取り出し、100℃の真空オーブン(DZF−6030A、Shanghai Yihen)中で72時間乾燥した。次に、乾燥混合物を乳鉢/乳棒を使って微粉末に粉砕した。PEP1で作製した乾燥混合物は、本明細書では、Conc−PEP1と呼び、SGP1で作製した乾燥混合物は、本明細書では、Conc−SGP1と呼ぶ。
【0076】
比較の目的で、超濃縮物も調製した。これらは約10重量%の銀イオン濃度の固体物質であった。これらの物質は、ポリマーおよび銀イオンでコートされた固体粒子を含んでいない。これらの超濃縮物は、比較例である。PS1を蒸発乾固することにより超濃縮物UC1を調製した。PS1に硝酸を添加してpHを6.91にした後、蒸発乾固することにより超濃縮物UC2を調製した。
【0077】
以下のように濃縮物の退色を調査した。
各試験試料に対し、2個の20mlのフラスコを用意し、それぞれに100mgの試料を入れた。両方のフラスコをオイル浴で加熱した。片方は窒素で覆い、他方は空気に暴露した。RTから約250℃まで加熱の間、退色をモニターした。UC1、UC2、Conc−PEP1、およびConc−SBP1の試料をこのようにして試験した。特定量の3種の比較用無機市販抗菌粉末(Comp1、Comp2、およびComp3)に対しても、Conc−PEP1およびConc−SGP1と同じ適用量の銀イオンを使って、空気下で類似の実験の実験を行った。
【0078】
マトリックスプラスチックとの調合を以下のように行った。
調合は、HAAKE PolyLab(商標)Mixer(Thermo)中で行った。最初に、49.5gのLDPEペレットを1分当たり60回転(rpm)下で5分間溶融し、次に、続けて、濃縮物または超濃縮物または比較用市販抗菌粉末を添加後、さらに5分間調合した。調合試料中の理論的銀イオン含量は、調合試料の重量をベースにして、重量で、50ppmであった。調合温度は、120℃とした。その後、調合試料を同じ温度で3分間ホットプレスにより圧縮成形して、3mmの厚さの最終シートを得た。3種の比較用試料(Comp1、Comp2、およびComp3)およびAgNO3とLDPEの調合も120℃で合計10分間行った。
【0079】
老化試験
プラスチック試料から40×40mmの矩形小片を切り出した後、老化試験オーブン(GDWシリーズ、Wuxi Suwei)中に入れ、60℃で8週間保持した。所定の時間で、試料を取り出し、RTに冷却した。全体の色の変化をエプソンスキャナーでスキャンした。a*、b*およびL*値を比色計(HunterLab ColorQuest(商標)XE比色計)により測定し、データを各試験片の少なくとも3点の平均とした。計算黄色度指数を使って、試料の抗老化能力を評価した。比較として、ベンチマーク試料も同じ方法で測定した。
【0080】
抗菌試験
次に、ATCC6538P法を使って、老化試験前後のプラスチック試料の抗菌特性を試験した。簡単に説明すると、プラスチックシートを40×40mmの正方形の小片に切断した後、種菌(黄色ブドウ球菌)を30×30mmの正方形の範囲上に添加した。24時間後、培養片のコロニー形成単位(cfu)を調べた。銀を含まないブランクのプラスチック片も同様に試験した。抗菌効力(log Kill)を、log10((24時間後のブランク試験片上のcfu)/(24時間後の処理試験片のcfu))と定義した。全データに対し、2個の並行処理試験片の平均を取った。比較のためにベンチマーク試料も同様に試験した。
【0081】
一部の実験では、試験片を拭き取った後に老化試験を行い、その後、抗菌試験に供した。拭き取り方法は、次の通りとした:試料を順次エタノールと水中に置き、それぞれ、1.5時間および30分間の超音波処理を行った。その後、試料を取り出し、表面をさらに15分間手で拭き取った。最後に、水で濯ぎ、続けて、乾燥した。
【0082】
実施例1:退色試験結果
Comp1、Comp2、およびComp3は、試験を通して白色のままであった。他の試料は、次の色(退色順に)を示した:LY(淡黄色、最小の退色);Y(黄色);Br(褐色);dBr(濃褐色);vdBr(極濃褐色);Blk(黒色)。
【0084】
表2は、窒素下の試験では、Conc試料は、UC試料と同程度に良好であるか、または、それより良好な結果であったことを示す。
【0086】
表3は、空気下では、Conc試料は、UC試料より良好であったことを示す。
【0087】
実施例2:プラスチックシート表面の抗菌活性対時間の試験結果
マトリックスプラスチックはLDPEとした。銀化合物の量は、各試料中の銀イオンの理論的濃度が、試料重量をベースにして、重量で50ppmとなるように選択した。貯蔵温度は60℃とした。3以上のLog Kill値は、微生物の死滅を効果的に遂行することを示す。
【0089】
表4は、貯蔵の間の抗菌活性維持の点で、本発明の試料が、比較試料より遥かに優れていることを示す。
【0090】
実施例3:拭き取り後のプラスチックシートの表面の抗菌活性試験結果
マトリックスプラスチックはLDPEとした。銀化合物の量は、各試料中の銀イオンの理論的濃度が、試料重量をベースにして、重量で50ppmとなるように選択した。3以上のLog Kill値は、微生物の死滅を効果的に遂行することを示す。貯蔵温度は60℃とした。
【0092】
本発明の試料は、比較試料より優れている。
【0093】
実施例4:マトリックスプラスチック中の抗菌化合物の分布
マトリックスプラスチック中のConc−PEP1およびConc−SGP1の分布を、米国特許第7,846,856号で調製され、報告された試料中の抗菌化合物の分布と比較した。上述のように、120℃の調合温度を使って、Conc−PEP1およびConc−SGP1がLDPE中に調合された場合、試料は、同様に調合されたLDPE単独のシートの外観と類似の白色で半透明であった。この試料は、銀濃縮物が試料全体にわたり均等に分布していることを示す。米国特許第7,846,856号で報告の試料は、銀/ポリマー錯体を乾燥し、本発明の定義の外側にある超濃縮物を得ることにより作製された。次に、米国特許第7,846,856号に記載のように、その超濃縮物を粉末状ポリプロピレン樹脂と混合し、その後、押出成形された。得られたプラスチック物品は、不透明で、抗菌化合物が均等に分布していないことを示した。
【0094】
実施例5:Conc−PEP1およびConc−SGP1の観察
Conc−PEP1およびConc−SGP1の試料を薄い炭素層でコートし、走査電子顕微鏡(Brucker Company)で観察した。Conc−PEP1粒子は、約500マイクロメートルの中位径を有することが観察された。Conc−PEP1上のコーティングは、固体LDPE粒子の表面上の離散粒子として存在するのが認められた。コーティング粒子は、1マイクロメートル未満の中位径を有することが認められた。代表的コーティング粒子をX線分光法により分析し、コーティング粒子中の銀の存在を確認した。Conc−SG1粒子は、約40マイクロメータの中位径であることが認められた。Conc−SGP1上のコーティングは、固体シリカゲル粒子表面上の離散粒子として存在することが認められた。コーティング粒子は、1マイクロメートル未満の中位径を有することが認められた。代表的コーティング粒子をX線分光法により分析し、コーティング粒子中の銀の存在を確認した。