(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特開2014−31462号公報には、石炭を乾留した後の乾留炭を冷却する際に、冷却水をシャワリングして約50℃から60℃まで冷却することが開示されている。
しかし、乾留炭に冷却水をシャワリングして水の凝縮温度以下まで冷却すると、凝縮水(ドレン水)が発生してしまい、乾留炭が凝縮水に曝されてしまう。これでは、乾留炭を所望の水分含有率に調整することが困難となってしまう。
乾留炭の水分含有率は、保存されている間に水和反応によって発熱して発火に到るおそれがあるので、保存環境に対して平衡となる水分含有率に予め調整されることが好ましい。
【0005】
乾留した後の乾留炭は300℃以上500℃以下とされており、熱分解してタール等の揮発分を発生するので、冷却装置で速やかに冷却することが望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、乾留炭を速やかに冷却するとともに所望の水分含有率に調整することができる乾留炭冷却装置および石炭改質プラントならびに乾留炭冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の乾留炭冷却装置および石炭改質プラントならびに乾留炭冷却方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様に係る乾留炭冷却装置は、石炭を乾留した後の300℃以上の乾留炭に対して水を散布する第1散水部と、該第1散水部によって水が散水された後の乾留炭に対して、内部を流れる第1冷却媒体によって100℃以上まで間接冷却を行う第1冷却管とを備えている。
【0008】
上記の乾留炭冷却装置は、乾留後の300℃以上とされた乾留炭に対して第1散水部から水を散布する。これにより、乾留炭は300℃を下回る温度まで速やかに冷却され、タール等の揮発分の発生を抑制する。そして、第1冷却管によって間接冷却を行い100℃以上(例えば約150℃)の温度まで乾留炭を冷却する。このように、水の散布によって即座に冷却した後に間接冷却によって水の凝縮温度以上まで冷却することとしたので、タール等の揮発分の発生を速やかに抑制するとともに乾留炭が凝縮水に曝されることを回避できる。これにより、所望の水分含有率の調整が可能となる。
【0009】
本発明の一態様にかかる乾留炭冷却装置では、前記第1冷却媒体が前記第1冷却管に導入される際の入口温度は、50℃以上100℃未満とされている。
【0010】
第1冷却管に導入する第1冷却媒体の温度が低い場合には、大きな熱応力が生じて第1冷却管に割れが生じるおそれがある。そこで、第1冷却媒体の入口温度を、常温よりも高い温度である50℃以上100℃未満(例えば約60℃)とすることにより、第1冷却管の割れを回避することができる。
【0011】
本発明の一態様にかかる乾留炭冷却装置では、前記第1冷却媒体は、ボイラ給水とされている。
【0012】
ボイラ給水は脱気されているため、高温に曝される冷却管の冷却媒体として用いても腐食を回避することができる。また、ボイラ給水は石炭乾留を行うプラントの場合にはプラント内で容易に入手できるので、冷却媒体として用いるのに都合が良い。
【0013】
本発明の一態様にかかる乾留炭冷却装置は、乾留炭を受け入れるとともに軸線回りに回転する第1回転容器を更に備え、前記第1散水部および前記第1冷却管は、前記第1回転容器内に設置されている。
【0014】
第1回転容器内に乾留炭を投入して処理する構成とし、いわゆるロータリクーラ方式を採用することとしたので、装置構成を簡略化でき、設備コストを抑えることができる。
【0015】
本発明の一態様にかかる乾留炭冷却装置は、前記第1冷却管によって冷却された乾留炭に対して所望の水分含有率となるように水を散布する第2散水部と、前記第1冷却管によって冷却された乾留炭に対して、内部を流れる第2冷却媒体によって100℃未満とされた所望温度となるように間接冷却を行う第2冷却管とを更に備えている。
【0016】
第2散水部から水を散布することによって、乾留炭を所望の水分含有率とする。しかし、乾留炭に対して水を散布すると水和熱によって乾留炭の温度が上昇して発火するおそれがある。そこで、第2冷却管によって間接冷却を行うことで、水和熱を除去するとともに100℃未満とされた所望温度(例えば50℃)となるように乾留炭を冷却する。このように、水和熱を除去しながら水を散布して水分含有率の調整を完了させることができる。また、第2冷却器にて水分含有率を所望値とすることができるので、後の工程で水分含有率の調整のために水を散布する必要がなく、水和熱によって発火するおそれを回避することができる。
【0017】
本発明の一態様にかかる乾留炭冷却装置は、乾留炭を受け入れるとともに軸線回りに回転する第2回転容器を更に備え、前記第2散水部および前記第2冷却管は、前記第2回転容器内に設置されている。
【0018】
第2回転容器内に乾留炭を投入して処理する構成とし、いわゆるロータリクーラ方式を採用することとしたので、装置構成を簡略化でき、設備コストを抑えることができる。
【0019】
本発明の一態様にかかる石炭改質プラントは、石炭を乾留する乾留装置と、該乾留装置によって乾留された乾留炭を冷却する上記の乾留炭冷却装置とを更に備えている。
【0020】
上記の乾留炭冷却装置を備えているので、所望値の水分含有率とされた改質炭を製造することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る乾留炭冷却方法は、石炭を乾留した後の300℃以上の乾留炭に対して水を散布する第1散水工程と、散水部によって水が散水された後の乾留炭に対して、冷却管の内部を流れる第1冷却媒体によって100℃以上まで間接冷却を行う第1冷却工程とを有する。
【0022】
本発明の一態様に係る乾留炭冷却方法は、乾留後の300℃以上とされた乾留炭に対して水を散布する。これにより、乾留炭は300℃を下回る温度まで即座に冷却され、タール等の発生を抑制する。そして、第1冷却工程によって間接冷却を行い100℃以上(例えば約150℃)の温度まで乾留炭を冷却する。このように、水の散布によって即座に冷却した後に間接冷却によって水の凝縮温度以上まで冷却することとしたので、タール等の揮発分の発生を速やかに抑制するとともに乾留炭が凝縮水に曝されることを回避でき、所望の水分含有率の調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
乾留炭を速やかに冷却するとともに所望の水分含有率に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る乾留炭冷却装置を備えた石炭改質プラントが示されている。石炭改質プラントは、石炭を加熱させて乾燥させる乾燥装置(dryer)1と、乾燥装置1にて乾燥された乾燥炭を加熱して乾留する乾留装置(pyrolyzer)3と、乾留装置3にて乾留された乾留炭を冷却する乾留炭冷却装置(quencher;以下、単に「冷却装置」という。)5と、冷却装置5にて冷却された乾留炭を不活性化させる不活性化装置(finisher)7と、不活性化装置7によって不活性化された改質炭を所定形状に成形する成形装置(briquetter)9とを備えている。
【0026】
乾燥装置1の上流側には、改質前の石炭(raw coal)10を受け入れる石炭ホッパ12が設けられている。改質前の石炭は、亜瀝青炭や褐炭等の低品位炭とされ、水分含有率は25wt%以上60wt%以下とされる。石炭ホッパ12から導かれた石炭は、粉砕機(crusher)14にて例えば約20mm以下まで粉砕される。
【0027】
粉砕機14にて粉砕された石炭は、乾燥装置1へと導かれる。乾燥装置1は、蒸気による間接加熱式とされており、中心軸回りに回転する円筒容器16と、円筒容器16内に挿入された複数の伝熱管18とを備えている。円筒容器16内には粉砕機14から導かれた石炭が供給されるようになっており、円筒容器16内に供給された石炭は、円筒容器16の回転に応じて攪拌されながら一端側(
図1において左側)から他端側へと導かれる。各伝熱管18内には、蒸気生成システム(steam system)20にて生成された150℃以上200℃以下(より具体的には180℃)の蒸気が供給され、各伝熱管18の外周に接触する石炭を間接的に加熱するようになっている。各伝熱管18内に供給された蒸気は、石炭を加熱する際に凝縮熱を与えた後に凝縮し、乾燥装置1から排出されて蒸気生成システム20へと返送される。
【0028】
円筒容器16の内部には、キャリアガス循環経路22を介してキャリアガスが供給されるようになっている。キャリアガスとしては、不活性ガスが用いられ、具体的には窒素ガスが用いられる。窒素ガスは、キャリアガス循環経路22に接続された窒素供給経路24から不足分が追加供給されるようになっている。キャリアガスは、円筒容器16内を通過する際に、石炭から脱離した脱離成分(水蒸気、微粉炭、水銀、水銀系物質等)を伴いつつ、円筒容器16に接続されたキャリアガス排出経路26を介して円筒容器16の外部へと排出される。
【0029】
キャリアガス排出経路26には、キャリアガスの流れ方向の上流側から順に、サイクロン(集塵機)28と、キャリアガス冷却器30と、スクラバ32とが設けられている。
【0030】
サイクロン28は、遠心力を利用してキャリアガスから固形物である微粉炭(例えば粒径100μm以下)を主として取り除く。サイクロン28にて取り除かれた微粉炭は、符号Aにて示されているように、バグフィルタ34の上流側へと導かれる。なお、サイクロン28にて分離された微粉炭を、乾燥装置1にて乾燥された乾燥炭に混合することとしても良い。
【0031】
キャリアガス冷却器30は、微粉炭が取り除かれたキャリアガスを冷却することによってキャリアガスとともに導かれた水蒸気を凝縮してドレン水として取り除く。キャリアガス冷却器30は、間接式熱交換器とされており、冷却媒体としては常温とされた工業用水が用いられる。なお、冷却媒体として、排水処理設備40にて分離された再生水を用いてもよい。キャリアガス冷却器30にて生成したドレン水は、スクラバ32下方の液相部へと導かれる。
【0032】
スクラバ32は、微粉炭及び水蒸気が除去されたキャリアガスから水銀および/または水銀系物質(以下、単に「水銀等」という。)を除去する。スクラバ32に用いる吸収液としては水が用いられ、具体的には排水処理設備40にて分離された再生水が用いられる。スクラバ32の上方から散布された水によってキャリアガス中の水銀等が吸着され、スクラバ32下方の液相部へと導かれる。また、スクラバ32では、サイクロン28にて除去しきれなかった微粉炭も除去される。
スクラバ32の上方には、キャリアガス循環経路22の上流端が接続されており、キャリアガス循環経路22の途中位置にはブロワ36が設けられている。ブロワ36によってスクラバ32にて処理された後のキャリアガスが乾燥装置1へと戻される。また、図示されていないが、スクラバ32にて処理された後のキャリアガスの一部は、燃焼炉42へと導かれるようになっている。
【0033】
スクラバ32の下方には、排水経路38を介して排水処理設備40が接続されている。排水処理設備40は、キレート剤を排水に投入して水銀等を凝集肥大化させた上で、図示しない沈降槽によって、微粉炭及び水銀等の固形分であるスラッジ39と、再生水とを分離するものである。再生水は、プラントの各所にて再利用される。
【0034】
乾燥装置1にて乾燥された石炭(乾燥炭)は、乾燥炭供給経路44を通り、重量を利用して乾留装置3へと導かれる。乾留装置3は、外熱式ロータリキルンとされており、回転内筒46と、回転内筒46の外周側を覆う外筒48とを備えている。回転内筒46内には、キャリアガスとしての窒素ガスが供給されるようになっている。
回転内筒46と外筒48との間の空間には、燃焼炉42にて生成された燃焼ガスが燃焼ガス導入経路50を介して導かれるようになっている。これにより、回転内筒46内が350℃以上450℃以下(例えば400℃)に維持される。
【0035】
燃焼炉42には、ブロワ52によって圧送される燃焼用空気を炉内に導く空気供給経路54と、燃料としての天然ガスを炉内に導く天然ガス供給経路55と、乾留装置3内で発生した乾留ガスをキャリアガスとともに回収して炉内に導く乾留ガス回収経路56とが接続されている。燃焼炉42内では、炉内に供給された天然ガス、乾留ガス及び空気によって火炎51が形成される。乾留ガスはタール等の揮発分を含んでおり所定の発熱量を有するので、燃焼炉42にて燃料として用いられる。天然ガス供給経路55から供給される天然ガスは、燃焼炉42に投入される燃料の発熱量調整のために用いられ、燃焼炉42にて生成された燃焼ガスの温度が所望値となるように流量が調整される。
【0036】
乾留ガス回収経路56の途中位置には、緊急時に使用する乾留ガス排出経路58が接続されている。乾留ガス排出経路58の下流側には、フレアスタック60が設置されており、このフレアスタック60によって乾留ガス中のタール等の可燃成分が焼却処理され、焼却処理後のガスは大気へと放出される。
【0037】
燃焼炉42には、炉内で生成された燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出経路62が接続されている。燃焼ガス排出経路62の途中位置には、乾留装置3に燃焼ガスを導く燃焼ガス導入経路50の上流端が接続されている。燃焼ガス導入経路50との接続位置よりも下流側の燃焼ガス排出経路62には、第1中圧ボイラ64が設けられている。
【0038】
乾留装置3の外筒48には、回転内筒46を加熱した後の燃焼ガスを排出する加熱後ガス排出経路66が接続されている。加熱後ガス排出経路66には、第2中圧ボイラ68が設けられている。加熱後ガス排出経路66は、下流側にて燃焼ガス排出経路62に接続されている。加熱後ガス排出経路66との接続位置よりも下流側の燃焼ガス排出経路62には、燃焼ガスを圧送するブロワ70が設けられている。
燃焼ガス排出経路62の下流側は、バグフィルタ34に接続されている。バグフィルタ34にて燃焼灰等が除去された燃焼排ガスは、大気(ATM)へと放出される。
【0039】
蒸気生成システム20は、第1中圧ボイラ64と第2中圧ボイラ68とを備えている。第2中圧ボイラ68では、供給されたボイラ給水(BFW)が、加熱後ガス排出経路66を流れる燃焼ガスによって加熱され、蒸気が生成される。第1中圧ボイラ64では、第2中圧ボイラ68にて生成された蒸気が導かれ、燃焼ガス排出経路62を流れる燃焼排ガスによって加熱され、さらに高圧とされた蒸気が生成される。第1中圧ボイラ64で生成された中圧蒸気と、第2中圧ボイラ68で生成された中圧蒸気は、それぞれ図示しない蒸気ドラムに貯留され、乾燥装置1の伝熱管18といったプラントの各所に供給される。
【0040】
乾留装置3で乾留された乾留炭は、乾留炭供給経路72を介して、重力を利用して冷却装置5へと導かれる。冷却装置5は、乾留装置3からの乾留炭を受け入れる第1冷却器74と、第1冷却器74によって冷却された乾留炭を受け入れる第2冷却器76とを備えている。
【0041】
第1冷却器74は、シェルアンドチューブ型熱交換器とされており、中心軸回りに回転する第1円筒容器(第1回転容器)78と、第1円筒容器78内に挿入された第1散水管(第1散水部)79と、第1円筒容器78内に挿入された複数の第1冷却管80とを備えている。第1散水管79は、回転する第1円筒容器78に対して静止した状態で設置されている。第1円筒容器78内には乾留装置3から導かれた300℃以上500℃以下(例えば約400℃)の乾留炭が供給されるようになっており、第1円筒容器78内に供給された乾留炭は、第1円筒容器78の回転に応じて攪拌されながら一端側(
図1において左側)から他端側へと導かれる。
第1散水管79には、常温とされた工業用水が導かれ、乾留炭に対して水を散布することによって水を直接接触させて冷却する。第1散水管79は、第1円筒容器78内を移動する乾留炭の上流側(
図1において左側)に設けられる。なお、第1散水管79に供給する水として、排水処理設備40にて分離された再生水を用いてもよい。
各第1冷却管80内には、50℃以上100℃未満(例えば約60℃)のボイラ給水が供給され、各第1冷却管80の外周に接触する乾留炭を間接的に冷却するようになっている。各第1冷却管80は、第1円筒容器78内を移動する乾留炭の下流側(
図1において右側)に設けられ、第1散水管79によって冷却された後の乾留炭を水の凝縮温度以上である約150℃まで冷却するようになっている。
【0042】
第2冷却器76は、第1冷却器74とほぼ同様の構成で、シェルアンドチューブ型熱交換器とされており、中心軸回りに回転する第2円筒容器(第2回転容器)81と、第2円筒容器81内に挿入された第2散水管(第2散水部)82と、第2円筒容器81内に挿入された複数の第2冷却管83とを備えている。第2散水管82は、回転する第2円筒容器81に対して静止した状態で設置されている。第2円筒容器81内には第1冷却器74にて約150℃まで冷却された乾留炭が供給されるようになっており、第2円筒容器81内に供給された乾留炭は、第2円筒容器81の回転に応じて攪拌されながら一端側(
図1において左側)から他端側へと導かれる。
第2散水管82には、常温とされた工業用水が導かれ、乾留炭に対して水を散布することによって乾留炭の水分含有率を所望値(例えば8wt%)になるように調整する。第2散水管82は、第2円筒容器81の軸線方向の略全体にわたって設けられる。なお、第2散水管82に供給する水として、排水処理設備40にて分離された再生水を用いてもよい。
各第2冷却管83内には、常温とされた工業用水が導かれ、各第2冷却管83の外周に接触する乾留炭を間接的に冷却するようになっている。各第2冷却管83は、乾留炭を約50℃まで冷却するようになっている。なお、各第2冷却管83に供給する水として、排水処理設備40にて分離された再生水を用いてもよい。
【0043】
冷却装置5にて冷却された乾留炭は、冷却後乾留炭供給経路84を介して、不活性化装置7へと導かれる。
不活性化装置7は、冷却装置5にて冷却された乾留炭を受け入れる第1不活性化器86と、第1不活性化器86からの乾留炭を受け入れる第2不活性化器88とを備えている。
【0044】
第1不活性化器86内には、約0.5から3.0%の酸素濃度とされた酸化用ガスが第1酸化用ガス供給経路90から導かれる。なお、第1酸化用ガス供給経路90には、図示しないが、酸素濃度を所望値に調整するために酸素(具体的には空気)が供給されるようになっている。
第1不活性化器86内に供給された酸化用ガスは、第1不活性化器86内で、乾留によって生じた活性点(ラジカル)を酸化することで乾留炭を不活性化処理する。第1不活性化器86から排出された酸化用ガスは、微粉炭を伴いつつ第1酸化用ガス出口管91を通り第1ブロワ92へと導かれる。第1ブロワ92によって圧送された酸化用ガスは再び第1酸化用ガス供給経路90へと導かれ、再循環される。第1酸化用ガス供給経路90へと導かれずに、酸化用ガス排出管93へと導かれた酸化用ガスは、サイクロン94へと導かれる。サイクロン94へ導かれた酸化用ガスは、サイクロン94にて微粉炭等の固形分が分離された後に、バグフィルタ34へと導かれて大気(ATM)へと放出される。サイクロン94にて分離された微粉炭等の固形分は、混練機100へ送られる。
【0045】
乾留炭は、第1不活性化器86の上部から投入され、下降している間に酸化用ガスと接触しながら不活性化される。第1不活性化器86の下方に滞留した乾留炭は、下方から取り出されて第2不活性化器88の上部へと導かれる。
【0046】
第2不活性化器88内には、約8.0から12.0%の酸素濃度とされた酸化用ガスが第2酸化用ガス供給経路95から導かれる。なお、第2酸化用ガス供給経路95には、図示しないが、酸素濃度を所望値に調整するために酸素(具体的には空気)が供給されるようになっている。
第2不活性化器88内に供給された酸化用ガスは、第2不活性化器88内で、第1不活性化器86にて不活性化した乾留炭を更に不活性化処理する。第2不活性化器88から排出された酸化用ガスは、微粉炭を伴いつつ第2酸化用ガス出口管96を通り第2ブロワ97へと導かれる。第2ブロワ97によって圧送された酸化用ガスは再び第2酸化用ガス供給経路95へと導かれ、再循環される。第2酸化用ガス供給経路95へと導かれずに、酸化用ガス排出管93へと導かれた酸化用ガスは、サイクロン94へと導かれて微粉炭等の固形分が分離された後に、バグフィルタ34へと導かれて大気へと放出される。
【0047】
不活性化装置7にて不活性化された改質炭は、粒径が約1mmとされており、改質炭供給経路98を通り、混練機(kneader)100へと導かれる。改質炭供給経路98には、サイクロン94にて分離された微粉炭が微粉炭回収経路99を介して導かれるようになっている。
【0048】
混練機100には、バインダ供給部102から導かれるバインダと、微粉炭を含む改質炭と、水とが供給され、これらが混練される。バインダとしては、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、スターチ(starch)等が用いられる。混練機100にて混練された改質炭は、成形装置9へと導かれる。
【0049】
成形装置9は、改質炭の製品形状に対応した形状の凹所が複数形成された雌型と、凹所内に供給された改質炭を押圧して圧縮する雄型とを備えている。成形装置9にて成形された改質炭は、製品としての改質炭104となる。改質炭104は、数cm程度の大きさとされ、水分含有率が6wt%以上9wt%以下とされる。なお、改質炭104の水分含有率は、保存環境に対して平衡となった際の乾燥重量基準としたものであり、保存環境の相対湿度に大きく依存するが、温度にはそれほど依存しない。例えば、PRB(Powder River Basin)炭では、相対湿度90%の場合には、水分含有率は約8wt%となる。
【0050】
次に、本実施形態の特徴について
図2を用いて説明する。
図2には、
図1に示した冷却装置5の構成が具体的に示されている。
図1に示した構成と同一の構成は同一符号が示してある。
同図に示されているように、第1円筒容器78及び第2円筒容器81は、それぞれの回転軸線が水平方向に対して他端側(図において右側)が下方となるように傾斜している。このように傾斜させることにより、各円筒容器78,81の一端側(図において左側)に投入された乾留炭は、攪拌されながら重力の作用によって他端側へと送られることになる。
【0051】
第1冷却器74では、第1散水管79から常温とされた工業用水が乾留炭に対して散布される。このように水が乾留炭に対して直接散布されるので、300℃以上500℃以下(例えば約400℃)で投入された乾留炭は速やかに300℃未満まで冷却される。これにより、300℃以上とされた乾留炭からタール等の揮発分が発生することを速やかに抑制する。そして、第1冷却管80によって、間接冷却を行うことで乾留炭をさらに冷却し、水の凝縮温度以上である100℃以上(例えば150℃)まで冷却する。このように、第1散水管79によって水を乾留炭に対して直接接触させても、下流側で間接冷却を行い水の凝縮温度以上に維持するので、水が凝縮してドレン水が発生することがない。
なお、第1円筒容器78内で発生した水蒸気は、図示しない導入部から導かれたキャリアガスによって、第1円筒容器78外へと放出される。これにより、第1円筒容器78から排出される乾留炭の水分含有率は約0%となる。
【0052】
第1冷却管80に供給する冷却媒体としては、入口温度が50℃以上100℃未満(例えば60℃)とされたボイラ水(BFW)を用いている。第1冷却管80を通過した後のボイラ水の温度は、例えば入口温度が約60℃とされた場合、約80℃とされる。
【0053】
第1冷却器74で冷却された乾留炭は、第1シュータ106から重力を利用して下方のフィーダ108へと導かれる。100℃以上300℃未満(例えば150℃)とされた乾留炭は、フィーダ108によって、第2円筒容器81内へと導かれる。
【0054】
第2冷却器76では、第2散水管82から常温とされた工業用水が乾留炭に対して散布される。第2散水管82から投入される水量は、水分含有率が約0%とされた乾留炭に対して所望の水分含有率となるように調整される。水分含有率は、乾留炭が保存される保存環境に対して平衡となった際の値が所望値とされる。
第2冷却管83では、100℃未満とされた所望温度(例えば50℃)となるように乾留炭に対して間接冷却を行う。第2冷却管83の冷却媒体としては、常温とされた工業用水が用いられる。第2冷却管83は、乾留炭の温度を下げるとともに、第2散水管82から供給された水と乾留炭が水和反応を起こす際に発生する水和熱をも除去する。
なお、第2円筒容器81内で発生した水蒸気は、図示しない導入部から導かれたキャリアガスによって、第2円筒容器81外へと放出される。
このように、第2冷却器76内によって、乾留炭は約50℃まで冷却され、第2シュータ110から冷却後乾留炭供給経路84へと導かれ、次工程の不活性化装置7(
図1参照)へと導かれる。
【0055】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
乾留後の300℃以上とされた乾留炭に対して第1散水管79から水を散布して、300℃を下回る温度まで乾留炭を速やかに冷却することとしたので、タール等の揮発分の発生を抑制することができる。そして、第1冷却管80によって間接冷却を行い100℃以上(例えば約150℃)の温度まで乾留炭を冷却することとした。このように、水の散布によって即座に冷却した後に間接冷却によって水の凝縮温度以上まで冷却することとしたので、タール等の揮発分の発生を速やかに抑制するとともに乾留炭が凝縮水に曝されることを回避できる。これにより、所望の水分含有率の調整が可能となる。
【0056】
第1冷却管80に導入する冷却媒体の温度が低い場合には、大きな熱応力が生じて第1冷却管80に割れが生じるおそれがある。そこで、冷却媒体であるボイラ給水の入口温度を、常温よりも高い温度である50℃以上100℃未満(例えば約60℃)とすることにより、第1冷却管80の割れを回避することができる。
【0057】
第1冷却管80に用いる冷却媒体としてボイラ給水を用いることとした。ボイラ給水は脱気されているため、高温に曝される第1冷却管80の冷却媒体として用いても腐食を回避することができる。また、ボイラ給水は石炭乾留を行うプラントの場合にはプラント内で容易に入手できるので、冷却媒体として用いるのに都合が良い。
【0058】
第1冷却器74は、第1円筒容器78内に乾留炭を投入して処理する構成とし、いわゆるロータリクーラ方式を採用することとしたので、装置構成を簡略化でき、設備コストを抑えることができる。同様に、第2冷却器76についても、第2円筒容器81内に乾留炭を投入して処理する構成とし、いわゆるロータリクーラ方式を採用することとしたので、装置構成を簡略化でき、設備コストを抑えることができる。
【0059】
第2散水管82から水を散布することによって乾留炭を所望の水分含有率とするとともに、第2冷却管83によって間接冷却を行うことで、水和熱を除去して100℃未満とされた所望温度(例えば50℃)となるように乾留炭を冷却することとした。このように、第2冷却器76にて、水和熱を除去しながら水を散布して水分含有率の調整を完了させることができる。また、第2冷却器76にて水分含有率を所望値とすることができるので、後の工程で水分含有率の調整のために水を散布する必要がなく、水和熱によって発火するおそれを回避することができる。