(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404459
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】撮像用対物レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
G02B13/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-513186(P2017-513186)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公表番号】特表2017-526979(P2017-526979A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】CN2014086190
(87)【国際公開番号】WO2016037323
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】515016891
【氏名又は名称】ハンズ レーザー テクノロジー インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 家英
(72)【発明者】
【氏名】周 朝明
(72)【発明者】
【氏名】孫 博
(72)【発明者】
【氏名】高 云峰
【審査官】
岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−019166(JP,A)
【文献】
特開2013−130820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用対物レンズであって、入射光の伝播方向に沿って同軸に配列される第一レンズ、第二レンズ、第三レンズ、第四レンズ、第五レンズ、第六レンズおよび第七レンズから構成され、前記第一レンズはメニスカス状レンズであり、前記第二レンズはメニスカス状レンズであり、前記第三レンズはメニスカス状レンズであり、前記第四レンズは両凹型レンズであり、前記第五レンズは両凸型レンズであり、前記第六レンズは両凸型レンズであり、前記第七レンズはメニスカス状レンズであり、
前記第一レンズは第一曲面と第二曲面を含み、前記第二レンズは第三曲面と第四曲面を含み、前記第三レンズは第五曲面と第六曲面を含み、前記第四レンズは第七曲面と第八曲面を含み、前記第五レンズは第九曲面と第十曲面を含み、前記第六レンズは第十一曲面と第十二曲面を含み、前記第七レンズは第十三曲面と第十四曲面を含み、前記第一曲面ないし前記第十四曲面は入射光の伝播方向に順に配列され、
前記第一曲面ないし前記第十四曲面の曲率半径は、順に、200mm、15mm、16mm、10mm、17mm、70mm、−190mm、30mm、22mm、−26mm、60mm、−15mm、−10mm、−60mmであり、
前記第一レンズないし前記第七レンズの中心の厚さは、順に、4mm、2mm、5mm、2mm、5mm、5mm、2mmであることを特徴とする撮像用対物レンズ。
【請求項2】
前記第一レンズないし前記第七レンズにおいて、各レンズの屈折率とアッベ数の比例値は、順に、1.62/60、1.62/60、1.64/35、1.75/30、1.62/60、1.62/60、1.75/30であることを特徴とする請求項1に記載の撮像用対物レンズ。
【請求項3】
前記第二曲面と前記第三曲面の間の距離は30mmであり、前記第四曲面と前記第五曲面の間の距離は2mmであり、前記第六曲面と前記第七曲面の間の距離は6mmであり、前記第八曲面と前記第九曲面の間の距離は2mmであり、前記第十曲面と前記第十一曲面の間の距離は1mmであり、前記第十二曲面と前記第十三曲面の間の距離は1.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の撮像用対物レンズ。
【請求項4】
前記曲率半径、前記中心の厚さ、前記屈折率とアッベ数の比例値および前記距離の公差はいずれも5%程度であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の撮像用対物レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学技術に関し、特に撮像用対物レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚眼を真似た光学撮像用対物レンズを魚眼撮像用対物レンズという。これは口径比が大きい撮像用対物レンズである。理論的には、このような撮像用対物レンズの視野角は180°であり、撮像用対物レンズの前にあるすべての被写体を撮像用対物レンズの視野内に入れることができる。
【0003】
撮像用対物レンズの前の半球内のすべての被写体が撮像用対物レンズの視野内に入って結像面上に結像すると仮定する場合、対物レンズの前の被写体空間は半球形の空間であり、結像面は円形の平面になると推論することができる。このとき、幾何的光学の公式であるη=ftgαを採用することができない。なぜなら、tgαにおいてαが90°になるとき、tgα→∞になることによって、η→∞になるからである。このような状況は実際には存在しえない。撮像用対物レンズの光学理論において、実際の光学システムの変形値は100%であり、η≒fである。このため、光学システムの焦点距離fにより結像面の画像の直径は2fになり、撮像用対物レンズの体積は大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、大きな口径比を有し、かつ体積が小さい撮像用対物レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の撮像用対物レンズは、入射光の伝播方向に沿って同軸に配列される第一レンズ、第二レンズ、第三レンズ、第四レンズ、第五レンズ、第六レンズおよび第七レンズ
から構成される。第一レンズはメニスカス状レンズであり、第二レンズはメニスカス状レンズであり、第三レンズはメニスカス状レンズであり、第四レンズは両凹型レンズであり、第五レンズは両凸型レンズであり、第六レンズは両凸型レンズであり、第七レンズはメニスカス状レンズである。第一レンズは第一曲面と第二曲面を含み、第二レンズは第三曲面と第四曲面を含み、第三レンズは第五曲面と第六曲面を含み、第四レンズは第七曲面と第八曲面を含み、第五レンズは第九曲面と第十曲面を含み、第六レンズは第十一曲面と第十二曲面を含み、第七レンズは第十三曲面と第十四曲面を含み、第一曲面ないし第十四曲面は入射光の伝播方向に順に配列される。第一曲面ないし第十四曲面の曲率半径は、順に、200mm、15mm、16mm、10mm、17mm、70mm、−190mm、30mm、22mm、−26mm、
60mm、−15mm、−10mm、−60mmである。第一レンズないし第七レンズの中心の厚さは、順に、4mm、2mm、5mm、2mm、5mm、5mm、2mmである。
【0006】
本発明の一実施例の第一レンズないし第七レンズにおいて、各レンズの屈折率とアッベ数の比例値は、順に、1.62/60、1.62/60、1.64/35、1.75/30、1.62/60、1.62/60、1.75/30である。
【0007】
本発明の一実施例において、第二曲面と第三曲面の間の距離は30mmであり、第四曲面と第五曲面の間の距離は2mmであり、第六曲面と第七曲面の間の距離は6mmであり、第八曲面と第九曲面の間の距離は2mmであり、第十曲面と第十一曲面の間の距離は1mmであり、第十二曲面と第十三曲面の間の距離は1.5mmである。
【0008】
本発明の一実施例において、曲率半径、中心の厚さ、屈折率とアッベ数の比例値および距離の公差はいずれも±5%である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撮像用対物レンズは、七個のレンズで構成され、大きな口径比を有し、かつ体積が小さい。また、撮像用対物レンズを製造するための光学材料の種類を有効に低減することができる。
【0010】
図面に示された本発明の好適な実施例の技術的事項によって本発明を具体的に説明することにより、本発明の目的、特徴および発明の効果をよく理解することができる。図面において、同様の符号は同様の部分を示す。下記図面は、実際の製品のサイズ比によって描いたものではなく、本発明の趣旨をよく表すことができるように描かれている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例の撮像用対物レンズの構造を示す図である。
【
図2】
図1の撮像用対物レンズの各部品の間の距離を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例の撮像用対物レンズの細い光束の収差を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例の撮像用対物レンズのM.T.F伝達関数を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例の撮像用対物レンズの幾何的収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的、特徴および発明の効果をより詳細に理解してもらうため、以下、図面により本発明の具体的な実施例をより詳細に説明する。下記実施例に示される具体的な技術的事項により、本発明を充分に理解してもらうことができる。明細書には本発明の好適な実施例が示されているが、本発明はそれらと異なる他の実施形態によって実施することもできる。すなわち、本技術分野の技術者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内で色々な設計の変更などをすることができ、本発明は下記実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0013】
図1は本発明の一実施例の撮像用対物レンズの構造を示す図である。説明を簡単にするため、該図面には本発明に係る部分のみが示されている。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施例の撮像用対物レンズは、入射光の伝播方向に沿って同軸に配列される第一レンズL1、第二レンズL2、第三レンズL3、第四レンズL4、第五レンズL5、第六レンズL6および第七レンズL7を含む。
【0015】
当該撮像用対物レンズにおいて、光の伝播方向は図面の左側から右側に向かう。レンズの曲率半径の正負は球面と光軸の交差点によって決められ、球面の球心が当該交差点の左側に位置するとき、曲率半径は負数になり、逆に、球面が当該交差点の右側に位置するとき、曲率半径は正数になる。以下同様である。
【0016】
図1と
図2に示すように、第一レンズL1は、メニスカス状レンズであり、第一曲面S1と第二曲面S2を含む。第一曲面S1は物体側へ突出しており、曲率半径は200mmであり、第二曲面S2も物体側へ突出しており、曲率半径は15mmである。第一レンズL1の中心の厚さd1(すなわち第一レンズL1の光軸上の厚さ)は4mmである。第一レンズL1の屈折率Nd1とアッベ数Vd1の比例値は1.62/60である。第一レンズL1の外径Φは60mmである。上述した第一レンズL1の各パラメーターは希望値であり、いずれも5%程度の公差を許容する。すなわち、各パラメーターは希望値の±5%の範囲内で変化することができる。
【0017】
第二レンズL2は、メニスカス状レンズであり、第三曲面S3と第四曲面S4を含む。第三曲面S3は物体側へ突出しており、曲率半径は16mmであり、第四曲面S4も物体側へ突出しており、曲率半径は10mmである。第二レンズL2の中心の厚さd3は2mmである。第二レンズL2の屈折率Nd2とアッベ数Vd2の比例値は1.62/60である。第二レンズL2の外径Φは16mmである。上述した第二レンズL2の各パラメーターの公差の範囲は5%である。
【0018】
第三レンズL3は、メニスカス状レンズであり、第五曲面S5と第六曲面S6を含む。第五曲面S5は物体側へ突出しており、曲率半径は17mmであり、第六曲面S6も物体側へ突出しており、曲率半径は70mmである。第三レンズL3の中心の厚さd5は5mmである。第三レンズL3の屈折率Nd3とアッベ数Vd3の比例値は1.64/35である。第三レンズL3の外径Φは14mmである。上述した第三レンズL3の各パラメーターの公差の範囲は5%である。
【0019】
第四レンズL4は、両凹型レンズであり、第七曲面S7と第八曲面S8を含む。第七曲面S7は撮像側へ突出しており、曲率半径は−190mmであり、第八曲面S8は第七曲面S7側へ突出しており、第八曲面S8の曲率半径は30mmである。第四レンズL4の屈折率Nd4とアッベ数Vd4の比は1.75/30である。第四レンズL4の中心の厚さd7は2mmである。第四レンズL4の外径Φは9mmである。上述した第四レンズL4の各パラメーターの公差の範囲は5%である。
【0020】
第五レンズL5は、両凸型レンズであり、第九曲面S9と第十曲面S10を含む。第九曲面S9は物体側へ突出しており、曲率半径は22mmであり、第十曲面S10は第九曲面S9から離れる方向へ突出しており、第十曲面S10の曲率半径は−26mmである。第五レンズL5の屈折率Nd5とアッベ数Vd5の比例値は1.62/60である。第五レンズL5の中心の厚さd9は5mmである。第五レンズL5の外径Φは12mmである。上述した第五レンズL5の各パラメーターの公差の範囲は5%である。
【0021】
第六レンズL6は、両凸型レンズであり、第十一曲面S11と第十二曲面S12を含む。第十一曲面S11は
物体側へ突出しており、曲率半径は
60mmであり、第十二曲面S12は第十一曲面S11から離れる方向へ突出しており、第十二曲面S12の曲率半径は−15mmである。第六レンズL6の屈折率Nd6とアッベ数Vd6の比例値は1.62/60である。第六レンズL6の中心の厚さd11は5mmである。第六レンズL6の外径Φは13mmである。上述した第六レンズL6の各パラメーターの公差の範囲は5%である。
【0022】
第七レンズL7は、メニスカス状レンズであり、第十三曲面S13と第十四曲面S14を含む。第十三曲面S13は撮像側へ突出しており、曲率半径は−10mmであり、第十四曲面S14も撮像側へ突出しており、曲率半径は−60mmである。第七レンズL7の屈折率Nd7とアッベ数Vd7の比例値は1.75/30である。第七レンズL7の中心の厚さd13は2mmである。第七レンズL7の外径Φは14mmである。上述した第七レンズL7の各パラメーターの公差の範囲は5%である。
【0023】
第一曲面S1ないし第十四曲面S14は入射光の伝播方向に順に配列される。
【0024】
本発明の一実施例において、第一レンズL1の出射面(第二曲面S2)と第二レンズL2の入射面(第三曲面S3)の間の光軸上の距離d2は30mmであり、該距離d2の公差の範囲は5%である。第二レンズL2の出射面(第四曲面S4)と第三レンズL3の入射面(第五曲面S5)の間の光軸上の距離d4は2mmであり、該距離d4の公差の範囲は5%である。第三レンズL3の出射面(第六曲面S6)と第四レンズL4の入射面(第七曲面S7)の間の光軸上の距離d6は6mmであり、該距離d6の公差の範囲は5%である。第四レンズL4の出射面(第八曲面S8)と第五レンズL5の入射面(第九曲面S9)の間の光軸上の距離d8は2mmであり、該距離d8の公差の範囲は5%である。第五レンズL5の出射面(第十曲面S10)と第六レンズL6の入射面(第十一曲面S11)の間の光軸上の距離d10は1mmであり、該距離d10の公差の範囲は5%である。第六レンズL6の出射面(第十二曲面S12)と第七レンズL7の入射面(第十三曲面S13)の間の光軸上の距離d12は1.5mmであり、該距離d12の公差の範囲は5%である。
【0025】
図3〜
図5はそれぞれ上述した撮像用対物レンズの細い光束の収差、変調伝達関数の曲線および幾何的収差を示している。
【0026】
該撮像用対物レンズは下記のパラメーターを有している。
f=14mm、2η=30、
D/f=1:3.2、
2ω=180°、
λ=656nm〜589nm〜436nm、
L=22。
【0027】
図3Aと
図3Bに示すように、上述した撮像用対物レンズの変形は理論値と完全に一致している。視野角α=90°であるとき、Dist=100%になり、非点収差曲線も理想的な状態になる。
【0028】
図4に示すように、撮像用対物レンズのMTFが最も悪いとき、すなわち解像度が20ラインペア/mmになるとき、MTF≒0.5になる。ここで注意すべきなのは、α=90°であるとき、撮像用対物レンズの辺縁の入射瞳は撮像用対物レンズの中心の入射瞳より遥かに小さい、ということである。これは辺縁のMTFが中心のMTFより小さいからである。このような状況は理論上存在する状況である。
【0029】
図5に示すように、全視野における錯乱円はいずれも約0.01mmになり、いずれも理想的な状態になっている。
【0030】
上述した撮像用対物レンズは、七個のレンズで構成され、大きな口径比を有し、かつ体積が小さい。
【0031】
以上、上述した複数の実施例により本発明の好適な実施例を詳述してきたが、本発明の構成は前記実施例のみに限定されるものでない。本技術分野の当業者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内で設計の変更等を行うことができ、このような設計の変更等があっても本発明に含まれることは勿論である。本発明の保護範囲は後述する特許請求の範囲が定めたことを基準にする。