特許第6404491号(P6404491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6404491試料上のカバー層の印刷を制御する印刷制御デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404491
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】試料上のカバー層の印刷を制御する印刷制御デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20181001BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G01N1/28 N
   G01N1/28 J
   G06F3/12 303
   G06F3/12 354
   G06F3/12 378
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-553250(P2017-553250)
(86)(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公表番号】特表2018-516359(P2018-516359A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】EP2016057178
(87)【国際公開番号】WO2016169745
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2017年10月11日
(31)【優先権主張番号】15164171.9
(32)【優先日】2015年4月20日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ピーリク アンケ
(72)【発明者】
【氏名】ウィムベルフェル フリードル レインホルト
(72)【発明者】
【氏名】クロート ダニーレ エリザ ウィレミーネ
(72)【発明者】
【氏名】ズゥオ フェイ
(72)【発明者】
【氏名】フルッテルス ルード
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/184005(WO,A1)
【文献】 特開2001−125006(JP,A)
【文献】 特表2007−526463(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/053955(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/34
G02B 21/34
G06F 3/12
C12M 1/00;1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する印刷制御デバイスであって、
撮像ユニットと、
印刷制御ユニットとを有し、
前記撮像ユニットが、前記組織又は細胞試料の画像データを提供し、
前記撮像ユニットは更に、前記画像データから、組織又は細胞試料の組織多孔度及び/又は毛細管力の分布を画像パラメータとして決定し、
前記印刷制御ユニットは、前記画像パラメータに基づき前記組織又は細胞試料上の前記カバー層を印刷するため、印刷パラメータの値を変更するものであり、前記印刷パラメータが、印刷液滴のピッチ、印刷掃引の順序、印刷パルスの高さ及び印刷パルスの形状の少なくとも1つを含む、印刷制御デバイス。
【請求項2】
前記印刷制御ユニットが、前記組織又は細胞試料上のカバー層をインクジェット印刷するための前記印刷パラメータを制御する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記印刷制御ユニットが更に、前記画像パラメータとは無関係に前記組織又は細胞試料上の初期カバー層を最初に印刷するための前記印刷パラメータを制御する、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記画像パラメータが、前記組織又は細胞試料上の印刷インキの広がり特性に関連する、請求項1乃至3の一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記印刷制御ユニットが、前記初期カバー層及び/又は記カバー層の印刷後の硬化を制御する、請求項3又は請求項3に従属する請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記撮像ユニットが、前記組織又は細胞試料の画像データを提供し、前記組織又は細胞試料は、病理診断における使用のために染色された又は染色されていないスライドである、請求項1乃至5の一項に記載のデバイス。
【請求項7】
検査される組織又は細胞試料上にカバー層を印刷するシステムであって、
請求項1乃至6の一項に記載の印刷制御デバイスと、
印刷モジュールとを有し、
前記印刷制御デバイスが、前記組織又は細胞試料上の前記カバー層の印刷を制御し、
前記印刷モジュールは、前記カバー層を前記組織又は細胞試料上に印刷する、システム。
【請求項8】
前記印刷モジュールが、インク印刷モジュールである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する方法において、
組織又は細胞試料の画像データから、前記組織又は細胞試料の組織多孔度及び/又は毛細管力の分布を画像パラメータとして決定するステップと、
前記画像パラメータに基づき前記組織又は細胞試料上のカバー層を印刷するために印刷パラメータの値を変更するステップであって、前記印刷パラメータが、印刷液滴のピッチ、印刷掃引の順序、印刷パルスの高さ及び印刷パルスの形状の少なくとも1つを含む、ステップとを有する、方法。
【請求項10】
少なくとも前記組織又は細胞試料の関心領域の外側の前記カバー層を印刷するための前記印刷パラメータを制御するステップを更に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カバー層を印刷するための印刷パラメータを制御して、生体分子が抽出される試料の少なくとも関心領域を確保するステップを更に有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記組織又は細胞試料上の初期カバー層を最初に印刷するための初期印刷パラメータを制御するステップを更に有する、請求項9乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記カバー層の印刷後に前記組織又は細胞試料の関心領域から前記組織又は細胞試料に含まれる生体分子を除去するステップを更に有する、請求項9乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
コンピュータに、
組織又は細胞試料の画像データから、前記組織又は細胞試料の組織多孔度及び/又は毛細管力の分布を画像パラメータとして決定するステップと、
前記画像パラメータに基づき前記組織又は細胞試料上のカバー層を印刷するために印刷パラメータの値を変更するステップであって、前記印刷パラメータが、印刷液滴のピッチ、印刷掃引の順序、印刷パルスの高さ及び印刷パルスの形状の少なくとも1つを含む、ステップとを実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー層、特に検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する印刷制御デバイス、検査される組織又は細胞試料上にカバー層を印刷するシステム、検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する方法、斯かるデバイス又はシステムが斯かる方法を実行するよう制御するコンピュータプログラム、及び斯かるコンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2014/184005A1号は、生物学的試料における関心領域「サンプルROI」から物質を分離する方法及び試料分離デバイスを開示する。この発明の実施形態は、サンプルROIに開口部を持つ構造化されたカバーシートの適用を有する。次いで、試料物質は、カバーシートの開口を通してサンプルROIから選択的に除去されることができる。カバーシートは、例えば、片面に接着剤を備えるテープとすることができる。カバーシートの開口部は、試料の顕微鏡画像における関心領域の選択後に自動的に切り取られてもよい。代替的に、構造化されたカバーシートは、印刷又はプロッティングにより製造されることができる。更に、試料物質は好ましくは、溶解により除去され、更に分子診断に供されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
斯かるカバーシート又は層の印刷は、依然として改善され得る。
【0004】
従って、検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する改良された特に印刷品質の点で改良された印刷制御デバイス、システム及び方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、独立請求項の主題により解決され、更なる実施形態が、従属請求項に組み込まれる。以下に説明される本発明の態様は、検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する印刷制御デバイス、カバー層を印刷するシステム、組織又は細胞試料上のカバー層の印刷制御方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ可読媒体にも適用される点に留意されたい。
【0006】
本発明によれば、検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する印刷制御デバイスが提示される。印刷制御デバイスは、撮像ユニットと印刷制御ユニットとを有する。撮像ユニットは、試料の画像データを提供し、画像データから局所画像パラメータを決定するよう構成される。局所画像パラメータは、試料の局所組織多孔性及び/又は局所的な毛管力に関連する。局所的な組織多孔度及び毛細管力の決定は、図2から図4において詳細に説明される。印刷制御ユニットは、局所画像パラメータに基づき試料上のカバー層を印刷するための印刷パラメータを制御するよう構成される。
【0007】
言い換えると、画像分析を用いて、局所組織多孔度及び/又は毛管現象が確立され、これを入力として用いて、印刷プロセスが最適化され、好ましくは関心領域(ROI)の外側の完全に閉じた稠密なカバー層が作成される。印刷プロセスは、主に、印刷された液滴の有効な局所ピッチ及びそれらを適用するシーケンスを介して制御されることができる。
【0008】
言い換えると、本発明は、試料抽出のために組織、塗抹又は細胞試料上のROIの外側にカバー層を印刷するデバイス及び方法に関する。それは、例えば、癌患者の層別化のための配列決定及びPCRのような腫瘍診断における分子試験(MDX)を実行するため、又は試薬若しくはインクが多孔質で不均一な形態を備える基材上に堆積される一般にすべての用途に対して使用されることができる。
【0009】
組織又は細胞試料は、デジタル及び/又は分子病理における使用のために、スライド上の身体組織のスライス又は細胞の層であり、染色された又は染色されていないものであり得る。典型的には、試料が提供されることができるスライド、キャリア又は基板の材料は、ガラス、透明プラスチック、及び/又はガラスとプラスチックの複合体を有し、オプションで生物学的試料との所望の相互作用のための表面層を備える。
【0010】
可能な染色アッセイは、形態学のためのH&E(ヘマトキシリン-エオシン)、IHC(免疫組織化学)、IF(免疫蛍光)、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)、PLA(近接ライゲーションアッセイ)、PPA(パドロックプローブアッセイ)、ローリングサークル増幅、RCA、分枝DNA信号増幅、及びこれらの技術の組み合わせ、又は特定の生物学的情報を得るための他のアッセイを有する。染色は特に、特定の細胞型若しくは組織型、及び/又は細胞の特定の特性、機能若しくは異常を示す分子を特定するのに役立ち得る。
【0011】
インクジェット印刷技術、任意の種類の(マイクロ)接触印刷などが使用されることができる。印刷パターン及びシーケンスの形態の印刷パラメータが、最良の空間解像度及びコントラストを実現するため局所画像パラメータに基づき決定されることができる。組織パラメータは、デジタル病理スキャナで得られたH&E画像として画像データから決定されることができる。
【0012】
試料の画像データは、顕微鏡画像であってもよい。即ち、それは、肉眼では見えない細部を明らかにする。追加的又は代替的に、それはデジタル画像であってもよく、従って多用途のデジタル画像処理手順の適用が可能にされる。更に、画像は、走査により、即ち試料のより小さな部分のサブ画像の連続的な生成により生成されてもよい。更に、生成された顕微鏡画像は、明視野若しくは蛍光画像、又は異なる画像の組み合わせであり得る。画像データから、組織又は細胞物質の多孔性及び毛管現象の分布が局所画像パラメータとして計算されることができる。局所画像パラメータは、印刷された液滴の局所解像度又はピッチ、及びこれらの液滴を印刷するシーケンスを決定するために使用されてもよい。このようにして、より良好な印刷品質、特に良好な印刷精度及び再現性が得られることができ、設計されたROIが、印刷されたカバー又はバリア層又はコーティングに高精度かつ忠実に転写されることができる。結果として、画像解析を用いた最適化されたプリント戦略が実現されることができ、これは、例えば、MDXに対する試料選択に使用されることができる。これにより、組織又は細胞物質の選択も、精度及び再現性の観点から改善される。
【0013】
言い換えると、組織又は細胞物質は不均質であり得るので、多孔性及び毛管力、及びこれにより周囲の組織又は細胞物質へのインクの浸入の程度は、組織多孔度及び毛細管力により変化し得る。その結果、局所的に異なる印刷設定を使用することにより、試料にわたる最適かつ均一なカバー層の厚さが実現されることができる。印刷されたカバー層は、ROI外で完全に閉じられ、ROI内において完全に存在しないとすることができる。
【0014】
言い換えると、本発明は、例えば分子診断に関し試料選択及び/又は抽出のため、組織又は細胞試料にROIを戦略的に印刷するデバイスに関する。これにより、デジタル病理学及び分子診断の容易な統合が達成される。一例では、印刷制御ユニットは、印刷のための印刷パラメータを制御し、特に、少なくとも試料の関心領域に関連付けられるカバー層をインクジェット印刷するよう構成される。ROIは、任意の形状とサイズにすることができる。複数の別個の領域が関心領域を有することができる。一例では、印刷制御ユニットは、生体分子が抽出される、又は別の処理が想定される試料の少なくとも関心領域を確保するよう、カバー層を印刷する、特にインクジェット印刷するよう印刷パラメータを制御する。関心領域を確保することにより、生体分子が抽出される組織又は細胞物質の関連領域が選択又は示されることができる。組織又は細胞物質の非関連領域は、カバー層により覆われることができ、その結果、生体分子の抽出又は他の処理が可能である。次いで、更なる下流分析法を用いて生体分子が分析されることができる。生体分子は、核酸、タンパク質などであり得る。
【0015】
ROIの選択は、適切な画像処理ルーチンにより、ユーザの手動入力により、又はその両方の混合により自動的に行われてもよい。従って、このデバイスは、画像解析モジュール、例えばデジタル画像の分析のための関連ソフトウェアを備えたデジタルマイクロプロセッサを有することができる。追加的又は代替的に、このデバイスは、ROIの選択を参照してユーザがデータを入力することができる入力手段を含むユーザインタフェースを有することができる。典型的には、ユーザインタフェースはまた、出力手段、例えば、試料の画像が表示されることができるディスプレイ又はモニターを有する。これは、オプションで、現在規定されるROIの表現を備え、オプションで、印刷パラメータのための入力として使用される局所画像パラメータの表現を備え、オプションで、計算された局所印刷パラメータの表現を備える。出力手段は、調節可能なズーミング係数を備える試料画像の表現示を可能にすることができる。画像解析装置は、適切な画像処理ソフトウェアを備えるデジタルデータ処理ユニットであってもよく、これにより局所画像パラメータが自動的に決定されることができる。
【0016】
一例では、印刷パラメータは、印刷液滴の局所ピッチ、印刷掃引のシーケンス、及び印刷パルスの形状又は高さを含むグループの少なくとも1つである。印刷液滴の局所的なピッチは、Y方向と呼ばれる順方向印刷方向において使用される解像度としてのYピッチを有し、このYピッチは、印刷ヘッドの発射周波数を速度で除算した大きさで制限され自由に選択されることができる。印刷液滴の局所ピッチは、Y方向に垂直なX方向において使用される解像度であり、プリントヘッドのノズルピッチの倍数であるXピッチを更に有する。両方のピッチについて、ピッチが小さいほど、結果として生じる層の平均厚さがより大きくなると想定される。
【0017】
別の印刷パラメータは、印刷パターンがいくつかの掃引にわたって分散されるときの印刷掃引のシーケンスである。こうして、Xピッチは、Xピッチよりも小さいオフセットを選択することにより調整されることができる。同時に、必要な解像度を実現するため、印刷パターンが局所的に変更されることができる。液体の広がりは動的なプロセスであるため、逐次の広がりは、液体の流れ方向及び最終的な液体の分布を制御するのを助けることができる。印刷液滴の局所ピッチ及び印刷掃引のシーケンスの決定が、図5から図8に詳細に説明される。別の印刷パラメータは、印刷パルスの形状又は高さである。通常、印刷パルスはブロックパルスで構成され、ある時間期間の間にノズルに印加される電圧を意味する。パルスは、液滴体積に影響を及ぼす正パルス又は負パルスのいずれかであり得る。液滴体積に影響を及ぼし得る他の因子は、パルス幅(パルスの持続時間)又はパルスの立ち上がり及び立ち下がりの急峻度である。更に、ダブルパルスが、プリントヘッドに印加されることができる。
【0018】
一例では、撮像ユニットは、試料上のインクの広がりに関連する局所画像パラメータを導出するため、前又は第1の印刷ステップの後に試料の画像データを提供するよう構成される。次いで、印刷制御ユニットは、局所画像パラメータとは無関係に試料上の初期カバー層を最初に印刷するための初期印刷パラメータを制御するよう構成される。一例では、局所画像パラメータは、試料上の印刷インキの局所的な広がり特性に関連する。ここで、画像データから局所画像パラメータを決定することなく、又は印刷前に画像を解析することなく、インク層又はインクの特定のパターンが、第1に又は最初により大きな領域に堆積され、そこでは、ROIを溢れさせるリスクはない。次に、試料の画像データが提供されるか、又は画像が作成され、局所的なインクの広がりが分析される。局所画像パラメータとしての局所インクの広がりに基づき、試料上のカバー層を印刷するための印刷パラメータ又は第2の印刷ビットマップが、作成され、第1又は最初の印刷パターンが微調整されることができる。次に、2回印刷された試料の画像データから局所画像パラメータが決定されることができ、局所画像パラメータは、試料の局所組織多孔度及び/又は局所毛細管力に関連し、この局所画像パラメータに基づき、試料上のカバー層の第3の印刷のための印刷パラメータが決定されることができる。
【0019】
一例では、印刷制御ユニットは、少なくとも部分的に印刷した後、初期カバー層及び/又はカバー層を硬化させるための硬化パラメータを制御するよう更に構成される。これは、例えばUV光による硬化が、印刷工程間の間欠的硬化として、及び/又は単一又は最終印刷後の最終硬化としてなされることができることを意味する。硬化した(一部の)カバー層は、液体に寄与せず、従って、例えば、連続印刷工程におけるインクの流れを制御するのに役立つ。局所拡散は、累積拡散よりも予測が容易である。一例として、ROIの定義がこの正面の1次元の広がりにより制御される第1のステップにおいて、ROIの周りの閉じた正面が印刷されることができる。硬化後、ROI外の領域は堤防により閉じ込められ、従って、ROIへと広がる危険なしに、より厚いインク層で充填されることができる。
【0020】
本発明によれば、検査される組織又は細胞試料上にカバー層を印刷するシステムも提示される。このシステムは、上述した印刷制御デバイスと、印刷モジュールとを有する。印刷制御デバイスは、試料上のカバー層の印刷を制御するよう構成される。印刷モジュールは、試料上にカバー層を印刷するよう構成される。
【0021】
印刷モジュールは、デジタル病理画像管理システム(IMS)と一体化されるユニットとして、又は一体化されたカメラを備えたスタンドアロンユニットとして機能することができる。両方の場合において、(デジタル病理(DP)スキャナからの)高解像度画像又は(プリンタからの)スナップショット画像のいずれかが利用可能である。画像がDPスキャナから来る場合、印刷するため、システム上の画像とこの画像との最初の位置合わせが行われる必要がある。
【0022】
システムは、視覚化モジュールを更に有することができる。画像解析の結果を視覚化する様々な方法が使用されることができる。例えば、組織多孔性マップが作成される、又は実質的に逸脱する特性を備えるセクションだけがマーキングされることができる。
【0023】
例示的に、印刷最適化に使用される局所画像パラメータは、ROI選択の間のフィードバックにも使用され得る。言い換えると、最初にROI選択のフィードバックを提供するのに、組織特性の知識が用いられることができる。病理学者により示されたROI又は他の画像分析ソフトウェアツールにより決定されたROIは、印刷を容易にするため事前に修正されることができ、新しいROIの特性が表示されることができる。
【0024】
本発明によれば、検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する方法も提示される。それは、必ずしもこの順序ではなく、以下のステップを有する。
【0025】
試料の画像データを提供するステップと、
上記画像データから局所画像パラメータを決定するステップと、
上記局所画像パラメータに基づき上記試料上の上記カバー層を印刷するための印刷パラメータを制御するステップとである。
【0026】
局所画像パラメータは、試料の局所組織多孔性及び/又は局所的な毛管力に関連する。
【0027】
一例では、この方法は、試料上に初期カバー層を最初に印刷するための初期印刷パラメータを制御するステップを更に有する。この初期印刷は、ステップa)の前に行われることができる。
【0028】
一例では、この方法は、初期カバー層及び/又はカバー層を硬化させるための硬化パラメータを制御するステップを更に有する。例えば、UV光への曝露又は加熱工程によるこの硬化は、最初の印刷後及び/又はステップc)の後に行われることができる。
【0029】
一例では、この方法は、カバー層の印刷後に試料の関心領域を除去するステップを更に有する。例示的には、このステップは、カバー層により示されているか、及び/又はカバー層により覆われていない試料の関心領域を除去することである。典型的には、この工程は、カバー層の印刷後に関心領域から分子を除去することである。除去は、ステップc)の後に行われることができる。
【0030】
言い換えると、病理学者は、試料選択プロセス中に組織スライドにおける関心領域内の細胞又は組織を選択することができる。例えば、その後の分子分析を可能にするため、このROIからのみ核酸が抽出される必要がある。詳細には、病理学者は、グラフィカルユーザインターフェース上でROIを選択し、分子試験に使用される組織スライド上にこのROIをマッピングし、ROI以外の全てを、例えばインクジェット印刷を介して堆積されるカバー層でカバーし、例えばUV光に暴露し、スライド全体を抽出媒体に暴露することによりカバー層を硬化させて、組織上の固体層を得る。これは、カバー層により覆われていない組織からのみ核酸が放出されることをもたらす。
【0031】
本発明によれば、コンピュータプログラムも提示され、コンピュータプログラムは、上記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、独立請求項に規定されたデバイス及び/又はシステムに、独立請求項に規定される方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する。
【0032】
独立項による、カバー層の印刷を制御する印刷制御デバイス、カバー層を印刷するシステム、組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する方法、斯かるデバイスを制御するためのコンピュータプログラム、及び斯かるコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読媒体は、特に、従属請求項に規定されるように、同様の及び/又は同一の好ましい実施形態を有する点を理解されたい。本発明の好ましい実施形態は、個別の独立項と従属項との任意の組合せとすることもできる点を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】検査される組織又は細胞試料上にカバー層を印刷するシステムの実施形態の一例の概略表示を示す図である。
図2】a)画像としての画像データ、b)個別の画像の白黒バージョン、及びc)個別の画像の概略表示の概略的かつ例示的な画像データを示す図である。
図3】a)画像としての画像データ、b)個別の画像の白黒バージョン、及びc)個別の画像の概略表示の概略的かつ例示的な画像データを示す図である。
図4】毛管特性をキャプチャするための勾配情報の使用を概略的かつ例示的に示す図である。
図5】印刷ビットマップの解像度の概略表示を示す図である。
図6】画像解析の結果に基づき印刷パターンを調整する方法を説明する図である。
図7】画像解析の結果に基づき印刷パターンを調整する方法を説明する図である。
図8】ROIを囲む領域が最適化される中間的な画像分析を概略的かつ例示的に示す図である。
図9】X線撮像方法の一例の基本的なステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のこれら及び他の側面は、本書に記載される実施形態から明らかとなり、及び実施形態を参照して説明されることになる。
【0035】
本発明の例示的な実施形態が、以下の図面を参照して以下に説明される。
【0036】
実際、組織は多孔性物質である。組織選択の目的のため、例えば、MDXでは、FFPE(ホルマリン固定、パラフィン包埋)組織切片がガラススライド上に提供される。印刷前に、パラフィンは、例えばキシレン及びエタノール/水の混合物にいくつかの段階で浸漬することにより抽出される。組織処理の結果として、液体及び脂肪は実質的に組織から除去され、開放した多孔質構造が残される。処理された組織の局所的な多孔度及び平均密度は、元の組成に依存する。印刷中、液体インクが組織上に広がる。カバー層又はバリア層を作成するため、最小層厚さが必要とされる。しかしながら、組織は多数の毛細血管から構成されているので、毛細管力がインクの広がりをもたらす。組織上に過剰量のインクが印刷された場合、この広がりは顕著であり、制御されにくい(例えば、毛細管の方向により決定される)。これは、ROI内に存在する細胞が、インクで覆われることを意味する。従って、組織を完全に覆うことと、ROIへの液体の拡散を最小限にすることとの間のバランスが存在する。印刷されたROIの必要な空間分解能及び予測可能性のため、印刷処理での広がりを制御し、それを考慮する必要がある。
【0037】
図1は、検査される組織又は細胞試料上にカバー層を印刷するシステム1の実施形態を概略的かつ例示的に示す。システム1は、印刷制御デバイス10と印刷モジュール20とを有する。印刷モジュール20は、カバー層を試料上に印刷する。印刷制御デバイス10は、試料上のカバー層の印刷を制御する。印刷制御デバイス10は、撮像ユニット11と、印刷制御ユニット12とを有する。撮像ユニット11は、試料の画像データを提供し、画像データから局所画像パラメータを決定する。局所画像パラメータは、試料の局所組織多孔性及び/又は局所的な毛管力に関連する。印刷制御ユニット12は、局所画像パラメータに基づき、試料上のカバー層を印刷するための印刷パラメータを制御する。印刷パラメータは、印刷液滴の局所ピッチ、印刷掃引のシーケンス、及び印刷パルスの形状を含むグループの少なくとも1つである。
【0038】
印刷制御ユニット12は、画像パラメータとは無関係に試料上の初期カバー層を最初に印刷するための初期印刷パラメータを更に制御することができる。次に、局所画像パラメータは、試料上の印刷インキの局所的な広がり特性に関連し得る。
【0039】
印刷制御ユニット12は更に、印刷後に初期カバー層及び/又はカバー層を硬化させるための硬化パラメータを制御することができる。これは、硬化が、印刷工程間の間欠的な硬化として、及び/又は単一の若しくは最終印刷後の最終硬化として行われることができることを意味する。
【0040】
以下では、画像データから局所画像パラメータを決定する例が説明され、特に組織画像から組織形態を導出する例が説明される。例えば。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色画像は、色デコンボルーションを用いて染色摂取に関して分析されることができる。閾値を使用すると、閾値を上回る強度を備えるすべての領域が空と指定される。次に、空の領域は、ソフトウェアアルゴリズムにより仮想的に接続される。平均組織被覆率は、平均多孔度を確立するため、異なる長さスケールで計算されることができる。局所的な最小次元のような、空の領域の特徴が計算される。組織切片の高さを知り、インクの平均接触角を使用することは、様々な長さのスケールで全方向の毛細管力を計算することを可能にする。こうして、毛管力のヒートマップ(ベクトル)が確立され、多孔率マップと組み合わされる。後者は、どのくらいの量のインクが組織構造の間に入るのかを決定する。これは、組織の上の特定の層の厚さを実現するのに必要な総体積を計算するために必要である。毛管力ベクトルマップは、局所拡散を計算できる数値モデルの入力である。
【0041】
2つの例示的な画像が図2及び図3に示され、それぞれ、a)提供された画像データ、b)各画像の白黒バージョン、及びc)各画像の概略図を示す。図2及び図3は、組織セグメントからの多孔率測定値を示し、そこでは、H&E画像が左側に示され、白黒仮想画像が右側に示される。ここで、白画素が空白領域を表し、黒画素が組織を表す。これにより、図2及び図3は、閾値処理を使用して所与の局所領域から空の空間を自動的に見つけるために、画像解析をどのように使用するかを示す。この局所領域の空ピクセルのパーセンテージは、多孔率に相関する1つのパラメータとして使用されることができる。局所密度などの空の領域の構造を考慮に入れることができる他の尺度も使用されることができる。より大きな領域に関して、総合マップを生成するため、局所多孔率測定値が計算されることができる。図4は、毛管特性をキャプチャするための勾配情報の使用を示す。画像は、図2に示される例示的な画像から得られる。組織セグメントからの毛細管力に関連付けられることができる1つの画像特徴は、勾配(エッジ)構造及び配向である。例えば、所与の領域から毛管構造を特徴付けるため、勾配の大きさ(左)及び配向又は方向(右)が画像から抽出されることができる。所与の領域の平均勾配の大きさ又はヒストグラムなどの更なる統計は、印刷挙動に影響を与える毛管力の量と相関されることができる。
【0042】
別の手法は、毛細管現象を計算するため、白い空間の極小寸法を使用する。毛細管力は、最小寸法の逆数でスケール化される。毛管力の方向は、最小寸法の方向に垂直である。使用されるインク及び基板の特定の毛細管力は、例えばリソグラフィを用いて調製されることができる明確な構造を用いて較正されることができる。
【0043】
較正構造から導出された画像特徴を組み合わせることにより、毛管現象及び多孔率から印刷挙動を正確に予測するため、モデルが較正されることができる。次いで、このモデルは、組織試料の訓練により実現され、オプションで最適化されることができる。次いで、較正されたモデルが、H&E画像から得られた計算された組織パラメータを考慮に入れて、ROIを印刷パターンに変換するために使用される。
【0044】
以下において、局所画像パラメータに基づき、試料上にカバー層を印刷するための印刷パラメータ又は印刷パターンを決定する例が説明される。印刷パターンは例えば、X方向及びY方向において特定のピッチを持つ2Dビットマップである。図5は、印刷ビットマップ23の解像度の概略図を示す。ノズル22(円で示される)を備えるプリントヘッド21が左側に示され、潜在的な印刷位置24を備える印刷ビットマップ23が右側に示される。
【0045】
一方向(X方向)において、解像度は、プリントヘッド21のハードウェアにより決定され、これは、X方向で使用される解像度(X-ピッチ)がノズルピッチの倍数であることを意味する。N番目のノズル22毎に選択的にターンオフすることにより、N倍のピッチが生成されることができる。毎回X/Nずつオフセットを増加させながら、全てのノズル22を使用し、N-1回繰り返すことにより、より小さいピッチ(1/N*ノズルピッチ)が作成されることができる。順方向印刷方向(Y方向)では、Yステージの解像度及び/又は印刷ヘッド21の発射周波数を速度で除算してピッチが制限され自由に選択されることができる。ピッチが小さいほど、結果として生じる層の平均厚さは大きくなる。
【0046】
印刷プロトコルは、本質的に、(i)単一の掃引における印刷された液滴の局所ピッチと、(ii)掃引のシーケンスとの2つの態様で制御される。各掃引は、自身のビットマップを持つことができる。
【0047】
画像解析に基づき、即ち、局所的な画像パラメータに基づき、最適な印刷パターンに関するモデルが得られることができる。このモデルでは、種々のパラメータが含められることができる。
【0048】
平均多孔率(P)。
【0049】
多孔率は、最適な層の厚さL*を計算するために使用されることができる。例えば、最小の層厚さLminが、印刷されることができ、より高い多孔率を備える領域については、より厚い層が適用されることができる。多孔度と適用される層の厚さとの間の関係は、例えば、L*=Lmin+alpha*Pとすることができる。
【0050】
毛細管の直径(R)及び配向。
【0051】
毛管圧は1/Rでスケール化される。更に、毛細管の平均的配向も同様に考慮されるべきである。毛細管力及び広がりの量によるヒートマップを作成するため、これらの要因が組み合わせられることができる。
【0052】
図6及び図7は、上述したように、局所的な画像パラメータ又は画像解析の結果に基づき印刷パラメータ又は印刷パターンがどのように調整されることができるかを説明する。図6は、より密度の低い領域(明るい灰色)及びより密度の高い領域(暗い灰色)を備え、種々の層厚が堆積される実施形態を示す。図7は、ROIの周りの広がり(ドットサイズ)が組織特性に対して調整される実施形態を示す。
【0053】
多孔率。
【0054】
図6には、種々の平均多孔率を備える領域の例が示される。白い領域は組織である。明るい灰色では、大きな多孔率の領域が与えられ、これは完全な被覆のためにより多くのインクを必要とし、濃い灰色では、高密度の組織領域が与えられ、これはより少ないインクしか必要としない。これを実現するため、Yピッチが局所的に調節される。
【0055】
毛管特性。
【0056】
2つのROIが図7に示される。ROI1の周りの組織における毛細管圧力はより低く、従って液滴はROIの境界により近く堆積されることができる。ROI2の周りに大きく広がることが予想され、従って、広がりを補うため、ROIが大きく設計される。この場合、毛管の均質な配向を前提として、平均毛細管サイズのみが考慮される。
【0057】
以下では、印刷戦略の追加の実施形態が説明される。一実施形態では、印刷パターンが、いくつかの掃引にわたって分散される。こうして、Xピッチは、Xピッチよりも小さいオフセットを選択することにより調整されることができる。同時に、必要な解像度を実現するため、印刷パターンが局所的に変えられることができる。液体の広がりは動的なプロセスであるため、逐次の広がりは、液体の流れの方向及び最終的な液体の分布を制御するのを助けることができる。この効果は、中間硬化工程を導入することにより強く増幅されることができる。
【0058】
一例として、「堤状の」構造が、第1のステップで印刷されることができる。これは、硬化され、従って第2のステップで液体に寄与しないが、連続した印刷ステップにおいて、インクの流れを制御するトポロジー及び局所的な多孔性に影響を及ぼす。局所拡散は、累積拡散よりも予測が容易である。一例として、ROIの定義がこの正面の1次元の広がりにより制御される第1のステップにおいて、ROIの周りにおける閉じた正面が印刷されることができる。硬化後、ROI外の領域は、堤防により閉じ込められ、従って、ROIへと広がる危険なしに、より厚いインク層で充填されることができる。
【0059】
代替の実施形態は、その間に画像解析及び印刷パターン補正を備える複数の印刷掃引を使用する。印刷前に画像を分析する代わりに、最初に大きな領域に厚い層が堆積され、そこではフラッディングのリスクはない(ROIから離れたところ)。次に、画像が作成され、局所的なインクの広がりが分析される。結果に基づき、印刷パターンを微調整するため第2の印刷ビットマップが作成されることができる。
【0060】
ROIを囲む領域が最適化される中間画像解析を示す例が図8に示される。図8の左側には、第1の印刷ストロークの印刷パターンが与えられ、液滴が発射される位置は黒色でマークされる。意図的にROIの周りの領域は、開いたままにされる。最初の印刷ストロークの後、画像が作成され、局所的な広がりが計算される。前に示したように、この広がりは、局所的な組織特性に依存し、従ってROIの周囲で変動し得る。これは図8の右側に示される。例えば、組織の1つの領域における広がりが比較的大きい場合(破線のボックス内に位置する領域においてシミュレートされる)、第2の印刷ストロークの液滴(灰色で示される)は、ROIから更に離れて堆積される。こうして、ROIの周りのギャップは、ROIへと顕著に広がることなくインクでうまく充填されることができる。
【0061】
多くの更なる実施形態が予見されることができる。1つの一般的なステップは、印刷前又は複数の印刷掃引の間の組織の分析であり、続いてこの情報を使用して印刷パターンを最適化することである。図9は、検査される組織又は細胞試料上のカバー層の印刷を制御する方法のステップの概略を示す。この方法は、必ずしもこの順序ではない以下のステップを有する。
【0062】
第1のステップS1において、試料の画像データが提供される。
【0063】
第2のステップS2において、画像データから局所画像パラメータが決定される。
【0064】
第3ステップS3において、局所画像パラメータに基づき試料上のカバー層を印刷するための印刷パラメータが制御される。局所画像パラメータは、試料の局所組織多孔性及び/又は局所的な毛管力に関連する。
【0065】
この方法は、試料上に初期カバー層を最初に印刷するための初期印刷パラメータを制御するステップを更に有することができる。この初期印刷は、ステップa)の前に行われることができる。この方法は、初期カバー層及び/又はカバー層を硬化させるための硬化パラメータを制御するステップを更に有することができる。この硬化は、最初の印刷後及び/又はステップc)の後に行われることができる。この方法は、カバー層により示されている、及び/又はカバー層により覆われていない試料の関心領域を除去するステップを更に有することができる。この除去は、ステップc)の後に行われることができる。
【0066】
本発明の別の例示的な実施形態において、適切なシステムにおいて上述した実施形態の一つによる方法のステップを実行するよう構成されるコンピュータプログラムが提供される。
【0067】
コンピュータプログラムは従って、コンピュータユニットに格納されることができる。これは、本発明の実施形態の一部でもある。この計算ユニットは、上記の方法におけるステップを実行するよう構成されることができる。更に、上記装置の要素を作動させるよう構成されることができる。計算ユニットは、自動的に作動する、及び/又はユーザの命令を実行するよう構成されることができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサのワーキングメモリにロードされることができる。従って、データプロセッサが、本発明の方法を実行するために具備されることができる。
【0068】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を用いるコンピュータプログラム、及び更新を用いて既存のプログラムを本発明を用いるプログラムに変えるコンピュータプログラムの両方をカバーする。
【0069】
更に、コンピュータプログラムは、上述した方法の例示的な実施形態の手順を満たすために必要なすべてのステップを提供することができる。
【0070】
本発明の更に例示的な実施形態によれば、例えばCD―ROMといったコンピュータ可読媒体が与えられる。この場合、コンピュータ可読媒体は、この媒体に格納されるコンピュータプログラムを持つ。このコンピュータプログラムは、上述されたものである。
【0071】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学的記憶媒体又は固体媒体といった適切な媒体に格納/配布されることができるが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してといった他の形式で配布されることもできる。
【0072】
しかしながら、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワークを介して提示されてもよく、斯かるネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされてもよい。本発明の更に例示的な実施形態によれば、コンピュータプログラムをダウンロードに関して利用可能にする媒体が提供される。このコンピュータプログラムは、本発明の上記の実施形態の1つに基づかれる方法を実行するよう構成される。
【0073】
本発明の実施形態が種々の主題を参照して記載される点に留意されたい。特に、ある実施形態は、方法タイプの請求項を参照して説明されるが、他の実施形態は、デバイスタイプの請求項を参照して説明される。しかしながら、当業者であれば、他の記載がない限り、あるタイプの主題に属する特徴の任意の組合せに加えて、異なる主題に関する特徴の任意の組合せが、本願に開示されると考えられる点を上記又は下記の説明から推察するであろう。しかしながら、すべての特徴は、これらの特徴の単純な合計より多くの共同効果を提供する態様で、結合されることができる。
【0074】
本発明が図面及び前述の説明において詳細に図示され及び説明されたが、斯かる図示及び説明は、説明的又は例示的であると考えられ、本発明を限定するものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。図面、開示及び従属項の研究から、開示された実施形態に対する他の変形が、請求項に記載の本発明を実施する当業者により理解され、及び実行されることができる。
【0075】
請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを意味するものではない。請求項における任意の参照符号は、発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9