(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404498
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】五酸化二バナジウム粉末の製造システム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 31/02 20060101AFI20181001BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20181001BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
C01G31/02ZAB
B01D53/68 120
B01D53/78
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-558608(P2017-558608)
(86)(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公表番号】特表2018-509371(P2018-509371A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】CN2016072518
(87)【国際公開番号】WO2016119717
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年9月28日
(31)【優先権主張番号】201510051580.1
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513304127
【氏名又は名称】インスティテュート オブ プロセス エンジニアリング,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF PROCESS ENGINEERING, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(73)【特許権者】
【識別番号】517266333
【氏名又は名称】ペキン チョンカイホンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING ZHONGKAIHONGDE TECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チェンリン
(72)【発明者】
【氏名】ヂゥー,チンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ムー,ウェンホン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,クーハ
(72)【発明者】
【氏名】バン,チーシュン
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103130279(CN,A)
【文献】
特開昭55−020210(JP,A)
【文献】
特開昭59−050029(JP,A)
【文献】
特公昭47−025993(JP,B1)
【文献】
特公昭54−006517(JP,B1)
【文献】
特公昭49−028352(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 31/00−31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
五酸化二バナジウム粉末の製造システムであって、供給装置(1)、低温塩素化流動床(2)、精留精製装置(3)、気相加水分解流動床(4)、焼成流動床(5)、排ガス浸出吸収器(6)、誘引ファン(7)及び煙突(8)を備え、
前記供給装置(1)は、工業グレードの五酸化二バナジウム収容室(1-1)、工業グレードの五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(1-2)、炭素粉収容室(1-3)及び炭素粉スクリューフィーダ(1-4)を備え、
前記低温塩素化流動床(2)は、塩素化床フィーダ(2-1)、塩素化流動床本体(2-2)、塩素化床サイクロン分離器(2-3)、ガス-ガスヒータ(2-4)、ガスコンデンサ(2-5)、塩素化床酸封止タンク(2-6)及び塩素化床スクリュー残渣除去装置(2-7)を備え、
前記精留精製装置(3)は、蒸留釜(3-1)、精留塔(3-2)、留出物コンデンサ(3-3)、還流液収集タンク(3-4)、シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-5)、精留段酸封止タンク(3-6)、高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ(3-7)及び高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-8)を備え、
前記気相加水分解流動床(4)は、加水分解床空気浄化器(4-1)、加水分解床ガス加熱器(4-2)、三塩化酸化バナジウムノズル(4-3)、気相加水分解流動床本体(4-4)、塩酸排ガス吸収器(4-5)及び加水分解床排出装置(4-6)を備え、
前記焼成流動床(5)は、焼成床空気浄化器(5-1)、焼成床ガス加熱器(5-2)及び焼成流動床本体(5-3)を備え、
前記五酸化二バナジウム収容室(1-1)の底部の吐出口が前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(1-2)の供給口に接続され、前記炭素粉収容室(1-3)の底部の吐出口が前記炭素粉スクリューフィーダ(1-4)の供給口に接続され、前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(1-2)の吐出口と前記炭素粉スクリューフィーダ(1-4)の吐出口がいずれも配管を介して前記塩素化床フィーダ(2-1)の供給口に接続され、
前記塩素化床フィーダ(2-1)の吐出口が配管を介して前記塩素化流動床本体(2-2)の上部の供給口に接続され、前記塩素化床フィーダ(2-1)の底部の吸気口が配管を介して窒素ガス源マニホールドに接続され、前記塩素化床サイクロン分離器(2-3)が前記塩素化流動床本体(2-2)の拡張段の最上部の中心部に設けられ、前記塩素化床サイクロン分離器(2-3)の最上部の排気口が配管を介して前記ガス-ガスヒータ(2-4)の高温ガス入り口に接続され、前記ガス-ガスヒータ(2-4)の低温ガス出口が配管を介して前記ガスコンデンサ(2-5)のガス入り口に接続され、前記ガスコンデンサ(2-5)のガス出口が配管を介して前記塩素化床酸封止タンク(2-6)のガス入り口に接続され、前記塩素化床酸封止タンク(2-6)のガス出口が配管を介して前記排ガス浸出吸収器(6)のガス入り口に接続され、前記塩素化流動床本体(2-2)の下部の残渣排出口が配管を介して前記塩素化床スクリュー残渣除去装置(2-7)の供給口に接続され、前記塩素化流動床本体(2-2)の底部の吸気口が配管を介して前記ガス-ガスヒータ(2-4)の高温ガス出口に接続され、前記ガス-ガスヒータ(2-4)の低温ガス入り口が配管を介してそれぞれ塩素ガス源マニホールド、窒素ガス源マニホールド及び圧縮空気マニホールドに接続され、
前記ガスコンデンサ(2-5)の底部の液体出口が配管を介して前記精留塔(3-2)の供給口に接続され、前記蒸留釜(3-1)の蒸気出口が配管を介して前記精留塔(3-2)の蒸気入り口に接続され、前記蒸留釜(3-1)の還流口が配管を介して前記精留塔(3-2)の底部の液体還流出口に接続され、前記精留塔(3-2)の最上部のガス出口が配管を介して前記留出物コンデンサ(3-3)のガス入り口に接続され、前記留出物コンデンサ(3-3)の液体出口が配管を介して前記還流液収集タンク(3-4)の液体入り口に接続され、前記還流液収集タンク(3-4)の還流液体出口が配管を介して前記精留塔(3-2)の最上部の還流液体入り口に接続され、前記還流液収集タンク(3-4)の吐出口が配管を介して前記シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-5)の入り口に接続され、前記シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-5)の廃蒸気出口が配管を介して前記精留段酸封止タンク(3-6)のガス入り口に接続され、前記精留段酸封止タンク(3-6)のガス出口が配管を介して前記排ガス浸出吸収器(6)のガス入り口に接続され、前記精留塔(3-2)の精留物出口が配管を介して前記高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ(3-7)のガス入り口に接続され、前記高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ(3-7)の液体出口が配管を介して前記高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-8)の液体入り口に接続され、前記蒸留釜(3-1)の底部に底部流出口が設けられ、
前記加水分解床空気浄化器(4-1)の吸気口が配管を介して圧縮空気マニホールドに接続され、前記加水分解床空気浄化器(4-1)の排気口が配管を介してそれぞれ前記加水分解床ガス加熱器(4-2)の吸気口、三塩化酸化バナジウムノズル(4-3)のガス入り口及び加水分解床排出装置(4-6)の底部の吸気口に接続され、前記加水分解床ガス加熱器(4-2)の燃焼ノズルの燃焼用空気入り口と燃料入り口がそれぞれ配管を介して圧縮空気マニホールドと燃料マニホールドに接続され、前記加水分解床ガス加熱器(4-2)の吸気口が配管を介して超純水マニホールドに接続され、前記加水分解床ガス加熱器(4-2)の排気口が配管を介して前記気相加水分解流動床本体(4-4)の底部の吸気口に接続され、前記高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-8)の液体出口が配管を介して前記三塩化酸化バナジウムノズル(4-3)の三塩化酸化バナジウム入り口に接続され、前記気相加水分解流動床本体(4-4)の拡張段の最上部のガス出口が配管を介して前記塩酸排ガス吸収器(4-5)のガス入り口に接続され、前記塩酸排ガス吸収器(4-5)の底部に塩酸溶液出口が設けられ、前記塩酸排ガス吸収器(4-5)のガス出口が配管を介して前記排ガス浸出吸収器(6)のガス入り口に接続され、前記気相加水分解流動床本体(4-4)の上部の吐出口が配管を介して前記加水分解床排出装置(4-6)の供給口に接続され、前記加水分解床排出装置(4-6)の吐出口が配管を介して前記焼成流動床本体(5-3)の上部の供給口に接続され、
前記焼成床空気浄化器(5-1)の吸気口が配管を介して圧縮空気マニホールドに接続され、前記焼成床空気浄化器(5-1)の排気口が配管を介して前記焼成床ガス加熱器(5-2)の吸気口に接続され、前記焼成床ガス加熱器(5-2)の燃焼ノズルの燃焼用空気入り口と燃料入り口がそれぞれ配管を介して圧縮空気マニホールドと燃料マニホールドに接続され、前記焼成床ガス加熱器(5-2)の排気口が配管を介して前記焼成流動床本体(5-3)の底部の吸気口に接続され、前記焼成流動床本体(5-3)の最上部の排気口が配管を介して前記気相加水分解流動床本体(4-4)の底部の吸気口に接続され、前記焼成流動床本体(5-3)の下部の吐出口が配管を介して高純度五酸化二バナジウム製品収容室に接続され、前記排ガス浸出吸収器(6)のガス出口が配管を介して前記誘引ファン(7)のガス入り口に接続され、前記誘引ファン(7)のガス出口が配管を介して前記煙突(8)の底部のガス入り口に接続されて成る、ことを特徴とする五酸化二バナジウム粉末の製造システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載されたシステムを用いた五酸化二バナジウム粉末の製造方法であって、
工業グレードの五酸化二バナジウム収容室(1-1)の中の工業グレードの五酸化二バナジウム粉体と炭素粉収容室(1-3)の炭素粉を、それぞれ工業グレードの五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(1-2)と炭素粉スクリューフィーダ(1-4)によって塩素化床フィーダ(2-1)に同時に送入して混合し、塩素化流動床本体(2-2)に送入し、塩素ガス源マニホールドからの塩素ガス、窒素ガス源マニホールドからの窒素ガス及び圧縮空気マニホールドからの空気をガス-ガスヒータ(2-4)によって塩素化ガスと熱交換して予熱し、前記塩素化流動床本体(2-2)に送入して五酸化二バナジウムと炭素粉の流動を維持しながら化学反応させ、空気によって一部の炭素粉を燃焼させて流動床の温度を維持するための熱を供給し、塩素ガスと炭素粉の共同作用で五酸化二バナジウムと少量の不純物を塩素化し、塩素化残渣及び三塩化酸化バナジウムを豊富に含有した塩素化ガスを形成し、塩素化残渣を順次に前記塩素化流動床本体(2-2)の下部の残渣排出口と塩素化床スクリュー残渣除去装置(2-7)を経由して排出し、塩素化ガスを塩素化床サイクロン分離器(2-3)によって粉塵除去して前記塩素化流動床本体(2-2)に還流させた後、前記ガス-ガスヒータ(2-4)によって予備冷却してガスコンデンサ(2-5)に送入し三塩化酸化バナジウムを凝縮させて低純度の三塩化酸化バナジウム液体を生成し、残りの排ガスを塩素化床酸封止タンク(2-6)を経由して排ガス浸出吸収器(6)に送入する工程と、
前記ガスコンデンサ(2-5)において生成した低純度の三塩化酸化バナジウム液体を順次に精留塔(3-2)と蒸留釜(3-1)に送入して精留操作を行い、高沸点不純物を豊富に含有したバナジウムリッチ廃棄物、低沸点不純物を豊富に含有したシリコン含有三塩化酸化バナジウム蒸気及び高純度三塩化酸化バナジウム蒸気を得て、前記シリコン含有三塩化酸化バナジウム蒸気は留出物コンデンサ(3-3)によって凝縮して液体になり、一部が還流液収集タンク(3-4)を経由して前記精留塔(3-2)に還流し、残りの部分がシリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-5)に送入され、前記シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-5)で生じた廃蒸気を精留段酸封止タンク(3-6)を経由して前記排ガス浸出吸収器(6)に送入し、高純度三塩化酸化バナジウム蒸気は高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ(3-7)によって凝縮して液体になり、高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-8)に送入される工程と、
前記高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(3-8)の中の高純度三塩化酸化バナジウムを三塩化酸化バナジウムノズル(4-3)を介して、加水分解床空気浄化器(4-1)からの浄化空気によって気相加水分解流動床本体(4-4)に送入し、超純水と浄化空気を加水分解床ガス加熱器(4-2)によって予熱して、焼成流動床本体(5-3)からの焼成ガスとともに前記気相加水分解流動床本体(4-4)に送入して粉末材料の流動を維持しながら三塩化酸化バナジウムを加水分解し、五酸化二バナジウム粉末及び塩化水素を豊富に含有した加水分解ガスを生成し、五酸化二バナジウム粉末を加水分解床排出装置(4-6)によって排出して前記焼成流動床本体(5-3)に送入し、加水分解ガスを前記気相加水分解流動床本体(4-4)の拡張段によって粉塵除去して、塩酸排ガス吸収器(4-5)に送入し吸収処理して塩酸溶液副製品を形成し、吸収排ガスを前記排ガス浸出吸収器(6)に送入して処理する工程と、
圧縮空気を順次に焼成床空気浄化器(5-1)によって浄化し焼成床ガス加熱器(5-2)によって予熱して前記焼成流動床本体(5-3)内に送入し五酸化二バナジウム粉末の流動を維持しながら水分及び微量の揮発性不純物を除去し、高純度の五酸化二バナジウム粉末及び焼成ガスを得て、高純度の五酸化二バナジウム製品を排出して高純度製品収容室に送入し、焼成ガスを拡張段によって粉塵除去して前記気相加水分解流動床本体(4-4)に送入して三塩化酸化バナジウムの流動気相加水分解の熱供給と流動に用い、前記排ガス浸出吸収器(6)がアルカリ溶液で吸収処理して排出したガスを誘引ファン(7)によって煙突(8)に送入して排出する工程と、
を含む五酸化二バナジウム粉末の製造方法。
【請求項3】
前記塩素化流動床本体(2-2)内において、塩素化する工程では、炭素粉の添加量が工業グレードの五酸化二バナジウム粉体の質量の10%〜20%であることを特徴とする請求項2に記載された五酸化二バナジウム粉末の製造方法。
【請求項4】
前記塩素化流動床本体(2-2)内において、塩素化する操作温度が300〜500℃、粉体の平均滞留時間が30〜80分であることを特徴とする請求項2に記載された五酸化二バナジウム粉末の製造方法。
【請求項5】
前記精留塔(3-2)内において、前記精留操作を行う工程では、精留段のプレート数が5〜10個、回収段のプレート数が10〜20個であることを特徴とする請求項2に記載された五酸化二バナジウム粉末の製造方法。
【請求項6】
前記精留操作を行う還流比が15〜40であることを特徴とする請求項2に記載された五酸化二バナジウム粉末の製造方法。
【請求項7】
前記気相加水分解流動床本体(4-4)内において、高純度三塩化酸化バナジウムを気相加水分解して五酸化二バナジウム粉末を直接的に製造し、前記気相加水分解する工程では、注入される水蒸気と三塩化酸化バナジウムの質量比が1.2〜2.0、気相加水分解の操作温度が160〜600℃であることを特徴とする請求項2に記載された五酸化二バナジウム粉末の製造方法。
【請求項8】
前記焼成流動床本体(5-3)内において、気相加水分解した五酸化二バナジウム粉末を更に流動焼成処理して高純度の五酸化二バナジウム粉末を得て、前記焼成処理の操作温度が400〜620℃、粉体の平均滞留時間が30〜240分であることを特徴とする請求項2に記載された五酸化二バナジウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学工業、材料分野に属し、特に高純度の五酸化二バナジウム粉末の製造システム及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
五酸化二バナジウムは重要な工業用バナジウム製品の一つであり、フェロバナジウムや窒化バナジウム等の合金添加剤及び触媒、着色剤、硬質合金添加剤等の製造の分野に幅広く適用されている。新エネルギー技術の継続的な発展に伴い、電池産業における高純度の五酸化二バナジウム(純度が3N5以上)のニーズがますます高まり、良好な大容量電力貯蔵特性を有する全バナジウムレドックスフロー電池(VRB)や電気自動車用バナジウム酸塩系リチウムイオン電池等を含む。しかしながら、従来の工業技術では通常、純度が2N5の五酸化二バナジウム(すなわちHGT 3485-2003に定められた製品)しか製造できないため、電池産業における五酸化二バナジウムの要求を満たすことが困難である。従って、如何に低コスト、高効率で高純度の五酸化二バナジウムを製造するかは新エネルギー技術分野では解決しなければならないホットスポット問題の一つとなる。
【0003】
従来、中国特許出願CN1843938A、CN102730757A、CN103145187A、CN103515642A、CN103194603A、CN103787414A、CN102181635A、CN103663557A及び欧洲特許EP0713257B1等に開示されたように、浸出バナジウム溶液又はバナジウムリッチ材料(例えばポリバナジウム酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、工業グレードの五酸化二バナジウム等)を溶解したバナジウム溶液を原料とし、化学沈殿精製又は(及び)溶剤抽出/イオン樹脂交換等の方法によって精製し、純粋なバナジウム溶液を得て、次にアンモニウム塩沈殿を行って純粋なポリバナジウム酸アンモニウム又はメタバナジン酸アンモニウム沈殿を得て、さらに焼成分解して高純度の五酸化二バナジウム粉末を得る。これらの方法において、不純物除去工程のパラメータは原料の不純物含有量に密接に関係しているため、原材料への適応性が低く、精製用のカルシウム塩、マグネシウム塩精製剤又は抽出剤、酸アルカリ試薬及びバナジウム沈殿用アンモニウム塩も不純物を混入しやすい。製品の品質を向上させるために、通常、純度が高い高価な試薬が求められ、したがってコストが高過ぎ、量産不能であり且つ製品の純度を3N5以上に維持しにくい。
【0004】
中国特許出願CN103606694A及びCN102923775A等に開示されたように、精製剤又は抽出剤が不純物を混入しやすく試薬の使用コストが高過ぎるという問題に対して、関連機構はさらに繰り返し沈殿法でバナジウム溶液を精製することを提案し、すなわちバナジウム含有溶液のアンモニウム塩沈殿特性によって、バナジウムを選択的に沈殿させ不純物のイオン部分を沈殿後の溶液に溶解させ、続いて得たアンモニウム塩沈殿を再溶解した後、複数回繰り返して、純粋なポリバナジウム酸アンモニウム又はメタバナジン酸アンモニウム沈殿を得て、さらに焼成分解して高純度の五酸化二バナジウム粉末を得る。試薬の使用量及びその不純物の混入可能性を効果的に低減させるが、溶解-沈殿工程用の高純度の酸アルカリ試薬とアンモニウム塩の使用量が大きく、精製コストが高く、また、煩瑣な繰り返し沈殿操作によって製造効率が低下するだけでなくバナジウムの直収率が著しく低下する。さらに、上記溶液精製方法では、抽出/逆抽出、沈殿、洗浄等の工程で主に少量のバナジウムイオン、アンモニウムイオン及び大量のナトリウム塩を含有した大量の廃水が発生し、処理の困難度が高く、汚染問題が深刻であるため、産業上の応用が厳しく制約されている。
【0005】
金属塩化物の沸点及び飽和蒸気圧の差が大きいため、異なる金属塩化物は蒸留/精留によって分離しやすく、原料の塩素化-精留精製-後続処理は、高純度シリコン(多結晶シリコン)、高純度シリカ等のような高純度物質の通常の製造プロセスである。バナジウムの塩化物である三塩化酸化バナジウムと普通の不純物である鉄、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム等の塩化物の沸点の差が極めて大きいため、精留によって高純度の三塩化酸化バナジウムを製造しやすく、高純度の三塩化酸化バナジウムを加水分解しアンモニウム塩沈殿して、焼成して高純度の五酸化二バナジウムを製造する。従って、塩素化法による高純度の五酸化二バナジウムの製造は原理上、大きな優位性を持っている。実際、塩素化法による高純度の五酸化二バナジウムの製造は原理的に実現可能であるだけでなく、1960年代に、米国アイオワ州立大学の研究者によって実験室で実現された(Journal of the Less-Common Metals,1960,2:29-35)。ポリバナジウム酸アンモニウムを原料とし、炭素塩素化によって低純度の三塩化酸化バナジウムを得て、蒸留精製して高純度の三塩化酸化バナジウムを得て、アンモニウム塩沈殿して高純度のメタバナジン酸アンモニウムを得て、最終的に500〜600℃で焼成して高純度の五酸化二バナジウム粉末を得るが、沈殿、洗浄工程においてアンモニアや窒素を含有した大量の廃水(五酸化二バナジウム製品1tあたり少なくとも1.8tの塩化アンモニウムの廃塩が発生する)が発生し、処理の困難度が高い。アンモニウム塩沈殿、乾燥、焼成過程はエネルギー消費量が高いだけでなく、環境汚染を招きやすい。さらに、該研究は実験室の装置で、塩素化法で高純度の五酸化二バナジウムを段階的かつ間欠的に製造したが、産業上で如何に塩素化法で高純度の五酸化二バナジウムを連続的に製造するかについての情報を提供できないため、その後の数十年間でも、塩素化法で高純度の五酸化二バナジウムを連続的に製造することについての記事がなかった。
【0006】
最近、中国特許出願CN103130279Aにおいて、塩素化法で、フェロバナジウムマグネタイト、バナジウムスラグ、バナジウム含有触媒等のバナジウム含有物質を原料として高純度の五酸化二バナジウムを製造する方法が提案されている。炭素塩素化-除塵-凝縮を行ってバナジウム塩化物の混合物を得て、四塩化バナジウムを精留分離して純粋な三塩化酸化バナジウムを得た後、三塩化酸化バナジウムを超純水水溶液又は超純アンモニア水溶液に注入して沈殿させ、濾過、乾燥、焼成して五酸化二バナジウムを得る。該特許出願は以下の欠陥を有する。(1)上記米国アイオワ州立大学の研究と類似し、該特許出願は実際、塩素化の論理上のプロセスのみを提供し、具体的な操作手法がなく、例えば塩素化方式として沸騰塩素化もあれば、沸騰塩素化と完全に異なる溶融塩中での塩素化もあり、さらに、例えば、塩素化反応器として、「回転窯、流動床炉、沸騰炉、高炉、多室炉」等の反応器が提案されたが、実際に、冶金工業分野で一般的に用いられるほぼすべての主流の反応器を含むが、異なる反応器によって原料の要件の差が非常に大きく、高炉は8mmを超える「粗大」粒子しか処理できず、「微小粒子」を使用する場合にペレットと焼結前処理を必要とし、沸騰塩素化は一般的に微小粒子の処理に適するため、特定のバナジウム原料は、回転窯、流動床炉、沸騰炉、高炉、多室炉等の反応器に直接的に適用不能であり、また、「流動床炉」と「沸騰炉」は本質的に同じで、異なる呼び方に過ぎない。従って、これらの反応器の操作方式及び条件の差異が大きく、理論的なプロセスだけで実施できない。(2)三塩化酸化バナジウムを超純水水溶液に注入して加水分解し、五酸化二バナジウムが塩酸溶液に溶解しやすく、バナジウムの沈殿回収率が低すぎ、HCl濃度が6.0mol/Lより大きい塩酸溶液中で、五酸化二バナジウムが溶解時に還元してVOCl
2を生成すると同時に、塩素ガスを放出するため、バナジウムの沈殿回収率がさらに低下し、沈殿及び洗浄工程で大量のバナジウム含有塩酸溶液が発生し、統合的処理がしにくい。
【0007】
さらに、産業上の応用では、従来のバナジウム原料の塩素化技術は以下の2つの問題を有する。(1)バナジウム原料の塩素化焙焼は強発熱過程であり、塩素化反応で生じた熱は固体及び気体の反応材料の予熱に用いられる以外、塩素化温度を安定化するために炉壁放熱等の方式に放出される必要があり、従って固体及び気体は通常、室温状態で反応器内に入り、塩素化反応で生じた熱で予熱されて反応することによって、塩素化反応器の局所反応効率が低すぎる。(2)操作温度を維持するように塩素化反応において生じた熱を大量放熱する必要があるため、操作条件も環境変化も塩素化温度の変動を引き起こしやすく、塩素化の選択性と効率が低下し、合理的な熱平衡供給と温度制御方式を必要とする。従って、塩素化効率を効果的に高め、安定した塩素化温度を実現して塩素化の選択性を確保して不純物の塩素化を効果的に抑制することを可能にするために、合理的な熱供給及び温度制御を提供しなければならない。
【0008】
従って、プロセス及び技術革新によって、塩素化過程の温度制御、バナジウムの直収率向上、アンモニアや窒素の排出汚染の回避、エネルギー消費量の減少を実現することは、塩素化法による高純度の五酸化二バナジウムを製造する技術の経済性を向上させるポイントである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記問題に対して、本発明は、低温塩素化の良好な選択性を確保し、大量の汚染廃水の発生を回避し、高純度の五酸化二バナジウムのエネルギー消費量及び操作コストを低減させる五酸化二バナジウム粉末の製造システム及び製造方法を提案する。これらの目的を達成するために、本発明の技術的解決手段は以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る五酸化二バナジウム粉末の製造システムは、供給装置1、低温塩素化流動床2、精留精製装置3、気相加水分解流動床4、焼成流動床5、排ガス浸出吸収器6、誘引ファン7及び煙突8を備え、
前記供給装置1は、工業グレードの五酸化二バナジウム収容室1-1、工業グレードの五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2、炭素粉収容室1-3及び炭素粉スクリューフィーダ1-4を備え、
前記低温塩素化流動床2は、塩素化床フィーダ2-1、塩素化流動床本体2-2、塩素化床サイクロン分離器2-3、ガス-ガスヒータ2-4、ガスコンデンサ2-5、塩素化床酸封止タンク2-6及び塩素化床スクリュー残渣除去装置2-7を備え、
前記精留精製装置3は、蒸留釜3-1、精留塔3-2、留出物コンデンサ3-3、還流液収集タンク3-4、シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5、精留段酸封止タンク3-6、高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7及び高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8を備え、
前記気相加水分解流動床4は、加水分解床空気浄化器4-1、加水分解床ガス加熱器4-2、三塩化酸化バナジウムノズル4-3、気相加水分解流動床本体4-4、塩酸排ガス吸収器4-5及び加水分解床排出装置4-6を備え、
前記焼成流動床5は、焼成床空気浄化器5-1、焼成床ガス加熱器5-2及び焼成流動床本体5-3を備え、
前記五酸化二バナジウム収容室1-1の底部の吐出口が前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2の供給口に接続され、前記炭素粉収容室1-3の底部の吐出口が前記炭素粉スクリューフィーダ1-4の供給口に接続され、前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2の吐出口、前記炭素粉スクリューフィーダ1-4の吐出口がいずれも配管を介して前記塩素化床フィーダ2-1の供給口に接続され、
前記塩素化床フィーダ2-1の吐出口が配管を介して前記塩素化流動床本体2-2の上部の供給口に接続され、前記塩素化床フィーダ2-1の底部の吸気口が配管を介して窒素ガス源マニホールドに接続され、前記塩素化床サイクロン分離器2-3が前記塩素化流動床本体2-2の拡張段の最上部の中心部に設けられ、前記塩素化床サイクロン分離器2-3の最上部の排気口が配管を介して前記ガス-ガスヒータ2-4の高温ガス入り口に接続され、前記ガス-ガスヒータ2-4の低温ガス出口が配管を介して前記ガスコンデンサ2-5のガス入り口に接続され、前記ガスコンデンサ2-5のガス出口が配管を介して前記塩素化床酸封止タンク2-6のガス入り口に接続され、前記塩素化床酸封止タンク2-6のガス出口が配管を介して前記排ガス浸出吸収器6のガス入り口に接続され、前記塩素化流動床本体2-2の下部の残渣排出口が配管を介して前記塩素化床スクリュー残渣除去装置2-7の供給口に接続され、前記塩素化流動床本体2-2の底部の吸気口が配管を介して前記ガス-ガスヒータ2-4の高温ガス出口に接続され、前記ガス-ガスヒータ2-4の低温ガス入り口が配管を介してそれぞれ塩素ガス源マニホールド、窒素ガス源マニホールド及び圧縮空気マニホールドに接続され、
前記ガスコンデンサ2-5の底部の液体出口が配管を介して前記精留塔3-2の供給口に接続され、前記蒸留釜3-1の蒸気出口が配管を介して前記精留塔3-2の蒸気入り口に接続され、前記蒸留釜3-1の還流口が配管を介して前記精留塔3-2の底部の液体還流出口に接続され、前記精留塔3-2の最上部のガス出口が配管を介して前記留出物コンデンサ3-3のガス入り口に接続され、前記留出物コンデンサ3-3の液体出口が配管を介して前記還流液収集タンク3-4の液体入り口に接続され、前記還流液収集タンク3-4の還流液体出口が配管を介して前記精留塔3-2の最上部の還流液体入り口に接続され、前記還流液収集タンク3-4の吐出口が配管を介して前記シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5の入り口に接続され、前記シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5の廃蒸気出口が配管を介して前記精留段酸封止タンク3-6のガス入り口に接続され、前記精留段酸封止タンク3-6のガス出口が配管を介して前記排ガス浸出吸収器6のガス入り口に接続され、前記精留塔3-2の精留物出口が配管を介して前記高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7のガス入り口に接続され、前記高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7の液体出口が配管を介して前記高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8の液体入り口に接続され、前記蒸留釜3-1の底部に底部流出口が設けられ、
前記加水分解床空気浄化器4-1の吸気口が配管を介して圧縮空気マニホールドに接続され、前記加水分解床空気浄化器4-1の排気口が配管を介してそれぞれ前記加水分解床ガス加熱器4-2の吸気口、三塩化酸化バナジウムノズル4-3のガス入り口及び加水分解床排出装置4-6の底部の吸気口に接続され、前記加水分解床ガス加熱器4-2の燃焼ノズルの燃焼用空気入り口と燃料入り口がそれぞれ配管を介して圧縮空気マニホールドと燃料マニホールドに接続され、前記加水分解床ガス加熱器4-2の吸気口が配管を介して超純水マニホールドに接続され、前記加水分解床ガス加熱器4-2の排気口が配管を介して前記気相加水分解流動床本体4-4の底部の吸気口に接続され、前記高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8の液体出口が配管を介して前記三塩化酸化バナジウムノズル4-3の三塩化酸化バナジウム入り口に接続され、前記気相加水分解流動床本体4-4の拡張段の最上部のガス出口が配管を介して前記塩酸排ガス吸収器4-5のガス入り口に接続され、前記塩酸排ガス吸収器4-5の底部に塩酸溶液出口が設けられ、前記塩酸排ガス吸収器4-5のガス出口が配管を介して前記排ガス浸出吸収器6のガス入り口に接続され、前記気相加水分解流動床本体4-4の上部の吐出口が配管を介して前記加水分解床排出装置4-6の供給口に接続され、前記加水分解床排出装置4-6の吐出口が配管を介して前記焼成流動床本体5-3の上部の供給口に接続され、
前記焼成床空気浄化器5-1の吸気口が配管を介して圧縮空気マニホールドに接続され、前記焼成床空気浄化器5-1の排気口が配管を介して前記焼成床ガス加熱器5-2の吸気口に接続され、前記焼成床ガス加熱器5-2の燃焼ノズルの燃焼用空気入り口と燃料入り口がそれぞれ配管を介して圧縮空気マニホールドと燃料マニホールドに接続され、前記焼成床ガス加熱器5-2の排気口が配管を介して前記焼成流動床本体5-3の底部の吸気口に接続され、前記焼成流動床本体5-3の最上部の排気口が配管を介して前記気相加水分解流動床本体4-4の底部の吸気口に接続され、前記焼成流動床本体5-3の下部の吐出口が配管を介して高純度五酸化二バナジウム製品収容室に接続され、
前記排ガス浸出吸収器6のガス出口が配管を介して前記誘引ファン7のガス入り口に接続され、前記誘引ファン7のガス出口が配管を介して前記煙突8の底部のガス入り口接続にされて成る。
【0011】
また、前記本発明に係るシステムで五酸化二バナジウム粉末を製造する製造方法は、
工業グレードの五酸化二バナジウム収容室1-1中の工業グレードの五酸化二バナジウム粉体と炭素粉収容室1-3の炭素粉を、それぞれ工業グレードの五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2と炭素粉スクリューフィーダ1-4によって塩素化床フィーダ2-1に同時に送入して混合し、塩素化流動床本体2-2に送入し、塩素ガス源マニホールドからの塩素ガス、窒素ガス源マニホールドからの窒素ガス及び圧縮空気マニホールドからの空気をガス-ガスヒータ2-4によって塩素化ガスと熱交換して予熱し、前記塩素化流動床本体2-2に送入して五酸化二バナジウム、炭素粉等の粉体材料の流動を維持しながら化学反応させ、空気によって一部の炭素粉を燃焼させて流動床の温度を維持するための熱を供給し、塩素ガスと炭素粉の共同作用で五酸化二バナジウムと少量の不純物を塩素化し、塩素化残渣及び三塩化酸化バナジウムを豊富に含有した塩素化ガスを生成し、塩素化残渣を順次に前記塩素化流動床本体2-2の下部の残渣排出口と塩素化床スクリュー残渣除去装置2-7を経由して排出し、塩素化ガスを塩素化床サイクロン分離器2-3によって粉塵除去して前記塩素化流動床本体2-2に還流させた後、前記ガス-ガスヒータ2-4によって予備冷却してガスコンデンサ2-5に送入し、三塩化酸化バナジウムを凝縮させて低純度の三塩化酸化バナジウム液体を生成し、残りの排ガスを塩素化床酸封止タンク2-6を経由して排ガス浸出吸収器6に送入する工程と、
前記ガスコンデンサ2-5によって生成した低純度の三塩化酸化バナジウム液体を精留塔3-2と蒸留釜3-1に送入して精留操作を行い、高沸点不純物を豊富に含有したバナジウムリッチ廃棄物、低沸点不純物を豊富に含有したシリコン含有三塩化酸化バナジウム蒸気及び高純度三塩化酸化バナジウム蒸気を得て、バナジウムリッチ廃棄物は後続のバナジウム回収に用いられ、シリコン含有三塩化酸化バナジウム蒸気は留出物コンデンサ3-3によって凝縮して液体になり、一部が還流液収集タンク3-4を経由して前記精留塔3-2に還流し、残りの部分がシリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5に送入され、前記シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5において生じた廃蒸気を精留段酸封止タンク3-6を経由して前記排ガス浸出吸収器6に送入し、シリコン含有三塩化酸化バナジウムは触媒等の化学工業分野に用いられ、高純度三塩化酸化バナジウム蒸気は高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7によって凝縮して液体になり、高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8に送入される工程と、
前記高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8の中の高純度三塩化酸化バナジウムを三塩化酸化バナジウムノズル4-3を介して、加水分解床空気浄化器4-1からの浄化空気で気相加水分解流動床本体4-4に送入し、超純水と浄化空気を加水分解床ガス加熱器4-2によって予熱して、焼成流動床本体5-3からの焼成ガスとともに前記気相加水分解流動床本体4-4に送入して粉末材料の流動を維持しながら三塩化酸化バナジウムを加水分解し、五酸化二バナジウム粉末及び塩化水素を豊富に含有した加水分解ガスを生成し、五酸化二バナジウム粉末を加水分解床排出装置4-6によって排出して前記焼成流動床本体5-3に送入し、加水分解ガスを前記気相加水分解流動床本体4-4の拡張段によって粉塵除去して、塩酸排ガス吸収器4-5に送入し吸収処理して塩酸溶液副製品を生成し、吸収排ガスを前記排ガス浸出吸収器6に送入して処理する工程と、
圧縮空気を順次に焼成床空気浄化器5-1によって浄化し焼成床ガス加熱器5-2によって予熱して前記焼成流動床本体5-3に送入し五酸化二バナジウム粉末の流動を維持しながら水分及び微量の揮発性不純物を除去し、高純度の五酸化二バナジウム粉末及び焼成ガスを得て、高純度の五酸化二バナジウム製品を排出して高純度製品収容室に送入し、焼成ガスを拡張段によって粉塵除去し前記気相加水分解流動床本体4-4に送入して三塩化酸化バナジウムの流動気相加水分解の熱供給と流動に用い、前記排ガス浸出吸収器6がアルカリ溶液により吸収処理して排出したガスを誘引ファン7によって煙突8に送入して排出する工程と、を含む。
【0012】
本発明は、前記塩素化流動床本体2-2内において、低温塩素化する工程において、炭素粉の添加量が工業グレードの五酸化二バナジウム粉体の質量の10%〜20%、操作温度が300〜500℃、粉体の平均滞留時間が30〜80分であることを第1特徴とする。
【0013】
本発明は、前記精留塔3-2内において、前記精留操作を行う工程では、精留段のプレート数が5〜10個、回収段のプレート数が10〜20個であり、精留中、還流比(すなわち塔頂還流量と排出量の比)を15〜40に維持することを第2特徴とする。
【0014】
本発明は、前記気相加水分解流動床本体4-4内において、高純度三塩化酸化バナジウムを気相加水分解して五酸化二バナジウム粉末を直接的に製造し、前記気相加水分解する工程において、注入される水蒸気と三塩化酸化バナジウムの質量比が1.2〜2.0、気相加水分解の操作温度が160〜600℃であることを第3特徴とする。
【0015】
本発明は、前記焼成流動床本体5-3内において、気相加水分解した五酸化二バナジウム粉末を更に流動焼成処理して高純度の五酸化二バナジウム粉末を得て、前記焼成処理の操作温度が400〜620℃、粉体の平均滞留時間が30〜240分であることを第4特徴とする。
【0016】
本発明で製造される高純度の五酸化二バナジウム粉末の純度が4N以上である。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比べて、本発明は以下の顕著な利点を有する。
(1)塩化ガスと塩素化ガスの熱交換によって、ガスを冷却すると同時に、塩化ガスを予熱し、塩素化反応器の温度分布をより均一にし、バナジウム原料の低温塩素化効率を効果的に向上させる。
(2)適量の空気を注入することによって炭素粉の一部を燃焼させて塩素化過程の熱平衡供給と温度制御を実現し、塩素化する操作温度を安定させ、塩素化反応効率を向上させ塩素化の良好な選択性を確保し、四塩化バナジウム生成等の副反応の発生を回避する。
(3)精留精製後の三塩化酸化バナジウムをノズルによって気相加水分解流動床に送入して加水分解して五酸化二バナジウム粉末及び塩酸副製品を得て、従来の加水分解沈殿に比べて、バナジウム、アンモニアや窒素を含有した大量の廃水の発生を効果的に回避できる。
(4)蒸気を担持した空気を燃焼器によって予熱して気相加水分解流動床に送入することで熱供給及び水蒸気供給を実現する。
(5)加水分解した五酸化二バナジウム粉末を更に焼成して高純度の五酸化二バナジウム粉末製品を得て、生じた高温ガスを気相加水分解流動床に送入して熱供給と流動に用いることで、熱利用効率と製造効率を向上させる。
【0018】
本発明は原料適応性が高く、低温塩素化の選択性が良好で、汚染廃水の排出がなく、エネルギー消費量と操作コストが低く、製品の品質が安定する等の利点を有し、4N以上の高純度の五酸化二バナジウム粉末の量産に適用でき、経済的利益と社会的利益が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面は本発明を更に説明するためのものであり、明細書の一部として組み込まれており、本発明の実施例とともに本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
【
図1】
図1は本発明に係る五酸化二バナジウム粉末の製造システムの構成模式図である。
【符号の説明】
【0020】
1 供給装置
1-1 工業グレードの五酸化二バナジウム収容室、1-2 工業グレードの五酸化二バナジウムスクリューフィーダ、1-3 炭素粉収容室、1-4 炭素粉スクリューフィーダ
2 低温塩素化流動床、2-1 塩素化床フィーダ、2-2 塩素化流動床本体、2-3 塩素化床サイクロン分離器、2-4 ガス-ガスヒータ、2-5 ガスコンデンサ、2-6 塩素化床酸封止タンク、2-7 塩素化床スクリュー残渣除去装置
3 精留精製装置
3-1 蒸留釜、3-2 精留塔、3-3 留出物コンデンサ、3-4 還流液収集タンク、3-5 シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク、3-6 精留段酸封止タンク、3-7 高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ、3-8 高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク
4 気相加水分解流動床
4-1 加水分解床空気浄化器、4-2 加水分解床ガス加熱器、4-3 三塩化酸化バナジウムノズル、4-4 気相加水分解流動床本体、4-5 塩酸排ガス吸収器、4-6 加水分解床排出装置
5 焼成流動床
5-1 焼成床空気浄化器、5-2 焼成床ガス加熱器、5-3 焼成流動床本体
6 排ガス浸出吸収器、7 誘引ファン、8 煙突
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例の図面を参照して、本発明の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。明らかなように、後述する実施例は本発明の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。なお、実施例は本発明の技術的解決手段を説明するものであって、それを限定するものではない。
図1は本発明に係る五酸化二バナジウム粉末の製造システム及び製造方法の模式図である。
【0022】
図1に示すように、本実施例に使用される五酸化二バナジウム粉末の製造システムは、供給装置1、低温塩素化流動床2、精留精製装置3、気相加水分解流動床4、焼成流動床5、排ガス浸出吸収器6、誘引ファン7及び煙突8を備え、
供給装置1は工業グレードの五酸化二バナジウム収容室1-1、工業グレードの五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2、炭素粉収容室1-3及び炭素粉スクリューフィーダ1-4を備え、
低温塩素化流動床2は塩素化床フィーダ2-1、塩素化流動床本体2-2、塩素化床サイクロン分離器2-3、ガス-ガスヒータ2-4、ガスコンデンサ2-5、塩素化床酸封止タンク2-6及び塩素化床スクリュー残渣除去装置2-7を備え、
精留精製装置3は蒸留釜3-1、精留塔3-2、留出物コンデンサ3-3、還流液収集タンク3-4、シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5、精留段酸封止タンク3-6、高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7及び高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8を備え、
気相加水分解流動床4は加水分解床空気浄化器4-1、加水分解床ガス加熱器4-2、三塩化酸化バナジウムノズル4-3、気相加水分解流動床本体4-4、塩酸排ガス吸収器4-5及び加水分解床排出装置4-6を備え、
焼成流動床5は焼成床空気浄化器5-1、焼成床ガス加熱器5-2及び焼成流動床本体5-3を備え、
前記五酸化二バナジウム収容室1-1の底部の吐出口が前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2の供給口に接続され、炭素粉収容室1-3の底部の吐出口が炭素粉スクリューフィーダ1-4の供給口に接続され、前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2の吐出口、炭素粉スクリューフィーダ1-4の吐出口がいずれも配管を介して塩素化床フィーダ2-1の供給口に接続され、
塩素化床フィーダ2-1の吐出口が配管を介して塩素化流動床本体2-2の上部の供給口に接続され、塩素化床フィーダ2-1の底部の吸気口が配管を介して窒素ガス源マニホールドに接続され、塩素化床サイクロン分離器2-3が塩素化流動床本体2-2の拡張段の最上部の中心部に設けられ、塩素化床サイクロン分離器2-3の最上部の排気口が配管を介してガス-ガスヒータ2-4の高温ガス入り口に接続され、ガス-ガスヒータ2-4の低温ガス出口が配管を介してガスコンデンサ2-5のガス入り口に接続され、ガスコンデンサ2-5のガス出口が配管を介して塩素化床酸封止タンク2-6のガス入り口に接続され、塩素化床酸封止タンク2-6のガス出口が配管を介して排ガス浸出吸収器6のガス入り口に接続され、塩素化流動床本体2-2の下部の残渣排出口が配管を介して塩素化床スクリュー残渣除去装置2-7の供給口に接続され、塩素化流動床本体2-2の底部の吸気口が配管を介してガス-ガスヒータ2-4の高温ガス出口に接続され、ガス-ガスヒータ2-4の低温ガス入り口が配管を介してそれぞれ塩素ガス源マニホールド、窒素ガス源マニホールド及び圧縮空気マニホールドに接続され、
ガスコンデンサ2-5の底部の液体出口が配管を介して精留塔3-2の供給口に接続され、蒸留釜3-1の蒸気出口が配管を介して精留塔3-2の蒸気入り口に接続され、蒸留釜3-1の還流口が配管を介して精留塔3-2の底部の液体還流出口に接続され、精留塔3-2の最上部のガス出口が配管を介して留出物コンデンサ3-3のガス入り口に接続され、留出物コンデンサ3-3の液体出口が配管を介して還流液収集タンク3-4の液体入り口に接続され、還流液収集タンク3-4の還流液体出口が配管を介して精留塔3-2の最上部の還流液体入り口に接続され、還流液収集タンク3-4の吐出口が配管を介してシリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5の入り口に接続され、シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5の廃蒸気出口が配管を介して精留段酸封止タンク3-6のガス入り口に接続され、精留段酸封止タンク3-6のガス出口が配管を介して排ガス浸出吸収器6のガス入り口に接続され、精留塔3-2の精留物出口が配管を介して高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7のガス入り口に接続され、高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7の液体出口が配管を介して高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8の液体入り口に接続され、蒸留釜3-1の底部に底部流出口が設けられ、
加水分解床空気浄化器4-1の吸気口が配管を介して圧縮空気マニホールドに接続され、加水分解床空気浄化器4-1の排気口が配管を介してそれぞれ加水分解床ガス加熱器4-2の吸気口、三塩化酸化バナジウムノズル4-3のガス入り口及び加水分解床排出装置4-6の底部の吸気口に接続され、加水分解床ガス加熱器4-2の燃焼ノズルの燃焼用空気入り口と燃料入り口がそれぞれ配管を介して圧縮空気マニホールドと燃料マニホールドに接続され、加水分解床ガス加熱器4-2の吸気口が配管を介して超純水マニホールドに接続され、加水分解床ガス加熱器4-2の排気口が配管を介して気相加水分解流動床本体4-4の底部の吸気口に接続され、高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8の液体出口が配管を介して三塩化酸化バナジウムノズル4-3の三塩化酸化バナジウム入り口に接続され、気相加水分解流動床本体4-4の拡張段の最上部のガス出口が配管を介して塩酸排ガス吸収器4-5のガス入り口に接続され、塩酸排ガス吸収器4-5の底部に塩酸溶液出口が設けられ、塩酸排ガス吸収器4-5のガス出口が配管を介して排ガス浸出吸収器6のガス入り口に接続され、気相加水分解流動床本体4-4の上部の吐出口が配管を介して加水分解床排出装置4-6の供給口に接続され、加水分解床排出装置4-6の吐出口が配管を介して焼成流動床本体5-3の上部の供給口に接続され、
焼成床空気浄化器5-1の吸気口が配管を介して圧縮空気マニホールドに接続され、焼成床空気浄化器5-1の排気口が配管を介して焼成床ガス加熱器5-2の吸気口に接続され、焼成床ガス加熱器5-2の燃焼ノズルの燃焼用空気入り口と燃料入り口がそれぞれ配管を介して圧縮空気マニホールドと燃料マニホールドに接続され、焼成床ガス加熱器5-2の排気口が配管を介して焼成流動床本体5-3の底部の吸気口に接続され、焼成流動床本体5-3の最上部の排気口が配管を介して気相加水分解流動床本体4-4の底部の吸気口に接続され、焼成流動床本体5-3の下部の吐出口が配管を介して高純度五酸化二バナジウム製品収容室に接続され、
排ガス浸出吸収器6のガス出口が配管を介して誘引ファン7のガス入り口に接続され、誘引ファン7のガス出口が配管を介して煙突8の底部のガス入り口に接続されて成る。
【0023】
本実施例に記載のシステムで高純度の五酸化二バナジウム粉末を製造する製造方法は、具体的には、
工業グレードの五酸化二バナジウム収容室1-1中の工業グレードの五酸化二バナジウム粉体と炭素粉収容室1-3の炭素粉を、それぞれ工業グレードの五酸化二バナジウムスクリューフィーダ1-2と炭素粉スクリューフィーダ1-4によって塩素化床フィーダ2-1に同時に送入して混合し、塩素化流動床本体2-2に送入し、塩素ガス源マニホールドからの塩素ガス、窒素ガス源マニホールドからの窒素ガス及び圧縮空気マニホールドからの空気をガス-ガスヒータ2-4によって塩素化ガスと熱交換して予熱し、塩素化流動床本体2-2に送入して五酸化二バナジウム、炭素粉等の粉末材料の流動を維持しながら化学反応させ、空気によって一部の炭素粉を燃焼させて流動床の温度を維持するための熱を供給し、塩素ガスと炭素粉の共同作用で五酸化二バナジウムと少量の不純物を塩素化し、塩素化残渣及び三塩化酸化バナジウムを豊富に含有した塩素化ガスを生成し、塩素化残渣を順次に塩素化流動床本体2-2の下部の残渣排出口と塩素化床スクリュー残渣除去装置2-7を経由して排出し、塩素化ガスを塩素化床サイクロン分離器2-3によって粉塵除去して塩素化流動床本体2-2に還流させた後、ガス-ガスヒータ2-4によって予備冷却してガスコンデンサ2-5に送入し三塩化酸化バナジウムを凝縮させて低純度の三塩化酸化バナジウム液体を生成し、残りの排ガスを塩素化床酸封止タンク2-6を経由して排ガス浸出吸収器6に送入する工程と、
ガスコンデンサ2-5で生成した低純度の三塩化酸化バナジウム液体を順次に精留塔3-2と蒸留釜3-1に送入して精留操作を行い、高沸点不純物を豊富に含有したバナジウムリッチ廃棄物、低沸点不純物を豊富に含有したシリコン含有三塩化酸化バナジウム蒸気及び高純度三塩化酸化バナジウム蒸気を得て、バナジウムリッチ廃棄物は後続のバナジウム回収に用いられ、シリコン含有三塩化酸化バナジウム蒸気は留出物コンデンサ3-3によって凝縮して液体になり、一部が還流液収集タンク3-4を経由して精留塔3-2に還流し、残りの部分がシリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5に送入され、シリコン含有三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-5において生じた廃蒸気を精留段酸封止タンク3-6を経由して排ガス浸出吸収器6に送入し、シリコン含有三塩化酸化バナジウムは触媒等の化学工業分野に用いられ、高純度三塩化酸化バナジウム蒸気は高純度三塩化酸化バナジウムコンデンサ3-7によって凝縮して液体になり、高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8に送入される工程と、
高純度三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク3-8の中の高純度三塩化酸化バナジウムを三塩化酸化バナジウムノズル4-3を介して、加水分解床空気浄化器4-1からの浄化空気によって気相加水分解流動床本体4-4に送入し、超純水と浄化空気を加水分解床ガス加熱器4-2によって予熱して、焼成流動床本体5-3からの焼成ガスとともに気相加水分解流動床本体4-4に送入して粉末材料の流動を維持しながら三塩化酸化バナジウムを加水分解し、五酸化二バナジウム粉末及び塩化水素を豊富に含有した加水分解ガスを形成し、五酸化二バナジウム粉末を加水分解床排出装置4-6によって排出して焼成流動床本体5-3に送入し、加水分解ガスを気相加水分解流動床本体4-4の拡張段によって粉塵除去して、塩酸排ガス吸収器4-5に送入して吸収処理して塩酸溶液副製品を生成し、吸収排ガスを排ガス浸出吸収器6に送入して処理する工程と、
圧縮空気を順次に焼成床空気浄化器5-1によって浄化し焼成床ガス加熱器5-2によって予熱して焼成流動床本体5-3内に送入し五酸化二バナジウム粉末の流動を維持しながら水分及び微量の揮発性不純物を除去し、高純度の五酸化二バナジウム粉末及び焼成ガスを得て、高純度の五酸化二バナジウム製品を排出して高純度製品収容室に送入し、焼成ガスを拡張段によって粉塵除去して気相加水分解流動床本体4-4に送入して三塩化酸化バナジウムの流動気相加水分解の熱供給と流動に用い、排ガス浸出吸収器6がアルカリ溶液により吸収処理して排出したガスを誘引ファン7によって煙突8に送入して排出する工程と、を含む。
【0024】
本実施例は、粉状の工業グレードの五酸化二バナジウムを原料とし、化学組成が表1に示され、処理量が80kg/hで、低温塩素化、三塩化酸化バナジウム精留、気相加水分解、焼成によって高純度の五酸化二バナジウム製品を製造する。
【0026】
塩素化流動床本体2-2内において、低温塩素化する工程では、炭素粉の添加量が工業グレードの五酸化二バナジウム粉末の質量の10%、塩素化する操作温度が500℃、粉体の平均滞留時間が30分であり、精留塔3-2内において、精留操作を行う工程では、精留段のプレート数が5個、回収段のプレート数が10個、還流比が40であり、気相加水分解流動床本体4-4内において、気相加水分解する工程では、注入される水蒸気と三塩化酸化バナジウムの質量比が1.2、気相加水分解の操作温度が600℃であり、焼成流動床本体5-3内において、焼成の操作温度が400℃、粉体の平均滞留時間が240分の操作条件において、バナジウムの直収率が83%、高純度の五酸化二バナジウム製品の純度が99.995wt%(4N5)と高い。
【0027】
塩素化流動床本体2-2内において、低温塩素化する工程では、炭素粉の添加量が工業グレードの五酸化二バナジウム粉末の質量の20%、塩素化する操作温度が300℃、粉体の平均滞留時間が80分であり、精留塔3-2内において、精留操作を行う工程では、精留段のプレート数が10個、回収段のプレート数が20個、還流比が15であり、気相加水分解流動床本体4-4内において、気相加水分解する工程では、注入される水蒸気と三塩化酸化バナジウムの質量比が2.0、気相加水分解の操作温度が160℃であり、焼成流動床本体5-3内において、焼成の操作温度が620℃、粉体の平均滞留時間が30分の操作条件において、バナジウムの直収率が85%、高純度の五酸化二バナジウム製品の純度が99.999wt%(5N)と高い。
【0028】
本発明は、本分野の公知技術の一部の詳細説明を省略している。
明らかなように、本発明はさらに様々な実施例を有してもよく、当業者は本発明の精神及びその趣旨を逸脱せずに本発明の開示に基づき種々の変更や変形を行うことができ、これらの変更や変形はいずれも本発明の特許請求の範囲に属する。