(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0016】
図1および2は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、以下の3つの工程を少なくとも備えている。
(A)回路形成面を有する半導体ウェハと、上記半導体ウェハの上記回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルム100と、を備える構造体を準備する工程。
(B)上記半導体ウェハの上記回路形成面側とは反対側の面をバックグラインドする工程。
(C)粘着性フィルム100に紫外線を照射した後に上記半導体ウェハから粘着性フィルム100を除去する工程。
そして、粘着性フィルム100として、基材層10と、帯電防止層30と、導電性添加剤を含む粘着性樹脂層40と、をこの順番に備え、粘着性樹脂層40が上記半導体ウェハの上記回路形成面側となるように用いる粘着性フィルムを使用する。
【0017】
1.粘着性フィルム
はじめに、本実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる粘着性フィルム100について説明する。
【0018】
上述したように、近年、半導体ウェハ加工用粘着性フィルムの静電気対策という観点について要求される技術水準は、ますます高くなっている。特に、高密度の回路を配した半導体ウェハの高密度回路上にはんだバンプや銅ピラーバンプ等のバンプ電極が形成された半導体ウェハを用いる場合は、静電気が原因で半導体ウェハに形成したバンプ電極を含む回路の破壊(ショート)が起きやすくなってきている傾向にあるため、このような要求がより顕著になっている。
このため、帯電防止性により優れた半導体ウェハ加工用粘着性フィルムを実現することが求められていた。
【0019】
ここで、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されているような、基材フィルムと帯電防止層と粘着剤層とがこの順番に積層された粘着性フィルムにおいて、帯電防止性が十分に満足するものではないことが明らかになった。
より具体的には、特許文献1に記載されているような粘着性フィルムは、紫外線硬化後に粘着剤層の飽和帯電圧が大幅に増加し、帯電防止性が大きく悪化してしまうことが明らかになった。
【0020】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、粘着性フィルムの層構成を、基材層と、帯電防止層と、導電性添加剤を含む粘着性樹脂層と、をこの順番に備える層構成とすることにより、紫外線硬化後の粘着性フィルムの飽和帯電圧の上昇を抑制できることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態に係る粘着性フィルム100は、上記層構成とすることで、紫外線硬化後の帯電防止性に優れ、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量を抑制でき、品質に優れた半導体部品を安定的に得ることができる。
【0021】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、下記の方法で測定される、紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の飽和帯電圧V
1が好ましくは1.0kV以下であり、より好ましくは0.5kV以下である。
(方法)
粘着性樹脂層40に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm
2で紫外線量1080mJ/cm
2照射して粘着性樹脂層40を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で粘着性樹脂層40の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて粘着性樹脂層40の表面の飽和帯電圧(V
1)を算出する。
【0022】
紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の飽和帯電圧V
1を上記上限値以下とすることにより、半導体ウェハ表面への帯電防止性をより一層良好なものとすることができる。
紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の飽和帯電圧V
1の下限値は、例えば、0.01kV以上であり、好ましくは0kVである。
【0023】
本実施形態において、例えば、粘着性樹脂層40を構成する各成分の種類や配合割合、粘着性樹脂層40の厚み等を適切に調節することにより、紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の飽和帯電圧V
1を上記上限値以下に制御することが可能である。
これらの中でも、例えば粘着性樹脂層40中の導電性添加剤の有無や、粘着性樹脂層40の厚み等が、紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の飽和帯電圧V
1を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
例えば、粘着性樹脂層40中の導電性添加剤の含有量を増やしたり、粘着性樹脂層40の厚みを薄くしたりすると、飽和帯電圧V
1を低下させることができる。
【0024】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、下記の方法で測定される、紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の表面の飽和帯電圧をV
2としたとき、V
1/V
2が好ましくは5.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。V
1/V
2が上記上限値以下であると、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量をより安定的に抑制でき、品質に優れた半導体部品をより安定的に得ることができる。
(方法)
粘着性樹脂層40に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm
2で紫外線量200mJ/cm
2照射して粘着性樹脂層40を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で粘着性樹脂層40の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて粘着性樹脂層40の表面の飽和帯電圧(V
2)を算出する。
【0025】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の飽和帯電圧V
1の半減期が、好ましくは20秒以下であり、より好ましくは10秒以下であり、さらに好ましくは5秒以下であり、特に好ましくは1秒以下である。
ここで、飽和帯電圧V
1の半減期とは、飽和帯電圧V
1の測定において、粘着性樹脂層40の表面への電圧の印加を終了してから帯電圧の値が半分に低下するまでの時間をいう。
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の飽和帯電圧V
1が上記上限値以下であるため、このような短い半減期を実現でき、帯電防止性に優れた粘着性フィルム100とすることができる。
【0026】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、下記の方法で測定される、紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の表面のタック力が0.1N/cm
2以下であることが好ましく、0.05N/cm
2以下であることがより好ましく、0.01N/cm
2以下であることがさらに好ましい。
紫外線硬化後の粘着性樹脂層40の表面のタック力が上記上限値以下であることにより、半導体ウェハ表面から粘着性フィルム100を剥離することがより容易になり、半導体ウェハ表面へ粘着性樹脂層40の一部が残ってしまうことや、粘着性フィルム100の剥離により半導体ウェハに不具合が発生してしまうこと等をより一層抑制することができる。
(方法)
粘着性フィルム100の粘着性樹脂層40をポリイミドフィルム(例えば、製品名:カプトン200H、東レ・デュポン社製)に貼合し、25℃の環境下で粘着性フィルム100の基材層10側から高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm
2で紫外線量1080mJ/cm
2照射して粘着性樹脂層40を光硬化させる。次いで、ポリイミドフィルムを粘着性フィルム100から剥離し、測定装置としてプローブタックテスター(例えば、「TESTING MACHINES Inc.社製プローブタックテスター:モデル80−02−01」)を用いて、直径5mmのプローブと粘着性樹脂層40の表面とを10mm/秒の速度で接触させ、0.98N/cm
2の接触荷重で10秒間接触させた後、10mm/秒の速度で上記プローブを粘着性樹脂層40の表面から垂直方向に剥離する方法で粘着性樹脂層40の表面のタック力を測定する。
【0027】
本実施形態に係る粘着性フィルム100全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは25μm以上1000μm以下であり、より好ましくは50μm以上600μm以下である。
【0028】
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、半導体装置の製造工程において、半導体ウェハの回路形成面を保護するために用いられ、より具体的には半導体装置の製造工程の一つであるバックグラインド工程において半導体ウェハの回路形成面(すなわち回路パターンを含む回路面)を保護するために使用するバックグラインドテープとして用いられる。
ここで、貼り付ける対象の半導体ウェハが表面にバンプ電極を含む微細配線の回路が施された半導体ウェハの場合、半導体ウェハから粘着性フィルムを剥離する際に発生する静電気が原因で半導体ウェハに形成した回路が破壊されるという静電破壊等が起きやすいが、本実施形態に係る粘着性フィルム100を用いることによって、このような表面にバンプ電極が形成された半導体ウェハに対しても静電破壊等をより確実に抑制することが可能となる。
【0029】
本実施形態に係る粘着性フィルム100を適用できる半導体ウェハとしては特に限定されず、シリコンウェハ等が挙げられる。
【0030】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム100を構成する各層について説明する。
【0031】
(基材層)
基材層10は、粘着性フィルム100の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は、半導体ウェハを加工する際に加わる外力に耐えうる機械的強度があれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、半導体ウェハ保護の観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0032】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層10の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0033】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは25μm以上150μm以下である。
基材層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0034】
(粘着性樹脂層)
本実施形態に係る粘着性フィルム100は粘着性樹脂層40を備えている。
粘着性樹脂層40は粘着性フィルム100を半導体ウェハに貼り付ける際に、半導体ウェハの表面に接触して粘着する層である。
【0035】
粘着性樹脂層40は、紫外線硬化型粘着性樹脂を含む紫外線硬化型粘着剤により形成された層であることが好ましい。
紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル系粘着剤は、紫外線硬化型粘着性樹脂として(メタ)アクリル系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。シリコーン系粘着剤は、紫外線硬化型粘着性樹脂としてシリコーン系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。ウレタン系粘着剤は、紫外線硬化型粘着性樹脂としてウレタン系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。
これらの中でも粘着力の調整を容易にする観点等から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル系粘着剤としては、分子中に重合性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系粘着性樹脂と、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物と、光開始剤を含み、必要に応じて架橋剤により上記(メタ)アクリル系粘着性樹脂を架橋させて得られる粘着剤を例示することができる。
【0037】
分子中に重合性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、具体的には次のようにして得られる。まず、エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーを共重合させる。次いで、この共重合体に含まれる官能基(P)と、該官能基(P)と付加反応、縮合反応等を起こしうる官能基(Q)を有するモノマーとを、該モノマー中の二重結合を残したまま反応させ、共重合体分子中に重合性炭素−炭素二重結合を導入する。
【0038】
上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー、酢酸ビニルの如きビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等のエチレン性二重結合を有するモノマーの中から、1種又は2種以上が用いられる。
【0039】
上記官能基(P)を有する共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。上記エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーの割合は、前者70〜99質量%に対し、後者30〜1質量%が好ましい。さらに好ましくは、前者80〜95質量%に対し、後者20〜5質量%である。
上記官能基(Q)を有するモノマーとしては、例えば、上記官能基(P)を有する共重合性モノマーと同様のモノマーを挙げることができる。
【0040】
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーとの共重合体に、重合性炭素−炭素二重結合を導入する際に反応させる官能基(P)と官能基(Q)の組み合わせとして、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基等、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。又、付加反応に限らずカルボン酸基と水酸基との縮合反応等、重合性炭素−炭素二重結合が容易に導入できる反応であれば如何なる反応を用いてもよい。
【0041】
分子中に重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。分子中に重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物の添加量は、上記(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは5〜18質量部である。
【0042】
光開始剤としては、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いてもよい。光開始剤の添加量は、上記(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部であり、より好ましくは5〜10質量部である。
【0043】
上記紫外線硬化型粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。上記紫外線硬化型粘着剤は、溶剤タイプ、エマルションタイプ、ホットメルトタイプ等の何れでもよい。
【0044】
架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数が(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
(メタ)アクリル系粘着剤中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層40の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る粘着性樹脂層40は導電性添加剤を含む。これにより、粘着性樹脂層40の帯電防止性を向上させることができる。さらに、紫外線硬化後の粘着性フィルム100の飽和帯電圧の上昇を抑制することができる。
導電性添加剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、イオン液体等が挙げられる。粘着性樹脂層40の帯電防止性をより向上できる観点からカチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種が好ましく、カチオン性界面活性剤がより好ましい。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、ジバルミチルベンジルメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルベンジルメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては第4級アンモニウム塩またはアミン塩型を挙げることができ、第4級アンモニウム塩が好ましい。
中でも、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、およびステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドから選択される少なくとも一種が好ましい。これらの中でも、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
【0047】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩等);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルスルホコハク酸ジナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩;スルホン酸塩または硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素(不飽和)二重結合とを分子中に有する界面活性剤等が挙げられる。
【0048】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物等のポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物等が挙げられる。
【0049】
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0050】
これらの導電性添加剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粘着性樹脂層40中の導電性添加剤の含有量は、紫外線硬化型粘着性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。
【0051】
粘着性樹脂層40は、例えば、帯電防止層30上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80〜170℃において、15秒〜5分間乾燥する。架橋剤と(メタ)アクリル系粘着性樹脂との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0052】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層40の厚みは通常5μm以上550μm以下であり、好ましくは10μm以上400μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上300μm以下、特に好ましくは50μm以上250μm以下である。粘着性樹脂層40の厚みが上記範囲内であると、半導体ウェハ表面への粘着性と、取扱い性とのバランスが良好である。
また、本実施形態に係る粘着性フィルム100が後述の凹凸吸収性樹脂層20をさらに備える場合、粘着性樹脂層40の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm未満であることがさらに好ましく、25μm以下であることがよりさらに好ましく、20μm未満であることがよりさらに好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。これにより、粘着性樹脂層40の表面と帯電防止層30との距離を小さくすることができ、その結果、粘着性フィルム100の帯電防止性をより良好にすることができる。また、本実施形態に係る粘着性フィルム100が後述の凹凸吸収性樹脂層20をさらに備える場合、粘着性樹脂層40の厚みの下限値は特に限定されないが、粘着力を良好にする観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましく、5.0μm以上が特に好ましい。
【0053】
(帯電防止層)
本実施形態に係る粘着性フィルム100は帯電防止層30を備えている。これにより、粘着性フィルム100の粘着性を維持したまま、粘着性フィルム100の帯電防止性を向上でき、半導体ウェハから粘着性フィルム100を剥離する際に発生する静電気の量を抑制することができる。
【0054】
帯電防止層30を構成する材料は、帯電防止層30の表面抵抗値を低下させて剥離に伴う静電気の発生を抑制する観点から、導電性高分子を含むことが好ましい。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリピロール系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリ(p−フェニレンビニレン)系導電性高分子、ポリキノキサリン系導電性高分子等が挙げられる。
光学特性や外観、帯電防止性、塗工性、安定性等のバランスが良好であるという観点からポリチオフェン系導電性高分子が好ましい。ポリチオフェン系導電性高分子としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチオフェンが挙げられる。
これらの導電性高分子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
帯電防止層30を形成する材料は、例えば、ドーピング剤、バインダー樹脂等をさらに含むことができる。
ドーピング剤は、ドーパントとして機能して、導電性高分子に導電性をより確実に付与(ドーピング)するものであって、例えば、スルホン酸系化合物が挙げられる。
【0056】
スルホン酸系化合物は、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等が挙げられる。導電性高分子の溶解性や水分散性を向上させる観点から、ポリスチレンスルホン酸やポリビニルスルホン酸が好ましい。
スルホン酸系化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
このようドーピング剤を添加することにより、導電性高分子とスルホン酸系化合物とが一部反応してスルホン酸塩を形成し、このスルホン酸塩の作用により帯電防止層30の帯電防止機能がより一層向上する。
ドーピング剤の配合割合は、導電性高分子100質量部に対して、例えば、100〜300質量部である。
導電性高分子とドーピング剤との組み合わせとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との組み合わせが帯電防止性により優れるため好ましい。
【0058】
帯電防止層30を構成する材料は、皮膜形成性や密着性等を向上させる観点から、バインダー樹脂をさらに含んでもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
バインダー樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。バインダー樹脂の含有量は、例えば、導電性高分子100質量部に対して10〜500質量部である。
【0059】
帯電防止層30の厚みは、帯電防止性能の観点から、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.01μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。
【0060】
(凹凸吸収性樹脂層)
図2に示すように、本実施形態に係る粘着性フィルム100は、基材層10と帯電防止層30との間に凹凸吸収性樹脂層20をさらに備えることが好ましい。
これにより、粘着性フィルム100の凹凸吸収性を良好にしつつ粘着性樹脂層40の厚みを薄くすることが可能となり、粘着性樹脂層40の表面と帯電防止層30との距離を小さくすることができ、その結果、粘着性フィルム100の帯電防止性をより良好にすることができる。
【0061】
凹凸吸収性樹脂層20の密度は、機械的強度と凹凸追従性とのバランスの観点から、800〜990kg/m
3が好ましく、830〜980kg/m
3がより好ましく、850〜970kg/m
3がさらに好ましい。
【0062】
凹凸吸収性樹脂層20を構成する樹脂は、凹凸吸収性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。
より具体的には、オレフィン系樹脂、エチレン・極性モノマー共重合体、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、オレフィン系樹脂およびエチレン・極性モノマー共重合体から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0063】
オレフィン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよび炭素数3〜12のα−オレフィンとを含むエチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンとを含むプロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・環状オレフィン共重合体等が挙げられる。
エチレン・極性モノマー共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体等が挙げられる。
凹凸吸収性樹脂層20を構成する樹脂は単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0064】
エチレン・α−オレフィン共重合体における炭素原子数3〜12のα−オレフィンは、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン等である。
【0065】
これらの中でも、貼り付け時の凹凸追従性に優れる点で、低密度ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・炭素原子数4〜12のα−オレフィンの三元共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;プロピレン・1−ブテン・炭素原子数5〜12のα−オレフィンの三元共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体等から選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン・プロピレン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0066】
凹凸吸収性樹脂層20の厚みは、半導体ウェハの凹凸形成面の凹凸を埋め込むことができる厚みであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上400μm以下であることがより好ましく、30μm以上300μm以下であることがさらに好ましく、50μm以上250μm以下であることが特に好ましい。
【0067】
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、各層の間に接着層(図示せず)を設けていてもよい。この接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る粘着性フィルム100は、離型フィルムをさらに積層させてもよい。
【0068】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム100の製造方法の一例を説明する。
【0069】
まず、基材層10の一方の面に凹凸吸収性樹脂層20を押出しラミネート法によって形成する。次いで、別途用意した離型フィルム上に所定の導電性材料を塗布し乾燥させることによって、帯電防止層30を形成し、この帯電防止層30を凹凸吸収性樹脂層20上に積層する。次いで、帯電防止層30上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって、粘着性樹脂層40を形成し、粘着性フィルム100が得られる。
また、基材層10と凹凸吸収性樹脂層20とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の凹凸吸収性樹脂層20とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0070】
2.半導体装置の製造方法
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程について説明する。
【0071】
(工程(A))
はじめに、回路形成面を有する半導体ウェハと、半導体ウェハの回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルム100と、を備える構造体を準備する。
このような構造体は、例えば、粘着性フィルム100の粘着性樹脂層40から離型フィルムを剥離し、粘着性樹脂層40の表面を露出させ、その粘着性樹脂層40上に、半導体ウェハの回路形成面を貼り付けることにより作製することができる。
【0072】
ここで、粘着性フィルム100に半導体ウェハの回路形成面を貼り付ける際の条件は特に限定されないが、例えば、温度は30〜80℃、圧力は0.05〜0.5MPaとすることができる。
【0073】
工程(A)は、半導体ウェハの回路形成面に粘着性フィルム100を加温して貼り付けることにより構造体を作製する工程(A2)をさらに含むことが好ましい。これにより、粘着性樹脂層40と半導体ウェハとの接着状態を長時間にわたって良好にすることができる。加温温度としては特に限定されないが、例えば、60〜80℃である。
【0074】
粘着性フィルム100を半導体ウェハに貼着する操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行うことができる。
【0075】
回路形成面を有する半導体ウェハとしては特に限定されないが、例えば、表面に配線、キャパシタ、ダイオードまたはトランジスタ等の回路が形成されたシリコンウェハ、シリコンカーバイドウェハ、化合物半導体ウェハ、サファイアウェハ等が挙げられる。
【0076】
(工程(B))
次に、上記半導体ウェハの上記回路形成面側とは反対側の面(以下、裏面とも呼ぶ。)をバックグラインドする。
ここで、バックグラインドするとは、半導体ウェハを割ったり、破損したりすることなく、所定の厚みまで薄化加工することを意味する。
例えば、研削機のチャックテーブル等に上記構造体を固定し、半導体ウェハの裏面(回路非形成面)を研削する。
【0077】
このような裏面研削操作において、半導体ウェハは、研削前の厚みが、通常500〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常100〜600μm程度まで研削される。必要に応じて、100μmより薄く削ることもある。研削する前の半導体ウェハの厚みは、半導体ウェハの直径、種類等により適宜決められ、研削後のウェハの厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。
【0078】
裏面研削方式としては、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。それぞれ研削は、水を半導体ウェハと砥石にかけて冷却しながら行われる。
裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、弗化水素酸、硝酸、硫酸、酢酸等の単独若しくは混合液からなる酸性水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着性フィルム100を貼着した状態で半導体ウェハを浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、半導体ウェハ裏面に生じた歪みの除去、ウェハのさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。
【0079】
(工程(C))
次いで、粘着性フィルム100に紫外線を照射した後に上記半導体ウェハから粘着性フィルム100を除去する。
粘着性フィルム100に紫外線を照射することによって、粘着性樹脂層40が光硬化して粘着性樹脂層40の粘着力が低下する。これにより、半導体ウェハから粘着性フィルム100を剥離することができる。
紫外線は、例えば、粘着性フィルム100の基材層10側から照射される。
【0080】
粘着性フィルム100に対して照射する紫外線の線量は、300mJ/cm
2以上が好ましく、350mJ/cm
2以上がより好ましく、500mJ/cm
2以上がさらに好ましい。
紫外線の線量が上記下限値以上であると、粘着性樹脂層40の粘着力を十分に低下させることができ、その結果、半導体ウェハの回路形成面に糊残りが発生することをより抑制することができる。
また、粘着性フィルム100に対して照射する紫外線の線量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、1500mJ/cm
2以下であり、好ましくは1200mJ/cm
2以下である。
【0081】
粘着性フィルム100に紫外線を照射し、粘着性樹脂層40の粘着力を低下させた後に、粘着性フィルム100を半導体ウェハから剥離する。
半導体ウェハの裏面の研削が完了した後、粘着性フィルム100を剥離する前にケミカルエッチング工程を経ることもある。また、必要に応じて粘着性フィルム100の剥離後に、半導体ウェハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の処理が施される。
【0082】
粘着性フィルム100の剥離は手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置によって行うことができる。
【0083】
粘着性フィルム100を剥離した後の半導体ウェハ表面は、必要に応じて洗浄される。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、半導体ウェハ表面の汚染状況により適宜選択される。
【0084】
(その他の工程)
工程(A)〜工程(C)を行った後、半導体ウェハをダイシングして個片化し、半導体チップを得る工程や、得られた半導体チップを回路基板に実装する工程等をさらに行ってもよい。これらの工程は、公知の情報に基づいておこなうことができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
粘着性フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0088】
<基材層>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)
【0089】
<凹凸吸収性樹脂層形成用の樹脂>
凹凸吸収性樹脂1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(密度:960kg/m
3、三井デュポンポリケミカル社製「エバフレックスEV150」)
【0090】
<帯電防止層形成用の材料>
帯電防止層形成用材料1:ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を含む導電性材料(ナガセケムテックス社製、商品名:デナトロンP−504CT)
【0091】
<導電性添加剤>
導電性添加剤1:テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(日油社製、商品名:ニッサンカチオンM
2−100)
【0092】
<光開始剤>
光開始剤1:ベンジルジメチルケタール(BASF社製、商品名:イルガキュア651)
【0093】
<粘着性樹脂層用塗布液1>
アクリル酸n−ブチル77質量部、メタクリル酸メチル16質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル16質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合した。これを、トルエン20質量部、酢酸エチル80質量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら85℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにトルエン10質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製、製品名:カレンズMOI)7質量部、およびジラウリル酸ジブチル錫0.02質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で12時間反応させ、重合性炭素−炭素二重結合が導入された粘着剤ポリマー1溶液を得た。
この溶液に、共重合体(固形分)100質量部に対して光開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF(株)製、イルガキュア651)7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)2質量部、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−400)12質量部、導電性添加剤1:テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(日油(株)製、ニッサンカチオンM
2−100)0.5質量部を添加し、粘着性樹脂層用塗布液1を得た。
【0094】
<粘着性樹脂層用塗布液2>
導電性添加剤1を添加しない以外は粘着性樹脂層用塗布液1と同様にして粘着性樹脂層用塗布液2を得た。
【0095】
<粘着性樹脂層用塗布液3>
アクリル酸エチル48質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル27質量部、アクリル酸メチル20質量部、メタクリル酸グリシジル5質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合した。これを、トルエン65質量部、酢酸エチル50質量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにキシレン25質量部、アクリル酸2.5質量部、および導電性添加剤1:テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.5質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で32時間反応させ、重合性炭素−炭素二重結合が導入された粘着剤ポリマー3溶液を得た。
この溶液に、共重合体(固形分)100質量部に対して光開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF(株)製、イルガキュア651)7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)2質量部、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−400)12質量部を添加し、粘着性樹脂層用塗布液3を得た。
【0096】
[実施例1]
基材層となるポリエチレンテレフタレートフィルム上に、凹凸吸収性樹脂層となる凹凸吸収性樹脂1を厚さ195μmで押出しラミネートして2層の積層フィルムを得た。
次いで、別途用意した離型フィルム上に帯電防止層形成用材料1を塗布し乾燥させることによって、帯電防止膜を形成し、この帯電防止膜を凹凸吸収性樹脂層上に積層することにより、厚さ0.1μmの帯電防止層を形成した。
次いで、得られた積層フィルムの帯電防止層上に、粘着性樹脂層用塗布液1を塗布した後、乾燥させて、厚み40μmの粘着性樹脂層を形成し、粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0097】
[実施例2および3、比較例1〜4]
帯電防止層の形成の有無、粘着性樹脂層の厚み、粘着性樹脂層用塗布液の種類等を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして粘着性フィルムをそれぞれ作製した。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
【0098】
<評価>
(1)飽和帯電圧の測定
粘着性フィルム中の粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製UVX−02528S1AJA02)を用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm
2で紫外線量1080mJ/cm
2照射して粘着性樹脂層を光硬化させた。次いで、測定装置としてシシド静電気社製スタティックオネストメーターH−0110−S4を用いて、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で粘着性樹脂層の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧(V
1)および飽和帯電圧V
1の半減期をそれぞれ算出した。
また、紫外線量を200〜540mJ/cm
2に変更する以外は、上記飽和帯電圧(V
1)の測定と同じ手順で、粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧および飽和帯電圧の半減期をそれぞれ測定した。
【0099】
(2)タック力の測定
粘着性フィルムの粘着性樹脂層をポリイミドフィルム(製品名:カプトン200H、東レ・デュポン社製)に貼合し、25℃の環境下で粘着性フィルムの基材層側から高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm
2で紫外線量1080mJ/cm
2照射して粘着性樹脂層を光硬化させた。次いで、ポリイミドフィルムを粘着性フィルムから剥離し、測定装置としてプローブタックテスター(「TESTING MACHINES Inc.社製プローブタックテスター:モデル80−02−01」)を用いて、直径5mmのプローブと粘着性樹脂層の表面とを10mm/秒の速度で接触させ、0.98N/cm
2の接触荷重で10秒間接触させた後、10mm/秒の速度でプローブを粘着性樹脂層の表面から垂直方向に剥離する方法で粘着性樹脂層の表面のタック力を測定した。
また、紫外線量を200〜540mJ/cm
2に変更する以外は、上記タック力の測定と同じ手順で、粘着性樹脂層の表面のタック力をそれぞれ測定した。
【0100】
(3)帯電防止性の評価
粘着性フィルムの帯電防止性は以下の基準で評価した。
◎:飽和帯電圧V
1が1.0kV以下であるもの
〇:飽和帯電圧V
1が1.0kV超過2.0kV以下であるもの
×:飽和帯電圧V
1が2.0kV超過のもの
【0101】
(4)半導体ウェハ表面への粘着性の評価
半導体ウェハ表面への粘着性は以下の基準で評価した。
〇:紫外線を照射しなかった粘着性樹脂層(すなわち、紫外線量が0mJ/cm
2のもの)のタック力が10N/cm
2以上
×:紫外線量を照射しなかった粘着性樹脂層のタック力が10N/cm
2未満
【0102】
(5)半導体ウェハ表面への耐汚染性の評価
半導体ウェハ表面への耐汚染性は以下の基準で評価した。
〇:紫外線量1080mJ/cm
2照射で光硬化させた粘着性樹脂層のタック力が0.1N/cm
2以下
×:紫外線量1080mJ/cm
2照射で光硬化させた粘着性樹脂層のタック力が0.1N/cm
2を超える
【0103】
(6)凹凸吸収性の評価
〇:バンプ電極を有する半導体ウェハのバンプ電極形成面に貼り付けた際に、バンプ電極が割れず、かつ、半導体ウェハとの密着性が良好なもの
×:バンプ電極を有する半導体ウェハのバンプ電極形成面に貼り付けた際に、バンプ電極が割れる、あるいは、半導体ウェハとの密着性が不良なもの
凹凸吸収性の評価にはバンプ高さ80μm、バンプピッチ300μm、バンプ径150μmのバンプを配したバンプ付き半導体ウェハを用い、粘着フィルムの貼り付けは、ロールラミネーター(製品名:DR3000II 日東精機社製)を用いて、ロール速度:2mm/秒、ロール圧力:0.4MPa、テーブル温度:80℃の条件で行い、貼付後の凹凸吸収性を光学顕微鏡を用いて評価した。
【0104】
【表1】
【0105】
基材層と、帯電防止層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備え、粘着性樹脂層が導電性添加剤を含む実施例1〜3の粘着性フィルムは半導体ウェハ表面への粘着性と耐汚染性とのバランスに優れるとともに帯電防止性にも優れていた。すなわち、本実施形態に係る粘着性フィルム100によれば、紫外線硬化後の帯電防止性に優れ、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量を抑制でき、品質に優れた半導体部品を安定的に得ることができることが理解できる。
これに対し、粘着性樹脂層が導電性添加剤を含まない比較例1〜3の粘着性フィルムや、帯電防止層を備えない比較例3および4の粘着性フィルムは帯電防止性に劣っていた。
【0106】
この出願は、2016年7月26日に出願された日本出願特願2016−146134号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。