(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被服用生地は、撥水または疎水領域(A)と親水領域(B)が被服用生地を占める面積比がA:B=1:99〜90:10である請求項1又は2に記載の被服用生地。
前記撥水または疎水領域には撥水性繊維糸及び疎水性繊維糸から選ばれる少なくとも一つの繊維糸が配置され、前記親水領域には親水性繊維糸が配置されている請求項1〜3のいずれかに記載の被服用生地。
前記被服用生地は、撥水性繊維糸及び疎水性繊維糸から選ばれる少なくとも一つの繊維糸(I)と、親水性繊維糸(II)の割合が、被服用生地を100質量%としたとき、I:II=1:99〜90:10である請求項4に記載の被服用生地。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、生地の厚み方向に貫通した貫通孔を有し、前記貫通孔は前記生地の一方向に配列している被服用生地である。一方向とは、生地のタテ、ヨコ、斜めのいずれでもよいが、タテ又はヨコに配列しているのが好ましい。被服にしたときに貫通孔はタテに配列させるのが好ましいからである。ヨコ、斜めに配列した場合でも、一定間隔ごとにタテ方向に貫通孔が出現すると本発明の性能は確保できる。この生地は織物、編物等いかなる生地であってもよい。貫通孔に接する少なくとも一部には撥水または疎水領域が配置され、他の部分には親水領域が配置されている。前記において、「貫通孔に接する少なくとも一部」とは、10%以上をいい、好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。この構造により、貫通孔付近から親水領域に水分が移動しやすい状態になり、貫通孔付近の水の膜は形成されなくなる。この結果、前記被服用生地は、発汗により濡れた状態においても貫通孔の通気性が確保され、有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服を提供できる。貫通孔の平面形状は、丸、楕円、四角、ひし形、三角、多角形、不定形のどのような形状でも良い。
【0011】
本発明の生地は、貫通孔の一部には撥水または疎水領域が配置されることにより、貫通孔の毛細管現象より表面張力が大きくなる。これにより、生地表面の水分が移動しやすい状態になり、貫通孔に水の膜ができなくなる。また、貫通孔に水分が充填されたとしても、ある部分は親水領域、その他の部分は撥水または疎水領域のため、表面張力が異なるので、貫通孔にある水の力がかかるバランスが均等ではないため、貫通孔に水の膜ができなくなる。撥水もしくは疎水領域を貫通孔の周囲、少なくとも貫通孔の一部に接するように配置するのが好ましい。生地の一部には、体表面から排出された汗を吸収できるように親水領域を配置されている。親水領域は少なくとも10%以上配置されることが好ましい。撥水または疎水領域は、撥水または疎水状態の糸を編織して構成、撥水または疎水状態の樹脂を生地に塗布して構成することができる。親水領域は、親水状態の糸を編織して構成、親水状態の樹脂を生地に塗布して構成することができる。
【0012】
本発明の生地は、貫通孔の一部には撥水または疎水状態の糸が配置されることにより、貫通孔の毛細管現象より表面張力が大きくなる。生地表面の水分が移動しやすい状態になり、貫通孔に水の膜ができなくなる。撥水もしくは疎水性の糸を貫通孔の周囲、少なくとも貫通孔の一部に接するように配置するのが好ましい。生地の一部には、体表面から排出された汗を吸収できるように親水状態の糸を配置されている。親水性の糸は少なくとも10%以上配置されることが好ましい。
【0013】
生地を地面に対して垂直方向に設置した際、垂直方向に水が流れやすいラインを設けてもよい。垂直方向のラインは、糸密度の疎密、もしくは撥水または疎水領域を連続にすることで形成される。糸密度の疎密を構成するには、生地の度目、糸の撚り数、捲縮率、編み方、エンボス加工などの手法が用いられる。撥水または疎水領域の連続を構成するには、撥水糸または疎水糸の連続した配置、例えば経編による撥水糸、または疎水糸の連続した糸が編み込まれた状態、もしくは撥水又は疎水プリント加工、例えば、ストライプ状などにプリント加工を行う状態などがある。ある一定の長さのラインが規則的に繰り返し出現してもよいラインは直線だけでなく、波型の曲線でも良い。
【0014】
本発明において、撥水性繊維糸及び疎水性繊維糸から選ばれる少なくとも一つの繊維糸(I)は、例えばポリプロピレン繊維糸、ポリエチレン繊維糸、ポリエステル(PET等)糸の疎水性繊維糸、有機繊維糸(例えば前記疎水性繊維糸)を撥水加工した糸、生地状態でプリント撥水加工した糸部分を含む。親水性繊維糸(II)は、コットン紡績糸、レーヨン等のセルロース繊維紡績糸、高架橋ポリアクリレート系繊維紡績糸、これらの繊維とポリエステル(PET等)繊維との混紡糸、これらの繊維とポリエステル(PET等)のマルチフィラメント糸との複合紡績糸(精紡交撚糸を含む)、ナイロン糸、親水加工したポリエステル(PET等)繊維糸等、生地状態でプリント親水加工した糸部分を含む。一例として、撥水性繊維糸及び疎水性繊維糸から選ばれる少なくとも一つの繊維糸(I)は貫通孔を構成する繊維として用い、親水性繊維糸(II)は地の部分に用いることもできる。
【0015】
親水性繊維糸を使用した部位は、滴下法評価(JIS L 1907 A法)において、180秒以内に吸水する事が望ましい。より好ましくは、60秒以内である。本発明の生地に、滴下法評価(JIS L 1907 A法)した際、撥水性繊維糸及び疎水性繊維糸を使用した部位より、親水性繊維糸を使用した部位の方が保水する事が好ましい。
【0016】
本発明の生地は、撥水または疎水領域(A)と親水領域(B)が被服用生地を占める面積比がA:B=1:99〜90:10であることが好ましく、さらに好ましくは2:98〜85:
15であり、とくに好ましくは2:98〜80:20である。ここで、撥水糸または疎水糸の連続した配置、例えば経編による撥水糸、または疎水糸の連続した糸が編み込まれた場合の撥水または疎水領域(A)の面積とは、デジタルマイクロスコープ(製品品番VH-Z25、キーエンス社製)を用いて測定した無負荷の生地の状態での糸の太さと、単位面積あたりの生地を構成している糸の本数を掛け合わせたものをいう。また、撥水または疎水領域を樹脂を塗布して撥水または疎水領域(A)を構成した場合は、単位面積あたりの樹脂の塗布面積をいう。撥水または疎水領域(A)以外を親水領域(B)とし、それをもとに撥水または疎水領域(A)と親水領域(B)の面積比を算出する。また、撥水性繊維糸及び疎水性繊維糸から選ばれる少なくとも一つの繊維糸(I)と、親水性繊維糸(II)の割合は、被服用生地を100質量%としたとき、A:B=1:99〜90:10が好ましく、さらに好ましくは2:98〜85:
15であり、とくに好ましくは2:98〜80:20である。これにより、さらに水分が移動しやすい状態になり、貫通孔付近の水の膜は形成されなくなる。
【0017】
好ましい態様として、本発明の被服用生地の生地重量100%に対して、300%の水分を湿潤させた状態で、前記貫通孔が垂直方向となるように吊り下げたとき、前記貫通孔は空隙を維持する。
【0018】
本発明の被服用生地は、一方向に配列されている貫通孔と同一方向に溝(ライン)が形成されていることが好ましい。これにより、発汗量が多くなった時には溝(ライン)から水が流れやすくなる。溝(ライン)方向は身丈方向とするのが好ましい。また溝幅は0.1〜30mmが好ましく、さらに好ましくは0.3〜20mmである。溝部(ライン)は、撥水性繊維糸及び疎水性繊維糸から選ばれる少なくとも一つの繊維糸(I)で構成される生地部分に形成するのが好ましい。水が流れやすくなるからである。前記溝部は、親水性繊維糸の編地部分は相対的に厚く、撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸の編地部分は相対的に薄く形成することにより、撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸の編地部分を溝部としてもよい。
【0019】
貫通孔の大きさは、タテ及びヨコ方向の長さでいずれも平均0.3mm以上25mm以下が好ましく、さらに好ましくは0.3〜20mmである。これにより、さらに有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服を提供できる。
【0020】
前記被服用生地の開口率は、1%以上50%以下が好ましく、さらに好ましくは2〜40%である。これにより、さらに有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服を提供できる。なお開口率とは、生地において、貫通孔の占める割合をいう。
【0021】
本発明の被服用生地に使用する繊維糸は、紡績糸、マルチフィラメント糸、マルチフィラメント糸を加工した捲縮糸等いかなるものも使用できる。捲縮糸を使用する場合は、捲縮率が異なる糸を上下に配置するのが好ましい。捲縮率が高いと保水量が大きくなり、捲縮率が低いと保水量が小さくなり、それらが上下方向に配置されることで、水の粒が大きくなり、水の粒の移動の加速を繰り返す事により、空隙が確保される。撚り糸を使用する場合は、撚数が100回/m以上異なる2種類以上の糸で構成することが好ましい。
【0022】
本発明の生地は、織物でも編物でもよい。織物としては、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等を基本とし、タテ又はヨコ、斜めの一方向に貫通孔を形成する。編物としては、丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編等を含み、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織等を基本とし、タテ又はヨコ、斜めの一方向に貫通孔を形成する。この中でも、編物であることが好ましい。編物であると、湿潤時に織目又は編目が平面方向に伸長し、通気性が高くなる。加えて、目付け(単位面積あたりの重量)も軽く、衣類の発汗の多い部分に使用するのに適している。編物としては、トリコット、ラッシェルなどの経編、緯編、丸編などのニット編物が好ましい。本発明において、生地の好ましい目付けは40g/m
2以上300g/m
2未満である。衣類の発汗の多い部分に使用するため、薄手生地が好ましい。本発明の生地は、ワンウエイ、ツーウエイでもよく、ポリウレタンなどの弾性糸を含んでもよい。
【0023】
本発明の被服は、前記生地を含み、前記生地部分は厚み方向に貫通した貫通孔が身丈、斜め方向に配列している。これにより汗の水分はタテ方向に流れやすく、貫通孔の通気性は確保される。この被服はスポーツ用被服とすることが好ましい。とくに発汗の多い暑い時期に使用するスポーツ用被服に好適である。前記生地は少なくとも人体の発汗の多い部分に配置して衣類とする。例えばスポーツシャツ、Tシャツ、インナーシャツ、トレーニング用ウォーマー、ブリーフ、一般のシャ
ツ等の全部に使用しても良いし、脇、背中等の一部に使用しても良い。
【0024】
以下、図面を用いて本発明の好適な一実施形態の被服用生地を説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1Aは従来衣服の通常状態における汗の移動を示す模式的説明図である。肌11から出た汗13a,13bは被服12aの空隙部から外気側に拡散する。14は空気の流れである。
図1Bは従来衣服の大量発汗状態における汗の移動を示す模式的説明図である。大量発汗状態においては、衣服の濡れは大きくなり、水の膜が発生し、被服12bの空隙部は無くなるか少なくなってしまい、汗13も空気14も肌11面に残存してしまい、無効発汗が増え、深部体温の上昇による運動パフォーマンスが低下し、不快感も高くなる。
【0025】
これに対して
図1Cは、本発明の一実施形態の衣服の大量発汗状態における汗の移動を示す模式的説明図である。大量発汗状態になり、衣服の濡れは大きくなっても、貫通孔の空隙は確保されるため、水の膜の形成を抑制し、生地12Cの通気性を確保し、肌11から出た汗13a,13bは被服12cの空隙部から外気側に拡散する。また、皮膚上の汗を常に身体表面上で気化することで、有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる。
【0026】
図2は本発明の一実施形態における被服用生地の平面写真(倍率2)、
図3Aは
図2を説明する平面図、
図3Bは同模式的断面図である。この生地1は厚み方向に貫通した貫通孔2を有し、この貫通孔2は生地1のタテ方向に配列している。貫通孔
2に接する少なくとも一部には撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸3が配置され、他の部分には親水性繊維糸4が配置されている。親水性繊維糸4の編地部分は厚く、撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸3の編地部分は薄いことからタテ方向に溝部(ライン)5を形成している。撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸3が配置されている部分は撥水又は疎水領域となり、親水性繊維糸4が配置されている部分は親水領域となる。
【0027】
図4Aは同、別の一実施形態における被服用生地の平面写真(倍率2)、
図4Bは同裏面写真(倍率2)、
図5Aは
図4Aを説明する図面、
図5Bは
図4Bを説明する図面である。この生地6は厚み方向に貫通した貫通孔2を有し、この貫通孔2は生地6のタテ方向に配列している。貫通孔
2に接する少なくとも一部には撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸3が配置され、他の部分には親水性繊維糸4が配置されている。
図6は同、さらに別の一実施形態における被服用生地の平面写真(倍率2)、
図7は
図6を説明する図面である。この生地7は厚み方向に貫通した貫通孔2を有し、この貫通孔2は生地7のタテ方向に配列している。貫通孔
2に接する少なくとも一部には撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸3が配置され、他の部分には親水性繊維糸4が配置されている。親水性繊維糸4の編地部分は厚く、撥水性繊維糸又は疎水性繊維糸3の編地部分は薄いことからタテ方向に溝部(ライン)5を形成している。
【実施例】
【0028】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0029】
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表1に示す内容の生地を作成した。撥水性糸又は疎水性糸Iで貫通孔を含む生地部分を形成し、他の部分は親水性糸IIで形成した。実施例1(開発品A)、実施例2(開発品B)、比較例1(比較品a)、比較例3(比較品c)および比較例4(比較品d)はシャツを対象とし、実施例3(開発品C)、実施例5(開発品E)及び比較例2(比較品b)はインナーシャツを対象としている。表1において、PETはポリエチレンテレフタレート繊維糸、PPはポリプロピレン繊維糸、PUはポリウレタン繊維糸のことである。また、Tはdicitex,fはフィラメント数、番手はメートル番手、SDはセミダルを示す。実施例1〜5の開発品A-Eの生地表面と裏面は、
図8に示すとおりである。実施例1,実施例2, 実施例3、実施例5および比較例4には、PET繊維糸の表面に撥水加工を施した撥水糸を用いた。また、実施例4には疎水性のPP繊維糸、親水性糸としてPET繊維と高架橋ポリアクリレート系繊維との混紡紡績糸を用いた。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例品1〜5、比較例品1〜2の開口率を測定した。開口率は下記の方法で測定した。
(1)生地の画像を印刷し、4点の貫通孔の中心を結んだ線分で形成された四角形の範囲を切り取る。
(2)切り取られた四角形の部分の紙重量W
1を測定する。
(3)切り取られた四角形部分に入っている貫通孔を切り取り、その紙重量W
2を測定する。
(4)開口率=(1−W
2/W
1)×100で算出する。
各生地の開口率を表2にまとめて示す。
【0032】
【表2】
【0033】
乾燥時及び湿潤時の通気抵抗を測定した。測定には通気抵抗試験機KES−F8(カトーテック社製)を用いた。この測定は、大気中へ空気を放出・吸引し、放出・吸引時の圧力を検知し、通気抵抗Rを算出することにより行った。
通気量:4cc/cm
2/sec.(通気量一定方式)
通気穴面積:2πcm
2
乾燥時の通気抵抗は、生地を乾燥させた状態で温度20℃、相対湿度65%R.H.の条件で測定した。
湿潤時の通気抵抗は生地質量100%に対して、300%の水分を湿潤させた状態で、空気の放出・吸引方向を地面と平行で測定した。温度と湿度は前記と同じである。測定方法は次のとおりである。
(1)生地が地面に対して垂直の状態となるようにした。
(2)水槽の中に浸漬させた試料を取り出し、試験機に生地を設置した。
(3)KESの試験マニュアルに準拠した方法で測定開始した。
各生地の通気抵抗値を表3にまとめて示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3から明らかなとおり、本実施例品は比較例品に比べて乾燥時も湿潤時も通気抵抗値が低く、とくに湿潤時の通気抵抗値は顕著に低いことがわかる。湿潤時の通気抵抗値は0.1kPa
・s/m
2 以下であると衣服内から衣服外に水分が抜ける体感が得られる。
【0036】
湿潤状態における外気への熱移動量の測定発汗時の衣服の放熱性測定を行った。恒温恒湿
槽:80℃、相対湿度:95%R.H.、使用機器:熱流センサZ(製品品番:2015TC、日置電機社製)とした。測定装置は
図9A-Cに示すとおりであり、測定方法は次のとおりである。
(1)カップの淵に試料を取り付け、その際に生地の裏側が恒温恒湿
槽側になるようにする。
(2)イオン交換水に1分以上試料を浸漬する。
(3)生地の経方向が垂直方向になるように水から試料を取り出し、恒温恒湿
槽の吹き出し口に5秒以内にセットする。
(4)水から試料を取り出してから5秒後に測定開始する。
(5)測定は計1分30秒で終了。
(6)解析は、測定開始から1〜15秒後の積分値を算出する。
各生地の熱流量値を表4(シャツ地)及び表5(インナーシャツ地)にまとめて示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
表4及び表5に示すように、実施例1−
5品(開発品A
〜E)は熱流量値が高く、その分着心地が良いことがわかる。
【0040】
次に、湿潤状態における外気への熱移動量の測定発汗時の衣服の放熱性測定を行った。使用機器は熱流センサZ(製品品番:2015TC、日置電機社製)とした。
(1)比較品と開発品を左右で切り替えた試料を作製し、
図10のように熱流センサを取り付ける。その際に熱流センサは、衣服との間に3mmの空間を設けるように設置し、衣服内から外部へ熱が移動する方向を+とする。
(2)環境温度28℃、80%RHに設定した環境試験室内で、速度5min/kmに設定したトレッドミル上で30分ランニングを実施。その際に、ランニングを想定し、前方から風速2.5m/sの風を当てる。
(3)解析は,測定開始から25〜30分の計5分間の熱移動量の積分値を算出する。
以上の結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
比較品の場合、被験者が汗をかいてウェアが濡れてしまうランニング開始から15〜20分を境に、熱が衣服内から外気へ移動しなくなり、値がマイナスを示すものもあった。これに対して、本実施例品(開発品)の場合、汗をかいてウェアが濡れてしまったとしても通気性を保つことで汗を蒸発させ、外部へ放熱することができるので、値は常にプラスを示した。
【0043】
次に、各生地を用いてシャツを縫製し、着用試験を行った。着用試験は、8月に関西エリアにて、開発品および比較品を着用し運動。大量発汗時の着心地を官能検査(SD法、両極尺度、5段階)で評価した。
・被験者は健常な20〜40代の日本人男性である。
・モニターは5min/km、30分のランニングで行った。
・評点は、普段の運動時の感覚を基準(ふつう)にして評価した。
・開発品より肌側に何も着用しなかった。
・評価は、(1)生地の湿潤面積(広いほど悪い)。(2)吸汗速乾。(3)べたつき感。(4)通気性、(5)汗をかくタイミング(早いほど悪い)。(6)着心地が良い。評価基準は、−2(悪い)、−1(やや悪い)、0(ふつう)、1(やや良い)、2(良い)とした。
図11及び
図12に本実施例、比較例のシャツの着用試験結果のグラフを示す。
図11及び
図12から、比較品よりも開発品の方が、発汗でウェアが濡れた時の通気性が良いことがわかり、本発明品のコンセプトが体感できていることが確認できた。
【課題】吸水性を有しながら、生地が湿潤時でも水の膜の形成を抑制し、生地の通気性を確保し、皮膚上の汗を常に身体表面上で気化することで、有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服を提供する。
【解決手段】生地の厚み方向に貫通した貫通孔2を有する被服用生地1であって、貫通孔2は前記生地の一方向に配列しており、貫通孔2に接する少なくとも一部には撥水または疎水領域(3)が配置され、他の部分には親水領域(4)が配置されている。撥水または疎水領域(3)の部分は溝部5となっていてもよい。本発明の被服は、前記の被服用生地を含み、前記生地部分は厚み方向に貫通した貫通孔が身丈方向に配列されている。