特許第6404510号(P6404510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6404510
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】熱感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/06 20060101AFI20181001BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G08B17/06 K
   G08B17/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-31901(P2018-31901)
(22)【出願日】2018年2月26日
【審査請求日】2018年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】上野 泰正
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】森岡 康真
【審査官】 白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−245110(JP,A)
【文献】 特開2014−199632(JP,A)
【文献】 特開2017−033608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00−17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側の空気流入口から他端側の空気流出口に亘る空気通路に熱検知素子を備えた熱感知器であって、
前記空気通路において流路断面積を絞って空気を通流させる絞り部を備え、
前記絞り部の直下流側の領域に前記熱検知素子が設けられており、
前記空気通路を規定する壁部に、前記熱検知素子及び前記絞り部の設置部位を開放する開放穴が形成されている熱感知器。
【請求項2】
前記絞り部と前記熱検知素子とが前記空気通路の横断方向において略中央部に設けられている請求項1に記載の熱感知器。
【請求項3】
感知器本体の前面に、当該前面から突出して設けられた前記熱検知素子の前方を覆う保護カバーが前記空気通路を規定する壁部として設けられていると共に、前記感知器本体の前面と前記保護カバーの後面との間の保護カバー内空間が、その左右両側部が上下に延びる左右夫々の側壁部の内面で規定されることで、下端側の空気流入口から上端側の空気流出口に亘って上下方向に延びる前記空気通路として形成されており、
前記開放穴は、前記保護カバーに形成されている請求項1又は2に記載の熱感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端側の空気流入口から他端側の空気流出口に亘る空気通路に熱検知素子を備えた熱感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
空気が通過する空間にサーミスタ等で構成された熱検知素子を備えた熱感知器が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。かかる熱感知器は、例えば、熱検知素子により警報レベル以上の熱を継続して検知した場合に、警報音等を出力して、利用者に対して火災の発生を報知する火災警報器等として構成されている。
【0003】
このような熱感知器では、例えば、感知器本体から前方に突出して設けられた熱検知素子を外部の衝撃等から保護する目的で、感知器本体の前面に沿って設けられて熱検知素子の前方を覆う保護カバーが設けられている。そして、その保護カバーの背面と感知器本体の前面との間に、空気が通過する保護カバー内空間が形成されており、その保護カバー内空間に、熱検知素子が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−199632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような熱感知器において、保護カバー内空間に流入した空気の温度変化状態を迅速且つ正確に検知することが望まれる。そのためには、保護カバー内空間に流入した空気をできるだけ放熱させることなく良好に熱検知素子に接触させる必要がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、一端側の空気流入口から他端側の空気流出口に亘る空気通路に熱検知素子を備えた熱感知器において、空気通路に流入した空気を適切に熱検知素子に接触させて、空気通路に流入した空気の温度変化状態を熱検知素子にて迅速且つ正確に検知することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、一端側の空気流入口から他端側の空気流出口に亘る空気通路に熱検知素子を備えた熱感知器であって、
前記空気通路において流路断面積を絞って空気を通流させる絞り部を備え、
前記絞り部の直下流側の領域に前記熱検知素子が設けられており、
前記空気通路を規定する壁部に、前記熱検知素子及び前記絞り部の設置部位を開放する開放穴が形成されている点にある。
【0008】
本構成によれば、空気流入口から空気通路に空気が流入すれば、空気通路において空気流入口から空気流出口に向けて空気の流れが生じる。このような空気の流れが空気通路に生じれば、その空気の流れが空気通路に設けられた絞り部を通過する際に流速が増加するので、高速の空気流がその直下流側の領域に設けられた熱検知素子に向けて形成される。よって、空気通路に流入した空気のできるだけ多くが熱検知素子に逐次接触することになって、当該空気の熱を積極的に熱検知素子に伝達させることができる。このことにより、熱検知素子において空気通路に流入する空気の温度変化状態を迅速且つ正確に検知することができる。
従って、本発明により、一端側の空気流入口から他端側の空気流出口に亘る空気通路に熱検知素子を備えた熱感知器において、空気通路に流入した空気を適切に熱検知素子に接触させて、空気通路に流入した空気の温度変化状態を熱検知素子にて迅速且つ正確に検知することができる技術を提供することができる。
更に、本構成によれば、例えば開放穴を形成した壁部の空気通路とは反対側の面が下向き又は斜め下向きとなる姿勢で本熱感知器を天井面や斜め下向きの壁面に取り付けた場合であっても、火災発生時等において周囲に高温空気の上昇流が生じると、その周囲に生じた高温空気の上昇流を、壁部に形成された開放穴を通じて空気通路における熱検知素子及び絞り部の設置部位に流入させて、積極的に熱検知素子に接触させることができる。また、空気通路を周囲に開放する開放穴が、熱検知素子の設置部位からその下方側にある絞り部の設置部位に向けて延在するので、その開放穴を通じて、周囲に生じた高温空気の上昇流を空気通路に流入し易くすることができ、更には、その流入した高温空気を上方側にある熱検知素子に対して良好に接触させることができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記絞り部と前記熱検知素子とが前記空気通路の横断方向において略中央部に設けられている点にある。
【0010】
本構成によれば、空気通路において、絞り部及び熱検知素子が当該空気通路の横断方向において略中央部に設けられているので、空気通路を通流する空気がバランス良く絞り部に流入し、絞り部を通過する空気の流れが安定且つ確実にその直下流側の領域に設けられた熱検知素子に接触することになる。よって、空気通路に流入した空気の熱が安定して熱検知素子に伝達されるので、熱検知素子において一層迅速且つ正確に空気の温度変化状態を検知することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、感知器本体の前面に、当該前面から突出して設けられた前記熱検知素子の前方を覆う保護カバーが前記空気通路を規定する壁部として設けられていると共に、前記感知器本体の前面と前記保護カバーの後面との間の保護カバー内空間が、その左右両側部が上下に延びる左右夫々の側壁部の内面で規定されることで、下端側の空気流入口から上端側の空気流出口に亘って上下方向に延びる前記空気通路として形成されており、
前記開放穴は、前記保護カバーに形成されている点にある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の熱感知器の斜視図
図2】本実施形態の熱感知器の設置状態を示す図
図3】本実施形態の熱感知器の設置状態を示す図
図4】本実施形態の熱感知器の正面図(a)、側面図(b)、及び底面図(c)
図5】別実施形態の熱感知器の正面図(a)、側面図(b)、及び底面図(c)
図6】別実施形態の熱感知器の正面図(a)、側面図(b)、及び底面図(c)
図7】別実施形態の熱感知器の正面図(a)、側面図(b)、及び底面図(c)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図1図4に基づいて説明する。
本実施形態の熱感知器100は、感知器本体1とその感知器本体1の前面1aに配置された熱検知素子6とを備えた火災警報器として構成されている。
この熱感知器100は、背面を室内に臨む天井面や壁面に沿わせて前面1aが当該天井面や壁面と同じ方向に向く姿勢で取り付けることができる。例えば、壁面に取り付ける場合には、図2に示すように、前面1aが水平に向く姿勢で鉛直の壁面Wに取り付けることもできるが、図3に示すように、前面1aが斜め下方に向く姿勢で斜め下向きの壁面Wに取り付けることもできる。
【0015】
本実施形態において、感知器本体1は、略直方体形状に構成されているが、例えば、円柱状や円盤状などの他の形状に構成しても構わない。また、熱検知素子6は、公知のサーミスタやバイメタル等の感温部として構成されている。そして、この熱検知素子6は、感知器本体1の前面1aから前方に突出するように設置されており、その熱検知素子6から後方に延びるリード線部が感知器本体1の前面1aの略中央部に支持されている。
【0016】
図示は省略するが、感知器本体1の内部には、制御基板や電源部等などが収容されており、この制御基板等により、利用者への報知を行う報知手段が構成されている。また、感知器本体1の前面1aには、音声を外部に出力するためのスピーカ孔やLEDランプの発光部が配置されている。そして、上記報知手段は、例えば、熱検知素子6が警報レベル以上の熱を継続して検知した場合、例えば、スピーカ孔から警報音や音声案内を出力したり、発光部を点滅発光させるなどして、利用者に対して火災の発生を報知するように構成されている。更に、感知器本体1の例えば前面1aの下方側には、火災時等において警報を出力した際に、当該警報を停止するための警報停止ボタン4が設けられている。尚、詳細については後述するが、この警報停止ボタン4は、後述する保護カバー20の下端部を利用して構成されている。
【0017】
図1に示すように、感知器本体1の前面1aには、当該前面1aから突出して設けられた熱検知素子6を外部の衝撃等から保護するために、当該熱検知素子6の前方を覆う保護カバー20が設けられている。保護カバー20は、熱検知素子6よりも前方に配置されており、感知器本体1の前面1aと略平行で且つ熱検知素子6の前方側を通る鉛直軸を中心にして左右対称となる略長方形の板状部材で構成されている。このような保護カバー20を設けることで、図4(b)及び図4(c)に示すように、保護カバー20の後面20aと感知器本体1の前面1aとの間には、偏平な保護カバー内空間が形成される。
【0018】
熱感知器100の下方側には、火災時等において警報を出力した際に、当該警報を停止するための警報停止ボタン4が設けられている。具体的に、警報停止ボタン4は、保護カバー20の下端部を利用したものとして構成されている。即ち、保護カバー20の下端部の略中央部分には、感知器本体1の内部に向けて突出する押圧子4Aが設けられている。そして、警報停止ボタン4の押圧操作にあたっては、保護カバー20の下端部を感知器本体1の前面1aに向けて押圧すると、その保護カバー20の下端部が撓むことで、その略中央部に設けられた押圧子4Aが感知器本体1内に設けられたスイッチ素子(図示省略)が押圧され、警報停止等の所定の処理が実行される。
尚、感知器本体1の前面1aにおいて、押圧子4Aの貫通穴の周囲には、当該押圧子4Aを外囲するスリーブ部1Aが突出形成されている。
【0019】
図4に示すように、保護カバー20と感知器本体1との間には、当該保護カバー20を感知器本体1に支持するための支持部21が設けられている。この支持部21は、保護カバー20の後面20aの左右両側縁部から後方に向けて突出する形態で、当該保護カバー20と一体的に形成されており、その先端部が感知器本体1の前面1aに固定されている。
【0020】
更に、図4に示すように、保護カバー20と感知器本体1との間に形成された保護カバー内空間の左右両側方部には、互いに対向して上下方向に延びる側壁部22が夫々設けられている。これら夫々の側壁部22は、保護カバー20の後面20aにおける夫々の支持部21の内側部分と感知器本体1の前面1aとの間に亘って設けられている。また、夫々の側壁部22は、保護カバー20の後面20aと及び感知器本体1の前面1aに対して垂直で且つ上下方向に延在して左右幅方向に対して垂直な板状の部位として形成されている。
即ち、感知器本体1の前面1aと保護カバー20の後面20aとの間の保護カバー内空間は、左右両側部が上下に延びる左右夫々の側壁部22の内面22aで規定されることで、下端側の空気流入口Aiから他端側の空気流出口Aoに亘って上下方向に延びる空気通路Aとして形成されることになる。
【0021】
このような空気通路Aを有する熱感知器100では、火災発生時において周囲に高温空気の上昇流F(図2及び図3を参照。)が発生すると、下端側の空気流入口Aiを介して周囲から空気通路Aに空気が流入すると共に、上端側の空気流出口Aoを介して空気通路Aから周囲に空気が流出する形態で、当該空気通路Aに空気流入口Aiから空気流出口Aoに向かう空気の上昇流が生じることになる。
また、熱感知器100を天井面に沿わせて前面1aが下方に向く姿勢で取り付けた場合であっても、たとえば火災発生源が熱感知器100から離れている場合には、図2及び図3と同様に、空気通路Aに空気流入口Aiから空気流出口Aoに向かう空気の流れが生じることがある。
【0022】
火災発生時において空気の上昇流(空気流入口Aiから空気流出口Aoに向かう空気の流れ)が生じる空気通路Aには、左右夫々の側壁部22の内面22aから内方に延びる一対のフィン30が設けられている。これら一対のフィン30は、上下方向において同じ高さ位置に設けられており、保護カバー20の後面20a及び感知器本体1の前面1aと垂直で且つ空気通路Aの横断方向(即ち、左右幅方向)に延在する板状の部位として形成されている。そして、空気通路Aの横断方向における略中央部には、これら一対のフィン30の夫々の先端部の間に形成されたフィン間通路部30Aが形成されることになる。
【0023】
このように一対のフィン30の間に形成されたフィン間通路部30Aは、空気通路Aに空気の上昇流が生じた際に、当該空気通路Aにおいて流路断面積を絞って空気を通流させる絞り部として機能する。更に、空気通路Aにおいて、空気通路Aの横断方向における略中央部に配置された熱検知素子6は、このフィン間通路部30Aの直上側の領域に設けられている。
【0024】
火災発生時において空気通路Aに空気の上昇流が生じると、その空気の流れが一対のフィン30の間に形成された絞り部としてのフィン間通路部30Aを通過することで、そのフィン間通路部30Aから直上側の領域に設けられた熱検知素子6に向けて高速の空気流が形成される。よって、空気通路Aに流入した空気のできるだけ多くが熱検知素子6に逐次接触して、当該空気の熱が積極的に熱検知素子6に伝達されることになる。このことで、熱検知素子6において空気通路Aに流入する空気の温度変化状態を迅速且つ正確に検知できるようになる。
【0025】
空気通路Aにおいて、フィン間通路部30Aと熱検知素子6が当該空気通路Aの横断方向において略中央部に設けられているので、空気通路Aを通流する空気がバランス良くフィン間通路部30Aに流入する。すると、フィン間通路部30Aを通過する高速の空気流は安定した略直線状のものになるので、その空気流を、安定且つ確実にその直下流側の領域に設けられた熱検知素子6に接触させることができる。このことで、空気通路Aに流入した空気の熱を安定して熱検知素子6に伝達させて、熱検知素子6において一層迅速且つ正確に空気の温度変化状態を検知できるようになる。
【0026】
空気通路Aにおいて、熱検知素子6は、検知精度の向上のために、熱容量が大きい感知器本体1の前面1aからできるだけ遠ざけて保護カバー20の後面20aに近い位置に設けられている。このように感知器本体1よりも保護カバー20に近い位置に配置された熱検知素子6に対しても、空気通路Aのフィン間通路部30Aにおいて生じる高速の空気流が適切に接触するような構成が採用されている。即ち、フィン間通路部30Aを間に形成する一対のフィン30は、感知器本体1の前面1aから保護カバー20側に向けて突出形成されており、その一対のフィン30と保護カバー20の後面20aとの間に、隙間30Bが形成されている。
このような一対のフィン30を設けることにより、当該フィン間通路部30Aにおいて生じる高速の空気流は、その隙間30Bを通過する空気の流れの影響により、感知器本体1の前面1a側よりも保護カバー20の後面20a側に近い位置に偏らせることができる。よって、この高速の空気流を、保護カバー20の後面20aに近い位置に設けられた熱検知素子6に対して良好に接触させることができる。
【0027】
空気通路Aを規定する壁部である保護カバー20には、熱検知素子6前方側及びフィン間通路部30Aの前方側を開放する開放穴20bが形成されている。開放穴20bは、空気通路Aを規定する保護カバー20において、熱検知素子6及びフィン間通路部30Aの設置部位を外部へ開放する開放穴である。開放穴20bは、幅方向よりも上下方向に長尺な長穴形状に形成されており、熱検知素子6の直径よりも若干大きめの幅を有し、上下方向においてフィン間通路部30Aの設置位置よりも若干下側の位置から熱検知素子6の設置位置よりも若干上側の位置に亘る長さを有する。
【0028】
熱感知器100を、天井面に取り付けたり、図3に示すように前面1aが斜め下方に向く姿勢で斜め下向きの壁面Wに取り付けた場合には、火災発生時等において周囲に高温空気の上昇流Fが生じると、その周囲に生じた高温空気の上昇流Fが、保護カバー20に形成された開放穴20bを通じて、空気通路Aにおける熱検知素子6及びフィン間通路部30Aに流入する。その際、特に図3に示す取り付け状態では、空気通路Aを周囲に開放する開放穴20bが、熱検知素子6の前方側からその下方側にあるフィン間通路部30Aの前方側に向けて延在する長穴形状に形成されていることで、周囲の高温空気の上昇流Fが、上昇しながらその開放穴20bを通じて空気通路Aに流入しやすくなる。
すると、開放穴20bを通じて空気通路Aに流入した空気を、開放穴20bの上方側に臨む熱検知素子6に対して積極的且つ良好に接触させることができる。
【0029】
更に、空気通路Aでは、図4(b)及び図4(c)に示すように、一対のフィン30と保護カバー20の後面20aとの間に隙間30Bが形成されているので、空気通路Aにおける一対のフィン30の上流側の圧力上昇が抑制されている。よって、その空気通路Aにおける一対のフィン30の上流側を通流する空気が、その前方側に位置する開放穴20bの下端部を介して周囲に流出することが抑制され、結果、熱検知素子6に対してより多くの空気を接触させることができる。
【0030】
感知器本体1の前面1aには、感知器本体1の内部の電子部品設置領域を拡大するなどの目的で、前方に隆起する隆起部1Bが設けられている。この隆起部1Bは、図4(a)に示すように、感知器本体1の前面1aにおける左右両側に配置されている。具体的に、左右夫々の隆起部1Bは、図4(c)にも示すように、底面視において台形形状の断面を有し、図4(b)にも示すように、空気通路Aの全体に亘って上下方向に延在するものとして構成されている。そして、その隆起部1Bの前面が、保護カバー20の後面20aに対して後方に離間して対向する面として形成されており、その隆起部1Bの前面側に夫々の側壁部22及びフィン30が設けられている。また、これら左右夫々の隆起部1B間の領域には、上下方向に延びる凹部1Cが形成され、その凹部1Cに、熱検知素子6が配置されることになる。
よって、フィン間通路部30Aにて生じる空気流を、左右夫々の隆起部1Bの間の領域に設けられた凹部1Cに確実に維持させて、同凹部1Cに設けられた熱検知素子6に好適に接触させることができる。
【0031】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記実施形態では、一対のフィン30を、保護カバー20の後面20aとの間に隙間30Bを設けるように感知器本体1の前面1aから保護カバー20側に向けて突出形成したが、当該一対のフィン30は、空気通路Aにおいて左右夫々の側壁部22の内面側から内方に延びて、それらの間に絞り部としてのフィン間通路部30Aを形成するものであればよく、当該フィン30の高さ等の形状や配置状態については適宜改変することができる。
例えば、図5に示すように、夫々の間にフィン間通路部30Aを形成する一対のフィン30を、上記のような隙間を形成することなく、感知器本体1の前面1aと保護カバー20の後面20aとの間に亘るように設けても構わない。
また、図6に示すように、一対のフィン30を、感知器本体1の前面1aとの間に隙間30Bを設けるように保護カバー20の後面20aから感知器本体1側に向けて突出形成しても構わない。
【0032】
(2)上記実施形態では、感知器本体1の前面1aに隆起部1Bを設けたが、この隆起部1Bの形状や配置状態については適宜改変することができる。
例えば、図7に示すように、感知器本体1の前面1aに隆起部を設けず、当該前面1aに夫々の側壁部22及びフィン30を設けても構わない。この場合、感知器本体1の前面1aと保護カバー20の後面20aとの間の空気通路Aの流路断面積を拡大することができる。そのことにより、空気通路Aに対して周囲から空気流入口Aiを介して空気が流入しやすくなって、熱検知素子6へ接触させる空気を一層増加することができる。
【0033】
(3)上記実施形態では、図2及び図3に示すように、熱感知器100を横向き又は斜め下向きの壁面Wに取り付けた例を説明したが、熱感知器100を天井面に設置することもできる。また、熱感知器100を天井面に設置して、感知器本体1の前面1aが下向きの姿勢となった場合であっても、火災発生時において、周囲に生じた高温空気の上昇流を、保護カバー20に形成された開放穴20bを通じて空気通路Aに流入させて、熱検知素子6に接触させることができる。
【0034】
(4)上記実施形態では、一対のフィン30の間に形成された絞り部としてのフィン間通路部30Aと、その直下流側に設けられた熱検知素子6とを、空気通路Aの横断方向である左右幅方向において略中央部に設けたが、フィン間通路部30Aの直下流側に熱検知素子6が位置すればよく、これらフィン間通路部30Aの熱検知素子6の設置位置については適宜変更しても構わない。
【0035】
(5)上記実施形態では、保護カバー20に、熱検知素子6設置位置及び一対のフィン30の間に形成されたフィン間通路部30Aの設置部位の夫々の前方側を外部へ開放する開放穴20bを形成したが、この開放穴20bの形状や形成位置については適宜改変しても構わない。また、空気通路Aに対してこの開放穴20bを通じて空気を流入させる必要がない場合等において、この開放穴20bを省略しても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 感知器本体
1B 隆起部
1a 感知器本体の前面
6 熱検知素子
20 保護カバー(空気通路を規定する壁部)
20a 保護カバーの後面
20b 開放穴
22 側壁部
22a 側壁部の内面
30 フィン
30A フィン間通路部(絞り部)
30B 隙間
100 熱感知器
A 空気通路
Ai 空気流入口
Ao 空気流出口
【要約】      (修正有)
【課題】空気通路に流入した空気の温度変化状態を熱検知素子にて迅速且つ正確に検知することができる熱感知器を提供する。
【解決手段】感知器本体1は、空気通路Aにおいて流路断面積を絞って空気を通流させる絞り部30Aを備え、絞り部30Aの直下流側の領域に熱検知素子6が設けられている。空気の流れが空気通路に設けられた絞り部を通過する際に流速が増加するので、高速の空気流がその直下流側の領域に設けられた熱検知素子に向けて形成される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7