特許第6404512号(P6404512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404512非水系電解液電池用セパレータおよび非水電解液電池
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  • 特許6404512-非水系電解液電池用セパレータおよび非水電解液電池 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6404512
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】非水系電解液電池用セパレータおよび非水電解液電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20181001BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20181001BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20181001BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01M10/0587
   H01M10/0566
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-35145(P2018-35145)
(22)【出願日】2018年2月28日
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2017-96606(P2017-96606)
(32)【優先日】2017年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】道木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】川口 遼馬
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏章
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−139489(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/076994(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/093575(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/137540(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/204274(WO,A1)
【文献】 特開2004−281292(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/051656(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微多孔膜と、
前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面上に設けられた、無機フィラー及びバインダを含む多孔層と、
を備える多層多孔膜を構成要件として含む非水電解液電池用セパレータであって、前記非水電解液電池用セパレータの140℃での熱収縮率が5.0%未満であり、かつ前記非水電解液電池用セパレータを140℃で1時間に亘って熱処理した後の機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)の引張破断伸度が0.2%〜80%である非水電解液電池用セパレータ。
【請求項2】
前記非水電解液電池用セパレータを140℃で1時間に亘って熱処理した後の幅方向(TD)の引張破断伸度が、0.2%〜80%である、請求項1に記載の非水電解液電池用セパレータ。
【請求項3】
前記多孔層の表面の水に対する接触角Θが、70°以上120°以下である、請求項1又は2に記載の非水電解液電池用セパレータ。
【請求項4】
前記ポリオレフィン微多孔膜の190℃でのメルトインデックス(MI)が、1.5g/10分〜20g/10分である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータ。
【請求項5】
前記多孔層が、前記バインダとして、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)を主な構成単位として含むポリマーとブチルアクリレート(BA)を主な構成単位として含むポリマーの混合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータ。
【請求項6】
前記非水電解液電池用セパレータの熱処理前の機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)の引張破断伸度が、80%〜200%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータと、正極と、負極とから成る積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体が捲回されている捲回体。
【請求項9】
請求項7に記載の積層体又は請求項8に記載の捲回体と、電解液とを含む非水電解液電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔膜、特にポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜は、優れた電気絶縁性又はイオン透過性を示すことから、電池、コンデンサー等におけるセパレータとして広く利用されている。また、近年、携帯機器の多機能化及び軽量化に伴い、その電源として高出力密度又は高容量密度のリチウムイオン二次電池が使用されている。このようなリチウムイオン二次電池にも、セパレータとしてポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜が多く用いられている。
【0003】
ここで、リチウムイオン二次電池には通常、電解液として有機溶媒が用いられている。従って、リチウムイオン二次電池に短絡、過充電等の異常事態が生じた場合には、電解液が分解して、最悪の場合には発火に至る可能性がある。このような事態を防ぐため、リチウムイオン二次電池にはいくつかの安全機能が組み込まれている。セパレータのシャットダウン機能もその一例である。
【0004】
シャットダウン機能とは、電池が異常発熱を起こした際、セパレータの微多孔が熱溶融等により閉塞して電解液内のイオン伝導を抑制し、電気化学反応の進行をストップさせる機能を意味する。一般的にシャットダウン温度が低いほど、安全性が高いとされる。ポリエチレンは適度なシャットダウン温度を有するため、ポリエチレンはセパレータの成分として好ましく用いられている。
【0005】
しかしながら、高いエネルギーを有する電池においては熱暴走時の発熱量が大きい場合がある。シャットダウン温度を超えても温度が上昇し続けた場合、セパレータの破膜(以下、「ショート」と記載することがある。)により両極が短絡し、さらなる発熱が引き起こされる危険性がある。このような事情のもと、セパレータと電極との間に、絶縁性無機フィラーを主成分とする層を形成する方法が提案されている(特許文献1及び2)。
【0006】
特許文献1には、多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む多孔層を備え、電池用セパレータの150℃における熱収縮率が、5.0%未満であり、かつ電池用セパレータのヒューズ温度が、120℃以上143℃以下であることにより、短絡時の安全性に優れ、かつ良好なプロセス性、優れた充放電特性、及び高い安全性を備えた非水電解液電池を提供することができるとの記載がある。
【0007】
特許文献2には、積層ポリエチレン微多孔膜が、ポリエチレンを主成分とするA層と、ポリエチレンを主成分とし、低融点樹脂を含むB層とを含んで成る多孔質積層体であり、シャットダウン温度が128℃〜135℃、厚み20μm当たりの昇温時の透気抵抗度上昇率が小さく、少なくとも一方の外界に面した表面にポリエチレンから成る突起が不規則に存在し、改質多孔層が、突起を有する面上に積層され、かつ、引張強度が5N/mm以上のバインダと無機粒子とを含む電池用セパレータであることで、改質多孔層との優れた密着性を有するセパレータが得られるとの記載がある。
【0008】
また、非水電解液電池の安全性の観点から、無機フィラーを主成分とする層を含まない非水電解液電池用セパレータについて、幅方向(TD)の引張破断強度及び引張破断伸度が検討されている(特許文献3)。
【0009】
特許文献3には、セパレータの巻回方向に対して垂直方向(すなわち、TD)の引張破断幅強度が10.0N/cm以下であり、かつ、引張破断伸度が40%以上200%以下であれば、このセパレータを含む電池に機械的外力が加わって電池が変形すると、セパレータが容易に破断して、かつ破断面積も大きくなるため、短絡電流が局部に集中することが防止できるようになり、内部短絡が生じたとしても、電池が破裂、発煙に至らないように安全性が向上する、という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016−139489号公報
【特許文献2】特許第5876628号公報
【特許文献3】特開2004−281292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非水電解液電池等の蓄電デバイスのさらなる性能向上の観点からは、安全性能を向上させることが求められる。従来、例えばUL(Underwriters Laboratories Inc.)の安全規格UL1642及び/又はUL2054に従って、セパレータを含むリチウムイオン電池の衝突試験に合格するためには、特許文献3に記載のようにセパレータの幅方向(TD方向)の引張強度を比較的低くし、衝突試験時にセパレータを破断させて大きな短絡面積でリークさせて電池を安全な状態にする傾向にあった。
【0012】
しかしながら、衝突試験時、デバイスの変形の初期においては膜の強度および伸度が高い方が、膜が破断し難いため、短絡が起こり難く、安全性は高い。一方、ひとたび短絡が始まってからはセパレータを破断させて大きな短絡面積でリークさせた方が安全性は高い。
【0013】
上記で説明された事情を鑑みると、安全性、特に衝突試験での安全性について、特許文献1に記載の多層多孔膜、および特許文献2に記載の積層ポリエチレン微多孔質膜、又は特許文献3に記載のセパレータには未だに検討の余地がある。
【0014】
従って、本発明は、安全性、特に衝突試験での安全性の優れた電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意検討した結果、以下の技術的手段により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
ポリオレフィン微多孔膜と、
前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面上に設けられた、無機フィラー及びバインダを含む多孔層と、
を備える多層多孔膜を構成要件として含む非水電解液電池用セパレータであって、前記非水電解液電池用セパレータの140℃での熱収縮率が5.0%未満であり、かつ前記非水電解液電池用セパレータを140℃で1時間に亘って熱処理した後の機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)の引張破断伸度が0.2%〜80%である非水電解液電池用セパレータ。
[2]
前記非水電解液電池用セパレータを140℃で1時間に亘って熱処理した後の幅方向(TD)の引張破断伸度が、0.2%〜80%である、[1]に記載の非水電解液電池用セパレータ。
[3]
前記多孔層の表面の水に対する接触角Θが、70°以上120°以下である、[1]又は[2]に記載の非水電解液電池用セパレータ。
[4]
前記ポリオレフィン微多孔膜の190℃でのメルトインデックス(MI)が、1.5g/10分〜20g/10分である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータ。
[5]
前記多孔層が、前記バインダとして、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)を主な構成単位として含むポリマーとブチルアクリレート(BA)を主な構成単位として含むポリマーの混合物を含む、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータ。
[6]
前記非水電解液電池用セパレータの熱処理前の機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)の引張破断伸度が、80%〜200%である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータ。
[7]
[1]〜[6]のいずれか1項に記載の非水電解液電池用セパレータと、正極と、負極とから成る積層体。
[8]
[7]に記載の積層体が捲回されている捲回体。
[9]
[7]に記載の積層体又は[8]に記載の捲回体と、電解液とを含む非水電解液電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セパレータと電極を含む蓄電デバイスの衝突試験において、デバイスに熱が掛かる前までは電池の変形に強い一方、短絡が始まり、デバイスに熱が掛かった際に、多孔層の効果でセパレータの熱収縮を防ぐことで外力のかかっている箇所以外での短絡を防ぎ、かつ速やかにポリオレフィン樹脂が溶融して多孔層内部に入り込むことで、外力がかかっている箇所では膜が伸びずに破断し、大きな短絡面積でリークする。これにより、衝突試験時の安全性に優れる電池用セパレータが提供される。
【0017】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂が多孔層内部に入り込み易くするためには、高温時の樹脂の溶融粘度が低く(すなわちメルトインデックス(MI)が高く)、かつ多孔層とポリオレフィン樹脂との濡れ性が良好である(すなわち、多孔層が疎水性である)ことが重要であることも見出された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は衝突試験(UL1642及び/又はUL2054)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
<電池用セパレータ>
本実施形態では、非水電解液電池用セパレータは、多層多孔膜を含み、多層多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜と、無機フィラー及びバインダを含有し、かつポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面上に設けられた多孔層と、を備える。さらに、本実施形態に係るセパレータは、140℃での熱収縮率が5.0%未満であり、かつ140℃で1時間に亘って熱処理された後の機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)の引張破断伸度が0.2%〜80%である。さらに、前記多層多孔膜の少なくとも表面に接着性樹脂層など、さらなる機能層を有しても良い。
【0021】
[微多孔膜]
微多孔膜としては、本発明の要件を満たせば公知のセパレータを用いることができるが、電子伝導性が小さく、イオン伝導性を有し、有機溶媒に対する耐性が高く、孔径の微細なものが好ましい。
そのような微多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含む微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を含む微多孔膜、ポリオレフィン系の繊維を織ったもの(織布)、ポリオレフィン系の繊維の不織布、紙、並びに、絶縁性物質粒子の集合体が挙げられる。これらの中でも、塗工工程を経て多層多孔膜、すなわち非水電解液電池用セパレータを得る場合に塗工液の塗工性に優れ、セパレータの膜厚をより薄くして、電池等の蓄電デバイス内の活物質比率を高めて体積当たりの容量を増大させる観点から、ポリオレフィン樹脂を含む微多孔膜(以下、「ポリオレフィン樹脂微多孔膜」ともいう。)が好ましい。
【0022】
〔ポリオレフィン樹脂微多孔膜〕
ポリオレフィン樹脂微多孔膜は、電池用セパレータとした時のシャットダウン性能等を向上させる観点から、微多孔膜を構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物により形成される多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂が占める割合は、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
ポリオレフィン樹脂組成物に含有されるポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等をモノマーとして用いて得られるホモ重合体、共重合体、又は多段重合体等が挙げられる。また、これらのポリオレフィン樹脂は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
中でも、電池用セパレータとした時のシャットダウン特性の観点から、ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの共重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
【0025】
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等、
ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等、
共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンラバー等、が挙げられる。
【0026】
中でも、電池用セパレータとした時に低融点かつ高強度の要求性能を満たす観点から、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン、特に高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。なお、本発明において、高密度ポリエチレンとは密度0.942〜0.970g/cmのポリエチレンをいう。なお、本発明においてポリエチレンの密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。
【0027】
また、微多孔膜の耐熱性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン及びポリプロピレンの混合物を用いることが好ましい。このとき、良好なシャットダウン機能を達成する観点から、ポリエチレンを主成分(40質量%以上含む)とすることが好ましい。また、ポリオレフィン樹脂組成物中の、総ポリオレフィン樹脂に対するポリプロピレンの割合は、耐熱性と良好なシャットダウン機能を両立させる観点から、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは4〜10質量%である。
【0028】
上記ポリオレフィン樹脂の中でも、190℃でのメルトインデックス(MI)は、高温時に樹脂が塗工層の内部に入り込むことで衝突安全性を向上させるという観点から1.5g/10min.以上、20g/10min.以下であることが好ましく、より好ましくは1.8g/10min.以上、15g/10min.以下であり、さらに好ましくは1.8g/10min.以上、10g/10min.以下である。MI1.5以上であれば、高温時に樹脂が塗工層の内部に入り込むことで衝突安全性が担保される。MI20以下であると、熱収縮が起き難く、衝突安全性が担保される。MIの調整は、用いる樹脂の種類および混合比を選定することにより行うことができる。
【0029】
ポリオレフィン樹脂組成物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体;無機フィラー;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることがシャットダウン性能等を向上させる観点から好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0030】
〔微多孔膜の詳細〕
多孔膜は、非常に小さな孔が多数集まって緻密な連通孔を形成した多孔構造を有しているため、イオン伝導性に非常に優れると同時に耐電圧特性も良好であり、しかも高強度であるという特徴を有する。なお、微多孔膜の粘度平均分子量、膜厚、重量、気孔率、メルトインデックス及び膜密度について測定する際、多孔層を有している場合には、40質量%のエタノール中で10min以上含浸させた後、60℃で1時間以上乾燥することで、多孔層中のバインダを溶出させ、多孔層を除去してから測定する。熱収縮率、突刺強度、接触角、引張破断伸度及び透気度は、多孔層を含むセパレータの状態で測定する。
【0031】
微多孔膜は、上述した材料から成る単層膜であってもよく、積層膜であってもよい。
【0032】
微多孔膜の厚みは、0.1μm以上100μm以下が好ましく、高容量化の観点でより好ましくは2μm以上、25μm以下、さらに好ましくは2μm以上、16μm以下である。機械的強度の観点から0.1μm以上が好ましく、電池の高容量化の観点から100μm以下が好ましい。微多孔膜の膜厚は、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御すること等によって調整することができる。
【0033】
微多孔膜の平均孔径は、0.03μm以上0.70μm以下が好ましく、より好ましくは0.04μm以上0.20μm以下、さらに好ましくは0.04μm以上0.10μm以下、特に好ましくは0.04μm以上0.09μm以下である。高いイオン伝導性と耐電圧の観点から、0.03μm以上0.70μm以下が好ましい。微多孔膜の平均孔径は、後述する測定法で測定することができる。
【0034】
平均孔径は、組成比、押出シートの冷却速度、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御するか、又はこれらを組み合わせることにより調整することができる。
【0035】
微多孔膜の気孔率は、好ましくは25%以上95%以下、より好ましく30%以上65%以下、更に好ましくは35%以上55%以下である。イオン伝導性向上の観点から25%以上が好ましく、耐電圧特性の観点から95%以下が好ましい。
【0036】
微多孔膜の気孔率は、膜の厚みと重量で測定することができる。具体的には、微多孔膜から10cm×10cm角の試料を切り取って、その体積(cm)と質量(g)とを求めた。それらと膜密度(g/cm)とから、微多孔膜の気孔率を次式により算出する。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
なお、本発明において膜密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。
【0037】
微多孔膜の気孔率は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御するか、又はこれらを組み合わせることによって調整することができる。
【0038】
微多孔膜がポリオレフィン樹脂微多孔膜である場合、ポリオレフィン樹脂微多孔膜の粘度平均分子量は、30,000以上12,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは50,000以上2,000,000未満、さらに好ましくは100,000以上1,000,000未満である。粘度平均分子量が30,000以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が良好になると共に、重合体同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が12,000,000以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。さらに、電池用セパレータとした時に、粘度平均分子量が1,000,000未満であると、温度上昇時に孔を閉塞し易く良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。ポリオレフィン樹脂微多孔膜の粘度平均分子量は、後述する方法で測定することができる。
【0039】
微多孔膜を製造する方法としては特に制限はなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば、
(1)ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(3)ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形した後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(4)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法、
等が挙げられる。
【0040】
以下、微多孔膜を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、孔形成材を抽出する方法について説明する。
【0041】
まず、ポリオレフィン樹脂組成物と上記の孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入することで、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。
【0042】
上記孔形成材としては、可塑剤、無機材又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0043】
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、或いは可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導の効率が高いため、金属製のロールを用いることが好ましい。また、押出した混練物を金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むことは、熱伝導の効率がさらに高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるためより好ましい。溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のダイリップ間隔は200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。ダイリップ間隔が200μm以上であると、メヤニ等が低減され、スジ、欠点等の膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程において膜破断等のリスクを低減することができる。一方、ダイリップ間隔が3,000μm以下であると、冷却速度が速く冷却ムラを防げると共に、シートの厚み安定性を維持できる。
【0044】
また、シート状成形体を圧延してもよい。圧延は、例えば、ダブルベルトプレス機等を使用したプレス法にて実施することができる。圧延を施すことにより、特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は1倍を超えて3倍以下であることが好ましく、1倍を超えて2倍以下であることがより好ましい。圧延倍率が1倍を超えると、面配向が増加し最終的に得られる多孔膜の膜強度が増加する傾向にある。一方、圧延倍率が3倍以下であると、表層部分と中心内部の配向差が小さく、膜の厚さ方向に均一な多孔構造を形成することができる傾向にある。
【0045】
次いで、シート状成形体から孔形成材を除去して多孔膜とする。孔形成材を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。孔形成材を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれであってもよい。多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、多孔膜中の孔形成材残存量は多孔膜全体の質量に対して1質量%未満にすることが好ましい。
【0046】
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒で、かつ孔形成材に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。また、孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を抽出溶剤として用いることができる。
【0047】
また、上記シート状成形体または多孔膜を延伸することが好ましい。延伸は前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前に行ってもよい。また、前記シート状成形体から孔形成材を抽出した多孔膜に対して行ってもよい。さらに、前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前と後に行ってもよい。
【0048】
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られる多孔膜の強度等を向上させる観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる微多孔膜が裂け難くなり、高い突刺強度を有するものとなる。
【0049】
延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点からは同時二軸延伸が好ましい。また面配向の制御容易性の観点からは遂次二軸延伸が好ましい。
【0050】
ここで、同時二軸延伸とは、MD(微多孔膜連続成形の機械方向)の延伸とTD(微多孔膜のMDを90°の角度で横切る方向)の延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、MD及びTDの延伸が独立して施される延伸方法をいい、MD又はTDに延伸がなされているときは、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。
【0051】
延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上70倍以下の範囲であることがより好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MDに4倍以上10倍以下、TDに4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MDに5倍以上8倍以下、TDに5倍以上8倍以下の範囲であることがより好ましい。総面積倍率が20倍以上であると、得られる多孔膜に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であると、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
【0052】
微多孔膜の収縮を抑制するために、延伸工程後、又は、多孔膜形成後に熱固定を目的として熱処理を行うこともできる。また、多孔膜に、界面活性剤等による親水化処理、電離性放射線等による架橋処理等の後処理を行ってもよい。
【0053】
微多孔膜には、収縮を抑制する観点から熱固定を目的として熱処理を施すことが好ましい。熱処理の方法としては、物性の調整を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作が挙げられる。延伸操作を行った後に緩和操作を行っても構わない。これらの熱処理は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。
【0054】
延伸操作は、膜のMD及び/又はTDに1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上の延伸を施すことが、さらなる高強度かつ高気孔率な多孔膜が得られる観点から好ましい。
【0055】
緩和操作は、膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。なお、MD、TD双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。緩和率は膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TD両方向で行ってもよいが、MD或いはTD片方だけ行ってもよい。
【0056】
この可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作は、プロセスコントロールの観点から、好ましくはTDに行う。延伸及び緩和操作における温度は、ポリオレフィン樹脂の融点(以下、「Tm」ともいう。)より低いことが好ましく、Tmより1℃から25℃低い範囲がより好ましい。延伸及び緩和操作における温度が上記範囲であると、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から好ましい。
【0057】
[多孔層]
無機フィラーとバインダとを含む多孔層について説明する。
【0058】
〔無機フィラー〕
前記多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、耐熱性及び電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
【0059】
無機フィラーとしては、例えば、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、その他の化合物が挙げられる。
【0060】
アルミニウム化合物としては、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0061】
マグネシウム化合物としては、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0062】
その他の化合物としては、酸化物系セラミックス、窒化物系セラミックス、粘土鉱物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラス繊維等が挙げられる。酸化物系セラミックスとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。窒化物系セラミックスとしては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等が挙げられる。粘土鉱物としては、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、複数を併用してもよい。
【0063】
上記の中でも、電気化学的安定性及び耐熱特性の観点から、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウムの具体例としては、アルミナが挙げられる。水酸化酸化アルミニウムの具体例としては、ベーマイトが挙げられる。ケイ酸アルミニウムの具体例としては、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライトが挙げられる。
【0064】
前記酸化アルミニウムとしては、電気化学的安定性の観点から、アルミナがより好ましい。多孔層を構成する無機フィラーとして、アルミナを主成分とする粒子を採用することで、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層を実現できる上に、より薄い多孔層厚でも多孔膜の高温での熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。アルミナには、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ等、多くの結晶形態が存在するが、いずれも好適に使用することができる。この中でα−アルミナが熱的・化学的にも安定なので最も好ましい。
【0065】
前記水酸化酸化アルミニウムとしては、リチウムデンドライトの発生に起因する内部短絡を防止する観点から、ベーマイトがより好ましい。多孔層を構成する無機フィラーとして、ベーマイトを主成分とする粒子を採用することで、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層を実現できる上に、より薄い多孔層厚でも多孔膜の高温での熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。電気化学素子の特性に悪影響を与えるイオン性の不純物を低減できる合成ベーマイトがさらに好ましい。
【0066】
前記ケイ酸アルミニウムの中では、カオリン鉱物で主に構成されているカオリナイト(以下、カオリンともいう)が軽量性及び透気度の観点から好ましい。カオリンには湿式カオリン及びこれを焼成処理した焼成カオリンがあるが、焼成カオリンは焼成処理の際に結晶水が放出されるのに加え、不純物が除去されるので、電気化学的安定性の点で特に好ましい。多孔層を構成する無機フィラーとして、焼成カオリンを主成分とする粒子を採用することで、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層を実現できる上に、より薄い多孔層厚でも多孔膜の高温での熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。
【0067】
前記無機フィラーの平均粒径は、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上2.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上1.5μm以下であることが更に好ましい。無機フィラーの平均粒径を上記範囲に調整することは、短絡時の安全性をさらに向上させるという観点から好ましい。
【0068】
無機フィラーの粒度分布としては、最小粒径は0.02μm以上であることが好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。最大粒径は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下が更に好ましい。また、最大粒径/平均粒径の比率は、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。無機フィラーの粒度分布を上記範囲に調整することは、高温での熱収縮を抑制する観点から好ましい。また、最大粒径と最小粒径の間に複数の粒径ピークを有してもよい。なお、無機フィラーの粒度分布を調整する方法としては、例えば、ボールミル・ビーズミル・ジェットミル等を用いて無機フィラーを粉砕し、所望の粒度分布に調整する方法、複数の粒径分布のフィラーを調整後ブレンドする方法等を挙げることができる。
【0069】
無機フィラーの形状としては、板状、鱗片状、多面体、針状、柱状、球状、紡錘状、塊状等が挙げられ、上記形状を有する無機フィラーを複数種組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、透過性向上の観点からは、板状、鱗片状、多面体が好ましい。
【0070】
前記無機フィラーが、前記多孔層中に占める割合としては、透過性、耐熱性、後述される多孔層の動摩擦係数等の観点から適宜決定することができる。上記割合は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは97質量%以上とすることができる。また、上記割合は100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは99.99質量%以下、さらに好ましくは99.9質量%以下、特に好ましくは99質量%以下である。
【0071】
〔バインダ〕
バインダは、多孔層において複数の無機フィラー同士を結び付けたり、多孔層とポリオレフィン樹脂微多孔膜を結び付けたりする材料である。バインダは、例えば、樹脂バインダでよい。
【0072】
樹脂バインダは、前述した無機フィラーを相互に結着する役割を果たす樹脂である。また、無機フィラーと多孔膜とを相互に結着する役割を果たす樹脂であることが好ましい。樹脂バインダの種類としては、セパレータとしたときにリチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
【0073】
樹脂バインダの具体例としては、以下の1)〜7)が挙げられる。
1)ポリオレフィン:例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンラバー、及びこれらの変性体;
2)共役ジエン系重合体:例えば、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物;
3)アクリル系重合体:例えば、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体;
4)ポリビニルアルコール系樹脂:例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;
5)含フッ素樹脂:例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体;
6)セルロース誘導体:例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;
7)融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマー:例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル。
【0074】
短絡時の安全性をさらに向上させるという観点からは、3)アクリル系重合体、5)含フッ素樹脂、及び7)ポリマーとしてのポリアミドが好ましい。ポリアミドとしては、耐久性の観点から全芳香族ポリアミド、中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好適である。
【0075】
樹脂バインダと電極との適合性の観点からは上記2)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記3)アクリル系重合体及び5)含フッ素樹脂が好ましい。
【0076】
上記2)共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を単量体単位として含む重合体である。
【0077】
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、特に1,3−ブタジエンが好ましい。
【0078】
上記3)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として含む重合体である。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルから成る群から選ばれる少なくとも一つを示す。
【0079】
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸を挙げることができる。
【0080】
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアメタクリレート;エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、ブチルアクリレート(BA)が好ましい。
【0081】
アクリル系重合体は、衝突試験での安全性の観点から、EHA又はBAを主な構成単位として含むポリマーであることが好ましい。主な構成単位とは、ポリマーを形成するための全原料に対して40モル%以上を占めるモノマーと対応するポリマー部分をいう。
【0082】
アクリル系重合体は、衝突試験での安全性を向上させる観点から、EHA−BAコポリマー、及び/又はEHAが主な構成単位であるポリマーとBAが主な構成単位であるポリマーの混合物を含むことが好ましく、より好ましくは、EHAが主な構成単位であるポリマーとBAが主な構成単位であるポリマーの混合物である。EHA−BAコポリマーの場合、共重合時の混合比率(EHA:BAの質量比)が1:99〜99:1であることが好ましく、より好ましくは50:50〜95:5、さらに好ましくは70:30〜90:10である。EHAを用いることで、無機フィラーとポリオレフィン樹脂の接着性を向上させ、ポリオレフィン樹脂の熱収縮を抑制する効果があり、BAを用いることで多孔層に柔軟性が付与され、同じく熱収縮を抑制する効果がある。EHAが主な構成単位であるポリマーとBAが主な構成単位であるポリマーの混合物の場合、両者の質量混合比は、1:99〜99:1の範囲内でよい。
【0083】
上記2)共役ジエン系重合体および3)アクリル系重合体は、これらと共重合可能な他の単量体をも共重合させて得られるものであってもよい。用いられる共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマール酸、イタコン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0084】
なお、上記2)共役ジエン系重合体は、他の単量体として上記(メタ)アクリル系化合物を共重合させて得られるものであってもよい。
【0085】
〔多孔層の詳細〕
多孔層の厚みは、耐熱性及び絶縁性を向上させる観点から1μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上、よりさらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは1.8μm以上、最も好ましくは2.0μm以上である。また、電池の高容量化と透過性を向上させる観点から50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下である。
【0086】
多孔層における無機フィラーの充填率としては、軽量性及び高透過性の観点から、95体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましく、70体積%以下がさらに好ましく、60体積%以下が特に好ましい。熱収縮抑制及びデンドライト抑制の観点から、下限は20体積%以上が好ましく、30体積%以上がより好ましく、40体積%以上が更に好ましい。無機フィラーの充填率は、多孔層の層厚、並びに無機フィラーの重量及び比重から算出することができる。
【0087】
多孔層は、ポリオレフィン微多孔膜の片面にのみ形成しても、両面に形成してもよい。
【0088】
多孔層の形成方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む塗布液を塗布して多孔層を形成する方法を挙げることができる。
【0089】
塗布液中の樹脂バインダの形態としては、水に溶解または分散した水系溶液であっても、一般的な有機媒体に溶解または分散した有機媒体系溶液であってもよいが、樹脂製ラテックスが好ましい。「樹脂製ラテックス」とは樹脂が媒体に分散した状態のものを示す。樹脂製ラテックスをバインダとして用いた場合、無機フィラーとバインダとを含む多孔層をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に積層した際、イオン透過性が低下し難く、高出力特性が得られ易い。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。
【0090】
塗布液を形成するときに、無機フィラーの使用量に対する樹脂バインダの使用量は、限定されるものではないが、後述される通り、セパレータ形成後の多孔層の動摩擦係数を0.1〜0.6の範囲内に調整することができる程度の量であることが好ましい。
【0091】
樹脂製ラテックスバインダの平均粒径は、50〜1,000nmであることが好ましく、より好ましくは60〜500nm、更に好ましくは80〜250nmである。平均粒径が50nm以上である場合、無機フィラーとバインダとを含む多孔層をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層した際、良好な結着性を発現し、セパレータとした場合に熱収縮が良好となり安全性に優れる傾向にある。平均粒径が1,000nm以下である場合、イオン透過性が低下し難く、高出力特性が得られ易い。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。平均粒径は、樹脂バインダを製造する際の重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pH、撹拌速度等を調整することで制御することが可能である。
【0092】
塗布液の媒体としては、前記無機フィラー、及び前記樹脂バインダを均一かつ安定に分散または溶解できるものが好ましく、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられる。
【0093】
塗布液には、分散安定化又は塗工性の向上、さらに多孔層の表面部の接触角の調整のために、界面活性剤等の分散剤;増粘剤;湿潤剤;消泡剤;酸、アルカリを含むPH調整剤等の各種添加剤を加えてもよい。これら添加剤の総添加量は、無機フィラー100重量部に対して、その有効成分(添加剤が溶媒に溶解している場合は溶解している添加剤成分の重量)は20重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。
【0094】
分散剤又は添加剤については、アニオン性界面活性剤として、例えば、高級脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、メチルタウリン酸塩などがある。ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシドなどがある。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルアミンオキシドなどがある。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などがある。その他、フッ素系界面活性剤やセルロース誘導体、ポリカルボン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩などの高分子界面活性剤がある。
【0095】
無機フィラーと樹脂バインダとを、塗布液の媒体に分散または溶解させる方法については、塗布工程に必要な塗布液の分散特性を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
【0096】
塗布液を微多孔膜に塗布する方法については、必要とする層厚又は塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
【0097】
さらに、塗布液の塗布に先立ち、微多孔膜表面に表面処理を施すと、塗布液を塗布し易くなると共に、塗布後の無機フィラー含有多孔層と微多孔膜表面との接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法は、多孔膜の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ放電処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
【0098】
塗布後に塗布膜から媒体を除去する方法については、微多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はなく、例えば、微多孔膜を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、抽出乾燥等が挙げられる。また電池特性に著しく影響を及ぼさない範囲においては溶媒を一部残存させても構わない。微多孔膜及び多孔層を積層した多孔膜のMD方向の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、巻取り張力等は適宜調整することが好ましい。
【0099】
非水系電解液用セパレータは、電極との密着性およびハンドリング性の向上の観点から、多孔層を形成した後のポリオレフィン微多孔膜上の少なくとも一方の表面の、少なくとも一部を被覆する接着性樹脂層を有しても良い。さらに、ハンドリング性の観点から、接着性樹脂層は、ポリオレフィン微多孔膜上に接着性樹脂を含む部分と接着性樹脂を含まない部分とが存在する層であることが好ましい。
【0100】
接着性樹脂層は、ガラス転移温度を少なくとも2つ有する接着性樹脂を含むことが望ましい。また、接着性樹脂層の複数のガラス転移温度のうち、少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、少なくとも一つは20℃以上の領域に存在することが望ましい。さらに、セパレータと電極との密着性向上の観点では、接着性樹脂のガラス転移温度のうち少なくとも一つが20℃未満の領域に存在することが望ましく、セパレータ表面のべたつきなどのハンドリング性の観点では、ガラス転移温度のうち少なくとも一つが20℃以上の領域に存在することが望ましい。
【0101】
本実施の形態で使用される接着性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、α−ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂とこれらを含むコポリマー;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンをモノマー単位として含むジエン系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどをモノマー単位として含むアクリル系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、熱可塑性ポリマーを合成する際に使用するモノマーとして、ヒドロキシル基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミド基、又はシアノ基を有するモノマーを用いることもできる。
【0102】
[電池用セパレータの詳細]
本発明の電池用セパレータについて説明する。本発明のセパレータは、微多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む多孔層を備える電池用セパレータである。上記セパレータは、耐熱性に優れ、衝突試験安全性にも優れているので、電池の中で正極と負極を隔離する電池用セパレータに適している。
【0103】
本発明のセパレータの最終的な膜厚は、2μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは7μm以上30μm以下である。膜厚が2μm以上であると機械強度が十分となる傾向にあり、また、200μm以下であるとセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向にある。
【0104】
本発明のセパレータの透気度は、50〜400sec/100ccであることが好ましく、より好ましくは100〜300sec/100cc、さらに好ましくは150〜250sec/100ccである。50sec/100cc以上の透気度であれば適度な機械強度を有し、400sec/100ccの透気度であれば透過性の観点から電池特性が向上するので好ましい。
【0105】
本発明のセパレータは、衝突試験時の安全性を向上させるという観点から、140℃における熱収縮率が、5.0%未満であることが好ましく、より好ましくは0%以上4.5%以下、さらに好ましくは0%以上4.0%以下である。ここで、セパレータの熱収縮率としては、MD熱収縮率およびTD熱収縮率の両者のうち、大きい方の値を用いる。140℃における熱収縮率の測定方法は実施例の項目において後述する。熱収縮率が5.0%以上であると、衝突試験時で短絡によって熱がかかった際に外力がかかっている箇所以外での短絡が発生し、電池全体の温度があがってしまい、発煙・発火が起こる。セパレータの熱収縮率の調整は、上述した微多孔膜の延伸操作と熱処理を適宜組み合わせることにより行うことができる。
【0106】
本発明のセパレータの熱処理前、具体的にはセパレータの加熱前の引張破断伸度については、衝突試験時の安全性をさらに向上させるという観点から、機械方向(MD)引張破断伸度及び/又は幅方向(TD)引張破断伸度が、80%〜200%であることが好ましく、より好ましくはTD引張破断伸度が、80%〜200%であり、さらに好ましくはTD引張破断伸度が90%以上150%以下である。引張破断伸度が80%以上であれば、デバイスの変形に対してセパレータが追随し、短絡が起こり難くなる。一般的に捲回体は機械方向に巻かれているため、変形に対しては幅方向の伸びがより重要である。
【0107】
セパレータのMD引張破断伸度とTD引張破断伸度は、後述する測定法で測定することができる。セパレータのMD引張破断伸度及びTD引張破断伸度は、微多孔膜を形成するときの延伸条件及び/又は緩和条件に応じて調整されることができる。
【0108】
本発明のセパレータにおいては、衝突試験時の安全性をさらに向上させるという観点から、140℃で1時間の熱処理を行った後の引張破断伸度については、機械方向(MD)引張破断伸度及び/又は幅方向(TD)引張破断伸度が、0.2%〜80%であり、好ましくは140℃で1時間の熱処理を行った後の幅方向(TD)引張伸度が0.2%〜80%であり、より好ましくは140℃で1時間の熱処理を行った後の幅方向(TD)引張伸度が0.2%〜65%である。
【0109】
ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に設けられた多孔層の表面の水に対する接触角Θは、衝突試験時の安全性をさらに向上させるという観点から、70°≦Θ≦120°であることが好ましく、より好ましくは90°≦Θ≦110°である。接触角が70°未満であると親水性が高いために、高温時にポリオレフィン樹脂が多孔層内部に入り難く、衝突安全性が担保されず、接触角が120°以上であると、塗布液での分散性が低下し、塗工工程上で不良が発生しやすくなる。
【0110】
セパレータの多孔層の表面の水に対する接触角は、後述する測定方法で測定することが出来る。接触角の調整は前述のバインダ、分散剤、添加剤等を選定することにより行うことができる。
【0111】
[電池]
本実施形態に係るセパレータを介して複数の電極と重ねることにより、セパレータと電極とが積層している積層体を得ることができる。得られた積層体又は積層体を捲回することにより得られる捲回体は、非水電解液電池の製造に使用されることができる。
【0112】
積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係るセパレータと電極とを重ね、必要に応じて加熱及び/又はプレスする工程を含んでよい。加熱及び/又はプレスは、電極とセパレータとを重ねる際に行われることができる。電極とセパレータとを重ねた後に円又は扁平な渦巻き状に捲回して得られる捲回体に対して、加熱及び/又はプレスを行ってもよい。積層体の加熱及びプレス工程は、積層体の作製後に行われ、積層体を外装体内に収納して外装体に電解液を注入した後に行われてもよい。
【0113】
本実施形態に係る非水電解液電池は、円筒缶、パウチ型ケース等の外装体内に、上記で説明された積層体、又は積層体が捲回されている捲回体を非水電解液とともに備える。
【0114】
非水電解液電池が二次電池である場合には、正極集電体と正極活物質層から成る正極積層体の端部に正極端子を溶接し、かつ負極集電体と負極活物質層から成る負極積層体の端部に負極端子を溶接することによって、端子付き正極積層体及び端子付き負極積層体を含む二次電池の充放電を行うことができる。
【0115】
さらに、端子付き正極積層体と端子付き負極積層体をセパレータを介して積層し、所望により捲回して、得られた積層体又は捲回体を外装体に収納し、外装体に非水電解液を注入し、外装体を封口することによって、二次電池を得ることができる。
【0116】
本実施形態に係るセパレータを用いて非水電解液二次電池を製造する場合には、既知の正極、負極及び非水電解液を使用してよい。
【0117】
正極材料としては、特に限定されないが、例えば、LiCoO、LiNiO、スピネル型LiMnO、オリビン型LiFePO等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
【0118】
負極材料としては、特に限定されないが、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種の合金材料等が挙げられる。
【0119】
非水電解液としては、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩が挙げられる。
【0120】
本実施形態に係るセパレータを用いた電池は、衝突試験に優れる。衝突試験は、電池の安全評価の一つであり、実施例の項目において詳述される。ここで、この衝突試験において良好な評価を得るには、電池の変形の初期においては膜が破断し難く、ひとたび短絡が始まってからはセパレータを破断させて大きな短絡面積でリークさせることが重要である。
【0121】
なお、上述した各種物性の測定値は、特に断りの無い限り、後述する実施例における測定法に準じて測定される値である。
【実施例】
【0122】
実施例及び比較例を挙げて本発明の形態をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性等は以下の方法により測定した。微多孔膜の粘度平均分子量、膜厚、重量、気孔率、メルトインデックス及び膜密度を測定する際、多孔層を有している場合には、40質量%のエタノール中で10min以上含浸させた後、60℃で1時間以上乾燥することで、多孔層中のバインダを溶出させ、多孔層を除去してから測定した。熱収縮率、突刺強度、接触角、引張破断伸度及び透気度は、多孔層を含むセパレータの状態で測定した。また、多孔層の形成を予定していない単なる微多孔膜については、微多孔膜のままで各種の測定を行うことができる。
【0123】
(1)粘度平均分子量(Mv)
ASTM−D4020に準拠して、デカリン溶媒中における135℃での極限粘度[η](dl/g)を求めた。
ポリエチレンのMvは、次式により算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
ポリプロピレンのMvは、次式により算出した。
[η]=1.10×10−4Mv0.80
【0124】
(2)膜厚(μm)
東洋精機(株)社製の微小測厚器、KBM(商標)を用いて、室温23±2℃でPO微多孔膜又は多孔層の膜厚を測定した。
【0125】
(3)透気度(sec/100cc)
JIS P−8117に準拠した透気抵抗度を透気度とした。多孔層を含むセパレータの透気度及びPO微多孔膜の透気度の測定は、ガーレー式透気度計(東洋精器(株)社製、G−B2(商標))を用いて行った。
【0126】
(4)突刺強度(gf)
ハンディー圧縮試験器「KES−G5」(カトーテック社製)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/秒の条件下で突刺試験を行うことで、サンプルの突刺強度を測定した。
【0127】
(5)セパレータの熱収縮率測定
セパレータをMD方向に100mm、TD方向に100mmに切り取り、140℃のオーブン中に1時間静置した。このとき、温風が直接サンプルに当たらないよう、サンプルを2枚の紙に挟んだ。サンプルをオーブンから取り出し冷却した後、長さ(mm)を測定し、以下の式にて熱収縮率を算出した。測定はMD方向、TD方向で行い、数値の大きい方を熱収縮率とした。
熱収縮率(%)={(100−加熱後の長さ)/100}×100
【0128】
(6)セパレータのMD引張破断伸度及びTD引張破断伸度の測定
JIS K7127に準拠し、25℃、湿度50%の条件下、島津製作所製の引張試験機、オートグラフAG−A型(商標)を用いて、MD及びTDサンプル(形状;幅10mm×長さ100mm)について測定した。また、サンプルはチャック間を50mmとした。引張破断伸度(%)は、破断に至るまでの伸び量(mm)をチャック間距離(50mm)で除して、100を乗じることにより求めた。
また、140℃のオーブン中に2枚の紙に挟まれた状態で1時間静置され、その後に取り出されて冷却されたセパレータサンプルを用いたこと以外は上記と同様に、140℃での熱処理後のMD及びTD引張破断伸度を測定した。
【0129】
(7)接触角測定
多孔層の表面の水に対する接触角Θは、株式会社協和界面化学製の接触角計(型式「DCA−VM型」)を用い、JIS R3257(1999)に準じて、25℃、湿度50%の条件下、微多孔膜と多孔層の表面にイオン交換水4μLを滴下し、100ms後の接触角を測定した。
【0130】
(8)メルトインデックス(MI)
ポレオレフィン微多孔膜を200℃、1MPaで1分間熱プレスを行い、孔を潰した樹脂を作成する。その樹脂のMIをJIS−K7210に準じて、温度190℃、荷重21.6kgで測定した。
【0131】
(9)衝突試験
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm、容量密度175mAh/g)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧延した。圧延後のものを57.0mm幅にスリットして正極を得た。この時の正極活物質塗布量は109g/mであった。
【0132】
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧延した。圧延後のものを58.5mm幅にスリットして負極を得た。この時の負極活物質塗布量は5.2g/mであった。
【0133】
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒(キシダ化学(株)製Lithium Battery Grade)に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して、非水電解質である電解液を得た。
【0134】
d.電池組立
作製した正極と負極とを、セパレータの両側に重ねて筒状に巻いた捲回体を、ステンレス製の円筒型電池ケース(外装体)に挿入した。次いで、そこに、上記電解液を5mL注入し、捲回体を電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉して非水電解質二次電池を作製した。
【0135】
e.衝突試験
図1は、UL規格1642及び/又は2054に従う衝突試験の概略図である。
UL規格1642及び/又は2054では、試験台上に配置された試料の上に、試料と丸棒(φ=15.8mm)が概ね直交するように、丸棒を置いて、丸棒から610±25mmの高さの位置から、丸棒の上面へ9.1kg(約20ポンド)の錘を落すことにより、試料に対する衝撃の影響を観察する。
【0136】
図1とUL規格1642及び2054を参照して、実施例及び比較例における衝突試験の手順を以下に説明する。
25℃の環境下で、e.で得た非水電解質二次電池を1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電した。
次に、25℃の環境下で、電池を平坦な面に横向きに置き、電池を横切るように、直径15.8mmのステンレスの丸棒を電池の中央に配置した。電池の中央に配置した丸棒から電池の縦軸方向に対して、直角に衝撃が加わるように、9.1kgの錘を61±2.5cmの高さから落下させた。その後、電池の外装温度を測定し、かつ電池からのガスの噴出の有無と電池の発火の有無を観察した。なお、電池の外装温度とは、電池の外装体の底側から1cmの位置を熱電対(K型シールタイプ)で測定した温度である。
以下の基準で、衝突試験を評価した。
◎(最良):電池外装温度30℃未満
○(良好):電池外装温度30℃以上、80℃未満
△(可):電池外装温度80℃以上、かつガス噴出、発火無し
×(不良):ガス噴出有り、または発火有り
【0137】
[実施例1]
Mv15万の共重合ポリエチレン(コモノマー:プロピレン、プロピレン単量体単位含量0.6モル%、密度0.95、融点133℃)30.0質量部と、Mv25万のホモ高密度ポリエチレン35.0質量部と、Mv70万のホモ高密度ポリエチレン30.0量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。
【0138】
得られたポリマー混合物99質量部に対して酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
【0139】
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が62質量%(樹脂組成物濃度が38質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃であり、スクリュー回転数100rpm、吐出量230kg/hで行った。
【0140】
続いて、溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1700μmのゲルシートを得た。
【0141】
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率6.38倍、設定温度123℃とした。次に、塩化メチレン槽に導き、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後塩化メチレンを乾燥除去した。
【0142】
次に、TDテンターに導き、熱固定を行った。熱固定温度は125℃で、TD最大倍率を1.47倍、緩和率は1.27とし、厚さ15μmのポリオレフィン樹脂多孔膜を得た。
【0143】
ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に、コロナ放電処理(放電量50W)を実施した。水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト、ブロック状、平均粒径1.0μm、比表面積8m/g)を95.0質量部とアクリルラテックスとして2−エチルヘキシルアクリレート(EHA:固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)が主な構成単位であるポリマーおよびブチルアクリレート(BA:固形分濃度40%、平均粒径300nm、最低成膜温度0℃以下)が主な構成単位であるポリマーの混合物を4.0質量部、並びにポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗布液を得て、上記ポリオレフィン樹脂多孔膜の処理表面にグラビアコーターを用いて塗布液を塗布した後、60℃にて乾燥して水を除去し、多孔膜上に厚さ5μmの多孔層が形成した、総膜厚20μm、透気度250sec/100cc、突刺強度400gfのセパレータ得た。得られたセパレータの評価結果を表1に併記する。
【0144】
[実施例2]
Mv15万の共重合ポリエチレン(コモノマー:プロピレン、プロピレン単量体単位含量0.6モル%、密度0.95、融点133℃)50.0質量部と、Mv25万のホモ高密度ポリエチレン45.0質量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。それ以外は、実施例1の方法に準じた結果、厚さ19μm、透気度160sec/100cc、突刺強度270gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0145】
[実施例3]
溶融混練条件の吐出量を140kg/hとし、T−ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に溶融混練物を押出しキャストすることにより、厚み1000μmのゲルシートを得た。それ以外は実施例1の方法に準じた結果、厚さ14μm、透気度150sec/100cc、突刺強度240gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0146】
[実施例4]
アクリルラテックスとしてEHAが主な構成単位であるポリマーのみ4.0質量部とした以外は実施例1の方法に準じてセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0147】
[実施例5]
アクリルラテックスとしてBAが主な構成単位であるポリマーのみ4.0質量部とした以外は実施例1の方法に準じてセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0148】
[実施例6]
実施例1とは異なるメーカーの水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト、ブロック状、平均粒径1.0μm、比表面積15m/g)を用いた以外は、実施例1の方法に準じてセパレータを得た。この多孔層の水に対する接触角の大きさは105°であった。評価結果を表1に併記する。
【0149】
[実施例7]
無機フィラーとして酸化アルミニウム(アルミナ、不定形、平均粒径0.5μm、比表面積15m/g)を用いた以外は、実施例1の方法に準じてセパレータを得た。この多孔層の水に対する接触角の大きさは100°であった。評価結果を表1に併記する。
【0150】
[実施例8]
アクリルラテックスとしてEHAおよびBAの共重合体(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下、モノマー比率1:1)を4.0質量部とした以外は実施例1の方法に準じてセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0151】
[実施例9]
異なるメーカーの水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト、板状、平均粒径1.0μm、比表面積6m/g)とし、添加剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.1質量部加えた以外は実施例1の方法に準じてセパレータを得た。この多孔層の水に対する接触角の大きさは80°であった。評価結果を表1に併記する。
【0152】
[実施例10]
Mv15万の共重合ポリエチレン10.0質量部と、Mv25万のホモ高密度ポリエチレン55.0質量部と、Mv70万のホモ高密度ポリエチレン30.0量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。それ以外は、実施例1の方法に準じた結果、厚さ20μm、透気度250sec/100cc、突刺強度400gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0153】
[実施例11]
Mv15万の共重合ポリエチレン20.0質量部と、Mv25万のホモ高密度ポリエチレン45.0質量部と、Mv70万のホモ高密度ポリエチレン30.0量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。それ以外は、実施例1の方法に準じた結果、厚さ20μm、透気度250sec/100cc、突刺強度420gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0154】
[実施例12]
Mv15万の共重合ポリエチレン65.0質量部と、Mv70万のホモ高密度ポリエチレン30.0量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。それ以外は、実施例1の方法に準じた結果、厚さ20μm、透気度250sec/100cc、突刺強度250gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0155】
[実施例13]
Mv5万のホモ高密度ポリエチレン30.0質量部と、Mv25万のホモ高密度ポリエチレン35.0質量部と、Mv70万のホモ高密度ポリエチレン30.0量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。それ以外は、実施例1の方法に準じた結果、厚さ20μm、透気度250sec/100cc、突刺強度250gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0156】
[実施例14]
実施例1とは異なるメーカーの水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト、ブロック状、平均粒径0.7μm、比表面積8m/g)を用いた以外は、実施例1の方法に準じてセパレータを得た。この多孔層の水に対する接触角の大きさは80°であった。評価結果を表1に併記する。
【0157】
[実施例15]
アクリルラテックスとしてEHAが主な構成単位であるポリマーのみ4.0質量部とした以外は実施例14の方法に準じてセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0158】
[実施例16]
接着性樹脂(アクリルポリマー、ガラス転移温度90℃、平均粒子径380nm、電解液膨潤度2.8)を80質量部と、異なるガラス転移温度を有する接着性樹脂(アクリルポリマー、ガラス転移温度−6℃、平均粒子径132nm、電解液膨潤度2.5)を20質量部とを混合し、イオン交換水を加えることで接着性樹脂含有塗布液(接着性樹脂濃度3質量%)調製した。これを実施例1に記載の多孔層を備えるポリオレフィン微多孔膜の表面にグラビアコーターを用いてドット状に塗布した。その後、60℃にて乾燥して水を除去した。さらに、もう片面も同様にして塗布液を塗工し、乾燥させることにより、接着性樹脂の重量0.2g/m、表面被覆率30%、ドットの平均長径50μm、厚さ0.5μmの接着層を有するセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0159】
[比較例1]
実施例1とは異なるメーカーの水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト、板状、平均粒径1.0μm、比表面積6m/g)とした以外は実施例1の方法に準じてセパレータを得た。この多孔層の水に対する接触角の大きさは60°であった。評価結果を表1に併記する。
【0160】
[比較例2]
Mv25万のホモ高密度ポリエチレン70.0質量部、及びMv70万のホモ高密度ポリエチレン30.0量部を、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。それ以外は、実施例1の方法に準じた結果、厚さ19μm、透気度250sec/100cc、突刺強度400gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0161】
[比較例3]
Mv5万のホモ高密度ポリエチレン50.0質量部と、Mv25万のホモ高密度ポリエチレン18.0質量部と、Mv70万のホモ高密度ポリエチレン25.0量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン7質量部とをタンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。それ以外は、実施例1の方法に準じた結果、厚さ20μm、透気度250sec/100cc、突刺強度200gfのセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0162】
[比較例4]
多孔層の厚みを2μmとした以外は、実施例1の方法に準じてセパレータを得た。評価結果を表1に併記する。
【0163】
[比較例5]
実施例1の方法に準じて得たポリオレフィン微多孔膜に多孔層を形成していないセパレータを用いて、各種測定を行った。評価結果を表1に併記する。
【0164】
【表1】
【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、安全性、特に衝突試験での安全性に優れた電池用セパレータを提供することである。
【解決手段】非水電解液電池用セパレータは、多層多孔膜を構成要件として含み、多層多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜と、無機フィラー及びバインダを含み、かつポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面上に設けられた多孔層とを備え、非水電解液電池用セパレータの140℃での熱収縮率が5%未満であり、かつ非水電解液電池用セパレータを140℃で1時間に亘って熱処理した後の機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)の引張破断伸度が0.2%〜80%である。
【選択図】図1
図1