特許第6404543号(P6404543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404543
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】入浴用機器
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   A61H33/00 310P
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-286572(P2012-286572)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128325(P2014-128325A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月21日
【審判番号】不服2017-14204(P2017-14204/J1)
【審判請求日】2017年9月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (展示会名) ホスペックスジャパン2012 (開催日) 2012年11月14日〜11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 敏文
(72)【発明者】
【氏名】大伴 章悟
【合議体】
【審判長】 和田 雄二
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 中川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−102586(JP,A)
【文献】 実開平6−26864(JP,U)
【文献】 特開2000−135266(JP,A)
【文献】 特開平11−104205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴者を乗せる担架が着脱自在に載置される担架載置部と、
前記担架載置部上の前記担架の長手方向に沿って当該担架の下方に配置されて当該担架から滴下する湯水を受け止める水受盤と、
を備え、
前記水受盤の周縁に当該水受盤と一体に起立部を設け、当該起立部に前記水受盤と一体成型された対となる取っ手が設けられ、前記取っ手は貫通孔を有するとともに前記貫通孔の全周を閉じた枠形状をしていて、
前記取っ手は前記水受盤の前端部と後端部とにそれぞれ一対ずつ並列配置され、
記シャワーヘッドを前記水受盤に係止できるよう前記水受盤において前記貫通孔の外側に前記シャワーヘッドの係止部を形成した、
ことを特徴とする入浴用機器。
【請求項2】
前記係止部は、前記水受盤の前端部および後端部の少なくとも1つの角部に、当該水受盤と一体に設けられている、
請求項1に記載の入浴用機器。
【請求項3】
当該入浴用機器は、浴槽に横付け配置されるものであり、
前記担架載置部は、前記浴槽との間で前記担架を前記担架の幅方向に沿って反復水平移動可能に保持するものであり、
前記水受盤の前記長手方向に沿った中央部には、前記幅方向の端部が開放された空間部が設けられている、
請求項1または2に記載の入浴用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体障害者や養護老人等の入浴に供される入浴用機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、寝たきりの高齢者や身体不自由者などの被介助者(以下、入浴者という)を載せた担架を浴槽内の支持台上に移動させた後、浴槽を昇降機構により上昇させて被介助者を湯に浸漬し、入浴させる介護用の入浴装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の入浴装置では、次のようにして入浴が行われる。第1の構成では、入浴者を載せた担架は、搬送車上に載置固定されて浴室まで搬送される。浴室まで搬送された担架付きの搬送車は浴槽に横付けされ、この状態で担架上の入浴者の身体が介助者によって洗身される。洗身が終了すると、担架が搬送車から切り離されて浴槽にスライド移送され、この状態で入浴者の入浴が行われる。
【0004】
第2の構成では、入浴者を載せた担架は、搬送車上に載置固定されたうえで浴室まで搬送される。浴室まで搬送された担架付きの搬送車は、浴槽に並設されている洗い台に横付けされ、この状態で担架が搬送車から切り離されて洗い台にスライド移送される。スライド移送が完了すると、洗い台固定状態の担架に載っている入浴者が介助者によって洗身される。入浴者の洗身が終了すると、担架が洗い台から切り離されて浴槽にスライド移送されて入浴者の入浴が行われる。入浴時、洗い台は入浴介護の邪魔となるので、介助者によって浴槽から離間移動される。
【0005】
以上の洗浄入浴を行う入浴装置に用いられる搬送車や洗い台(以下、両機器を入浴用機器と称する)には、図6図7に示すように、搬送/移動時に介助者が掴む取っ手100が取り付けられている。取っ手100は、スチールパイプ等からなっており、搬送車や洗い台の枠体101に起立した状態で固定装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−102586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の入浴用機器では、取っ手を別体にして入浴用機器の枠体に取り付けているため、その分、入浴用機器の製造コストが上昇するうえに、入浴用機器は重量化してその移動操作性を損ねていた。さらには、入浴者の洗身時、介助者は、入浴用機器の周囲を移動しながら作業を行うが、その際、起立状態で装着されている取っ手が移動や作業の邪魔になることがある。また、洗身時、介助者は、浴槽から引き出された可撓管の先端に取り付けられたシャワーヘッドを把持した状態で、入浴用機器の周囲を巡回しながら作業を行うが、巡回移動時、可撓が取っ手に引っ掛かることがあり、介助者は、そのような状態になる度に洗身処理や巡回移動動作を中断して、可撓管を取っ手から離脱させる作業を行わねばならず、このことが入浴介護作業の作業能率を低下させる原因となっていた。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの低減と軽量化と、介助作業の効率の向上を図ることができる入浴用機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の入浴用機器は、
入浴者を乗せる担架が着脱自在に載置される担架載置部と、
前記担架載置部上の前記担架の長手方向に沿って当該担架の下方に配置されて当該担架から滴下する湯水を受け止める水受盤と、
を備え、
前記水受盤の周縁に当該水受盤と一体に起立部を設け、当該起立部に前記水受盤と一体成型された対となる取っ手が設けられ、前記取っ手は貫通孔を有するとともに前記貫通孔の全周を閉じた枠形状をしていて、
前記取っ手は前記水受盤の前端部と後端部とにそれぞれ一対ずつ並列配置され、
記シャワーヘッドを前記水受盤に係止できるよう前記水受盤において前記貫通孔の外側に前記シャワーヘッドの係止部を形成している。
【0010】
本発明には、
前記係止部は、前記水受盤の前端部および後端部の少なくとも1つの角部に、当該水受盤と一体に設けられている、
という態様がある。
【0011】
本発明には、
当該入浴用機器は、浴槽に横付け配置されるものであり、
前記担架載置部は、前記浴槽との間で前記担架を前記担架の幅方向に沿って反復水平移動可能に保持するものであり、
前記水受盤の前記長手方向に沿った中央部には、前記幅方向の端部が開放された空間部が設けられている、
という態様がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、水受盤と一体成型された取っ手を設けているので、入浴用機器の移動や入浴用機器と浴槽との接合等の各種の操作を行いやすい位置に必要な数の取っ手を簡素な構造かつ樹脂成形等の簡易な製造方法で設けることができるために、入浴用機器のコストダウンと軽量化を図ることができる。また、水受盤にシャワーヘッドの係止部を形成しているので、任意の数のシャワーヘッドの係止部を設けることができ、一連の入浴介助作業において、シャワーヘッド係止部が1箇所しかない場合にシャワーを必要とする度にその位置まで反復移動するといった介助者の移動負担を軽減することができる。
【0013】
請求項2によれば、シャワーヘッドの係止部は水受盤と一体に設けられているので、任意の数のシャワーヘッドの係止部を、簡素な構成かつ樹脂成形等の簡易な製造方法で設けることができる。
【0014】
請求項3によれば、次の効果が得られる。すなわち、入浴介助作業時において、介助者が入浴用機器の周囲に沿って何度も反復移動することがあるが、その際、取っ手が介助者の作業や移動の邪魔になりやすく、さらには、シャワーヘッドに連結されている可撓管が床面に垂下延在していると可撓管に足が引っかかって転倒するといった不具合があった。しかしながら、請求項3の発明によれば、水受盤の前記長手方向に沿った中央部に幅方向の端部が開放された空間部が設けられているので、前記反復移動回数自体が少なくて済み、移動時に取っ手が邪魔になったり可撓管に引っかかるといった不具合を軽減することができる。また、入浴介助に係る動線を短くするために、前記空間部を設けることなく水受盤の長手方向を極めて短くする構成の入浴機器も散見されるが、この場合において水受盤に取っ手を設けても入浴機器に載置された担架が邪魔になって取っ手に手が届かないので、入浴機器の移動やドッキング等の操作を行う際に取っ手を把持できないという不都合が生じる。しかしながら、請求項3の発明の構成にすれば、担架を載置した状態でも手の届く範囲に水受盤と一体的に取っ手を設けることができ、前記入浴介助に係る反復移動回数も軽減できる。以上のことから、本発明は、空間部を有する入浴用機器において実施すればより有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態である搬送車の担架載置状態での正面図である。
図2図2は、実施形態の搬送車の担架未載置状態での側面図である。
図3図3は、実施形態の搬送車の担架未載置状態での平面図である。
図4図4は、実施形態の搬送車の要部拡大斜視図である。
図5図5は、本発明の変形例で搬送車の担架未載置状態での平面図である。
図6図6は、従来例の搬送車の担架載置状態での正面図である。
図7図7は、従来例の搬送車の担架未載置状態での側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜4に示す本発明の実施形態の入浴装置は、昇降する浴槽1と、搬送車2と、浴槽1と搬送車2間を移乗する担架3とを備える。浴槽1には、シャワーヘッド15が装備されている。シャワーヘッド15は浴槽1の給湯機能で生成した湯水を入浴者の洗身のために浴槽1から引き出して散水するものである。シャワーヘッド15は可撓管16を介して浴槽1に連結されており、浴槽1の側面に設けられたシャワーヘッド保持部1aを介して浴槽1に着脱自在に保持されている。
【0017】
搬送車2は本発明の入浴用機器の一例である。担架3は、介助者の介助を受けて浴槽1で入浴する入浴者(被介助者)を乗せるものである。搬送車2は、介助者の押し引き操作によって移送される車両であって、入浴時、介助者の移送操作によって浴槽1に横付け配置される。搬送車2は、担架3が着脱自在に載置される担架載置部4を有する。担架載置部4は、搬送車2が浴槽1に横付けされた状態において、浴槽1との間で担架3を担架幅方向に沿って反復水平移動可能に保持するものであって、具体的には、担架幅方向に沿って水平に並行配設された一対のスライドレールからなる。担架載置部4は、搬送車2の上面に装着されている。
【0018】
搬送車2の略中央部には、左右(搬送車2の幅方向)が開放された空間部5が設けられている。空間部5は介助者が搬送車2に出入りできる空間である。搬送車2は、空間部5と、空間部5の前方に位置する前部6と、空間部5の後方に位置する後部7と、枠体8と、搬送車2を移送させる時に掴む取っ手9と、担架3上の入浴者の洗身を行う際に使用するシャワーヘッド15を把持するシャワーヘッド係止部17と、洗身搬送車2の下部に設けられ搬送車2を床面で走行させるキャスタ10とを備える。キャスタ10はロック付(図示省略)である。枠体8には、介助者が上る踏み台11が設けられ、踏み台11は空間部5の下部位置に形成される。空間部5を設けるため、担架載置部4は、前部6と後部7とにそれぞれ設けられている。
【0019】
搬送車2には、担架3や担架3に乗っている入浴者(被介助者)から洗身時等において滴下する湯水を受け止める水受盤12が設けられている。なお、図2図3では、水受盤12を明瞭に図示するために担架3は図示省略されている。図1に示すように、水受盤12は、担架載置部4上の担架3の長手方向に沿って担架3の下方に配置されている。水受盤12は、前部6と後部7とに設けられており、それぞれ前部水受盤13、後部水受盤14と称する。前部水受盤13と後部水受盤14とは、樹脂一体成型品から構成されている。なお、図示はしないが、空間部5にも装着自在な蛇腹状の水受盤を設けてもよい。
【0020】
本実施形態の搬送車2は、取っ手9とシャワーヘッド係止部17の構成に特徴を有している。取っ手9とシャワーヘッド係止部17とは、搬送車2(担架3)の長手方向に沿った水受盤12の端部となる前部水受盤13の前端部13aと後部水受盤14の後端部14aとに設けられている。取っ手9とシャワーヘッド係止部17とは、前部水受盤13や後部水受盤14と一体に樹脂成型されている。取っ手9は、前端部13aと後端部14aとにそれぞれ一対ずつ並列配置されている。取っ手9は、具体的には次のようにして設けられている。すなわち、前端部13aや後端部14aの周縁には、前端部13aや後端部14aと一体に起立部13b、14bが設けられている。起立部13b、14bは、前端部13aや後端部14aから上方に起立した状態で形成されており、取っ手9は、起立部13b,14bに設けられている。取っ手9は貫通孔9aを有しており、貫通孔9aの全周を閉じた枠形状をしている。また、シャワーヘッド15を引き回す際に、可撓管16が取っ手9に引っかからないように、取っ手9の外周形状は円弧状となっている。さらには、取っ手9の高さ寸法は、介助者による搬送車2の押し引き操作にとって必要十分な寸法であって必要以上に高くならないようにされており、これにより可撓管16が取っ手9に引っかからないようになっている。尚、取っ手9は、図示の位置の他に、適宜必要な位置に複数設けることもできる。例えば、図示は省略するが、浴槽1に搬送車2を連結係止する際に必要があれば、水受盤12の幅方向の両端部の所定の位置に取っ手9を設けるようにしてもよい。
【0021】
シャワーヘッド係止部17は、前端部13a、後端部14aの角部に設けられている。シャワーヘッド係止部17は、一対の把持端を有しており、これら一対の把持端によってシャワーヘッド15を挟持して保持している。尚、シャワーヘッド係止部17は図示の位置の他に、適宜必要な位置に複数設けることもできる。例えば、図示は省略するが、搬送車2を浴槽1の左右いずれの側でも連結可能に構成する入浴装置の場合は、前端部13a、後端部14aの両角部に設けるようにしてもよい。更に、一連の入浴介助の中で必要があれば、水受盤12の幅方向の両端部の所定の位置にシャワーヘッド係止部17を設けるように構成してもよい。
【0022】
浴槽1の側壁18の中央上部に、浴槽1が有する種々の機能を個々に作動させる操作部19が設けられている。操作部19は、上昇スイッチ、下降スイッチ、気泡スイッチ等を備える。浴槽1の背面には操作部19と同じスイッチ群を擁する背面操作部20が設けられ、浴槽1の正面には操作部19と同じスイッチ群を擁する正面操作部21が設けられている。浴槽1内の中央の上部には、担架3を支持する架台22が、浴槽1の底壁を水密に貫通する支柱(=図示省略)に支持されて設けられる。
【0023】
この入浴装置を用いて、入浴者の入浴介助を行う場合、介助者は、入浴態勢にある入浴者を搬送車2上の担架3に乗せた状態で搬送車2を移送して浴槽1に横着けし、さらに浴槽1の係止部(図示省略)に搬送車2を連結係止する。そして、キャスタ10を適宜ロックする。この状態で、浴槽1に据え付けられたシャワーヘッド15を操作して介助者が担架3上の入浴者の身体を洗身する。
【0024】
洗身が終了すると介助者は、搬送車2の外側へ回り込んで、搬送車2の長手方向中央部に配置する。次に、介助者は担架3のキャッチ具(図示省略)を操作し搬送車2と担架3の係止を外して、担架3を浴槽1内の架台22上に押し遣る。
【0025】
この時、介助者は空間部5にある踏み台11に上がり、前屈み姿勢になることなく楽な姿勢で担架3を架台22上に押し遣ることができ。介助者は、担架3を架台22上に完全に乗せた後、担架3を架台22にロックする。その後、操作部19の上昇スイッチを押し、浴槽1を上昇させ、浴槽1内の温湯に入浴者を浸ける。
【0026】
次に介助者は、操作部19の気泡スイッチを押し、気泡浴装置(図示省略)を作動させ、湯内に気泡を発生させ、入浴者に気泡浴を施す。また、介助者は入浴者が浴槽1の温湯に入浴している間、必要に応じて踏み台11に上がって入浴者にマッサージを施す等の入浴介助を行うことができる。
【0027】
退浴時、介助者は操作部19の下降スイッチを押し、浴槽1を下降させる。浴槽1を下降させた後、担架3を搬送車2上に移乗させる。この移乗時には、介助者は踏み台11に上がって浴槽1の担架3を搬送車2側へ引く。担架3が浴槽1から離れ搬送車2に移乗し始めれば介助者は適宜踏み台11から床面に降りる。担架3の移乗が完了すると、搬送車2へ、担架3を搬送車2へロックし、搬送車2を走行し入浴者を所定の場所へ移動し、入浴を終了する。
【0028】
以上の入浴処理が可能な本実施形態の入浴装置においては、水受盤12の端部である前部水受盤13の前端部13aと後部水受盤14の後端部14aとに一体に取っ手9を設けているので、次の効果がある。すなわち、取っ手9を水受盤12と一体に樹脂成型しているので、その分、部品点数が減ってコストダウンを図ることができる。
【0029】
また、取っ手9は水受盤12と一体に樹脂成型されているので、軽量化が図れており、その分、搬送車2の引き回しが容易になる。さらには、水受盤12は担架3の下方に配置されて、担架3から滴下する湯水を受け止めるものであって、搬送車2や担架3の長手方向寸法と同等の長手方向寸法を有しており、前部水受盤13の前端部13aや後部水受盤14の後端部14aは、搬送車2上の担架3の直下にあって担架3より搬送車長手方向の若干外側に位置している。この構造を利用して、本実施形態の搬送車2では、この部分、すなわち前端部13aや後端部14aに取っ手9を設けており、これにより搬送車2の押し引き操作の操作性を維持した状態で取っ手9の突出寸法を極力小さく抑えている。更に、取っ手9は、水受盤12よりも上方に起立させた起立部13b、14bに設けられているので、搬送車2の押し引き操作の際に介助者が自然な姿勢で取っ手9を把持することができる。
【0030】
また、介助者は、入浴者の洗身時等において搬送車2の周囲を頻繁に巡回しなければならず、その際に取っ手9が作業や移動の邪魔になる可能性があるが、取っ手9の大きさ(突出量)を必要最小限に抑えることができる本実施形態の搬送車2は、入浴作業の効率を向上させるうえでも有効となる。
【0031】
また、シャワーヘッド15に連結されている可撓管16は、シャワーヘッド使用時(洗身時)における介助者の搬送車周囲巡回移動に伴って引き回されるが、その際に、可撓管16が取っ手9に引っかかる可能性がある。そのため、取っ手9の大きさ(突出量)を必要最小限に抑えることができる本実施形態の搬送車2は、この分でも入浴作業の効率を向上させることができる。
【0032】
以上説明した本実施形態における取っ手9の効果は、空間部5を有する搬送車2においてさらに有効となる。すなわち、入浴介助作業時において、介助者が搬送車2の周囲に沿って何度も反復移動することがあるが、その際、取っ手9が介助者の作業や移動の邪魔になりやすく、さらには、シャワーヘッド15に連結されている可撓管16が床面に垂下延在していると可撓管16に足が引っかかって転倒するといった不具合がある。しかしながら、本実施形態では、水受盤12の長手方向に沿った中央部に幅方向の端部が開放された空間部5が設けられているので、反復移動回数自体が少なくて済み、移動時に取っ手9が邪魔になったり可撓管16に引っかかるといった不具合を軽減することができる。以上のことから、本実施形態は、空間部5を有する搬送車2においてさらに有効となる。
【0033】
また入浴介助に係る動線を短くするために、空間部5を設けることなく水受盤12の長手方向を極めて短くする構成の入浴機器(搬送車等)も散見されるが、この場合において水受盤12に取っ手9を設けても入浴機器に載置された担架3が邪魔になって取っ手9に手が届かないので、入浴機器の移動やドッキング等の操作を行う際に取っ手9を把持できないという不都合が生じる。しかしながら、本実施形態では、担架3を載置した状態でも手の届く範囲に水受盤12と一体的に取っ手9を設けることができ、入浴介助に係る反復移動回数も軽減できる。
【0034】
上述した実施形態では、搬送車2を浴槽1に横付けする構成の入浴装置において、本発明を実施したが、この他、図5に示すように、浴槽1に併設した洗い台30において本発明を実施することができる。洗い台30には、搬送車2と同様の空間部31が設けられており、また、洗い台30は、移動可能であり、かつ浴槽1に対して連結/解除可能である。尚、洗い台30は、キャスタ10を有していない点を除いて、搬送車2と同様の構成を備えているので、洗い台30において搬送車2と同様の構成には同一の符号を付している。
【0035】
この変形例では、搬送車2は、洗い台30に横付け配置される。洗い台30には、上述した実施形態の搬送車2と同様の取っ手9とシャワーヘッド係止部17とが設けられている。これにより、洗い台30は、上述した実施形態の搬送車2と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 浴槽
2 搬送車
3 担架
4 担架載置部
5 空間部
9 取っ手
12 水受盤
13 前部水受盤
13a 前端部
13b 起立部
14 後部水受盤
14a 後端部
14b 起立部
15 シャワーヘッド
16 可撓管
17 シャワーヘッド係止部
30 洗い台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7