特許第6404549号(P6404549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404549
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】プラズマ生成を安定化させる方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/509 20060101AFI20181001BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20181001BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20181001BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   C23C16/509
   C23C16/455
   H01L21/316 X
   H05H1/46 M
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-178344(P2013-178344)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-51738(P2014-51738A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】13/604498
(32)【優先日】2012年9月5日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511152935
【氏名又は名称】エーエスエム アイピー ホールディング ビー・ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(72)【発明者】
【氏名】中野 竜
(72)【発明者】
【氏名】牧野 勉
(72)【発明者】
【氏名】高見澤 寿
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−303814(JP,A)
【文献】 特開2008−066159(JP,A)
【文献】 特開2006−188729(JP,A)
【文献】 特表2011−525682(JP,A)
【文献】 特開2001−207268(JP,A)
【文献】 特開2006−278058(JP,A)
【文献】 特開2002−110398(JP,A)
【文献】 特開2001−207265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/509
C23C 16/455
H01L 21/316
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実行される連続プロセスにおけるプラズマ生成を安定化させる方法であって、
上部電極と基板が置かれる下部電極との間にRF電源からのRF電力を印加する工程を含み、
該RF電力を印加する工程が、
前記上部電極と前記下部電極との間に前記RF電源からのRF電力のスパイクを印加する工程であって、前記スパイクは前記連続プロセスの開始時にゼロ電力から始まって、設定値のスパイク電力へ直線的にジャンプし、次にプラズマ生成不良となる程度に低い設定値のベース電力へと低下し、前記ベース電力は、前記スパイクなしで印加するとき前記連続プロセスにおいてプラズマ生成が起こらないことがある、ところのスパイク印加工程と、
前記上部電極と前記下部電極との間に、前記RF電源からの前記ベース電力のRF電力を、前記基板を処理するために前記スパイクの期間より長い期間、前記連続プロセスの終了時まで連続して印加する連続印加工程と、から成り
前記スパイクは、プラズマ生成不良を減らすものであ
前記RF電力を印加する工程において、RF電力がオンの間に、前記スパイク電力が印加された後前記ベース電力が印加され、これにより前記スパイクが構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ベース電力が放電開始電圧の近傍に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記下部電極の面積当たり、前記ベース電力が0.12W/cm未満で、前記スパイク電力が0.12W/cmを超える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スパイク電力が前記下部電極の面積当たり0.36W/cm以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スパイク電力が、プラズマが生成した後に終了する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スパイクが、前記スパイクのないベース電力の使用を除き、同じく処理される膜と比較して前記スパイクが前記基板上に変化を引き起こす前に、前記スパイクが終了する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スパイクは、前記スパイクの開始から20ミリ秒以内で終了する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記RF電源及び/又はプラズマ光からの信号に基づいてプラズマ生成をモニターし、プラズマ生成が検出されたとき前記スパイクを終了する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
プラズマ生成が、光センサーを使って前記上部及び下部電極の間のプラズマ光をモニターすることにより検出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラズマ生成が、前記RF電源や整合機で測定されたピークツーピーク電圧(Vpp)及び/又は自己バイアス電圧(Vdc)をモニターすることにより検出される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記スパイクが、予め設定された時間の範囲内で終了する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記スパイクのタイミングが、RF電力のオンオフ信号、及びスパイク電力及びスパイク時間により制御され、前記スパイク時間は、設定値を有し、RF電力がオンとなったときにカウントを開始し、設定値が終了するまでカウントを続けるパラメータとして使用され、前記スパイク電力は、設定値を有し、RF電力のオンオフ信号及び前記スパイク時間により規制されるパラメータとして使用され、ここで、RF電力がオフの間、また前記スパイク時間がカウントしている間、前記スパイク電力の信号が出力され、RF電力がオンではあるが前記スパイク時間のカウントが停止している間、前記スパイク電力の信号が出力されず、RF電力がオンとなったときに前記スパイク電力の信号が出力されているため、前記スパイクが生成され、このことにより、前記スパイクは、前記スパイクの開始時の前記スパイク電力のパラメータの値の変化をなくすことによりアナログ開始の遅れなく始まる、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スパイク時間の期間が20ミリ秒に設定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記連続プロセスが、プラズマ励起原子層堆積(PEALD)のプロセスである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にプラズマ励起原子層堆積(PEALD)や他のプラズマ励起堆積などにより、プラズマで基板を処理する方法に関して、プラズマを安定して生じさせる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PEALDプロセスでは、例えば、RF電力は膜質を制御する重要なパラメータである。高RF電力は膜質を改善することができるが、いくつかの適用例では、極めて低いRF電力が必要とされることがある。以下の三つの適用例は典型例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1Aは、固体拡散(SSD)のためのホウケイ酸ガラス(BSG)プロセスの概略図である。この処理において低RF電力が必要な理由は、高RF電力が印加された場合では、Si基板へドーパントの注入がイオン衝撃により膜形成段階で生じてしまうからである。図1Aに図示されているように、BSG膜1が基板3上に形成されるとき、ホウ素が基板3に浸透し、基板3にホウ素拡散層2が形成される。成膜後にドーパントを基板拡散させたくない部分のBSG膜を除去し、その後熱処理を行うことにより不純物拡散を基板面内の所望の部位のみに行うことが出来る。しかし成膜中に拡散が生じてしまうと望まない部分にも不純物が拡散された状態となってしまう。リンケイ酸塩ガラス(PSG)処理にもまた、高RF電力が印加されるとき、上記と同様の問題がある。
【0004】
図1Bは、下地層の酸化が望まれないSiOプロセスの概略図である。このプロセスで低RF電力が望ましい理由は、高RF電力が印加されると、下地層の物質が酸素プラズマ、イオン衝撃及び/又はスパッタリングにより、膜形成段階で酸化されるからである。図1Bに示されているように、SiO膜4がタングステン(W)層6の上で形成されるとき、W層6は酸化され、W層6に酸化層5が形成される。下地層がWやTiN、又はSiNのような膜を含む場合で、さらにPEALD−SiO膜がその上に堆積されている場合、下地層の物質がPEALD−SiO膜を形成するための酸素を含むプラズマにより酸化される。下地材料が酸化した場合、所望のデバイス特性が得られなくなってしまう。
【0005】
図1Cは、フォトレジスト上の膜形成プロセスを示す概略図である。低RF電力が本プロセスで必要とされる理由は、高RF電力が印加されると、フォトレジストが酸素プラズマ、イオン衝撃及び/又はスパッタリングにより膜形成段階で酸化、又はエッチングされてしまうためである。図1Cに示されているとおり、SiO膜7が下地層9の上に形成されたフォトレジスト8上に形成されるとき、フォトレジスト8は酸化又はエッチングされ、フォトレジスト8の寸法が減少する。ダブルパターニングプロセススキームでは、フォトレジスト上にPEALD−酸化膜を堆積するとき、PEALD−酸化膜を形成するための酸素を含むプラズマが、下に位置するフォトレジストを酸化、エッチングし、またスパッタリングによりフォトレジストを縮小する。その結果、望ましい寸法をもつマスクパターンを得ることができない。
【0006】
一方、低RF電力設定も問題を引き起こす。RF電力が低と、RF伝達回路の電力損失による影響、高周波整合機の整合点ズレへの敏感さ、反応チャンバ中の雰囲気の変化(例えば、内部堆積膜の厚さの変化による)等の影響を受け、時々、電極間電圧が放電開始電圧に達せず、プラズマ生成不良を引き起こしたり、プラズマ生成時間が短くなってしまうことが生じる。その結果、意図した処理結果(例えば、膜の厚さ又は均一性)を得ることができない。
【0007】
この開示において、従来技術とその解決手段に関する議論は、本発明の内容を説明するために行ったものであって、この議論が本発明時に公知となっていたことを意味するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施形態は、基板上に行われる連続プロセスでのプラズマ生成を安定化させるための方法を提供し、該方法は、(i)上部電極と基板が配置される下部の電極との間にRF電力のスパイクを印加する工程(ここでスパイクはゼロ電力から始まってスパイク電力にジャンプし、そして、プラズマ生成困難となる程度に低いベース電力に落ちるものである。)と、(ii)基板を処理するために、スパイクの期間よりも実質的に長い期間の間、上部電極と下部電極との間にベース電力にてRF電力を印加する工程とを含み、ここでスパイクは生成不良を減らすものである。
【0009】
いくつかの実施形態では、ベース電力は放電開始電圧の近傍に設定される。いくつかの実施形態では、プラズマが生成した後、スパイクは終了するが、そのスパイクの終了は、スパイクのないベース電力で処理される膜と比較して、スパイクが基板上の膜に実質的な変化を引き起こす前になされる。
【0010】
RF電力のスパイクの印加により、膜に実質的な変化を引き起こすことなく、プラズマ生成不良を著しく減らすることができる。
【0011】
本発明の態様および従来技術を超えて達成される利点を要約する目的のために、本発明のある目的及び利点が本開示で説明される。もちろん、このような目的や利点のすべてが必ずしも本発明に係る任意の具体的な実施形態に従って達成されるわけではないことは理解されるであろう。従って、例えば、本明細書で教示し又は示唆する他の目的、利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示する一つの利点又は一群の利点を達成する又は最適にする方法で本発明を実施または実行することができることを、当業者は認めるであろう。
【0012】
本発明のさらなる態様、特徴及び利点は、以下の詳細な説明により明らかになろう。
【0013】
本発明のそれらの特徴または他の特徴は、本発明の図示を意図し、限定を意図しない好適実施形態の図面を参照して説明される。図面は説明の目的で非常に単純化され、尺度も必ずしも一致しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aは、固体拡散(SSD)のためのホウケイ酸ガラス(BSG)プロセスの概略図である。 図1Bは、下地層の酸化が望ましくないSiOプロセスの概略図である。 図1Cは、フォトレジスト上での膜形成プロセスの概略図である。
図2図2Aは、基板を処理するために電極に印加されるRF電力の従来のパターンを示す。 図2Bは、本発明の実施形態に従った、基板を処理するために電極に印加されるRF電力のパターンを示す。
図3図3は、ホウケイ酸ガラス(BSG)がPEALDによってSi基板上に堆積されたとき、Si基板に拡散したホウ素の濃度を示す二次イオン質量分析(SIMS)の結果を表すグラフである。
図4図4は、プラズマ励起原子層堆積(PEALD)のための装置の概略図を示し、本発明の実施形態に従ったプラズマ生成を示す変数も併せて示す。
図5図5A(通常のプラズマ生成)、図5B(プラズマ生成不良)及び図5C(スパイクを伴ったプラズマ生成)は、本発明の実施形態に従ったプラズマモニタリング(プラズマモニター)と印加されたRF進行電力(Fwd)の出力を示すグラフである。
図6図6(通常のプラズマ生成)、図6B(プラズマ生成不良)及び図6C(スパイクを伴ったプラズマ生成)は、本発明の実施形態に従って印加されたRF進行電力(Fwd)に応答するVdc及びVppの出力を示すグラフである。
図7図7は、本発明の実施形態に従ったRF電力の印加のタイミングチャートである。
図8図8は、本発明の実施形態に従ったRF電力の印加の改善されたタイミングチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態に従ってRF電源を制御する制御スキームを略示する。
図10図10は、本発明の実施形態に従ったスパイクRFモードのシーケンスを示すフローチャートである。
図11図11は本発明の実施形態に従ったスパイクRFモードのシーケンスの一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この開示では、“ガス”は、気化した固体及び/又は液体を含んでもよく、一つのガス又はガスの混合物によって構成されてもよい。この開示において、プリカーサ、反応ガス、他の添加ガスは、ガスのタイプに関して、互いに異なっても、或いは相互に相いれないものであってもよく、すなわち、これらのカテゴリーの中で、ガスの重複がない。ある実施形態では、“膜”は、全ターゲット又は当該表面を覆うための、ピンホールのない実質的に厚さ方向に対して垂直な方向に連続して伸長する層、又は単に、ターゲット又は当該表面を覆う層を示す。また、ある実施例では、“層”は、表面または膜と同義のものの上に形成された特定の厚さを有する構造を示す。膜又は層が、特定の特徴をもつ個別膜又は層、又は複数の膜又は層により構成されてもよく、隣接した膜又は層の境界は明りょうであっても、明りょうでなくともよく、物理的、化学的、及び/又は他の特徴、形成プロセス又はシーケンス、及び/又は隣接する膜又は層の機能又は目的に基づいて確立されてもよい。本開示において、「一つの」は、一つの種又は複数の種を含む一つの属に言及したものである。さらに、本開示において、変数のいずれの二つの数も、その変数の実行可能な範囲(該実行可能な範囲はルーティンワークに基づいて決定され得る)を構成する場合があり、示されるいずれの範囲も、端点を含む場合があり除く場合もある。さらに、示される変数のいずれの値も、いくつかの実施形態において、正確な値又は近似の値に言及するものであり、等価なものを含み、平均値、中央値、代表値、過半数等を参照する場合がある。
【0016】
条件及び/又は構造が特定されない本開示では、当業者は本開示に鑑み、一連の実験の方法として、そのような条件及び/又は構造を容易に提供することができる。
【0017】
開示された実施形態の全てにおいて、実施形態に使用されるいずれの要素も、意図した目的のために、本明細書において明示的に、必然的に、または本質的に開示される同等のいずれかの要素に置き換えることができる。さらに本発明は、装置及び方法に等しく適用することができる。
【0018】
本開示において、いくつかの実施形態では、定義されたいずれの意味も、必ずしも通常及び慣例の意味を排除しない。
【0019】
上述のように、いくつかの実施形態は、基板上に行われる連続プロセスでのプラズマ生成を安定化させるための方法を提供し、該方法は、(i)上部電極と基板が配置される下部の電極との間にRF電力のスパイクを印加する工程(ここでスパイクはゼロ電力から始まってスパイク電力にジャンプし、そして、プラズマ生成不良となる程度に低いベース電力に落ちるものである。)と、(ii)基板を処理するために、スパイクの期間よりも実質的に長い期間の間、上部電極と下部電極との間にベース電力でもってRF電力を印加する工程とを含み、ここでスパイクはプラズマ生成不良を減らすものである。この開示では、“連続的”処理は、RF電力が同じ層を処理するため、同じ層を形成するために、又は物理的に若しくは化学的に同じ反応を行うため印加されるプロセス、又はこれらと同等の意味を示す。さらに、この開示では、“連続的に”とは、真空状態の中断を行わずに、一連の時間の経過の中断を行わずに、RF関連条件を除いた条件の変更を行わずに、二つの構造の間で物理的又は化学的な境界を生じさせずに、または上記と同等の意味を示す。この開示において、“スパイク”はRF電力の鋭い瞬間的な増加、又はRF電力において鋭く上昇し、その後に鋭くまたは階段状に減少するものを示す。スパイクの形状は典型的には棒状でもよいが、尖ったもの、又は階段状のものでもよい。スパイクの期間は、ベース電力が印加される処理の期間よりも実質的に短い。この開示では、“実質的により短い”、“実質的により長い”、“実質的に異なる”等は、重大な違い又は1/100、10/100、50/100、90/100又は実施態様において任意の範囲といった、当業者により認められる違いを示す。
【0020】
いくつかの実施形態では、ベース電力は放電開始電圧の近傍に設定される。この開示では、“放電開始電圧”は、ガス中の電極間に、自立的放電、即ち外部励起源なしで維持できる放電を生じさせるのに必要な最小の電位を示す。自立的放電は、電極間のギャップで生ずる励起プロセスにより維持される。電圧が放電開始電圧より低いとき、放電は開始されず、その電圧が放電開始電圧であるとき、生成不良が起こるとしても、放電は起こり得る。放電開始電圧の大きさは、ガスの性質及び圧力により、電極の材質、形状及び表面の状況により、さらに電極間のギャップなどにより決定される。当業者であれば、放電が開始するどうかに基づいて、電圧が放電開始電圧より高いかどうかを容易に決定できるとしても、放電開始電圧の正確な値は、それがガスのタイプ、圧力、電極やリアクタの形状などにより影響を受けることから、正確に特定することは容易ではない。その電圧が、放電が開始する放電開始電圧より高いと仮定できるので、この開示では、その電圧は、放電が開始する放電開始電圧より高いと仮定され、生成不良が起こる比率が、例えば、約0%より高い、約20%から約90%、又は約20%から約50%ときに、“放電開始電圧の近傍”にあると仮定される。生成不良が起こる比率とは、RF電力が電極に印加される全回数に対してプラズマが遅れることなく発生する回数の比率として定義される。電極間の電位及びそれらの間に印加されるRF電力はある程度相互に関連し、電極間に印加されるRF電力がゼロから上昇するとき、プラズマはRF電力が放電開始電圧に対応する値に達するときに発生する。いくつかの実施態様では、RF電力が、生成不良が起こる比率が、約0%より高い、約20%から約90%(又は約20%から約50%)であるようなとき、RF電力は“放電開始電圧の近傍に設定されたベース電力”である。スパイク電力はベース電力より大きく、ある実施形態では、スパイク電力は、生成不良が起こる比率が約20%未満、約10%以下又は5%以下であるようなものである。スパイクはゼロ電力から始まって、スパイク電力へジャンプし、そして放電開始電圧の近傍に設定されたベース電力に低下する。
【0021】
いくつかの実施形態では、ベース電力はプラズマ生成不良が起こる程度に低いものである。いくつかの実施形態では、ベース電力は、下部電極の面積当たり約0.12W/cm未満で、スパイク電力は約0.12W/cmを超える。いくつかの実施形態では、ベース電力は、下部の電極の面積当たり約0.012W/cmを超え、又は0.024W/cm超える。ベース電力が非常に低いと、プラズマはそれが一旦生成されるにせよ消滅してしまう。いくつかの実施形態では、スパイク電力は、下部電極の面積当たり、約0.36W/cm以下、又は0.24W/cm以下である。スパイク電力が短時間、電極の間に印加されると、続くベース電力は、ベース電力が放電開始電圧の近傍に設定されているときでも、生成不良が起こる比率が低いプラズマを維持することができる。いくつかの実施形態では、スパイクを伴わないベース電力の使用を除き、同じく処理される膜と比較して、スパイクが基板上の膜に実質的な変化を生じさせる前に、スパイクは終わる。スパイクの期間があまりに長いと、背景技術で述べたように、高電力による不都合な効果が基板にもたらされる。しかし、その期間が短いならば、スパイクは、不都合な効果をもたらすことなく、プラズマ生成を改善し、生成不良が起こる比率を低下させる。
【0022】
いくつかの実施形態では、スパイクはプラズマ生成を改善するためにプラズマが生成された後、終了する。しかし、前述のとおり、スパイクの期間は、不都合な効果の発生を妨げるために、短くされる。いくつかの実施形態では、スパイクはスパイクの開始の約50ミリ秒未満、典型的には約20ミリ秒未満以内(例えば、約10ミリ秒から約20ミリ秒)で終了する。いくつかの実施形態では、スパイクはプログラムを使用して制御することができる予め設定された時間の範囲内で終了する。
【0023】
図2Aは、基板を処理するために電極に印加されるRF電力の従来のパターンを図示し、ここでRF電力は開始のゼロミリ秒から終了となる200ミリ秒まで50Wで一定である。この50Wの電力は、放電開始電圧の近傍の電力に対応する。すなわち、その電力は非常に低く、そのため生成不良が起こる確率が非常に高いものである(例えば、20%以上)。図2Bは、本発明の実施形態に従った、基板を処理する電極に印加されるRF電力のパターンを図示するもので、この場合、開始時にRF電力の大きさは200Wにジャンプし、20ミリ秒後に、RF電力の大きさは50Wに低下しスパイクを構成する。その後、RF電力は200ミリ秒で終了するまで、50Wに維持される。スパイク電力は高く、その結果、プラズマ生成不良が起こる確率は低い(例えば、20%未満)。この実施形態では、50Wはベース力電力であり、200Wはスパイク電力である(すなわち、スパイク電力はベース電力の4倍となっている)。いくつかの実施形態では、スパイク電力は、ベース電力の約1.5倍から10倍となる場合がある。スパイクの期間は非常に短いので、スパイク電力は、スパイクが実施されない場合と比較して基板に重大又は相当なダメージを与えることがない。
【0024】
典型的に、RF電力の大きさはアナログ信号を使って制御され、RF電力のオン/オフの切り換えはデジタル信号を使って制御される。図7は、本発明の実施形態に従った、RF電力の印加のタイミングチャートで、ここで、RF電力がオンにされると(“RF−ON”)、デジタル信号はトリガーとして使用され、その信号に対するRF電力のアナログ信号が出力される。しかし、もともと、アナログ信号開始時の遅れ(“ASD”)が、スパイク電力(“SP”)に達する前に起こる。さらに、後述のとおり、スパイクの期間は50ミリ秒の倍数にのみ設定できる(例えば、RF電源の制御器(アナログ・デジタルシステム)とモジュール制御器(プロセスモジュール制御器)との間の通信についての交信容量による)。したがって、図7に示されているように、スパイクの期間(又はスパイク時間“ST”)の期間は最低限の50ミリ秒で設定される。スパイクの後、RF電力はベース電力(又は通常のRF電力「RFP」)に維持される。
【0025】
図9は、本発明の実施例に従ってRF電源(“RFGen”)94を制御する制御スキームの概要を図示する。主要制御ユニット(“UPC”)91(制御器)は、例えば、伝送制御プロトコル(“TCP”)とインターネットプロトコル(“IP”)を使ってプロセスモジュール制御器(“PMC”)92と通信する(プロセスモジュール制御器はRF電源94を制御するためのプロセスモジュールを含む。)。例えば、プロセスモジュール制御器92は、DeviceNet(データ交換のための制御装置を相互接続するためにオートメーション産業で使われているネットワークシステム)を介して、アナログ・デジタルシステム(“ADS”)93と通信する。アナログ・デジタルシステム93(プロセスモジュール制御器92とRF電源94のI/Oインターフェースボードの間に位置する)は、プロセスモジュール制御器92から制御コマンドを受け取り、そのコマンドのデジタル信号をアナログ信号に変換し、ビットシーケンスを個々のデジタル出力ポートへと出力する。アナログ・デジタルシステム93も、RF電源94からのアナログおよびデジタル信号を変換し、それらをプロセスモジュール制御器92に出力する。プロセスモジュール制御器92はすべてのアナログ出力とデジタル出力セッティングをアナログ・デジタルシステム93に50ミリ秒毎に出力し、アナログ・デジタルシステム93はすべてのアナログ入力とデジタル入力の現在値をプロセスモジュール制御器92に50ミリ秒毎に出力する。上記のデータボリュームが非常に大きいので、DeviceNetは、プロセスモジュール制御器92とアナログ・デジタルシステム93との間で、50ミリ秒毎以上に頻繁にデータを送ることができない。RF電力の大きさはアナログ信号を使って制御され、さらにRF電力のオン/オフの切り換えはデジタル信号を使って制御されるので、スパイクが従来の制御システムを使って制御されるならば、図7に図示されているように、スパイクの開始でのアナログ信号の遅れ(ASD)及び50ミリ秒の倍数で設定されるスパイクの期間(ST))は必然的なものである。
【0026】
しかし、いくつかの実施態様では、アナログ・デジタルシステムボードで、オン/オフの切換信号、RF電力、スパイク電力、スパイク時間及びベース電力をパラメータとして設定することにより、アナログ・デジタルシステムボードは、RF電力オン信号をトリガーとして使用するときに、ミリ秒でスパイクを制御することができる。さらに、RF電力がオフに切り替わったとき、スパイク電力を出力電力として設定することにより、アナログの信号の遅れを避けることができる。図8は、本発明の実施形態に従った上記を表すRF電力印加のタイミングチャートである。この実施形態では、スパイクのタイミングはRF電力のオン/オフ切り換え、並びにスパイク電力(SP)及びスパイク時間(ST)のデジタル信号によって制御される。スパイク電力はゼロを超える(すなわち、ベース電力を超える)設定値(スパイク電力の大きさ)をもち、そして連続プロセスの前(図8において、−50〜0ミリ秒)に始まっていて、連続プロセスでのスパイクの間(ST,図8において、0〜20ミリ秒)も続き、連続プロセスの後(図8において、200〜250ミリ秒)に再開する一方で、連続プロセス中のスパイクの終わりに、ゼロ(つまり、ベース電力)で開始し、連続プロセスの終わりまで(図8において、20〜200ミリ秒)続くパラメータとして使用される。スパイク電力(SP)は、RF電力オンオフ信号及び設定値をもつスパイク時間により規制されるが、パラメータ(タイマーがスパイクの始まりからカウントを開始し、設定時間が終えるまで(図8において0ミリ秒〜20ミリ秒)カウントを続ける)として使用される。図8において、RF電力がオフで、スパイク時間のタイマーが−50ミリ秒から0ミリ秒までの時間の間でまだカウントを開始していない時、スパイク電力の信号は出力される。スパイク電力の信号は出力されるが、RF電力がオフであるので、RF電力の印加はない。RF電力がオンで、スパイク時間のタイマーが0ミリ秒から20ミリ秒までの時間の間カウントしているとき、スパイク電力の信号は出力される。0ミリ秒から20ミリ秒までの時間の間、RF電力がオンであり、さらにスパイク電力が出力されるので、スパイク電力の印加がある。RF電力がオンで、スパイク時間のタイマーが20ミリ秒から200ミリ秒までの時間の間でカウントを終了するとき、スパイク電力の信号の出力はない。つまり、ベース電力が出力される。RF電力がオンであるので、ベース電力の印加はある。RF電力がオフで、スパイク時間のタイマーが200ミリ秒から250ミリ秒の時間の間でカウントを終了しているとき、スパイク電力の信号は出力される。スパイク電力の信号は出力されるが、RF電力がオフとなっているので、RF電力の印加はない。RF電力は、0ミリ秒のときオンであり、スパイク電力の信号はすでに出力されているので、スパイクは発生する。かくして、スパイクの開始のときに、スパイク電力のパラメータ値の変化が除かれることにより、アナログの開始遅れなしで、スパイクは開始する。この実施形態では、スパイクのタイミングは、RF電力のオン/オフの信号、スパイク電力及びスパイク時間によって制御される(スパイク時間は設定値をもち、そしてRF電力がオンとなったときカウントを開始し、その設定値が終わるまでカウントを続けるパラメータとして使用され、またスパイク電力は設定値をもち、そしてRF電力のオンオフ信号及びスパイク時間により規制されるパラメータとして使用される(スパイク電力の信号は、RF電力がオフの間、またはスパイク時間のカウントが行われている間、出力され、スパイク電力の信号は、RF電力がオンではあるがスパイク時間のカウントが停止している間、出力されない。)。
【0027】
この実施形態において、前述のとおり、RF電力が0ミリ秒でオンとなるとき、スパイク電力のパラメータは、値がゼロから設定される値まで上昇することを無くすために、スパイクに対して設定値を既に有しており、このことにより、アナログ開始遅れが除去される。さらに、設定されたスパイク時間が終わったとき、プロセスモジュール制御器から出力されるスパイクを終了させる信号を待つことなくスパイクは終了し、したがって、スパイクの期間をミリ秒で設定することができる。
【0028】
図8に図示されるそれのようなスパイク制御は、図10に図示されるフローチャートで示されているように実行されるプログラムを使用して達成することができる。いくつかの実施形態において、パラメータは下記の表1で示されているように定めることができる。
【0029】
【表1】
【0030】
最初に、アナログデジタルシステム(ADS)はデジタル出力及びアナログ出力(DO/AO)信号を、必要ならばDeviceNet(ステップ1)を介してプロセスモジュール制御器(PMC)から取得する。ADS及びPMCは、制限されたデータ伝送能力のために、例えば、50ミリ秒以下毎に互いに通信することができない場合がある。次に、スパイク電力の設定値がゼロであるかどうか(ステップ2)、およびスパイク時間の設定値がゼロであるかどうか(ステップ3)が決定される。どちらの値もゼロでないならば、スパイクRFモードが起動する。そして、RF電力がオンであるかどうか(ステップ4)が決定される。図8に図示されるように、RF電力のオン/オフ切り換えは別に制御される。RF電力が、例えば、−50ミリ秒から0ミリ秒まで、または200ミリ秒から250ミリ秒までの時間の間(図8)オンではない場合、RF−ONのDO信号がオフとなり(ステップ5)、スパイクRFモードの状況は「非動作中」に設定される。つぎに、RF電力がオンである時いつでもスパイクを行えるように、スパイクRF電力(スパイク電力)の値がRF電力の出力として設定される(ステップ7)(RF電力が遅れなしでスパイク電力へとジャンプすることができる。)。その後、全てのDO信号及び全てのAO信号が、ADSからRF電源へ出力され(ステップ8及び9)、RF電源が制御される。ステップ9(ここで、RF電源がデジタル及びアナログ信号を使って操作される。)の後、ステップ1に戻って、上記シーケンスが繰り返される。
【0031】
ステップ4で、イエスの場合、すなわち、RF電力がオンである場合、RF−ONのDO信号がオンに設定される(ステップ10)。つぎに、スパイクRFモードが「動作中」かどうかが決定される(ステップ11)。ノーである場合、すなわち、スパイクRFモードが「非動作中」である場合、スパイクRFモードが完了しているかどうかが決定される(ステップ12)。ノーである場合、スパイクRF電力モードの状態は、「動作中」に設定され(ステップ13)、スパイク時間タイマーは、例えば、0ミリ秒のときに(図8)カウントを開始する(ステップ14)。スパイクRF電力(スパイク電力)の値が、すでにRF電力の出力として設定されており(ステップ7)、ステップ8及び9がその後に続き、その結果RF電力が遅れなしでスパイクRF電力の設定値へジャンプすることができる。
【0032】
ステップ12で、イエスの場合、すなわち、スパイクRFモードが、例えば、20ミリ秒から200ミリ秒まで時間の間(図8)、完了している場合、通常のRF電力(ベース電力)の値がRF電力の出力として設定され(ステップ17)、ステップ8と9が続く。
【0033】
ステップ11で、イエスの場合、すなわち、スパイクRFモードが「動作中」である場合、スパイクRFモード(スパイクRF動作時間)が終わっているかどうかが決定され(ステップ15)、例えば、0ミリ秒から20ミリ秒の時間の間(図8)、また終わっていない場合、スパイクRF電力の設定値が適用されているように、ステップ7、8及び9が実行される。ステップ15で、スパイクRFモードが、例えば、20ミリ秒(図8)で終了している場合、スパイクRFモードの状態は、「完了」に変わる(ステップ16)。次に、通常のRF電力(ベース電力)の値が、RF電力の出力として設定され(ステップ17)、ステップ8及び9が続く。
【0034】
ステップ2及び3で、スパイク電力又はスパイク時間のいずれかがゼロの場合、図11に図示されているように、通常のRFモードが起動する。つまり、RF電力がオンであるかどかが決定される(ステップ18)。イエスである場合、RF−ONのDO信号がオンに設定され(ステップ19)、通常のRF電力(ベース電力)の値が、RF電力の出力として設定され(ステップ21)、ステップ8及び9が続き、ステップ1へと戻る。ステップ18で、ノーの場合、すなわち、RF電力がオンとなっていない場合、RF−ONのDO信号はオフに設定され(ステップ20)、ステップ21、8及び9が続く。
【0035】
上記実施形態において、スパイクのタイミングはプログラムされ、スパイクは経過時間に基づいて終了するようにプログラムされる(プラズマが生成された後、スパイクを終了させる時間が設定される。)。当業者であれば、ルーティーンの実験に基づいてプラズマ生成のタイミングを容易に決めることができるだろう。しかし、いくつかの実施形態では、RF電源及び/又はプラズマ光からの信号に基づいてプラズマ生成をモニターすることによって、スパイクは、プラズマ生成が検出されたときに終了する。いくつかの実施形態では、プラズマ生成は、光センサーを使用して、上下の電極の間でプラズマ光をモニターすることによって検出される。いくつかの実施形態では、プラズマ生成は、RF電源や整合機で測定されるピークツーピーク電圧(Vpp)及び/又は自己バイアス電圧(Vdc)をモニターすることによって検出される。
【0036】
図4は、プラズマ励起原子層堆積(PEALD)のための装置の概略図であり、本発明の実施形態にしたがったプラズマ生成を示す変数を図示する。使用可能な装置は図4に図示の装置に限定されず、本発明のいくつかの実施形態は、PEALD、PECVD、サイクリックPECVD、プラズマエッチング、プラズマクリーニング、又は他のプラズマ処置のために適したどのプラズマ堆積装置にでも適用することができる。本装置は、チャンバ45、チャンバ45内に備えられる上部電極又はシャワーヘッド47、および下部電極又はサセプター46を含む。基板Wが下部電極46上に載置されて、プラズマとの反応のためにチャンバ内部(チャンバは排気管49を使用して排気される。)へプリカーサ容器41から供給されるプリカーサ及びガス容器42から供給されるリアクタントを使用して原子層堆積を行う。プラズマは整合機44を介してRF電源43からのRF電力を印加することによって、電極の間で発生する。外側からプラズマ光をモニターするために、チャンバ45は、ビューポート(観察窓)48(その中に光センサー33が上部及び下部電極の間の空間に向けて設置される)を有する。光センサー33は光ケーブル32を介して光センサーモジュール31に接続されている。光センサーモジュール31から、アナログ出力信号がADS(図示せず)に出力される。図4の中のグラフ(a)はプラズマ光モニターの典型的な結果である。(プラズマのモニタリング(プラズマモニター)のパルスはRF進行電力(Fwd)のパルスと同期して、検出される。)。
【0037】
図5A((通常のプラズマ生成)、図5B(プラズマ生成不良)及び図5C(スパイクを伴ったプラズマ生成)(図4中の(a)よりも詳細に示す)は、本発明の実施形態に従って印加RF進行電力(Fwd)に応じたプラズマのモニタリング(プラズマモニター)の出力を示すグラフである。図5Aは、RF進行電力(Fwd)が印加されたとき、プラズマが生成し(アナログ信号を出力する(プラズマモニター)光センサーにより検出される)、その後信号が維持されることを示し、RF電力がオフとなるまでプラズマが維持されていることを示す。しかし、図5Bに示されているように、RF電力の電圧が放電開始電圧の近傍の場合、RF進行電力(Fwd)が印加されたときでも、時に、信号は光センサーで検出されない(プラズマが生成していないことを示す)。図5Cでは、図5Aで使用された電力より大きいRF電力がRF電力の印加開始の時に適用されたとき、光センサーからのアナログ信号出力(プラズマ生成が生じたことを示す)が検出され、検出の直後に、RF電力は図5Aに示されたのと同じ電力に減少する(図5Cに示されているように、RF電力のスパイクが構成される。)。RF電力のスパイクを印加することにより、図5Bに示されたようなプラズマ生成不良を避けることができる。
【0038】
図4に示されているように、プラズマ生成をモニターするために、チャンバ45は、RF電源や整合機44で測定されるピークツーピーク電圧(Vpp)及び/又は自己バイアス電圧(Vdc)をモニターするための他の検出システムを更に、又は代わりのものとして有する。図4の中のグラフ(b)は、プラズマ生成をモニターする典型的な結果を示す(ここで、Vdc及びVppのパルスが、RF進行電力(Fwd)のパルスと同期して検出されている。)。
【0039】
図6A(通常のプラズマ生成)、図6B(プラズマ生成不良)及び図6C(スパイクを伴ったプラズマ生成)(図4の中の(b)よりも詳細を示す)は、本発明の実施形態にしたがって印加RF進行電力(Fwd)に応じたVdc及びVppの出力を図示するグラフである。図6AはRF電力(Fwd)が印加されたとき、プラズマが生成されたことを示す(プラズマはVdcを変化させ、Vdcの下向きパルスを形成する一方で、Vppのパルスは、プラズマ生成に関係なく、RF電力のパルスと非常に相関したものとなっている。)。しかし、図6Bに示されているように、RF電力の電圧が放電開始電圧の近傍であると、RF電力(Fwd)が印加されたときでも、時に、Vdcの変化は検出されず、このことは、プラズマ生成が起こっていないことを示す。図6Cにおいて、図6Aの中で用いられたRF電力より大きいRF電力がRF電力の印加の開始時に印加されるとき、Vdcの変化が検出され(このことはプラズマ生成が起こっていることを示す。)、検出の直後に、RF電力は図6Aに示されたのと同じ電力へと減少し、図6Cに示されているようにRF電力のスパイクが構成されることになる。Vppのスパイクは、RF電力のスパイクを反映している。RF電力のスパイクを印加することによって、図6Bに示されているようなプラズマ生成不良を避けることができる。
【0040】
上記の実施形態や他の実施形態において、当業者であれば、本装置が、ここで記述され、実行される上記検出プロセスを行うようにプログラムされるか、さもなければ、構成される一つ以上の制御器(図示せず)を含むことは分かるであろう。制御器は、当業者には分かるように、リアクタの電力源、加熱システム、ポンプ、ロボット及びガス流制御器又は弁と通信する。
【0041】
開示された実施形態は特定の例に関連して説明されているが、これは本発明を制限することを意図するものではない。具体的な例に示されている数値は、他の条件では少なくとも50%の範囲(範囲の端点は含んでも、含まなくともよい)で修正することができる。条件や構成が具体的になっていないものについて、当業者であれば、本開示の下、ルーティーンの実験項目として、具体的な条件や構成を容易に提供できるだろう。
【0042】

半導体基板(直径300mm)が、ホウケイ酸ガラス(BSG)のPEALD用の図4に示された装置の直径325mmをもつサセプター上に載置され、BSGの膜が、以下の条件の下、基板に堆積された。
【0043】
BSG用のPEALD
プリカーサ:BDEAS、TEOB
プリカーサの流入圧:400Pa
基板温度:300℃
プリカーサーキャリアガス流量:2.0SLM(連続)
反応ガス流量:0.5SLM(連続)
サイクル当たりのプリカーサ供給時間:0.3秒
プリカーサ供給後のパージ時間:1.0秒
RF周波数:13.56MHz
サイクル当たりのRFプラズマ照射時間:0.2秒
RF電力印加サイクル後のパージ時間:0.1秒
【0044】
RF電力の印加サイクルは、以下の表2に示された条件の下で、図10及び図11に図示されたシーケンスを実行するプログラムを使用して、図2Bに基づき制御された。各条件の下、プラズマ生成不良が起こる比率(RF電力を電極に印加した全回数に対して、遅れなくプラズマが生成された回数の比率)が決定され、その結果も表2に示されている。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示されているように、例1ではスパイクが印加されなかったとき(例1)、プラズマ生成不良が起こる比率は35%であった(このことは、50Wが放電開始電圧近傍のRF電力であったことを示すと考えられる。(プラズマ生成不良が起こる比率が20%以上であるとき、例えば、RF電力はこの条件下で放電開始電圧の近傍に設定されていると考えられる。))。スパイク電力が100Wでスパイク期間が10ミリ秒のスパイクが印加されたとき(例2)、プラズマ生成不良が起こる比率はまだ35%で改善されなかった。さらに、スパイク電力が100Wでスパイク期間が20ミリ秒(例2の二倍の時間)のスパイクが印加されたとき(例7)、プラズマ生成不良が起こる比率はまだ35%で改善されなかった。さらに、スパイク電力が100Wでスパイク期間が50ミリ秒(例2の四倍)のスパイクが印加されたとき(例9)、プラズマ生成不良が起こる比率は30%程度の高さで大幅な改善は無かった。したがって、スパイク電力が高くないとき、スパイクの時間が長くなっても、プラズマ生成不良が起こる比率は改善されない。
【0047】
スパイク電力が200W(例2の場合の2倍)でスパイク時間が10ミリ秒のスパイクが印加されたとき(例3)、プラズマ生成不良が起こる比率は35%%で改善されなかった。しかし、スパイク電力が200Wでスパイク期間が20ミリ秒(例3の場合の二倍)のスパイクが印加されたとき(例8)、プラズマ生成不良が起こる比率に5%に低下し、実質的に改善された。スパイク電力が200Wでスパイク期間が50ミリ秒(例3の場合の五倍)のスパイクが印加されたとき(例10)、プラズマ生成不良が起こる比率は0%に低下し、急激に改善された。スパイク電力が300W(例2の場合の三倍)でスパイク期間が10ミリ秒のスパイクが印加されたとき(例4)、プラズマ生成不良が起こる比率は実質的に15%に低下し、実質的に改善された。さらに、スパイク電力が400W(例2の場合の四倍)でスパイク期間が10ミリ秒のスパイクが印加されたとき(例5)、プラズマ生成不良が起こる比率は0%に低下し急激に改善された。さらに、スパイク電力が500W(例2の場合の五倍)でスパイク期間が10ミリ秒のスパイクが印加されたとき(例6)、プラズマ生成不良が起こる比率は0%に低下し、急激に改善された。このように、少なくとも200WのRF電力をもつスパイクを適切な時間設定(例えば、約200Wで約20ミリ秒、約300Wで10ミリ秒)で使用すると、プラズマ生成不良は実質的に改善された。
【0048】
次に、ホウケイ酸ガラス(BSG)を以下を除き上記と同じ条件で、4つの条件で成膜を行った(スパイクなしの50W、200Wで20ミリ秒のスパイクを伴う50W、200Wで50ミリ秒のスパイクを伴う50W、およびスパイク無しの200W)。このようにして得られた基板は、基板の表面を露出するためにDHFに浸漬しBSG膜を除去した(Si基板の表面について、基板に拡散するホウ素の濃度を測定するために二次イオン質量分析(SIMS)を行った。)。結果は図3に示されている。スパイクなしの50WのRF電力で基板上にBSG膜を堆積した場合、プラズマ生成は上記の表2(例1)で示されているように不安定である。しかし基板に浸透され、拡散されたホウ素の濃度は4E+16原子/cmのオーダー内にあった(このことはドーパントのホウ素の衝撃が深刻でなかったことを示している。)。一方、スパイクなしの200WのRF電力が基板上にBSG膜を堆積するために、印加されたとき、プラズマ生成は安定的(プラズマ生成不良が起こる比率がゼロパーセント)であるが、基板に浸透され、拡散されたホウ素の濃度は図3に示されているように、1.5E+17原子/cmのオーダーに上昇した(このことはドーパントのホウ素の衝撃が重大であることを示している。)。200Wで50ミリ秒のスパイクを伴う50WのRF電力が基板上にBSG膜を堆積するために、印加されたとき、プラズマ生成は表2に示されているとおり(例10、プラズマ生成不良が起こる比率がゼロパーセント)安定的であったが、しかし、基板に浸透され、拡散されたホウ素の濃度は、図3に示されているとおり、スパイクなしの200WのRF電力を印加する場合と実質的に同じレベルに増加した(このことは、スパイクの期間が非常に長いと(約50ミリ秒以上長い)、ドーパントのホウ素の衝撃が、スパイク電力の連続な印加のときと同じように重大となった。)。200Wで20ミリ秒のスパイクを伴う50WのRF電力が基板上にBSG膜を堆積するために、印加されたとき、プラズマ生成は図表2に示されているとおり(例8、プラズマ生成不良が起こる比率が5パーセント)安定的であり、基板に浸透され、拡散されたホウ素の濃度は増加せず、図3に示されているとおり、スパイクなしの50WのRF電力の印加の場合と実質的に同じレベルであった(このことは、スパイクの期間が十分に短いと(約20ミリ秒以下と短い)、ドーパントのホウ素の衝撃が、スパイクなしのベース電力の連続な印加と同じように制御され、スパイクは基板に実質的な変化を生じさせなかった。)。
【0049】
上記のとおり、スパイク電力(P[W])及びスパイク時間(T[ミリ秒])が適切に設定されると、プラズマ生成は、スパイクで基板に実施的な変化を生じさせることなく効果的に安定化することができる。適切なPおよびTが基板材料、プロセスのタイプなどに依存するが、当業者であれば、ここでの開示及び他のルーティーンの実験に基づき適切なP及びTを決定することができる。いくつかの実施形態では、式P=(2000/T)+100は直径325mmをもつサセプター-に適用され、P20%、T20%を採用することができる。いくつかの実施形態では、下部電極の面積当たりのスパイク電力、Pは0.15W/cmから0.6W/cmの範囲で設定され、スパイクの期間(ミリ秒)はT50%またはT20%で、ここでT=2.4/(P−0.12)である。
【0050】
いくつかの実施形態で、本発明は、背景技術において議論されたプロセスを含む適切なプラズマ処理にも適用される。
【0051】
本発明の思想から逸脱することなく、多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。従って、言うまでもなく、本発明の態様は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
図1
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図11