(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付勢力発生手段は、前記第1軸支持部に対して前記第2軸支持部が前記吸入口から前記吐出口へ向かう方向にずれていることにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
前記ポンプケースは、前記第1軸支持部が設けられた第1ケースと、前記第2軸支持部が設けられ、前記第1ケースとの間に前記ロータ配置室を構成する第2ケースと、を有し、
前記第1ケースには、前記ロータの前記回転中心軸線の一方側の端面のうち、前記羽根部より径方向内側の部分に設けられた第1ロータ側シール部に前記回転中心軸線方向で対向する第1ケース側シール部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載のポンプ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のカスケードポンプ装置では、渦流室の流体圧力は、吸入口付近が最も低圧であり、吐出口付近が最も高圧である。このため、羽根部が流体圧力によって吐出口から吸入口へ向かう方向に押されることになる。また、この種のカスケードポンプ装置において、部品の寸法誤差や組立時の誤差が存在するため、ロータの中心軸線を渦流室の中心軸線と完全に一致させるのは困難であり、ロータの中心軸線が渦流室の中心軸線に対して寸法誤差や組立時の誤差の範囲で傾いた状態に取り付けられる。ここで、渦流室の中心軸線方向に対して支軸およびロータが傾いた場合、渦流室内で羽根部が傾いた状態になるため、羽根部に作用する流体圧力の一部がロータをその回転軸線方向に付勢する付勢力となる。このとき、付勢力の向き、すなわち、ロータが回転軸線方向の一方側と他方側のどちら側に付勢されるかは、ロータおよび支軸が倒れる方向によって決まる。
【0005】
特許文献1では、渦流室の中心軸線に対してロータおよび支軸がどちらの方向に倒れるかが決まっておらず、ロータおよび支軸の傾き方向は不安定である。従って、流体圧力によってロータが回転時に回転軸線方向の一方側と他方側のどちら側に移動するかを制御できない。
【0006】
カスケードポンプ装置では、ロータが回転軸線方向にがたついてロータ配置室(ポンプ室)におけるロータの位置精度が低下すると、ポンプ効率の低下や、ポンプケースとロータが接触することによるノイズ発生などの問題が生じる。ロータの回転軸線方向の両端をポンプケースに設けたスラスト軸受によって支持することでロータのがたつきおよびポンプケースとの接触を回避することも考えられるが、ロータの軸線方向の両側にスラスト軸受を設けると部品点数が増加してしまう。
【0007】
また、渦流室の内周側にはポンプケースとロータとの隙間が狭いシール部が構成されている。従って、シール部での接触を回避し、且つ、シール部でのクリアランスを要求される精度に保つことができるように、ロータが回転軸線方向で位置決めされていることが望ましいが、このためには、スラスト軸受を高精度に取り付ける必要があり、部品の加工精度を高める必要がある。よって、コストアップ要因となってしまう。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、簡素な構成でポンプケース内におけるロータの位置を規定することにより、ノイズ低減およびポンプ効率の低下を抑制できるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のポンプ装置は、外周側端部に複数の羽根部が周方向に設けられたロータと、前記ロータに保持されたマグネットと磁気駆動機構を構成するステータと、前記ロータが配置されたロータ配置室、該ロータ配置室の外周側で周方向に円弧状に延在して両端が各々、吸入口および吐出口に連通する渦流室、前記ロータの回転中心軸の一端を支持する第1軸支持部、および前記回転中心軸の他端を支持する第2軸支持部を備えたポンプケースと、前記ロータが回転した際、前記ロータを該ロータの回転中心軸線の一方側に向けて付勢する流体圧力を発生させる付勢力発生手段と、を有
し、前記付勢力発生手段は、前記第1軸支持部と前記第2軸支持部とが前記渦流室の中心軸線に対して交差する方向にずれていることにより構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ロータの回転時に付勢力発生手段によってロータに作用する流体圧力が発生し、この流体圧力によって予め決まった方向(回転中心軸の一方側)に向けてロータが付勢され、ポンプケースに対してロータが回転中心軸線方向で位置決めされる。このため、高精度な部品を用いることなく、回転時にロータの軸線方向のがたつきを回避できる。従って、ロータとポンプケースとの接触によるノイズの低減を図ることができ、ロータの位置精度の低下によるポンプ効率の低下を抑制できる。
また、前記付勢力発生手段は、前記第1軸支持部と前記第2軸支持部とが前記渦流室の中心軸線に対して交差する方向にずれていることにより構成されている。このようにすると、渦流室の軸線方向に対して予め決まった方向に傾けた状態に回転中心軸を設置することができ、ロータの回転時には、予め決まった方向にロータが付勢される。従って、回転時にロータの軸線方向のがたつきを回避でき、ロータの位置精度を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記ポンプケースは、前記第1軸支持部が設けられた第1ケースと、前記第2軸支持部が設けられ、前記第1ケースとの間に前記ロータ配置室を構成する第2ケースと、を有し、前記第1ケースには、前記ロータの前記回転中心軸線の一方側の端面のうち、前記羽根部より径方向内側の部分に設けられた第1ロータ側シール部に前記回転中心軸線方向で対向する第1ケース側シール部が形成されていることが望ましい。このようにすると、第1ケース側シール部を前記第1軸支持部と一体に形成できるため、第1ケース側シール部と第1ロータ側シール部とのクリアランスを小さく設定した場合でも、ロータの位置精度を高めたことによって、ロータと第1ケースとの接触を回避できる。
【0012】
本発明において、前記第1ケース側シール部は、前記渦流室に対して径方向内側で隣接し、前記第1ケースと前記ロータとのクリアランスは、前記ロータ側シール部と前記第1ケース側シール部において最小であることが望ましい。渦流室に隣接する部分にシール部を設けることによって渦流室からの流体のリークを抑制してポンプ効率の低下を抑制できるが、この部分はロータの外周側であって回転時に周速が大きいため、ロータと第1ケースが接触した場合に発生するノイズが大きい。しかるに本発明では、ロータとポンプケースとの接触を回避できるため、ポンプ効率の低下を抑制しつつ、ノイズの低減を図ることができる。
【0013】
本発明において、前記ステータは、径方向からみたとき、前記回転中心軸と重なる位置に配置され、前記回転中心軸線方向において、前記ステータの磁気中心は、前記ロータの磁気中心に対して前記付勢力発生手段による前記ロータの付勢方向側にずれていることが望ましい。このようにすると、磁気吸引力によってロータが付勢される方向と、回転時にロータが付勢される方向とが一致する。従って、起動時にロータががたつくのを防止できるので、起動時のノイズを低減できる。また、回転中心軸とステータとが径方向から見て重なっていることで、ステータの磁気中心をロータの磁気中心に対して第1ケース側にずらすことが容易であり、ポンプ装置の薄型化にも有利である。
【0014】
本発明において、前記第1ケースは、前記ステータを前記ロータ配置室から隔離する隔壁部を備え、当該隔壁部に前記第1軸支持部が形成された有底の筒部が設けられ、前記ステータへの給電基板は、前記筒部の径方向外側に配置されていることが望ましい。このようにすると、第1軸支持部(軸穴)を基板の厚さ分だけ長くすることができる。あるいは、ロータを支持するスラスト軸受を複数重ねて配置することも可能になる。従って、ロータの位置精度を向上させることができる。
【0015】
本発明において、前記回転中心軸は、両端が前記第1軸支持部および前記第2軸支持部に固定された支軸であり、前記ロータにおいて前記支軸に嵌まる筒状軸受部の前記回転中心軸線の一方側の端面と前記第1ケースとの間には、前記支軸に嵌められた環状のスラスト軸受が配置され、前記支軸において、前記スラスト軸受が嵌まる部位と前記筒状軸受部が嵌まる部位とは同一径であることが望ましい。このようにすると、ロータの軸方向の位置調整をするときに、スラスト軸受の厚さ変更や複数のスラスト軸受を重ねて配置するなどの方法によって対応できる。
【0017】
本発明において、前記付勢力発生手段は、前記第1軸支持部に対して前記第2軸支持部が前記吸入口から前記吐出口へ向かう方向にずれていることにより構成されていてもよい。このようにすると、低圧側(吸入口側)に配置された第1軸支持部に向けてロータが付勢される。従って、第1ケースに対してロータを位置決めでき、回転時にロータの軸線方向のがたつきを回避して位置精度を高めることができる。
【0018】
この場合に、前記第1軸支持部および前記第2軸支持部は、前記渦流室の前記中心軸線に対して平行に凹む軸穴であり、前記回転中心軸は、前記第1軸支持部に圧入固定されていることが望ましい。このように、圧入固定によって、第1ケースに対する回転中心軸の径方向の位置精度を高めることができる。また、回転中心軸の他端は第2ケース側の軸穴(第2軸支持部)に対して斜めに挿入されるため、第2ケースに対する回転中心軸の径方向の位置精度も高まる。従って、ロータの径方向の位置精度を高めることができる。また、回転中心軸の傾きを考慮して軸穴を形成する必要がないため、第1ケースおよび第2ケースの製造が容易である。
【0019】
次に、本発明のポンプ装置は、外周側端部に複数の羽根部が周方向に設けられたロータと、前記ロータに保持されたマグネットと磁気駆動機構を構成するステータと、前記ロータが配置されたロータ配置室、該ロータ配置室の外周側で周方向に円弧状に延在して両端が各々、吸入口および吐出口に連通する渦流室、前記ロータの回転中心軸の一端を支持する第1軸支持部、および前記回転中心軸の他端を支持する第2軸支持部を備えたポンプケースと、前記ロータが回転した際、前記ロータを該ロータの回転中心軸線の一方側に向けて付勢する流体圧力を発生させる付勢力発生手段と、を有し、前記付勢力発生手段は、周方向に傾いた傾斜面をもって前記ロータに形成された傾斜流路であ
り、前記傾斜流路は、前記ロータの外周側端部に溝状に形成されている。本発明によれば、ロータが回転するときに傾斜流路を流体が流れ、このときに傾斜面に作用する流体圧力によって、ロータが回転中心軸の一端側に向けて付勢される。従って、回転時にロータの軸線方向のがたつきを回避でき、ロータの位置精度を高めることができる。
また、このようにすると、傾斜流路を形成した部位の周速が大きいため、傾斜流路を通る流体の流速が大きく、傾斜面に働く流体圧力が大きい。従って、ロータに作用する付勢力をより大きくすることができ、ロータのがたつきおよびポンプ効率の低下をより低減できる。
【0020】
また、この場合に、前記傾斜流路は、周方向の複数個所に等角度間隔で配置されていることが望ましい。このようにすると、傾斜流路の1つがシール部と周方向に重なった場合でも、他の傾斜流路には流体が流れる。従って、ロータを常に軸線方向に付勢できる。また、ロータが傾く方向に作用するモーメントを相殺できるので、ロータおよび回転中心軸の傾きの変化を抑制できる。
【0021】
本発明において、前記傾斜流路は、前記ロータの前記回転中心軸線の一方側の端面で開口する第1開口と、前記ロータの前記回転中心軸線の他方側の端面で開口する第2開口と、を備え、前記回転中心軸線方向からみたとき、前記傾斜面の全体が前記第1開口および前記第2開口の一方と重なっている
ことが望ましい。このようにすると、ロータが回転するときに傾斜流路に軸流が流
れる。また、このように、傾斜面の全体が軸線方向から見て露出している場合には、スライド型を用いることなく、軸線方向に2分割した金型によってロータを成形できる。従って、ロータの製造が容易である
。
【0022】
この場合に、前記第1開口および前記第2開口は、前記回転中心軸線方向からみたとき、前記ロータにおいて前記渦流室と重なる径方向位置に形成され、前記第1開口および前記第2開口の周方向の開口幅は、周方向において前記渦流室が形成されていない円弧状シール部の周方向の幅よりも小であることが望ましい。このようにすると、傾斜流路を介して吐出口と吸入口との間で流体がリークすることを抑制できる。従って、ポンプ効率の低下を抑制できる。
【0025】
この場合に、前記貫通流路は、前記ロータと前記ポンプケースとの間において前記羽根部より径方向内側に設けられたシール部よりも径方向内側に形成され、前記シール部には、該シール部の径方向内側と径方向外側とを連通させる短絡溝が形成されていることが望ましい。このようにすると、ポンプ装置によって液体を圧送するとき、渦流室に侵入した空気を短絡溝を通って内周側に導き、貫通流路から吐出口側に排出できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ロータの回転時に付勢力発生部によってロータに作用する流体圧力が発生し、この流体圧力によって予め決まった方向(回転中心軸の一方側)に向けてロータが付勢され、ポンプケースに対してロータが位置決めされる。このため、高精度な部品を用いることなく、回転時にロータの軸線方向のがたつきを回避でき、ロータの位置精度を高めることができる。従って、ロータとポンプケースとの接触によるノイズの低減を図ることができ、ロータの位置精度の低下によるポンプ効率の低下を抑制できる。また、付勢力発生手段が第1軸支持部と第2軸支持部とが前記渦流室の中心軸線に対して交差する方向にずれていることにより構成されている発明においては、渦流室の軸線方向に対して予め決まった方向に傾けた状態に回転中心軸を設置することができ、ロータの回転時には、予め決まった方向にロータが付勢される。従って、回転時にロータの軸線方向のがたつきを回避でき、ロータの位置精度を高めることができる。あるいは、付勢力発生手段が周方向に傾いた傾斜面をもって前記ロータに形成された傾斜流路であり、傾斜流路は、ロータの外周側端部に溝状に形成されている発明においては、ロータが回転するときに傾斜流路を流体が流れ、このときに傾斜面に作用する流体圧力によって、ロータが回転中心軸の一端側に向けて付勢される。従って、回転時にロータの軸線方向のがたつきを回避でき、ロータの位置精度を高めることができる。また、傾斜流路を形成した部位の周速が大きいため、傾斜流路を通る流体の流速が大きく、傾斜面に働く流体圧力が大きい。従って、ロータに作用する付勢力をより大きくすることができ、ロータのがたつきおよびポンプ効率の低下をより低減できる
。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態1)
以下に、図面を参照して本発明の実施形態1に係るポンプ装置を説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態1のポンプ装置の説明図であり、
図1(a)にはポンプ装置を軸線方向の一方側から見た平面図が示され、
図1(b)にはポンプ装置を軸線方向の他方側から見た底面図が示されている。
図2は実施形態1のポンプ装置の断面図であり、
図2(a)は
図1(a)のA−A断面図、
図2(b)は第2軸支持部の周辺(
図2(a)の領域E)の部分拡大断面図である。実施形態1のポンプ装置1は液体等の流体を圧送するカスケードポンプ装置である。このポンプ装置1は、電子機器に内蔵されており、CPU等を冷却する冷媒としての水を循環させる用途で用いられている。なお、ポンプ装置1によって他の流体を圧送することもでき、他の用途に用いることもできる。
【0029】
ポンプ装置1は全体として偏平な4角柱形状のポンプケース2を備えている。ポンプケース2は樹脂製であり、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等からなる。ポンプ装置1は、軸線L方向(高さ方向)の一方側L1に位置する第1端面2aと、軸線L方向の他方側L2に位置する第2端面2bを備える。第1端面2aの内周部は、後述する封止剤16によって構成され、第1端面2aの外周縁および第2端面2bは、ポンプケース2によって構成されている。ここで、ポンプ装置1の軸線Lとは、ポンプケース2に設けられた後述する円弧状の渦流室31の中心軸線を示すものとする。
【0030】
(ポンプケース)
ポンプケース2は、軸線L方向から見たときのポンプケース2の輪郭を構成している外周面として、吸入管3および吐出管4が平行に突出している第1側面2cと、第2端面2b側から見たときに第1側面2cに対して反時計回り方向に隣接する第2側面2dと、第2側面2dの裏側に位置する第3側面2eと、第1側面2cの裏側に位置する第4側面2fを備えている。ポンプケース2の第1側面2cと第2側面2dの間の角部分には、ポンプケース2の内側からリード線5を取出すための配線取出し部6が設けられている。
【0031】
リード線5は、配線取出し部6を介して、ポンプケース2を軸線L方向に見たときの平面形状の対角線方向に引き出されている。リード線5は吸入管3および吐出管4よりも長く延びており、その先端にはコネクタ7が取り付けられている。吸入管3、吐出管4、および配線取出し部6は、ポンプケース2の高さの範囲内、すなわち、ポンプケース2の軸線L方向の両端に位置する第1端面2aと第2端面2bの間に設けられている。配線取出し部6には、ポンプケース2を切り欠いて形成した配線取出し口(図示せず)との間にリード線5を挟み込んで固定する固定部材6aが取り付けられている。
【0032】
配線取出し部6が設けられている第1側面2cと第2側面2dの間の角部分には、この角部分の先端を斜めに切り欠いた傾斜面2kが形成されている。また、この角部分には、第1側面2cの側から傾斜面2kと平行に延びるフック8が設けられている。傾斜面2kとフック8の間には、リード線5を係止する隙間が形成されている。フック8は、傾斜面2kの軸線L方向の中間部分に位置している。フック8と傾斜面2kとの隙間にリード線5を係止することで、傾斜面2kの軸線L方向の一方側L1(第1端面2a側)に位置している配線取出し部6から引き出したリード線5を、軸線L方向の他方側L2(第2端面2b側)に引き回すことができる。
図1、
図2(a)は、リード線5をフック8に係止して方向転換することなく配線取出し部6から延ばした状態を図示している。
【0033】
第2側面2dと第4側面2fの間の角部分、および、第3側面2eと第1側面2cの間の角部分には、ポンプケース2を軸線L方向に貫通する取り付け孔9が形成されている。取り付け孔9は、ポンプ装置1を外部の機器に取り付ける際の取付部として用いられる。
【0034】
図3はポンプケース、ロータ、および支軸の分解断面図である。
図4は第1ケースおよび第2ケースの斜視図であり、
図4(a)は第2ケースをロータ配置室側から見た斜視図、
図4(b)は第1ケースをロータ配置室側から見た斜視図である。ポンプケース2は、軸線L方向に積層された第1ケース11および第2ケース12から構成されている。第1ケース11は軸線L方向の一方側L1に配置され、ポンプケース2の第1端面2aの外周縁を構成している。また、第2ケース12は軸線L方向の他方側L2に配置され、ポンプケース2の第2端面2bを構成している。配線取出し部6は、第1ケース11の角部分に設けられている。また、
図4(a)に示すように、吸入管3および吐出管4は第2ケース12の側面から突出しており、フック8は第2ケース12の角部分に設けられている。第2ケース12に設けられた吸入管3、吐出管4およびフック8は樹脂製であり、成形により第2ケース12と一体に形成されている。
【0035】
ポンプケース2において配線取出し部6と対角に位置する角部分には、第2ケース12と第1ケース11を積層する際にこれらが相対回転することを防止する回り止め機構13(
図1(b)参照)が設けられている。回り止め機構13は、第1ケース11に設けられた回り止め突起13a(
図4(b)参照)と、第2ケース12に設けられた回り止め凹部13b(
図4(a)参照)によって構成されている。また、ポンプケース2の吸入管3および吐出管4の間には、第1側面2cから突出するようにケース固定部14が設けられている(
図1(a)(b)参照)。ケース固定部14は、ネジを用いて第2ケース12と第1ケース11を固定する部位であり、第1ケース11に設けられた第1突出部14A(
図4(b)参照)と、第2ケース12に設けられた第2突出部14B(
図4(a)参照)を備えている。第1突出部14Aにはネジ孔10b(
図4(b)参照)が形成され、第2突出部14Bには貫通孔10a(
図4(a)参照)が形成されている。
図4(a)(b)に示すように、第1ケース11には3つの貫通孔10aが形成され、第2ケース12には貫通孔10aのそれぞれと重なる位置に3つのネジ孔10bが形成されている。そして、これら3組の貫通孔10aとネジ孔10bのうちの1組がケース固定部14に形成されている。
【0036】
(ロータ配置室)
図2(a)に示すように、第2ケース12と第1ケース11の間にはロータ配置室20が構成されている。ロータ配置室20には、ロータ23と、ロータ23を回転可能に支持する支軸24とが配置されており、ロータ23の外周側端部には羽根部21が構成されている。また、ロータ23には駆動マグネット22が保持されている。ロータ配置室20の外周部分は、円環状の流路形成部25となっており、ここに羽根部21が挿入されている。第2ケース12と第1ケース11の間には、ロータ配置室20の外周に沿ってOリング26が配置されている。Oリング26は、第2ケース12と第1ケース11の隙間を密閉している。
【0037】
第1ケース11の軸線L方向の一方側L1、すなわち、第1ケース11のロータ配置室20側と逆側(第2ケース12とは反対側)には、ステータ29および給電基板30が配置されている。ステータ29は、駆動コイル27と、この駆動コイル27を搭載するステータコア28を備える。また、給電基板30は、駆動コイル27への励磁電流を制御する電子素子を搭載している。ロータ23に搭載された駆動マグネット22とステータ29に搭載された駆動コイル27は、ロータ23に設けられた羽根部21を回転駆動するための磁気駆動機構を構成している。軸線L方向からみたとき、磁気駆動機構は、流路形成部25より径方向内側に配置されている。第1ケース11は、ロータ23とステータ29の間に配置されて、ステータ29および給電基板30等の通電部分をロータ配置室20から隔てる隔壁として機能している。
【0038】
流路形成部25には、軸線L回りの所定の角度範囲にわたって周方向に円弧状に延在する渦流室31が形成されている。より詳細には、流路形成部25における軸線L方向の一方側L1の領域には半円形の断面形状の第1渦流室31aが形成されている。第1ケース11には、第1渦流室31aを構成する半円形の円弧溝34aが形成されている。一方、流路形成部25における軸線L方向の他方側L2の領域には、第1渦流室31aと軸線L方向から見たときに重なる第2渦流室31bが形成されている。第2渦流室31bは第1渦流室31aと逆向きの半円形の断面形状であり、第2ケース12には、第2渦流室31bを構成する半円形の円弧溝34bが形成されている。本形態では、渦流室31(第1渦流室31aおよび第2渦流室31b)は軸線L回りの270°を超える角度範囲にわたって形成されている。
【0039】
第2ケース12に設けられた吸入管3内の流路は、渦流室31に流体を供給する吸入流路である。第2ケース12には、渦流室31の周方向の一方の端において渦流室31(第1渦流室31aおよび第2渦流室31b)と吸入管3内の流路とを連通する吸入口3aが設けられている。また、第2ケース12には、渦流室31の周方向の他方の端において渦流室31(第1渦流室31aおよび第2渦流室31b)と吐出管4内の流路とを連通する吐出口4aが設けられている。吐出管4内の流路は、渦流室31から流体を吐出する吐出流路である。流路形成部25において、吸入口3aと吐出口4aの間に位置する部分は封鎖部32となっている。封鎖部32は、第1ケース11の円弧溝34aが形成されていない角度範囲に設けられた第1円弧状シール部32aと、第2ケース12の円弧溝34bが形成されていない角度範囲に設けられた第2円弧状シール部32bによって構成されている。第1円弧状シール部32aと第2円弧状シール部32bが設けられた角度範囲(封鎖部32)では、流体が周方向に流通しない。
【0040】
図2(a)、
図3に示すように、第1ケース11の中央部分には、軸線L方向の一方側L1に向けて突出する有底筒状の中央突出部80が設けられている。中央突出部80には第2ケース12側に開口する円形凹部81が形成され、円形凹部81の底面81aには、有底の軸穴である第1軸支持部82が開口している。第1軸支持部82は、中央突出部80の先端部において軸線L方向に延びており、中央突出部80は、軸線L方向の一方側L1の端部の内側に第1軸支持部82が形成された有底の筒部となっている。支軸24はステンレス製であり、
図2(a)に示すように、軸線L方向の一方側L1の端部が第1軸支持部82に圧入固定されている。また、第2ケース12には、第1軸支持部82と軸線L方向に対向する位置に有底の軸穴である第2軸支持部60が形成されている。支軸24の軸線L方向の他方側L2の端部は第2軸支持部60に固定されている。本形態では、ポンプ装置1の軸線Lは、第1軸支持部82の径方向中心を通る。一方、後述するように、第2軸支持部60の径方向中心は軸線Lと一致せず、第1軸支持部82と第2軸支持部60は軸線L方向と交差する方向にずらして配置されている。
【0041】
図2(b)に示すように、支軸24における軸線L方向の他方側L2の端面の外周縁には、全周に渡って面取りが施されている。面取りされた箇所には、先端に向かって径寸法が小さくなるテーパー状の支軸側案内面24aが設けられている。また、第2軸支持部60の開口縁には、軸線L方向の一方側L1(第1ケース11の側)に向かって径寸法が大きくなるテーパー状の軸穴側案内面60aが設けられている。なお、支軸側案内面24aと軸穴側案内面60aは、軸線Lを含む平面で切断した断面が曲面となる案内面としてもよい。また、
図2(a)に示すように、支軸24の他方側L2の端部が嵌合される第2軸支持部60の深さ寸法は、支軸24における軸線L方向の一方側L1の端部が嵌合される第1軸支持部82の深さ寸法よりも浅く、支軸24において第1軸支持部82に圧入される圧入代の寸法N0は、支軸24において第2軸支持部60に嵌め込まれる嵌め込み代の寸法N1よりも長く設定されている。
【0042】
(ロータ)
図5はロータ23の説明図であり、
図5(a)はロータ23の斜視図、
図5(b)は軸線L方向の他方側L2から見た底面図、
図5(c)はロータ23の側面図である。ロータ23はPPS等の樹脂からなり、
図2、
図3、
図5に示すように、円盤部40と、円盤部40の中央から軸線L方向の一方側L1に突出する筒状軸受部41(
図2参照)と、円盤部40の外周寄りの部分から軸線L方向の一方側L1に突出する円筒部42を備えている。円筒部42は、筒状軸受部41との間に所定間隔を開けてこの筒状軸受部41を同軸に囲んでいる。筒状軸受部41と円筒部42の間の間隔は、第1ケース11を介して、これらの間にステータ29を配置することが可能な間隔である。ロータ23は、筒状軸受部41の中心孔41aに支軸24(回転中心軸)が挿入され、筒状軸受部41が第1ケース11の中央突出部80の内側に形成された円形凹部81に配置された状態で、支軸24の軸線L回りに回転可能となっている。
【0043】
図2(a)に示すように、ロータ23の筒状軸受部41と、筒状軸受部41が配置される第1ケース11の円形凹部81の底面81aの間には、1枚または複数枚のワッシャー43が配置されている。このワッシャー43はロータ23を軸線L方向の一方側L1から支持するスラスト軸受であり、ワッシャー43が配置されたことによって、軸線L方向におけるロータ23の位置が調整されている。本形態では2枚のワッシャーが挿入されているが、ワッシャーの厚さ及び枚数は適宜調整可能である。また、支軸24の外径は一定であり、ワッシャー43が装着されている支軸24の部位と、筒状軸受部41に挿入されている支軸24の部位とが同一径になっている。
【0044】
ロータ23の円筒部42の内周面には円筒状のヨーク44が保持されており、ヨーク44の内周面には円筒状の駆動マグネット22が保持されている。ヨーク44はインサート成形によってロータ23と一体に形成され、駆動マグネット22はヨーク44に接着されている。
【0045】
図3、
図5(a)〜(c)に示すように、円盤部40は、円筒部42より径方向外側に張り出す環状張り出し部45を備えている。環状張り出し部45の外周縁には、複数の羽根部21が周方向に配置されている。すなわち、環状張り出し部45の外周縁には、軸線L方向に2段に形成された凹部46a、46bが周方向に等角度間隔で形成されている。凹部46aは、環状張り出し部45の軸線L方向の一方側L1を向く端面45aの周縁を円弧形状に切り欠いて形成されている。また、凹部46bは、環状張り出し部45の軸線L方向の他方側L2を向く端面45bの周縁を円弧形状に切り欠いて形成されている。周方向で隣接する凹部46aの間、および、周方向で隣接する凹部46bの間は、それぞれ、半径方向に延びる仕切り板47となっている。また、軸線L方向で隣接する凹部46aと凹部46bの間は、周方向に延びて各仕切り板47の間を軸線L方向に区画するリブ48となっている。凹部46a、46bは同一形状であり、周方向に延在するリブ18の軸線L方向の一方側L1および他方側L2に対称に形成されている。羽根部21は、
図2に示すように、流路形成部25内に挿入されている。
【0046】
円盤部40には、円筒部42より径方向内側に、環状張り出し部45に対して軸線L方向の他方側L2に突出する環状突出部40aが設けられ、環状突出部40aには複数の貫通穴40bが周方向に等角度間隔で形成されている。本形態では貫通穴40bが6箇所に形成されている。なお、貫通穴40bの数は適宜変更可能である。貫通穴40bの断面形状は円形であり、軸線L方向と平行に延びている。貫通穴40bは、環状突出部40aを軸線L方向に貫通している。
【0047】
(ステータ)
図6はステータ29の斜視図である。ステータ29は、環状部50および環状部50から径方向外側に突出する複数の突極51を備えたステータコア28と、ステータコア28の複数の突極51のそれぞれに巻かれた駆動コイル27を有している。
図2(a)に示すように、ステータ29は、第1ケース11の軸線L方向の一方側L1において、中央突出部80の外周面とその外周に設けられた円筒部89との間に形成された円環状の凹部であるステータ収納室83内に配置されている。この状態で、ステータ29の各突極51は、軸線Lと直交する方向で、第1ケース11を介して、ロータ配置室20内のロータ23の駆動マグネット22と対峙している。また、ロータ23の筒状軸受部41は、径方向から見たときに駆動マグネット22と重なる位置に延びており、筒状軸受部41に装着された支軸24は、径方向から見たときにステータ収納室83に配置されたステータ29と重なって配置されている。
【0048】
ステータコア28は、薄板状の磁性鋼板を型抜きして形成した同一形状の板状コア片52を複数枚上下方向に積層して構成されており、板状コア片52の積層方向が軸線L方向となっている。ステータコア28の環状部50の内周面には、軸線L回りに等角度間隔で3つの内側凹部53が形成されている。一方、ステータ収納室83を構成する第1ケース11の中央突出部80の外周面には、径方向外側に突出する3つの突部(図示せず)が軸線L回りに等角度間隔で設けられている。ステータコア28は、これらの突部が内側凹部53内に圧入されることにより、中央突出部80に対して周方向に相対回転不能に固定されている。また、中央突出部80の外周面には、軸線L方向の他方側L2からステータコア28の環状部50に当接してステータコア28を軸線L方向で位置決めする位置決め部(図示せず)が設けられている。
【0049】
第1ケース11の軸線L方向の一方側L1には、第1ケース11の周縁に沿って枠状の外周壁86が設けられ、この外周壁86に囲まれた空間に給電基板30が配置されている。給電基板30は、ステータ収納室83に配置されたステータ29に対して軸線L方向の一方側L1に重なって配置されている。給電基板30の中央には開口部30aが形成され、この開口部30a内に第1ケース11の中央突出部80の先端部が配置されている。中央突出部80に設けられた第1軸支持部82は、径方向から見たときに給電基板30と重なる位置まで延びている。
【0050】
図1(b)、
図2(a)に示すように、外周壁86に囲まれた基板配置空間には、外周壁86の先端面に達するまで、エポキシ系やアクリル系、シリコン系等の絶縁性の樹脂からなる封止剤16が流し込まれている。ステータ29および給電基板30は封止剤16により覆われて固定されている。なお、封止剤16の表面を、外周壁86の先端より低い位置としてもよい。
【0051】
コネクタ7からリード線5および給電基板30を介して駆動コイル27に励磁電流が供給されると、ロータ23は軸線L回りに回転する。これにより、液体は吸入管3から第1渦流室31a内および第2渦流室31b内に吸い込まれ、第1渦流室31a内および第2渦流室31b内で加圧されて、吐出管4から吐出される。なお、ポンプ装置1を駆動するモータ(ロータ23、ステータ29、給電基板30)は3相ブラシレスモータであり、給電基板30にはロータ23の駆動マグネット22の位置を検出する図示しないホール素子が3つ配置される。駆動コイル27に供給される励磁電流の順序を逆にすると、ロータ23が逆方向に回転し、液体を吐出管4から吸入して、第1渦流室31a内および第2渦流室31b内で加圧して、吸入管3から吐出する。
【0052】
(第2ケース)
図3、
図4(a)に示すように、第2ケース12は、ポンプケース2の第2端面2bを構成する底板部61と、底板部61の外周部分から軸線L方向の一方側L1に延びる側壁部62と、底板部61および側壁部62によって形成された円形凹部63を備えている。円形凹部63の底部の外周縁に沿った領域は、流路形成部25が環状に構成される領域である。側壁部62において、上述したポンプケース2の第1側面2cを構成する面からは、吸入管3と吐出管4が平行に突出している。
【0053】
円形凹部63の底部中央には上述した第2軸支持部60が設けられ、第2軸支持部60の外周側には環状凹部64が同軸に形成されている。第2軸支持部60は有底の軸穴であり、その開口縁にはテーパー状の軸穴側案内面60aが設けられている。第2軸支持部60と環状凹部64の間は内側環状突出部65となっており、環状凹部64の外周側には外側環状突出部66が設けられている。外側環状突出部66は、軸線L方向の他方側L2を向く端面66aを備えており、この端面66aの外周縁に沿って、第2渦流室31bを構成する円弧溝34bおよび第2円弧状シール部32bが設けられている。
【0054】
外側環状突出部66の端面66aにおいて、第2渦流室31b(円弧溝34b)および第2円弧状シール部32bの径方向内側に隣接している部位は、環状の第2ケース側シール部67である。第2ケース側シール部67は、ロータ配置室20内に配置されたロータ23の外周部に設けられた環状張り出し部45の軸線L方向の他方側L2を向く端面45bと微小なギャップG2で対向する(
図2参照)。すなわち、端面45bは、羽根部21の径方向内側に隣接している部位がロータ側シール部となっている。第2ケース側シール部67には、第2ケース側シール部67の径方向内側(環状凹部64)と径方向外側(第2渦流室31b)とを連通させる一定幅の短絡溝67aが、180°離れた位置に2つ形成されている。本形態のように、流体として水などの液体を圧送する場合には、この短絡溝67aによって、第2渦流室31bに侵入した空気が第2ケース側シール部67の内周側に導かれ、ロータ23の円盤部40に設けられた貫通穴40bを通って吐出口4a側に送り出され、ポンプケース2内から排出される。
【0055】
第2ケース12とロータ23とのクリアランスは、第2ケース側シール部67と端面45bとの間において最も小さくなるように設定されている。例えば、ギャップG2は、最小値が0.075mm、中心値が0.15mmとなるように設定されている。第2ケース12は樹脂材料を成形して形成され、第2ケース側シール部67は第2軸支持部60と一体になっている。
【0056】
円形凹部63の内周面の開口側の部分には、環状段部68が設けられている。環状段部68は、側壁部62の内周面の軸線L方向の途中位置から半径方向外側に延びて第1ケース11の側を向いている環状端面68aと、環状端面68aの外周縁から軸線L方向の一方側L1に延びる内周面68bを備えている。
【0057】
ここで、第2ケース12は射出成型品であり、成形時のゲートは、底板部61の下側の中心に設けられている。すなわち、底板部61において、第2軸支持部60とは反対側にゲートが設けられる。従って、第2軸支持部60の中心から樹脂が流れ込むため、第2軸支持部60は寸法精度良く形成される。
【0058】
(第1ケース)
図4(b)に示すように、第1ケース11を軸線L方向の他方側L2から見ると、筒状軸受部41が配置される円形凹部81を囲み、内側環状突出部90が構成されている。内側環状突出部90の中央には、上述した円形凹部81および第1軸支持部82が同軸に形成されている。内側環状突出部90の外周側には外側環状突出部91が同軸に形成されており、内側環状突出部90と外側環状突出部91の間には環状凹部92が設けられている。外側環状突出部91の外周側には、軸線L方向と直交する方向に張り出す張り出し部93が形成されている。張り出し部93は、軸線L方向から見た外形が略矩形である。上述した給電基板30が配置される空間を囲む外周壁86は、張り出し部93における軸線L方向の一方側L1の面の外周縁に形成されている。
【0059】
外側環状突出部91の軸線L方向の他方側L2の端面91aは環状であり、この端面91aに第1渦流室31aを構成する円弧溝34aおよび第1円弧状シール部32aが形成されている。端面91aにおいて、第1渦流室31a(円弧溝34a)および第1円弧状シール部32aの径方向内側に隣接している部位は、環状の第1ケース側シール部94となっている。第1ケース側シール部94は、ロータ配置室20内に配置されたロータ23の外周部に設けられた環状張り出し部45の軸線L方向の一方側L1を向く端面45aと微小なギャップG1を開けて対向する(
図2(a)参照)。すなわち、端面45aは、羽根部21の径方向内側に隣接している部位がロータ側シール部となっている。
【0060】
第1ケース11とロータ23とのクリアランスは、第1ケース側シール部94と端面45aとの間において最も小さくなるように設定されている。例えば、ギャップG1は、最小値が0.075mm、中心値が0.10mmとなるように設定されており、上述した第2ケース12とロータ23とのギャップG2よりもギャップG1の方が狭い。第1ケース11は樹脂材料を成形して形成され、第1ケース側シール部94は第1軸支持部82と一体になっている。
【0061】
外側環状突出部91の外周面95には、環状の径方向突出部96が設けられている。径方向突出部96は、外側環状突出部91の軸線L方向の途中位置から半径方向外側に延びて第2ケース12の側を向いている環状端面96aと、環状端面96aの外周縁から軸線L方向の他方側L2に延びて半径方向外側を向いている外周面96bを備えている。
【0062】
ここで、第1ケース11は射出成型品であり、成形時のゲートは、中央突出部80の中心に設けられる。すなわち、中央突出部80における軸線L方向の一方側L1の端部において、第1軸支持部82とは反対側にゲートが設けられる。従って、第1軸支持部82の中心から樹脂が流れ込むため、第1軸支持部82は寸法精度良く形成される。
【0063】
(ポンプケースの組立方法)
第1ケース11と第2ケース12との間にロータ配置室20を区画形成する際には、Oリング26を第1ケース11の外側環状突出部91の外周面95に装着した状態とする。この際に、Oリング26には、潤滑剤を塗布しておく。また、支軸24の一端を予め第1ケース11の第1軸支持部82に圧入固定しておく。ロータ23は第2ケース12の円形凹部63内に配置して、筒状軸受部41に支軸24を挿入可能な状態としておく。
【0064】
次に、第1ケース11と第2ケース12を接近させて、第1ケース11の外側環状突出部91を第2ケース12の環状段部68の内側に挿入する。このとき、第1ケース11に設けられた回り止め突起13aが第2ケース12に設けられた回り止め凹部13bに挿入されるように両ケースを周方向に位置決めする。しかる後に、第1ケース11と第2ケース12とを相対的に接近させる。この際に、第1ケース11の径方向突出部96の外周面96bが、第2ケース12の環状段部68の内周面68bに当接して、第1ケース11が第2ケース12に対して径方向で位置決めされる。この位置決めの時点から僅かに遅れて、支軸24の端部が第2軸支持部60に嵌め込まれる。このとき、上述したように、支軸24の端面の外周縁にはテーパー状の支軸側案内面24aが設けられており、第2軸支持部60にはテーパー状の軸穴側案内面60aが設けられているので、支軸24の第2軸支持部60への嵌め込みは容易に行われる。
【0065】
しかる後に、第1ケース11と第2ケース12を更に接近させると、外側環状突出部91の端面91aにおいて第1渦流室31aおよび第1円弧状シール部32aの径方向内側に隣接している部分が、環状段部68の環状端面68aの内周部分に当接して、第1ケース11が第2ケース12に対して軸線L方向で位置決めされる。これにより、第2ケース12と第1ケース11との間にロータ配置室20が形成され、支軸24の第2軸支持部60への嵌め込みは完了する。このとき、Oリング26は、径方向突出部96の環状端面96aと環状段部68の環状端面68aとの間において、第1ケース11の外側環状突出部91の外周面95と第2ケース12の環状段部68の内周面68bの間で径方向に潰された状態となる。従って、ロータ配置室20からの流体の漏れが防止された状態が形成される。
【0066】
第2ケース12に対して第1ケース11を位置決めした後に、第2ケース12に設けられた貫通孔10aを貫通して第1ケース11に設けられたネジ孔10bに螺合する3本の有頭ネジによって、第1ケース11と第2ケース12が固定される。
【0067】
このように、第2ケース12に対して第1ケース11が積層されてロータ配置室20が形成された状態になると、ロータ23の筒状軸受部41を貫通した支軸24は、その下端が第2ケース12の第2軸支持部60に挿入されて固定され、支軸24と中央突出部80が同軸状態となる。そして、流路形成部25にロータ23の外周部に設けられた羽根部21が挿入された状態となり、羽根部21の軸線L方向の一方側L1に第1渦流室31aが構成され、羽根部21の軸線L方向の他方側L2に第2渦流室31bが構成される。
【0068】
また、支軸24の両端が固定されたことによって、ステータ29とロータ23が同軸に配置され、ステータコア28において駆動コイル27が巻かれている突極51と、ロータ配置室20に配置されたロータ23の駆動マグネット22が第1ケース11を介して対峙する。ここで、本形態では、
図2に示すように、ロータ23の筒状軸受部41と第1ケース11における円形凹部81の底面81aとの間に2枚のワッシャー43を挿入したことによって、ステータコア28の軸線L方向の磁気中心位置に対して、ロータ23に搭載された駆動マグネット22の軸線L方向の磁気中心位置が軸線L方向の他方側L2にずらされている。従って、ステータコア28と駆動マグネット22との間には、ロータ23を軸線L方向の一方側L1に吸引する磁気吸引力が作用する状態となっている。本形態では、磁気吸引力によるロータ23の付勢方向が、ポンプケース2内を流体が流れるとき、ロータ23に作用する付勢力の方向と同一方向になるように、ロータ23とステータ29の磁気中心位置がずらされている。
【0069】
ロータ23とステータ29の磁気中心位置がずらされている場合、ロータ23の静止時には、磁気吸引力とロータ23の働く重力との釣り合い位置にロータ23が位置することになる。また、回転時には、磁気吸引力、重力、および第1渦流室31aと第2渦流室31bにおける流体圧力の釣り合い位置にロータ23が位置することになる。ロータ23に作用する重力の向きはポンプ装置1の設置方向によって決まり、本形態において第1ケース11を下側に配置した場合には、磁気吸引力と重力がいずれも第1ケース11側を向く。ここで、静止時に磁気吸引力と重力との釣り合い位置が第1ケース11側となるように設定しておけば、起動時のロータ23のがたつきを抑制できる。また、ロータ23に加わる重力よりも磁気吸引力の方が大きくなるように設定すれば、ポンプ装置1の設置方向に拘わらず、常にロータ23を同じ側に付勢できる。従って、ポンプ装置1の設置方向の影響を回避できる。
【0070】
(付勢力発生手段)
次に、実施形態1で採用した付勢力発生手段を説明する。
図7は付勢力発生手段の説明図であり、
図7(a)は実施形態1に係るポンプ装置1において、第2軸支持部60の径方向中心を第1軸支持部82の径方向中心に対して軸線L方向と交差する方向にずらした状態を誇張して示す説明図である。また、
図7(b)は実施形態1に係るポンプ装置1において、支軸24が傾いている様子を誇張して示す説明図である。
【0071】
実施形態1では、第2軸支持部60は、第1ケース11側に設けられた第1軸支持部82に対し、軸線Lと直交する方向のうち、例えば、矢印θ0で示す角度範囲に向けてずらして配置されている。本形態では、第2軸支持部60は、第1ケース11側に設けられた第1軸支持部82に対し、軸線Lと直交する方向のうち、吸入口3aから吐出口4aへ向かう方向(X方向)にずらして配置されている。第1軸支持部82および第2軸支持部60は、いずれも、渦流室31の中心軸線(軸線L)と平行に延びる軸穴である。
【0072】
渦流室31の流体圧力は、吐出口4a付近が高圧であり、吸入口3a付近が低圧である。従って、支軸24の一端を第1軸支持部82に圧入固定し、他端を第2軸支持部60に挿入して固定すると、
図7(b)に示すように、支軸24は、軸線L方向の他方側L2(第2ケース12側)の先端部を渦流室31の高圧側(吐出口4a側)に傾けた姿勢になる。このとき、支軸24の傾き中心Yは、第1軸支持部82に圧入固定されている部分の軸線L方向の中央となる。渦流室31の中心軸線の向きは実施形態1と同じ軸線L方向であるため、支軸24の中心軸線L0が渦流室31の中心軸線(軸線L)に対して傾く。本形態では、渦流室31(第1渦流室31a、第2渦流室31b)の軸線Lに対する支軸24の中心軸線L0の傾き角度θ1が約0.3°になるように、第2軸支持部60の位置を決定している。
【0073】
ロータ23は、支軸24の中心軸線L0を中心として回転するため、渦流室31内においてロータ23が約0.3度傾いた姿勢で回転することになる。このように、ロータ23を傾けて配置した場合、吐出口4aから吸入口3aへ向かう流体圧力によってロータ23に側圧が加わり、ロータ23が軸線L方向の一方側L1に付勢される。従って、ロータ23が第1ケースを基準として位置決めされる。
【0074】
ここで、支軸24を
図7(b)とは異なる向きに傾けることもできる。例えば、第2軸支持部60を第1軸支持部82に対してX方向とは逆の方向にずらして配置した場合には、支軸24が逆向きに傾くことになり、この場合には、ロータ23の回転時にロータ23に加わる側圧によってロータ23が軸線L方向の他方側L2に付勢され、ロータ23が第2ケース12を基準として位置決めされる。この場合には、第2ケース12の側にスラスト軸受としてのワッシャーを設けることが望ましい。
【0075】
(作用効果)
実施形態1のポンプ装置1は、以上のように、円環状の羽根部21が形成されたロータ23と、当該ロータ23を回転可能に支持する支軸24と、ロータ23に設けられた駆動マグネット22と共に磁気駆動機構を構成する駆動コイル27を備えるステータ29と、ロータ23が配置されるロータ配置室20が形成されたポンプケース2とを有し、このポンプケース2には、支軸24の一端側を支持する第1軸支持部82と、支軸24の他端側を支持する第2軸支持部60が設けられ、ロータ配置室20には、羽根部21が挿入される円環状の流路形成部25が設けられ、この流路形成部25に円弧状の渦流室31(第1渦流室31aおよび第2渦流室31b)が設けられている。そして、第1軸支持部82に対して、吸入口3aから吐出口4aへ向かう方向にずらして第2軸支持部60を配置して、渦流室31の軸線L方向に対して予め決まった方向に傾けた状態に支軸24を設置している。
【0076】
このように、渦流室31の軸線L方向に対して支軸24を傾けたことにより、ロータ23の回転時には、ロータ23に加わる側圧(軸線L方向と直交する方向の流体圧力)によってロータ23が支軸24の一端側あるいは他端側に付勢される。例えば、
図7(b)に示すように、第2軸支持部60を第1軸支持部82に対して高圧側(X方向側)に配置したことにより、ロータ23に加わる側圧によって、低圧側(吸入口3a側)に配置された第1軸支持部82に向けてロータ23が付勢される。従って、回転するロータ23を予め決まった側に必ず付勢でき、予め決まった側のケース(
図7(b)の傾き方向の場合には、第1ケース11)に必ずロータ23が位置決めされる。従って、第1ケース11側にスラスト軸受を設け、第2ケース12側のスラスト軸受は省略した構成であっても、ロータ23の軸線方向のがたつきを回避でき、ロータ23の位置精度を高めることができる。よって、高精度な部品を用いたり、部品点数を増加させることなく、ロータ23とポンプケース2との接触によるノイズの低減を図ることができ、ロータ23の位置精度の低下によるポンプ効率の低下を抑制できる。
【0077】
特に、実施形態1では、支軸24の一端を第1軸支持部82に圧入固定したことによって第1ケース11に対する支軸24の径方向の位置精度が向上している。また、第1軸支持部82および第2軸支持部60がいずれも軸線L方向に平行な軸穴であるために、支軸24の他端は第2軸支持部60に対して斜めに挿入されており、第2ケースに対する支軸24の径方向の位置精度も向上している。従って、ロータ23の径方向の位置精度が高い。また、支軸24の傾きを考慮して軸穴(第1軸支持部82および第2軸支持部60)を形成しないため、第1ケース11および第2ケース12の製造が容易である。
【0078】
実施形態1では、ポンプケース2は、第1軸支持部82が設けられた第1ケース11と第2軸支持部60が設けられた第2ケース12の間にロータ配置室20を構成しており、第1ケース11には、羽根部21の内周側に設けられたロータ側シール部(端面45a)と対向する第1ケース側シール部94が第1渦流室31aの内周側に形成され、第1ケース側シール部94と、ロータ23が位置決めされる第1軸支持部82が一体の部材で構成されている。このため、ロータ23の位置精度を高めたことによって、第1ケース側シール部94のクリアランス(ギャップG1)を小さく設定した場合でも、ロータ23と第1ケース11との接触を回避できる。
【0079】
また、実施形態1では、第1渦流室31aに隣接して、ロータ23と第1ケース11とのクリアランスが最も小さい第1ケース側シール部94が設けられている。このため、第1渦流室31aからの流体のリークを抑制してポンプ効率の低下を抑制できる。また、第1渦流室31aに隣接する位置はロータ23の外周側であって回転時に周速が大きいため、ロータ23と第1ケース11が接触した場合に発生するノイズが大きい。従って、ロータ23と第1ケース11との接触を回避可能にしたことによるポンプ効率の低下抑制効果が大きく、ノイズの低減効果が大きい。また、ロータ23と第2ケース12との間のシール部も同様に構成されているため、同様の効果が得られる。
【0080】
更に、実施形態1では、ステータ29の磁気中心位置とロータ23の磁気中心位置が軸線L方向にずれており、磁気吸引力によってロータ23が付勢される方向と、回転時にロータ23が流体圧力によって付勢される方向とが一致している。このため、起動時にロータ23ががたつくのを防止でき、起動時のノイズを低減できる。この点に関して、実施形態1では、ステータ29が第1ケース11によってロータ配置室20と隔てられ、ステータ29と支軸24が軸線L方向に重なって配置されているため、ステータ29の磁気中心位置とロータ23の磁気中心位置を軸線L方向にずらして配置することが容易である。また、ステータ29と支軸24が軸線L方向に重なって配置されている場合、ポンプ装置1の軸線L方向のサイズを小さくすることができる。従って、ポンプ装置1の薄型化に有利である。なお、ステータ29の磁気中心位置とロータ23の磁気中心位置を一致させた構成であってもよい。この場合でも、ポンプケース2内の流体圧力によって回転時にロータ23を第1ケース11側に付勢できるため、ノイズ低減効果が得られ、ポンプ効率の低下を抑制できる。
【0081】
加えて、実施形態1では、駆動コイル27への電流を制御する給電基板30がステータ29と重なって配置され、給電基板30は、第1ケース11の第1軸支持部82と軸線L方向に重なって配置されている。給電基板30をこの位置に配置することで、第1軸支持部82(軸穴)を給電基板30の厚さ分だけ長くすることができる。あるいは、給電基板30の厚さ分だけワッシャー43の積層枚数を増やすことも可能である。従って、支軸24を精度良く固定することができ、ロータ23の位置精度が向上する。
【0082】
また、実施形態1では、支軸24の外径は一定であり、ワッシャー43が装着されている支軸24の部位と、筒状軸受部41に挿入されている支軸24の部位とが同一径である。従って、第1渦流室31aの内周側のシール部におけるクリアランス調整などのためにロータ23の軸方向の位置調整をするときに、ワッシャー43の厚さ変更や複数のワッシャー43を重ねて配置するなどの方法によって対応できる。
【0083】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2で採用した付勢力発生手段を説明する。
図8は実施形態2の付勢力発生手段であるロータ123の説明図であり、
図8(a)はロータ123の斜視図、
図8(b)は軸線L方向の一方側L1から見た底面図、
図8(c)はロータ123の側面図である。実施形態2のポンプ装置は、実施形態1のロータ23と形状の異なるロータ123を備えている。また、実施形態2では、第1軸支持部82および第2軸支持部60が同軸に配置され、第1軸支持部82および第2軸支持部60の径方向中心を通る直線は、ポンプ装置1の軸線Lと略一致している。従って、実施形態2では、支軸24の両端が第1軸支持部82および第2軸支持部60に固定されることによって、ポンプケース2の軸線Lと支軸24の中心軸線とが略一致するように取り付けられ、ロータ123は軸線Lを中心として回転する。なお、ここで、「ポンプケース2の軸線Lと支軸24の中心軸線とが略一致する」とは、支軸24の中心軸線とポンプケース2の軸線Lとが、部品の寸法誤差や組立時の誤差の範囲でごく僅かに傾いている状態を含むものとする。
【0084】
図8に示すように、ロータ123には、円盤部140の外周部分に環状張り出し部145が設けられ、この環状張り出し部145の外周端には羽根部121が形成されている。また、環状張り出し部145には、その軸線L方向の一方側L1の端面145aから軸線L方向の他方側L2の端面145bまで斜めに延びる傾斜溝100が形成されている。傾斜溝100は径方向内側に一定深さで凹んだ一定幅の溝であり、溝の深さは羽根部121を構成する凹部46a、46bよりも深く、羽根部121が設けられた範囲よりも径方向内側に凹んでいる。ロータ123には、複数の傾斜溝100が周方向に等角度間隔で分散配置されており、羽根部121は、傾斜溝100によって周方向に複数に分割されている。本形態では、傾斜溝100が4箇所に設けられている。なお、3箇所以下あるいは5箇所以上に設けることもできる。
【0085】
図8(c)に示すように、環状張り出し部145の軸線L方向の一方側L1の端面145a、および、他方側L2の端面145bには、それぞれ、傾斜溝100の軸線L方向の一端側の開口である第1開口101aおよび他端側の開口である第2開口101bが設けられている。傾斜溝100は、径方向外側を向く底面102と、溝幅方向に対向する一対の平行な側壁面を構成する傾斜面103a、103bを備えている。傾斜面103a、103bはロータ123の周方向に傾いた面であり、傾斜溝100は、ロータ123を軸線L方向に貫通し、且つ、ロータ123の周方向に傾く傾斜流路を形成している。ロータ123を軸線L方向の一方側L1から見た場合に、傾斜面103a全体が第1開口101aと重なっている。また、ロータ123を軸線L方向の他方側L2から見た場合に、傾斜面103b全体が第2開口101bと重なっている。言い換えれば、傾斜溝100は、傾斜面103aと傾斜面103bとが軸線L方向に見て重ならない構成である。このように、傾斜面103a、103bが軸線L方向から見て完全に露出している場合、スライド型等を用いることなく、軸線L方向に2分割される金型によって傾斜溝100の形状を成形できる。従って、安価な金型によってロータ123を成形できる。
【0086】
傾斜溝100は、渦流室31と径方向に重なっているため、ロータ123が軸線L回りに回転し、第1開口101aが第1ケース11の第1渦流室31a(円弧溝34a)に対向し、且つ、第2開口101bが第2ケースの第2渦流室31b(円弧溝34b)に対向するとき、傾斜溝100を通る軸流が発生する。例えば、軸線L方向の一方側L1を向いたときの時計回り方向CW(
図8(a)参照)にロータ123を回転させることで、渦流室31に吸入口3aから吐出口4aに向かう渦流が発生するが、このとき、第1開口101aから第2開口101bに向けて流体が流れる。このように、傾斜溝100において軸線L方向の一方側L1から他方側L2へ向けて流体が流れると、流体圧力によって、軸線L方向の一方側L1に傾斜面103bが押される。これにより、ロータ123が軸線L方向の一方側L1へ付勢される。つまり、傾斜溝100(傾斜流路)は、回転するロータ123を軸線L方向の一方側すなわち支軸24の一端側へ向けて付勢する付勢力発生手段として機能する。
【0087】
ここで、傾斜溝100の両端に設けられた第1開口101aおよび第2開口101bの周方向の開口幅D1は、第1円弧状シール部32aおよび第2円弧状シール部32bの周方向の幅D2(
図4参照)よりも小さい。開口幅D1がシール部の幅D2より大きいと、第1円弧状シール部32aと第1開口101aが重なったとき、あるいは、第2円弧状シール部32bと第2開口101bが重なったときに、傾斜溝100を介して吸入口3aと吐出口4aが連通し、渦流室31を通らずに吸入口3aと吐出口4aの間で流体がリークしてしまう。本形態では、開口幅D1をシール部の幅D2より小さくすることによって、吸入口3aと吐出口4aの間で流体がリークすることによるポンプ効率の低下を抑制できる構造となっている。
【0088】
また、ロータ123には複数の傾斜溝100が周方向に等角度間隔で形成されているため、周方向に等角度間隔で配置された複数の傾斜面103bに流体圧力が作用して、ロータ123が傾く方向に作用するモーメントは相殺される。また、複数の傾斜溝100を設けたことによって、いずれか1つの傾斜溝100が封鎖部32(第1円弧状シール部32aおよび第2円弧状シール部32b)によって塞がれても、他の傾斜溝100には流体が流れるため、回転するロータ123を軸線L方向に常に付勢し続けることができる。
【0089】
(作用効果)
実施形態2のポンプ装置1は、以上のように、円環状の羽根部121が形成されたロータ123と、当該ロータ123を回転可能に支持する支軸24と、ロータ123に設けられた駆動マグネット22と共に磁気駆動機構を構成する駆動コイル27を備えるステータ29と、ロータ123が配置されるロータ配置室20が形成されたポンプケース2とを有し、このポンプケース2には、支軸24の一端側を支持する第1軸支持部82と、支軸24の他端側を支持する第2軸支持部60が設けられ、ロータ配置室20には、羽根部121が挿入される円環状の流路形成部25が設けられ、この流路形成部25に円弧状の渦流室31(第1渦流室31aおよび第2渦流室31b)が設けられている。そして、ロータ123には、回転するロータ123を支軸24の一端側(軸線L方向の一方側L1)に向けて付勢する方向に作用する流体圧力を発生させる付勢力発生手段としての傾斜溝100が設けられている。
【0090】
実施形態2のポンプ装置1は、ロータ123に傾斜溝100を形成したことにより、ロータ123の回転時に傾斜溝100を流れる流体の流体圧力が傾斜溝100の内壁(傾斜面103b)に作用し、これにより、軸線L方向の一方側L1にロータ123が付勢されて、第1ケース11に対してロータ123が位置決めされる。このため、回転するロータ123を予め決まった方向に付勢でき、予め決まった側のケース(第1ケース11)に対して位置決めできる。従って、第1ケース11側にスラスト軸受を設け、第2ケース12側のスラスト軸受は省略した構成であっても、ロータ123の軸線L方向のがたつきを回避でき、ロータ123の位置精度を高めることができる。よって、高精度な部品を用いたり部品点数を増加させることなく、ロータ123とポンプケース2との接触によるノイズの低減を図ることができ、ロータ123の位置精度の低下によるポンプ効率の低下を抑制できる。
【0091】
特に、実施形態2では、傾斜溝100は、ロータ123において回転時の周速が最も大きい外周部分に設けられているため、傾斜溝100を流れる流体の流速が大きく、傾斜面103bに作用する流体圧力も大きい。従って、ロータ123に作用する付勢力が大きく、ロータ123のがたつき防止および位置決めをより効果的に行うことができる。また、液体を圧送するときは、気体を圧送する場合よりも傾斜溝100の内壁(傾斜面103b)に作用する流体圧力が大きいため、ロータ123に作用する付勢力がより大きくなる。従って、ロータ123のがたつきおよび位置決めをより効果的に行うことができ、ポンプ効率の低下をより低減できる。
【0092】
実施形態2では、ポンプケース2は、第1軸支持部82が設けられた第1ケース11と第2軸支持部60が設けられた第2ケース12の間にロータ配置室20を構成しており、第1ケース11には、羽根部121の内周側に設けられたロータ側シール部(端面145a)と対向する第1ケース側シール部94が第1渦流室31aの内周側に形成され、第1ケース側シール部94と、ロータ123が位置決めされる第1軸支持部82が一体の部材で構成されている。このため、ロータ123の位置精度を高めたことによって、第1ケース側シール部94のクリアランス(ギャップG1)を小さく設定した場合でも、ロータ123と第1ケース11との接触を回避できる。
【0093】
また、実施形態2では、第1渦流室31aに隣接して、ロータ123と第1ケース11とのクリアランスが最も小さい第1ケース側シール部94が設けられている。このため、第1渦流室31aからの流体のリークを抑制してポンプ効率の低下を抑制できる。また、第1渦流室31aに隣接する位置はロータ123の外周側であって回転時に周速が大きいため、ロータ123と第1ケース11が接触した場合に発生するノイズが大きい。従って、ロータ123と第1ケース11との接触を回避可能にしたことによるポンプ効率の低下抑制効果が大きく、ノイズの低減効果が大きい。また、ロータ123と第2ケース12との間のシール部も同様に構成されているため、同様の効果が得られる。
【0094】
更に、実施形態2では、ステータ29の磁気中心位置とロータ123の磁気中心位置が軸線L方向にずれており、磁気吸引力によってロータ123が付勢される方向と、回転時にロータ123が流体圧力によって付勢される方向とが一致している。このため、起動時にロータ123ががたつくのを防止でき、起動時のノイズを低減できる。この点に関して、実施形態1では、ステータ29が第1ケース11によってロータ配置室20と隔てられ、ステータ29と支軸24が径方向から見たときに重なって配置されているため、ステータ29の磁気中心位置とロータ123の磁気中心位置を軸線L方向にずらして配置することが容易である。また、ステータ29と支軸24が軸線L方向に重なって配置されている場合、ポンプ装置1の軸線L方向のサイズを小さくすることができる。従って、ポンプ装置1の薄型化に有利である。なお、ステータ29の磁気中心位置とロータ123の磁気中心位置を一致させた構成であってもよい。この場合でも、傾斜溝100に加わる流体圧力によって回転時にロータ123を第1ケース11側に付勢できるため、ノイズ低減効果が得られ、ポンプ効率の低下を抑制できる。
【0095】
加えて、実施形態2では、駆動コイル27への電流を制御する給電基板30がステータ29と軸線L方向に見たときに重なって配置され、給電基板30は、第1ケース11の第1軸支持部82と径方向から見たときに重なって配置されている。給電基板30をこの位置に配置することで、第1軸支持部82(軸穴)を給電基板30の厚さ分だけ長くすることができる。あるいは、給電基板30の厚さ分だけワッシャー43の積層枚数を増やすことも可能である。従って、支軸24を精度良く固定することができ、ロータ123の位置精度が向上する。
【0096】
また、実施形態2では、支軸24の外径は一定であり、ワッシャー43が装着されている支軸24の部位と、筒状軸受部41に挿入されている支軸24の部位とが同一径である。従って、第1渦流室31aの内周側のシール部におけるクリアランス調整などのためにロータ123の軸方向の位置調整をするときに、ワッシャー43の厚さ変更や複数のワッシャー43を重ねて配置するなどの方法によって対応できる。
【0097】
(
参考形態)
次に、本発明の
参考形態に係るポンプ装置を説明する。
参考形態のポンプ装置は、実施形態2のポンプ装置におけるロータ123と部分的に形状が異なるロータ223を備えており、他の構成は実施形態2と同一である。すなわち、支軸24の両端が第1軸支持部82および第2軸支持部60に固定されることによって、ポンプケース2の軸線Lが支軸24の中心軸線と略一致するように取り付けられ、ロータ223は軸線Lを中心として回転する。また、ここで、「ポンプケース2の軸線Lと支軸24の中心軸線とが略一致する」とは、支軸24の中心軸線とポンプケース2の軸線Lとが、部品の寸法誤差や組立時の誤差の範囲でごく僅かに傾いている状態を含むものとする。
図9は
参考形態の付勢力発生手段であるロータ223の説明図であり、
図9(a)はロータ223の斜視図、
図9(b)はロータ223の断面図(
図9(a)のB−B断面図)、
図9(c)は貫通穴の断面図、
図9(d)は軸線L方向の他方側L2を向いて見た貫通穴の底面図、
図9(e)は軸線L方向の一方側L1を向いて見た貫通穴の平面図である。
【0098】
ロータ223は、円盤部240、筒状軸受部41、円筒部42を備えており、筒状軸受部41、円筒部42は実施形態1のロータ23の対応する部位と同一である。円盤部240は、円筒部42より径方向外側に張り出している環状張り出し部45を備え、環状張り出し部45の外周端に羽根部21が形成されている。羽根部21は、凹部46a、46b、仕切り板47、およびリブ48が全周に設けられている。環状張り出し部45および羽根部21は、実施形態1のロータ23の場合と同一に形成されている。
【0099】
円盤部240には、円筒部42より径方向内側に、環状張り出し部45に対して軸線L方向の他方側L2に突出した環状突出部241が形成されている。環状突出部241には複数の貫通穴110が周方向に等角度間隔で形成されている。貫通穴110の断面形状は矩形である。
図9(b)(c)に示すように、環状突出部241の軸線L方向の一方側L1の端面241a、および、他方側L2の端面241bには、それぞれ、貫通穴110の一端側の開口である第1開口111aおよび他端側の開口である第2開口111bが設けられている。貫通穴110は、径方向に対向する一対の側壁面112a、112bと、周方向に対向する一対の傾斜面113a、113bを備えている。傾斜面113a、113bはロータ223の周方向に傾いた面であり、貫通穴110は、ロータ223を軸線L方向に貫通し、且つ、ロータ223の周方向に傾く傾斜流路を形成している。
【0100】
図9(d)に示すように、ロータ223を軸線L方向の他方側L2を向いて見た場合には、傾斜面113a全体が第1開口111aと重なっている。また、
図9(e)に示すように、ロータ223を軸線L方向の一方側L1を向いて見た場合には、傾斜面113b全体が第2開口111bと重なっている。言い換えれば、貫通穴110は、傾斜面113aと傾斜面113bとが軸線L方向に見て重ならない構成であり、実施形態1の傾斜溝100と同様に、傾斜面113a、113bが軸線L方向から見て完全に露出している。従って、軸線L方向に2分割される金型によって成形可能である。
【0101】
環状突出部241の端面241aは、第1ケース11に設けられた内側環状突出部90の先端面と対向している。また、環状突出部241の端面241bは、第2ケース12に設けられた環状凹部64の底面と対向している。環状突出部241と第1ケース11との隙間、および、環状突出部241と第2ケース12との隙間には、渦流室31からリークした流体が流れている。従って、ロータ223が回転するとき、貫通穴110を通る軸流が発生する。
【0102】
例えば、軸線L方向の一方側L1を向いたときの時計回り方向CW(
図9(a)参照)にロータ223を回転させるとき、第1開口111aから第2開口111bに向けて流体が流れる。そして、このとき、流体圧力によって、軸線L方向の一方側L1に傾斜面113bが押されるため、ロータ223が軸線L方向の一方側L1へ付勢される。つまり、貫通穴110(傾斜流路)は、回転するロータ223を軸線L方向の一方側すなわち支軸24の一端側へ向けて付勢する付勢力発生部として機能する。貫通穴110は、羽根部21よりも内周側においてロータ223を貫通しているため、実施形態2の傾斜溝100を設けた場合のように、羽根部21の周方向の一部を欠損することがなく、全周に仕切り板47を設けることができる。従って、仕切り板47を欠損したことによるポンプ効率の低下が生じないという利点がある。
【0103】
貫通穴110は、実施形態2の傾斜溝100と同様に、周方向に等角度間隔で形成されているため、周方向に等角度間隔で配置された複数の傾斜面113bに流体圧力が作用し、ロータ223が傾く方向に作用するモーメントは相殺される。
【0104】
また、貫通穴110は、羽根部21よりも内周側においてロータ223を貫通しており、渦流室31を内側からシールするロータ側シール部(第1ケース側シール部94、第2ケース側シール部67と対向する部位)より内周側に設けられている。そして、第2ケース側シール部67には短絡溝67aが設けられているため、流体として水などの液体を圧送する場合には、実施形態1、2の貫通穴40bと同様に、第2渦流室31bに侵入した空気を第2ケース側シール部67の短絡溝67aを通って内周側に導き、ロータ223の円盤部240に設けられた貫通穴110を通って吐出口4a側に送り出し、ポンプケース2内から排出することができる。
【0105】
以上のように、実施形態2のロータ123に代えて、
参考形態のロータ223を用いた場合にも、回転するロータ223を支軸24の一端側に向けて付勢できる。従って、回転時にロータ223の軸線L方向のがたつきを回避でき、ロータ223の位置精度を高めることができる。従って、ロータ223とポンプケース2との接触によるノイズの低減を図ることができ、ロータ223の位置精度の低下によるポンプ効率の低下を抑制できる。
【0106】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態1
、2および参考形態は、いずれも軸固定型のポンプ装置に本発明を適用したものであったが、本発明は軸回転型のポンプ装置への適用も可能である。軸回転型のポンプ装置の場合、上記各形態の支軸24に代えて、ロータ23(123、223)と一体に回転する回転軸(回転中心軸)を備える構成とする。そして、第1軸支持部82と、第2軸支持部60に、回転軸を回転可能に支持する軸受部を設ける。このような構成であっても、上記実施形態1〜3の付勢力発生手段により、ロータ23(123、223)に作用する流体圧力を発生させることができ、中心軸ごとロータ23(123、223)を付勢してロータ23(123、223)の位置精度を高めることができる。従って、高精度な部品を用いたり部品点数を増加させることなく、ロータ23(123、223)とポンプケース2との接触によるノイズの低減を図ることができ、ロータ23(123、223)の位置精度の低下によるポンプ効率の低下を抑制できる。
【0107】
(2)実施形態1のポンプ装置1において、実施形態2のロータ123、あるいは、
参考形態のロータ223を用いてもよい。この場合、支軸24を傾けたことによって生じる付勢力に加えて、傾斜溝100あるいは貫通穴110を設けたことによって生じる付勢力が加わるため、より大きな力でロータを付勢できる。
【0108】
(3)付勢力発生手段は上記実施形態1
、2および参考形態のような構成に限られるものではなく、ポンプケースとロータの少なくとも一方に各種の動圧発生手段を設けた構成にすることができる。例えば、実施形態2ではロータ123に動圧発生手段(傾斜面103a、103b)を設け、
参考形態ではロータ223に動圧発生手段(傾斜面113a、113b)を設けたが、ポンプケース2のロータ配置室20を構成する部分に傾斜面などの動圧発生手段を設けても良い。