(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404562
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】3次元共押し出しされた電池電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/02 20060101AFI20181001BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20181001BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20181001BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20181001BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20181001BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20181001BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/62 Z
H01M4/04 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y80/00
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-261715(P2013-261715)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-130813(P2014-130813A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】13/727,993
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502096543
【氏名又は名称】パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】コリエ・リン・コブ
(72)【発明者】
【氏名】チャン−ジュン・ベ
【審査官】
立木 林
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−134323(JP,A)
【文献】
特開2008−126561(JP,A)
【文献】
特開2007−136454(JP,A)
【文献】
特開2012−134141(JP,A)
【文献】
特開2007−313417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性材料と中間材料とが交互嵌合した第1の縞模様の第1の層であって、前記第1の縞模様が第1の方向に向いている第1の層と、
前記活性材料と前記中間材料とが交互嵌合した第2の縞模様の第2の層であって、前記第2の縞模様が前記第1の層上において前記第1の方向に対して直交する第2の方向に向いている第2の層と、を含み、
前記第1および第2の層の中間材料は、液体電解質またはゲル電解質であるか、電解質で満たされる多孔質の材料であることを特徴とする、
3次元電極構造。
【請求項2】
前記第1および第2の層が異なる高さである、請求項1に記載の3次元電極構造。
【請求項3】
前記活性材料と前記中間材料とが交互嵌合した第3の縞模様の第3の層であって、前記第3の縞模様が前記第1の方向に向いている第3の層をさらに含む、請求項1に記載の3次元電極構造。
【請求項4】
前記3次元電極構造が100マイクロメートル以上の厚さを有する、請求項1に記載の3次元電極構造。
【請求項5】
活性材料および中間材料とが交互嵌合した第1の縞模様の第1の層を基材上に第1の方向に堆積させることと、
前記活性材料および前記中間材料とが交互嵌合した第2の縞模様の第2の層を、前記第1の層上において前記第1の方向に対して直交する第2の方向に堆積させることと、を含み、
前記第1および第2の層の中間材料は、液体電解質またはゲル電解質であるか、電解質で満たされる多孔質の材料であることを特徴とする、
3次元電極の製造方法。
【請求項6】
前記第1および第2の層から前記中間材料の縞模様を除去して、前記活性材料の縞模様が残り、前記活性材料の前記縞模様の間にすき間を有するようにすることと、
前記活性材料の前記縞模様の間の前記すき間に電解質を満たすことと、をさらに含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の層を堆積させることが、前記基材が共押し出し印字ヘッドのそばを通り過ぎて複数回通過することにより前記層を堆積させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2の層を堆積させることが、共押し出し印字ヘッドが前記基材のそばを通り過ぎて複数回通過することにより前記層を堆積させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の層を堆積させることが、第1の印字ヘッドを用いて前記第1の層を堆積させることと、第2の印字ヘッドを用いて前記第2の層を堆積させることと、を含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交互嵌合した縞模様の材料により製造されたバッテリ電極に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブル電源要件が、高エネルギー密度および良好な電力性能を実現する電池技術の開発を牽引してきた。開発の1つの領域には、導体材料を基材上に共押し出しすることを用いる電極の製造が含まれている。電池開発の2つの側面が、材料密度と、イオン輸送とを最適化することを含んでいる。高密度が、材料のより高度な充てんを意味しており、これは、より高いエネルギー蓄積をもたらす。材料の密度が低いほど、より多くの電解質が体積を満たすことになり、リチウムイオン電池の場合、このことは、電解質中でのより高速なリチウムイオン輸送を可能にする。
【0003】
いくつかの米国特許および米国特許出願で、共押し出しプロセスについて論じている。これらの種類の電池電極の実施例については、米国特許第7,765,949号、第7,780,812号、第7,922,471号、ならびに米国特許公報第20070279839号、第20120156364号、および第20120153211号で論じている。米国特許第7,765,949号は、基材上に材料を押し出して分配するための装置を開示しており、この装置は材料を受け取るための少なくとも2個の通路と、基材上に材料を押し出すための出口ポートと、を有している。米国特許第7,780,812号は、平坦化したエッジ表面を有する他のこのような装置を開示している。米国特許第7,922,471号は、基材上に堆積した後に沈殿することのない平衡形を有する材料を押し出すための他のこのような装置を開示している。米国特許公報第20070279839号は、ハニカム構造を用いた共押し出し技術を開示している。米国特許公報第20120156364号および第20120153211号は、2つ以上の材料の流れを組み合わせて、基材上に、材料の複数の縞模様がある交互嵌合(互いにかみ合った)構造を作る共押し出しヘッドを開示している。
【0004】
共押し出し成形材料の開発に加えて、3次元構造の開発が始まっている。これらの3次元構造は、均一なモノリシック電池で現在採用している電極材料を再構成することにより電池性能の向上を実現する。
図1に示すように、さまざまな3次元構造を実現している。1つの実施例10が、交互嵌合した円筒陰極および円筒陽極を有している。他の実施例12が、長方形断面を有する交互嵌合した陰極および陽極を有している。さらに他の実施例14が、イオン伝導性電解質の薄層で被覆した円筒陽極の配列を示しており、残りの自由体積が陰極材料で満たされている。最後の実施例16が、「非周期的スポンジ」構造と呼ばれるものを示しており、この構造では、スポンジの固体ネットワークが、イオン伝導性電解質の極薄層で被覆された電荷挿入陰極として機能しており、残りの自由体積が相互浸透的で連続的な陽極で満たされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの構造は向上した性能を有しているが、製造が難しい。これらの構造をコスト効率の高い方法で製造できる場合にのみ、性能の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、いくつかの3次元電池構造の実施例を示している。
【
図2】
図2は、共押し出し装置から形成された3次元電極構造の実施形態を示している。
【
図3】
図3は、共押し出し装置から形成された3次元電極構造の他の実施形態を示している。
【
図4】
図4は、3次元電池電極の電池性能のグラフを示している。
【
図5】
図5は、共押し出し印字ヘッドの実施例を示している。
【
図6】
図6は、対称的な縞模様分布を含む直交する層を有する電池の実施形態を示している。
【
図7】
図7は、非対称的な縞模様分布を含む直交する層を有する電池の実施形態を示している。
【
図8】
図8は、対称的な分布を含む3つの直交する層を有する電池の実施形態を示している。
【
図9】
図9は、3次元電池の半電池の放電性能のグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図2は、電池の3次元電極構造20の実施形態を示している。本明細書では、この電極構造を電池の一部として議論しているが、この電極構造はウルトラコンデンサまたは燃料電池などの電池以外の任意の個数の構造体用の電極である可能性もあることに注目すべきである。さらに、この電極は電池の陰極または陽極である可能性がある。
【0008】
図2の実施形態では、電極構造は22および24の2層を有している。これらの層は、材料の交互嵌合した縞模様で構成されている。層22は、第1の方向に向いた縞模様を有している。層24は、第1の方向に対して直交する第2の方向に向いた縞模様を有している。この実施形態では、交互嵌合した縞模様は電極材料または活性材料26、および犠牲材料28である。電極材料は、任意の活性導体材料であってもよい。2次電池の場合、この活性導体材料はリチウム化合物またはグラファイト混合物であってもよい。1次電池の場合、電極は亜鉛および二酸化マンガンを使用するアルカリ系の一部であってもよい。材料26(または28)は、犠牲材料または一時的材料であってもよい。
【0009】
より詳細に後述するように、犠牲材料は焼成プロセスで燃焼させてもよい。これによって、活性材料の縞模様の間のすき間が生じる。電池構造の中にこれらの層を詰め込むときに、すき間を液体電解質またはゲル電解質で満たしてもよい。液体電解質またはゲル電解質の代わりに、その後、電解質で満たされる高度に多孔質の材料ですき間を満たしてもよい。他の方法として、活性材料以外の材料の縞模様が高度に多孔質の材料で構成されていてもよく、除去されない。高度に多孔質の材料が実際に犠牲材料ではないという理由から、この材料を中間材料と呼ぶ。
【0010】
図3は、3次元電極構造30の他の実施形態を示している。この実施形態では、6層の交互嵌合した縞模様がある。本明細書では、各縞模様は直交していると見なされるが、このことは、この層がその真下にある層に対して直交していることを意味している。各層は、現在の層から下に1つおいた層(下にある場合)と同じ方向に走っている。層の個数についてはシステム設計者の要望以外の制限はない。
【0011】
これらの構造は、
図5に示す上述の共押し出し印字ヘッドの実施形態のいずれかを用いて製造してもよい。45などの印字ヘッドが、一般的に2つ以上の材料を隣接する交互嵌合した縞模様で堆積させる。交互嵌合した縞模様は材料の間で通常混ざらないが、いくつかの実施形態では多少の限定的な混合がある可能性がある。
【0012】
これらの種類の印字ヘッドのうちの1つを使用して、3次元電極の最初の実験的な実現が行われた。電極構造は、この実施形態ではそれぞれ高さ125マイクロメートル(μm)の直交的に積み重ねた2つの層で構成されており、厚さ250μmの陰極電極をもたらす。この特定の実験では、活性材料が幅約270μmの縞模様のリチウム酸化コバルト、幅170μmの縞模様の犠牲材料である。
【0013】
図4は、上述の電極構造の充放電性能を示している。上方のグループの曲線40が充電性能を示している。「C」の印を付けた曲線が放電率性能である。2C、1C、C/2などの表記は異なる放電率を表している。ほとんどの電池は1Cのレートであるが、これは、1Cのレートで放電する1000mAhの電池は、理想的な条件下では、1000mAの電流を1時間提供することを意味している。また、1Cは1時間放電としても知られている。Cは、充電率ではなく、むしろ放電率を表す。2Cは30分放電を指していてもよく、C/2は2時間放電を指していることになる。
【0014】
材料の各層は、他の層内の同じ組成および寸法の縞模様の材料の交互嵌合した縞模様で構成されていてもよく、またはそれらの縞模様は異なる寸法であってもよい。縞模様の配置が対称的であってもよい。用語「対称的な」および「非対称的な」は、本明細書で使用する場合、材料の縞模様が体積内でどのように分布しているかを指している。
図6では、50などの縞模様が均一に分布している。このことは、上方の層とワイヤフレーム52とを比較しながら見ることにより、より容易に分かる可能性がある。
【0015】
上述の先行する実施形態は、中間材料の幅270μmおよび幅163μmの縞模様の領域内に活性材料を有している。
図6に示す構造は、幅62.5μmの縞模様の活性材料と中間材料の両方を有している。
図7は、非対称的な2層構造の他の実施形態を示している。上述のように、非対称的とは体積の中の縞模様の分布を指している。
図7では、第2の層の一番右の縞模様が電池セル壁に突き当たっている。
図8は、3層スタックを示している。
【0016】
図9は、結果として得られる性能を示している。
図6の2層対称設計は、最大の比容量と、活性材料のより大きな縞模様を有する上述の実施形態よりもよい全体的性能と、を有している。2層非対称設計は対称設計ほどの性能は発揮しないが、それでもなお活性材料のより大きな縞模様を有する実施形態よりも優れた性能を有している。3層スタックは、材料の縞模様が62.5μmに設定された活性材料としてLCOを用いることにより、2層スタックに匹敵する性能を発揮した。異なる電極材料の使用または異なる放電率の使用を活用した場合には、3層スタックは2層スタック設計よりも大幅に優れた性能を有している可能性がある。
【0017】
図5の印字ヘッドまたは同様の印字ヘッドを用いたこれらの構造の製造は、これらの層を基材上に堆積させることにより達成してもよい。基材を印字ヘッドのそばを通り過ぎて複数回通過させてもよく、または印字ヘッドの方が基材の近くを通って複数回移動してもよい。あるいは、2つの異なる印刷ヘッドを使用して、各印字ヘッドが材料の交互に重なった層上に印刷するようにしてもよい。通過ごとに他の層の電極を堆積させる。電極を直交的に堆積させるには、印字ヘッドまたは基材のどちらか一方を回転させて、次の層を堆積させる必要がある。
【0018】
このように、構造化された3次元電極は移動距離を短くする効果があり、電池のエネルギー密度および電力密度を増加させる。より短い移動距離は、微細な共押し出し成形層のおかげで存在しており、この微細な共押し出し成形層は織物のような構造を形成するために直交的に積み重ねたとき、移動距離をさらに短くするのに役立つ。リチウム化合物の場合、主眼はリチウムイオン輸送速度を最大化することである。3次元構造は、電解質にさらされる電極材料の量を増加させて、より厚い電池電極で通常認められる、より小さい抵抗損失へと導く。標準的な電池電極は、50〜100μmの範囲の厚さを通常有している。本明細書で議論している3次元構造は100μm以上の厚さを有していてもよい。これらの電極は、従来の角形電池セルおよび巻回電池セルと、より小さい設置面積内でないにしろ、同様の設置面積内で、より大きな電力密度およびエネルギー密度を可能にするとともに、角形スタックまたは巻回スタック内の分離体、電流コレクタなどの不活性層の個数の低減もまた可能にする。
【0019】
提示している3次元構造は電解質にさらされる電極材料の表面積の量を増加させるので、このことは、電池セル内でのより速い拡散挙動を後押しするとともに、さらされる電極材料の量が電解反応にとって重要であるスーパーコンデンサ電極およびウルトラコンデンサ電極用に有利である。
【0020】
上記で開示した、および他の、特徴および機能のうちのいくつか、またはそれらの代替が、他の多くの異なるシステムまたは応用において組み合わされることが望ましい可能性があることが分かるであろう。また、上記で開示した、および他の、特徴および機能のうちのいくつか、またはそれらの代替の、現在のところ予見できない、または思いがけないさまざまな代替、変更、変形、または改良が、その後に当業者により行われる可能性があるが、これらの代替、変更、変形、または改良もまた下記クレームにより含まれるものとする。