(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントのドレナージ性の向上(開存期間の向上)のために、ステントの内径を大きくする方法がある。この場合には、デリバリー性能を保持するため、ステント内に挿通されるガイドカテーテルの外径が大きくなり、ガイドカテーテルに対応させてプッシャーカテーテルの内径を大きくする必要がある。よって、プッシャーカテーテルの肉厚(プッシャーカテーテルの壁部の厚さ)が薄くなり、プッシャーカテーテルの曲げ剛性が小さくなる(変形度合いが大きくなる)。
【0007】
しかしながら、このとき以下に説明する不具合が発生しやすくなる。
図12は、従来のデリバリーシステム200の断面図である。
図12によると、このデリバリーシステム200は、ガイドカテーテル201と、このガイドカテーテル201が挿通可能なステント202及びプッシャーカテーテル203を備えている。
プッシャーカテーテル203におけるステント202に接触する先端部が柔軟すぎると(曲げ剛性が小さすぎると)、プッシャーカテーテル203でステント202を押込む時の反力によってプッシャーカテーテル203の先端部が変形してしまい、ステント202の基端部(手元側端部)にプッシャーカテーテル203の先端部が覆い被さってしまうことがある。
【0008】
一方で、ステント202の内径とプッシャーカテーテル203の外径との差が小さい場合、位置Q1に示すように、ステント202の基端部内にプッシャーカテーテル203の先端部が収納されてしまうことがある。
これらの場合、ステント202とプッシャーカテーテル203とが離れなくなってしまう。そのため、プッシャーカテーテル203を手元側に引き戻したときに、プッシャーカテーテル203からステント202をリリース(分離)できなくなる。その結果、ステント202を体内に留置できなくなる。
【0009】
また、ステントの移動、留置を目的にプッシャーカテーテルの押込みを行いやすくするため、プッシャーカテーテルの構成を基端側(手元側)から先端側(ステントとプッシャーカテーテルとの接触部)に向かって徐々に柔軟にする(曲げ剛性を小さくする)ことがある。
プッシャーカテーテルの基端側の曲げ剛性が大きいことで、プッシャーカテーテルの基端側に作用させた力量(力)がプッシャーカテーテルの先端側に効率的に伝達される。一方で、プッシャーカテーテルの先端側の曲げ剛性が小さいことで、内視鏡挿入部における湾曲部に形成されたチャンネル内にプッシャーカテーテルの先端側が挿入されたときでも、プッシャーカテーテルの形状の追従性が向上する。これにより、プッシャーカテーテルの長手方向への力量伝達効率が向上し、ステントの押込みが比較的容易になる。
しかしながら、プッシャーカテーテルの先端側の曲げ剛性を小さくした場合には、前述の不具合は発生しやすくなる。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、プッシャーカテーテルでステントを押込んだ後にプッシャーカテーテルからステントを確実にリリースすることができるステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のステントデリバリーシステムは、内視鏡のチャンネルに挿通可能なガイドカテーテルと、管状に形成されて前記ガイドカテーテルが挿通可能なステントと、管状に形成されて前記ガイドカテーテルが挿通可能であるとともに前記ステントよりも基端側に配置されたプッシャーカテーテルと、を備え、前記プッシャーカテーテルは、先端部に設けられ前記ステントと内径が略同一な拡径抑制部と、前記拡径抑制部の基端側に設けられ、前記拡径抑制部と
同一の材料で構成され、前記拡径抑制部よりも曲げ剛性が小さい中間部と、を有し、
前記拡径抑制部の外径と前記中間部の外径とは互いに等しく、前記同一の材料はエラストマー樹脂および熱可塑性樹脂であり、前記拡径抑制部における前記熱可塑性樹脂の配合比率は、前記中間部における前記熱可塑性樹脂の配合比率よりも高く、前記プッシャーカテーテルの前記中間部を先端側に押込んで、前記拡径抑制部の先端部を前記ステントの基端部に当接させることで前記ステントを先端側に押したときに、前記拡径抑制部により前記プッシャーカテーテルの先端部の内径が拡径するのが抑制されることを特徴としている。
【0012】
また、上記のステントデリバリーシステムにおいて、前記拡径抑制部の長さは、0mmを超え10mm未満であることがより
好ましい。
また、上記のステントデリバリーシステムにおいて、前記ステントと前記プッシャーカテーテルとは略同一の肉厚であり、前記ステントの内径と前記ガイドカテーテルの外径との差が、前記ステントの内径の8%以下であることがより好ましい。
また、上記のステントデリバリーシステムにおいて、前記プッシャーカテーテルは単層チューブから形成され、前記ステントは、互いに異なる材料を径方向に積層させた多層チューブから形成されることがより好ましい。
【0013】
また、上記のステントデリバリーシステムにおいて、前記拡径抑制部の曲げ剛性は、前記ステントの曲げ剛性よりも大きいことがより好ましい。
また、上記のステントデリバリーシステムにおいて、前記中間部の曲げ剛性は、前記ステントの曲げ剛性よりも小さいことがより好ましい。
また、上記のステントデリバリーシステムにおいて、前記拡径抑制部の曲げ剛性は前記ステントの曲げ剛性の200%以下であり、前記中間部の曲げ剛性は前記ステントの曲げ剛性の50%以上であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のステントデリバリーシステムによれば、プッシャーカテーテルでステントを押込んだ後にプッシャーカテーテルからステントを確実にリリースすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るデリバリーシステムの一実施形態を、
図1から
図11を参照しながら説明する。
以下では、まず、本デリバリーシステムとともに用いられる内視鏡について説明する。
図1に示すように、この内視鏡100は、いわゆる軟性の側視型のもので、長尺の挿入部110と、この挿入部110の基端部に設けられた操作部120とを備えている。
【0017】
挿入部110は、先端部に設けられた先端硬質部111と、先端硬質部111の基端側に取付けられた湾曲操作可能な湾曲部112と、湾曲部112の基端側に取付けられた可撓管部113とを有している。
先端硬質部111の側面には、ライトガイド115の先端部、及び不図示のCCDを有する撮像ユニット116が外部に露出した状態で設けられている。
挿入部110には、デリバリーシステム1等の内視鏡用処置具を挿通させるためのチャンネル117が形成されている。チャンネル117の先端部は、先端硬質部111の前述の側面に開口している。チャンネル117の基端部は、操作部120まで延びている。
チャンネル117の先端硬質部111に対応する部分には、不図示の起上台が設けられている。起上台の基端部は、先端硬質部111に回転可能に支持されている。起上台の先端部に固定された不図示の起上台操作ワイヤは、挿入部110内を通して基端側に延びている。
【0018】
図示はしないが、湾曲部112には、挿入部110の長手方向に並べて配置されるとともに互いに揺動可能に接続された複数の湾曲駒が内蔵されている。これらの湾曲駒のうち最も先端側に配置されたものに、湾曲駒操作ワイヤの先端部が固定されている。
湾曲駒操作ワイヤは、挿入部110内を通して基端側に延びている。
【0019】
操作部120を構成する操作部本体121の先端側には、鉗子口122が設けられている。チャンネル117の基端部は、鉗子口122に開口している。
操作部本体121の基端側には、前述の起上台操作ワイヤを操作するためのレバー(不図示)、湾曲駒操作ワイヤを操作するためのノブ123、及び、図示しない光源、モニタや、前述の撮像ユニット116等を操作するためのスイッチ124が設けられている。
ノブ123を操作することで、湾曲部112を所望の方向に湾曲させることができる。
【0020】
操作部120には、内視鏡用アダプター130が着脱可能に装着されている。内視鏡用アダプター130は、棒状のアダプター本体131と、アダプター本体131の一端部に配されてデリバリーシステム1に係合される円管状の処置具固定部132と、アダプター本体131の他端部に配され、略半円筒形状に成形されて欠円部分を有する内視鏡固定部133とを備えている。
【0021】
次に、本実施形態のデリバリーシステム1について説明する。
図2及び
図3に示すように、本デリバリーシステム1は、内視鏡100のチャンネル117に挿通可能なガイドカテーテル10と、管状に形成されてガイドカテーテル10が挿通可能なステント20と、管状に形成されてガイドカテーテル10が挿通可能であるとともにステント20よりも基端側に配置されたプッシャーカテーテル30とを備えている。
【0022】
ここで、デリバリーシステム1の各構成を説明するのに当たり、曲げ剛性を測定するための片持ち剛性試験について説明する。
前述のガイドカテーテル10、ステント20、及びプッシャーカテーテル30を、
図4に示す管状のサンプルS1として用いる。
サンプルS1の先端側を5mm以上突出させた状態で、サンプルS1の基端側の外周面をクランプR1で把持して支持する。サンプルS1が、水平面に平行になるように配置する。このとき、サンプルS1の管路に、サンプルS1の長手方向においてクランプR1で把持している範囲に、円柱状の芯体R2を挿入する。芯体R2の外径はサンプルS1の管路の内径と略同一にする。
【0023】
図5に、サンプルS1に荷重を作用させるために使用するアタッチメントR3を示す。
アタッチメントR3は、幅20mm、厚さ5mmの板状に形成されている。アタッチメントR3のサンプルS1に接触する接触面R4は、サンプルS1に対する曲げ荷重が一点に集中しないよう、曲率半径が2.5mmの曲面状に形成されている。
【0024】
図4に示すように、サンプルS1におけるクランプR1の先端面に対応する外周面の位置を支点S2とし、支点S2から水平面に沿って5mm離間した外周面の位置である力点S3においてアタッチメントR3の接触面R4が上方から当接するように、アタッチメントR3をセットする。
そして、不図示の計測装置により、アタッチメントR3を押し下げたときのたわみと、アタッチメントR3がサンプルS1から受ける反力とを並行して計測しつつ、アタッチメントR3を毎分10mmの速度で鉛直下方に5mm押し下げる。アタッチメントR3を5mm押し下げる間に受ける最大反力を測定し、サンプルS1の曲げ剛性とした。
本明細書における曲げ剛性は、この片持ち剛性試験で測定したものである。
【0025】
なお、下記の(1)式にて、曲げ剛性比率を規定する。
((拡径抑制部または中間部の曲げ剛性)/ステントの曲げ剛性)×100 (%)
・・(1)
【0026】
次に、デリバリーシステム1の各構成について説明する。
ガイドカテーテル10は、ポリプロピレンやポリエチレン等の生体適合性を有する樹脂で管状に形成された公知の構成のものを用いることができる。
【0027】
ステント20は、樹脂材料で管状に形成された内部層21、外部層22を径方向に積層させた多層チューブから形成されることがある。
図3は2層構造のステント20を示し、内部層21の外周面を外部層22が覆っている。内部層21と外部層22とは、互いに異なる材料で形成されている。例えば、内部層21をPFA(パーフルオロアルコキシルアルカン)で形成し、外部層22をポリウレタン系エラストマー樹脂で形成することができる。
これにより、ステント20留置時の低侵襲性を持たせたステント20の柔軟性を付与し、かつステント20とガイドカテーテル10との良好な摺動性(デリバリー操作性)を付与できる。
ステント20の先端部と基端部とには、
図2及び
図3に示すフラップ23、24がそれぞれ形成されている。フラップ23は、基端側に向かうにしたがって径方向外側に開くように形成されている。フラップ24は、先端側に向かうにしたがって径方向外側に開くように形成されている。この例では、フラップ23、24は、外部層22及び内部層21を切り起こすことで形成されている。
【0028】
なお、ステント20は、樹脂材料からなる単層チューブから形成してもよいし、単層チューブや多層チューブ内に、ブレード層やコイル層等の補強層を配置してもよい。
ステント20は、ガイドカテーテル10の先端側に摺動自在に配置される。
【0029】
プッシャーカテーテル30は、プッシャーカテーテル30の先端部に設けられた拡径抑制部31と、拡径抑制部31の基端側に設けられた中間部32と、中間部32の基端側に設けられた基端側硬質部33とを有している。すなわち、プッシャーカテーテル30の先端部が拡径抑制部31で構成され、プッシャーカテーテル30における拡径抑制部31よりも基端側が中間部32で構成され、プッシャーカテーテル30における中間部32よりも基端側が基端側硬質部33で構成されている。拡径抑制部31、中間部32、及び基端側硬質部33のそれぞれが、単層チューブから管状に形成されている。
この例では、拡径抑制部31、中間部32、及び基端側硬質部33のそれぞれの内径は互いに等しく、拡径抑制部31、中間部32、及び基端側硬質部33のそれぞれの外径は互いに等しい。
【0030】
拡径抑制部31の内径とステント20の内径とは、略同一(同一も含む)である。
ステント20とプッシャーカテーテル30とは、略同一(同一も含む)の肉厚である。すなわち、ステント20と拡径抑制部31、中間部32、及び基端側硬質部33とは、略同一の肉厚である。
拡径抑制部31の軸方向の長さは、内視鏡100の湾曲部112を湾曲させたときのチャンネル117に挿通可能な範囲(チャンネル117に引っ掛かる(スタック)しない範囲)で適宜設定される。
拡径抑制部31の長さが長いと、湾曲している湾曲部112に形成されたチャンネル117にデリバリーシステム1を押込みにくくなる。拡径抑制部31の長さは、10mm未満であること
が好ましく、2mm程度であることがより好ましい。
中間部32の曲げ剛性は、拡径抑制部31の曲げ剛性よりも小さい。
【0031】
拡径抑制部31を構成する方法は、物理的処理、あるいは化学的処理等、所定寸法で加工できる方法であればいずれでもよい。
物理的処理としては、例えば、拡径抑制部31及び中間部32をチューブの接合(溶着)で形成する、拡径抑制部31内に金属パイプを配置する、インサート成型する、などを行い拡径抑制部31を構成する方法が挙げられる。一方で、化学的処理としては、電子線処理により熱可塑性樹脂の分子架橋構造を発現する方法が挙げられる。
【0032】
拡径抑制部31をチューブの接合で形成する場合、樹脂材料にフィラーを混在させてコンパウンド(樹脂混練)材料としてから成形することが好ましい。拡径抑制部31をこのように構成することで、表面硬度、曲げ剛性、伸び性等の機械的特性を適切な値に調整しやすいため、デリバリーシステム1の使用環境に適切な拡径抑制部31を作製することができる。
【0033】
拡径抑制部31に使用される樹脂材料は、下記の熱可塑性樹脂に代表される。しかし、所望の機械的特性が具備されていれば、いずれの熱可塑性樹脂を使用してもよい。
・ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、及びそれらの共重合樹脂、ポリエステル系樹脂(PET(ポリエチレンテレフタレート)等)、PVA(ポリビニルアルコール)等の汎用樹脂。
・ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂(PBT等)、フッ素系樹脂(例えばPTFE、PVDF、PFA、FEP、ETFE)、PEEK(ポリ・エーテル・エーテル・ケトン)等のエンジニアリング樹脂。
・その他、各種エラストマー樹脂(ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系等)、シリコーン含有樹脂、ポリウレタン系樹脂等。
【0034】
フィラーは、樹脂材料に制限されることはなく、拡径抑制部31に機械的特性や化学的特性を調整するために混在される。なお、樹脂材料にフィラーを混在しなくてもよい。
フィラーのうち有機系フィラーとしては、UV防止剤、セルロースナノファイバー等を挙げることができる。フィラーのうち無機系フィラーとしては、金属(カーボンブラック、タングステン等)、金属化合物(硫酸バリウム、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等)、金属酸化物(炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ等)、鉱物(タルク、クレー等)を挙げることができる。
【0035】
拡径抑制部31に、剛性等の機械的特性を持たせる手段として、例えば、コイル、ブレード等の補強層を配置した多層チューブ等としたチューブ構成にして、機械的特性を付与することがある。また、拡径抑制部31と中間部32との間の接合強度を確保するためには、溶着される樹脂量をより多くすることが望ましく、拡径抑制部31や中間部32として樹脂材料のみが構成要素となる単層チューブが好適に用いられる。
【0036】
プッシャーカテーテル30は、拡径抑制部31と中間部32、中間部32と基端側硬質部33をそれぞれ溶着して構成されている。
拡径抑制部31及び基端側硬質部33と、中間部32とで配合される材料の種類が同じであるため、溶着時の相溶性が良く接合強度が良好になる。拡径抑制部31、中間部32、及び基端側硬質部33をこのように構成しないと、要求される接合強度を達成するために表面改質やバインダー配置等を行う必要がある。加工工程が増すことで、プッシャーカテーテルの製造コストが高くなってしまう。
プッシャーカテーテル30をチューブ接合により構成することで、プッシャーカテーテル30を製造するときに、大がかりな設備(初期投資)を必要とせず、所定の寸法に加工しやすい。
【0037】
拡径抑制部31と中間部32とは、配合される材料の種類が互いに同じで、材料の配合比率が互いに異なるものが好適に用いられる。これにより、溶着接合時での接合強度を保持しつつ、所望の曲げ剛性に調整しやすくなる。
中間部32の曲げ剛性を拡径抑制部31の曲げ剛性よりも小さくするために、前述の樹脂材料として、例えば比較的柔らかいエラストマー樹脂、及び比較的硬い熱可塑性樹脂を用いる。そして、拡径抑制部31及び中間部32に、それぞれエラストマー樹脂及び熱可塑性樹脂を配合し、拡径抑制部31における熱可塑性樹脂の配合比率を、中間部32における熱可塑性樹脂の配合比率よりも高くする。
基端側硬質部33は、拡径抑制部31と同一の材料で形成されている。すなわち、基端側硬質部33の曲げ剛性は、拡径抑制部31の曲げ剛性に等しい。
【0038】
図6に示すように、プッシャーカテーテル30の基端側硬質部33の基端部には、プッシャー口金41が取付けられている。プッシャー口金41の基端部には、おねじ部41aが形成されている。
プッシャー口金41には、弾性変形可能なC形状のフック43が取付けられている。フック43は、側面視で斜め先端側が開口している。フック43を内視鏡用アダプター130の処置具固定部132に取付けたときに、フック43は処置具固定部132周りに摺動する。
ガイドカテーテル10の基端部には、口金42が取付けられている。口金42の先端部には、おねじ部41aに螺合するめねじ部42aが形成されている。
【0039】
次に、以上のように構成されたデリバリーシステム1の作用について、ステント20を胆管内に留置する場合を例にとって説明する。
操作部120のスイッチ124を操作して光源を動作させると、光源から発せられた照明光はライトガイド115に導かれて挿入部110の先端硬質部111の周辺を照明する。撮像ユニット116で取得された挿入部110の先端硬質部111の周辺の画像は、モニタに表示される。
使用者はモニタに表示された画像を確認しながら、口等の自然開口から患者の体腔内に内視鏡100の挿入部110を挿入する。
この際に、必要に応じてノブ123を操作して湾曲部112を湾曲させる。
【0040】
図7に示すように、挿入部110の先端部を、十二指腸P1を通して十二指腸乳頭P2付近まで進める。チャンネル117の先端部の開口を、十二指腸乳頭P2に対向させる。
内視鏡100の鉗子口122からガイドワイヤ140を挿入し、チャンネル117の先端部から突出させたガイドワイヤ140を胆管P3の狭窄部P4に挿通させる。
この際に、適宜起上台を操作して、チャンネル117の先端部の開口から突出するガイドワイヤ140の向きを調節する。
【0041】
次に、
図1に示すように、内視鏡用アダプター130の内視鏡固定部133を内視鏡100の操作部120の所定の位置に装着する。ガイドカテーテル10の先端側にステント20を、基端側にプッシャーカテーテル30をそれぞれガイドカテーテル10の外周部に摺動自在に配置させる。ガイドカテーテル10の先端部を、鉗子口122から突出しているガイドワイヤ140の基端側端部から挿通する。ステント20及びプッシャーカテーテル30の先端側の一部を、チャンネル117内に挿入する。
【0042】
鉗子口122の近傍で、ガイドカテーテル10及びプッシャーカテーテル30を途中で折り返し、フック43を内視鏡用アダプター130の処置具固定部132に取付ける。フック43を処置具固定部132上で回動しながら、口金42が鉗子口122と対向して、ガイドカテーテル10及びプッシャーカテーテル30と口金42から突出したガイドワイヤ140とが略平行になるように調整する。
【0043】
この状態で、プッシャーカテーテル30の基端側硬質部33とガイドワイヤ140とを一緒に把持して図中の矢印A1の方向に移動する。
このとき、ガイドカテーテル10及びプッシャーカテーテル30がチャンネル117に挿入される長さと、ガイドワイヤ140が口金42から引き抜かれる長さとが同じになる。従ってこの作業を繰り返すことによって、
図7に示すように、ガイドワイヤ140の先端位置を一定に保持した状態でガイドカテーテル10及びプッシャーカテーテル30をチャンネル117内に挿入し、ガイドカテーテル10の先端を所望の位置まで挿入する。
基端側硬質部33に力量を作用させることで、プッシャーカテーテル30の先端側に効果的に力量が伝達される。
【0044】
次に、
図8に示すように、口金42をプッシャー口金41に対して回転して口金42をプッシャー口金41から取り外す。
図9に示すように、口金42を把持しながらガイドカテーテル10をプッシャー口金41から引き出して鉗子口122の近傍でプッシャー口金41から突出したガイドカテーテル10とプッシャーカテーテル30とを略平行に配する。
【0045】
プッシャーカテーテル30の基端側硬質部33とガイドカテーテル10とを一緒に把持して
図9中の矢印A2の方向に移動する。このとき、プッシャーカテーテル30がチャンネル117内に挿入される長さと、ガイドカテーテル10及びガイドワイヤ140がプッシャー口金41から引き抜かれる長さとが同じになる。
【0046】
図10に示すようにガイドカテーテル10に対して基端側硬質部33を介して中間部32を先端側に移動させて(押込んで)、拡径抑制部31の先端部をステント20の基端部に当接させることで、ステント20を先端側に押す。ガイドカテーテル10の外周面を、ステント20及びプッシャーカテーテル30が先端側に摺動する。中間部32の曲げ剛性よりも拡径抑制部31の曲げ剛性の方が大きいため、拡径抑制部31により、中間部32の内径に比べてプッシャーカテーテル30の先端部の内径が拡径する(大きくなる)のが抑制される。これにより、ステント20の基端面と拡径抑制部31の先端面とが確実に接触し、拡径抑制部31に作用させた力量がステント20に効率的に伝達される。
湾曲部112に形成されたチャンネル117内にプッシャーカテーテル30の中間部32が配置されたときには、中間部32の曲げ剛性は比較的小さいため、湾曲部112の湾曲し易さが維持される。
【0047】
前述の作業を繰り返すことによって、
図10に示すように、ガイドカテーテル10及びガイドワイヤ140の先端位置を一定に保持した状態でプッシャーカテーテル30をチャンネル117内に挿入し、狭窄部P4の肝臓側、十二指腸乳頭P2にステント20のフラップ23、24がそれぞれ係止する位置までステント20を挿入する。
この後で、ガイドカテーテル10、プッシャーカテーテル30、ガイドワイヤ140をともに胆管P3内から引き抜いて内視鏡100のチャンネル117から取り出すことによって、ステント20を留置(リリース)する。
【0048】
図11に、前述の従来のデリバリーシステム200が内視鏡100のチャンネル117内に挿入された状態を示す。
内視鏡100の湾曲部112が湾曲していてステント202が先端側に移動しにくくなっているときに、ガイドカテーテル201に対してプッシャーカテーテル203を先端側に移動させると、プッシャーカテーテル203の先端部が、ステント202を押込むときに蛇腹状に変形することがある。
この場合、チャンネル117の内周面に拡径したプッシャーカテーテル203の先端部が強く接触する。チャンネル117の内周面とプッシャーカテーテル203の先端部との間の摩擦力が増大し、ステント202やプッシャーカテーテル203を押込むのに必要な力量が増大し、使用者の操作性が悪くなる。
デリバリーシステムは内視鏡のチャンネル内に挿入して用いる場合、デリバリーシステムの外径はチャンネルの内径以下であるという制限を受ける。ステントの留置には、ガイドカテーテルで案内しながら、管状に形成されたプッシャーカテーテルで、管状に形成されたステントを押込む動作を行う。
【0049】
本実施形態のデリバリーシステム1によれば、プッシャーカテーテル30は、先端部に設けられた拡径抑制部31、及び拡径抑制部31の基端側に設けられた中間部32を備えている。このため、ガイドカテーテル10に対して中間部32を押込んで拡径抑制部31の先端部をステント20の基端部に当接させたときに、拡径抑制部31によりプッシャーカテーテル30の先端部の内径が拡径するのが抑制された状態でステント20を先端側に押込む。
したがって、プッシャーカテーテル30でステント20を押込んだときに、ステント20の基端部にプッシャーカテーテル30の先端部が覆い被さったり収納されたり径方向外側及び内側に同時に膨らんだりすることがなく、ステント20を押込んだ後でプッシャーカテーテル30からステント20を確実にリリースすることができる。
【0050】
ステント20の肉厚とプッシャーカテーテル30の肉厚との間に大きな差があると、特にチャンネル117の先端部の開口から十二指腸乳頭P2までの間で、ステント20とプッシャーカテーテル30との間に軸ずれが生じやすくなる。このため、ステント20に均一に押込み力量が伝達できず、ステント20の留置がしにくくなる。
ステント20とプッシャーカテーテル30とが略同一の肉厚であることで、ステント20とプッシャーカテーテル30との間に軸ずれが生じることを抑制することができる。
【0051】
プッシャーカテーテル30の肉厚が薄い場合には、プッシャーカテーテル30の先端部に拡径抑制部31を設けることで、プッシャーカテーテル30に作用させた力量がステント20に効率的に伝達され、プッシャーカテーテル30からステント20へ力量を伝達し維持する効果が大きくなる傾向にある。
よって、プッシャーカテーテル30の先端部に拡径抑制部31を設けることで、プッシャーカテーテル30の肉厚を薄くすること可能となり、プッシャーカテーテル30の寸法のバリエーションを広く設定することができる。
プッシャーカテーテル30において中間部32の基端側に基端側硬質部33が設けられることで、基端側硬質部33に作用させた力量をプッシャーカテーテル30の先端側へさらに効果的に伝達させることができる。
【0052】
本実施形態では、以下に説明するようにデリバリーシステム1の構成を様々に変形させることができる。
図3に示すように、ステント20の内径L1とガイドカテーテル10の外径L2との差(クリアランス)が、ステント20の内径L1の8%(0.08倍)以下であってもよい。
前述のクリアランスが大きいと、ステント20と、ガイドカテーテル10やプッシャーカテーテル30との間で軸ずれが生じ、プッシャーカテーテル30を押込んだ力量がステント20に効果的に伝達されない(力量伝達効率が悪くなる)。
特に、肉厚が薄く、かつ曲げ剛性の小さい(曲げ変形がしやすい)ステントを留置する場合は、ステントを留置する手技中にステントが曲がりやすくなる。ステントが曲がることにより、チャンネル117内での摩擦抵抗が発生することを防ぐため、クリアランスを小さくしてステントを曲がりにくくする必要がある。
【0053】
発明者らのこれまでの検討から、上記の肉厚が薄いステントにて既存品同等のクリアランス設計(ステントの内径に対して22%程度のクリアランス)にした場合には、前述の軸ずれが生じることにより、ステントを留置する時の操作性が悪くなることが確認できている。クリアランスをステント20の内径L1の8%以下にすることで、ステント20とプッシャーカテーテル30との軸ずれを抑制し、ステント20を押込む力量を良好に伝達することができる。
なお、下記の(2)式にて、クリアランス比率を規定する。
{(L1−L2)/L1}×100 (%) ・・(2)
すなわち、この変形例では、デリバリーシステム1のクリアランス比率が8%以下であってもよいとしている。なお、デリバリーシステム1のクリアランス比率は0%よりも大きくなる。
【0054】
プッシャーカテーテル30の拡径抑制部31の曲げ剛性は、ステント20の曲げ剛性よりも大きくてもよい。
一般的に、ステントの基端部とプッシャーカテーテルの先端部との変形度合いは、それぞれの曲げ剛性が大きいほど小さくなる。なお、ここで言う変形度合いとは、管状のものの径方向の寸法変化量を意味する。
拡径抑制部31の曲げ剛性がステント20の曲げ剛性よりも大きければ、ステント20の基端部よりも先にプッシャーカテーテル30の先端部である拡径抑制部31が変形することなく、ステント20を押込む(留置する)ことができる。
しかし、拡径抑制部31の軸方向の長さにもよるが、拡径抑制部31の曲げ剛性があまりにも大きいと、以下のような問題が生じる。すなわち、湾曲した湾曲部112に形成されたチャンネル117内を拡径抑制部31が通るときに、拡径抑制部31が変形しにくいため、チャンネル117の内周面と拡径抑制部31との間で引っ掛かり感(スタック感)が生じる。最悪の場合には、チャンネル117の内周面が損傷する恐れがある。
【0055】
発明者らのこれまでの検討から、使用環境に即した湾曲形状にした湾曲部112のチャンネル117内をプッシャーカテーテル30が通るときに、拡径抑制部31の曲げ剛性がステント20の曲げ剛性の200%以下であると、ステント20をチャンネル117内に良好に押込めることが確認できている。
【0056】
プッシャーカテーテル30の中間部32の曲げ剛性は、ステント20の曲げ剛性よりも小さくてもよい。
中間部32の曲げ剛性がステント20の曲げ剛性よりも大きいと、湾曲形状にした湾曲部112のチャンネル117内をステント20が通るときに、チャンネル117の内周面から中間部32が受ける反力が増大する。チャンネル117内でのデリバリーシステム1の追従性が悪くなり、ステント20への力量伝達効率が悪くなる。
中間部32の曲げ剛性がステント20の曲げ剛性よりも小さいと、前述のチャンネル117内でのデリバリーシステム1の追従性が良好となる。
【0057】
しかし、中間部32の曲げ剛性がステント20の曲げ剛性よりもあまりにも小さいと、以下のような問題が生じる。
すなわち、ステント20が狭窄部P4を突破するときに必要な押込み力量をステント20に伝達する前に、ステント20側から伝達されるプッシャーカテーテル30への反力に対し曲げ剛性が小さい部分で応力集中によるキンク等の変形が発生しやすくなる。これにより、本来のデリバリー機能が発現せず品質機能低下をきたすことがある。
発明者らのこれまでの検討から、プッシャーカテーテル30の中間部32の曲げ剛性はステント20の曲げ剛性の50%以上であると、良好なデリバリー機能が発現することが確認できている。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、プッシャーカテーテル30は拡径抑制部31、中間部32、及び基端側硬質部33を備えているとした。しかし、プッシャーカテーテル30が基端側硬質部33を備えないように構成してもよい。
プッシャーカテーテル30が単層チューブから形成されているとしたが、プッシャーカテーテルは多層チューブから形成されているとしてもよいし、補強層を内部に配置しているとしてもよい。
【0059】
(実施例)
以下では、本発明の実施例を具体例を示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(各部材の構成)
・ステント: 内部層(PFA)/補強層(コイル)/外部層(ポリウレタン)、の層構成とした。内径φ2.75mm、外径φ3.2mm。
・ガイドカテーテル: PFAチューブからなり、先端部は、先端側に向かうにしたがって細くなるテーパー形状となっている。ステントが配置されるステントマウント部の外径はφ2.6mm。
・プッシャーカテーテル:
拡径抑制部: ポリプロピレン(ロックウェル硬度(R−スケール):80)、スチレン系エラストマー(デュロメーターA硬度:90)、硫酸バリウム(粒度分布1〜100μm(マイクロメートル):1μm〜10μmの累積頻度80%)を、配合比率79:5:16としたコンパウンド材料でチューブの成形を行った。ヒーター加温によるチューブ溶着により、中間部に接合した。内径φ2.75mm、外径φ3.3mm。
中間部: ポリプロピレン(ロックウェル硬度(R−スケール):80)、スチレン系エラストマー(デュロメーターA硬度:90)、硫酸バリウム(粒度分布1〜100μm:1μm〜10μmの累積頻度80%)を、配合比率54:29:17としたコンパウンド材料でチューブの成形を行った。ヒーター加温式加熱によるチューブ溶着により、拡径抑制部及び基端側硬質部に接合した。内径φ2.75mm、外径φ3.3mm。
基端側硬質部: 拡径抑制部と同じチューブを使用した。
【0061】
(各部材の測定結果)
・曲げ剛性: ステント 7.2N
プッシャーカテーテル
拡径抑制部及び基端側硬質部 8.8N、 中間部 5.7N
・ガイドカテーテル及びステントのクリアランス比率: 5.8%
・拡径抑制部の曲げ剛性はステントの曲げ剛性よりも大きく、拡径抑制部の曲げ剛性比率(前述の(1)における分子が拡径抑制部の曲げ剛性の場合)は122%であった。
・中間部の曲げ剛性はステントの曲げ剛性よりも小さく、中間部の曲げ剛性比率(前述の(1)における分子が中間部の曲げ剛性の場合)は79%であった。
【0062】
以上の構成にて、適度な力量伝達効果を維持し、かつ、ステントを確実にリリースして留置することができるデリバリーシステムが提供される。