(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0020】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
【0021】
ここに開示される粘着シートは、基材(支持基材)の両面にそれぞれ粘着剤層を有する形態の基材付き両面粘着シートである。この明細書中では、基材の一方の表面である第一面上に配置されている粘着剤層を第一粘着剤層といい、基材の他方の表面である第二面上に配置されている粘着剤層を第二粘着剤層という。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0022】
ここに開示される粘着シートは、例えば、
図1、
図2に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。
図1に示す粘着シート1は、基材10と、その基材10の第一面10Aおよび第二面10Bにそれぞれ支持された第一粘着剤層21および第二粘着剤層22とを備える。第一面10Aおよび第二面10Bは、いずれも非剥離性の表面(非剥離面)である。粘着シート1は、第一粘着剤層21の表面(第一粘着面)21Aおよび第二粘着剤層22の表面(第二粘着面)22Aをそれぞれ被着体に貼り付けて使用される。使用前の粘着シート1は、第一粘着面21Aおよび第二粘着面22Aが、少なくとも該粘着剤面側が剥離性を有する表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。
図2に示す粘着シート2は、剥離ライナー31として両面が剥離面となっているものを使用し、
図1に示す剥離ライナー32を有しない他は、
図1に示す粘着シート1と同様に構成されている。この種の粘着シート2は、該粘着シートを巻回して第二粘着面22Aを剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、第二粘着面22Aもまた剥離ライナー31によって保護された構成とすることができる。
【0023】
<粘着剤層>
ここに開示される技術において、第一粘着剤層および第二粘着剤層の各々を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。上記粘着剤は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。粘着性能やコスト等の観点から、アクリル系ポリマーまたはゴム系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤を好ましく採用し得る。なかでもアクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤(アクリル系粘着剤)が好ましい。第一粘着剤層を構成する粘着剤の組成と第二粘着剤層を構成する粘着剤の組成とは、同一であってもよく、異なってもよい。
【0024】
なお、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマーの主成分をいう。上記ゴム状ポリマーとは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
また、「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。アクリル系ポリマーの典型例として、該アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマー成分のうちアクリル系モノマーの割合が50重量%より多いアクリル系ポリマーが挙げられる。
また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0025】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH
2=C(R
1)COOR
2 (1)
ここで、上記式(1)中のR
1は水素原子またはメチル基である。また、R
2は炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基である。以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
2がC
1−14(例えばC
2−10、典型的にはC
4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとすることが適当である。粘着特性の観点から、R
1が水素原子であってR
2がC
4−8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレート(以下、単にC
4−8アルキルアクリレートともいう。)を主モノマーとすることが好ましい。
【0027】
R
2がC
1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
【0028】
アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は特に限定されないが、通常は99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが好ましい。あるいは、アクリル系ポリマーは実質的にアルキル(メタ)アクリレートのみを重合したものであってもよい。また、モノマー成分としてC
4−8アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC
4−8アルキルアクリレートの割合は、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上(典型的には99〜100重量%)であることがさらに好ましい。ここに開示される技術は、全モノマー成分の50重量%以上(例えば60重量%以上)がBAである態様で好ましく実施され得る。好ましい一態様において、上記全モノマー成分は、BAより少ない割合で2EHAをさらに含み得る。
【0029】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他のモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらのうちの好適例としてビニルエステル類が挙げられる。ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。なかでもVAcが好ましい。
【0030】
また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは接着力の向上に寄与し得るその他モノマーとして、水酸基(OH基)含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等が挙げられる。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの一好適例として、上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が例示される。なかでも、AA、MAAが好ましい。
他の好適例として、上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。水酸基含有モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なかでも好ましい水酸基含有モノマーとして、アルキル基が炭素原子数2〜4の直鎖状であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
上記「その他モノマー」は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。その他モノマーの合計含有量は、全モノマー成分の凡そ40重量%以下(典型的には、0.001〜40重量%)とすることが好ましく、凡そ30重量%以下(典型的には0.01〜30重量%、例えば0.1〜10重量%)とすることがより好ましい。
上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、全モノマー成分の凡そ0.1〜10重量%(例えば0.2〜8重量%、典型的には0.5〜5重量%)とすることが適当である。上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、全モノマー成分の凡そ0.001〜10重量%(例えば0.01〜5重量%、典型的には0.02〜2重量%)とすることが適当である。
【0032】
アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−15℃以下(典型的には−70℃以上−15℃以下)となるように設計されていることが適当である。アクリル系ポリマーのTgは、好ましくは−25℃以下(例えば−60℃以上−25℃以下)、より好ましくは−40℃以下(例えば−60℃以上−40℃以下)である。アクリル系ポリマーのTgを上述した上限値以下とすることは、両面粘着シートの貼付け作業性等の観点から好ましい。
【0033】
アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
【0034】
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用
いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0035】
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、JohnWiley&Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。
【0036】
「Polymer Handbook」(第3版、JohnWiley&Sons,Inc、1989年)にも記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗付し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70℃〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、せん断損失弾性率G”のピークトップ温度に相当する温度(G”カーブが極大となる温度)をホモポリマーのTgとする。
【0037】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜170℃(典型的には40℃〜140℃)程度とすることができる。
【0038】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1〜4の一価アルコール類);tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0039】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005〜1重量部(典型的には0.01〜1重量部)程度の範囲から選択することができる。
【0040】
上記溶液重合によると、アクリル系ポリマーが有機溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施して得られたアクリル系ポリマー溶液を含む粘着剤組成物から形成されたものであり得る。上記アクリル系ポリマー溶液としては、上記重合反応液を必要に応じて適当な粘度(濃度)に調製したものを使用し得る。あるいは、溶液重合以外の重合方法(例えば、エマルション重合、光重合、バルク重合等)でアクリル系ポリマーを合成し、該アクリル系ポリマーを有機溶媒に溶解させて調製したアクリル系ポリマー溶液を用いてもよい。
【0041】
ここに開示される技術におけるベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば10×10
4〜500×10
4の範囲であり得る。両面粘着シートの粘着性能の観点から、ベースポリマーのMwは、10×10
4〜150×10
4(例えば20×10
4〜75×10
4、典型的には35×10
4〜65×10
4)の範囲にあることが好ましい。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgelGMH−H(S)、東ソー社製)を用いることができる。
【0042】
<熱伝導性フィラー>
ここに開示される両面粘着シートは、第一粘着剤層および第二粘着剤層のうち少なくとも一方が、熱伝導性フィラーを含有する粘着剤層(フィラー含有粘着剤層)である。第一粘着剤層および第二粘着剤層の両方がフィラー含有粘着剤層であってもよい。これにより、高い粘着性能と低い熱抵抗とがより高レベルで両立され得る。第一粘着剤層および第二粘着剤層がいずれもフィラー含有粘着剤層である場合、熱伝導性フィラーの種類やその含有量は、第一粘着剤層と第二粘着剤層とで同一であってもよく、異なってもよい。
【0043】
熱伝導性フィラーとしては、無機材料(金属材料を包含する意味である。)の粉末を用いることができる。例えば、水酸化アルミニウム[Al
2O
3・3H
2OまたはAl(OH)
3]、ベーマイト[Al
2O
3・H
2OまたはAlOOH]、水酸化マグネシウム[MgO・H
2O;またはMg(OH)
2]、水酸化カルシウム[CaO・H
2OまたはCa(OH)
2]、水酸化亜鉛[Zn(OH)
2]、珪酸[H
4SiO
4、H
2SiO
3またはH
2Si
2O
5]、水酸化鉄[Fe
2O
3・H
2Oまたは2FeO(OH)]、水酸化銅[Cu(OH)
2]、水酸化バリウム[BaO・H
2OまたはBaO・9H
2O]、酸化ジルコニウム水和物[ZrO・nH
2O]、酸化スズ水和物[SnO・H
2O]、塩基性炭酸マグネシウム[3MgCO
3・Mg(OH)
2・3H
2O]、ハイドロタルサイト[6MgO・Al
2O
3・H
2O]、ドウソナイト[Na
2CO
3・Al
2O
3・nH
2O]、硼砂[Na
2O・B
2O
5・5H
2O]、ホウ酸亜鉛[2ZnO・3B
2O
5・3.5H
2O]等の金属水酸化物および水和金属化合物;例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム等の窒化物;例えば、炭化ケイ素、二酸化ケイ素等のケイ素化合物;例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル、アンチモン酸ドープ酸化スズ等の金属酸化物;例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩;例えば、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;例えば、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、白金等の金属;例えば、カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;等の無機材料の粉末を、熱伝導性フィラーとして用いることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
これらのうち好ましい熱伝導性フィラーとして、金属水酸化物粉末、水和金属化合物粉末、窒化物粉末および金属酸化物粉末が挙げられる。なかでも金属水酸化物粉末が好ましく、特に水酸化アルミニウム粉末が好ましい。
【0045】
熱伝導性フィラーを構成する粒子の形状は特に限定されず、例えば、バルク状、針形状、板形状(例えば六角板状)、層状等であり得る。バルク形状の概念には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。
【0046】
特に限定するものではないが、板形状の熱伝導性フィラーを用いる場合、該板形状の平均厚さは、例えば0.05μm〜20μm、好ましくは0.1μm〜10μm、より好ましくは0.1μm〜5μmであり得る。平均厚さが小さくなると、フィラー含有粘着層の粘着性能が向上する傾向にある。平均厚さが大きくなると、熱伝導性フィラーの分散性が向上する傾向にある。これらの観点から、板形状の熱伝導性フィラーとして、平均厚さが0.1μm〜2μm(より好ましくは0.1μm〜1.5μm、例えば0.1〜1μm)のものを好ましく採用することができる。上記板形状の熱伝導性フィラーの平均アスペクト比は特に限定されず、例えば1〜50、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5であり得る。ここで、板形状の熱伝導性フィラーの平均アスペクト比は、該板形状における最大差渡し長さ/厚さ(板厚)により表される各粒子のアスペクト比の平均値として求められる。上記平均厚さおよび平均アスペクト比は、透過型電子顕微鏡観察を通じて把握することができる。
【0047】
フィラー含有粘着剤層中に含まれる熱伝導性フィラー全体の平均粒径は特に限定されない。上記平均粒径は、通常、0.1μm〜20μmであることが適当であり、好ましくは0.1μm〜10μm、より好ましくは0.2μm〜5μm、さらに好ましくは0.2μm〜3μmである。平均粒径が小さくなると、フィラー含有粘着層の粘着性能が向上する傾向にある。平均粒径が大きくなると、熱伝導性フィラーの分散性が向上する傾向にある。なお、本明細書中において、熱伝導性フィラーの平均粒径とは、レーザ回折・散乱法に基づく測定により得られた粒度分布において体積基準の累積粒度が50%となる粒径、すなわち50%体積平均粒子径(50%メジアン径)をいう。
【0048】
好ましい一態様において、フィラー含有粘着剤層中に含まれる熱伝導性フィラーは、レーザー回折・散乱法に基づく測定により得られた粒度分布において、体積基準の粒径が30μm以下の粒子から実質的に構成されていることが好ましい。すなわち、粒径30μmより大きい熱伝導性フィラー粒子を実質的に含まないフィラー含有粘着剤層が好ましい。このようなフィラー含有粘着剤層は、熱伝導性フィラーの含有量を比較的多くしても粘着面の平滑性が損なわれにくい。これにより、高い粘着性能と低い熱抵抗とを好適に両立し得る。高い粘着性能と低い熱抵抗とをより高レベルで両立する観点から、フィラー含有粘着剤層中に含まれる熱伝導性フィラーは、粒径20μm以下(より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下)の粒子から実質的に構成されていることが好ましい。ここで、熱伝導性フィラーが粒径Xμm以下の粒子から実質的に構成されているとは、上記粒度分布において、粒径Xμmまでの累積粒度(体積基準)が98%以上、好ましくは100%であることをいう。
【0049】
熱伝導性フィラーとしては、市販の無機材料粉末を用いることができる。例えば、水酸化アルミニウム粉末として、昭和電工社製の商品名「ハイジライトH−32」、「ハイジライトH−42」、「ハイジライトH−42M」、「ハイジライトH−43」、「ハイジライトH−43M」、日本軽金属社製の商品名「B103ST」等;例えば、酸化アルミニウム粉末として、昭和電工社製の商品名「AS−50」等;例えば、水酸化マグネシウム粉末として、協和化学工業社製の商品名「KISUMA 5A」、タテホ化学工業社製の商品名「ECOMAG Z−10」等;例えば、窒化ホウ素粉末として、水島合金鉄社製の商品名「HP−40」、モメンティブ社製の商品名「PT620」等;例えば、アンチモンドープ酸化スズ粉末として、石原産業社製の商品名「SN−100S」、「SN−100P」、「SN−100D(水分散品)」等;例えば、酸化チタンとして、石原産業社製の商品名「TTOシリーズ」等;例えば、酸化亜鉛として、住友大阪セメント社製の商品名「SnO−310」、「SnO−350」、「SnO−410」等;を用いることができる。なかでも好ましい熱伝導性フィラーとして、「ハイジライトH−42」(平均粒径1.0μm、粒径5μmまでの累積粒度が100%)、「ハイジライトH−42M」(平均粒径1.0μm、粒径5μmまでの累積粒度が100%)、「ハイジライトH−43」(平均粒径0.75μm、粒径2μmまでの累積粒度が100%)および「ハイジライトH−43M」(平均粒径0.75μm、粒径2μmまでの累積粒度が100%)が挙げられる。
【0050】
ここに開示される両面粘着シートにおいて、第一粘着剤層に含まれる熱伝導性フィラーと第二粘着剤層に含まれ得る熱伝導性フィラーとの合計量は特に限定されない。例えば、第一粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマーと第二粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマーとの合計量100重量部に対して、上記熱伝導性フィラーの合計量を20〜200重量部とすることができる。高い粘着性能と低い熱抵抗とをバランスよく両立する観点から、通常は、上記ベースポリマーの合計量100重量部に対して、上記熱伝導性フィラーの合計量を50〜150重量部とすることが好ましく、60〜125重量部(例えば70〜110重量部)とすることがより好ましい。
【0051】
ここに開示される両面粘着シートは、第一粘着剤層および第二粘着剤層がいずれもフィラー含有粘着剤層である態様で好ましく実施され得る。その場合、各フィラー含有粘着剤層における熱伝導性フィラーの含有量は特に限定されない。例えば、フィラー含有粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、熱伝導性フィラーの含有量を20〜200重量部とすることができる。熱伝導性フィラーの含有量が多くなると、フィラー含有粘着剤層の熱伝導率が向上する傾向にある。フィラー含有粘着剤層の厚さが同じであれば、熱伝導率が高いほど熱抵抗は小さくなる。したがって、より熱抵抗の低い両面粘着シートを得る観点から、フィラー含有粘着剤層における熱伝導性フィラーの含有量は、ベースポリマー100重量部に対して30重量部以上が適当であり、50重量部以上が好ましく、60重量部以上がより好ましく、70重量部以上がさらに好ましい。より熱抵抗の低さを重視する態様において、上記含有量を80重量部以上としてもよい。また、より粘着性能のよい両面粘着シートを得る観点から、上記熱伝導性フィラーの含有量は、ベースポリマー100重量部に対して150重量部以下が好ましく、125重量部以下がより好ましく、110重量部以下がさらに好ましい。
【0052】
フィラー含有粘着剤層を形成するための粘着剤組成物には、該粘着剤組成物において熱伝導性フィラーを良好に分散させるために、分散剤を含有させることが好ましい。熱伝導性フィラーが良好に分散した粘着剤組成物によると、より粘着性能のよいフィラー含有粘着剤層が形成され得る。
【0053】
分散剤としては、公知の界面活性剤を使用することができる。上記界面活性剤には、ノニオン性、アニオン性、カチオン性および両性のものが包含される。分散剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
好ましい分散剤の一例として、リン酸エステルが挙げられる。例えば、リン酸のモノエステル、リン酸のジエステル、リン酸のトリエステル、これらの混合物等を用いることができる。リン酸エステルの具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルまたはポリオキシエチレンアリールエーテルのリン酸モノエステル、同じくリン酸ジエステル、同じくリン酸トリエステル、およびこれらの誘導体等が挙げられる。好適例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステルが挙げられる。このようなリン酸エステルにおけるアルキル基の炭素原子数は、例えば6〜20であり、好ましくは8〜20、より好ましくは10〜18、典型的には12〜16である。
【0055】
上記リン酸エステルとして、市販品を用いることができる。例えば、第一工業製薬社製の商品名「プライサーフA212E」、「プライサーフA210G」、「プライサーフA212C」、「プライサーフA215C」、東邦化学社製の商品名「フォスファノールRE610」、「フォスファノールRS710」、「フォスファノールRS610」等が挙げられる。
【0056】
分散剤の使用量は、熱伝導性フィラー100重量部に対して、例えば0.01〜25重量部とすることができ、通常は0.1〜25重量部とすることが適当である。熱伝導性フィラーの分散不良による粘着剤組成物の塗工性低下や粘着面の平滑性低下を防止する観点から、熱伝導性フィラー100重量部に対する分散剤の使用量は、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上(例えば5重量部以上)がさらに好ましい。また、分散剤の過剰使用による粘着性能の低下を避ける観点から、熱伝導性フィラー100重量部に対する分散剤の使用量は、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、12重量部以下(例えば10重量部以下)がさらに好ましい。
【0057】
<粘着付与樹脂>
ここに開示される技術における粘着剤は、粘着付与樹脂を含む組成であり得る。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。
【0058】
ロジン系粘着付与樹脂の例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0059】
使用する粘着付与樹脂の軟化点(軟化温度)は特に限定されない。例えば、軟化点が凡そ100℃以上(好ましくは凡そ120℃以上)であるものを好ましく使用し得る。このような軟化点を有するロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には凡そ180℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0060】
粘着付与樹脂の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(剥離強度等)に応じて適宜設定することができる。例えば、ベースポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を凡そ10〜100重量部(より好ましくは15〜80重量部、さらに好ましくは20〜60重量部)の割合で使用することが好ましい。
【0061】
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤から適宜選択して用いることができる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、凝集力向上の観点から、イソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤の使用が好ましく、イソシアネート系架橋剤の使用が特に好ましい。架橋剤の使用量は特に制限されない。例えば、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)100重量部に対して凡そ10重量部以下とすることができ、好ましくは凡そ0.005〜10重量部、より好ましくは凡そ0.01〜5重量部の範囲から選択することができる。
【0062】
ここに開示される技術における粘着剤層は、所望の意匠性や光学特性(例えば、遮光性、光反射性等)を発現させるために、着色されていてもよい。この着色には、公知の有機または無機の着色剤(顔料、染料等)の1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、カーボンブラック等の黒色着色剤を粘着剤層に含ませることにより、当該粘着剤層は黒色に着色され得る。着色剤の含有量は特に限定されず、例えばベースポリマー100重量部に対して15重量部未満とすることができる。粘着特性の低下を抑制する観点から、着色剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して10重量部未満(例えば5重量部未満、典型的には3重量部未満)程度とすることが好ましい。ここに開示される技術は、粘着性能の観点から、粘着剤層が熱伝導性フィラー以外の無機粒子および有機の着色剤を実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。例えば、熱伝導性フィラー以外の無機粒子および有機の着色剤の含有量がベースポリマー100重量部に対して0〜1重量部である態様で好ましく実施され得る。
【0063】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0064】
<基材>
ここに開示される両面粘着シートにおいて、第一粘着剤層および第二粘着剤層を支持(裏打ち)する基材(支持基材)としては、各種のフィルム状基材を用いることができる。上記基材として、例えば、樹脂フィルム、ゴムシート、発泡体フィルム、金属箔、これらの複合体等をベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。上記ベースフィルムは、典型的には、独立して形状維持可能な(非依存性の)部材である。上記基材は、このようなベースフィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記ベースフィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、上記ベースフィルムの表面に設けられた着色層、反射層、下塗り層、帯電防止層等が挙げられる。
【0065】
ここに開示される両面粘着シートの基材としては、ベースフィルムとして樹脂フィルムを含む基材を好ましく採用し得る。なお、この明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には、実質的に非発泡の樹脂フィルムを指す。すなわち、この明細書における樹脂フィルムは、該樹脂フィルム内に気泡が実質的に存在しない(ボイドレスの)ものであり得る。したがって、上記樹脂フィルムは、いわゆる発泡体フィルムとは区別される概念である。また、上記樹脂フィルムは、典型的には、実質的に非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念である。さらに、上記樹脂フィルムは、物理的特性(例えば剛性等)の観点から、いわゆるゴムシートとも異なる概念として把握され得る。発泡体や不織布あるいは織布のような多孔質の層を含まない基材、すなわち非多孔質の層からなる基材を好ましく使用し得る。
【0066】
ベースフィルムとして使用され得る樹脂フィルムは、一般に、発泡体や不織布、織布あるいはゴムシートに比べて、引張強度等の機械的強度に優れる傾向がある。また、加工性(例えば、打ち抜き加工性)に優れる。そのため、ベースフィルムとして樹脂フィルムを含む基材を用いた粘着シートは、より細幅化された構成において加工性や寸法精度、取扱性の点で有利である。このような樹脂フィルムを含む基材は、その他、寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)等の観点からも、ここに開示される技術における基材として好ましく用いられ得る。
【0067】
ここに開示される樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例としては、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等が挙げられる。ここで、ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィンを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。ポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂等が挙げられる。なかでも、投錨性(特に、アクリル系粘着剤層の投錨性)の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、強度や加工性の点からPET系樹脂が特に好ましい。
【0068】
樹脂フィルムの厚さは特に限定されず、例えば30μm以下とすることができる。両面粘着シートの総厚を適切な範囲とし、かつ高い粘着性能と低い熱抵抗とを両立する観点から、樹脂フィルムの厚さとしては、20μm以下が好ましく、17μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。樹脂フィルムの厚さの下限は特に限定されないが、両面粘着シートの加工性等の観点から、通常は2μm以上が適当であり、4μm以上が好ましい。好ましい一態様において、樹脂フィルムの厚さを6μm以上とすることができ、8μm以上としてもよく、さらに10μm以上(例えば10μm超)としてもよい。
【0069】
上記樹脂フィルムには、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
【0070】
上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも一つの層(好ましくは全ての層)は上記樹脂(より好ましくはポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂)の連続構造を有する層であることが好ましい。樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0071】
ここに開示される両面粘着シートは、基材を含むので、該基材を利用して両面粘着シートに遮光性や反射性を効果的に付与することができる。例えば、ここに開示される技術における基材は、該基材を備える両面粘着シートにおいて所望の意匠性や光学特性(例えば、遮光性、光反射性等)を発現させるために、黒色や白色(例えば乳白色)その他の色に着色されていてもよい。上記着色には、例えば、ベースフィルムとしての樹脂フィルムを含む基材において、該樹脂フィルムを構成する樹脂材料に公知の有機または無機の着色剤(顔料、染料等)を配合するとよい。
【0072】
また、基材は、ベースフィルム(好ましくは樹脂フィルム)の表面に配置された着色層により着色されていてもよい。このような基材を備える両面粘着シートの一構成例を
図3に示す。この両面粘着シート3の基材10は、ベースフィルムとして樹脂フィルム12と、該ベースフィルム上に支持された着色層14とを含む。着色層14は、例えば、樹脂フィルム12の表面に印刷された黒色印刷層であり得る。その他の構成は
図1に示す両面粘着シート1と同様である。
【0073】
着色層14は、典型的には、着色剤およびバインダーを含有する着色層形成用組成物を、ベースフィルム12に塗付して形成することができる。バインダーとしては、塗料または印刷の分野において公知の材料を特に制限なく使用することができる。たとえば、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素メラミン樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどが例示される。着色層形成用組成物は、例えば、溶剤型、紫外線硬化型、熱硬化型等であり得る。着色層の形成は、従来より着色層の形成に採用されている手段を特に制限なく採用して行うことができる。例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷により着色層(印刷層)を形成する方法を好ましく採用し得る。
【0074】
着色層は、全体が1層からなる単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上のサブ着色層を含む多層構造であってもよい。2層以上のサブ着色層を含む多層構造の着色層は、例えば、着色層形成用組成物の塗付(例えば印刷)を繰り返して行うことにより形成することができる。各サブ着色層に含まれる着色剤の色や配合量は、同一であってもよく、異なってもよい。遮光性を付与するための着色層では、ピンホールの発生を防止して光漏れ防止の信頼性を高める観点から、多層構造とすることが特に有意義である。
着色層全体の厚さは、通常、1μm〜10μm程度が適当であり、1μm〜7μm程度が好ましく、例えば1μm〜5μm程度とすることができる。二層以上のサブ着色層を含む着色層において、各サブ着色層の厚さは、通常、1μm〜2μm程度が好ましい。
【0075】
着色層の着色に使用する着色剤としては、目的とする色に応じた公知の顔料や染料を適宜選択することができる。特に限定するものではないが、白色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白等が挙げられる。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、松煙、黒鉛等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂フィルム(ベースフィルム)の着色に使用する着色剤としても同様のものを用いることができる。
【0076】
なお、基材が樹脂フィルムとその表面に配置された着色層(例えば印刷層)とを含む場合、上記樹脂フィルムとしては、着色剤を含まないもの(典型的には、透明な樹脂フィルム)を好ましく採用することができる。また、樹脂フィルムの強度の観点から、粘着剤層に配合されるような熱伝導性フィラーを実質的に含有しない樹脂フィルムを好ましく採用し得る。ここで、樹脂フィルムが熱伝導性フィラーを実質的に含有しないとは、該熱伝導性フィラーの含有量が5重量%未満、好ましくは2重量%未満であることをいう。
【0077】
上記基材の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗付等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。
【0078】
特に限定するものではないが、ここに開示される両面粘着シートにおける基材の厚さは、例えば40μm以下、好ましくは30μm以下、典型的には25μm以下である。両面粘着シートの総厚を適切な範囲とし、かつ高い粘着性能と低い熱抵抗とを両立する観点から、基材の厚さとしては、20μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましい。基材の厚さを小さくすることは、両面粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点でも有利である。好ましい一態様において、基材の厚さは、例えば17μm以下とすることができ、さらに15μm以下としてもよい。基材の厚さの下限は特に限定されないが、両面粘着シートの加工性等の観点から、通常は2μm以上が適当であり、4μm以上が好ましい。好ましい一態様において、基材の厚さを6μm以上とすることができ、8μm以上としてもよく、さらに10μm以上(例えば10μm超)としてもよい。
【0079】
<剥離ライナー>
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0080】
<両面粘着シート>
ここに開示される両面粘着シートは、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、上述のような基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗付)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。これらの方法を組み合わせてもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0081】
粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗付してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40〜150℃程度とすることができ、通常は60〜130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0082】
ここに開示される両面粘着シートにおいて、第一粘着剤層と第二粘着剤層との合計厚さ(すなわち、粘着剤層の合計厚さ)は特に限定されない。両面粘着シートの総厚を適切な範囲とする観点から、粘着剤層の合計厚さは、典型的には98μm以下であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下である。好ましい一態様において、粘着剤層の合計厚さを60μm以下としてもよく、例えば50μm以下とすることができる。粘着剤層の合計厚さが小さくなると、両面粘着シートの総厚も小さくなる傾向にある。このことは、該両面粘着シートの熱抵抗低減や薄型化の観点から有利である。上記粘着剤層の合計厚さは、例えば10μm以上とすることができ、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。好ましい一態様において、上記粘着剤層の合計厚さを例えば35μm以上とすることができる。
【0083】
特に限定するものではないが、両面粘着シートの粘着性能の観点から、第一粘着剤層および第二粘着剤層の各々の厚さは、いずれも、2μm以上であることが適当であり、4μm以上であることが好ましい。細い線状や細い枠状(額縁状)等の幅の狭い形状で部品の接合や固定を行う用途にも適した粘着性能を発揮する観点から、第一粘着剤層および第二粘着剤層の各々の厚さは、いずれも、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。また、両面粘着シートの熱抵抗低減や薄型化の観点から、第一粘着剤層および第二粘着剤層の各々の厚さは、いずれも、45μm以下であることが好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。好ましい一態様において、第一粘着剤層および第二粘着剤層の各々の厚さは、いずれも25μm以下であり、20μm以下であってもよい。
【0084】
第一粘着剤層の厚さと第二粘着剤層の厚さとは、同一であってもよく、異なってもよい。接合または固定の目的に使用される両面粘着シートにおいては、第一粘着剤層の厚さと第二粘着剤層の厚さとが過度に異ならないことが好ましい。例えば、第一粘着剤層の厚さに対して、第二粘着剤層の厚さがその0.5倍〜1.5倍(典型的には0.8倍〜1.2倍)であるとよい。
【0085】
特に限定するものではないが、フィラー含有粘着剤層に含まれる熱伝導性フィラーの平均粒径は、該フィラー含有粘着剤層の厚さの例えば50%以下(典型的には30%以下、好ましくは20%以下)とすることができる。ここに開示される両面粘着シートは、フィラー含有粘着剤層に含まれる熱伝導性フィラーの平均粒径が該フィラー含有粘着剤層の15%以下(より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下、例えば6%以下)である態様で好適に実施され得る。このようなフィラー含有粘着剤層は、熱伝導性フィラーの含有量を比較的多くしても粘着面の平滑性が損なわれにくい。これにより、高い粘着性能と低い熱抵抗とを好適に両立し得る。
【0086】
特に限定するものではないが、ここに開示される両面粘着シートにおいて、フィラー含有粘着剤層に含まれる熱伝導性フィラーは、該フィラー含有粘着剤層の厚さの70%以下の粒径を有する粒子から実質的に構成されていることが適当であり、上記厚さの50%以下(より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、例えば25%以下)の粒径を有する粒子から実質的に構成されていることが好ましい。このようなフィラー含有粘着剤層は、熱伝導性フィラーの含有量を比較的多くしても粘着面の平滑性が損なわれにくい。これにより、高い粘着性能と低い熱抵抗とを好適に両立し得る。ここで、熱伝導性フィラーがフィラー含有粘着剤層の厚さのY%以下の粒径を有する粒子から実質的に構成されているとは、上述した熱伝導性フィラーの粒度分布において、フィラー含有粘着剤層の厚さのY%に相当する粒径までの累積粒度(体積基準)が98%以上、好ましくは100%であることをいう。
【0087】
ここに開示される両面粘着シートの総厚は、典型的には10μm以上150μm以下である。ここで両面粘着シートの総厚とは、第一粘着面から第二粘着面までの厚さをいい、
図1に示す例では第一粘着面21Aから第二粘着面22Aまでの厚さtを指す。すなわち、ここでいう両面粘着シートの総厚には、第一粘着剤層、第二粘着剤層および基材の厚さが含まれるが、剥離ライナーの厚さは含まれない。熱抵抗低減の観点から、両面粘着シートの総厚は、120μm以下であることが適当であり、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下(例えば65μm以下)であることがさらに好ましい。総厚を小さくすることは、製品の薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点でも有利となり得る。また、部品の接合や固定に適した良好な粘着性能を発揮する観点から、両面粘着シートの総厚は、通常、20μm以上が適当であり、30μm以上であることが好ましく、35μm以上(例えば40μm以上)であることがより好ましい。
【0088】
特に限定するものではないが、両面粘着シートの生産性や加工性と粘着性能とを好適にバランスさせる観点から、総厚に占める基材の厚さの割合は、例えば5%以上とすることができ、10%以上であることが好ましく、15%以上(例えば20%以上)であることがより好ましい。また、総厚に占める基材の厚さの割合は、例えば40%以下とすることができ、35%以下であることが好ましい。好ましい一態様において、両面粘着シートの総厚に占める基材の厚さの割合を30%以下とすることができる。また、樹脂フィルムを含む基材を用いる場合、該樹脂フィルムの厚さは、両面粘着シートの厚さの35%以下であることが好ましく、30%以下(例えば25%以下)であることがより好ましい。
【0089】
特に限定するものではないが、ここに開示される両面粘着シートは、基材を含むことから加工性や形状精度が良く、かつ総厚が10μm以上であるので粘着性能の良いものとなり得る。かかる特長を活かして、上記両面粘着シートは、比較的幅の細い形状で好ましく使用され得る。すなわち、このような形状で被着体に貼り付けられる両面粘着シートとして好適である。例えば、後述する携帯型電子機器のような小型の電子機器において部品の接合や固定に用いられる場合には、両面粘着シートの幅は、4mm以下(例えば2mm以下、典型的には1mm以下、さらには0.7mm以下)程度に構成され得る。ここに開示される両面粘着シートは、このような細幅の線状部分が10mm以上(例えば20mm以上、典型的には30mm以上、さらには50mm以上)連続する形状でも好ましく使用され得る。このような細幅で用いられる両面粘着シートの基材としては、加工性(例えば打ち抜き加工性)や寸法精度、強度等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムをベースフィルムとして含む基材を採用することが好ましい。
【0090】
ここに開示される両面粘着シートは、第一粘着剤層および第二粘着剤層について測定される剥離強度がいずれも2.5N/20mm以上であることが好ましい。上記特性を示す両面粘着シートは、携帯型電子機器に用いられる両面粘着シートのように接着領域が小面積化する傾向にある用途においても、該用途に応じた適切な粘着力を発揮することが可能である。上記剥離強度は、3.0N/20mm以上であることが好ましく、3.5N/20mm以上であることがより好ましい。ここでいう剥離強度は、ステンレス鋼板に対する180度剥離強度(180度引き剥がし粘着力)を指す。剥離強度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0091】
ここに開示される両面粘着シートは、熱抵抗が3.5K・cm
2/W以下であることが好ましい。上記特性を示す両面粘着シートは伝熱性に優れる。したがって、携帯型電子機器において例えば部品の接合や固定等に用いられて、該携帯型電子機器の放熱性向上に効果的に寄与し得る。上記熱抵抗は、3.0K・cm
2/W以下であることがより好ましく、2.7K・cm
2/W以下であることがさらに好ましい。熱抵抗は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0092】
ここに開示される両面粘着シートは、所望の光学特性(透過率、反射率等)を有するものであり得る。例えば、遮光用途に用いられる両面粘着シートは、可視光透過率が0%以上15%以下(より好ましくは0%以上10%以下)であることが好ましい。また、光反射用途に用いられる両面粘着シートは、可視光反射率が20%以上100%以下(より好ましくは25%以上100%以下)であることが好ましい。両面粘着シートの光学特性は、例えば、上述のように粘着剤層または基材を着色すること等により調整することができる。
【0093】
ここに開示される両面粘着シートは、金属の腐食防止等の観点から、ハロゲンフリーであることが好ましい。両面粘着シートがハロゲンフリーであることは、例えば、この両面粘着シートが電気・電子部品の固定に用いられ得る場合において、有利な特徴となり得る。また、燃焼時におけるハロゲン含有ガスの発生を抑制し得るので、環境負荷軽減の観点からも好ましい。ハロゲンフリーの両面粘着シートは、ハロゲン化合物を基材や粘着剤の原料として意図的に用いないこと、ハロゲン化合物を意図的に配合しない基材を用いること、添加剤を用いる場合にハロゲン化合物由来の添加剤を用いないこと、等の手段を単独で、あるいは適宜組み合わせて採用することにより得ることができる。
【0094】
ここに開示される両面粘着シートは、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合素材等からなる表面を有する被着体に貼り付けられて用いられ得る。
【0095】
<用途>
ここに開示される両面粘着シートは、基材を含むので加工性に優れ、熱伝導性フィラーを含む粘着剤層を有することにより熱抵抗が低く、かつ総厚が10μm以上であるので粘着性能の良いものとなり得る。このような特徴を活かして、上記両面粘着シートは、携帯型電子機器(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノートパソコン等)の液晶表示モジュールユニットとバックライトユニットの固定用、上記携帯型電子機器の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定用、携帯電話のキーモジュール部材固定用、テレビのデコレーションパネル固定用、ノートパソコンのバッテリーパック固定用、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に好ましく適用され得る。特に、液晶表示装置を内蔵する携帯型電子機器に好ましく使用され得る。
【0096】
なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。また、この明細書における「レンズ」は、光の屈折作用を示す透明体および光の屈折作用のない透明体の両方を含む概念である。つまり、本明細書における「レンズ」には、屈折作用がない、携帯型電子機器の表示部を単に保護する保護パネルも含まれる。
【0097】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい用途の一例として、液晶表示装置を内蔵する携帯型電子機器において液晶表示モジュールユニットと発熱性部品(例えばバックライトユニット)とを固定する用途が挙げられる。
図5は、携帯電話等の携帯用電子機200に用いられる液晶表示モジュールユニット(部品)210とバックライトユニット(部品)220との固定構造の一例を模式的に示す分解斜視図である。バックライトユニット220は、典型的には、光源の他、反射シート、導光板、拡散シート、プリズシート等を含んで構成されている。両面粘着シート230は、基材の両面にフィラー含有粘着剤層が設けられた構成を有し、枠状(額縁状)に加工されている。この枠状の両面粘着シート(リムシート)230を間に挟み込むことによって、バックライトユニット220と液晶表示モジュールユニット210とが固定されている。上記枠の幅は、通常、4mm以下であることが好ましく、例えば2mm以下、典型的には1mm以下であり、さらには0.7mm以下であり得る。ここに開示される両面粘着シートは、このような態様で用いられることにより、バックライトユニットと液晶表示モジュールユニットとを的確に固定するとともに、バックライトユニットにおいて発生する熱を効率よく逃すことができる。
【0098】
なお、
図5に示す用途に用いられる両面粘着シート230は、上述した遮光用途に用いられる両面粘着シートの一例である。この両面粘着シート230の基材としては、例えば、ベースフィルムの片面に黒色着色層(好ましくは印刷層)が設けられた構成のものを好ましく採用することができる。この場合、両面粘着シート230は、通常、該上記黒色着色層が液晶表示モジュールユニット210側となる向きで用いることが適当である。両面粘着シート230としては、例えば、
図3に示す粘着シート3と同様の構成のものを好ましく用いることができる。
遮光用途に用いられる両面粘着シートの他の例として、携帯型電子機器の表示素子よりも手前側(表示面側)に貼り付けられて該表示素子からの光漏れを防止する両面粘着シートが挙げられる。上記表示素子は、例えば、液晶素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等であり得る。携帯型電子機器の表示部を保護する保護パネル(レンズ)を固定する用途は、かかる用途の一好適例である。
【0099】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0100】
<例1>
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのn−ブチルアクリレート(BA)70部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)30部、アクリル酸(AA)3部および4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)0.05部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.08部と、重合溶媒としてのトルエン150部とを仕込み、65℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーAのトルエン溶液を得た。このアクリル系ポリマーAのMwは約40×10
4であった。
【0101】
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマーA100部に対し、粘着付与樹脂として重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD125」、軟化点120〜130℃、荒川化学工業社製)30部、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製)3部、熱伝導性フィラーとして水酸化アルミニウム粉末(商品名「ハイジライトH−42」、平均粒径(50%メジアン径)1μm、粒径2μmまでの累積粒度が98%であり、粒径5μmまでの累積粒度が100%である水酸化アルミニウム粉末、昭和電工社製)75部および分散剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル(商品名「プライサーフA212E」、第一工業製薬社製)6部を加えて、粘着剤組成物B1を調製した。
【0102】
剥離ライナーとして、片面が剥離処理された剥離面となっているポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル社製)を2枚用意した。それらの剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物B1を、乾燥後の厚さが19μmとなるように塗付し、100℃で2分間乾燥させた。このようにして、上記2枚の剥離ライナーの剥離面上にそれぞれ粘着剤層を形成した。
厚さ12μmの透明なPETフィルム(商品名「ルミラーS10#12」、東レ社製)の第一面および第二面に、上記2枚の剥離ライナー上に形成された粘着剤層をそれぞれ貼り合わせて、本例に係る両面粘着シートを作製した(転写法)。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(粘着面)の保護に使用した。この両面粘着シートは、厚さ12μmのPETフィルム(基材)の第一面および第二面に、粘着剤組成物B1から形成された厚さ19μmの第一粘着剤層および第二粘着剤層をそれぞれ有する、総厚50μmの両面粘着シートである。上記熱伝導性フィラーは、上記粘着剤層の厚さの30%より小粒径の粒子から実質的に構成されている。
【0103】
<例2>
アクリル系ポリマーA100部に対する上記熱伝導性フィラーの使用量を100部とし、上記分散剤の使用量を8部とした他は例1と同様にして、粘着剤組成物B2を調製した。粘着剤組成物B1に代えて粘着剤組成物B2を使用した他は例1と同様にして、例2に係る両面粘着シートを作製した。
【0104】
<例3>
第一粘着剤層および第二粘着剤層の厚さをそれぞれ24μmとした他は例2と同様にして、例3に係る両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートは、厚さ12μmのPETフィルム(基材)の第一面および第二面に、粘着剤組成物B2から形成された厚さ24μmの第一粘着剤層および第二粘着剤層をそれぞれ有する、総厚60μmの両面粘着シートである。上記熱伝導性フィラーは、上記粘着剤層の厚さの25%より小粒径の粒子から実質的に構成されている。
【0105】
<例4>
アクリル系ポリマーA100部に対する上記熱伝導性フィラーの使用量を160部とし、上記分散剤の使用量を12.8部とした他は例1と同様にして、粘着剤組成物B3を調製した。粘着剤組成物B1に代えて粘着剤組成物B3を使用した他は例1と同様にして、例4に係る両面粘着シートを作製した。
【0106】
<例5>
アクリル系ポリマーA100部に対する上記熱伝導性フィラーの使用量を40部とし、上記分散剤の使用量を3.2部とした他は例1と同様にして、粘着剤組成物B4を調製した。粘着剤組成物B1に代えて粘着剤組成物B4を使用した他は例1と同様にして、例5に係る両面粘着シートを作製した。
【0107】
<例6>
熱伝導性フィラーおよび分散剤を使用しない点以外は例1と同様にして、粘着剤組成物B0を調製した。粘着剤組成物B1に代えて粘着剤組成物B0を使用した他は例1と同様にして、例6に係る両面粘着シートを作製した。
【0108】
<例7>
本例では、基材として、厚さ12μmの透明なPETフィルム(商品名「ルミラーS10#12」、東レ社製)と該PETフィルム(ベースフィルム)の片面に設けられた厚さ5μmの黒色印刷層(着色層)とからなる、合計厚さ17μmの基材を使用した。以下、この基材を「基材(黒)」ということがある。上記黒色印刷層は、黒色の着色剤を含むインク組成物を用い、グラビア印刷法を利用して印刷を行うことにより形成した。
上記基材(黒)と粘着剤組成物B1とを使用し、第一粘着剤層および第二粘着剤層の厚さをそれぞれ約17μmとした点以外は例1と同様にして、例7に係る両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートの総厚は約50μmである。上記熱伝導性フィラーは、上記粘着剤層の厚さの30%より小粒径の粒子から実質的に構成されている。
【0109】
<例8>
粘着剤組成物B1に代えて粘着剤組成物B2を使用した他は例7と同様にして、例8に係る両面粘着シートを作製した。
【0110】
<熱抵抗の測定>
例1〜6に係る両面粘着シートについて、80℃における熱抵抗の測定を行った。
図4(a)に、測定に使用した熱特性評価装置100の正面概略図を示す。
図4(b)は、
図4(a)に示す熱特性評価装置100の側面概略図である。
【0111】
具体的には、測定対象の両面粘着テープを20mm×20mmの正方形状にカットして、測定用サンプル110を作製した。このサンプル110を、1辺が20mmの立方体となるように形成されたアルミニウム製(A5052、熱伝導率:140W/m・K)の一対のロッド122,123の間に挟み込み、一対のロッド122,123をサンプル110で貼り合わせた。
【0112】
このようにして貼り合わせた一対のロッド122,123を、発熱体(ヒータ)124と放熱体(チラー;冷却水が内部を循環するように構成された冷却ベース板)125との間に、該一対のロッド122,123が上下となるように配置した。具体的には、上側のロッド122の上に発熱体124を配置し、下側のロッド123の下に放熱体125を配置した。
【0113】
このとき、一対のロッド122,123は、発熱体124および放熱体125を貫通する一対の圧力調整用ネジ126の間に位置している。圧力調整用ネジ126と発熱体124との間にはロードセル128が設置されており、圧力調整用ネジ126を締め込んだ際の圧力が測定されるように構成されている。この圧力をサンプル110に加わる圧力として用いた。
【0114】
また、下側のロッド123およびサンプル110を放熱体125側から貫通するように、接触式変位計130の3本のプローブ132(直径1mm)を設置した。このとき、プローブ132の上端部は、上側のロッド122の下面に接触した状態となっており、上下のロッド122,123間の間隔(サンプル110の厚さ)を測定可能に構成されている。
【0115】
発熱体124および上下のロッド122,123に、温度計140の温度センサ142を取り付けた。具体的には、
図4(b)に示すように、発熱体124の1箇所、各ロッド122,123の上下方向に5mm間隔で5箇所、温度センサー142を取り付けた。
【0116】
測定時には、まず圧力調整用ネジ126を締め込んでサンプル110に250kPaの圧力を加え、発熱体124の温度を80℃に設定するとともに、放熱体125に20℃の冷却水を循環させた。発熱体124および上下のロッド122,123の温度が安定した後、上下のロッド122,123の温度を各温度センサー142で測定し、上下のロッド122,123の熱伝導率と温度勾配からサンプル110を通過する熱流束を算出するとともに、上下のロッド122,123とサンプル110との界面の温度を算出した。これらを用いて当該圧力における熱抵抗(K・cm
2/W)を算出した。また、各例に係るサンプル110の厚さとその熱抵抗値から熱伝導率(W/m・K)を算出した。
【0117】
<剥離強度の測定>
各例に係る両面粘着シートの一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、該一方の粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせて裏打ちした。これを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。
23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、該他方の粘着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」、ミネベア社製)を使用して、JIS Z 0237に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(N/20mm)を測定した。
【0118】
得られた結果を表1および表2に示す。これらの表には、各例に係る両面粘着シートの概略構成を併せて示している。
【0121】
これらの表に示されるように、総厚10μm以上150μm以下の構成において、フィラー含有粘着剤層を有する例1〜5および例7,8の両面粘着シートは、いずれも、フィラー含有粘着剤層を有しない例6の両面粘着シートに比べて熱抵抗が低減されていた。第一粘着剤層および第二粘着剤層に含まれる熱伝導性フィラーの合計量がベースポリマーの合計量100部に対して50部以上である例1〜4および例7,8の両面粘着シートでは、より顕著な熱抵抗低減効果が認められた。第一粘着剤層および第二粘着剤層に含まれる熱伝導性フィラーの合計量がベースポリマーの合計量100部に対して150部以下である例1〜3,5,7,8の両面粘着シートは、より高い剥離強度を示した。なお、これら例1〜8の各例に係る両面粘着シートは、それぞれ、基材の両面(第一面および第二面)に設けられた粘着剤層の組成、厚さおよび形成方法が同じであるため、これらの粘着剤層について測定される剥離強度の値は同程度になることが当業者には理解される。
【0122】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。