(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態のポリスチレン系フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)系樹脂にポリカーボネート(PC)を配合し、二軸延伸することにより、表面が粗面化されたフィルムである。
【0018】
まず、本実施形態のフィルムの組成について説明する。
【0019】
SPS系樹脂は、シンジオタクチック構造を有するスチレン系ポリマーである。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基または置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を意味する。
【0020】
SPS系樹脂の立体規則性の程度(タクティシティー)は同位体炭素による核磁気共鳴法(
13C−NMR法)により定量することができる。
13C−NMR法により測定されるSPS系樹脂のタクティシティーは、数個のモノマー単位からなる連鎖、例えば、2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドのうち、構成単位の立体配置が逆のシンジオタクチックであるもの(ラセミダイアッド等)の割合によって示すことができる。本発明におけるSPS系樹脂は、通常、ラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、もしくはラセミトリアッドで60%以上、好ましくは75%以上、もしくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレン系ポリマーである。
【0021】
SPS系樹脂としてのスチレン系ポリマーの種類としては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体等及びこれらの混合物、又はこれらを主成分とする共重合体が挙げられる。ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0022】
本発明に係るプラスチックフィルムを構成するSPS系樹脂の重量平均分子量は、10,000〜3,000,000、好ましくは30,000〜1,500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。SPS系樹脂のガラス転移温度は60〜140℃、好ましくは70〜130℃である。SPS系樹脂の融点は200〜320℃、好ましくは220〜280℃である。本明細書中、樹脂のガラス転移温度および融点はJISK7121に従って測定された値を用いている。
【0023】
ポリカーボネート(PC)としては、種々の市販のものを用いることができる。PCの配合量は、SPS系樹脂とPCの重量比がSPS/PC=97/3〜60/40とすることが好ましく、さらに、97/3〜65/35、97/3〜70/30、97/3〜80/20とすることがより好ましい。PCの配合量が少なすぎると、十分に粗面化されたフィルムを得ることができない。一方、PCの配合量が多すぎると、SPS系樹脂の特徴である耐熱性、耐薬品性、低表面張力などの特性が低下する。
【0024】
また、本発明のフィルム中には、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)が含有されていてもよい。TPSは、熱可塑性エラストマー(TPE)のうち、ハードセグメントがポリスチレンからなるもので、これによりSPS系フィルムに配合した場合に外観欠点等が出にくい。
【0025】
TPSを配合することによって、フィルムの柔軟性等を向上させることができる。具体的には、TPSを配合することによって、175℃での引張弾性率を小さくすることができる。SPSにPCを配合すると高温での引張弾性率が大きくなる傾向があるので、TPS配合により175℃での引張弾性率を小さくすることは、本実施形態のフィルムを離型フィルムとして用いる場合に特に有効である。
【0026】
TPSとしては、水素添加されたものを用いることが好ましい。これによりTPSの耐熱性が向上し、また高温で行われるSPS系樹脂の溶融・押出工程において予期せぬ反応が生じることを防止することができる。水素添加TPSとしては、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレン(TPS−SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレン(TPS−SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレン(TPS−SEEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレン(TPS−SEP)などの、ソフトセグメントが異なる各種のものを用いることができる。
【0027】
TPSを配合する場合、その配合量は、SPS系樹脂とTPSの重量比がSPS/TPS=97/3〜60/40とすることが好ましく、さらに、97/3〜65/35、97/3〜70/30、97/3〜80/20とすることがより好ましい。TPSの配合量が少なすぎると、柔軟性の向上が十分に得られない。一方、TPSの配合量が多すぎると、SPS系樹脂の特徴である耐熱性、耐薬品性、低表面張力などの特性が低下する。
【0028】
また、TPSを配合する場合でも、SPS系樹脂と、PCとTPSの合計との重量比は、SPS/(PC+TPS)=50/50以上であることが好ましく、60/40以上であることがさらに好ましく、75/25以上であることが特に好ましい。SPS系樹脂の特徴である耐熱性、耐薬品性、低表面張力などの特性を低下させないためである。
【0029】
本実施形態のフィルムに含有されるSPS系樹脂、PC、TPSのそれぞれは、異なる2種類以上の樹脂を混合したものであってもよい。
【0030】
また、SPS系フィルムの特徴である耐熱性、耐薬品性、低表面張力などに実用上の悪影響を与えない範囲で、上記以外の樹脂を含有してもよい。その場合でも、プラスチックフィルム中の全ポリマー成分に対するSPS系樹脂の含有割合は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましく、75重量%以上であることが特に好ましい。
【0031】
また、本実施形態のフィルムは、要求特性に応じて、上記したポリマー以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、無機フィラー、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0032】
次に、本実施形態のフィルムの特性について説明する。
【0033】
フィルムの厚さは、多くの用途に対応できること、製造やハンドリングが容易なことから、5〜300μmとすることが好ましい。また、本実施形態のフィルムを離型フィルムとして用いる場合には、10〜100μmとすることが好ましい。離型フィルムとして用いられる二軸延伸フィルムの厚さは、典型的には50μmである。
【0034】
フィルムの粗面化の程度は、JISZ8741:1997に規定する60度鏡面光沢、Gs(60°)によって表すことができる。粗面化の程度の指標としては、算術平均粗さRaなど表面形状に関する測定値を用いることもできるが、後述するように、光沢度を用いる方が、目視で感じるマット調の程度をより良く表すことができる。
【0035】
フィルムに求められる光沢度は用途に応じて定まり、フィルム表面あるいは離型フィルムとして用いた場合の被成型品表面に「てかり」を感じないために、90%以下であることが好ましい。さらに、離型フィルムとして用いた場合の被成型品表面にマット調の外観を与えるためには、60%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、30%以下であることが特に好ましい。
【0036】
フィルムの引張伸度は、常温において、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、特に好ましくは15%以上である。常温での引張伸度は、特にフィルムのハンドリング性に関係する。常温での引張伸度が小さすぎると、ハンドリング時にフィルムが破損しやすい。そのため、より大きな製品では、より大きい引張伸度を有することが好ましい。
【0037】
また、本実施形態のフィルムを離型フィルムとして用いる場合には、フィルムの引張伸度は、175℃において、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上であり、特に好ましくは80%以上である。さらに、縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれにおいても、それぞれ40%以上であり、より好ましくはそれぞれ60%以上であり、特に好ましくはそれぞれ80%以上である。175℃での引張伸度が小さすぎると、金型等の凹凸に十分に追従することができない。金型等の凹凸が深くなるにつれて、175℃での引張伸度がより大きいことが求められる。
【0038】
フィルムの引張伸度は、引張試験によって求めることができる。本明細書中で、引張伸度とは、ASTMD1708−6aに規定された形状の試験片を200mm/分の速度で引っ張った場合の破断時の伸び率のことをいう。
【0039】
また、本実施形態のフィルムを離型フィルムとして用いる場合には、濡れ性が好ましくは40mN/m以下であり、より好ましくは38mN/m以下であり、特に好ましくは35mN/m以下である。本実施形態のフィルムの濡れ性が低いことはSPS系樹脂の特性によるものである。SPS系樹脂の濡れ性は、典型的には32〜33mN/mである。濡れ性は、JISK6768:1999に規定された方法で測定することができる。
【0040】
また、本実施形態のフィルムを離型フィルムとして用いる場合には、熱収縮率は、175℃においてその絶対値が、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下である。熱収縮率の絶対値は、MD方向およびTD方向のいずれの方向についても、上記範囲内であることが好ましい。また、熱収縮率のMD方向とTD方向との差は、それぞれの方向における絶対値が上記範囲にあれば特に問題とはならないが、当該差が小さいほど成型工程の条件設定が容易になる等のメリットがあるので好ましい。熱収縮率のMD方向とTD方向との差の絶対値は、より好ましくは8%以下である。
【0041】
本明細書中、175℃における熱収縮率は、試験片(150mm×150mm)を雰囲気温度175℃で30分間放置したときのMD方向およびTD方向の各方向における熱収縮率であり、具体的には後述する方法により測定される。熱収縮率の値は正の値が収縮を意味し、負の値が膨張を意味する。
【0042】
次に、本実施形態のフィルムの製造方法について説明する。
【0043】
本実施形態のフィルムは、上記の樹脂を含む組成物を、溶融・混練して前駆体フィルム(延伸前原反フィルム)を製造した後、得られた前駆体フィルムに対して二軸延伸工程を実施することで製造することができる。
【0044】
前駆体フィルムの製造方法は公知の方法を採用することができる。例えば、所望の成分からなる混合物を押出機により溶融・混練し、混練物をTダイより押し出した後、冷却すればよい。
【0045】
二軸延伸工程は、フィルムの二軸方向に対して延伸を行い、次いで任意に熱固定を行う工程である。この二軸延伸工程によって、SPS系樹脂が結晶化し、フィルムのガラス転移温度が上昇し、機械的強度が向上する。また、本実施形態のフィルムは、二軸延伸工程によって表面が粗面化される。
【0046】
二軸延伸は、フィルムのMD方向およびTD方向について延伸を行う。延伸方式は、逐次二軸延伸方式と同時二軸延伸方式があるが、耐熱寸法安定性や引張伸度をより向上させることができるので、同時二軸延伸方式によるのが好ましい。例えば、同時二軸延伸方式によれば、熱収縮率の絶対値のMD方向とTD方向との差を容易に8%以下にすることができる。二軸延伸を行うに際して、延伸倍率、延伸温度および延伸速度は、所望の熱膨張率等を得るのに適当な条件を選択することができる。
【0047】
熱固定は、延伸フィルムを延伸温度以上の温度で保持することにより、ポリマー分子の配向を固定する処理である。熱処理温度、時間、弛緩倍率は、所望の熱収縮率等を得るのに適当な条件を選択することができる。
【0048】
なお、本実施形態のフィルムの製造にあたり、延伸工程後に、さらに他の粗面化工程を実施してもよい。例えば、延伸工程後に、表面を彫刻したロールに圧着させてもよい。これにより、二軸延伸による表面凹凸に加えて、より大きな凹凸、例えばより大きなRaをもたらす凹凸をフィルム表面に付与することができる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0050】
SPSを単独で、またはSPSとSPS以外の樹脂を予め混練したフルコンパウンドを、T−ダイを先端に取り付けた押出機を用いて280℃にて溶融押出後、冷却して前駆体フィルムを得た。この前駆体フィルムを110℃で延伸速度約500%/分で縦方向(MD)および横方向(TD)に同時二軸延伸した。延伸後、210℃で縦方向(MD)に0.95倍、横方向(TD)に0.95倍で弛緩処理して、厚さ約50μmの同時二軸延伸SPS系樹脂フィルムを得た。延伸後フィルムのガラス転移温度は、すべての比較例および実施例で170℃以上であった。
【0051】
表1に、製造条件と得られたフィルムの光沢度を示す。用いた樹脂は次のとおりである。
・SPS:商品名「ザレック142ZE」、出光興産株式会社。ガラス転移温度95℃、融点247℃
・PC(E):商品名「ユーピロンE−2000」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社。メルトボリュームレート(MVR)=5cm
3/10分。MVRは、ISO−1133に基づき、測定温度300℃、測定荷重1.20kgfで測定した値である(以下同じ)。
・PC(S):商品名「ユーピロンS−3000」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社。MVR=14cm
3/10分。
・PC(K):商品名「パンライトK−1300、帝人株式会社。MVR=2.8cm
3/10分。
・HDPE:商品名「ハイゼックス7000F]、株式会社プライムポリマー
・PP:商品名「プライムポリプロF113G」、株式会社プライムポリマー
・PET:商品名「MA−2103」、ユニチカ株式会社
・PBT:商品名「ノバデュラン5020」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
・PMMA:商品名「アクリペットMD」、三菱レイヨン株式会社
・PA6:商品名「UBEナイロン1030B」、宇部興産株式会社
【0052】
前駆体フィルムの外観は、目視により確認し、実用上問題となる欠点がないものを「○」、欠点が散見されるものを「△」、大部分が欠点であるものを「×」で示した。延伸後フィルムの光沢度は、JISZ8741:1997に規定する60度鏡面光沢、Gs(60°)であり、光沢計(ユニグロス60、コニカミノルタ株式会社)を用いて測定した。
【0053】
SPSにPCを配合した実施例1〜12では、SPSのみからなる比較例1よりも光沢度が低くなっている。特に、実施例1〜6および実施例8〜12では、いずれも光沢度が13〜35%の範囲にあり、目視によってもマット調が付与されていることが容易に確認できた。比較例5および7では、光沢度は低いが、前駆体フィルムの段階で外観に欠点があった。これらの比較例では、配合された樹脂成分の分散が均一でなく、凝集物、微小突起、微細孔等の欠点の存在によって光沢度が低かったものと考えられる。
【0054】
【表1】
【0055】
次に、表2に、比較例1および実施例3、4、5、8について、表面粗さと光沢度を示す。表中、「未延伸フィルム」は溶融・押出後で延伸前の前駆体フィルム、「延伸フィルム」は延伸・熱固定後のフィルム、「成型品」は延伸後フィルムを離型フィルムとしてエポキシ樹脂板を熱プレス成型したときの被成型品、「成型後フィルム」は当該離型フィルムとして使用した後のフィルム、「175℃加熱後フィルム」は延伸後フィルムを175℃で5分間保持した後のフィルム、についてのデータである。表面粗さは、JISB0601:1994に規定された算術平均粗さRa、最大高さRy、十点平均粗さRz、凹凸の平均間隔Smである。表面粗さは、表面粗さ測定器(ハンディサーフ、株式会社東京精密)を用いて測定した。
【0056】
評価にあたり、エポキシ樹脂板の熱プレス成型品は、次のとおりに調製した。
図1に示すように、エポキシ樹脂フレーク1を上下金型2,3により熱プレス成型するに際し、フレーク1と金型2,3との間にフィルム4を介在させた。フィルム4は金型より外側で把持し固定した。プレス時において、金型2,3の接近はスペーサー5により制限された。プレス成型後、成型体を取り出し、すぐにフィルム4を成型体から剥離した。プレス条件は、金型2,3の温度は175℃;プレス圧は100kgf/cm
2;プレスクリアランスは1mm;プレス時間は3分間であった。
【0057】
表2から、実施例のフィルムでは、成型後や175℃で保持した後も、低い光沢度を維持していることが分かる。また、成型品の光沢度も低く、フィルムの表面凹凸が精度よく被成型体に転写されていることが分かる。
【0058】
表2から、光沢度が低い実施例のフィルムまたは成形品では、比較例1と比べて、Ra、RyおよびRzが大きく、Smが小さいことが分かる。しかしながら、個々のパラメータの差はあまり大きくない。例えば、実施例のフィルムのRaは0.17〜0.30μmで、比較例1のフィルムのRa(0.1μm)との差はあまり大きくない。そのため、表面粗さの測定値を指標としてマット調の程度を判断することは容易ではない。また、目視によって感得できるマット調の程度は、光沢度の数値とよい相関があった。したがって、実施形態のフィルムの粗面化の程度の指標としては、光沢度が最も適していると考えられる。
【0059】
【表2】
【0060】
次に、SPSにPCおよびTPSを配合した実施例について説明する。SPS、PCおよびTPSを予め混練したフルコンパウンドを作製し、以後は上記のTPSを含まないフィルムと同じ方法で、フィルムを作製した。
【0061】
表3に、製造条件と得られたフィルムの光沢度を示す。用いたTPSは次のとおりである。
・TPS(S):TPS−SEEPS、商品名「セプトン4055」、株式会社クラレ
・TPS(D):TPS−SEBS、商品名「ダイナロン8903P」、JSR株式会社
・TPS(T):TPS−SEBS、商品名「タフテックH1041」、旭化成株式会社
【0062】
SPSにPCおよびTPSを配合した実施例13〜17では、いずれも光沢度が12〜22%の範囲にあり、目視によってもマット調が付与されていることが容易に確認できた。また、これら実施例13〜17の延伸後フィルムを離型フィルムとしてエポキシ樹脂板を熱プレス成型したときの被成型品の光沢度も低く、フィルムの表面凹凸が精度よく被成型体に転写されていることが分かる。
【0063】
【表3】
【0064】
次に、表4に、上記比較例および実施例の濡れ性、熱収縮率および引張物性を示す。
【0065】
表4において、濡れ性は、JISK6768:1999に従って測定した。
【0066】
熱収縮率は次のとおりに測定した。試験片(フィルム;150mm×150mm)上に、長さ100mmの2本の直線をそれぞれMD方向およびTD方向に対して平行に、かつ互いに中点で交わるように描いた。この試験片を、標準状態(温度23℃×湿度50%)に2時間放置し、その後試験前の直線の長さを測定した。続いて175℃の雰囲気に設定された熱風循環式オーブン内で一角を支持した宙吊り状態にて30分間放置した後、取り出して、標準状態に2時間放置冷却した。その後各方向の直線の長さを測定し、試験前の長さからの変化量を求め、当該試験前の長さに対する変化量の割合として熱収縮率を求めた。
【0067】
引張物性は次のとおりに測定した。ASTMD1708−6aに規定された形状の試験片(つかみ部の長さは16mm)を作製し、引張試験機(オートグラフ「AG−10kNIS MO」、株式会社島津製作所)を用いて、200mm/分の速度で行った。試験はMD方向およびTD方向のそれぞれについて3回行い、その平均を取った。常温での試験は室温が23℃の実験室内で行った。175℃での試験は175℃に設定した恒温槽内で行い、試験装置のつかみ具(チャック)にフィルムが貼り付くことを防ぐために、アルミホイルを介して試験片を保持した。引張伸度は、試料が破断したときの伸び率である。
【0068】
表4から、TPSを配合することによってフィルムの柔軟性が向上していることが分かる。このことは、離型フィルムとしての用途では、成型金型面の凹凸を精度よく被成型材料へ転写し、フィルム表面のマット調を精度よく被成型体へ転写するために、特に好ましい。
【0069】
【表4】
【0070】
本発明は上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。